説明

管球用マウント構体および管球

【課題】点灯経時してもレグ部を挟着するよう重合したフック部が開くことがない、フィラメントの支持および電気的接続を確実に持続できる管球用マウント構体およびこのマウント構体を用いた電球や放電ランプなどの管球を提供することを目的とする。
【解決手段】 ステム3に封止された一対のリード線4,4の先端を折返し形成したフック部5にコイル状フィラメント6のレグ部62を挟着させるとともにこのフック部5の重合部を溶接により固着してなる管球用マウント構体2およびこのマウント構体を用いた管球Lである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電球の発光源や放電ランプの熱陰極などコイル状のフィラメントを有するマウント構体およびこのマウント構体を用いた電球や放電ランプなどの管球に関する。
【背景技術】
【0002】
管球例えば電球は、一対のニッケルなどの金属線からなるリード線の先端部間に、発光源をなすコイル状に巻回したタングステン線からなるフィラメントを継線することによりその支持と電気的な接続をなさしめている。
【0003】
この継線構造としては、リード線によりコイル状フィラメントを挟着したり、かしめや打ち込みなどの圧着あるいはリード線にコイル状フィラメントを溶接するなどのことが知られている。
【0004】
上記において一般照明用など多種類の電球や熱陰極形の蛍光ランプなどでは、製造が容易であるなどのことから、リード線の先端部を折返し形成したフック部内にフィラメント端部のレグ部を配設しておき、フック部を相対する方向から押圧して重合させレグ部を挟着するようにした継線構造が採用されている。(例えば特許文献1参照)
【特許文献1】特開2001-283790号公報…段落[0021]および図3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この挟着による継線構造は、点灯時高温となるフィラメントからの熱でリード線のフック部が点灯経過とともに金属の結晶状態が変化したり、点滅の繰り返し(高温⇔常温)による熱的衝撃あるいは強制折曲時の残留歪の影響により重合しているフック部が開き、甚だしい場合にはフィラメントを確実に挟持できず、機械的支持および電気的接続が不安定になり不所望な点滅や不点を生じることがあった。
【0006】
本発明は、フック部によるフィラメントレグ部の継線構造における上記課題に鑑みなされたもので、点灯経時してもレグ部を挟着するよう重合したフック部が開くことがない、フィラメントの支持および電気的接続を確実に持続できる管球用マウント構体およびこのマウント構体を用いた電球や放電ランプなどの管球を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の管球用マウント構体は、一対のリード線の先端を折返し形成したフック部に、コイル状フィラメントのレグ部を挟着させるとともにこのフック部の重合部を溶接により固着してなることを特徴とする。
【0008】
本発明ではリード線フック部によるフィラメントレグ部の固定を挟着と溶接による二重の固定を行っているので、マウント構体に振動や衝撃が加わった場合でもフック部からレグ部が抜け出ることがない。
【0009】
なお、本発明でいうコイル状フィラメントとは、タングステンやモリブデンなどからなる高融点金属線材を巻回して発光源や熱陰極などの放電源をなすものおよびヒーターなどの熱源をなすものを指す。
【0010】
本発明の請求項2に記載の管球用マウント構体は、フック部のリード線横断面形状が、略扁平状をなしていることを特徴とする。
【0011】
断面が真円形のリード線はフック部の折返された重合部が線接触で、重合部が少しでも食い違った場合には、レグ部が挟着されたフィラメントは不所望な方向に延長してしまうのに対して、フック部を略扁平形状とすることにより面接触となり、フィラメントのレグ部の挟着長さを長くできるとともにフィラメントを略扁平面と平行方向に指向させることができる。なお、この略扁平面は、少なくともレグ部を挟着するフック部の内面側に形成されていればよい。
【0012】
なお、本発明でいう略扁平形状とは真円形のリード線が圧潰されるなどして形成された表面が完全な平面であっても少々の湾曲面であっても、フィラメントを略扁平面と平行方向に指向させる形状であればよいことを指す。
【0013】
本発明の請求項3に記載の管球は、ガラスバルブと;このガラスバルブの端部に気密封着された上記請求項1または2に記載のマウント構体と;を具備していることを特徴とする。
【0014】
上記請求項1または2に記載の作用を奏するマウント構体を用いた管球であって、フック部におけるフィラメントレグ部が挟着と溶接の二重の手段で固定されているので、管球に振動や衝撃が加わった場合でもフック部からレグ部が抜け出ることがなくフィラメント外れによる不点などを防止できる。
【0015】
本発明の請求項4に記載の管球は、電球または放電ランプであることを特徴とする。
【0016】
