説明

箔シール型放電灯および電極支持棒中途支持部材

【課題】 破裂のおそれを低減できる放電灯を提供する。
【解決手段】 ビーズ6は、内筒部26および外筒部28で構成されている。外筒部28は、内筒部26が挿入できる貫通穴41を有する。貫通穴41のキャップ9側は、キャップ9のテーパ部9dが挿入されて、当接する内テーパ部を有する。内筒部26にはモリブデン箔30が巻回されて、外筒部28に挿入される。径方向を2つの部材で構成することにより、個々の部材の肉厚を薄くすることができる。また、各部材間に、モリブデン箔30が設けられている。したがって、使用時に熱による歪みが増大しても、その歪みから生ずる応力が外筒部28へ伝達されることを防止できる。さらに内筒部26に亀裂が生じた場合でも、外筒部28へ伝達されることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箔シール型放電灯に関し、特に、電極支持棒中途支持部材の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、封止工程における電極の傾きを防止するために、内部リード棒保持筒体7の径を封止用のガラス部材1と同径にした箔シール型の放電ランプが開示されている。
【0003】
【特許文献1】実開平6-73856号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記放電ランプは、内部リード棒保持筒体7をガラス部材1と同径にしたことにより、内部リード棒保持筒体7が肉厚となる。このために、内部リード棒保持筒体7に歪みがあると、点灯時の熱でその歪みが増大し、許容範囲を超えると内部リード棒保持筒体に亀裂が生ずる。かかる亀裂は当該部分でバルブを破裂させるおそれがあった。
【0005】
この発明は、上記問題を解決し、上記破裂を防止する放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1)本発明にかかる箔シール型放電灯は、1)両端に封止部を有するガラス封体、
先端に電極を有する電極支持棒、2)前記封止部に配置され、前記電極指示棒の先端とは逆側の端部を支持するガラス製の電極支持棒保持部材、3)前記電極支持棒保持部材の電極側に隣接して配置され、前記電極支持棒の中途を支えるガラス製の電極支持棒中途支持部材、を備えた箔シール型放電灯であって、4)前記電極支持棒中途支持部材は、前記電極支持棒を覆うガラス製の内筒部材および前記内筒部を覆うガラス製の外周部材で構成されており、その間には薄板状の緩衝材が設けられている。
【0007】
したがって、前記電極支持棒中途支持部材を構成する部材を肉薄とできる分だけ歪みが生じにくい。また、前記内筒部材に亀裂が生じても外周部材との間で緩衝材が存在するので、外周部材への亀裂の伝達を防止することができる。これにより、放電ランプの破裂を防止することができる。
【0008】
2)本発明にかかる電極支持棒中途支持部材は、箔シール型放電灯の電極支持棒を支える電極支持棒保持部材に隣接して用いられ、前記電極支持棒の中途を支える電極支持棒中途支持部材であって、前記電極支持棒を覆う内筒部材、b)前記内筒部を覆う外周部材で構成されており、その間には緩衝材が設けられている。したがって、肉薄とできる分だけ歪みが生じにくく、前記内筒部材に亀裂が生じても外周部材との間で緩衝材が存在するので、外周部材への亀裂の伝達を防止することができる。これにより、放電ランプの破裂を防止することができる。
【0009】
3)本発明にかかる電極支持棒中途支持部材においては、前記外周部材は、前記電極支持棒保持部材側の端部から逆側の端部に向けて周方向の径が大きくなるよう形成されており、かつ、前記電極支持棒保持部材側の端部には、先細径になるようにテーパ加工された前記電極支持棒保持部材の先端が挿入可能な凹部が設けられている。したがって、前記電極支持棒保持部材の先端が挿入されると、前記電極支持棒保持部材のテーパー面の途中から前記外周部材の外周が前記電極に向かう方向に大きくなる。したがって、電極支持棒中途支持部材の全長を短くしても、よりなだらかな封止部を形成することができる。
【0010】
