説明

筒状構築物の内面処理作業用システムおよび内面処理作業方法

【課題】 傾斜する筒状構築物内に大規模な足場を組むことなく、その内面の処理作業を容易かつ安全に行い得るようにして、簡易で安価な内面処理の作業用システムおよび作業方法を提供すること。
【解決手段】 傾斜する水路鉄管100の内面処理に使用する作業用システム10であって、水路鉄管内に延在する安全ロープ11および支持ロープ16と、安全ロープに通常にはスライド不能に係止するチャック12と、このチャックを介して安全ロープに作業者を連結保持する安全ベルト13と、支持ロープが離脱不能に巻き掛けられて通常には牽引方向に後退することが制限されるシャックル17と、このシャックルを介して支持ロープに連結されて作業者の足場となる梯子装置18と、水路鉄管の内面にサンドブラスト処理を施すサンドブラスト装置14と、作業者の被覆カバー45内に清浄な空気を供給する空気供給装置15と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状構築物の内面処理作業用システムおよび内面処理作業方法に関し、詳しくは、傾斜する姿勢で延在する筒状構築物の内面の処理作業を、容易かつ安全に、また、安価に行うことのできるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、構築物の外面に対して処理を施す場合と同様に、構築物の内面に対して防錆処理などを施す場合には、その構築物内に作業用システムとして足場を組むことが行われている。その足場は、錆落しや塗装等の処理を施す構築物の内面の近傍、例えば、作業者の手が届く距離に組まれる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−121747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の作業用システムの足場にあっては、例えば、水力発電用の水を流通させる水路鉄管の内面に防錆処理を施す場合には、その水路鉄管の内面に沿うように足場を組む必要がある。この水路鉄管が長い区間に構築されていて、その水路鉄管の全長に亘って足場を組むのでは、大規模な足場になって費用が掛かりすぎてしまう。
【0004】
また、そのような水路鉄管内に足場を組んでしまったら、その足場により隠れてしまった箇所に十分な処理を施すことができずに、例えば、3度塗りするところを、その足場の箇所だけ最後に撤去しながら行う1度塗りになってしまい、そこから錆が発生してしまう恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、傾斜する筒状構築物内に大規模な足場を組むことなく、その内面の処理作業を容易かつ安全に行い得るようにして、その内面に十分な処理を施すことのできる、簡易で安価な内面処理の作業用システムおよび作業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する筒状構築物の内面処理作業用システムの第1の発明は、傾斜する姿勢で延在する筒状構築物の内面の処理作業を行う際に使用する内面処理作業用システムであって、筒状構築物内の上部に固定されて下部まで延長される所定以上の強度を有する線状部材と、該線状部材に連結して作業者の作業位置を確保する足場装置と、筒状構築物の内面に所望の処理を施す処理装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0007】
この発明では、傾斜する筒状構築物内にロープや鎖などの線状部材を上部から下部に渡して、足場装置をその線状部材に連結するだけで、処理装置を扱う作業者は、傾斜する筒状構築物内の作業位置に足場を確保してその内面の処理作業を行うことができ、また、その連結位置を移動させつつその筒状構築物の全長に亘って内面の処理作業を行うことができる。したがって、筒状構築部内の上部から下部までの大規模な足場を組むことなく、その上部から下部までの内面に所望の処理を施すことができる。
【0008】
上記課題を解決する筒状構築物の内面処理作業用システムの第2の発明は、上記第1の発明の特定事項に加え、前記足場装置は、作業者の作業位置付近の長さを有して筒状構造物の内面に載置されて足場となる梯子状部材であることを特徴とするものである。
【0009】
この発明では、作業位置付近の長さの短尺な梯子状部材が線状部材に連結されて筒状構造物内における足場装置にされる。したがって、作業者は、大規模な足場を組むことなく、梯子状部材を載置可能な小さな空間があれば、その作業位置に位置させる梯子状部材に乗って、安定した姿勢で筒状構築部内の上部から下部までの内面に所望の処理を施すことができる。
【0010】
上記課題を解決する筒状構築物の内面処理作業用システムの第3の発明は、上記第1の発明の特定事項に加え、前記足場装置は、作業者の作業位置付近の筒状構造物の内面上に載置される基礎部材と、該基礎部材に支持されて水平の足場となる水平部材と、を有することを特徴とするものである。
【0011】
この発明では、作業位置付近の内面に水平な足場になる部材を支持させて筒状構造物内における足場装置にされる。したがって、作業者は、下側内面に立っただけでは上側内面(天井部分)に手が届かない程度の大きさの内面を有する筒状構築物でも、大規模な足場を組むことなく、その作業位置に位置させる水平な部材に乗って、安定した姿勢で筒状構築部内の上部から下部までの内面に所望の処理を施すことができる。
【0012】
上記課題を解決する筒状構築物の内面処理作業用システムの第4の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明の特定事項に加え、前記線状部材を2本有して、第1線状部材には足場装置を作業位置に保持する第1保持装置が連結される一方、第2線状部材には作業者を作業位置に保持する第2保持装置が連結されることを特徴とするものである。
【0013】
この発明では、作業者は足場装置を保持するものとは別の線状部材に保持される。したがって、作業者は、足場装置に乗ってその位置に保持されるとともに、これとは別に保持されて、その足場装置が仮に転落したとしても、その作業者が一緒に転落してしまうことを信頼性高く防止することができる。
