説明

筒状プレキャストコンクリート部材の施工方法及び装置

【課題】大型の拡径回転掘削装置を用いて岩盤を掘削しながら筒状プレキャストコンクリート部材の躯体を沈設する工程において、回転駆動装置の取り付け取り外しを大型クレーンを用いることなく、簡易迅速に行うことができるようにし、迅速施工を図る。
【解決手段】全周回転駆動部60を備えた岩盤掘削用回転掘削装置50と、筒状プレキャストコンクリート部材セグメント31の待機位置上方まで側方に延設した架構フレーム70と、架構フレーム70上を水平走行し全周回転駆動部60及び筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁40を昇降ジャッキ61を介して支持する走行装置90と、筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁40に取付けられロッド先端がベースフレーム23に着脱自在な筒状プレキャストコンクリート部材圧入用ジャッキ41とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状プレキャストコンクリート部材の駆体(ケーソン又は井筒)を地中に沈設する場合の施工方法及び施工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に、地上(又は水上)から地中(又は水底地盤中)に筒状プレキャストコンクリート部材の躯体(ケーソン又は井筒)を沈設する場合、施工すべき筒状プレキャストコンクリート部材の周囲にベースフレームを設け、筒状プレキャストコンクリート部材沈下の反力を支持する地中アンカーを施工してベースフレームに結合し、このベースフレームを基準として筒状プレキャストコンクリート部材の沈下を行う。水上にベースフレームを設ける場合には所要の杭打ちを行い、杭の頂部にベースフレームを固定する。
【0003】
筒状プレキャストコンクリート部材の沈下は筒状部材内の地盤を掘削しながら筒状プレキャストコンクリート部材を上方から下方に向かって圧入して行う。筒状プレキャストコンクリート部材は、下端に刃口を備え、筒状部材内の地盤の掘削に伴って、刃口が地盤中に食い込んで、沈設予定線に沿って地盤中に進入する。
【0004】
このような技術としては、地上より操作する旋回屈曲腕をもつ掘削バケットを用いて地盤を掘削し、筒状プレキャストコンクリート部材駆体の上部に押下げ装置を取付けて筒状プレキャストコンクリート部材を沈設させる技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この技術は比較的軟い地層中に筒状プレキャストコンクリート部材を沈下させる技術である。
【0006】
筒状プレキャストコンクリート部材は、沈下するに従って、筒状プレキャストコンクリート部材躯体の上端に筒状プレキャストコンクリート部材を順次継ぎ足す。この筒状プレキャストコンクリート部材の継ぎ足しは、筒状プレキャストコンクリート部材を現場打ちコンクリートで形成するか、又はプレキャストコンクリートセグメントを順次積重することによって行う。
【0007】
現場打ちコンクリートは、鉄筋組立、型枠取付け取り外し、コンクリート打設、コンクリート養生等に長時間を要するので、迅速施工の観点及び品質管理の観点から、近時、プレキャストコンクリートセグメントを用いることが多い。
【0008】
沈下区域が軟弱な地層である場合には、地上のクレーンから吊下されたグラブバケット等を用いて筒状プレキャストコンクリート部材下底部の地盤の掘削及び排土を行いながら、筒状プレキャストコンクリート部材の沈下を行う。
【0009】
筒状プレキャストコンクリート部材を沈設する地層が硬い地層の場合には、岩盤掘削用の掘削装置を用いる。例えば筒状プレキャストコンクリート部材内にドリルケーシングを挿入し、ドリルケーシングの下端に植設した掘削刃並びにドリルケーシングの外周部に所定角度内で拡開可能に軸着した拡径翼の側部及び底部に植設した掘削刃にて、筒状プレキャストコンクリート部材刃先下の掘削を行い、筒状プレキャストコンクリート部材の沈下を制御しながら沈下する技術がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0010】
また、本発明者らは、硬質な岩盤等から成る硬い地層中に直径数mの縦孔を掘削する場合に、地層の状況に応じて種々の中間径の掘削を繰返しながら、最終掘削径の縦孔を掘削することができる拡縮径可能なビットを備えた強力な拡径回転掘削装置を開発し、これを提供している(例えば、特許文献3参照。)。
【0011】
この拡径回転掘削装置は、筒状プレキャストコンクリート部材中に垂下されたケーシングパイプの下端に装着される。そして筒状プレキャストコンクリート部材の上部空間においてケーシングパイプの外周に全周回転駆動部を設置し、この全周回転駆動部がケーシングパイプの外周を把持してケーシングパイプを介して拡径回転掘削装置を駆動する。掘削された排土は地上のクレーンロープに連結されたグラブバケットがケーシングパイプ中を昇降して地上に排出する。
