説明

筒状ラベル

【課題】 本発明は、十分な接着強度を有する重合接着部8を有し、外観も良好な筒状ラベル10を提供する。
【解決手段】 本発明の筒状ラベルは、合成樹脂製の第1シート1とラミネート接着剤層5と液透過性を有する第2シート2とがこの順で設けられ且つ前記ラミネート接着剤層5を介して前記第1シート1と第2シート2が接着された基材3を有し、前記基材3を筒状にして基材3の一方側端部31における第1シート1と基材3の他方側端部32における第2シート2とを重ね合わせ、溶剤含有液状接合剤を用いて前記一方側端部31と他方側端部32を接着することにより重合接着部8が形成されており、前記重合接着部8において、前記基材3の他方側端部32における第1シート1と第2シート2の間には、前記ラミネート接着剤層5を有する部分6と前記ラミネート接着剤層5を有しない部分7とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料容器などに装着される筒状ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材を筒状に形成した筒状ラベルが多様な用途に用いられている。
筒状ラベルは、基材の性状又は容器などの被着体に対する装着方法に従って、次の3つの種類に大別できる。
第1の筒状ラベルは、熱収縮性の基材の一方側端部の表面に他方側端部の裏面を重ね合わせて接着することにより、筒状に成形された筒状ラベルである。この第1の筒状ラベルは、筒状シュリンク、シュリンクラベル又は熱収縮性筒状ラベルなどとも呼ばれる。以下、本明細書において、この種の筒状ラベルを「熱収縮性筒状ラベル」という場合がある。
第2の筒状ラベルは、自己伸縮性の基材の一方側端部の表面に他方側端部の裏面を重ね合わせて接着することにより、筒状に成形された筒状ラベルである。この第2の筒状ラベルは、ストレッチラベル又は自己伸縮性筒状ラベルなどとも呼ばれる。以下、本明細書において、この種の筒状ラベルを「自己伸縮性筒状ラベル」という場合がある。
第3の筒状ラベルは、基材の一方側端部の裏面を容器に部分接着し、この基材を容器の周囲に巻き付け、前記一方側端部の表面に基材の他方側端部の裏面を接着することにより、筒状に成形された筒状ラベルである。この第3の筒状ラベルは、巻付け筒状ラベル又は巻付けラベルなどとも呼ばれる。以下、本明細書において、この種の筒状ラベルを「巻付け筒状ラベル」という場合がある。
【0003】
ところで、上記各筒状ラベルを形成する基材として、合成樹脂製シートに不織布が積層された積層体が用いられる場合がある。
例えば、特許文献1には、熱収縮性シートと不織布とを有する基材を筒状にして、その一端における熱収縮性シートの表面部分と、他端において対面する不織布の表面部分とを互いに溶剤接着することにより、重合接着部が形成された熱収縮性筒状ラベルが開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、一端における熱収縮性シートと他端における不織布を溶剤接着することにより形成された重合接着部は、十分な接着強度を有しない場合がある。例えば、熱収縮性シートと不織布が溶剤接着性に優れた素材でない場合には、十分な接着強度を有する重合接着部を形成できない。
【0005】
また、特許文献2には、一方側端部において不織布を設けずに熱収縮性シートを露出させた基材を用い、その基材を筒状にして、一方側端部における熱収縮性シートと他方側端部における熱収縮性シートとを溶剤接着することにより、重合接着部が形成された熱収縮性筒状ラベルが開示されている(同文献の[0011]及び[0018])。
【0006】
しかしながら、特許文献2のように、一方側端部において不織布が設けられていない基材を筒状に形成すると、重合接着部の縁付近に不織布が存在しない筋状の部分が生じる。かかる基材を、不織布を外側にして筒状に形成した場合には、前記筋状の部分が目立ち(この筋状の部分からは熱収縮性シートが覗き出ているために目立つ)、筒状ラベルの外観を損ねるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−338304号公報