【0014】
上記課題を解決する筒状構築物の内面処理作業用システムの第5の発明は、上記第4の発明の特定事項に加え、前記保持装置は、線状部材に離脱不能に係合して牽引方向に後退することを制限するとともに所定の操作の継続により該線状部材の延在方向の一方向または双方向にスライドすることを許容する構造に設計されて、足場装置または作業者に連結されている別個の線状部材が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0015】
この発明では、筒状構築物内の上部から下部に渡した線状部材には、離脱不能であるとともに、そのままでは牽引方向、すなわち、降下方向にスライド不能に係合して足場装置または作業者を作業位置に連結保持する一方、例えば、握り続けるなどの操作の継続によって離脱不能のまま降下方向にスライドすることを許容して足場装置または作業者の作業位置を移動することができる。したがって、線状部材に連結・保持された足場装置または作業者の作業位置をずらす操作で、例えば、握り損なってしまったとしても、それ以上、牽引方向にスライドして後退(降下)することが制限されて、転落することなくその位置に保持され、安全を確保しつつ傾斜する筒状構築物の内部を容易に移動してその内面の処理作業を行うことができる。
【0016】
上記課題を解決する筒状構築物の内面処理作業用システムの第6の発明は、上記第4の発明の特定事項に加え、前記保持装置は、線状部材の延在方向に対して交差する姿勢で上下に位置する平行部分を有して、該線状部材に対する牽引方向には後退することが制限される一方、該牽引の反対方向には当該制限が解除される巻き掛け方で当該線状部材を離脱不能に巻き掛けられ、下側の平行部分に足場装置または作業者に連結されている別個の線状部材が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0017】
この発明では、筒状構築物内の上部から下部に渡した線状部材には、離脱不能に巻き掛けて牽引方向、すなわち、降下方向にはスライドすることが制限される状態で係合して足場装置または作業者を作業位置に連結保持する一方、その線状部材を反対方向に押し上げることによって、離脱不能のままその制限状態が解除されて降下方向にスライドすることが許容されて足場装置または作業者の作業位置を移動することができる。したがって、線状部材に連結・保持された足場装置または作業者の作業位置をずらす操作で、例えば、線状部材から手が離れたとしても、それ以上、牽引方向にスライドして後退(降下)することが制限されて、転落することなくその位置に保持され、安全を確保しつつ傾斜する筒状構築物の内部を容易に移動してその内面の処理作業を行うことができる。
【0018】
上記課題を解決する筒状構築物の内面処理作業用システムの第7の発明は、上記第1から第6のいずれかの発明の特定事項に加え、前記処理装置は、筒状構築物の内面の塗装の前処理を行うサンドブラスト装置、または、筒状構築物の内面を塗装する塗装装置であることを特徴とするものである。
【0019】
この発明では、線状部材をずらすなどしつつ、筒状構築物の内面をサンドブラスト処理して塗装を剥ぐなどの前処理を行ったり、その内面を塗装するなどの処理を行うことができる。したがって、筒状構築物の内面に高品質な防錆処理などを施すことができる。
【0020】
上記課題を解決する筒状構築物の内面処理作業用システムの第8の発明は、上記第1から第7のいずれかの発明の特定事項に加え、前記作業者が周囲の空気に頼ることなく呼吸可能に清浄な空気を供給する空気供給装置を含むことを特徴とするものである。
【0021】
この発明では、筒状構築物の内部でその内面処理を行う際に、清浄な空気の供給を受けてその処理作業を行うことができる。したがって、筒状構築物内の空気を必要とすることなく作業することができ、例えば、その内面にサンドブラスト処理や塗装処理を施す場合のように、その筒状構築物内の空気を吸って作業することが不能または困難な環境内でも安心して作業することができる。
【0022】
上記課題を解決する筒状構築物の内面処理作業用システムの第9の発明は、上記第8の発明の特定事項に加え、前記空気供給装置は、前方の視界を確保しつつ作業者の頭部を覆う頭部装着部と、該頭部装着部内に連結して清浄空気を供給する供給チューブと、を有することを特徴とするものである。
【0023】
この発明では、作業可能に視界を確保しつつ頭部を覆う装着部内に清浄空気が供給される。したがって、作業者は頭部全体を周囲の環境から遮蔽した状態のまま作業することができ、その周囲の環境、例えば、微粉末や気化した化学薬剤などから影響を受けることなく安全に作業することができる。
【0024】
上記課題を解決する筒状構築物の内面処理作業方法の第1の発明は、傾斜する姿勢で延在する筒状構築物の内面の処理作業を行う際の筒状構築物の内面処理作業方法であって、筒状構築物内の上部から下部以上の長さで所定以上の強度を有する2本の線状部材と、該第1線状部材に連結されて作業者の作業位置を確保する足場装置と、第1線状部材に取り付けられて足場装置を作業位置に連結保持する第1保持装置と、第2線状部材に取り付けられて作業者を作業位置に連結保持する第2保持装置と、筒状構築物の内面に所望の処理を施す処理装置と、を準備して、筒状構築物内の上部に第1、第2線状部材を固定して下部まで延長させた後に、該筒状構築物内の上方の第1、第2線状部材に第1、第2保持装置を取り付けて足場装置や作業者を作業位置に連結保持させ、この後に、処理装置による筒状構築物の内面への処理を開始し、次いで、作業位置での筒状構築物の内面に施す処理作業が終了する毎に第1、第2保持装置を下方にスライドさせつつ降下することを該筒状構築物の下部まで繰り返すことを特徴としている。
【0025】
