説明

筒形フィルタ

【課題】筒形フィルタの粒子捕捉性能及び分級濾過能力を向上させる。
【解決手段】筒形フィルタ10は、各々がガラス繊維を主成分とするとともに互いに異なる内径を有する複数の筒状の第1濾過部12と、各々が樹脂繊維を主成分とするとともに互いに異なる内径を有する複数の筒状の第2濾過部14とを、適宜に組み合わせて構成される中空筒形のフィルタ本体16を備える。複数の第1濾過部12と複数の第2濾過部14とは、互いに径方向へ交互にかつ同心状に重ねて配置される。筒形フィルタ10はさらに、複数の第1濾過部12及び複数の第2濾過部14の軸線方向両端12a、14aに固定的に設置される一対のシール部材20を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒形フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
液体や気体の濾過システムにおいて、濾過精度の異なる複数種類の濾材を互いに同心状に重ねて配置してなる中空筒形のフィルタ(本出願で筒形フィルタと称する。)が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、「熱融着性複合繊維を含む一定巾の繊維集合層を、予め熱融着温度に加熱し、巻き芯に巻きつけて先ずシート支持層を形成せしめた後、引き続き該繊維集合層と同じ巾を有しかつ所望の穴径をもつシートを巻き回数が少なくとも1.5回となるように該繊維集合層と共に巻き込んで精密濾過層を形成せしめ、引き続いて繊維集合層のみを巻きとって前濾過層を形成せしめた後、冷却し、巻き芯を抜きとることを特徴とする、精密濾過用カートリッジフィルターの製造方法」が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、特許文献1に記載の精密濾過用カートリッジフィルターと同様の構成を有する「筒状フィルター」であって、精密濾過層として「ガラス繊維不織布層」を用いたものが記載されている。
【0005】
特許文献1及び2に記載される筒形フィルタは、熱融着性複合繊維を含む繊維集合層自体の熱融着によりフィルタ全体の所要の剛性を確保できるので、成形後に巻き芯を除去するいわゆるコアレスの構成を有するものである。
【0006】
他方、熱融着性複合繊維を含まない一般的な不織布濾材を、有孔筒状壁を有するコアに巻き付けて構成される、いわゆるコア付きの筒形フィルタが知られている。
【0007】
例えば、特許文献3には、予め不織布の片側に目の粗いネットをあて、多孔性コアに対し、不織布をネットと共に巻き込んでなる「不織布巻込積層型カートリッジフィルター」が記載されている。
【0008】
また、特許文献4には、特許文献3に記載の不織布巻込積層型カートリッジフィルターと同様の構成を有する「多層濾過筒」であって、ネットとして「耐有機溶剤性シート」を用い、不織布として「濾過精度の異なる複数のガラス繊維不織布」を用いたものが記載されている。ガラス繊維不織布について、「フェノール樹脂等の耐有機溶剤性バインダー剤によってガラス繊維どうしの交点がバインドされてなる」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭55−024575号公報
【特許文献2】特開平09−122414号公報
【特許文献3】実開平01−170417号公報
【特許文献4】実開平07−009414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の筒形フィルタは、用途によっては粒子捕捉性能が不十分になる場合がある。また、特定の径寸法以上の粒子を捕捉する一方で特定の径寸法未満の粒子を効率良く通過させる、いわゆる分級濾過の能力を向上させることが望まれている。
【0011】
本発明の目的は、粒子捕捉性能及び分級濾過能力に優れる筒形フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、各々がガラス繊維を主成分とするとともに互いに異なる内径を有する複数の筒状の第1濾過部と、前記複数の第1濾過部に対し径方向へ交互に同心状に配置され、各々が樹脂繊維を主成分とするとともに互いに異なる内径を有する複数の筒状の第2濾過部と、前記複数の第1濾過部及び前記複数の第2濾過部の軸線方向両端に固定的に設置される一対のシール部材と、を具備する筒形フィルタを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る筒形フィルタは、各々がガラス繊維を主成分とする複数の第1濾過部と、各々が樹脂繊維を主成分とする複数の第2濾過部とを、互いに径方向へ交互に同心状に配置して構成されるから、濾過対象の流体に対し、第1濾過部と第2濾過部との双方がいずれも重層的に濾過能力を発揮する。その結果、筒形フィルタに、高水準の粒子捕捉性能が付与される。また、複数の第1濾過部と複数の第2濾過部との各々を、材料や形成手法の選定により、所望の濾過精度を有するように形成できるので、筒形フィルタに所望の分級濾過能力が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態による筒形フィルタの斜視図である。
【図2】図1の筒形フィルタの線II−IIに沿った縦断面図である。
【図3】図1の筒形フィルタの線III−IIIに沿った横断面図である。
【図4】図1の筒形フィルタにおけるフィルタ本体の構造を示す横断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による筒形フィルタの斜視図である。