4)本発明にかかる電極支持棒中途支持部材においては、前記外周部材の外形については、周方向の径が電極に向かう方向に大きくなるよう形成されており、前記内筒部材の外形、および前記外周部材の内形状は、周方向の径が電極に向かう方向に大きくなるよう形成されている。したがって、前記外周部材について、厚肉部と薄肉部の差を小さくできる。これにより、より歪みを生じにくくさせることができる。
【0011】
5)本発明にかかる電極支持棒中途支持部材においては、前記緩衝材は、金属薄膜である。したがって、前記内筒部材と前記外周部材の間に金属薄膜を設けるという簡単な構成で、前記破裂を防止することができる。
【0012】
なお、実施形態では、金属薄膜は内筒部材の外周に巻き付けるようにしたが、または図8に示すように、内筒部材26と外周部材28の間の一部にのみ設け、金属薄膜が存在しない領域にて空間62が存在するように金属薄膜を形成してもよい。
【0013】
6)本発明にかかる電極支持棒中途支持部材においては、さらに、前記外周部は前記支持棒の軸方向に直交する方向に平行に分割されており、間に緩衝部材が設けられている。したがって、外周部材を複数の部材で構成することができる。
【0014】
7)本発明にかかる電極支持棒中途支持部材においては、前記外周部は複数の円筒状部材で構成されており、電極に近づくにつれてその径が大きい。したがって、径の異なる円筒状部材によって前記外周部材を構成することができる。
【0015】
9)本発明にかかる電極支持棒中途支持部材は、箔シール型放電灯の電極支持棒を支える電極支持棒保持部材に隣接して用いられ、前記電極支持棒の中途を支える電極支持棒中途支持部材であって、複数の部位で構成されており、各部位間には緩衝材が設けられている。したがって、電極支持棒中途支持部材を肉薄とでき、これにより歪みが生じにくく、また、前記複数の部材のいずれかに歪みがあり熱で増大して亀裂が生じても、他の部材との間には緩衝材が存在するので、当該他の部材まで亀裂が伝達されることがない。
【0016】
特許請求の範囲にて用いた用語と実施形態における部材との対応について説明する。「電極支持棒保持部材」はキャップ9が、「電極支持棒中途支持部材」とは、ビーズ6が、「内筒部材」とは内筒部26が、「外周部材」とは外筒部28が、「緩衝材」はモリブデン箔30が該当する。
【0017】
また、「前記電極支持棒保持部材側の端部から逆側の端部に向けて周方向の径が大きくなる」とは、図2に示すように、テーパでなめらかに大径となる場合はもちろん、図4に示すように、段々形状で径が大きくなる場合も含む。また、途中までテーパで広がりその後は同径となる場合も含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に、本発明にかかる放電灯1の主要断面図を示す。放電灯1は、箔シール型の放電ランプであり、封体3、陽極5、リード棒7、キャップ9、およびビーズ6を備えている。
【0019】
封体3は両端に封止部3aを有する。封止部3aには、ガラス製のキャップ9が配置されている。
【0020】
キャップ9の先端にはリード棒7の基端が挿入される。これにより、リード棒7が支えられる。キャップ9の外周には陽極5に通電するための導電部材として1または2以上の金属箔13が設けられている。キャップ9の先端にはリード棒7が挿入される貫通穴が設けられた金属板15が設けられている。なお、金属板15とリード棒7とは電気的に接続されている。また、金属板15と金属箔13も電気的に接続されている。これにより、リード棒7の先端に設けられた陽極5に外部から通電することができる。
【0021】
ビーズ6について図2を用いて説明する。ビーズ6は、内筒部26および外筒部28で構成されている。内筒部26はガラス製であり、キャップ9の先端の金属板と同径dである。また、一端につば部32を有し、中央にリード棒7が挿入される貫通穴29を有する。外筒部28は、内筒部26が挿入できる貫通穴41を有する。貫通穴41のキャップ9側は、キャップ9のテーパ部9dが挿入されて、当接する内テーパ部43を有する。また、外筒部28は外周にも、外テーパ部47を有する。内筒部26にはモリブデン箔30が巻回されて、外筒部28の貫通穴41に挿入される。このように、ビーズ6について、径方向を2つの部材で構成することにより、ここの部材について径方向の肉厚を薄くすることができる。また、各部材間に、モリブデン箔30が設けられている。したがって、使用時に熱による歪みが増大しても、その歪みから生ずる応力が外筒部28へ伝達されることを防止できる。さらに内筒部26に亀裂が生じた場合でも、外筒部28へ伝達されることを防止できる。