本発明でいう管球とは、電球または放電ランプであって、電球の場合は照明などの発光用や赤外線などの発熱用に、また、放電ランプの場合は熱陰極用あるいは高圧放電ランプの抵抗バラスト用や加熱ヒーター用などに適用できる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、フィラメントのレグ部がリード線のフック部に挟着と溶接による二重の固定による継線を行っているので、機械的支持および電気的接続を確実に持続できるマウント構体を提供することができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、フック部を略扁平形状とすることによりレグ部が面接触となり挟着強度が高められるとともに、フィラメントを略扁平面と平行方向に指向させることができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1または2に記載の効果を奏するマウント構体を備えた、リード線のフック部にフィラメントを挟着と溶接による二重の固定がなされた継線がなされているので、フック部からレグ部が抜け出ることによる不点、接触不良によるアーク断線やちらつきなどの発生を防ぎ、フィラメントの断線など寿命末期に至るまでリード線との接続に起因する短寿命の抑制がはかれる寿命特性の向上した管球を提供することができる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項3に記載の効果を呈する電球あるいは放電ランプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は管球例えば一般照明用の電球の概略を示す正面図、図2は図1中のバルブ内に封装されたマウント構体で、(a)図は正面図、(b)図は要部を拡大して示す側面図である。
【0022】
電球Lは、ガラスバルブ1の端部に図2に示すマウント構体2のステム3が気密封着され、バルブ1内面にはシリカ微粉末などからなる散光被膜11が形成されているとともに内部にアルゴンなどの不活性ガスを封入して、図示しない封着部を覆うようE型の口金8を接合して構成されている。
【0023】
このマウント構体2は図2(a)に示すようにガラス管製のフレアステム3に気密封止した一対のリード線4,4および排気管7を気密封止するとともにリード線4,4の先端部にタングステン線をコイル状に巻回したフィラメント6が継線してある。
【0024】
上記一対のリード線4,4は、ステム3に気密に封止されるジュメット線などからなる封着線41と、この封着線41の一端側に接続されバルブ1内に配設されるニッケル線などからなる内部リ-ド線42と、封着線41の他端側に接続されバルブ1外に導出されるニッケル線などからなる外部リ-ド線43との3部品で構成され、外径が約0.3mmの上記両内部リード線42の先端の約3mmの部分を線径の約1/3〜2/3の肉厚となるよう圧潰や研削などの手段で略扁平状で、かつ、この略扁平状部分の中央付近において折返したフック部5が形成してある。
【0025】
また、フィラメント6はタングステン細線を二重コイル状に巻回した発光部61およびこの発光部61に連続して両端部に単コイル状のレグ部62を有する。
【0026】
そして、このフィラメント6は、内部リ-ド線42先端のフック部5内の折返し部51近くにおいてレグ部62が挟着されているとともにフック部5の折返した先端近くにおいて溶接(溶接点52)して重合され機械的支持および電気的接続がなされている。
【0027】
この継線後のフック部5およびレグ部62を側面から見た形状は、例えば図2(b)に示すようにフック部5の折返し部51が丸味をおび挟着されたレグ部62の単コイルが長円形であるとともにフック部5先端の溶接部52ではほぼ重合した形状となっている。(丸味など図は誇張して示してある)
なお、この継線作業は略V字形をしたフック部5内にリード線4軸と直交してフィラメント6のレグ部62を配設し、フック部5をピンチャーなどを用い相対する方向から押圧してレグ部62を挟着するとともにこの挟着部位置と離れた先端部近くをスポット溶接(抵抗溶接)機の電極ノズルで相対する方向から押圧重合してスポット溶接し重合部を固着する。なお、この溶接は1箇所(1点)のみでなく、必要に応じ複数箇所(複数点)を行ってもよい。
【0028】
この継線作業時、フック部5内に挟着されたフィラメント6の単コイル状のレグ部62の横断面は、挟着前の真円形から押圧されることにより図2(b)に示すように略長円形となるが、重合したフック部5が強く押圧されたものが強い挟着力を有するものではない。
【0029】
すなわちピンチャーなどによる押圧力が強すぎるとリード線4のニッケルに比べ硬度が高いタングステン線であっても単コイルのピッチが延びたりフック部5のエッジと接触した表面に傷が付くなどして電球の特性を損う虞があり、また、逆にピンチャーなどによる押圧力が弱すぎると挟着部からレグ部62から抜け出て不点となる虞があって、押圧力はフック部5の挟着部内面にレグ部62コイルによる条痕が少々付く程度が好ましい。
【0030】
上記マウント構体2をガラスバルブ1内に封装した電球Lは、口金8をソケットに装着して一対のリード線4,4を介しフィラメント6に通電することにより所定の発光がなされる。
【0031】