【特許文献2】特開2005−196151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、十分な接着強度を有する重合接着部を有し、外観も良好な筒状ラベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の筒状ラベルは、合成樹脂製の第1シートとラミネート接着剤層と液透過性を有する第2シートとがこの順で設けられ且つ前記ラミネート接着剤層を介して前記第1シートと第2シートが接着された基材を有し、前記基材を筒状にして基材の一方側端部における第1シートと基材の他方側端部における第2シートとを重ね合わせ、溶剤含有液状接合剤を用いて前記一方側端部と他方側端部を接着することにより重合接着部が形成されており、前記重合接着部において、前記基材の他方側端部における第1シートと第2シートの間には、前記ラミネート接着剤層を有する部分とラミネート接着剤層を有しない部分とが設けられている。
【0010】
上記本発明の筒状ラベルは、基材の他方側端部における第1シートと第2シートの間に、ラミネート接着剤層を有する部分とラミネート接着剤層を有しない部分とが設けられているので、第1シートと第2シートの材質にかかわらず、重合接着部が十分な接着強度を有する。
また、上記本発明の筒状ラベルは、重合接着部の縁付近に筋状の部分が現れないので、良好な外観を有する。
【0011】
本発明の好ましい筒状ラベルは、前記液透過性を有する第2シートが不織布であり、前記溶剤含有液状接合剤が溶剤である。
本発明のさらに好ましい筒状ラベルは、前記第1シートが、前記第2シートよりも前記溶剤に対する溶解性が高い。
本発明のさらに好ましい筒状ラベルは、前記ラミネート接着剤層を有しない部分が、前記重合接着部の総面積に対して10%〜97%の範囲で設けられている。
本発明のさらに好ましい筒状ラベルは、前記重合接着部において、前記ラミネート接着剤層を有する部分とラミネート接着剤層を有しない部分が複数交互に設けられており、重合接着部の縦方向長さ15mm当たり、前記ラミネート接着剤層を有しない部分が2箇所以上独立して設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の筒状ラベルは、十分な接着強度を有する重合接着部を有し、外観的にも良好である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の1つの実施形態に係る基材を第2シート側から見た斜視図。
【図2】図1のII−II線で切断した拡大断面図。
【図3】図1のIII−III線で切断した拡大断面図。
【図4】図1のIV−IV線で切断した拡大断面図。ただし、中間を省略している。
【図5】本発明の1つの実施形態に係る筒状ラベルの斜視図。
【図6】同正面図。
【図7】図6のVII−VII線で切断した拡大断面図。
【図8】図6のVIII−VIII線で切断した拡大断面図。
【図9】(a)は、実施例1〜6で作製した第2サンプル基材の平面図、(b)は、実施例1〜6で作製した試験用接合基材の平面図、(c)は、同試験用接合基材の側面図、(d)は、同試験用接合基材の引張り試験時の側面図。
【図10】実施例2−1〜2−4で作製した各第2サンプル基材の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
ただし、本明細書において、「表面」とは、シートの一方の面を指し、筒状ラベルを形成したときにその外側となる面をいい、「裏面」とは、前記とは反対側の面(他方の面)を指し、筒状ラベルを形成したときにその内側となる面をいう。
また、本明細書において、「基材の横方向」は、基材の1つの方向であって、この基材が筒状ラベルに形成されたときにはその筒状ラベルの周方向に相当し、「基材の縦方向」は、基材の面内で前記横方向と略直交する方向をいう。「筒状ラベルの縦方向」は、筒状の軸方向(周方向を含む面に対する法線方向)をいう。
なお、各図において表された形状、大きさ、厚み及びそれらの相対的な比率などは、実際の寸法とは異なっていることに留意されたい。
【0015】
本発明の筒状ラベルは、合成樹脂製の第1シートと液透過性を有する第2シートとがラミネート接着剤層を介して積層接着された基材(積層シート)から構成されている。
この筒状ラベルは、前記基材を筒状にし、その基材の一方側端部における第1シートと基材の他方側端部における第2シートの間に溶剤含有液状接合剤を介在させ、基材の一方側端部と他方側端部とを接着することにより重合接着部が形成された筒状体からなる。
【0016】
なお、筒状ラベルは、上述のように、シートの性状又は容器などの被着体に対する装着方法に従って、熱収縮性筒状ラベル、自己伸縮性筒状ラベル及び巻付け筒状ラベルに大別できる。
