説明

管接合装置

【課題】口径の合致する管材に汎用できる管接合装置の提供。
【解決手段】本発明は、一方の管の挿入先端側が他方の管の受入後端側の接合受口に挿入された状態で両管を接合する管接合装置において、
前記接合装置は、前記接合受口の内周面の周方向に設けられた還状凹溝と、前記還状凹溝に予め遊嵌されて、帯状に巡る輪の内周面が挿入されて来る管の外周面に近接する割輪とを備え、
前記両管が相対的に抜け方向に引かれると、前記割輪が縮径して割輪の内周面が挿入された管の外周面に圧接され、割輪の内周面に設けられた凸部が挿入された管の外周面に食い込んで抜けが阻止されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の管の挿入先端側が他方の管の受入後端側の接合受口に挿入された状態で両管を接合する管接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば上水道用の埋設管等の接合は、図6に示すように、一方の管1の挿入先端側12の外周面に突出形成された還状突起部13と、他方の管2の接合受口22の内周面側に予め内挿されたロックリング3とを、管軸方向に衝き合わせて抜止として接合していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の上記手法では、挿入される管1の挿入先端側12に予め所定寸法の還状凸部13を形成しておかねばならないため、製造コストが嵩む上に、接合に適する管材が特定化されるため、接合形態に応じて多種多様の形態の管材(1や2)を準備しておかねばならず、極めて不経済であった。
【0004】
本発明は、上記課題の解決を目的としてなされたもので、挿入先端側の還状凸部を無用とすることによって、口径の合致する管材に汎用できる管接合装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、一方の管の挿入先端側が他方の管の受入後端側の接合受口に挿入された状態で両管を接合する管接合装置において、前記接合装置は、前記接合受口の内周面の周方向に設けられた還状凹溝と、前記還状凹溝に予め遊嵌されて、帯状に巡る輪の内周面が挿入されて来る管の外周面に近接する割輪とを備え、前記両管が相対的に抜け方向に引かれると、前記割輪が縮径して割輪の内周面が挿入された管の外周面に圧接され、割輪の内周面に設けられた凸部が挿入された管の外周面に食い込んで抜けが阻止されることを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の管接合装置において、還状凹溝は、管の軸方向断面において、挿入された管の抜け方向に次第に小径となるテーパ内周面を備え、割輪の外周面は前記テーパ内周面の形状に相応するテーパ外周面を備え、前記割輪は管の軸方向に若干摺動可能に前記還状凹溝に遊嵌されたことを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の管接合装置において、割輪は挿入された管の外径よりも同等以下に縮径可能となる割幅を有することを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の管接合装置において、割輪は内周長が挿入される管の挿入先端側の外周長に比べて同等以下の長さであることを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の管接合装置において、凸部は山状の突起であることを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の管接合装置において、凸部は、略四角錐状凸部であって、角錐の頂点から十字方向に延在する稜線の一つが管軸方向と一致して設けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6の何れかに記載の管接合装置において、凸部は、無数の群を成し、複数の群が輪の内周面において周方向に間隔をおいて複数群配設されたことを特徴とする。
【0012】
請求項8の発明は、請求項7に記載の管接合装置において、群は、複数の凸部が間隔を置いて割輪の周方向に列設されると共に管軸方向に複数列に並設され、並設されて隣合う列の各凸部は管軸方向において隣の列の凸部間に位置するように配設されたことを特徴とする。
【0013】
請求項9の発明は、請求項7に記載の管接合装置において、群は、凸部が輪の周方向に稜線の一つを一致させて適当間隔にて列設され、前記凸部の複数の列は管軸方向に並列され、隣り合う各列の各凸部は管軸方向の稜線が互いに一致せず、隣の列の凸部間に配設されたことを特徴とする。
【0014】
請求項10の発明は、請求項1乃至請求項10の何れかに記載の管接合装置において、挿入される管は樹脂製であり割輪は金属製であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1乃至請求項10の発明によれば、何れも、管の挿入先端側の還状凸部が無用となるので、従来のように、接合形態に応じて所定寸法の異なる多種多様の形態の管材を準備しておく必要がなくなり汎用の管材をも広く用いることができ、極めて経済的な管接合装置を提供できる。
【0016】
請求項2乃至請求項4の発明によれば、何れも、抜け方向の作用が大きく働くほど抜止作用を高めることができる。
【0017】
