説明

筒型成形品の成形方法および装置

【課題】
凹凸を有する筒状成形品を短時間かつ低コストで成形する方法、装置を提供する。
【解決手段】
成形装置は、第1金型31と第2金型32と、これら金型31,32間に配置される芯金構造体40を備えている。金型31,32の成形面31a,32aは、凹凸をなす縦断面形状を有している。芯金構造体40は、第1芯金41と第2芯金42と中間芯金43を有している。中間芯金43は、一端側から他端側に向かって厚みが漸減するような楔形状をなしている。中間芯金43が第1芯金41と第2芯金42との間の間隔を広げた前進位置にある状態で、金型31,32を芯金構造体40に向かって相対的に移動させることにより、筒状ワークを潰すようにプレス成形して筒型成形品10を得る。プレス成形後に、中間芯金43を後退させて芯金41,42の間隔を狭めることにより、芯金41,42を筒型成形品10から径方向、内方向に後退させる。最後に筒型成形品10から芯金構造体40を抜き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の消音器のシェル等に用いられる筒型成形品を成形する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、内燃機関の消音器のシェルに面剛性を高めるためのビードを径方向内側または径方向外側に向けて突出形成することは公知である。このシェルは、ビードを有する一対のシェル半体を別々にプレス成形し、その後で、一対のシェル半体の側縁を巻き締め若しくは溶接することにより作られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−111112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1では、シェル半体の側縁を巻き締め又は溶接する工程を必要とし、製造コストが増大する欠点があった。
上記のような巻き締め又は溶接の工程を省略するために、筒形状のワークを液圧成形することによりビードを成形することも考えられるが、この方法では、成形時間が長くなり、成形コストが増大してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされてものであり、筒状ワークをプレス成形して横断面形状が非円形をなす筒状成形品を得る成形装置であって、
互いに対向する成形面を有する第1、第2の2つの金型と、上記第1、第2の金型の対向方向と交差する軸に沿って延びて上記第1、第2の金型間に配置される芯金構造体とを備え、
上記第1、第2金型の成形面の少なくとも一方は、上記軸に沿って凹凸をなす縦断面形状を有しており、
上記芯金構造体は、上記軸方向にそれぞれ延びる第1、第2の芯金および中間芯金を有し、
上記第1芯金は、上記第1金型に対向するとともに第1金型の成形面に対応する面形状の成形面を有し、
上記第2芯金は、上記第2金型に対向するとともに第2金型の成形面に対応する面形状の成形面を有し、
上記中間芯金は、一端側から他端側に向かって厚みが漸減するような楔形状をなし、上記第1、第2芯金間に配置されるとともに、上記第1、第2芯金に対して相対的に上記軸方向に移動可能であり、
上記中間芯金が上記第1、第2芯金の間隔を広げた前進位置にある状態で、上記第1、第2の金型を上記芯金構造体に向かって相対的に移動させることにより、上記芯金構造体を囲むようにして配置された上記筒状ワークをプレス成形し、
上記プレス成形後に、上記中間芯金を上記第1、第2芯金の間隔を狭めることが可能な後退位置まで移動させることを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、筒状のワークをプレス成形することにより、溶接や巻き締めを行わずに、軸方向に凹凸をなす筒状成形品を得ることができ、製造時間の短縮、製造コストの低減を図ることができる。
【0007】
好ましくは、上記中間芯金が平坦な2つの当接面を有し、少なくとも一方の当接面が上記軸に対して傾斜しており、上記第1、第2芯金も、中間芯金に対向する平坦な当接面を有し、これら第1、第2芯金の当接面は上記中間芯金の対応する当接面と等しい角度をなしていて当該中間芯金の当接面と面接触している。