これら各筒状ラベルは、いずれも基材を筒状に形成している点において共通している。これらの相違は、熱収縮性筒状ラベルが、熱収縮性(熱を加えると所定方向に収縮する性質)を有する基材から形成され、且つ被着体に装着する前から筒状に形成されていること、自己伸縮性筒状ラベルが、自己伸縮性(引張ると拡張し、引張り力を解除するとほぼ元の形状に戻る性質)を有する基材から形成され、且つ被着体に装着する前から筒状に形成されていること、巻付け筒状ラベルが、熱収縮性若しくは自己伸縮性を有する基材、又は、熱収縮性及び自己伸縮性を有しない基材から形成され、且つ被着体に巻き付けて装着したときに筒状に形成されることにある。
【0017】
本発明の筒状ラベルは、熱収縮性筒状ラベル、自己伸縮性筒状ラベル及び巻付け筒状ラベルの何れでもよい。
以下、本発明の筒状ラベルの1つの実施形態を具体的に説明するが、その本実施形態では、熱収縮性筒状ラベルを例に採って説明する。
【0018】
[基材について]
図1において、基材3は、通常、矩形状に形成される。
本実施形態の筒状ラベルを構成する基材3は、合成樹脂製の第1シート1と液透過性を有する第2シート2との積層シートであって、熱収縮性を有する積層シートからなる。
第1シート1と第2シート2は、同形同大である。
【0019】
前記基材3に熱収縮性を具備させるためには、合成樹脂製の第1シート1及び液透過性を有する第2シート2の少なくとも何れか一方が熱収縮性を有していればよい。一般的には、熱収縮性を有する合成樹脂製の第1シート1が用いられ、第2シート2については、実質的に熱収縮性を有さないか、又は、熱収縮性を有している場合でも、前記第1シート1よりも熱収縮性の小さいものが用いられる。もっとも、第2シート2が第1シート1よりも熱収縮性の大きいものを用いてもよい。
なお、熱収縮性は、所定温度(例えば、70℃〜100℃)に加熱されたときに、基材3の横方向に大きく収縮する性質をいう。その横方向の熱収縮率は、好ましくは30%以上、より好ましくは40%である。前記熱収縮率は、特開2005−196151号に記載された方法で求められる。
【0020】
第1シート1は、合成樹脂を製膜したシートであればその材質は特に限定されない。第1シート1は、液透過性を有さないシートであり、さらに、その表面及び裏面がいずれも平滑なものが好ましい。
具体的には、第1シート1としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体などのスチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂を製膜したシートが挙げられる。第1シート1が熱収縮性を有する場合には、前記熱可塑性樹脂を製膜し且つ延伸したシートが用いられる。また、第1シート1は、2枚以上の合成樹脂製のシートを積層し、延伸した積層シートでもよい。好ましくは、第1シート1として、1枚の合成樹脂製のシート、又は、表裏面が同じ材質である3層の積層シートが用いられる。これらのシートであれば、一方側端部31と他方側端部32を重ね合わせて接着したときに、同じ材質のシートにて接着できる。
第1シート1の厚みは、通常、10μm〜120μm程度である。
【0021】
前記第1シート1は、溶剤含有液状接合剤の溶剤に溶解するものが用いられる。好ましくは、第1シート1は、第2シート2よりも前記溶剤への溶解性が高いものが用いられる。
【0022】
第2シート2は、液透過性を有している限り特に限定されない。なお、液透過性は、シートの表面に滴下した溶剤がそのシートの厚み方向に浸透し、裏面に漏れ出る性質をいう。
第2シート2としては、例えば、不織布、和紙などが挙げられる。
【0023】
前記不織布としては、特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、レーヨン紙、ナイロン又はキュプラなどの繊維を、スパンボンド法、接着法、ニードルパンチ法又はメルトブロー法などによってシート状に作製された不織布などを用いることができる。
不織布の目付量は特に限定されないが、余りに目付量が小さいと、十分な断熱性や緩衝性を有さず、余りに目付量が大きいと、液透過性が悪くなる。このような点を考慮すると、目付量5g/m〜20g/mの不織布が好ましく、さらに、目付量6g/m〜16g/mの不織布がより好ましく、目付量8g/m〜11g/mの不織布が特に好ましい。
【0024】
