説明

箔プリンタ

【課題】凹凸のある被転写材に対しても、所望パターンの箔を確実に転写して印字品質を向上させる。
【解決手段】ホットスタンプ箔と、ホットスタンプ箔を巻回した供給ローラと、ホットスタンプ箔を巻き取る巻取ローラと、巻取ローラを駆動する巻取用モータと、ホットスタンプ箔の箔層を被転写材に転写するためのサーマルヘッドと、サーマルヘッドに内蔵されている複数の発熱抵抗体素子の発熱を制御する制御部とを備えた箔プリンタにおいて、ホットスタンプ箔1の箔層102に、レジン、ワックスまたはこれらの混合材からなるインク層12を設けることによって、表面に凹凸のある被転写材3に対しても箔層102を確実に転写することができ、印字品質が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットスタンプ箔を用いて被転写材に箔転写を行う箔プリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
被転写材に箔を転写する方法として、従来から箔押(ホットスタンピング)が知られている。この方法は、ベースフイルム、離型層、着色層、蒸着層、及び接着層からなるホットスタンプ箔を、予め所望パターンを形成した専用の金属型で熱圧着することにより、ベースフイルム以外の離型層、着色層、蒸着層及び接着層からなる箔層を軟化させて箔を被転写材に転写する方法である(後掲の特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来から一般に行われている箔押では、所望パターンの違いにより別個の型が必要となり、また、その専用の型で熱圧着することにより箔転写を行うため、装置自体が大型となる。
【0004】
そこで、本発明者等は、従来の技術常識にこだわらず、箔押とは全く異なる分野の技術であるサーマルヘッドを利用すれば、ホットスタンプ箔の所望パターン部分の箔を、被転写材に直接箔転写できることを見出し、箔プリンタの発明をすでに提案した(特許文献2参照)。
【0005】
上記特許文献2の箔プリンタは、ホットスタンプ箔の所望パターン部分の箔を被転写材に直接箔転写するもので、1工程で一品一様の箔転写が安価な機構や技術で実現できる。
【0006】
【特許文献1】特開平7−186523号公報
【特許文献2】特開2005−169858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、箔が転写される被転写材には、用途に応じて種々のものがあり、例えば、シボ紙などもその一つである。シボ紙は、表面に凹凸のある紙材であり、ホットスタンプ箔を用いて文字やデザインを金箔などで転写することにより、高級感を出すことができる。しかしながら、従来の箔プリンタでは、凹凸のあるシボ紙に箔を転写する場合、所望パターンの箔が完全に転写されず、転写ムラや転写不良が発生して印字品質(解像度)が低下するという問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明の課題は、凹凸のある被転写材に対しても、所望パターンの箔を確実に転写して印字品質を向上させることができるホットスタンプ箔を用いた箔プリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の箔プリンタは、インク層を設けたホットスタンプ箔を用いるという、従来には全くなかった新規な着想に基づいている。
【0010】
具体的には、箔プリンタに用いるホットスタンプ箔の接着層の表面に、レジン、ワックスまたはこれらの混合材からなるインク層を設けたものである。あるいは、ホットスタンプ箔の接着層の代わりに、レジン、ワックスまたはこれらの混合材からなるインク層を設けたものである。
【0011】
このようなインク層が形成されたホットスタンプ箔を用いた箔プリンタでは、被転写材がシボ紙のような凹凸のあるものであっても、所望パターンの箔を確実に転写して印字品質を向上させることができる。
【0012】
インク層のインクとしては、ワックスタイプ、レジンタイプ、混合タイプのいずれを用いてもよい。また、ホットスタンプ箔の種類、用途、および被転写材の材質、表面状態によって、インク層のインクの材質、厚み等を最適に設定すればよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の箔プリンタは、インク層を設けたホットスタンプ箔を用いているため、凹凸のある被転写材に対しても、所望パターンの箔を確実に転写して印字品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明に係る箔プリンタの一実施形態を示す概略構成図である。Pは箔プリンタであって、ステージ6と、このステージ6の上方に移動可能に配置されたヘッドユニットHとを備えている。