【図6】図5の筒形フィルタの線VI−VIに沿った縦断面図である。
【図7】図5の筒形フィルタの線VII−VIIに沿った横断面図である。
【図8】図5の筒形フィルタにおけるフィルタ本体の構造を示す一部切欠き斜視図である。
【図9】図5の筒形フィルタにおけるフィルタ本体の構造を示す部分拡大横断面図である。
【図10】図5の筒形フィルタにおけるフィルタ本体の製造方法を模式図的に示す図である。
【図11】本発明の第3の実施形態による筒形フィルタの正面図である。
【図12】図11の筒形フィルタの縦断面図である。
【図13】図1の筒形フィルタの粒子捕捉性能を説明する図である。
【図14】図5の筒形フィルタの粒子捕捉性能を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図面を参照すると、図1は、本発明の第1の実施形態による筒形フィルタ10を概略で示す斜視図、図2及び図3は、筒形フィルタ10の概略断面図である。
【0016】
筒形フィルタ10は、各々がガラス繊維を主成分とするとともに互いに異なる内径を有する複数(図では2つ)の筒状の第1濾過部12と、各々が樹脂繊維を主成分とするとともに互いに異なる内径を有する複数(図では3つ)の筒状の第2濾過部14とを、適宜に組み合わせて構成される中空筒形のフィルタ本体16を備える。フィルタ本体16の中心には、軸線方向へ貫通する中空部18が形成される。
【0017】
複数の第1濾過部12と複数の第2濾過部14とは、互いに径方向へ交互にかつ同心状に重ねて配置される。図示実施形態では、フィルタ本体16の最外周に、最大内径を有する1つの第2濾過部14が配置され、フィルタ本体16の最内周に、最小内径を有する1つの第2濾過部14が配置され、フィルタ本体16の中間周に、中間内径を有する1つの第2濾過部14が配置されている。そして、最外周及び中間周の第2濾過部14の間に、1つの大径の第1濾過部12が挟持されるとともに、最内周及び中間周の第2濾過部14の間に、1つの小径の第1濾過部12が挟持されている。
【0018】
筒形フィルタ10はさらに、複数の第1濾過部12及び複数の第2濾過部14の軸線方向両端12a、14a(つまりフィルタ本体16の軸線方向両端)に固定的に設置される一対のシール部材20を備える。各シール部材20は、中心開口22を有する板状の部材であり、第1濾過部12及び第2濾過部14の軸線方向両端12a、14aに、接着、熱溶着等の手段によって固定される。シール部材20の中心開口22は、フィルタ本体16の中空部18よりも幾分小径であってよく、またシール部材20の外径は、フィルタ本体16の外径よりも幾分大きくてよい。シール部材20は、中心開口22を中空部18に同軸状に配置してフィルタ本体16に固定される。その状態で、シール部材20の外周領域は、図示のようにフィルタ本体16の外周面から外方へ僅かに突出する場合もあるが、突出しない場合もある。
【0019】
筒形フィルタ10は、上記したようにコアレスの構成を有するものであり、図示しない別体のハウジングに収納されて使用されるいわゆるカートリッジタイプのフィルタである。カートリッジタイプのフィルタは一般に、目詰まり等が生じたときにハウジングから取り外して新規なものに交換可能な構成を有する。したがって、筒形フィルタ10の上記及び図示の形状及び寸法関係は、あくまで一例であり、筒形フィルタ10の適用(例えばハウジングの形状)に応じて適宜変更できる。なお、本出願において「筒形」ないし「筒状」とは、図示の円筒及び図示しない角筒の形状を包含するものである。
【0020】
また、筒形フィルタ10は、ハウジング(図示せず)に収納された使用時に、いずれか一方のシール部材20の中心開口22に、ハウジングに設けた位置決め及び固定用の突起が密に嵌入されることで、ハウジング内の所定位置に固定される。この状態で、筒形フィルタ10のフィルタ本体16の外周面(図では最大内径の第2濾過部14の外周面)は、流体導入側(いわゆる一次側)のハウジング内部空間に露出して配置され、フィルタ本体16の内周面(図では最小内径の第2濾過部14の内周面)は、突起によって塞がれていない他方のシール部材20の中心開口22を介して、流体導出側(いわゆる二次側)に配置される。
【0021】
したがって筒形フィルタ10においては、濾過対象の流体は、フィルタ本体16の外周面から第1及び第2濾過部12、14を通過してフィルタ本体16の中空部18に流れ込み、その間に、第1及び第2濾過部12、14が有する濾過精度に従い、不要かつ粗大な粒子が流体から除去される。ここで、フィルタ本体16の軸線方向両端に設置される一対のシール部材20は、流体の全てが第1及び第2濾過部12、14を確実に通過するように、第1及び第2濾過部12、14の軸線方向両端を封止する。
【0022】
図4に示すように、フィルタ本体16は、各第1濾過部12が、ガラス繊維を含有する第1濾材シート24を一巻き以上筒状に巻回して形成され、各第2濾過部14が、樹脂繊維を含有する第2濾材シート26を一巻き以上筒状に巻回して形成される。このような構成のフィルタ本体16は、予め所定の幅及び長さに裁断された複数の第1濾材シート24と予め所定の幅及び長さに裁断された複数の第2濾材シート26とを、所定の順序で、図示しない成形用の巻き軸に巻き付けることにより作製できる。或いは、長尺に連続する所定幅の第2濾材シート26を巻き軸に連続的に巻き付けるとともに、第2濾材シート26の所定の巻き付け位置で、内側の一巻きと外側の一巻きとの間に、所定幅及び所定長さの第1濾材シート24を挿入することにより、フィルタ本体16を作製することもできる。後者の方法によれば、第1濾過部12を構成する第1濾材シート24の一巻きずつの間に、長尺の第2濾材シート26の一部分が介在することになる。いずれの場合も、第1濾材シート24と第2濾材シート26とは、互いに同一の幅を有する。