この発明では、傾斜する筒状構築物内にロープや鎖などの2本の線状部材を上部から下部に渡して、その線状部材に足場装置や作業者を連結保持する第1、第2保持装置をそれぞれ連結するだけで、処理装置を扱う作業者は、足場装置とは別の線状部材に連結保持されつつ、傾斜する筒状構築物内の作業位置の足場装置に乗った状態で両手を自由にその内面の処理作業を行うことができ、また、その連結位置を移動させつつその筒状構築物の全長に亘って内面の処理作業を行うことができる。この作業時には、離脱不能であるとともに、そのままでは牽引方向、すなわち、降下方向にスライド不能にその線状部材に係合して足場装置や作業者を作業位置に連結保持する一方、所定の操作をすることによって離脱不能のまま降下方向にスライドすることを許容して足場装置や作業者の作業位置を移動することができる。したがって、筒状構築物内に上部から下部までの大規模な足場を組むことなく、その上部から下部までの内面に所望の処理を施すことができる。また、この線状部材に連結・保持された足場装置や作業者は、作業位置をずらす際に、操作ミスしたとしても、それ以上、牽引方向にスライドして後退(降下)することが制限されて、転落することなくその位置に保持される。よって、安全を確保しつつ傾斜する筒状構築物の内部を容易に移動してその内面の処理作業を快適に行うことができる。
【0026】
上記課題を解決する筒状構築物の内面処理作業方法の第2の発明は、上記第1の発明の特定事項に加え、前記処理装置として、筒状構築物の内面の塗装の前処理を行うサンドブラスト装置、または、筒状構築物の内面を塗装する塗装装置を準備して、筒状構築物内の上部から下部の内面のサンドブラスト処理または塗装処理を行うことを特徴としている。
【0027】
この発明では、線状部材をずらすなどしつつ、筒状構築物の内面をサンドブラスト処理して塗装を剥ぐなどの前処理を行ったり、その内面を塗装するなどの処理を行うことができる。したがって、筒状構築物の内面に高品質な防錆処理などを施すことができる。
【0028】
上記課題を解決する筒状構築物の内面処理作業方法の第3の発明は、上記第1または第2の発明の特定事項に加え、前記作業者が周囲の空気に頼ることなく呼吸可能に清浄な空気を供給する空気供給装置を準備して、処理装置による筒状構築物の内面処理を行う際に、該空気供給装置から清浄な空気を作業者に供給することを特徴としている。
【0029】
この発明では、筒状構築物の内部でその内面処理を行う際に、清浄な空気の供給を受けてその処理作業を行うことができる。したがって、筒状構築物内の空気を必要とすることなく作業することができ、例えば、その内面にサンドブラスト処理や塗装処理を施す場合のように、その筒状構築物内の空気を吸って作業することが不能または困難な環境内でも安心して作業することができる。
【発明の効果】
【0030】
このように本発明によれば、傾斜する筒状構築物内の上部から下部にロープや鎖などの2本の線状部材を渡して、足場装置や作業者を保持する装置をそれぞれ連結するだけで、その筒状構築物の内部を移動しつつ内面処理作業を行うことができる。このとき、保持装置は、線状部材に離脱不能に係合するとともに、所定の操作をして初めてスライドを許容することにより、作業ミスで転落することなく、安全に移動して作業位置を変更することができる。したがって、筒状構築物内に上部から下部までの大規模な足場を組むことなく、その内面処理作業を容易かつ安全に行うことができ、線状部材が内面処理の邪魔になってしまうこともなく、高品質な処理を筒状構築物の内面に施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図5は本発明に係る筒状構築物の内面処理作業方法を実行するその内面処理作業用システムの第1実施形態を示す図である。
【0032】
まず、システム構成を説明する。図1において、筒状構築物の内面処理作業用システム10は、安全ロープ(線状部材)11と、チャック12と、安全ベルト13と、サンドブラスト装置および塗装装置(処理装置)14と、空気供給装置15と、支持ロープ(線状部材)16と、シャックル17と、梯子装置18と、を備えて構成されており、例えば、山間部の斜面に傾斜する姿勢で設置されている円筒形状(断面円形)の水力発電用の水路鉄管(構築物)100の内面を再塗装して防錆処理(内面処理)を施す際に、その内面の錆を落とす前処理を行う場合は、サンドブラスト装置を用いて、また、塗装する場合には塗装装置に持ち替えて、快適にその防錆処理を行うことができる。なお、図中には、サンドブラスト装置を図示している。
【0033】
安全ロープ11は、少なくとも水路鉄管100以上の長さを有して、その水路鉄管100の上部に固定されて下部に至るように延長されており、作業者が体重を掛けても十分に保持することのできる強度を備えている。
【0034】
チャック12は、例えば、藤商管理株式会社製のロリップ(登録商標)であり、図2(a)に示すように、安全ロープ11の延在方向にスライドさせることができるようにその安全ロープ11を内装する本体部21と、この本体部21と共に把持することができるように平行に支持されている把持部22と、本体部21および把持部22のそれぞれに配設された回動軸21a、22aに回動可能に連結されて本体部21に対して平行な姿勢のまま把持部22を接離可能に支持する一対の支持板23と、把持部22の一端側の回動軸22aに一方の支持板23と共に同軸回転自在に連結されて連結ロープ(線状部材)24が取り付けられている連結レバー25と、を備えており、このチャック12は、高所作業用安全器具として利用することができる。
【0035】
具体的には、チャック12の本体部21には、図2(b)に示すように、安全ロープ11と略同径の円筒部21bが下部側に画成されており、この円筒部21b内にはその安全ロープ11をスライド可能に内装して係合状態に連結することができる。この本体部21には、底面部21cが図中の背面側のヒンジ部21dにより回動可能に支持されており、この底面部21cを回動させることにより円筒部21bを開閉することができ、容易に安全ロープ11を内装して係合させることができる。
【0036】