【0012】
筒状プレキャストコンクリート部材の沈下に伴い、ケーシングパイプの継ぎ足し及び筒状プレキャストコンクリート部材躯体の継ぎ足しを行う必要がある。筒状プレキャストコンクリート部材の上端に継ぎ足す躯体として、プレキャストコンクリートセグメントを用い、迅速施工を行うことが好ましい。この場合、ケーシングパイプの継ぎ足し及び筒状プレキャストコンクリート部材セグメントの継ぎ足しを行うために、継ぎ足しの都度、全周回転駆動部の撤去、装着及び筒状プレキャストコンクリート部材沈設用加圧梁の解体、撤去、装着を行う必要がある。
【0013】
全周回転駆動部は約50トン程度の質量があり、また、筒状プレキャストコンクリート部材セグメントも規模により30〜50トンの質量があるので、上記全周回転駆動部の撤去、装着、及び筒状プレキャストコンクリート部材セグメントの継ぎ足しを行うために、吊り能力50トン以上の大型クレーンを常時筒状プレキャストコンクリート部材沈設位置周辺に配置しておく必要がある。
【0014】
ハンマーグラブバケットの質量は2〜3トン程度、継ぎ足す1本のケーシングパイプの質量は5トン程度であるからそれらの操作を行うには小型クレーンで十分である。
【特許文献1】特開平4−64620号公報
【特許文献2】特開平10−317376号公報
【特許文献3】特願2003−366639号出願
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
大型の拡径回転掘削装置を用いて岩盤を掘削しながら筒状プレキャストコンクリート部材の躯体を沈設する場合に、拡径回転掘削装置を回転させる全周回転駆動部が地上のケーシングパイプ上端部に装着されている。
【0016】
本発明は、このような場合において、ケーシングパイプの継ぎ足し及び筒状プレキャストコンクリート部材セグメントの継ぎ足しの時に、全周回転駆動部の取り付け取り外し(盛り替え)を大型クレーンを用いることなく、簡易迅速に行うことができるようにし、迅速施工を図った筒状プレキャストコンクリート部材の施工方法を提供することを目的とするものである。
【0017】
また、本発明は、筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁を全周回転駆動部と共に横移動し、筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁を単独で解体、撤去、装着する必要をなくし、さらに、この筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁に筒状プレキャストコンクリート部材セグメントを結合して移動するようにし、その結合作業工程中にケーシングパイプの継ぎ足しを同時並行的に行うことができるようにし、一層の工程短縮を可能にした技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、次の技術手段を講じたことを特徴とする筒状プレキャストコンクリート部材の施工方法である。すなわち、本発明方法は、硬質の岩盤中に筒状プレキャストコンクリート部材を沈設する筒状プレキャストコンクリート部材の施工方法であって、次の工程から成る。
【0019】
(a)上端に全周回転駆動部を備えたケーシングパイプを介して拡径回転掘削装置を筒状プレキャストコンクリート部材内に垂下して硬質地盤の掘削を行う。
【0020】
(b)筒状プレキャストコンクリート部材セグメント1個分の深さ分だけ筒状プレキャストコンクリート部材が沈下するごとにケーシングパイプを全周回転駆動部の下方で切り離す。同時に筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁に取付けられている筒状プレキャストコンクリート部材圧下ジャッキの先端を、ベースフレームから切り離す。
【0021】
(c)切り離したケーシングパイプ、前記全周回転駆動部及び筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁から成る一体ブロックを横移動させる。
【0022】
(d)待機している筒状プレキャストコンクリート部材セグメントを横移動した筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁に取り付ける作業を行い、この作業とケーシングパイプの延長部の接続作業とを同時並行的に行う。
【0023】
(e)筒状プレキャストコンクリート部材セグメントを筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁に取付けた前記一体ブロックを筒状プレキャストコンクリート部材沈設位置上に戻し、ケーシングパイプの結合及び筒状プレキャストコンクリート部材圧下ジャッキのベースフレームへの接続を行う。