【0023】
第1濾過部12を構成する第1濾材シート24は、特定の手法(ASTM F316−86)に従って測定した平均流量孔径(MFP:mean flow pore size)が、例えば1μm以上35μm以下のガラス繊維不織布、或いは例えば2μm以上20μm以下のガラス繊維不織布から形成できる。また第1濾材シート24は、厚み方向へ55kPaの圧力を印加したときに例えば0.5mm以上1.2mm以下の平均厚みを有するガラス繊維不織布から形成できる。各第1濾過部12における第1濾材シート24の巻回数は、例えば1回以上10回以下とすることができる。例えば、予め2枚の第1濾材シート24を重ね合わせたものを3回程度巻回させて、計6巻きの第1濾材シート24により各第1濾過部12を形成することもできる。第1濾材シート24に関するこれらのパラメータは、フィルタ本体16が有する第1濾過部12の個数が2個以上であることを前提として、筒形フィルタ10の形状や寸法並びに要求される粒子捕捉性能及び分級濾過能力に応じて、適宜に設定できる。
【0024】
第1濾材シート24に用いられるガラス繊維不織布は、熱硬化性樹脂バインダーを含有しないことが望ましい。この場合、複数の第1濾過部12の各々が、熱硬化性樹脂バインダーを含有しないものとなる。バインダーによりガラス繊維同士が部分的に結着されていると、第1濾材シート24を通過する流体の流量及び圧力の損失が増加する傾向がある。また、濾過対象の流体の特性に何らかの影響を及ぼす物質が、バインダーから発生する危惧もある。
【0025】
第2濾過部14を構成する第2濾材シート26は、シート成形温度に加熱したときに熱溶融又は熱変形せずに繊維状態を保持し得る第1の繊維材料に対し、シート成形温度に加熱することで熱溶融又は熱変形する第2の繊維材料を付着させてなる、いわゆる芯鞘型、並列型等の熱融着性複合樹脂繊維を含有する不織布から形成できる。この場合、複数の第2濾過部14の各々が、熱に対し異なる性質を有する繊維材料を組み合わせた熱融着性複合樹脂繊維を含有するものとなる。各第2濾過部14における第2濾材シート26の巻回数は、例えば1回以上10回以下とすることができ、そのようにして形成された第2濾過部14の厚みは、例えば1mm以上とすることができる。
【0026】
第2濾材シート26の熱融着性複合樹脂繊維の材料としては、(1)ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、ナイロン(登録商標)等の熱可塑性ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、アクリル、ポリスチレン、ポリフェニレンスルファイド、フッ素樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂材料、(2)ポリウレタン等の熱硬化性樹脂材料、(3)レーヨン、アセテート、ウッドパルプ、セルロース等の天然素材や半合成素材を挙げることができる。これらの材料から、筒形フィルタ10の適用に応じて、第1及び第2の繊維材料を適宜の組み合わせで選択し、芯鞘型や並列型に相互付着した複合繊維を形成することで、熱融着性複合樹脂繊維不織布を作製できる。
【0027】
上位構成を有するフィルタ本体16は、熱融着性複合樹脂繊維からなる第2濾材シート26を、その材料によって決まるシート成形温度に加熱するとともに所定圧力を加えながら筒状に巻回することで、重なり合った第2濾材シート26同士が熱融着して、フィルタ本体16の所要の剛性を確保できるものである。したがって、フィルタ本体16の成形後には、成形用の巻き軸が除去される。このような特性を有する第2濾材シート26は、シート成形温度への加熱によって平均流量孔径や平均厚み等が変化するから、成形後の濾過精度を予測して第2濾材シート26の材料、寸法等を選定することが望ましい。なお、互いに重なり合う第1濾材シート24と第2濾材シート26とは、第2濾材シート26の第2の繊維材料が熱溶融したときにも、ガラス繊維と樹脂繊維とが互いに接触状態を維持するだけで融着することはない。
【0028】
シール部材20は、フィルタ本体16の軸線方向両端に対する所要の封止能力を発揮できることを条件として、種々の材料から形成できる。特に、シール部材20がフィルタ本体16に熱溶着により固定される構成においては、ポリエチレンフォームやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂材料から、シール部材20を成形できる。この構成では、成形後のフィルタ本体16の軸線方向両端のそれぞれに、前述した適正相対配置でシール部材20を当接させ、その状態で、フィルタ本体16とシール部材20との接触箇所を局所的に適宜温度に加熱することにより、シール部材20がフィルタ本体16に熱溶着される。この場合、フィルタ本体16に対するシール部材20の熱溶着による固定力は、第2濾過部14に対する固定力が第1濾過部12に対する固定力よりも有意に高いものとなる。したがってシール部材20は、主として第2濾過部14に対する固定力により、振動や流体圧力変化等の衝撃に抗して、フィルタ本体16に密接して固定された状態を維持する。