また、本体部11は、図中の前面側に雌ネジ部21eが一体形成される一方、底面部21cには雄ネジ26が回転可能に保持されており、この雄ネジ26を雌ネジ21eに螺合させることにより、円筒部21bを閉止状態にロックすることができる。さらに、本体部21および底面部21cには、2分割された分割円筒部21f、21gがそれぞれ溶接されて、その内部にレバー27a付きの円柱状ロック部材27がスライド可能に内装されているとともに、この円柱状ロック部材27が分割円筒部21g内から分割円筒部21f側に向かって突出してロックするように不図示の付勢手段により付勢されている。この円柱状ロック部材27は、レバー27aを分割円筒部21gの周面に刻設された周方向の溝21h内に進入させることにより分割円筒部21f内から抜け出た状態(ロック解除状態)に維持することができる。
【0037】
これにより、チャック12は、本体部21の円柱状ロック部材27のレバー27aを付勢手段の付勢力に抗して分割円筒部21gの溝21h側に進めて進入させることにより、初めてその円柱状ロック部材27を分割円筒部21f内から抜いて円筒部21bを開閉可能にすることができ、雄ネジ26の螺合が不用意に緩んだとしても、その円筒部21bを開放(係合を解除)して安全ロープ11を離脱させてしまうことがない。
【0038】
また、チャック12の支持板23には、一体に回動して本体部21の円筒部21b内に突出・後退する係止部28が連設されており、この支持板23は、把持部22が把持されていない状態では、係止部28がその円筒部21b内に突出するように不図示の付勢手段により付勢されることにより、その先端部に形成されている鋸刃形状の係止歯28aが円筒部21b内の安全ロープ11をスライド不能に係止するように押し当てられる。一方、この支持板23は、把持部22が把持されることにより、図2(b)中に矢印で図示するように、付勢手段の付勢力に抗して、連結レバー25による牽引方向と反対側の右方向にスライドしつつ本体部21に接近する際に、その係止部28を図中時計回り方向に回動させて円筒部21b内から後退させることにより、安全ロープ11の係止を解除してスライド可能にする。言い換えると、この係止部28は、連結レバー25による牽引方向に支持板23が回動されると安全ロープ11に押し当てられて、その安全ロープ11に対して相対移動することを制限するように、係止歯28aが形成されている。
【0039】
これにより、チャック12は、自然状態では支持板23の係止部28を安全ロープ11に押し当てて連結レバー25側にスライドすることを制限することにより連結位置を固定することができ、把持部22を把持して本体部21に接近させたときには、その係止部28の押し当てを解除して安全ロープ11に対して相対的にスライドされることを許容することにより連結位置を移動させることができる。要するに、このチャック12は、連結レバー25に取り付けた連結ロープ24が引っ張られたとしても、支持板23の係止部28を本体部21の円筒部21b内に突出させる方向に把持部22が引っ張られることになり、牽引方向にスライドすることが制限される。
【0040】
すなわち、チャック12は、連結ロープ24の牽引方向を水路鉄管100内における降下方向にして安全ロープ11に離脱不能に係合させることにより、その連結ロープ24により牽引された場合でもその牽引方向にスライドして後退(降下)することを制限する一方、把持部22を把持した状態を維持することにより、初めてその安全ロープ11に対してスライドすることを許容する第2保持装置を構成している。なお、このチャック12は、連結レバー25が牽引される方向に引かれる際に円筒部21b内の安全ロープ11に噛み合う方向に支持板23の係止部28が回動するように設計されているので、反対方向に押される際には、実質的にはその係止部28が安全ロープ11の表面を滑ってスライドすることを許容する。
【0041】
また、このチャック12は、連結レバー25の反対側の連結ロープ24の先端に、安全ベルト13に引っ掛ける図3に図示するフック35が取り付けられている。このフック35は、フック形状部35aの基部側に配設された回動軸36aに回動自在に軸支されて、そのフック形状部35aの内側から先端に接近する方向に不図示の付勢手段により付勢されている開閉レバー36と、フック形状部35aの中間部に配設された回動軸37aに回動自在に軸支されて、その開閉レバー36内で衝止部37bが一方向に回動するように不図示の付勢手段により付勢されているストッパー37と、を備えており、この開閉レバー36には、ストッパー37の衝止部37bが一方向に回動しているときの位置が回動軌跡と重なる貫通棒36bが設けられている。
【0042】
これにより、チャック12のフック35は、ストッパー37の回動軸37aを挟んで衝止部37bの反対側の基部37cを押さえて開閉レバー36を引っ掛けたい相手に押し付けるだけで、そのストッパー37の衝止部37bを貫通棒36bの回動軌跡から離脱させてその開閉レバー36の回動を可能にすることにより、その引っ掛ける相手をフック形状部35a内に進入させることができる。一方、このフック35は、ストッパー37を故意に回動させて開閉レバー36の貫通棒36bの衝止部37bによる衝止(ストッパー)を外した上で、さらに開閉レバー36を回動させない限り、その引っ掛けた相手をフック形状部35a内から離脱させることができない。このため、不用意にフック35が引っ掛けた相手から外れてしまうことなく、安全に、安心して作業することができる。
【0043】
よって、作業者は、胴部に巻き付けた安全ベルト13の不図示のリングにフック35を引っ掛けることによって、その作業者の胴部をチャック12を介して安全ロープ11に連結することができ、転落を防止することができる。
【0044】
支持ロープ16は、安全ロープ11と同様に、少なくとも水路鉄管100以上の長さを有して、その水路鉄管100の上部に固定されて下部に至るように延長されており、作業者に梯子装置18の重量を加えた荷重を掛けても十分に保持することのできる強度を備えている。
【0045】
シャックル17は、図4に示すように、支持ロープ16などの複数本を内装可能な面積で開口するU字形状に所望の強度を有する鉄鋼などを形成したU字部材51と、このU字部材51の開放端部を閉止する鉄鋼などからなるピン部材52と、を備えており、このU字部材51の両端部に開口する不図示の貫通穴内にピン部材52を貫通させてその先端に割りピン53を差し込むことにより内装する支持ロープ16などが不用意に外れてしまうことがないように(離脱不能に)設計されている。
【0046】