請求項5乃至請求項9の発明によれば、何れも、挿入先端側への凸部の食い込みがより確実となるので、抜止作用を一段と高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の最良の実施形態を示す上水道用の埋設管の接合の実施例を図乃至図に基づいて説明する。
図1は管軸方向の接合を示す一部縦断面図、図2は割輪の軸方向正面図、図3は割輪の一部拡大横断面図、図4は凸部の一群の配設状態を示す部分展開図、図5は割輪の管軸方向の一部拡大断面図である。
【実施例】
【0019】
図1において、図中の符号10は一方の管であり、その挿入先端側12が図示されている。この管10の挿入先端側12の外周面には従来のような還状突起部13(図6参照)が突出形成されていない。尚、管10と管20とは同形管である。図中の破線で示す円はシール用ゴム輪である。
【0020】
又、符号20は他方の管であり、その受入後端側の接合受口22が図示されている。接合受口22の内周面の周方向には還状凹溝23が設けられており、この還状凹溝23には、管10の挿入先端が挿入される前に、予め割輪30が遊嵌されている。
【0021】
図2において、割輪30は、輪の軸方向に一条の割筋31が形成された筒状体のもので、筒状体の内側即ち、輪の内側には帯状に巡る内周面32を備えており、この内周面32が挿入されて来る管10の挿入先端側12の外周面に近接する。
尚、ここで近接するとは、割輪30の内周面32と管10の挿入先端側12の外周面とが少なくとも一部において接した状態を含む意である。
【0022】
図1において割輪30を還状凹部23に嵌合する際には、適当な器具を用いて当該割輪30を接合受口22の内径より小さく縮径した状態にして挿入する。
還状凹部23に嵌合されて縮径状態から開放された割輪30は、フリーの自然状態において、その内径が挿入されて来る管10の挿入先端側12の外径と同等以下の内径であることが好ましく、管10の挿入による割輪30の貫通に際して、挿入先端側12が相応の抵抗、即ち割輪30の拡開作用に対する反発力による縮径圧を適度に受けることが好ましい。
【0023】
このように構成すると、挿入先端側12の外周面に作用する割輪30の上記の縮径圧が、両管10、20が相対的に抜け方向に引かれる際の抵抗となり、抜止が阻止される。
【0024】
図2乃至図5において、この実施例では、抜止を更に確実に阻止するために、割輪30の内周面32には、管10の外周面(挿入先端側)に係止する適当な凸部40(40A、40B、40C)を設けている。
このような凸部40(40A、40B、40C)を内周面32に設けておくと、割輪30が縮径して割輪30の内周面32が挿入された管10の外周面に圧接される際に、内周面32に設けられた凸部40(40A、40B、40C)が挿入された管10の外周面に食い込んで抜け、即ち、両管10、20の抜け方向の相対移動を効果的に阻止することができる。
【0025】
この場合、更に、図1及び図5に示すように、還状凹溝23の溝の内周面側には、管20の軸方向断面において、挿入された管10の抜け方向(図1において左方向)に次第に小径となるテーパ内周面24を形成し、他方、割輪30の外周面は前記のテーパ内周面24の形状に相応するテーパ外周面33を形成し、当該割輪30を管20の軸方向に若干摺動可能に比較的大きく還状凹溝23を形成して、これに遊嵌させて置くとよい。
【0026】
このように相対的に対応するテーパ周面24,33を還状凹溝23と割輪30とに設けておくことによって、両管10、20に相対的に抜け方向の力が作用すると、還状凹溝23のテーパ周面(テーパ内周面24)と割輪30のテーパ周面(テーパ外周面33)との圧接によって、抜け作用が大きいほど割輪30が確実に大きく縮径されるため、抜止作用を更に一段と確実に発揮させることができる。
【0027】
従って、割輪30は、挿入された管10の挿入先端12の外径よりも同等以下に縮径可能となる割幅即ち割筋31(図2参照)の間隔幅であることが好ましく、又、割輪30の内周長が挿入される管10の挿入先端側の外周長に比べて同等以下の長さであることが好ましい。
【0028】
上記のような凸部40(40A、40B、40C)は、割輪30の内周面32から管軸側に向かって突出する突起、例えば山状や錐状や半球状の突起でもよいが、この実施例の凸部40(40A、40B、40C)は図示のように略四角錐状の凸部としている。
この四角錐状の凸部40は、内周面32に無数(40A、40B、40C)に配設されており、各凸部40(40A、40B、40C)は何れも角錐の頂点から十字方向に延在する稜線の一つが管軸方向と一致する方向で設置されている。
【0029】
又、これら無数の凸部40は、図2に示すように、複数の群41〜47及び48Aと48Bとに分かたれており、これら複数の群41〜47及び48Aと48Bは内周面32の周方向に間隔Sをおいて分割配設されている。尚、群48Aと群48Bとは割筋31を跨いで一群48が分轄されたものである。
【0030】
図4に示すように、これら各群41〜47及び48Aと48Bは、各々複数の凸部40A、40A・・、40B、40B・・、40C、40C・・が周方向に間隔を置いて列をなすように列設されており、この列40A,40B,40Cが管軸方向に複数列、この例では3列A,B,Cに並設されており、並設されて隣合う列の各凸部40A、40A・・、40B、40B・・、40C、40C・・は管軸方向において互いに隣の列の凸部40A、40A・・、40B、40B・・、40C、40C・・間に位置するように配設されている。