この構成によれば、中間芯金と第1、第2芯金を平坦な当接面を介して面接触させることにより、安定したプレス成形を行うことができる。
【0008】
好ましくは、上記第1、第2の金型の成形面の各々は、一部を除き横断面形状が等しく、当該一部において凸部または凹部からなる成形部を有しており、上記第1、第2の芯金の成形面は、これら成形部と相補的な凹部または凸部からなる成形部を有しており、これら成形部により、上記筒状成形品には、径方向内側または径方向外側に向かって突出する突出部が成形される。
この構成によれば、筒状成形品は、比較的シンプルな形状でありながら、上記突出部により面剛性を有している。
【0009】
好ましくは、上記芯金構造体が弾性支持手段により上記第1、第2金型間においてこれら第1、第2金型から離れた位置で支持され、上記第1金型が固定位置にあり、上記第2金型が第1金型に対して近接・離間する方向に移動するようになっており、プレス成形の際に、上記第2金型が上記弾性支持手段に抗して上記芯金構造体を押しながら、第1金型に向かって移動される。
この構成によれば、一方の金型だけを移動させればよいので、装置の構成を簡略化できる。
【0010】
好ましくは、上記筒状成形品が、潰れた横断面形状を有する消音器のシェルである。
これによれば、面剛性を有する消音器のシェルを低コストで製造することができる。
【0011】
本発明の他の態様は、筒状成形品の成形方法において、
ア.互いに対向する成形面を有する第1、第2の2つの金型と、上記第1、第2の金型の対向方向と交差する軸に沿って延びて上記第1、第2の金型間に配置される芯金構造体とを用意し、
上記第1、第2金型の成形面の少なくとも一方は、上記軸に沿って凹凸をなす縦断面形状を有しており、
上記芯金構造体は、上記軸方向にそれぞれ延びる第1、第2の芯金および中間芯金を有し、
上記第1芯金は、上記第1金型に対向するとともに第1金型の成形面に対応する面形状の成形面を有し、
上記第2芯金は、上記第2金型に対向するとともに第2金型の成形面に対応する面形状の成形面を有し、
上記中間芯金は、一端側から他端側に向かって厚みが漸減するような楔形状をなし、上記第1、第2芯金間に配置されるとともに、上記第1、第2芯金に対して相対的に上記軸方向に移動可能であり、
イ.上記中間芯金が上記第1、第2芯金の間隔を広げた前進位置にある状態で、上記筒状ワークを上記芯金構造体を囲むようにして配置し、
ウ.上記第1、第2の金型を芯金構造体に向かって相対的に移動させることにより、上記筒状ワークを潰すようにプレス成形して筒型成形品を得、
エ.上記プレス成形後に、上記中間芯金を後退させて上記第1、第2芯金の間隔を狭めることにより、上記第1、第2芯金を上記筒型成形品から径方向、内方向に後退させ、
オ.最後に上記筒型成形品に対して上記芯金構造体の芯金を上記軸方向に相対的に移動させて、上記筒型成形品から抜き取ることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、上記筒型成形品が消音器のシェルであり、上記第1、第2の金型の成形面の各々は、一部を除き横断面形状が等しく、当該一部においてビード成形用の凹部または凸部を有しており、上記第1、第2の芯金の成形面は、上記ビード成形用の凸部または凹部と相補的なビード成形用の凹部または凸部を有しており、上記プレス成形により、一部を除いて等しい横断面形状のシェルを得、その一部に上記第1、第2金型のビード成形用凸部または凹部と上記第1、第2芯金のビード成形用凹部または凸部とで、シェルの径方向内側または外側に突出するビードを成形する。
これによれば、比較的シンプルな形状でありながら面剛性を有するシェルを、低コストで成形することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軸方向に凹凸をなす筒状成形品を、比較的短い時間で低コストで成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態をなす方法で成形されたシェルを含む、消音器の斜視図である。