【0022】
また、外筒部28について、外テーパ部47および内テーパ部43が設けられている。したがって、外筒部28にキャップ9を挿入すると、ビーズ6のテーパの一端がキャップ9のテーパ面の途中に位置する。これにより、以下のような利点がある。図3に示すようなキャップ9の先端に設けられた金属板とほぼ同径からテーパが形成されている場合と比べると、ビーズ6のテーパの角度θ(図3参照)を小さくすることができる。これにより、テーパ部をなだらかに封止することができる。もちろん、ビーズ6のテーパを緩くするだけであれば、その分、ビーズ6の全長を長くすればよい。しかし、ビーズ6には、キャップ9の先端の金属板から電極側の端部までの距離L(図3参照)を短くしたいという要請がある。したがって、かかる要請を満足しつつ、テーパ角を緩くすることができる。
【0023】
なお、かかる要請が問題とならない場合には、図3に示すように実施形態も可能である。
【0024】
図4に、外筒部28を軸方向にさらに複数の部材28a〜28cに分割した実施形態を示す。このように、外筒部を軸方向で分割することにより、外筒部の軸方向の厚みを薄くできるので、歪みをより小さくすることができる。なお、複数の部材28a〜28c間に緩衝材を設けてもよい。
【0025】
図5に、外筒部28を径の異なる円筒部材29a〜29eで構成した実施形態を示す。このように、外筒部を径の異なる円筒部材29a〜29eで構成することにより、テーパ加工することなく、外筒部を構成することができる。
【0026】
図6に、外筒部28の内径もテーパ状に構成した実施形態を示す。このように、外筒部28の内径および内筒部26をテーパ状とすることにより、外筒部の外周にテーパを設けた場合でも、外筒部の肉厚をより均一にすることができる。これにより、外筒部が歪みによる破裂の可能性を低減できる。
【0027】
本実施形態においては、外筒部28に貫通穴41を設け、内筒部26につば部32を設けて、内筒部28と外筒部28の位置決めをしている(図1参照)。しかし、内筒部26と外筒部28の関係については種々の変形例が可能である。例えば、上記実施形態では、金属板15の外径とほぼ同じ径の貫通穴41を形成したが、底付きにしてもよいし、いずれかを大きくするようにしてもよい。いずれにしても、ビーズ6にキャップ9の先端が挿入される凹部があればよい。
【0028】
さらに、本実施形態においては、図1において内筒部26、外筒部28で構成した場合について説明したが、図7に示すように、ビーズ6を構成することもできる。この場合でも、全長を短くしつつ、テーパ角を緩くすることができるという効果を奏する。
【0029】
上記実施形態においては、金属薄膜を内筒部材の外周に巻き付けるようにしたが、図8に示すように、内筒部材26と外周部材28の間の一部にのみ複数のモリブデン箔60を設け、金属薄膜が存在しない領域にて空間62が存在するように金属薄膜を形成してもよい。
【0030】
本実施形態においては、陽極側の保持について説明したが、陰極についても同様に適用することができる。
【0031】
本実施形態においては、内筒部と外筒部で構成した場合、すなわち、径方向を複数の部材で構成した説明したが、軸方向に直交する方向にて分割して、複数の部品で構成することもできる。この場合でも、軸方向の肉厚が薄くなるので歪みの発生を低減することができる。その際、各部材間に緩衝材を設けてもよい。
【0032】
本実施形態においては、ビーズ6を封体3と同じ石英ガラスで構成したが、他の材質であってもよい。この場合、熱膨張率が同程度のものが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】放電灯1の要部断面図である。