このシャックル17は、図4において、上下を逆向きにしたU字部材51の上側とその下側のピン部材52とが平行になる姿勢(降下する支持ロープ16と直交する姿勢)にして、上方から降ろされている支持ロープ16をそのU字部材51内に表面側から裏面側に抜けさせた後に、その上方からの支持ロープ16の上側を通して再度同じU字部材51の裏面側からピン部材52の表面側に抜ける、所謂、「の」字形状に巻き掛けて係合させるように使用するものであり、このシャックル17のピン部材52には、図5に示す梯子装置18を吊るす連結ロープ54が巻き掛けられている。なお、ピン部材52は、支持ロープ16をU字部材51に巻き掛けた後にその前記貫通穴内に差し込んで割りピン53により引き抜き不能に固定すればよい。
【0047】
梯子装置18は、図5に示すように、垂木などの棒状部材55を針金56できつく結束して組み立てられており、水路鉄管100の大きさに応じた幅でその底面付近に位置するとともに足場として使用できる程度の長さを有するように作製されている。この梯子装置18は、支持ロープ16により係合保持されたシャックル17のピン部材52と共に連結ロープ54が巻き掛けられて支持ロープ16に連結されて吊るされている。
【0048】
これにより、シャックル17は、梯子装置18が連結ロープ54により吊るされて下方に引っ張られても、支持ロープ16の「の」字形状部16aにU字部材51の上部が巻き掛けられることにより、その「の」字形状部16a内に下側から支持ロープ16が送られてこない限り、その位置に係合保持(係止)されて降下することが制限される。また、このシャックル17は、U字部材51の上部に巻き掛けた支持ロープ16の「の」字形状部16aを大きくする方向、言い換えると、その下側の支持ロープ16を牽引方向の反対方向に押し上げることにより、そのU字部材51の上部が下方に引っ張って「の」字形状部16aの形成位置(連結位置)を下方にずらすことができる。
【0049】
よって、作業者は、安全ロープ11にチャック12を連結させて作業位置に保持されるのと同様に、シャックル17を介して支持ロープ16に梯子装置18を連結することにより、その梯子装置18に乗って作業することができる。
【0050】
サンドブラスト装置14は、不図示のコンプレーサーで生成する圧搾空気により砂を圧送するサンドホース41と、このサンドホース41の先端に取り付けられて圧送されてくる砂の噴射・停止を制御するノズル42と、を備えており、例えば、高圧力で砂を塗装面などに吹き付けることにより古くなった塗装を剥くなどして清浄な状態にすることができ、防錆処理の塗装の前処理を容易かつ迅速に行うことができる。なお、塗装装置は、このサンドブラスト装置と同様に、塗料を供給するホースと、その塗料を噴射・停止するノズルとにより構成されているので、ここでの詳細な説明は割愛する。
【0051】
空気供給装置15は、作業者の頭部を覆う被覆カバー(頭部装着部)45と、作業者の視界を妨げないように被覆カバー45の頭部に設けられて密閉されている覗き窓46と、被覆カバー45の内部に連通するように接続されて不図示の空気供給装置からの清浄な空気を流通させてその被覆カバー45内に噴出する供給チューブ47と、を備えており、作業者は水路鉄管100内の空気に頼ることなく、被覆カバー45内の空気で呼吸して作業することができる。なお、被覆カバー45は、作業者の頭部だけに限らずに、胴部までの全体を覆うようにしてもよい。
【0052】
次に、この筒状構築物の内面処理作業用システム10を準備しての作業方法を説明する。まず、筒状構築物の内面処理作業用システム10の安全ロープ11、チャック12、安全ベルト13、支持ロープ16、シャックル17、梯子装置18、サンドブラスト装置14(サンドホース41、ノズル42)、および、空気供給装置15(被覆カバー45、供給チューブ47)を準備する。
【0053】
この後に、水路鉄管100の上部に設置されている不図示の出入口に安全ロープ11や支持ロープ16を固定してその水路鉄管100内に投入・降下させることにより、その下部に設置されている不図示の出入口にまで安全ロープ11や支持ロープ16を延在させる。次いで、これらのロープ11、16と同様に投入・降下させた不図示のロープ(ロープ11、16を利用してもよい)の先端に、サンドブラスト装置14のサンドホース41や空気供給装置15の供給チューブ47の先端部を一時的に連結して、その水路鉄管100の下部の出入口から投入して引き上げることにより、その上部の出入口からサンドホース41や供給チューブ47の先端部を引き出す。次いで、作業者が被る被覆カバー45に引き出した供給チューブ47を連結して空気供給装置15を組み立てるとともに、その作業者が抱えて使用するノズル42に引き出したサンドホース41を連結してサンドブラスト装置14を組み立てる。
【0054】
その一方で、作業者には、安全ベルト13を胴部に巻き付けて締め付け固定するとともに、その安全ベルト13の不図示のリングには、チャック12の連結レバー25に取り付けた連結ロープ24の先端のフック35を引っ掛ける。また、水路鉄管100上部の出入口から安全ロープ11の上端部側を一時的に引き出して、安全ベルト13に連結したチャック12の本体部21の円筒部21b内に安全ロープ11を内装させて離脱不能に係合させて連結する。
【0055】
また、梯子装置18には、一端側の短尺な棒状部材55に連結ロープ54を離脱不能に巻き掛けて連結する。また、水路鉄管100上部の出入口から支持ロープ16の上端部側を一時的に引き出して、ピン部材52を外した状態のシャックル17のU字部材51にその支持ロープ16を上記「の」字形状(図4参照)に巻き掛けて係合させるとともに、梯子装置18を連結する連結ロープ54をそのU字部材51内に内装する状態にして、ピン部材52を連結ロープ54内に通してU字部材51に割りピン53により引き抜き不能に取り付けることにより、支持ロープ16に梯子装置18を吊るすように連結する。
【0056】