【図2】図1中II−II線に沿う消音器の横断面図である。
【図3】(A)は上記シェルを成形する装置の下型と上型を示す縦断面図であり、(B)は同装置の芯金構造体を示す縦断面図である。
【図4】(A)は上記芯金構造体の底面図であり、(B)は上記芯金構造体の横断面図である。
【図5】上記芯金構造体を図4(A)において左方向から見た正面図であり、(A)は中間芯金が前進位置にある時の状態を示し、(B)は同中間芯金が後退位置にある時の状態を示す。
【図6】上記中間芯金が前進位置にある状態でプレス成形を行った直後の状態を示す上記成形装置の縦断面図である。
【図7】上記プレス成形後に上記中間芯金を後退させるとともに上型を上昇させた時の状態を示す成形装置の縦断面図である。
【図8】成形工程を順に示す芯金構造体の横断面図であり、(A)は中間芯金を前進させるとともに円筒状ワークを装着した状態を示し、(B)はプレス成形した状態を示し、(C)は中間芯金を後退させて上下の芯金を近づけることにより、成形されたシェルから上下の芯金を径方向に離した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図を参照しながら説明する。
図1,図2は、内燃機関の消音器を示す。この消音器は筒状のシェル10(筒型成形品)と、このシェル10の両開口端を塞ぐようにしてシェル10に固定されたエンドプレート21,22とを備えている。
【0016】
上記シェル10は異形断面形状、より具体的には略瓢箪形に潰れた形状をなしている。以下の説明において、図2の上下方向を厚み方向と称し、図2の左右方向を幅方向と称する。
シェル10は、後述する中間のビード成形箇所を除き全長にわたって等しい横断面形状をなしており、厚み方向に対峙する一対の幅広領域部10a,10bと、幅方向に対峙する断面ほぼ半円弧形状の端部10c、10dとを有している。
【0017】
上記エンドプレート21,22は、上記シェル10の横断面形状と等しい形状をなし、その周縁に鍔部21a,22aを有している。これら鍔部21a, 22aにシェル10の両端部を挿入した状態で、エンドプレート21,22がシェル10に固定されている。
【0018】
次に、上記消音器の内部構造について説明する。
上記シェル10の扁平な空間内において、シェル10の幅方向の中央近傍(瓢箪のくびれに相当する部分)には、シェル10の長手方向に延びるとともに通気性を有する補強部材25が溶接等により固定されている。
【0019】
上記シェル10内において、上記補強部材25に分割された一方の空間部には、シェル1の長手方向に延びるパイプ26が配置されており、他方の空間部には吸音材27が配置されている。上記パイプ26の周壁には多数の穴26aが形成されており、その両端が上記エンドプレート21,22に固定されている。
【0020】
上記パイプ26の上流端26xはインレットパイプ(図示しない)を介して内燃機関に接続され、下流端26yはアウトレットパイプ(図示しない)に接続されており、排気音の衝撃波はパイプ26の穴26aから出て吸音材27で吸収されるようになっている。
【0021】
上記シェル10の一方の幅広領域部10aには、シェル1の長手方向と直交する方向に延びるビード11(突出部)が、シェル1の内方向に向かって突出するようにし、かつ長手方向に間隔をおいて、例えば2つ(複数)形成されている。シェル10の他方の幅広領域部10bにも、同様にしてビード12(突出部)が形成されている。
上記シェル10の面剛性は上記ビード11,12によって高められている。
【0022】
次に、本発明の一実施形態をなす、上記シェル10のプレス成形装置について図3〜図5を参照しながら説明する。
プレス成形装置は、図3(A)に示すように台30上に固定された下型31(第1金型)と、下型31の上方に配置されて昇降する上型32(第2金型)と、下型31の長手方向両端近傍に配置されたコイルバネ等からなる弾性支持手段33と、図3(B)に示す芯金構造体40と、この芯金構造体40のための駆動装置50とを備えている。
