説明

筒状フィルタ、及び集塵装置

【課題】 リテーナを不要とする集塵装置のフィルタ、及び前記フィルタを備えた集塵装置を提供する。
【解決手段】 上記課題を解決するためのフィルタは、排ガス導入空間20に配置される煤塵捕集面から導入した排ガスを清浄化して清浄ガス放出空間22に配置される清浄ガス放出面から放出するフィルタであって、触媒14を担持させて吹き抜け型の筒状に形成した濾布12と、前記排ガス導入空間20から前記清浄ガス放出空間22へのガス流通経路を備える隔壁18a,18bに、前記筒状の濾布12を固定して前記ガス流通経路を閉塞するための固定部16とを備え、前記筒状の濾布の内側面に多孔質膜26を貼付し、筒の内側面11aを煤塵捕集面とし、外側面11bを清浄ガス放出面とする構成としたことを特徴とする筒状フィルタ10である。また、集塵装置は、前記筒状フィルタ10を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴミ焼却施設等の工業施設に備えられる集塵装置のフィルタ、及び前記フィルタを備えた集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴミ焼却施設等では主として、排ガスの煤塵を除去する集塵装置に、排ガス中に含まれる窒素酸化物(以下、NOxと記す)やダイオキシン(以下、DXNと記す)類等を還元・酸化分解除去するための排ガス処理剤(以下、触媒と記す)を担持させたバグフィルタを用いている。
【0003】
バグフィルタは袋状に形成されたフィルタであって、図4に示すように、排ガス導入空間(以下、排ガス空間と記す)6と、清浄ガス放出空間(以下、清浄空間と記す)7とを隔てる隔壁である床部4に設けられた孔に固定配置されて使用される。
【0004】
バグフィルタ2の配置は一般的に、清浄空間7の下側に配置された排ガス空間6に、袋状のフィルタ部を垂下させることによって為される。この状態で前記排ガス空間6側から前記清浄空間7側へ流れる気流を利用して排ガスの清浄化を図る(以下、排ガス処理と記す)。しかしながら、バグフィルタ2自体は可撓性を有するため、単にバグフィルタ2を配置しただけでは、排ガス処理の際に、バグフィルタ2の内外に生じる圧力差によって袋状のフィルタが潰れてしまい、フィルタとして機能しなくなってしまう。このため、バグフィルタ2には通常、リテーナ3と呼ばれる籠状の形状保持部材が内部に備えられ、排ガス処理の際に袋状のフィルタが潰れてしまうことを防止している。そして、バグフィルタ2の外側面にて煤塵を捕集した後は、マニホールド5から分岐したパルス配管5aから、バグフィルタ2の内側面へ間欠的な圧縮空気(以下、エアジェットパルス:パルスエアと記す)を吹き付けて、バグフィルタ2の清浄化を図る(以下、逆洗と記す)。
【0005】
上記のように使用されるバグフィルタ2は、排ガス処理時や逆洗時にバグフィルタ2を構成する濾布と、リテーナ3との間で、接触・擦れを伴うことにより、濾布が局部的に破損してしまい、元来のバグフィルタの寿命を残したまま、交換を余儀なくされることがある。
このような現状を鑑み、濾布が局部的に破損することを防止し、フィルタの長寿命化を図ったバグフィルタが特許文献1に開示されている。
【0006】
特許文献1に開示されているバグフィルタは、バグフィルタ内部に備えるリテーナの形状と、その使用方法に特徴がある。詳細すると、リテーナは、バグフィルタの長手方向に沿った螺旋形状の部材と、前記螺旋形状の部材の形状を保持するための補助部材とから構成する。そして前述した螺旋形状のリテーナをバグフィルタに備え、一定期間毎にフィルタ、又はリテーナを回転させて使用するのである。
【0007】
前記螺旋形状のリテーナを上記のような方法で使用することにより、濾布とリテーナとの接触箇所を一定期間毎に変えることができ、短期間に濾布の一部が破損してしまうということを防止することができる。
【特許文献1】特開2004−9001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような螺旋形状のリテーナを有するバグフィルタによれば、確かに濾布が短期間で局部的に破損する可能性は低下すると考えられる。しかしながら、依然としてリテーナと濾布との接触部は存在するため、接触・擦れによる濾布の破損の原因自体は払拭しきれていない。また、フィルタやリテーナを一定期間毎に回転させるという労力が必要となると共に、集塵装置はその都度停止させる必要があり、排ガス処理の効率も低下する。
