説明

管取り付け構造および管取り付け方法

【課題】施工時間の短縮を図ることができる管取り付け構造および管取り付け方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る管取り付け構造100は、既設排水管1内に挿通される樹脂管5と、既設排水管1と樹脂管5との隙間の一部に充填され、当該既設排水管1と当該樹脂管5とを部分的に一体化させる樹脂からなる固化材20と、既設排水管1、固化材20および樹脂管5を貫通する孔部1bに連通する支管30と、有することを特徴とする。上記樹脂は例えば発泡樹脂等からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設排水管に挿通された更生管としての樹脂管に対する管の取り付け構造およびその取り付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土中に埋設され長い年月を経た下水管が老朽化することによって耐荷能力や止水能力が低下すると、道路が陥没したり流下能力が不足するという問題が生じてくる。
【0003】
これを解消する方法として、老朽化した下水管を支持体として利用しその内部に新たな排水管を樹脂管で形成するという排水管更生工法が実施されている。
【0004】
排水管更生工法には各種の方法があるが、例えば製管工法は、マンホール内に帯状の硬質塩化ビニル材を供給し、下水管の入口部分でその帯状の硬質塩化ビニル材を製管機によって管状に形成しながら下水管内に挿入していくものである。
【0005】
また、帯状の硬質塩化ビニル材に代えて下水管の管径よりも小さく且つ短尺の短管をマンホールから搬入し、順次接続しながら下水管内に挿入するいわゆる鞘管工法も知られている。
【0006】
ところが、上記製管工法では製管機等の専用の工事設備が必要であり、また、その施工には熟練作業者を必要とする。一方、上記鞘管工法では製管機を必要としないものの既に管として製造されているため、狭いマンホール内での取り扱いは容易でない。
【0007】
しかも両工法とも既設の下水管内で管体にするには接続作業が必須となり、接続部分のシール性を高めるためにかなりの作業時間を費やさなければならないという問題もある。
【0008】
そこで、最近では、専用の工事設備を必要とせず下水管内に管体を簡便に形成することのできる工法として、可撓性を有する樹脂管を回転ドラムから繰り出し、当該樹脂管が可撓性を有することを利用してそのままマンホールを通じて下水管の一方から挿入し、当該下水管の他方側からウインチで引き取るという工法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−38581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
住宅等の取付管(下水管等)を上記樹脂管に連通させることが行われる。この取付管は既設排水管に設けられた支管に継手を介して固定されるが、この際に既設排水管に対する樹脂管の位置を固定するために、既設排水管と樹脂管との隙間にモルタル等を注入充填する。しかしながら、モルタルを注入充填する方法では施工時間の短縮を図ることが困難であった。
【0011】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、施工時間の短縮を図ることができる管取り付け構造および管取り付け方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る管取り付け構造は既設排水管内に挿通される樹脂管と、既設排水管と樹脂管との隙間の一部に充填され、当該既設排水管と当該樹脂管とを部分的に一体化させる樹脂からなる固化材と、既設排水管、固化材および樹脂管を貫通する孔部を介して樹脂管に連通する支管と、有することを要旨とする。
【0013】
上記樹脂はポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、軟質ポリウレタンフォーム、硬質塩ビフォーム、ユリアフォーム、フェノールフォーム、酢酸セルロースフォームから選択される発泡樹脂であれば、既設排水管と樹脂管とを部分的に一体化させる施工時間の大幅な短縮を実現することができるとともに、耐久性や作業性を向上できる。
【0014】
支管は既設排水管の外周面の一部に沿わせる曲面部を有する鞍型支管であれば、この曲面部を既設排水管の外周面の一部に沿わせて配設することにより支管を既設排水管に安定して取り付けることができる。
【0015】
本発明に係る管取り付け方法は、樹脂管が挿通された既設排水管に第1孔部を設ける第1孔部穿設工程と、第1孔部を介して既設排水管と樹脂管との隙間の一部に、当該既設排水管と当該樹脂管とを部分的に一体化させる樹脂からなる固化材を充填する充填工程と、既設排水管、固化材および樹脂管を貫通する、第1孔部よりも大きい第2孔部を設ける第2孔部穿設工程と、第2孔部を介して支管と樹脂管とを連通させる取付工程と、有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、既設排水管と樹脂管との隙間を充填するための材料として樹脂、特に発泡樹脂からなる固化材を使用することにより、既設排水管に対する樹脂管の位置を固定する時間を大幅に低減できるので、施工時間の大幅な短縮を実現することができる。
【0017】