【0015】
ステージ6は、ステンレス等の硬質な金属材料からなる矩形板状の支持板63を備えている。支持板63の上面中央部には、シリコン製のゴムシート62が設けられ、このゴムシート62上に被転写材3が載置される。
【0016】
ヘッドユニットHには、ホットスタンプ箔1と、このホットスタンプ箔1の箔層(後述)を被転写材3に転写するための転写部10が装備されている。転写部10は、サーマルヘッド2を有している。また、ヘッドユニットHには、ホットスタンプ箔1を巻回した供給ローラ53、ホットスタンプ箔1を巻き取る巻取ローラ54、および巻取ローラ54を駆動する巻取用モータ55が設けられている。57aおよび57bは、ホットスタンプ箔1の搬送を案内する案内ローラである。
【0017】
図2は、箔プリンタPの電気ブロック図を示している。50は箔プリンタPの動作を制御する制御部、51は印刷開始・終了位置や印刷パターンなどの情報を入力するための入力装置、52はヘッドユニットHを搬送する搬送用モータ、55は図1でも示した巻取用モータである。転写部10には、サーマルヘッド2を駆動するドライバーIC19が設けられており、制御部50は、このドライバーIC19を介して、サーマルヘッド2に内蔵されている複数の発熱抵抗体素子2aの発熱を制御する。
【0018】
制御部50は、入力装置51からの入力信号に基づいて、サーマルヘッド2、搬送用モータ52、巻取用モータ55を駆動する。これにより、ホットスタンプ箔1を供給ローラ53から巻取ローラ54へ送りつつヘッドユニットHを移動させ、ホットスタンプ箔1の箔層を被転写材3に転写して、所望パターンの印刷を行なう。箔転写の詳細については後述する。なお、入力装置51は、箔プリンタP自体に備わっていてもよいし、箔プリンタPに外付けされるパーソナルコンピュータ等であってもよい。
【0019】
ホットスタンプ箔1は、長尺な帯状をしており、図4に示すように、ベースフィルム1aと、このベースフィルム1a上に積層された離型層1b、着色層1c、蒸着層1d、接着層1eと、接着層1eの表面に設けられたインク層12とを備えている。
【0020】
ベースフィルム1aは、例えばポリエチレンテレフタール(PET)やポリプロピレン(PP)のような素材からなる。離型層1bは、例えばアクリル系樹脂やセルローズ系樹脂からなる。着色層1cは、一般のインキと同系統の樹脂からなる。蒸着層1dは、真空蒸着法によりアルミニウムを蒸着した薄い金属膜層である。接着層1eは、例えばアクリルやPET等の素材からなる。インク層12は、レジン、ワックスまたはこれらの混合材からなるインク層であって、接着層1eの表面に塗布されている。
【0021】
上記各層のうち、ベースフィルム1aは、被転写材3に転写されずに残るベース層101を構成している。また、離型層1b、着色層1c、蒸着層1d、接着層1eおよびインク層12は、ベース層101から離れて被転写材3に転写される箔層102を構成している。
【0022】
ホットスタンプ箔1は、インク層12の面を下側にして、図1のサーマルヘッド2と被転写材3との間に供給される。そして、巻取用モータ55を駆動して巻取ローラ54を回転させ、ホットスタンプ箔1を巻取ローラ54で巻取りながら矢印方向へ搬送する。また、搬送用モータ52によりヘッドユニットHを搬送して、サーマルヘッド2を転写開始位置から転写終了位置まで移動させ、この過程でサーマルヘッド2を発熱させて、ホットスタンプ箔1の箔層102を被転写材3に転写する。
【0023】
図3は、上述した箔プリンタPによる箔転写の原理図である。2はサーマルヘッド、3は被転写材である。サーマルヘッド2は、図2で示したように複数の発熱抵抗体素子2aを有している。各発熱抵抗体素子2aは、制御部50によりドライバーIC19を介して発熱が制御され、転写しようとする箔のパターンに応じて、発熱抵抗体素子2aが選択的に発熱するようになっている。被転写材3は、例えばシボ紙からなる。但し、被転写材3としてはシボ紙に限らず、後述するような種々の素材を用いることができる。なお、図3では、ホットスタンプ箔1に関して、図4の離型層1b、着色層1c、蒸着層1d、接着層1eをまとめて符号11で表し、インク層を符号12で表してある。