【0009】
本発明は、集塵装置の概念を一新し、従来と同等、あるいはそれ以上のフィルタ面積を維持しつつ、濾布の局部破損の原因となるリテーナを不要とするフィルタと、当該フィルタを備えた集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るフィルタは、排ガス導入空間に配置される煤塵捕集面から導入した排ガスを清浄化して清浄ガス放出空間に配置される清浄ガス放出面から放出するためのフィルタであって、排ガス処理剤を担持させて吹き抜け型の筒状に形成した濾布と、前記排ガス導入空間から前記清浄ガス放出空間へのガス流通経路を備える隔壁に、前記筒状の濾布を固定して前記ガス流通経路を閉塞するための固定部とを備え、前記筒状に形成した濾布の内側面に、捕集する煤塵の平均粒径よりも孔径が小さな孔を有する多孔質膜を貼付し、筒の、内側面を前記煤塵捕集面とし、外側面を前記清浄ガス放出面とする構成としたことを特徴とした筒状フィルタである。
また、上記構成の筒状フィルタでは、前記排ガス処理剤を酸化チタンとすると良い。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る集塵装置は、上記構成から成る筒状フィルタのうちのいずれか1つの筒状フィルタを、排ガス導入空間と清浄ガス放出空間とを隔てる固定部に備えることを特徴とした。
【0012】
また、排ガス導入空間と清浄ガス放出空間とを隔てる固定部に備えられる上記いずれか1つの構成から成る筒状フィルタと、前記排ガス導入空間に備えられ、前記筒状フィルタの煤塵捕集面に対して直に圧縮空気を噴出するパルス配管と、を有することを特徴とする集塵装置であっても良い。
【発明の効果】
【0013】
吹き抜け型の筒状に形成した濾布と、排ガス導入空間から清浄ガス放出空間へのガス流通経路を備える隔壁に、前記筒状の濾布を固定して前記ガス流通経路を閉塞するための固定部とを備え、前記筒状に形成した濾布の内側面に、捕集する煤塵の平均粒径よりも孔径が小さな孔を有する多孔質膜を貼付し、筒の、内側面を前記煤塵捕集面とし、外側面を前記清浄ガス放出面とする構成としたことにより、筒状フィルタ使用時には、当該筒状フィルタの内側から外側へガスが流れるため、筒の内側と外側との大気圧を比較すると、内側の方が高くなる。このため、上記構成の筒状フィルタは外側へ膨張しようとする力がかかった状態(拡張状態)で使用されることになり、形状維持のためのリテーナが不要となる。よって、接触・擦れによる濾布と多孔質膜の破損が無くなり、フィルタと多孔質膜の寿命を延ばすことができる。
【0014】
また、筒状に形成した濾布の内面に、捕集する煤塵の平均粒径よりも口径が小さな孔を有する多孔質膜を貼付する構成としたことにより、煤塵が多孔質膜表面に付着・堆積することとなるため、煤塵の払い落としが容易となる。また、濾布に入り込む煤塵を防ぐことができるため、濾布の目詰まりを防止することができる。また、濾布の目詰まりが少なく、煤塵の払い落としも容易となるため、煤塵の払い落としをパルスエアで行う場合には、低いパルス圧力で良好な煤塵払い落とし効果を得ることができる。このため、濾布に担持させた触媒がパルスエアの圧力で脱落する可能性が低い。
【0015】
また、前記排ガス処理剤として酸化チタンを用いることにより、排ガス中に含まれるNOxやDXN類を効率良く還元・酸化分解除去、無害化することができる。
また、上述した筒状フィルタを備える構成とした集塵装置では、フィルタにリテーナを使用する必要が無くなり、フィルタと多孔質膜の長寿命化を図ることができる。また、多孔質膜を筒の内側に貼付したフィルタを使用した場合には、煤塵の払い落としが容易となり、フィルタの目詰まり防止も図ることができるため、メンテナンス性が向上する。さらに、いわゆる触媒を酸化チタンとすることで、NOxやDXN類の還元・酸化分解除去、無害化の効率化を図ることができる。
【0016】
また、前記筒状フィルタの煤塵捕集面に対して直にパルスエアを噴出するパルス配管を備える構成とした場合には、煤塵捕集面に直接パルスエアを吹きつけることとなるため、従来よりも低いパルス圧力で従来どおり、または従来よりも優れた煤塵払い落とし効果を得ることができる。また、パルス圧力を低く設定することができるため、フィルタに担持させた触媒も脱落しづらい。なお特に、多孔質膜を貼付した筒状フィルタを備えた場合に顕著な効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の筒状フィルタ、及び集塵装置に係る実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明に係る一部の実施形態に過ぎず、本発明の技術的範囲は、その主要部を変えない限りにおける様々な形態を含むものとする。