前記和紙は、挟義には楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、又は雁皮(がんぴ)などの天然靭皮長繊維を原料とし、これにネリを加えて手漉きした紙と言えるが、本発明では、これら楮などのほか、麻、ケナフ、レーヨン、木材パルプ、合成繊維などの各種の長繊維原料を機械的に漉いて得られる広義の紙も含まれる。
【0025】
なお、第1シート1又は第2シート2には、デザインを表示するため、従来公知の意匠印刷が施されている(意匠印刷は不図示)。第1シート1を外側にして筒状ラベルが構成される場合には、第1シート1の表面又は裏面に意匠印刷が施され、第2シート2を外側にして筒状ラベルが構成される場合には、第2シート2の表面に意匠印刷が施される。もっとも、第2シート2の裏側の意匠印刷を第2シート2の表面から透かして見せることもできるので、第2シート2を外側にして筒状ラベルが構成される場合でも、第1シートの表面若しくは裏面又は第2シートの裏面に意匠印刷を施すこともできる。
【0026】
前記第1シート1と第2シート2は、ラミネート接着剤層5を介して一体化されている。
ラミネート接着剤層5は、図2〜図4にも示すように、他方側端部32(重合接合部を形成する領域を含む)を除いて、第1シート1と第2シート2の間に全体的に設けられている。
ラミネート接着剤は、第1シート1と第2シート2を接着できるものであれば特に限定されない。ラミネート接着剤がウェットラミネートタイプの場合には、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、アイオノマー樹脂などのエマルジョン型接着剤、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などのラテックス型接着剤などが用いられる。ラミネート接着剤がドライラミネートタイプの場合には、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ゴム系などの溶剤型接着剤などが用いられる。
【0027】
筒状ラベルの重合接着部は、基材3の一方側端部31と他方側端部32を重ね合わせ、その重ね合わせ部分の全部又は一部を溶剤含有液状接合剤を用いて接着した部分である。
前記基材3の一方側端部31は、基材3の縦方向に沿う一方側縁31aを含み、且つ基材3の上縁から下縁にまで縦方向に延びる帯状領域である。前記基材3の他方側端部32は、基材3の縦方向に沿う縦方向に沿う他方側縁32aを含み、且つ基材3の上縁から下縁にまで縦方向に延びる帯状領域である。前記一方側端部31及び他方側端部32は、筒状ラベルを形成する際に重ね合わされる、重ね合わせ部分を構成する。
【0028】
基材3の他方側端部32においては、ラミネート接着剤層5が部分的に設けられている。
具体的には、基材3の他方側端部32(他方側縁32aを含む)における第1シート1と第2シート2の間は、ラミネート接着剤層5が全体的に設けられておらず、ラミネート接着剤層5を有する部分6と、ラミネート接着剤層5を有しない部分7と、を有する。
以下、本明細書において、基材3の他方側端部32における第1シート1と第2シート2の間の、ラミネート接着剤層5を有する部分6を「ラミネート部」といい、その間のラミネート接着剤層5を有しない部分7を「非ラミネート部」という。
なお、図2において、便宜上、非ラミネート部7が設けられた部分を薄墨塗りで示している。
【0029】
前記ラミネート部6においては、第1シート1と第2シート2がそのラミネート接着剤層5を介して接着されている。
前記非ラミネート部7においては、第1シート1と第2シート2とが非接着であり、両シート1,2は単に接している。
【0030】
非ラミネート部7は、少なくとも重合接着部を形成する領域において設けられていればよい。接着強度が十分に高い重合接着部を形成するために、非ラミネート部7は、重合接着部を形成する領域の総面積に対して10%〜97%の面積割合となるように設けられていることが好ましく、さらに、15%〜97%の範囲がより好ましく、20%〜97%の範囲が特に好ましい。この面積割合の非ラミネート部7を有する基材3は、好ましくはラミネート部6が前記総面積に対して3%〜90%の面積割合となり、より好ましくは3%〜85%となり、特に好ましくは3%〜80%となる。
【0031】
基材3の他方側端部32において、前記非ラミネート部7は、1箇所だけ設けられていてもよいが、好ましくは基材3の縦方向又は基材3の横方向に複数多列状に並設される。