【0029】
上記構成を有する筒形フィルタ10は、各々がガラス繊維を主成分とする複数の第1濾過部12と、各々が樹脂繊維を主成分とする複数の第2濾過部14とを、互いに径方向へ交互に同心状に配置して構成されるから、濾過対象の流体に対し、第1濾過部12と第2濾過部14との双方がいずれも重層的に濾過能力を発揮する。その結果、筒形フィルタ10に、高水準の粒子捕捉性能が付与される。また、複数の第1濾過部12と複数の第2濾過部14との各々を、材料や形成手法の選定により、所望の濾過精度を有するように形成できるので、筒形フィルタ10に所望の分級濾過能力が確保される。さらに、樹脂繊維を主成分とする第2濾過部14よりも微細な濾過精度をそれぞれに有し得るガラス繊維を主成分とする複数の第1濾過部12を、それらの濾過精度が、フィルタ本体16の外周側(一次側)から内周側(二次側)に向かって段階的に高まる(つまり捕捉粒子径が段階的に小さくなる)ように形成することで、筒形フィルタ10の濾過寿命を向上させることができる。
【0030】
特に、シール部材20がフィルタ本体16に熱溶着により固定される構成では、ガラス繊維を主成分とする第1濾過部12とシール部材20との溶着箇所が、樹脂繊維を主成分とする第2濾過部14とシール部材20との溶着箇所に比べて、振動や流体圧力変化等による衝撃に対し脆弱で破壊され易くなる傾向がある。この傾向は、後述するように、第1濾過部12の単体での粒子捕捉性能の向上を予期できる第1濾過部12の厚みの増加に伴い、逆に高まることが確認されている。この問題に対し、上記構成を有する筒形フィルタ10は、1つの第1濾過部12の厚みを増加させる代わりに、複数の第1濾過部12を設けてそれら第1濾過部12の間に第2濾過部14を介在させる構成を採用することで、個々の第1濾過部12とシール部材20との溶着箇所の、破壊に至る寿命を増加させ、結果として筒型フィルタ10の粒子捕捉性能を向上させている。なお、筒形フィルタ10の粒子捕捉性能及び分級濾過能力については、さらに後述する。
【0031】
また、フィルタ本体16の最外周及び最内周のそれぞれに第2濾過部14を配置する構成によれば、振動や流体圧力変化等による衝撃に対して比較的脆弱なガラス繊維を主成分とする第1濾過部12を、同様の衝撃に対して比較的堅牢な樹脂繊維を主成分とする第2濾過部14によって、確実に保護することができる。つまり、筒状フィルタ10に振動や流体圧力変化等による衝撃が加わったときに、第1濾過部12の両面に位置する第2濾過部14が、そのような衝撃を吸収して第1濾過部12の破壊を効果的に防止することができる。さらに、フィルタ本体16の最外周に配置した第2濾過部14は、第1濾過部12に対する前濾過層として機能する。他方、フィルタ本体16の最内周に配置した第2濾過部14は、第1濾過部12から脱落するガラス繊維の断片を捕捉する機能を有する。
【0032】
また、第1濾過部12が一巻き以上の第1濾材シート24から形成されるとともに、第2濾過部14が一巻き以上の第2濾材シート26から形成され、第1濾材シート24の一巻きずつの間に第2濾材シート26の一部分が介在する構成を採用すれば、長尺に連続する第2濾材シート26を成形用の巻き軸に連続的に巻き付けながら、第2濾材シート26の所定の巻き付け位置で第1濾材シート24を挿入するという、比較的簡単な連続作業により、フィルタ本体16を形成できる利点がある。このとき、熱融着性複合樹脂繊維不織布からなる第2濾材シート26に適当な圧力を加えながら加熱する熱融着工程も、比較的容易に実施できる。
【0033】
図5〜図7は、本発明の第2の実施形態による筒形フィルタ30を概略で示す。筒形フィルタ30は、熱融着性複合樹脂繊維を含まない一般的な不織布濾材を、有孔筒状壁を有するコアに巻き付けてなるコア付きの構成を有する点以外は、前述した筒形フィルタ10と実質的に同一の構成を有する。したがって、筒形フィルタ10の構成要素に対応する構成要素には、共通の参照符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0034】
筒形フィルタ30は、各々がガラス繊維を主成分とするとともに互いに異なる内径を有する複数(図では2つ)の筒状の第1濾過部12と、各々が樹脂繊維を主成分とするとともに互いに異なる内径を有する複数(図では3つ)の筒状の第2濾過部14とを、適宜に組み合わせて構成される中空筒形のフィルタ本体32を備える。フィルタ本体32の中心には、有孔筒状壁34を有する有孔コア部材36が設置され、有孔コア部材36の内側に、軸線方向へ貫通する中空部18が形成される。
【0035】
複数の第1濾過部12と複数の第2濾過部14とは、互いに径方向へ交互にかつ同心状に重ねて配置される。図示実施形態では、フィルタ本体32の最外周に、最大内径を有する1つの第2濾過部14が配置され、フィルタ本体32の最内周に、最小内径を有する1つの第2濾過部14が配置され、フィルタ本体32の中間周に、中間内径を有する1つの第2濾過部14が配置されている。そして、最外周及び中間周の第2濾過部14の間に、1つの大径の第1濾過部12が挟持されるとともに、最内周及び中間周の第2濾過部14の間に、1つの小径の第1濾過部12が挟持されている。
【0036】
筒形フィルタ30はさらに、複数の第1濾過部12及び複数の第2濾過部14の軸線方向両端12a、14a(つまりフィルタ本体32の軸線方向両端)に固定的に設置される一対のシール部材20を備える。各シール部材20は、中心開口22を有する板状の部材であり、第1濾過部12及び第2濾過部14の軸線方向両端12a、14aに、接着、熱溶着等の手段によって固定される。