【0024】
以上の(b)〜(e)の工程を繰り返して筒状プレキャストコンクリート部材セグメントの沈下を行う。
【0025】
本発明によれば、ケーシングパイプの継ぎ足し、筒状プレキャストコンクリート部材セグメントの継ぎ足しの際に行う全周回転駆動部の盛り替えを大型クレーンを用いて吊上げるのではなく、架構フレーム上を横移動する横移動装置を用いて行うようにした。また、筒状プレキャストコンクリート部材上に継ぎ足すプレキャスト筒状プレキャストコンクリート部材セグメントも大型クレーンを用いて吊上げるのではなく、筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁を全周回転駆動部と共に架構フレーム上を横移動させ、これに筒状プレキャストコンクリート部材セグメントを結合して筒状プレキャストコンクリート部材沈設位置上まで搬送するようにした。このとき、筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁に筒状プレキャストコンクリート部材セグメントを結合する作業と同時並行的にケーシングパイプの結合作業を行うので、その時間が節約される。
【0026】
その他のクラブバケットの昇降やケーシングパイプの継ぎ足し作業等は小型のクレーンを用いて行うことができる。従って、大型クレーンを筒状プレキャストコンクリート部材周囲に常時配置しておく必要がなくなった。
【0027】
上記本発明方法を好適に実施することができる本発明の装置は、
(イ)上端近傍に全周回転駆動部を備えたケーシングパイプを介して筒状プレキャストコンクリート部材下底部まで垂下された岩盤掘削用拡径回転掘削装置
(ロ)筒状プレキャストコンクリート部材上方から筒状プレキャストコンクリート部材セグメントの待機位置上方まで側方に延設した架構フレーム
(ハ)前記全周回転駆動部及び筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁を支持し該架構フレーム上を水平走行する走行装置
(ニ)該走行装置に取付けられ前記全周回転駆動部及び筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁を昇降させる昇降ジャッキ
(ホ)筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁に取付けられロッド先端がベースフレームと着脱自在な筒状プレキャストコンクリート部材圧入用ジャッキ
を備えたことを特徴とする筒状プレキャストコンクリート部材の施工装置である。
【0028】
本発明の装置の最も特徴とする点は、次の通りである。
【0029】
(1)全周回転駆動部を横移動自在に支持する架構フレームを地上に設けたこと。
【0030】
(2)この架構フレームの下に筒状プレキャストコンクリート部材セグメントを搬送する台車が進入する装置を設け、筒状プレキャストコンクリート部材セグメントを待機させるようにしたこと
(3)架構フレーム上を横移動する走行装置に筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁を取付け、待機位置に待機している筒状プレキャストコンクリート部材セグメントを筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁に結合し、これを筒状プレキャストコンクリート部材上に搬送するようにしたこと。
【0031】
(4)筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁に取り付けた筒状プレキャストコンクリート部材圧下用ジャッキをベースフレームから切り離し可能に形成したこと。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、全周回転駆動部の盛り替え、筒状プレキャストコンクリート部材セグメント加圧梁の盛り替え、及び筒状プレキャストコンクリート部材セグメントの継ぎ足しを行うために大型クレーンを配置しておくことが不必要になった。また、筒状プレキャストコンクリート部材セグメントを加圧梁に結合する作業とケーシングパイプの継ぎ足しとを同時並行的に行うことができるので、作業工程が著しく短縮された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の筒状プレキャストコンクリート部材の施工方法の各工程は、本発明の筒状プレキャストコンクリート部材の施工装置を用いることによって容易に実現することができる。
【0034】
本発明の筒状プレキャストコンクリート部材の施工装置は、筒状プレキャストコンクリート部材上方から筒状プレキャストコンクリート部材セグメントの待機位置上方まで側方に延設した架構フレームを設け、この架構フレーム上を水平走行する走行装置に全周回転駆動部及び筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁を取付け、全周回転駆動部の盛り替え、筒状プレキャストコンクリート部材セグメントの継ぎ足しを著しく容易にした。