基材3の他方側端部32において、前記非ラミネート部7が複数多列状に設けられている場合には、図示したように、複数のラミネート部6と複数の非ラミネート部7が、基材3の縦方向に交互に配置されていることが好ましい。
接着強度が十分に高い重合接着部を形成するために、非ラミネート部7は、基材3の縦方向長さ15mm当たり、2箇所以上独立して設けられていることが好ましく、3箇所以上がより好ましく、4箇所以上独立して設けられていることが特に好ましい。
また、非ラミネート部7が密に設けられていると、1つの非ラミネート部7の縦方向長さが相対的に短くなりすぎ、非ラミネート部7を設けた効果を十分に奏しないおそれがある。かかる観点から、非ラミネート部7は、基材3の縦方向長さ15mm当たり、12箇所以下独立して設けられていることが好ましく、8箇所以下がより好ましく、6箇所以下独立して設けられていることが特に好ましい。
【0032】
[筒状ラベル]
本発明の筒状ラベル10は、図5〜図8に示すように、上記基材3を筒状にし、基材3の一方側端部31と他方側端部32を溶剤含有液状接合剤を用いて接着することにより重合接着部8が形成された筒状体からなる。なお、図6において、便宜上、非ラミネート部7が設けられた部分を薄墨塗りで示している。
重合接着部8の幅は、通常、1mm〜20mmであり、好ましくは3mm〜6mmである。
重合接着部8を形成するための溶剤含有液状接合剤は、溶剤そのものでもよいし、溶剤に任意の樹脂成分が溶解された接合用溶液でもよい。
前記溶剤は、第1シート1に対する溶解性に優れたものが用いられ、第1シート1の種類に応じて適宜設定できる。好ましくは溶解度指数が8.0〜13.8の溶剤が用いられる。
【0033】
具体的には、第1シート1として、エステル系樹脂、スチレン系樹脂、表裏面に非晶性オレフィン系樹脂層を積層した3層の積層シートなどを用いる場合には、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソランなどのエーテル系溶剤、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル系溶剤、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶剤などの1種、又は2種以上の混合溶剤などの有機溶剤を用いることができる。
【0034】
溶剤に任意の樹脂成分が溶解された接合用溶液は、一般的な溶剤型接着剤と同義であるが、一般的な溶剤型接着剤よりも溶剤含有量が多いものが好ましい。
第2シート2の表裏面に浸透し易いことから、溶剤含有液状接合剤としては、溶剤を用いることが好ましい。
【0035】
基材3の一方側端部31における第1シート1に、縦方向帯状(一方側端部31における基材3の上縁から下縁に亘る帯状)に溶剤含有液状接合剤を塗布し、この上に基材3の他方側端部32における第2シート2を重ね合わせる。なお、一方側端部31における第1シート1に溶剤含有液状接合剤を塗布することに加えて又はこれに代えて、他方側端部32における第2シート2に、溶剤含有液状接合剤を塗布してもよい。
【0036】
第2シート2を外側にして基材3を筒状にした場合には、溶剤含有液状接合剤は、基材3の一方側端部31における第1シート1の裏面に、及び/又は、基材3の他方側端部32における第2シート2の表面に塗布される。
第2シート2を内側にして基材3を筒状にした場合には、溶剤含有液状接合剤は、基材3の一方側端部31における第1シート1の表面に、及び/又は、基材3の他方側端部32における第2シート2の裏面に塗布される。
図示例では、第2シート2を外側にして基材3を筒状にした場合を示している。
【0037】
溶剤含有液状接合剤を塗布した基材3の一方側端部31の裏面に、基材3の他方側端部32の表面を重ね合わせ、その重ね合わせ部分4を接着する。
この際、図7及び8に示すように、前記重ね合わせ部分4の全体を接着せずに、通常、他方側縁32aを含む縁部32bを除く他方側端部32と一方側端部31とが接着される。
この図示例においては、前記縁部32bを除く他方側端部32と一方側端部31との接着部分が重合接着部8となる。
もっとも、重ね合わせ部分4の全体が接着されていてもよい。この場合には、重ね合わせ部分4の全体が重合接着部8となる。