【0037】
図9に示すように、フィルタ本体32は、各第1濾過部12が、ガラス繊維を含有する第1濾材シート24を一巻き以上筒状に巻回して形成され、各第2濾過部14が、樹脂繊維を含有する第2濾材シート26を一巻き以上筒状に巻回して形成される。このとき、図10に示すように、長尺に連続する所定幅のメッシュ状の補強材38を用意し、補強材38の上に、それぞれが所定幅及び所定長さを有する複数の第1濾材シート24及び複数の第2濾材シート26を所定順序で並べて配置して、それら第1濾材シート24及び第2濾材シート26を順次巻き込みながら、補強材38を有孔コア部材36に連続的に巻き付けることにより、フィルタ本体32を作製できる。この方法によれば、第1濾過部12を構成する第1濾材シート24の一巻きずつの間に、第1濾材シート24を機械的に支持する補強材38が介在するとともに、第2濾過部14を構成する第2濾材シート26の一巻きずつの間に、第2濾材シート26を機械的に支持する補強材38が介在することになる。
【0038】
なお、図10に示す作製方法において、隣り合う第1濾材シート24と第2濾材シート26とは、図示のように互いに一部重なり合っていても良いし、両者間に隙間を空けて配置されていても良い。また、上記したフィルタ本体32の作製方法を適宜改変して、第1濾材シート24と第2濾材シート26とのいずれか一方のみに、補強材38を用いることもできる。或いは、補強材38を用いることなく、前述した筒形フィルタ10のフィルタ本体16と同様の方法により、フィルタ本体32を作製することもできる。
【0039】
第1濾過部12を構成する第1濾材シート24は、筒形フィルタ10で用いた第1濾材シート24と同様の構成を有するものであり、前述した種々のパラメータを有するガラス繊維不織布から形成できる。他方、第2濾過部14を構成する第2濾材シート26は、熱融着性複合樹脂繊維に代えて、(1)ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、ナイロン(登録商標)等の熱可塑性ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、アクリル、ポリスチレン、ポリフェニレンスルファイド、フッ素樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂材料、(2)ポリウレタン等の熱硬化性樹脂材料、(3)レーヨン、アセテート、ウッドパルプ、セルロース等の天然素材や半合成素材のうち、適宜選択した材料からなる繊維を含有する樹脂繊維不織布から形成できる。この樹脂繊維不織布には、上記材料のうち2以上の材料を混入させても良い。
【0040】
第2濾材シート26は、単位面積当たりの通気度が、例えば3CFM/ft以上600CFM/ft以下、或いは例えば5CFM/ft以上420CFM/ft以下の樹脂繊維不織布から形成できる。また、第2濾材シート26は、厚み方向へ55kPaの圧力を印加したときに例えば0.3mm以上の平均厚みを有する樹脂繊維不織布から形成できる。
【0041】
シール部材20は、筒形フィルタ10のシール部材20と同様の材料から形成できる。特に、シール部材20がフィルタ本体32に熱溶着により固定される構成においては、筒形フィルタ10のシール部材20と同様に、フィルタ本体32に対するシール部材20の熱溶着による固定力は、第2濾過部14に対する固定力が第1濾過部12に対する固定力よりも有意に高いものとなる。したがってシール部材20は、主として第2濾過部14に対する固定力により、振動や流体圧力変化等の衝撃に抗して、フィルタ本体32に密接して固定された状態を維持する。
【0042】
有孔コア部材36は、第2濾過部14を構成する第2濾材シート26の材料と同様の材料から形成できる。或いは、銅、鉄、ニッケル、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属材料から、有孔コア部材36を形成することもできる。いずれの材料においても、有孔コア部材36は、補強材38と共に第1及び第2濾材シート24、26を巻き付けるときの圧力によって容易には変形しない剛性を有することが望ましい。また、有孔筒状壁34が有する孔の寸法、形状、個数等は、フィルタ本体32の濾過能力に影響を及ぼさない(つまり濾過対象流体の流量及び圧力の損失を生じない)ものであることが望ましい。
【0043】
補強材38は、第2濾過部14を構成する第2濾材シート26の材料と同様の材料から形成できる。或いは、ケブラー(登録商標)やノーメックス(登録商標)として知られるアラミド繊維から、補強材38を形成することもできる。いずれの材料においても、補強材38は、メッシュ構造の織布として形成でき、その開口面積及び開口率は、フィルタ本体32の濾過能力に影響を及ぼさない(つまり濾過対象流体の流量及び圧力の損失を生じない)ものであることが望ましく、例えば2メッシュ/インチ以上30メッシュ/インチ以下の開口率のものを採用できる。また、熱融着性複合樹脂繊維不織布のような、成形後に自己結着により剛性を確保できる材料を用いないフィルタ本体32においては、濾過工程中の対象流体の圧力によるフィルタ本体32の変形を可及的に防止するべく、第1及び第2濾材シート24、26を有孔コア部材36にきつく巻き付けることが要求されており、したがって補強材38は、そのような巻付け工程で印加される張力によって容易には破断しないだけの引張り強さを有することが望ましい。