【0023】
以下、各構成要素の詳細について説明する。以下の説明において、下型31と上型32の対峙方向に沿って垂直に延びる軸をZ軸と称し、このZ軸と直交する水平軸をX軸と称す。
【0024】
下型31の成形面31aはシェル10の一方の幅広成形部10aを成形するためのものであり、その横断面形状(X軸と直交する断面の形状)は、図8(B)に示すように、水平に広がりをもっている。また、この横断面形状は、そのX軸方向の中間の一部を除き、その全長にわたって等しく、当該中間の一部にはビード成形用凸部31b(成形部)が形成されている。ビード成形用凸部31bは、X軸と直交する方向に延び、X軸方向に間隔をおいて複数例えば2つ形成されている。
【0025】
同様に、上型32の成形面32aはシェル10の他方の幅広成形部10bを成形するためのものであり、その横断面形状は、中間の一部を除き、全長にわたって等しく、当該一部にはビード成形用凸部32b(成形部)が例えば2つ形成されている。
【0026】
上記芯金構造体40は、後述するセット状態においてX軸方向に延びる細長い3つの芯金、すなわち下側芯金41(第1芯金)と上側芯金42(第2芯金)と中間芯金43とを備えている。
下側芯金41の下面は、上記シェル10の一方の幅広領域部10aを成形するための成形面41aとなっており、この成形面41aは上記下型31の成形面31aに対応した面形状を有している。ただし、下型31の成形面31aの方が幅広である。
上記下側芯金41の成形面41aには、上記下型31のビード成形用凸部31bと相補的な複数のビード成形用凹部41bが、X軸方向に間隔をおいて形成されている。
【0027】
同様に、上側芯金42の上面は、上記シェル10の他方の幅広領域部10bを成形するための成形面42aとなっており、この成形面42aは上記上型32の成形面32aに対応した面形状を有している。ただし、上型32の成形面32aの方が幅広である。
上記上側芯金42の成形面42aには、上記上型32のビード成形用凸部32bと相補的な複数のビード成形用凹部42bが、X軸方向に間隔をおいて形成されている。
【0028】
上記下側芯金41の上面はテーパをなす平坦な当接面41cとなっており、X軸に対して左上がりに傾斜している。同様に上側芯金42の下面もテーパをなす平坦な当接面41cとなっており、左下がりに傾斜している。
【0029】
上記中間芯金43は、図3において左方向に向かうにしたがって先細の楔形状をなしており、その上下面は、上記芯金41,42の当接面41c、42cとそれぞれ等しいテーパ角をなす平坦な当接面43x,43yとなっている。
【0030】
上記中間芯金43は、芯金41,42に対して、前進位置(図3(B)に示す位置)と後退位置(図3(B)において右方向に後退した位置)との間で、長手方向(X軸方向)に相対的移動が可能である。中間芯金43の前進位置では上下の芯金41,42の間隔が広がり、後退位置では上下の芯金41,42の間隔が狭まるようになっている。
【0031】
中間芯金43の当接面43x、43yは、それぞれ芯金41、42の当接面41c、42cと等しいテーパ角をなすため、上記前進位置と後退位置およびこれらの間の中間位置で、互いに面接触することができる。
【0032】
上記駆動装置50は図3(A)においてそのヘッド部のみ示されている。この駆動装置50は、そのヘッド部に垂直に起立するピン51を有しており、後述するようにこのピン51を中間芯金43の右端部の係合穴43aに挿入した状態で、中間芯金43を前進位置から後退位置へと移動させることができるようになっている。
【0033】
芯金41〜43は、図4(A),(B)に示す位置決め機構60により、相対移動が規制されている。すなわち、中間芯金43には長穴43dが形成されている。この長穴43dは、中間芯金43を厚み方向に貫通するとともに、長手方向に延びている。
他方、下側芯金41には長手方向に間隔をおいて2箇所にねじ穴41dが形成され、これに対応して上側芯金42には2箇所に貫通穴42dが形成されている。
【0034】