また、図1などに示す基材3においては、他方側縁32aに至るまでラミネート接着剤層5を部分的に設けているが、ラミネート部6と非ラミネート部7は少なくとも溶剤含有液状接合剤が塗布される帯状領域に設けられていればよいので、例えば、基材3は、上記縁部32bに相当する部分において、ラミネート接着剤層5が全体的に設けられていてもよい(ラミネート部6のみから構成されていてもよい)。
【0038】
このようにして得られた筒状ラベル10は、上記基材3を筒状に形成しているので、重合接着部8において、基材3の他方側端部32における第1シート1と第2シート2の間に、ラミネート部6と非ラミネート部7とを有する。
上記基材3を用いているので、前記筒状ラベル10は、好ましくは非ラミネート部7が重合接着部8の総面積に対して10%〜97%の面積割合となり、より好ましくは15%〜97%となり、特に好ましくは20%〜97%となる。
また、同様に、前記筒状ラベル10は、重合接着部8において、ラミネート部6と非ラミネート部7とが複数交互に設けられており、重合接着部8の縦方向長さ15mm当たり、好ましくは非ラミネート部7が独立して2箇所以上設けられ、より好ましくは独立して3箇所以上設けられ、特に好ましくは独立して4箇所以上設けられている。
【0039】
本発明の筒状ラベル10は、第2シート2が第1シート1の全体に積層された基材3を用いているため、重合接着部8の縁付近に筋状の部分が現れず、良好な外観を有する。
さらに、本発明においては、基材3の他方側端部32における第1シート1と第2シート2の間にラミネート部6と非ラミネート部7とが設けられているので、一方側端部31と他方側端部32を溶剤含有液状接合剤を用いて接着することにより、十分な接着強度を有する重合接着部8を形成できる。
【0040】
かかる基材3を用いた場合に十分な接着強度を有する重合接着部8を形成できる作用は明確ではないが、本発明者らは、次のように推定する。
第2シート2は溶剤透過性を有するため、一方側端部31における第1シート1(及び/又は他方側端部32における第2シート2)に塗布された溶剤含有液状接合剤の溶剤は、他方側端部32における第2シート2を透過して、他方側端部32の第1シート1を溶解させる。このため、一方側端部31及び他方側端部32における各第1シート1が溶剤に溶解され、そのシート樹脂成分の溶解した溶液が他方側端部32における第2シート2を通じて混じり、溶剤が揮発すると、シート樹脂成分が固化する。このため、一方側端部31における第1シート1と他方側端部32における第1シート1が第2シート2を介して互いに接着し、十分な接着強度を有する重合接着部8を形成できる。
【0041】
特に、重合接着部8の縦方向長さ15mm当たり、非ラミネート部7が独立して2箇所以上設けられている場合には、さらに接着強度に優れた重合接着部8を形成できる。これは、前記溶剤(つまり、前記シート樹脂成分の溶解した溶液)が、他方側端部32における第1シート1と第2シート2の間におけるラミネート部6と非ラミネート部7の境界に偏って集まり、その境界部分において特に強く接着するためと推定される。なお、例えば、非ラミネート部7が独立して2箇所設けられている場合、ラミネート部6と非ラミネート部7の境界は、4箇所となる。
このように本発明の筒状ラベル10は、十分な接着強度を有する重合接着部8を有し、外観も良好である。
なお、重合接着部8の縦方向長さ15mm当たり、非ラミネート部7が余りに多く設けられていると、前記ラミネート部6と非ラミネート部7の境界に溶剤が集まり難くなると考えられる。このような点を考慮すると、重合接着部8の縦方向長さ15mm当たり、非ラミネート部7は独立して12箇所以下設けられていることが好ましく、8箇所以下がより好ましく、6箇所以下設けられていることが特に好ましい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をさらに詳述する。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるわけではない。
【0043】
[使用材料]
第1シートとして、厚み40μmのポリエステル製二軸延伸シートを使用した。
第2シートとして、ポリエステル製短繊維不織布を使用した。この不織布の目付量は、9.5g/mであった。
ラミネート接着剤として、ドライラミネート用接着剤を使用した。
溶剤含有液状接合剤として、エーテル系有機溶剤を使用した。
【0044】
[実施例1]
上記第1シート及び第2シートをそれぞれ縦×横=15mm×100mmに切り出し、その第1シートの一方面の全体に、上記ラミネート接着剤を塗布し、この上に前記第2シートを重ね合わせて全面接着することにより、第1サンプル基材を作製した。