【0035】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0036】
図1は本発明の実施例の筒状プレキャストコンクリート部材10の施工状況を示す全体側面図、図2はその平面図である。水中施工の場合は、筒状プレキャストコンクリート部材10を形成すべき区域に支持杭21を沈設施工し、この支持杭21の頂部22にベースフレーム23を設置する。通常の地盤上では支持杭21は不要である。このベースフレーム23には仮受けブラケット24が載置されている。仮受けブラケット24は筒状プレキャストコンクリート部材に筒状プレキャストコンクリート部材セグメントを結合させるときに、筒状プレキャストコンクリート部材10を仮受けする。
【0037】
また、筒状プレキャストコンクリート部材10の周囲にグラウンドアンカー25を施工し、その頂部をベースフレーム23と結合する。グラウンドアンカー25はベースフレーム23に結合した圧入用油圧ジャッキ41で筒状プレキャストコンクリート部材10を地中に押し込むとき、押し込み力の反力を支持し、ベースフレーム23が浮き上がるのを防止する。
【0038】
硬い岩石層101に到達するまでの普通土102の掘削工程では、ハンマーグラブバケット14で筒状プレキャストコンクリート部材10の底部11を掘削しながら、筒状プレキャストコンクリート部材10の躯体12を順次継ぎ足して沈下させる。筒状プレキャストコンクリート部材10は、筒状プレキャストコンクリート部材セグメント31を上端に順次積重しながら、その上に設けた筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁40を圧入用油圧ジャッキ41で下方に押して沈下させる。この筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁40を押し下げる圧入用油圧ジャッキ41はベースフレーム23にロッドの下端42を結合し、前述のようにグラウンドアンカー25に反力を支持させて加圧梁40を加圧する。
【0039】
筒状プレキャストコンクリート部材10の躯体12の下端13が硬い岩石層101に到達したら、本発明では、拡径ビットを備えた拡径回転掘削装置50を筒状プレキャストコンクリート部材10内に垂下して地盤の掘削を行う。拡径回転掘削装置50は、縮径した状態で筒状プレキャストコンクリート部材10内をケーシングパイプ51により下降し、筒状プレキャストコンクリート部材10の下底部において拡径して地盤を掘削する。ケーシングパイプ51の頭部には全周回転駆動部60が配設される。
【0040】
本発明では、ベースフレーム23上に架構フレーム70を設置する。架構フレーム70は、図2に示すように左右の高架梁71から成っている。左右の高架梁71はそれぞれ筒状プレキャストコンクリート部材10のベースフレーム23上に立設した柱72から側方に延長して設けられ、高架梁71の延長端に柱73が設けられている。延長スパン74(柱72と73との間)内に、筒状プレキャストコンクリート部材セグメント31を搬送する台車80がレール81上を走行して進入するようになっている。台車80は継ぎ足すべき筒状プレキャストコンクリート部材セグメント31を搬送してきて、延長スパン74内で待機する。
【0041】
この架構フレーム70上には、走行装置90が載設されている。走行装置90は、上記左右の高架梁71上を走行し、筒状プレキャストコンクリート部材10上方から筒状プレキャストコンクリート部材セグメント31の上記待機位置まで移動する。
【0042】
筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁40は、図3に平面図を示すように、リング状の加圧部44を備えた梁である。リング状の加圧部44は筒状プレキャストコンクリート部材セグメントとほぼ同形のリング状をなしている。4隅に圧入用油圧ジャッキ41が装着されている。この圧入用油圧ジャッキ41のロッドの下端部42は、ベースフレーム23に結合されており、この結合は切り離し可能に形成されている。
【0043】
走行装置90には、支持用油圧ジャッキ61、および全周回転駆動部60を積載している。この支持用油圧ジャッキ61の下端は筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁40に連結されている。従って走行装置90は全周回転駆動部60、この全周回転駆動部60に係合しているケーシングパイプ51の切り離された上部部分52、及び筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁40を支持している。
【0044】
次に、図4〜図12を参照して本発明の施工工程について説明する。