以上の準備が完了した後に、サンドブラスト装置14と空気供給装置15を稼動させるとともに、梯子装置18を水路鉄管100内に上部の出入口から入れた後に、作業者もその出入口から水路鉄管100内に入って、図1に示すように、その梯子装置18の上に立って上部を見上げる作業姿勢を採る。このとき、梯子装置18は、支持ロープ16の「の」字形状部16aにシャックル17や連結ロープ54を介して吊り下げられて、その支持ロープ16の「の」字形状部16aは、その梯子装置18や作業者の重量により引っ張られるが、降下することなく、その作業位置に固定される。また、作業者は、安全ロープ11にチャック12によりその作業位置に連結保持されている。これにより、水路鉄管100内に下方からの大規模な足場を組むことなく、作業者は、梯子装置18を足場として両手を自由に使って安全に作業することができる。
【0057】
そして、作業者は、空気供給装置15の供給チューブ47から送られてくる被覆カバー45内の清浄な空気で呼吸しつつ覗き窓46から水路鉄管100の内面の状態を確認しながら、サンドブラスト装置14のノズル42を操作してサンドホース41から圧送されてくる砂を水路鉄管100の内面に高圧力で吹き付けることにより、その内面の古くなった塗装を剥ぐなどして清浄な状態にする。これにより、作業者は、水路鉄管100内の空気を必要とすることなく、このサンドブラスト処理に伴う砂の微粉末や、この後の塗装時の薬剤などを吸引して苦しくならずに、安全かつ楽に呼吸しつつシャックル17で連結保持されている梯子装置18の上で楽な姿勢のまま、その梯子装置18(作業位置)前方の塗装前の前処理を容易に行うことができる。
【0058】
その作業位置前方の水路鉄管100の内面の塗装を剥がした後には、安全ベルト13に連結したチャック12の把持部22を本体部21と共に掴む(把持部22を本体部21に接近させる)ことにより、そのチャック12の円筒部21b内で安全ロープ11にスライド不能に係止していた係止部28(係止爪28a)の押し当てを解除した状態のまま、その安全ロープ11に係合する位置を下方の次の作業位置までずらしてそのチャック12を離す。このとき、チャック12は、把持部22が本体部21から離隔して円筒部21b内に係止部28を突出させて安全ロープ11に押し当てることによりスライド不能に係止(連結)する。
【0059】
この後に、梯子装置18を吊り下げるシャックル17の下側の支持ロープ16を把持して押し上げるように力を加えると、そのシャックル17のU字部材51に巻き掛ける「の」字形状部16aが大きくなろうとするが、シャックル17には梯子装置18や作業者の重量が掛かって降下しようとすることから、自然に支持ロープ16における「の」字形状部16aの位置が降下して、梯子装置18の位置を下方にずらすことができる。
【0060】
ここで、この安全ロープ11や支持ロープ16に連結する位置を一回の操作でずらすことができない場合には、チャック12やシャックル17を一つずつずらす操作を決して同時に操作することなく、繰り返すことにより、所望の連結位置にそれより降下不能に係止させる。これにより、支持ロープ16に吊り下げる梯子装置18を容易に降下させることができるとともに、安全ロープ11に連結するチャック12を掴むだけで、また、握り損なうなどした場合でも、チャック12を介して連結する安全ベルト13に作業者を保持させることができ、転落することなく、その連結位置を容易かつ安全に移動させつつ、水路鉄管100内での作業を繰り返すことができる。
【0061】
以降同様に、作業者は、空気供給装置15の被覆カバー45内の清浄な空気で呼吸しつつ、安全ロープ11にチャック12を介して連結された安全ベルト13で安全を確保しつつ、梯子装置18の上に立つ楽な姿勢のまま、サンドブラスト装置14により水路鉄管100の内面の古くなった塗装を剥ぐなどの塗装前処理を行って、その安全ロープ11や支持ロープ16に連結された作業位置を下方にずらして降下することを繰り返すことにより、水路鉄管100の内面の全面から古い塗装を剥ぎ取る。このとき、作業者の前方、すなわち、水路鉄管100の内面の作業を施す箇所には、安全ロープ11や支持ロープ16の線状部材が存在するだけであり、例えば、全長に渡って組まれた足場などのようにサンドブラスト処理の邪魔になることなく、その安全ロープ11などを少しずらすだけで容易かつ均一に水路鉄管100の内面から古い塗装を剥ぎ取る前処理を行うことができる。
【0062】
次いで、作業者は、水路鉄管100内から下部の出入口から出て上部の出入口に戻って、サンドブラスト装置14のノズル42を圧搾空気のみを噴出するノズルに持ち換えて、同様に、水路鉄管100の内面に圧搾空気を吹き付けることにより、残留する砂を下部に吹き飛ばす作業を繰り返して、新たな塗装をすることができるように水路鉄管100の内面を清浄にする。
【0063】
次いで、作業者は、水路鉄管100内から下部の出入口から出て上部の出入口に戻って、塗装装置のノズルに持ち換えて、同様に、水路鉄管100の内面に塗料を吹き付けることにより、水路鉄管100の内面を新たに塗装する。この塗装作業は、塗装した塗料が乾いた後に3回程度繰り返す。このとき、サンドブラスト処理の場合と同様に、作業者の前方の水路鉄管100の内面の塗装する箇所には、安全ロープ11などの線状部材が存在するだけであり、例えば、全長に渡って組まれた足場などのように塗装処理の邪魔になって、最後の足場撤去時にしか塗装できない箇所が出てしまって塗装品質がムラになってしまうことなく、その安全ロープ11などを少しずらすだけで容易かつ均一に水路鉄管100の内面に塗料を吹き付けて塗装することができ、全面を高品質かつ均一に塗装することができる。
【0064】
ここで、これらの作業を行う際には、安全ロープ11を内装状態にするチャック12の円筒部21bを閉止状態にする底面部21cの雄ネジ26が回転して本体部21側の雌ネジ部21eとの螺合が緩んだとしても、本体部21と底面部21cに溶接されている分割円筒部21f、21gに円柱状ロック部材27が貫通していてその底面部21cの開放を制限する。これにより、作業者は、不用意にチャック12から安全ロープ11が外れて転落してしまうことなく、安全を確保した状態で作業を継続することができる。また、梯子装置18を支持ロープ16や連結ロープ54で吊り下げるシャックル17でも、その支持ロープ16などをU字部材51内に内装する状態に割りピン53で離脱不能にしたピン部材52で閉止するので、梯子装置18が不用意に転落してしまって、作業不能になってしまうことなく、楽な姿勢のまま作業を継続することができる。