また、上記第1シート及び第2シートをそれぞれ縦×横=15mm×60mmに切り出し、その第1シートの一方面の一部を除いて、上記ラミネート接着剤を塗布し、この上に前記第2シートを重ね合わせて全面接着することにより、第2サンプル基材を作製した(図9(a)参照)。この第2サンプル基材において、ラミネート接着剤を塗布しなかった部分(非ラミネート部)を、図9の薄墨塗りで示している。実施例1において、図9(a)の符号Aは、3mmである。
【0045】
得られた第1サンプル基材の第1シートの他方面のうち、側縁から横3mm×縦15mmの範囲に、上記有機溶剤を塗布し(塗布量:約6.7g/m)、この上に、前記第2サンプル基材の非ラミネート部が重なるように、第2サンプル基材の第2シートの一方面を重ね合わせ、押さえ付けた状態で溶剤を完全に揮発させ、実施例1に係る試験用接合基材を得た(図9(b)及び(c)参照)。
【0046】
得られた試験用接合基材は、横3mm×縦15mmの重合接着部が形成されている。
また、試験用接合基材の非ラミネート部の面積割合は、重合接着部の総面積を100%とした場合に、20%である。
実施例1の試験用接合基材の重合接着部の接着強度を、下記に示す方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0047】
[重合接着部の接着強度の試験方法]
試験用接合基材の第1サンプル基材の一端部及び第2サンプル基材の縁部を、引張試験機((株)島津製作所製、商品名:AG−500N)のチャックに保持し、図9(d)の矢印に示す方向に引張った。そして、重合接着部が剥離したときの強度(N)を測定した。
【0048】
[実施例2]
非ラミネート部の縦を6mm(図9(a)のA=6mm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、試験用接合基材を作製し、重合接着部の接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0049】
[実施例3]
非ラミネート部の縦を9mm(図9(a)のA=9mm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、試験用接合基材を作製し、重合接着部の接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0050】
[実施例4]
非ラミネート部の縦を12mm(図9(a)のA=12mm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、試験用接合基材を作製し、重合接着部の接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0051】
[実施例5]
非ラミネート部の縦を13.8mm(図9(a)のA=13.8mm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、試験用接合基材を作製し、重合接着部の接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0052】
[実施例6]
非ラミネート部の縦を14.5mm(図9(a)のA=14.5mm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、試験用接合基材を作製し、重合接着部の接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0053】
[比較例1]
非ラミネート部を設けなかった(第1サンプル基材と同じものを第2サンプル基材として用いた)こと以外は、実施例1と同様にして、試験用接合基材を作製し、重合接着部の接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0054】
[比較例2]
非ラミネート部の縦を15mm(図9(a)のA=15mm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、試験用接合基材を作製し、重合接着部の接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
[実施例2−1]