【0044】
上記構成を有する筒形フィルタ30は、前述した筒形フィルタ10と実質的に同一のメカニズムにより、粒子捕捉性能及び分級濾過能力の向上という、同様の効果を奏するものである。また、第1及び第2濾材シート24、26の一巻きずつの間に補強材38が介在する構成を採用すれば、複数の第1及び第2濾材シート24、24を巻き込みながら長尺に連続する補強材38を有孔コア部材36に連続的に巻き付けるという、比較的簡単な連続作業により、フィルタ本体32を形成できる利点がある。なお、筒形フィルタ30の粒子捕捉性能及び分級濾過能力については、さらに後述する。
【0045】
図11及び図12は、本発明の第3の実施形態による筒形フィルタ40を概略で示す。筒形フィルタ40は、別体のハウジングに収納されて使用されるカートリッジタイプのフィルタではなく、それ自体に一体成形ケースを有するいわゆるカプセルタイプのフィルタである点以外は、前述した筒形フィルタ30と実質的に同一の構成を有する。したがって、筒形フィルタ30の構成要素に対応する構成要素には、共通の参照符号を付して、その説明を適宜省略する。なお、カプセルタイプのフィルタは一般に、目詰まり等が生じたときに全体を新規なものに交換可能な構成を有する。
【0046】
筒形フィルタ40は、各々がガラス繊維を主成分とするとともに互いに異なる内径を有する複数(図では2つ)の筒状の第1濾過部12と、各々が樹脂繊維を主成分とするとともに互いに異なる内径を有する複数(図では3つ)の筒状の第2濾過部14とを、適宜に組み合わせて構成される中空筒形のフィルタ本体32と、フィルタ本体32の中心に設置される有孔コア部材36とを備える。図示省略するが、フィルタ本体32は、筒形フィルタ30のフィルタ本体32と同様に、複数の第1及び第2濾材シート24、26を順次巻き込みながら、補強材38を有孔コア部材36に連続的に巻き付けることにより作製される。
【0047】
筒形フィルタ40はさらに、複数の第1濾過部12及び複数の第2濾過部14の軸線方向一端(図で上端)に固定的に設置されるシール部材42と、複数の第1濾過部12及び複数の第2濾過部14の軸線方向他端(図で下端)に固定的に設置される二次側ケース部材44と、フィルタ本体32を収容して二次側ケース部材44に固定される一次側ケース部材46とを備える。シール部材42は、中心開口を有しない板状の部材であり、第1濾過部12及び第2濾過部14の軸線方向一端に、接着、熱溶着等の手段によって固定される。二次側ケース部材44は、濾過対象流体の導出口48を有する蓋状の部材であり、第1濾過部12及び第2濾過部14の軸線方向他端に、接着、熱溶着等の手段によって固定される。一次側ケース部材46は、濾過対象流体の導入口50を有するカップ状の部材であり、二次側ケース部材44に、接着、熱溶着等の手段によって固定される。
【0048】
筒形フィルタ40においては、濾過対象の流体は、導入口50から一次側ケース部材46とフィルタ本体32との間の空間に導入され、フィルタ本体32の外周面から第1及び第2濾過部12、14を通過してフィルタ本体32の中空部18に流れ込み、二次側ケース部材44の導出口48から外部に導出される。シール部材42及び二次側ケース部材44は、流体の全てが第1及び第2濾過部12、14を確実に通過するように、第1及び第2濾過部12、14の軸線方向両端を封止する。
【0049】
上記構成を有する筒形フィルタ40も、前述した筒形フィルタ10と実質的に同一のメカニズムにより、粒子捕捉性能及び分級濾過能力の向上という、同様の効果を奏するものである。
【0050】
本発明に係る筒形フィルタ(例えば筒形フィルタ10、30、40)は、例えば、0.1μm以上10μm以下の粒子を捕捉することが要求される精密濾過の用途に使用できる。精密濾過の用途としては、例えば、半導体の製造工程において表面研磨に用いられるCMP(Chemical Mechanical Planarization)スラリーの製造を挙げることができる。CMPスラリーは、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、酸化セリウム等の粒子が薬液中に分散している研磨液であって、微小粒子による機械的研磨と薬液による化学的研磨との両機能を併せ持つ。薬液中に規格外の粗大粒子が存在すると、ウエハの研磨中にウエハ表面を損傷する恐れがあるので、CMPスラリーの製造工程においては、そのような粗大粒子を確実に除去する粒子捕捉性能と、研磨に必要な粒子を薬液中に十分に残存させる分級濾過能力とを有する高性能フィルタを用いることが要求されており、近年その要求レベルが高まっている。本発明に係る筒形フィルタ(例えば筒形フィルタ10、30、40)は、このような要求に答え得るものである。なお、本発明に係る筒形フィルタの他の用途として、カラーレジスト、インク、飲料、食品加工等の用途を挙げることができる。
【実施例】
【0051】
本発明に係る筒形フィルタの効果を一層明確にするべく、発明者が行った実験の内容及びその結果を、図13及び図14を参照して以下に説明する。
【0052】
〔実験1〕