【0065】
このように本実施形態においては、傾斜する水路鉄管100内に上部から下部に安全ロープ11や支持ロープ16を渡して、その安全ロープ11に安全ベルト13を連結したチャック12を係合・係止させるとともに、支持ロープ16には梯子装置18を吊り下げるシャックル17を巻き掛け係合させるだけで、作業者は安全ベルト13により転落防止を確保しつつ梯子装置18の上に立って楽な姿勢で作業することができ、その作業位置もチャック12を握ったり、支持ロープ16を押し上げるだけの簡単な操作で移動して、その水路鉄管100の内面にサンドブラスト処理や塗装処理を施すことができる。したがって、傾斜する水路鉄管100内に上部から下部までの大規模な足場を組むことなく、その水路鉄管100の内面に高品質の防錆処理を安全かつ容易に、また、安価に施すことができる。
【0066】
次に、図6および図7は本発明に係る筒状構築物の内面処理作業方法を実行するその内面処理作業用システムの第2実施形態を示す図である。なお、本実施形態では、上述実施形態と略同様に構成されているので、同様な構成には同一の符号を付して特徴部分を説明する。
【0067】
まず、システム構成を説明する。図6において、筒状構築物の内面処理作業用システム60は、上述実施形態と同様に、安全ロープ11と、チャック12と、安全ベルト13と、サンドブラスト装置および塗装装置14と、空気供給装置15と、支持ロープ16と、シャックル17と、備えているとともに、上述実施形態における梯子装置18に代えて、水平台装置61を備えて構成されており、上述実施形態で内面処理する水路鉄管100よりも大径の水路鉄管200の内面処理を施す際に使用して、防錆処理などを快適に行うことができる。
【0068】
水平台装置61は、図7に示すように、水路鉄管200の大きさに応じた幅でその底面に支持されるとともに足場として使用できる程度の長さを有する基礎部材62と、この基礎部材62と略同様の幅と長さを有して水路鉄管200に対して傾斜することにより水平の姿勢となる水平部材63と、水平の姿勢を維持することができるように水平部材63を基礎部材62に連結して支持させる支持部材64と、により構築されており、これら各部材62〜64として機能するように、垂木などの棒状部材を針金56できつく結束して組み立てられている。この水平台装置61の水平部材63としては、同様の棒状部材が一定の隙間を形成するように敷き詰められており、その隙間が足場としての滑り止めとして機能するとともに、その隙間から古い塗装などの塵埃等を落下させることができる。そして、この水平台装置61は、上述実施形態の梯子装置18と同様に、基礎部材62に連結ロープ54が巻き掛けられてシャックル17を介して支持ロープ16により連結(係合保持)されて吊るされている。
【0069】
なお、図6中の69は、水平台装置61に設置した作業灯であり、上述実施形態では、不図示の作業灯を身に着けて水路鉄管200の内面を照らしていたのを、水平台装置61に設置することにより身軽に作業することを可能にしている。ただし、上述実施形態においても、梯子装置18に作業灯69を設置してもよいことはいうまでもない。
【0070】
次に、この筒状構築物の内面処理作業用システム60を準備しての作業方法を説明する。まず、筒状構築物の内面処理作業用システム60の安全ロープ11、チャック12、安全ベルト13、支持ロープ16、シャックル17、水平台装置61、サンドブラスト装置14(サンドホース41、ノズル42)、および、空気供給装置15(被覆カバー45、供給チューブ47)を準備する。
【0071】
この後には、上述実施形態と同様に作業するので、説明を繰り返すことは割愛するが、水平台装置61を用いることにより、作業者は、図6に示すように、その水平台装置61の上に立って水平方向に楽に移動しつつ作業することができ、水路鉄管200のように底面側から天井側までの高さがあるような場合でも、その天井側に接近して作業することができる。
【0072】
このように本実施形態においては、上述実施形態と同様に、傾斜する水路鉄管200内に上部から下部に安全ロープ11や支持ロープ16を渡して、その安全ロープ11に安全ベルト13を連結したチャック12を係合・係止させるとともに、支持ロープ16には水平台装置61を吊り下げるシャックル17を巻き掛け係合させるだけで、作業者は安全ベルト13により転落防止を確保しつつ水平台装置61の上に立って楽な姿勢で作業することができ、その作業位置もチャック12を握ったり、支持ロープ16を押し上げるだけの簡単な操作で移動して、その天井側までに距離のある水路鉄管200の内面にもサンドブラスト処理や塗装処理を施すことができる。したがって、傾斜する大径の水路鉄管200内に上部から下部までの大規模な足場を組むことなく、その水路鉄管200の内面に高品質の防錆処理を安全かつ容易に、また、安価に施すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。例えば、上述実施形態では、チャック12とシャックル17の双方を用いる場合を説明するが、いずれか一方の2つを用いても良いことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る筒状構築物の内面処理作業方法を実行するその内面処理作業用システムの第1実施形態を示す図であり、その概略全体構成を示す側方立面図である。
【図2】その要部構成の装置構成を示す図であり、(a)はその使用時の平面図、(b)はその機能を説明する開放状態での平面図である。
【図3】その要部構成の装置構成を示す平面図である。
【図4】その要部構成の使用時の状態を示す平面図である。
【図5】その要部構成の使用時の状態を示す平面図である。
【図6】本発明に係る筒状構築物の内面処理作業方法を実行するその内面処理作業用システムの第2実施形態を示す図であり、その概略全体構成を示す側方立面図である。
【図7】その要部構成の装置構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0075】
10、60 内面処理作業用システム