非ラミネート部の面積割合が40%の試験用接合基材(実施例2)について、非ラミネート部の形成位置を、図10の(a)に示すように、縦方向中央部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、試験用接合基材を作製し、重合接着部の接着強度を測定した。その結果を表2に示す。
【0057】
[実施例2−2]
同様に、非ラミネート部の形成位置及び形成箇所数を、図10の(b)に示すように、同じ縦長さの2箇所の均等配置に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、試験用接合基材を作製し、重合接着部の接着強度を測定した。その結果を表2に示す。
【0058】
[実施例2−3]
同様に、非ラミネート部の形成位置及び形成箇所数を、図10の(c)に示すように、同じ縦長さの4箇所の均等配置に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、試験用接合基材を作製し、重合接着部の接着強度を測定した。その結果を表2に示す。
【0059】
[実施例2−4]
同様に、非ラミネート部の形成位置及び形成箇所数を、図10の(d)に示すように、同じ縦長さの8箇所の均等配置に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、試験用接合基材を作製し、重合接着部の接着強度を測定した。その結果を表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
[評価]
実施例1〜6及び比較例1〜2の結果から、ラミネート部と非ラミネート部が設けられた重合接着部は、ラミネート部のみの重合接着部(比較例1)及び非ラミネート部のみの重合接着部(比較例2)に比して、接着強度に優れていることがわかった。
また、実施例2及び実施例2−1〜2−4の結果から、非ラミネート部を1箇所設ける場合よりも、2箇所以上設ける方が重合接着部の接着強度が上がることがわかった。他方、実施例2−3及び実施例2−4の結果から、非ラミネート部の形成数を増やしていくと、接着強度が低下する可能性があることがわかった。形成数をあまりに増やすと、非ラミネート部が狭くなる結果、溶剤が浸透しにくくなるためと推定される。
【符号の説明】
【0062】
1…第1シート、2…第2シート、3…基材、31…基材の一方側端部、32…基材の他方側端部、4…重ね合わせ部分、6…ラミネート接着剤層を有する部分、7…ラミネート接着剤層を有しない部分、8…重合接着部、10…筒状ラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の第1シートとラミネート接着剤層と液透過性を有する第2シートとがこの順で設けられ且つ前記ラミネート接着剤層を介して前記第1シートと第2シートが接着された基材を有し、
前記基材を筒状にして基材の一方側端部における第1シートと基材の他方側端部における第2シートとを重ね合わせ、溶剤含有液状接合剤を用いて前記一方側端部と他方側端部を接着することにより重合接着部が形成されており、
前記重合接着部において、前記基材の他方側端部における第1シートと第2シートの間には、前記ラミネート接着剤層を有する部分とラミネート接着剤層を有しない部分とが設けられていることを特徴とする筒状ラベル。
【請求項2】
前記液透過性を有する第2シートが不織布であり、前記溶剤含有液状接合剤が溶剤である、請求項1に記載の筒状ラベル。
【請求項3】
前記第1シートが、前記第2シートよりも前記溶剤に対する溶解性が高い、請求項1又は2に記載の筒状ラベル。
【請求項4】
前記ラミネート接着剤層を有しない部分が、前記重合接着部の総面積に対して10%〜97%の範囲で設けられている、請求項1〜3の何れか一項に記載の筒状ラベル。
【請求項5】
前記重合接着部において、前記ラミネート接着剤層を有する部分とラミネート接着剤層を有しない部分が複数交互に設けられており、重合接着部の縦方向長さ15mm当たり、前記ラミネート接着剤層を有しない部分が2箇所以上独立して設けられている、請求項1〜4の何れか一項に記載の筒状ラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−208188(P2012−208188A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71907(P2011−71907)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)