【0024】
図3(a)のように、ホットスタンプ箔1を、インク層12が被転写材3と対向するように被転写材3の上へ供給した状態で、サーマルヘッド2における所望パターンに対応した発熱抵抗体素子2aを発熱させる。このときのサーマルヘッド2の発熱温度は、ホットスタンプ箔1の箔層102を被転写材3に転写できる温度に設定する。すると、所望パターン部分の箔層102が軟化して、図3(b)のようにベース層101から分離して被転写材3に転写される。
【0025】
レジン、ワックスまたはこれらの混合材からなるインク層12は、被転写材3との接着性およびホットスタンプ箔1の接着層1eとの接着性があり、被転写材3が凹凸のあるシボ紙のようなものであっても、インク層12が接着効果を発揮して、所望パターン部分の箔層102を確実に被転写材3へ転写させることができる。このため、転写ムラや転写不良が発生せず、印字品質が大幅に向上する。
【0026】
図5は、ホットスタンプ箔1の他の実施形態を示す断面図である。図5において、図4と同一部分には同一符号を付してある。本実施形態は、一般のホットスタンプ箔において蒸着層1dの表面に設けられる接着層に代えて、インク層13を設けたものである。インク層13は、レジン、ワックスまたはこれらの混合材からなる。
【0027】
以上述べた実施形態では、被転写材3としてシボ紙を例に挙げたが、本発明で用いる被転写材はこれに限らず、一般の用紙や厚紙等であってもよい。さらに、材質も紙に限らず、布や合成樹脂などであってもよい。
【0028】
また、以上述べた実施形態では、ホットスタンプ箔1の箔層102が、離型層1b、着色層1c、蒸着層1dを含む例を挙げたが、着色層1cが顔料からなる場合は、蒸着層1dを省略することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る箔プリンタの一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】箔プリンタの電気ブロック図である。
【図3】箔プリンタによる箔転写の原理図である。
【図4】ホットスタンプ箔の一実施形態を示す断面図である。
【図5】ホットスタンプ箔の他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ホットスタンプ箔
2 サーマルヘッド
3 被転写材
10 転写部
11 箔層
12 インク層
13 インク層
50 制御部
53 供給ローラ
54 巻取ローラ
55 巻取用モータ
P 箔プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットスタンプ箔と、
前記ホットスタンプ箔を巻回した供給ローラと、
前記ホットスタンプ箔を巻き取る巻取ローラと、
前記巻取ローラを駆動する巻取用モータと、
前記ホットスタンプ箔の箔層を被転写材に転写するためのサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドに内蔵されている複数の発熱抵抗体素子の発熱を制御する制御部と、
を備えた箔プリンタにおいて、
前記ホットスタンプ箔の接着層の表面に、レジン、ワックスまたはこれらの混合材からなるインク層が設けられていることを特徴とする箔プリンタ。
【請求項2】
ホットスタンプ箔と、
前記ホットスタンプ箔を巻回した供給ローラと、
前記ホットスタンプ箔を巻き取る巻取ローラと、
前記巻取ローラを駆動する巻取用モータと、
前記ホットスタンプ箔の箔層を被転写材に転写するためのサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドに内蔵されている複数の発熱抵抗体素子の発熱を制御する制御部と、
を備えた箔プリンタにおいて、
前記ホットスタンプ箔の接着層の代わりに、レジン、ワックスまたはこれらの混合材からなるインク層が設けられていることを特徴とする箔プリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−34980(P2009−34980A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231812(P2007−231812)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(503456821)日本エキュマテック株式会社 (7)
【Fターム(参考)】