【0018】
まず、図1、図2を参照して本発明の筒状フィルタに係る実施形態について説明する。
本実施形態の筒状フィルタ10は、排ガス空間20と清浄空間22との間に濾布12を配置することで排ガスの清浄化を図るものであり、吹き抜け型の筒状に形成した濾布12と、前記排ガス空間20から前記清浄空間22へのガス流通経路を備える隔壁18a,18bに、前記筒状の濾布12を固定して、前記ガス流通経路を閉塞するための固定部16とを基本的な構成としている。
【0019】
前記濾布12は、ガラス繊維やポリ四フッ化エチレン(PTFE)等によって構成される公知のもので良く織布、不織布を問わない。また、本実施形態に採用する濾布12は、内部に触媒14を担持させたものであることが望ましく、前記触媒14としては、例えば酸化チタン(TiO)を挙げることができる。このような構成の濾布12を用いることにより、排ガス中に含まれるNOxやDXN類の還元・酸化分解除去、無害化を効率良く行うことが可能となる。
【0020】
触媒14を濾布12へ担持させる方法としては、次に挙げる公知技術等によれば良い。第1の方法としては、前記触媒を混合した懸濁液(以下、スラリという)に前記濾布を浸して前記スラリを濾布に含浸させる。そして前記スラリを含浸させた濾布をスラリから引き上げ、余剰スラリを除去して乾燥させるというものである(例えば、特開2004−024937号公報参照)。第2の方法としては、前記スラリを直接濾布に噴射して濾布にスラリを絡めて乾燥させるというものである(例えば、特開2000−296304号公報参照)。なお、この他の方法であっても、濾布に触媒を担持させることができれば良い。
【0021】
前記固定部16は、リング状の金具を前記筒状に形成した濾布12の長手方向における2箇所、例えば両端部に備えるような構成として、前記金具を前記隔壁18a,18bに固定し、前記ガス流通経路を濾布12によって閉塞するようにすると良い。また、濾布を固定するための金具等は前記隔壁18a,18bに備え、前記濾布12に定めた固定部(目印等)を前記隔壁18a,18bに備えた金具で挟持して固定することで、前記ガス流通経路を閉塞する構成としても良い。
【0022】
上記のように形成した本実施形態の筒状フィルタ10では、筒状に形成した濾布2の内側面に多孔質膜(図1、図2においては孔を示していない)26を貼付する構成とした。そして、筒の内側面11aを煤塵捕集面として排ガス空間20へ面して配置するようにし、筒の外側面11bを清浄ガス放出面として清浄空間22に面して配置する構成とした。
【0023】
前記多孔質膜26に形成する孔の孔径は、捕集する煤塵の平均粒径(煤塵の大きさ)よりも小さなものとすることが望ましい。また、さらに好適には、捕集を前提とする煤塵の最小粒径よりも小さな孔径の孔を備えるようにすると良い。なお、多孔質膜の材質としては、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)等、公知のもので良い。
【0024】
このような構成から成る筒状フィルタ10によれば、排ガスは、図1に白抜きの矢印で示したように、筒状フィルタ10の内側面11aから外側面11bへと抜けることで、清浄化が図られることとなる。このため、ガスの導入側である内側面11aが配置される排ガス空間20の大気圧は、ガスの放出側である外側面11bが配置される清浄空間22の大気圧よりも高くなる。よって、筒状フィルタ10には外側面11b側へ拡張するような力がかかり、使用時において筒型形状を保持することができる。従って、形状保持部材としてのリテーナが不要となり、濾布,多孔質膜とリテーナとの接触・擦れが無くなり、フィルタの長寿命化を図ることができる。
【0025】
また、多孔質膜26を濾布12の内側面に備える筒状フィルタとすることで、煤塵が濾布12の内部に入り込まず、多孔質膜26の表面に付着・堆積することとなるため、煤塵の払い落としが容易となる。
【0026】