上記下側芯金41のねじ穴41dにはピン61の先端がねじ込まれており、このピン61の軸部が中間芯金43の長穴43dを貫通し、大径の頭部が貫通穴42dに上下動可能に収容されている。
【0035】
上記芯金41,42はピン61により長手方向、幅方向の相対移動が禁じられており、上下方向(厚み方向)の相対移動のみが可能となっている。
また、ピン61が中間芯金43の長穴43dを貫通することにより、中間芯金43は芯金41,42に対して幅方向の相対移動を禁じられ、長手方向にのみ相対移動可能となっている。
【0036】
図4(A),図5(A),(B)に示すように、下側芯金41と上側芯金42との間隔の最大値は間隔規制手段70により決定される。この間隔規制手段70は、下側芯金41の長手方向一端面に固定されたブラケット71と、上側芯金42の一端面に固定されたピン72とを有している。ブラケット71には垂直方向に延びる2つの長穴71aが形成されており、この長穴71aにピン72が挿入されている。
【0037】
図5(A)に示すように、ピン72が長穴71aの上端に係止されることにより、両芯金41,42はそれ以上間隔が広がるのを禁じられる。なお、この間隔は、図3(B)、図4(A)に示すように、中間芯金43が前進位置にある時に最大値となる。
【0038】
次に、上記プレス成形装置を用いたシェル10の成形方法について、特に図6〜図8を参照しながら説明する。
図8(A)に示すように、円筒形状のワークWに芯金構造体40を挿入し、この芯金構造体40の中間芯金43を芯金41,42に対して前進させ、芯金41,42の間隔を最大にする。本実施状態では、芯金41,42の幅方向両端部の面が上記ワークWとほぼ等しい曲率半径の円筒面の一部を構成しており、上記最大間隔においてワークWの内周面にほぼ面接触するようになっている。
なお、上記中間芯金43を前進位置に移動させてからワークWを芯金構造体40に装着してもよい。
【0039】
次に、上記のようにワークWを保持した芯金構造体40を、下型31と上型32との間に入れて弾性支持手段33の上に乗せる。この際、図示しない位置決め手段を用いて芯金構造体40の下型31,32に対する位置決めが行われる。
【0040】
次に、上型32を下型31に向けて下降させる。すると、上型32がワークWに当たり、ワークWを押し、このワークWとともに芯金構造体40を弾性支持手段33に抗して下方に移動させる。
【0041】
上記上型32、芯金構造体40、ワークWの下降が開始してから直ぐに、ワークWが下型31にも当たり、これにより、ワークWが潰され始める。
【0042】
さらに上型32が下降することにより、図6,図8(B)に示すように、ワークWが瓢箪型にプレス成形されて、シェル10が得られる。
より詳しくは、下型31の成形面31aと下側芯金41の成形面41aとで、シェル10の一方の幅広領域部10aが成形され、上型32の成形面32aと上側芯金42の成形面42aとで、シェル10の他方の幅広領域部10bが成形される。
また、ワークWが潰されて横に広がり、下型31、上型32の成形面31a,32aの幅方向両端部に当たることにより、シェル10の半円弧形状をなす幅方向両端部10c、10dが成形される。
【0043】
更に、上記下型31のビード成形用凸部31bと下側芯金41のビード成形用凸部41bにより、シェル10の一方の幅広領域部10aのビード11が成形される。また、上記上型32のビード成形用凸部32bと上側芯金42のビード成形用凸部42bにより、シェル10の他方の幅広領域部10bのビード12が成形される。
【0044】
上記プレス成形時には、中間芯金43が前進位置にあり上下の芯金41,42間に深く挿入されており、上下の芯金41,42は最大限に離れており、芯金構造体40が最大厚さを有している。上型32のプレス力は芯金構造体40にも作用し、芯金41,42と中間芯金43との間のテーパ作用により、中間芯金43には後退方向に力が付与される。しかし、上記テーパは緩やかであるため、この後退方向の力は小さく、上記芯金構造体40はその最大限の厚さを維持される。なお、このプレス成形時の中間芯金43の後退を禁じるために、中間芯金43と上下の芯金41,42を貫く着脱可能なピンを用いてもよい。