(1)図4は、矢印55で示すように、硬い地層を掘削しながら筒状プレキャストコンクリート部材沈設を同時に施工している状態を示している。新たに装着された筒状プレキャストコンクリート部材セグメント31は、筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁40を矢印32で示すように圧下する。この圧下は下端部42がベースフレーム23に接続されている圧入用油圧ジャッキ41によってなされる。全周回転駆動部60はケーシングパイプ52を抱持してこれを回転させ、その回転力は拡径回転掘削装置50に作用し、刃物ビットが硬い岩石層101を掘削する。ハンマーグラブバケット14はクレーン100によってケーシングパイプ51中を昇降して掘削された土砂を地上に排出する。
【0045】
支持用油圧ジャッキ61は筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁40の下降に従ってロッドが下降する。
(2)図5は図4に示す状態から筒状プレキャストコンクリート部材1リング分の沈設完了した状態を示している。拡径回転掘削装置50及び筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁40はその分下降しており、圧入用油圧ジャッキ41、支持用油圧ジャッキ61も下降限度に近くなっており、新たな筒状プレキャストコンクリート部材セグメントの継ぎ足し時期になっている。
(3)図6は、図5の状態で仮受けブラケット24をベースフレーム23上に取付けて既沈下の筒状プレキャストコンクリート部材10を保持し、圧入ジャッキ41のロッドの下端部42のベースフレーム23との接続を解除し、筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁40を筒状プレキャストコンクリート部材10から切り離して上昇させる工程を示している。筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁40は支持用油圧ジャッキ61のロッドを矢印33で示すように上昇させる。次いで、ケーシングパイプ51を切り離す。
(4)図7は上部のケーシングパイプ52を切り離した後、支持用油圧ジャッキ61を上昇させて、切り離された上部部分のケーシングパイプ52を全周回転駆動部60を用いて矢印34で示すように上昇させ、次いで走行装置90を矢印35で示すように横移動させる工程を示している。走行装置90は架構フレーム70の左右の高架梁71上を移動し、筒状プレキャストコンクリート部材セグメント31が待機している待機位置上まで移動する。
(5)図8は、ケーシングパイプ51の頂部にケーシングパイプの継ぎ足し部53を、矢印36で示すように、下降して継ぎ足す工程を示している。このケーシングパイプの継ぎ足し部53は軽量であるから、ハンマーグラブバケット用の小型クレーン100を用いて容易に継ぎ足し作業を行うことができる。
【0046】
一方、待機している筒状プレキャストコンクリート部材セグメント31は架構フレーム70上を横移動して来た筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁40の下面に結合され、矢印37で示すように吊上げられる。この筒状プレキャストコンクリート部材セグメントの吊上げは支持用油圧ジャッキ61によって行われる。この作業は、上記ケーシングパイプの継ぎ足し作業と同時並行的に行うことができる。
(6)図9は走行装置90が矢印38で示すように筒状プレキャストコンクリート部材沈設位置上方に戻る工程を示している。走行装置90は全周回転駆動部60、上部ケーシングパイプ51、筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁40及び筒状プレキャストコンクリート部材セグメント31を移動させる。これらの総質量は100トンにも及ぶことがあるが、架構フレーム70を適切に設計することは容易である。大型クレーン等は不必要となった。
(7)図10は筒状プレキャストコンクリート部材10の沈設位置上方に走行装置90が到達した状態を示すものである。上部のケーシングパイプ52を矢印39で示すように下降させて継ぎ足したケーシングパイプ53の上端と接続する。
(8)次いで図11に示すように、筒状プレキャストコンクリート部材セグメント31を筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁40と共に下降させ、筒状プレキャストコンクリート部材10の頂端に結合する。次いで圧入用油圧ジャッキ41のロッドを下降させ、ロッドの下端部42をベースフレーム23に結合する。
(9)図12に示すようにベースフレーム23上に取付けていた仮受けブラケット(24)を撤去し、筒状プレキャストコンクリート部材10の沈設工程を再開する。
【0047】