11 安全ロープ
12 チャック
13 安全ベルト
14 サンドブラスト装置
15 空気供給装置
16 支持ロープ
16a 「の」字形状部
17 シャックル
18 梯子装置
21 本体部
22 把持部
21b 円筒部
21c 底面部
24、54 連結ロープ
25 連結レバー
28 係止部
28a 係止爪
31 胴巻きベルト
32 尻当てベルト
33、34 リング
35 フック
41 サンドホース
42 ノズル
45 被覆カバー
46 覗き窓
61 水平台装置
62 基礎部材
63 水平部材
64 支持部材
100、200 水路鉄管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜する姿勢で延在する筒状構築物の内面の処理作業を行う際に使用する筒状構築物の内面処理作業用システムであって、
筒状構築物内の上部に固定されて下部まで延長される所定以上の強度を有する線状部材と、該線状部材に連結して作業者の作業位置を確保する足場装置と、筒状構築物の内面に所望の処理を施す処理装置と、を備えることを特徴とする筒状構築物の内面処理作業用システム。
【請求項2】
前記足場装置は、作業者の作業位置付近の長さを有して筒状構造物の内面に載置されて足場となる梯子状部材であることを特徴とする請求項1に記載の筒状構築物の内面処理作業用システム。
【請求項3】
前記足場装置は、作業者の作業位置付近の筒状構造物の内面上に載置される基礎部材と、該基礎部材に支持されて水平の足場となる水平部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載の筒状構築物の内面処理作業用システム。
【請求項4】
前記線状部材を2本有して、第1線状部材には足場装置を作業位置に保持する第1保持装置が連結される一方、第2線状部材には作業者を作業位置に保持する第2保持装置が連結されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の筒状構築物の内面処理作業用システム。
【請求項5】
前記保持装置は、線状部材に離脱不能に係合して牽引方向に後退することを制限するとともに所定の操作の継続により該線状部材の延在方向の一方向または双方向にスライドすることを許容する構造に設計されて、足場装置または作業者に連結されている別個の線状部材が取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の筒状構造物の内面処理作業用システム。
【請求項6】
前記保持装置は、線状部材の延在方向に対して交差する姿勢で上下に位置する平行部分を有して、該線状部材に対する牽引方向には後退することが制限される一方、該牽引の反対方向には当該制限が解除される巻き掛け方で当該線状部材を離脱不能に巻き掛けられ、下側の平行部分に足場装置または作業者に連結されている別個の線状部材が取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の筒状構造物の内面処理作業用システム。
【請求項7】
前記処理装置は、筒状構築物の内面の塗装の前処理を行うサンドブラスト装置、または、筒状構築物の内面を塗装する塗装装置であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の筒状構築物の内面処理作業用システム。
【請求項8】
前記作業者が周囲の空気に頼ることなく呼吸可能に清浄な空気を供給する空気供給装置を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の筒状構築物の内面処理作業用システム。
【請求項9】
前記空気供給装置は、前方の視界を確保しつつ作業者の頭部を覆う頭部装着部と、該頭部装着部内に連結して清浄空気を供給する供給チューブと、を有することを特徴とする請求項8に記載の筒状構築物の内面処理作業用システム。
【請求項10】
傾斜する姿勢で延在する筒状構築物の内面の処理作業を行う際の筒状構築物の内面処理作業方法であって、
筒状構築物内の上部から下部以上の長さで所定以上の強度を有する2本の線状部材と、該第1線状部材に連結されて作業者の作業位置を確保する足場装置と、第1線状部材に取り付けられて足場装置を作業位置に連結保持する第1保持装置と、第2線状部材に取り付けられて作業者を作業位置に連結保持する第2保持装置と、筒状構築物の内面に所望の処理を施す処理装置と、を準備して、
筒状構築物内の上部に第1、第2線状部材を固定して下部まで延長させた後に、該筒状構築物内の上方の第1、第2線状部材に第1、第2保持装置を取り付けて足場装置や作業者を作業位置に連結保持させ、この後に、処理装置による筒状構築物の内面への処理を開始し、
次いで、作業位置での筒状構築物の内面に施す処理作業が終了する毎に第1、第2保持装置を下方にスライドさせつつ降下することを該筒状構築物の下部まで繰り返すことを特徴とする筒状構築物の内面処理作業方法。
【請求項11】
前記処理装置として、筒状構築物の内面の塗装の前処理を行うサンドブラスト装置、または、筒状構築物の内面を塗装する塗装装置を準備して、
筒状構築物内の上部から下部の内面のサンドブラスト処理または塗装処理を行うことを特徴とする請求項10に記載の筒状構築物の内面処理作業方法。
【請求項12】
前記作業者が周囲の空気に頼ることなく呼吸可能に清浄な空気を供給する空気供給装置を準備して、
処理装置による筒状構築物の内面処理を行う際に、該空気供給装置から清浄な空気を作業者に供給することを特徴とする請求項10または11に記載の筒状構築物の内面処理作業方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−23494(P2007−23494A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202865(P2005−202865)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(591124167)中電工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】