【0045】
上記プレス成形の後、図7に示すように、上型42を上昇させるとともに駆動装置50により中間芯金43を後退させる。すると、図7、図8(C)に示すように、下側の芯金41が弾性支持手段33の弾性復帰力により上昇し、上側の芯金42がその自重により下降する。その結果、芯金構造体40の厚さが小さくなり、芯金構造体40と成形されたシェル10は、その長手方向から見た時に互いに干渉しなくなる。より具体的には、下側の芯金41のビード成形用凹部41bがシェル10のビード11から径方向に離れ、上側の芯金42のビード成形用凹部42bがシェル10のビード12から径方向に離れる。
なお、上記上型42の上昇は、中間芯金43の後退した後で実行してもよい。上側芯金41は自重により下降させる他、押圧手段で上側芯金41を押して下降させてもよい。
【0046】
最後に、芯金構造体40を弾性支持手段33から外し、さらにシェル10から芯金構造体40を抜き取る。
【0047】
本発明は、上記実施例に制約されず、種々の態様を採用することができる。例えば、本発明を消音器のシェル以外の筒型成形品の成形に適用してもよい。
筒状成形品の横断面形状は上記実施形態の瓢箪型の他、楕円、長円等であってもよい。
芯金の当接面にオイル溜まり用の浅い溝を形成することにより、中間芯金の後退を円滑に行うようにしてもよい。この溝は例えば多数の円を描くものであってもよい。
成形後に筒状成形品から芯金構造体を抜く際、第1、第2芯金と中間芯金を逆方向に抜くようにしてもよい。
シェルのビード(筒状成形品の突出部)は、外に突出するように成形してもよい。この場合、金型にビード成形用の凹部が形成され、芯金にビード成形用の凸部が形成される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、消音器のシェル等の筒状成形品の成形に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 シェル(筒状成形品)
11,12 ビード(突出部)
31 下型(第1金型)
32 上型(第2金型)
31a,32a 成形面
31b,32b ビード成形用凸部(成形部)
33 弾性支持手段
40 芯金構造体
41 下側芯金(第1芯金)
42 上側芯金(第2芯金)
41a、42a 成形面
41b、42b ビード成形用凹部(成形部)
41c、42c 当接面
43 中間芯金
43x、43y 当接面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ワークをプレス成形して横断面形状が非円形をなす筒状成形品を得る成形装置であって、
互いに対向する成形面を有する第1、第2の2つの金型と、上記第1、第2の金型の対向方向と交差する軸に沿って延びて上記第1、第2の金型間に配置される芯金構造体とを備え、
上記第1、第2金型の成形面の少なくとも一方は、上記軸に沿って凹凸をなす縦断面形状を有しており、
上記芯金構造体は、上記軸方向にそれぞれ延びる第1、第2の芯金および中間芯金を有し、
上記第1芯金は、上記第1金型に対向するとともに第1金型の成形面に対応する面形状の成形面を有し、
上記第2芯金は、上記第2金型に対向するとともに第2金型の成形面に対応する面形状の成形面を有し、
上記中間芯金は、一端側から他端側に向かって厚みが漸減するような楔形状をなし、上記第1、第2芯金間に配置されるとともに、上記第1、第2芯金に対して相対的に上記軸方向に移動可能であり、
上記中間芯金が上記第1、第2芯金の間隔を広げた前進位置にある状態で、上記第1、第2の金型を上記芯金構造体に向かって相対的に移動させることにより、上記芯金構造体を囲むようにして配置された上記筒状ワークをプレス成形し、
上記プレス成形後に、上記中間芯金を上記第1、第2芯金の間隔を狭めることが可能な後退位置まで移動させることを特徴とする筒状成形品の成形装置。
【請求項2】
上記中間芯金が平坦な2つの当接面を有し、少なくとも一方の当接面が上記軸に対して傾斜しており、