また、裏込剤に比べ発泡剤は粘度の低いものであるため、充填速度の短縮を図れる。さらに、既設排水管の全周に亘って充填する必要がなく、発泡剤の使用量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の樹脂管が適用される下水管の構造を示した断面図である。
【図2】本発明に係る樹脂管の引き込み方法を示した断面図である。
【図3】既設排水管と樹脂管との隙間に固化材を注入充填する方法を示す断面図である。
【図4】既設排水管と樹脂管との隙間に固化材を注入充填する方法を示す断面図である。
【図5】管取り付け構造を示す斜視図である。
【図6】図5の管取り付け構造の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0020】
まず、排水管更生工法について図1を参照しながら説明する。同図において、土中に埋設されている排水管(以下、既設排水管と称する)1は通常、コンクリート製管からなり、この既設排水管1は、排水経路に配設されたマンホール(接続躯体)2および3の下部に設けられた開口部2aおよび3aにそれぞれ接続されている。
【0021】
既設排水管1を点検する際には、まずその内部にカメラを挿入し、亀裂が発生しているかどうかについての調査が行われる。調査した結果、亀裂が発生しており補修の必要があれば、補修準備として既設排水管1内を高圧洗浄水で洗浄する。図中、4は洗浄水が他の排水管内に入ることを防止するための止水栓である。
【0022】
次に、洗浄された既設排水管1に対し樹脂管が引き込まれる。図2はその引き込み方法を示したものである。
【0023】
同図において、既設排水管1の一方端が左側マンホール2に接続され、他方端が右側マンホール3に接続されている構造において、いずれか一方のマンホール、本実施形態では左側マンホール2の上部開口2b近傍に、樹脂管5を巻き付けた回転ドラム6を配置する。なおこの樹脂管5は直管部と当該直管部の外壁に螺旋状に形成された突条部とを有する公知の樹脂管である。また、図示しないが、突条部を有さないフラットな樹脂管も含まれる。
【0024】
回転ドラム6から巻き解かれた樹脂管5は上部開口2bを通じて左側マンホール2内に挿入される際に、その先端5aに図示しない引込治具が取り付けられる。
【0025】
また、上部開口部2bを跨ぐようにして挿入ガイドローラ7が設置される。挿入ガイドローラ7は、樹脂管5の外周面に当接し回転することで、当該樹脂管5を円滑に既設排水管1内に挿入するための複数のローラ7aを有する。さらに、左側マンホール2には、樹脂管5の引き込みを行い易くするためのガイドローラー10が配設される。
【0026】
一方、右側マンホール3の上部開口3b近傍にはウインチ8が配置され、このウインチ8から巻き解かれたワイヤ9に樹脂管5の先端5aに取り付けられた上記引込治具が接続される。
【0027】
このような構成においてウインチ8を巻取方向に駆動させると、ワイヤ9を介して樹脂管5が矢印A方向に引っ張られ、樹脂管5を既設排水管1内に挿通させた状態とすることができる。
【0028】
続いて、本実施形態における管取り付け構造について説明する。
【0029】
図3に示すように、まず土壌を掘削し、後述の支管30を取り付けるべき既設排水管1の部分を露出させる。
【0030】
そして、既設排水管1に直径10mm程度の孔部(第1孔部)1aを開け、この孔部1aから例えばスプレーガン等の注入手段により樹脂からなる固化材20を注入する。これにより、既設排水管1と樹脂管5との隙間の一部(後述の支管30を取り付ける領域およびその周縁部領域)が固化材20で充填されて既設排水管1と樹脂管5とが部分的に一体化されるので、既設排水管1に対する樹脂管5の位置を固定することができる。
【0031】
本実施形態において固化材20は樹脂であり、例えば1液反応型の疎水性の樹脂を使用することで、水と樹脂を反応させ、発泡硬化樹脂を形成する。また、主剤と硬化剤を混ぜて、発泡を行う2液反応型の樹脂を使用してもよい。また、発泡倍率の高い樹脂を使用することで、樹脂量の軽減が図れ、施工効率が向上する。なお発泡速度の異なる2種以上の固化材20を順に充填してもよい。
【0032】
続いて、固化材20が硬化すれば、図4に示すように、孔部1aよりも大きな例えば直径140mm〜150mm程の、既設排水管1、固化材20および樹脂管5を貫通する孔部(第2孔部)1bをホールソーのような電動ドリルで開ける。
【0033】
その後、図5に示すような管取り付け構造100において、例えば硬質塩化ビニル樹脂からなる支管30を、硬化剤を混合した接着剤により既設排水管1に取り付ける。なお、この接着剤の種類としては、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、および石膏系接着剤等が挙げられる。なお支管30に図示しない支管継手が取り付けられ、当該支管継手に取付管(下水管等)が取り付けられる。
【0034】
図5に示すように、本実施形態では、支管30は鞍型支管となっており、図示しない支管継手を挿入するための挿入口31と管部32と既設排水管1の外周面の一部に沿わせる曲面部33とを有する。この曲面部33を既設排水管1の外周面の一部に沿わせて配設することにより、支管30を既設排水管1に安定して取り付けることができる。
【0035】