また、図2に示すように、煤塵24の払い落としを、パルスエア30を放出するパルス配管28aを用いて行う場合には、煤塵24が付着・堆積した多孔質膜26へパルス配管28aに適当(適度な間隔)に開けられた孔から直接パルスエア30を吹き付ける構成を採ることができるため、従来よりも低いパルス圧力(エア圧力)で煤塵24を良好に払い落とすことができる。また従来、濾布12内部に触媒を担持させたフィルタでは、フィルタ洗浄時のパルスエアの圧力によって担持させた触媒が脱落してしまうという問題もあった。本実施形態の筒状フィルタ10aでは、上述のように、パルス圧力の低いパルスエア30を使用するため、フィルタ洗浄時に触媒が脱落してしまうという虞が少ない。
【0027】
また、上記構成から成る筒状フィルタ10では、内側面11aに付着・堆積した煤塵24を払い落とした際、前記煤塵24は筒状フィルタ10の下方へ落ちることとなり、後述する集塵装置に取り付けた場合には、ホッパから煤塵を排出することができるようになる。このような構成は、濾布12の形状を筒状としたことに起因し、集塵装置のフィルタとして想起されるバグフィルタでは、煤塵がフィルタ内部に蓄積されてしまう。このため、バグフィルタでは本実施形態の筒状フィルタ10のように、内側面から排ガスを導入する構成を採ることはできない。
【0028】
さらに、上記構成から成る筒状フィルタ10では、フィルタ回収の際に問題となる清浄空間22等への煤塵24の飛散についても、問題を解消することができる。すなわち、上記構成の筒状フィルタ10では、筒の内側面11aを煤塵捕集面としているために、回収時に当該煤塵捕集面が外部(清浄空間22等)へ晒される虞が無い。このため、筒の上下を閉塞してしまえば、フィルタ回収時に煤塵24が舞い散るということも無く、清浄空間22等に前記煤塵24が入り込む虞も無く、作業者が前記煤塵24を吸引してしまう虞も無い。
【0029】
次に、本発明の集塵装置に係る実施の形態について、図3を参照して説明する。本実施形態の集塵装置50は、上記筒状フィルタ10をフィルタとして備える集塵装置である。
【0030】
本実施形態の集塵装置50は、大別すると、排ガス空間20と、清浄空間22と、前記排ガス空間20から前記清浄空間22へのガス流通経路を隔てる筒状フィルタ10と、前記筒状フィルタ10を洗浄するためのパルスエアを噴出するパルス配管28aとを基本的な構成要素としている。以下、詳細な構成について説明する。なお、図3では解りづらいが、図中の筒状フィルタ10は、詳細として示したような吹き抜け型の筒状に形成したフィルタを採用している。
【0031】
前記排ガス空間20と前記清浄空間22との境界には、ガス流通経路を形成した隔壁18a,18bが備えられている。本実施形態の集塵装置50の場合、清浄空間22の上下に排ガス空間20を備え、前記清浄空間22の上下に隔壁18a,18bを設ける構成としている。そして、前記清浄空間22の上下に設けた隔壁18a,18bに、それぞれ垂直方向に対応する同一箇所に開口部を設けてガス流通経路を形成している。
【0032】
このように形成した隔壁18a,18bの開口部に対して、上述した筒状フィルタ10の長手方向の2箇所を、固定部(不図示)を介して固定することで、排ガス空間20から清浄空間22へのガス流通経路は、筒状フィルタ10によって閉塞されることとなる。なお、このような構成により、前記筒状フィルタ10を介して清浄空間22の上下に備えた排ガス空間20は繋がることとなる。
【0033】
本実施形態の集塵装置50では、清浄空間22の上側の排ガス空間20から排ガスを導入するようにしており、下側の排ガス空間20は閉塞型の空間としてホッパ32を形成し、払い落としによって堆積した煤塵を排出可能な構成としている。このような構成により、導入された排ガスが筒状フィルタを素通りして下部空間へ抜け出る虞が無くなり、排ガスを排ガス空間20へ押し出す構造の集塵装置であっても、清浄ガスを清浄ガス放出空間22から吸引する構造の集塵装置であっても、筒状フィルタ10による排ガス処理を行うことができる。
【0034】
また、本実施形態の集塵装置50では、前記筒状フィルタ10の内側面へパルスエアを噴出するためのパルス配管28aを備える構成とした。パルス配管28aは、エア源に接続されたマニホールド28から分岐された配管であり、適度な間隔で孔が開けられている。そして、本実施形態では、前記筒状フィルタ10の内側面へ直接パルスエアを吹き付けることが可能なように、各筒状フィルタ10の内部まで延設されている。
【0035】