以上説明したように、本発明によれば、硬い岩石層中に筒状プレキャストコンクリート部材を沈設する場合に大型のクレーンを常時配置しておく必要がなくなり、また、施工工程の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の筒状プレキャストコンクリート部材施工装置の全体側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】加圧梁の平面図である。
【図4】本発明装置による施工工程の説明図である。
【図5】本発明装置による施工工程の説明図である。
【図6】本発明装置による施工工程の説明図である。
【図7】本発明装置による施工工程の説明図である。
【図8】本発明装置による施工工程の説明図である。
【図9】本発明装置による施工工程の説明図である。
【図10】本発明装置による施工工程の説明図である。
【図11】本発明装置による施工工程の説明図である。
【図12】本発明装置による施工工程の説明図である。
【符号の説明】
【0049】
10 筒状プレキャストコンクリート部材
11 底部
12 躯体
13 下端
14 ハンマーグラブバケット
21 支持杭
22 頂部
23 ベースフレーム
24 仮受けブラケット
25 グラウンドアンカー
31 筒状プレキャストコンクリート部材セグメント
32,33,34,35,36,37,38,39 矢印
40 筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁
41 圧入用油圧ジャッキ
42 下端部
44 加圧部
50 拡径回転掘削装置
51 ケーシングパイプ
52 ケーシングパイプ(上部部分)
53 ケーシングパイプ(継ぎ足し部)
54 刃物ビット
55 矢印
60 全周回転駆動部
61 支持用油圧ジャッキ
70 架構フレーム
71 高架梁
72、73 柱
74 延長スパン
80 台車
81 レール
90 走行装置
100 クレーン
101 硬い岩石層
102 普通土

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬い地層中に筒状プレキャストコンクリート部材を沈設するに当たり、上端に全周回転駆動部を備えたケーシングパイプを介して拡径回転掘削装置を筒状プレキャストコンクリート部材内に垂下し、筒状プレキャストコンクリート部材セグメント1個分の深さ分筒状プレキャストコンクリート部材が沈下するごとにケーシングパイプを全周回転駆動部の下方で切り離すと共に筒状プレキャストコンクリート部材圧下ジャッキの先端をベースフレームから切り離し、該切り離したケーシングパイプ、前記全周回転駆動部及び筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁から成る一体ブロックを横移動し、待機している筒状プレキャストコンクリート部材セグメントを該筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁に取り付ける作業とケーシングパイプの延長部の接続作業とを同時並行的に行い、次いで、筒状プレキャストコンクリート部材セグメントを取付けた前記一体ブロックを筒状プレキャストコンクリート部材沈設位置上に戻し、ケーシングパイプの結合及び筒状プレキャストコンクリート部材圧下ジャッキのベースフレームへの接続を行い、筒状プレキャストコンクリート部材の沈下を繰り返すことを特徴とする筒状プレキャストコンクリート部材の施工方法。
【請求項2】
上端近傍に全周回転駆動部を備えたケーシングパイプを介して筒状プレキャストコンクリート部材下底部まで垂下された岩盤掘削用拡径回転掘削装置と、筒状プレキャストコンクリート部材上方から筒状プレキャストコンクリート部材セグメントの待機位置上方まで側方に延設した架構フレームと、前記全周回転駆動部及び筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁を支持し該架構フレーム上を水平走行する走行装置と、該走行装置に取付けられ前記全周回転駆動部及び筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁を昇降させる昇降ジャッキと、筒状プレキャストコンクリート部材加圧梁に取付けられロッド先端がベースフレームと着脱自在な筒状プレキャストコンクリート部材圧入用ジャッキとを備えたことを特徴とする筒状プレキャストコンクリート部材の施工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−28920(P2006−28920A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210416(P2004−210416)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000112196)株式会社ピーエス三菱 (181)
【Fターム(参考)】