図6に示すように、既設排水管1に支管30が取り付けられた状態で支管30の管部32は樹脂管5の内部に連通する長さを有していることによって、支管30と樹脂管5とを連通させることができる。
【0036】
本実施形態では、既設排水管1と樹脂管5との隙間の一部をモルタル等の裏込材で充填しない。裏込材を使用して既設排水管1に対する樹脂管5の位置を固定しようとすると、裏込材が既設排水管1のほぼ全周に亘り必要であること、および裏込材がセメント系化合物であるのでその硬化に約1日もかかること、一定の温度条件でないと、硬化速度が遅く、冬季や寒冷地等では硬化にさらに時間がかかること、さらには裏込材を既設排水管1の全周で使用するので、取付管を既設排水管1に取り付ける際に裏込材の除去作業に非常に労力を要することが問題であった。
【0037】
そこで本実施形態では、既設排水管1と樹脂管5との隙間の一部を充填するための材料として樹脂からなる固化材20を使用することにより、既設排水管1に対する樹脂管5の位置を固定する時間をおよそ30分程度にすることができるので、施工時間の大幅な短縮を実現することができる。また、裏込材に比べ樹脂は粘度の低いものであるため、充填速度の短縮を図れる。さらに、既設排水管1の全周に亘って充填する必要がなく、樹脂の使用量を低減することができる。
【0038】
さらに、裏込材を既設排水管1のほぼ全周に亘り充填しないことから、樹脂管5に対する外圧を軽減でき、樹脂管5の変位を低減できる。
【0039】
なお、上記実施形態では、固化材20として発泡樹脂を採用することとしたが、非発泡樹脂を用いた場合でも発泡樹脂と同様に既設排水管1と樹脂管5とを部分的に一体化することができる。
【0040】
上記の非発泡樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、硬質ポリウレタン樹脂、軟質ポリウレタン樹脂、硬質塩化ビニル樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、酢酸セルロース樹脂等を採用することが可能である。
【0041】
また、上記実施形態では樹脂管5に新しく取付管を取り付けるための管取り付け構造について説明したが、例えば樹脂管5に管が既設(以下、既設管と称する)されている場合で、当該既設管が老朽化している場合には、既設管の周縁部に孔部(第1孔部)1aを穿設し、この孔部1aから固化材20を充填し、この固化材20の硬化後、前述の如く、既設管に接触しない位置で、支管30を接続する管取り付け構造も採用可能である。また、別の態様としては、既設管内に支管30を挿入する。この際、支管30の形状は、図示しないが、樹脂管5と水密性を確保できればよく、樹脂管5内に支管30を挿入した後、水密性のパッキン・シーリング部材を巻装させてもよい。そして、この支管30と樹脂管5を固定した状態で、既設排水管1に孔部(第1孔部)1aを穿設し、この孔部1aから固化材20を充填し、支管30と樹脂管5を接続することも可能である。なお、硬化後に、支管30の基端部に取付管を螺合してもよく、また、支管30と取付管を螺合した状態で、前記固化材20を注入して、硬化をしてもよい。
【0042】
本発明はもとより上記実施形態によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0043】
1 既設排水管
1b 孔部
5 樹脂管
20 固化材
30 支管
33 曲面部
100 管取り付け構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設排水管内に挿通される樹脂管と、
前記既設排水管と前記樹脂管との隙間の一部に充填され、当該既設排水管と当該樹脂管とを部分的に一体化させる樹脂からなる固化材と、
前記既設排水管、前記固化材および前記樹脂管を貫通する孔部に連通する支管と、
有することを特徴とする管取り付け構造。
【請求項2】
前記樹脂は、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、軟質ポリウレタンフォーム、硬質塩ビフォーム、ユリアフォーム、フェノールフォーム、酢酸セルロースフォームから選択される発泡樹脂である請求項1に記載の管取り付け構造。
【請求項3】
前記支管は、前記既設排水管の外周面の一部に沿わせる曲面部を有する鞍型支管である請求項1または2に記載の管取り付け構造。
【請求項4】
樹脂管が挿通された既設排水管に第1孔部を設ける第1孔部穿設工程と、
前記第1孔部を介して前記既設排水管と前記樹脂管との隙間の一部に、当該既設排水管と当該樹脂管とを部分的に一体化させる樹脂からなる固化材を充填する充填工程と、
前記既設排水管、前記固化材および前記樹脂管を貫通する、前記第1孔部よりも大きい第2孔部を設ける第2孔部穿設工程と、
前記第2孔部を介して支管と前記樹脂管とを連通させる取付工程と、
有することを特徴とする管取り付け方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−197626(P2012−197626A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63125(P2011−63125)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(398062574)カナフレックスコーポレーション株式会社 (62)
【Fターム(参考)】