このように構成される集塵装置50では、上述したように、排ガスが筒状フィルタ10の内側面11aから外側面11bへ抜けることで清浄化を図っているため、筒状フィルタ10には外側面11b側へ拡張しようとする力が加わる。しかしながら、筒状に形成された濾布では、外側面11b方向へ一定以上変形する虞が無く、濾布が潰れる虞も無いため、形状保持を目的とするリテーナが不要となる。また、排ガスの清浄化によって筒状フィルタ10の内側面11aへ煤塵が付着・堆積した場合には、パルス配管28aから前記内側面11aへ直接パルスエアを吹き付けることができるため、煤塵の払い落とし効果が高い。また、従来よりも低いパルス圧力のパルスエアで良好な払い落とし効果を得ることができるため、濾布に担持させた触媒が脱落してしまう虞が少ない。
【0036】
以下、実施例として本発明の筒状フィルタ10が煤塵の払い落とし性に優れ、かつ圧力損失や触媒保持力の面においても従来のバグフィルタに比べて優れていることを証明する。
【実施例】
【0037】
被検体として、以下に示す3つのフィルタを対象として試験(逆洗・洗浄加速試験)を行った。
(1)本発明に係る筒状フィルタ(多孔質膜を濾布の内側面に貼付したもの)
(2)従来より使用されている多孔質膜付触媒バグフィルタ(袋の外側面に多孔質膜を貼付したもの)
(3)従来より使用されている触媒バグフィルタ(多孔質膜を貼付しないもの)
なお、多孔質膜を貼付したフィルタは、いずれも多孔質膜を貼付した側面を煤塵捕集面とし、パルスエアはいずれもフィルタの内側面側からフィルタへ向かって吹き付ける構成とした。
【0038】
煤塵の払い落とし性の良否の立証を目的とする試験は、以下の条件で行った。
ガス温度(℃) :180
ガス流速(m/min):1.0
パルス間隔(min) :20
煤塵 :フライアッシュ(JIS Z 8096記載の10種:4.8〜5.7μm)
濾布材質 :PTFE/ガラス繊維製
多孔質膜の材質 :PTFE
多孔質膜の孔径 :1μm程度(測定方法 ASTM F316)
この結果、(1)で示す本発明に係る筒状フィルタでは、パルス圧力を0.3(MPa)に設定することで良好な煤塵払い落とし効果を得ることができた。これに対して、(2),(3)で示したバグフィルタではいずれも、同程度の煤塵払い落とし効果を得るために0.6(MPa)のパルス圧力を必要とした。これは、(1)で示す筒状フィルタでは煤塵捕集面に直接パルスエアを吹き付けて洗浄するのに対し、(2),(3)で示すバグフィルタでは濾布を介して煤塵捕集面を逆洗することに起因すると考えられる。ここで、(2),(3)で示すバグフィルタに対しても同様に、煤塵捕集面に直接パルスエアを吹き付けることで同様の結果を得ることができるのではないかとも考えられるが、袋状を為すバグフィルタの外周面に配された煤塵捕集面全体へ直接パルスエアを吹き付けることは、極めて効率が悪く、パルス配管の形状も複雑となり、工業上実現させるメリットが少なく、現実的でない。よって、上記のように煤塵捕集面へ直接パルスエアを吹き付ける構成を採ることができるのは(1)で示す本発明に係る筒状フィルタだけである。
【0039】
表1に、上記と同様の条件で煤塵の払い落としを繰り返した場合のフィルタに生じる圧力損失の変化を示す(パルス圧力(MPa)は、(1)が0.3、(2),(3)が0.6)。
【表1】

表1からは、(1)で示す本発明に係る筒状フィルタは、(2),(3)で示すバグフィルタに比べてパルス回数の増加に伴う圧力損失の増加が少ないということが読み取れる。これは、(1)で示す本発明に係る筒状フィルタは、上記のように低圧力のパルスエアであっても、良好に煤塵を払い落とすことができ、フィルタの目詰まりが少ないため、フィルタの圧力損失の向上を抑制することができることを意味している。
【0040】
次に、表2として、パルス回数の増加に伴う担持触媒の脱落量を比較した結果を示す。なお、試験条件は、上記と同様とする。
【表2】

表2から読み取れるように、(3)で示すバグフィルタは、多孔質膜を備えていないため、触媒の脱落量が最も多い。
【0041】
また、(1)で示す本発明に係る筒状フィルタは、(2)で示す多孔質膜を備えたバグフィルタよりも触媒の脱落量が少ない。これは、本発明に係る筒状フィルタでは、パルスエアの繰返しに伴うリテーナとの接触・擦れに起因する濾布,多孔質膜の損傷が無いこと、低圧パルスで良好な煤塵払い落とし効果を得ることができるためにパルスエアの圧力によって触媒が押し出される確率が低いこと等によると考えられる。
【0042】
以上より、本発明に係る筒状フィルタは、従来のバグフィルタに比べて煤塵の払い落とし効率に優れ、集塵装置を好適運転状態で運転させた際の触媒担持性にも優れているということがいえる。