【図2】ビーズ6の詳細図である。
【図3】他の実施形態を示す図である。
【図4】他の実施形態を示す図である。
【図5】他の実施形態を示す図である。
【図6】他の実施形態を示す図である。
【図7】他の実施形態を示す図である。
【図8】金属箔に関する他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
3・・・・封体
5・・・・陽極
6・・・・ビーズ
7・・・・リード棒
9・・・・キャップ
26・・・内筒部
28・・・外筒部
30・・・モリブデン箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に封止部を有するガラス封体、
先端に電極を有する電極支持棒、
前記封止部に配置され、前記電極指示棒の先端とは逆側の端部を支持するガラス製の電極支持棒保持部材、
前記電極支持棒保持部材の電極側に隣接して配置され、前記電極支持棒の中途を支えるガラス製の電極支持棒中途支持部材、
を備えた箔シール型放電灯であって、
前記電極支持棒中途支持部材は、前記電極支持棒を覆うガラス製の内筒部材および前記内筒部を覆うガラス製の外周部材で構成されており、その間には薄板状の緩衝材が設けられていること、
を特徴とする箔シール型放電灯。
【請求項2】
箔シール型放電灯の電極支持棒を支える電極支持棒保持部材に隣接して用いられ、前記電極支持棒の中途を支える電極支持棒中途支持部材であって、
前記電極支持棒を覆う内筒部材、および前記内筒部を覆う外周部材で構成されており、その間には緩衝材が設けられていること、
を特徴とする電極支持棒中途支持部材。
【請求項3】
請求項2の電極支持棒中途支持部材において、
前記外周部材は、前記電極支持棒保持部材側の端部から逆側の端部に向けて周方向の径が大きくなるよう形成されており、かつ、前記電極支持棒保持部材側の端部には、先細径になるようにテーパ加工された前記電極支持棒保持部材の先端が挿入可能な凹部が設けられていること、
を特徴とするもの。
【請求項4】
請求項2または請求項3の電極支持棒中途支持部材において、
前記外周部材の外形については、周方向の径が電極に向かう方向に大きくなるよう形成されており、
前記内筒部材の外形、および前記外周部材の内形状は、周方向の径が電極に向かう方向に大きくなるよう形成されていること、
を特徴とするもの。
【請求項5】
請求項2〜請求項4のいずれかの電極支持棒中途支持部材において、
前記緩衝材は、金属薄膜であること、
を特徴とするもの。
【請求項6】
請求項2の電極支持棒中途支持部材において、
さらに、前記外周部は前記支持棒の軸方向に直交する方向に平行に分割されており、間に緩衝部材が設けられていること、
を特徴とするもの。
【請求項7】
請求項6の電極支持棒中途支持部材において、
前記外周部は複数の円筒状部材で構成されており、電極に近づくにつれてその径が大きいこと、
を特徴とするもの。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれかの電極支持棒中途支持部材を備えたことを特徴とする放電灯。
【請求項9】
箔シール型放電灯の電極支持棒を支える電極支持棒保持部材に隣接して用いられ、前記電極支持棒の中途を支える電極支持棒中途支持部材であって、
複数の部位で構成されており、
各部位間には緩衝材が設けられていること、
を特徴とする電極支持棒中途支持部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−32667(P2009−32667A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120303(P2008−120303)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【分割の表示】特願2007−193885(P2007−193885)の分割
【原出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(599117211)株式会社ユメックス (22)
【Fターム(参考)】