上記第1、第2芯金も、中間芯金に対向する平坦な当接面を有し、これら第1、第2芯金の当接面は上記中間芯金の対応する当接面と等しい角度をなしていて当該中間芯金の当接面と面接触していることを特徴とする請求項1に記載の筒状成形品の成形装置。
【請求項3】
上記第1、第2の金型の成形面の各々は、一部を除き横断面形状が等しく、当該一部において凸部または凹部からなる成形部を有しており、
上記第1、第2の芯金の成形面は、これら成形部と相補的な凹部または凸部からなる成形部を有しており、これら成形部により、上記筒状成形品には、径方向内側または径方向外側に向かって突出する突出部が成形されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の筒状成形品の成形装置。
【請求項4】
上記芯金構造体が弾性支持手段により上記第1、第2金型間においてこれら第1、第2金型から離れた位置で支持され、
上記第1金型が固定位置にあり、上記第2金型が第1金型に対して近接・離間する方向に移動するようになっており、
プレス成形の際に、上記第2金型が上記弾性支持手段に抗して上記芯金構造体を押しながら、第1金型に向かって移動されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の筒状成形品の成形装置。
【請求項5】
上記筒状成形品が、潰れた横断面形状を有する消音器のシェルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の筒状成形品の成形装置
【請求項6】
ア.互いに対向する成形面を有する第1、第2の2つの金型と、上記第1、第2の金型の対向方向と交差する軸に沿って延びて上記第1、第2の金型間に配置される芯金構造体とを用意し、
上記第1、第2金型の成形面の少なくとも一方は、上記軸に沿って凹凸をなす縦断面形状を有しており、
上記芯金構造体は、上記軸方向にそれぞれ延びる第1、第2の芯金および中間芯金を有し、
上記第1芯金は、上記第1金型に対向するとともに第1金型の成形面に対応する面形状の成形面を有し、
上記第2芯金は、上記第2金型に対向するとともに第2金型の成形面に対応する面形状の成形面を有し、
上記中間芯金は、一端側から他端側に向かって厚みが漸減するような楔形状をなし、上記第1、第2芯金間に配置されるとともに、上記第1、第2芯金に対して相対的に上記軸方向に移動可能であり、
イ.上記中間芯金が上記第1、第2芯金の間隔を広げた前進位置にある状態で、上記筒状ワークを上記芯金構造体を囲むようにして配置し、
ウ.上記第1、第2の金型を芯金構造体に向かって相対的に移動させることにより、上記筒状ワークを潰すようにプレス成形して筒型成形品を得、
エ.上記プレス成形後に、上記中間芯金を後退させて上記第1、第2芯金の間隔を狭めることにより、上記第1、第2芯金を上記筒型成形品から径方向、内方向に後退させ、
オ.最後に上記筒型成形品に対して上記芯金構造体の芯金を上記軸方向に相対的に移動させて、上記筒型成形品から抜き取ることを特徴とする筒状成形品の成形方法。
【請求項7】
上記筒型成形品が消音器のシェルであり、
上記第1、第2の金型の成形面の各々は、一部を除き横断面形状が等しく、当該一部においてビード成形用の凹部または凸部を有しており、
上記第1、第2の芯金の成形面は、上記ビード成形用の凸部または凹部と相補的なビード成形用の凹部または凸部を有しており、
上記プレス成形により、一部を除いて等しい横断面形状のシェルを得、その一部に上記第1、第2金型のビード成形用凸部または凹部と上記第1、第2芯金のビード成形用凹部または凸部とで、シェルの径方向内側または外側に突出するビードを成形することを特徴とする請求項6に記載の筒状成形品の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−653(P2012−653A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138884(P2010−138884)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000174378)坂本工業株式会社 (23)