【0031】
更に、図4において、群の構成を詳述すると、複数の凸部40A、40A・・が輪の周方向に稜線の一つを一致させて適当間隔にて列設され、前記凸部40A、40A・・、40B、40B・・、40C、40C・・の複数のA列、B列、C列は管軸方向に並列され、隣り合う各列A列、B列、C列の各凸部40A、40B、40C・・は互いに管軸方向の稜線が一致しないように、隣の列の凸部40、40間に、例えば、B列の凸部40Bは隣のA列の凸部40Aと凸部40Aとの間に位置するように配設されている。
【0032】
実験例によると、上記のように凸部40を群構成することによって、より確実なに抜止効果を得ることができた。
尚、挿入される管は凸部40が食い込み易い材質の例えば樹脂製管で、割輪30は剛性の高い例えば金属製であることが好ましいが、両管10、20とも金属製であって阻止効果は有効である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、上記実施例では上水道用の埋設管の接合についての適応例を示したが、これに限らず、広く管と管との接合装置として産業上広く活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】管軸方向の接合を示す一部縦断面図である。
【図2】割輪の軸方向正面図である。
【図3】割輪の一部拡大横断面図である。
【図4】凸部の一群の配設状態を示す部分展開図である。
【図5】割輪の管軸方向の一部拡大断面図である。
【図6】従来の接合を示す一部縦断面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 管(一方の管)
12 挿入先端側
20 管(他方の管)
22 接合受口
23 還状凹溝
24 テーパ内周面(還状凹溝)
30 割輪
31 割り筋(間隙)
32 内周面(割輪)
33 テーパ外周面(割輪)
40,40A,40B,40C 凸部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の管の挿入先端側が他方の管の受入後端側の接合受口に挿入された状態で両管を接合する管接合装置において、
前記接合装置は、
前記接合受口の内周面の周方向に設けられた還状凹溝と、
前記還状凹溝に予め遊嵌されて、帯状に巡る輪の内周面が挿入されて来る管の外周面に近接する割輪とを備え、
前記両管が相対的に抜け方向に引かれると、前記割輪が縮径して割輪の内周面が挿入された管の外周面に圧接され、割輪の内周面に設けられた凸部が挿入された管の外周面に食い込んで抜けが阻止されることを特徴とする管接合装置。
【請求項2】
還状凹溝は、管の軸方向断面において、挿入された管の抜け方向に次第に小径となるテーパ内周面を備え、
割輪の外周面は前記テーパ内周面の形状に相応するテーパ外周面を備え、
前記割輪は管の軸方向に若干摺動可能に前記還状凹溝に遊嵌されたことを特徴とする請求項1に記載の管接合装置。
【請求項3】
割輪は、挿入された管の外径よりも同等以下に縮径可能となる割幅を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の管接合装置。
【請求項4】
割輪は、内周長が挿入される管の挿入先端側の外周長に比べて同等以下の長さであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の管接合装置。
【請求項5】
凸部は山状の突起であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の管接合装置。
【請求項6】
凸部は、略四角錐状凸部であって、角錐の頂点から十字方向に延在する稜線の一つが管軸方向と一致して設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の管接合装置。
【請求項7】
凸部は、無数の群を成し、複数の群が輪の内周面において周方向に間隔をおいて複数群配設されたことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の管接合装置。
【請求項8】
群は、複数の凸部が間隔を置いて割輪の周方向に列設されると共に管軸方向に複数列に並設され、並設されて隣合う列の各凸部は管軸方向において隣の列の凸部間に位置するように配設されたことを特徴とする請求項7に記載の管接合装置。
【請求項9】
群は、凸部が輪の周方向に稜線の一つを一致させて適当間隔にて列設され、前記凸部の複数の列は管軸方向に並列され、隣り合う各列の各凸部は管軸方向の稜線が互いに一致せず、隣の列の凸部間に配設されたことを特徴とする請求項7に記載の管接合装置。
【請求項10】
挿入される管は樹脂製であり割輪は金属製であることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れかに記載の管接合装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−41605(P2009−41605A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204908(P2007−204908)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(501328854)川▲崎▼ファクトリー株式会社 (7)
【Fターム(参考)】