実施例1(E1)として、第1実施形態による筒形フィルタ10を、下記の構成で用意した。ポリプロピレン製の第1の繊維材料とポリエチレン製の第2の繊維材料とを含有する芯鞘型の熱融着性複合樹脂繊維からなる第2濾材シート26を、熱及び張力を加えながら成形用の巻き軸に連続的に巻き付けるとともに、第2濾材シート26の間隔を空けた2箇所の巻き付け位置で、内側の一巻きと外側の一巻きとの間に、所定寸法の第1濾材シート24(平均流量孔径3.0μm、平均厚み0.63mmのシートを2枚重ねた厚み約1.26mmのもの)をそれぞれ挿入し、巻き軸を除去することにより、フィルタ本体マスターを作製した。このフィルタ本体マスターを、長さ約5cmに切断してフィルタ本体16を作製し、フィルタ本体16の軸線方向両端に、ポリプロピレン製のシール部材20を熱溶着により固定して、筒状フィルタ10を作製した。1つの第1濾過部12における第1濾材シート24の巻回数は、内側の小径の第1濾過部12において約8回、外側の大径の第1濾過部12において約6回であった。また、それら第1濾過部12の間の第2濾過部14の厚みは、4.0mmであり、フィルタ本体16の内径は27mm、外径は64mmであった。
【0053】
比較例1(CE1)として、実施例1における第1濾過部12と同一の構成の第1濾過部を、フィルタ本体に1つのみ備えた筒形フィルタを用意した。この第1濾過部における第1濾材シートの巻回数は、約7回であった。
【0054】
比較例2(CE2)として、実施例1における第1濾過部12に対して厚みのみが異なる第1濾過部を、フィルタ本体に1つのみ備えた筒形フィルタを用意した。この第1濾過部における第1濾材シートの厚みは、4枚重ねにより約2.52mmであり、その巻回数は約14回であった。
【0055】
実施例2として、実施例1における第1濾材シート24とは構成が異なる第1濾材シート24を用いた点以外は、実施例1と実質的同一構造の筒形フィルタ10を用意した。この第1濾材シート24は、平均流量孔径2.0μm、平均厚み0.76mmのシートを2枚重ねた厚み約1.52mmのものであり、1つの第1濾過部12における第1濾材シート24の巻回数は、内側の小径の第1濾過部12において約4.5回、外側の大径の第1濾過部12において約3.5回であった。
【0056】
実施例1及び2並びに比較例1及び2に対し、平均粒径D50=0.2〜0.4μmのヒュームドシリカを市水(0.1μm濾過水、25℃)に濃度100ppm/水で分散させた液体を、流量100mL/minで3分間通液し、濾過後の液体を採取して、各筒型フィルタの粒子捕捉性能及び分級濾過能力を検証した。粒子捕捉性能の検証には、対象液体に含有される濾過前後の粒子数を粒径ごとにカウントして得られる除粒子性能(LRV:対数減少値)を用いた。検証結果を図13に示す。
【0057】
図13から理解されるように、E1の筒形フィルタ10は、第1濾過部を1つのみ有するCE1の筒形フィルタよりも、全ての粒径において優れた粒子捕捉性能を示した。また、第1濾過部の厚みを2倍にしたCE2の筒形フィルタは、CE1の筒形フィルタよりも粒子捕捉性能が劣っていた。これにより、1つの第1濾過部の厚みを増加させる代わりに、複数の第1濾過部12を設けてそれら第1濾過部12の間に第2濾過部14を介在させる構成を採用することで、筒型フィルタ10の粒子捕捉性能が向上することが証明された。なお、E2については、第1濾材シート24の素材がE1並びにCE1及びCE2と異なるので、図13には示していないが、E1と同等の粒子捕捉性能を有することが確認された。さらに、必要な粒子を残留させる分級濾過能力については、E1及びE2並びにCE1及びCE2の間で有意差は認められず、いずれも所要水準にあることが確認された。
【0058】
〔実験2〕
実施例3(E3)として、第2実施形態による筒形フィルタ30を、下記の構成で用意した。ポリプロピレン製の有孔コア部材36(内径28mm、外径33mm)に、ポリプロピレン製の補強材38(開口率12メッシュ/インチ、厚み0.8mm)の先端を熱溶着し、補強材38の有孔コア部材36に面する側の表面に、〔A〕ポリプロピレン不織布からなる第2濾材シート26(通気度150CFM/ft、平均厚み0.4mmのシートを2枚重ねた厚み約0.8mmのもの。長さ40cm。)、〔B〕ガラス繊維不織布からなる第1濾材シート24(平均流量孔径2.0μm、平均厚み0.76mmのシートを2枚重ねた厚み約1.52mmのもの。長さ30cm。)、及び〔C〕ガラス繊維不織布からなる第1濾材シート24(平均流量孔径3.0μm、平均厚み0.63mmのシートを2枚重ねた厚み約1.26mmのもの。長さ50cm。)を、内側からA−(重なり長さ12cm)−B−(重なり長さ14cm)−A−(重なり長さ18cm)−C−(重なり長さ20cm)−Aの順で部分的に重ねて配置し、補強材38に張力を加えてそれら第1及び第2濾材シート24、26を巻き込みながら有孔コア部材36に巻き付け、補強材38の終端を熱溶着することにより、フィルタ本体マスターを作製した。このフィルタ本体マスターを、長さ約5cmに切断してフィルタ本体32を作製し、フィルタ本体32の軸線方向両端に、ポリプロピレン製のシール部材20を熱溶着により固定して、筒状フィルタ30を作製した。1つの第1濾過部12における第1濾材シート24の巻回数は、内側の小径の第1濾過部12(B)において約2回、外側の大径の第1濾過部12(C)において約6回であった。また、それら第1濾過部12の間の第2濾過部14の厚みは、2.4mmであり、フィルタ本体32の外径は64mmであった。
【0059】