【0043】
上述したように、本発明に係る筒状フィルタ、及び前記筒状フィルタを備えた集塵装置では、リテーナを不要としてフィルタ,多孔質膜の長寿命化を図ることができる。また、低圧パルスで効率的に煤塵を払い落とすことができるため、フィルタ洗浄時における触媒の脱落量を少なくすることができる。また、フィルタの回収時に問題となる清浄空間等への煤塵の飛散も抑えることが可能となる。
【0044】
なお、実施形態中では、多孔質膜は、筒状に形成した濾布の内側面のみに貼付する旨記載した。しかしながら、前記多孔質膜を濾布の外側面にも貼付するような構成としても良い。このような構成とする場合には、少なくとも外側面に貼付する多孔質膜は、担持する触媒の粒径よりも小さな口径の孔を備えたものとすることが望ましい。こうすることにより、パルスエアの吹き付け(フィルタの洗浄)に伴う触媒の脱落量を低下させることができる。
【0045】
また、実施形態における筒状とは、円筒形状に限らず多角形の筒形状も含むことはもちろん、長手方向の中央部付近を拡張させてフィルタ面積を増やしたような樽型のものも含むこととする。
【0046】
また、実施形態では、煤塵を払い落とす手段としてパルス配管からのパルスエアを用いる旨記載したが、他の機械的手段等を用いて煤塵を払い落とす場合であっても、本発明の集塵装置の実施形態に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の筒状フィルタの実施形態に係るフィルタの構成と使用状態を示すブロック図である。
【図2】本発明の筒状フィルタの実施形態に係るフィルタにおける煤塵払い落とし時の様子を示すブロック図である。
【図3】本発明の筒状フィルタを使用した集塵装置の構成を示すブロック図である。
【図4】バグフィルタを使用する従来の集塵装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0048】
10………筒状フィルタ、11a………内側面、11b………外側面、12………濾布、14………触媒(排ガス処理剤)、16………固定部、18a,18b………隔壁、20………排ガス空間(排ガス導入空間)、22………清浄空間(清浄ガス放出空間)、24………煤塵、26………多孔質膜、28………マニホールド、28a………パルス配管、32………ホッパ、50………集塵装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス導入空間に配置される煤塵捕集面から導入した排ガスを清浄化して清浄ガス放出空間に配置される清浄ガス放出面から放出するためのフィルタであって、
排ガス処理剤を担持させて吹き抜け型の筒状に形成した濾布と、
前記排ガス導入空間から前記清浄ガス放出空間へのガス流通経路を備える隔壁に、前記筒状の濾布を固定して前記ガス流通経路を閉塞するための固定部とを備え、
前記筒状に形成した濾布の内側面に、捕集する煤塵の平均粒径よりも孔径が小さな孔を有する多孔質膜を貼付し、
筒の、内側面を前記煤塵捕集面とし、外側面を前記清浄ガス放出面とする構成としたことを特徴とする筒状フィルタ。
【請求項2】
前記排ガス処理剤を酸化チタンとしたことを特徴とする請求項1に記載の筒状フィルタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の筒状フィルタを、排ガス導入空間と清浄ガス放出空間とを隔てる固定部に備えたことを特徴とする集塵装置。
【請求項4】
排ガス導入空間と清浄ガス放出空間とを隔てる固定部に備えられる請求項1又は請求項2に記載の筒状フィルタと、
前記排ガス導入空間に備えられ、前記筒状フィルタの煤塵捕集面に対して直に圧縮空気を噴出するパルス配管と、
を有することを特徴とする集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−88083(P2006−88083A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278910(P2004−278910)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000005452)日立プラント建設株式会社 (1,767)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】