実施例4(E4)として、実施例3における2つの第1濾過部12を、いずれも同一の第1濾材シート24(平均流量孔径3.0μm、平均厚み0.63mmのシートを2枚重ねた厚み約1.26mmのもの)から形成した点以外は、実施例3と実質的同一構造の筒形フィルタ30を用意した。1つの第1濾過部12における第1濾材シート24の巻回数は、内側の小径の第1濾過部12において約7回、外側の大径の第1濾過部12において約6回であった。また、それら第1濾過部12の間の第2濾過部14の厚みは、2.3mmであり、フィルタ本体32の外径は65mmであった。
【0060】
比較例3(CE3)として、実施例3における外側の第1濾過部12(C)と同一の構成の第1濾過部を、フィルタ本体に1つのみ備えた筒形フィルタを用意した。この第1濾過部における第1濾材シートの巻回数は、約6.5回であった。また、フィルタ本体の外径は63mmであった。
【0061】
比較例4(CE4)として、実施例3における内側の第1濾過部12(B)と同一の構成の第1濾過部を、フィルタ本体に1つのみ備えた筒形フィルタを用意した。この第1濾過部における第1濾材シートの巻回数は、約3.5回であった。また、フィルタ本体の外径は64mmであった。
【0062】
実施例3及び4並びに比較例3及び4に対し、実験1と同一の対象液体を同一の条件下で通液し、濾過後の液体を採取して、各筒型フィルタの粒子捕捉性能及び分級濾過能力を検証した。粒子捕捉性能の検証には、対象液体に含有される濾過前後の粒子数を粒径ごとにカウントして得られる除粒子性能(LRV:対数減少値)を用いた。検証結果を図14に示す。
【0063】
図14から理解されるように、E3及びE4の筒形フィルタ30は、第1濾過部を1つのみ有するCE3及びCE4の筒形フィルタよりも、全ての粒径において優れた粒子捕捉性能を示した。また、必要な粒子を残留させる分級濾過能力については、E3及びE4並びにCE3及びCE4の間で有意差は認められず、いずれも所要水準にあることが確認された。
【符号の説明】
【0064】
10、30、40 筒形フィルタ
12 第1濾過部
14 第2濾過部
16、32 フィルタ本体
20、42 シール部材
24 第1濾材シート
26 第2濾材シート
36 有孔コア部材
38 補強材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々がガラス繊維を主成分とするとともに互いに異なる内径を有する複数の筒状の第1濾過部と、
前記複数の第1濾過部に対し径方向へ交互に同心状に配置され、各々が樹脂繊維を主成分とするとともに互いに異なる内径を有する複数の筒状の第2濾過部と、
前記複数の第1濾過部及び前記複数の第2濾過部の軸線方向両端に固定的に設置される一対のシール部材と、
を具備する筒形フィルタ。
【請求項2】
前記複数の第1濾過部の各々が、前記ガラス繊維を含有する第1濾材シートを一巻き以上筒状に巻回して形成されている、請求項1に記載の筒形フィルタ。
【請求項3】
前記第1濾材シートの一巻きずつの間に、前記第1濾材シートを機械的に支持するメッシュ状の補強材が介在する、請求項2に記載の筒形フィルタ。
【請求項4】
前記複数の第2濾過部の各々が、前記樹脂繊維を含有する第2濾材シートを一巻き以上筒状に巻回して形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の筒形フィルタ。
【請求項5】
前記第2濾材シートの一巻きずつの間に、前記第2濾材シートを機械的に支持するメッシュ状の補強材が介在する、請求項4に記載の筒形フィルタ。
【請求項6】
前記複数の第1濾過部と前記複数の第2濾過部とを備えた筒形のフィルタ本体の中心に設置される有孔コア部材をさらに具備する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の筒形フィルタ。
【請求項7】
前記複数の第1濾過部の各々が、前記ガラス繊維を含有する第1濾材シートを一巻き以上筒状に巻回して形成され、前記複数の第2濾過部の各々が、前記樹脂繊維を含有する第2濾材シートを一巻き以上筒状に巻回して形成され、前記第1濾材シートの一巻きずつの間に、前記第2濾材シートの一部分が介在する、請求項1に記載の筒形フィルタ。
【請求項8】
前記複数の第2濾過部の各々は、熱融着性複合樹脂繊維を含有する、請求項7に記載の筒形フィルタ。
【請求項9】
前記複数の第1濾過部の各々は、熱硬化性樹脂バインダーを含有しない、請求項1〜8のいずれか1項に記載の筒形フィルタ。
【請求項10】
前記複数の第1濾過部と前記複数の第2濾過部とを備えた筒形のフィルタ本体の最外周に、1つの前記第2濾過部が配置される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の筒形フィルタ。
【請求項11】
前記複数の第1濾過部と前記複数の第2濾過部とを備えた筒形のフィルタ本体の最内周に、1つの前記第2濾過部が配置される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の筒形フィルタ。
【請求項12】
前記複数の第2濾過部と前記一対のシール部材とが互いに熱溶着されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の筒形フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−253419(P2010−253419A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108241(P2009−108241)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】