この電球Lは、連続点灯や点滅点灯などによりフィラメント6からの熱がリード線4のフック部5に加わって折返し部51などが高温⇔常温の熱的衝撃を受けてもあるいは振動や衝撃が加わった場合でも、フック部5の重合した部分において挟着と溶接による二重の固定を行っているのでフック部5が開くことがない機械的支持および電気的接続を確実に持続できる。
【0032】
したがって、たとえフック部5におけるレグ部62の挟着が弱くても溶接による補強的な固定もされているので、フック部5からレグ部62が抜け出ることによる不点、接触不良によるアーク断線やちらつきなどの発生を防ぎ、フィラメント6の断線など寿命末期に至るまでリード線4との接続に起因する短寿命の抑制がはかれる寿命特性の向上した電球Lを提供することができる。
【0033】
また、レグ部62が位置していないニッケル線などからなる材料の内部リ-ド線42の重合したフック部5において溶接が行われているため、溶接時には溶接重合部の材料がよく混融した高い接合強度を得ることができる。
【0034】
なお、従来から丸棒状のリード線とフィラメントのレグ部との交点を抵抗溶接により直接接続する継線構造が知られているが、この溶接の場合、溶接時に溶融するのはフィラメントより低融点のリード線側であり、万一、溶接が外れたときには、即、不点となる。また、直接溶接の場合、フィラメントにも局部的に溶接電流が流れこの溶接部が高温となることにより変質して脆化を生じ易く耐振性に問題を生じる虞があったが、本実施の形態ではそのようなことがない。
【0035】
さらに、本発明のマウント構体2は、リード線4のフック部5の横断面形状を略扁平状としておくことにより重合部は面積が増し面接触となり、フィラメント6のレグ部62の挟着長さを長くできるとともにフィラメント6を略扁平面と平行方向に指向させることができる。
【0036】
上記フック部5の略扁平形状とは真円形のリード線42が圧潰されるなどして形成された表面が完全な平面であっても少々の湾曲面であっても、フィラメント6を略扁平面と平行方向に指向させる形状であればよいことを指す。
【0037】
なお、本発明は上記実施の形態に示す管球用マウント構体およびこのマウント構体を用いた管球に限るものではない。例えば管球用マウント構体は、リード線を支持するステムはフレアステムに限らず、ビードステムやボタンステムなど他のステムを用いるものであってもよいし、外部リード線が強固に支持されて変位しなければ、ステムを用いずガラスバルブと直接封着されていてもよい。
【0038】
また、リード線は内部リード線、封着線、外部リード線の3部品で構成してあるものに限らず、封着線と外部リード線とが同一線で内部リード線が異質などの2部品からなるものあるいは同一線でリード線が構成されていてもよく、外部リード線はヒューズ作用を有する線材で構成されていてもよい。
【0039】
また、フック部を形成する内部リード線の材質は、ニッケルに限らず、銅、ニッケルや銅との合金、ニッケルめっき鉄線、ニッケルめっき銅線やモリブデンなど管球バルブ内において不純ガスの発生が少ない材料から選ぶことができる。
【0040】
また、継線後のフック部を側面から見た形状は、図2(b)に示されたものに限らず、図3に示すようにフック部5の折返し部51が急峻でフック部5のほぼ全長が平行重合している形状でレグ部62を支持接続していてもよい。
【0041】
また、フィラメントを形成する材料は、タングステンやモリブデンなどの高融点金属からなる材料を用いることができ、フィラメントのリード線のフック部に継線されるレグ部は、単線(非コイル状)、単コイル状、二重コイル状あるいは三重コイル状であってもよいが、多重コイル状の場合はフック部近傍におけるターンショートに注意を要する。また、レグ部が二重コイルなどの場合には、コイル内にコア(芯線)を挿入して継線することも差し支えない。
【0042】
また、マウント構体やフィラメント継線形状などは実施の形態に示すものに限らず、種々の形状のものに適用できる。
【0043】
また、上記実施の形態ではフィラメントの挟着位置を外したフック部の重合位置において溶接を行っているが、溶接時にフィラメントに熱的な悪影響を及ぼすなどフィラメントに劣化の虞がないなどの場合には、同位置で挟着と溶接を行うようにしてもよい。
【0044】
挟着位置と溶接位置とを別位置とすることによって、一般的にはタングステンなどからなるフィラメントより低融点の例えばニッケルなどの金属線からなるリード線フック部の重合部分相互を溶接することができるので強固な溶着を行わせることができ接合強度の向上がはかれる。
【0045】
また、溶接時にフィラメントに熱的な悪影響を及ぼすなどフィラメントに劣化の虞がないなどの場合には、同位置で挟着と溶接を行うようにしてもよい。
【0046】
そして、この管球用マウント構体は、電球の発光源や発熱源、放電ランプの発光源としての熱陰極や高圧放電ランプの発光(熱)源や抵抗素子として用いることができる。
【0047】
さらに、本発明が適用できる管球は、電球や放電ランプなどであって、電球の場合はバルブ内にアルゴンなどの不活性ガスやハロゲン化物を封入したガス入り電球や真空雰囲気の真空電球など、また、放電ランプとしては蛍光ランプ、紫外線放射ランプなどの低圧放電ランプや高圧放電ランプなどで、用途は照明や表示などの発光用、熱線放射などの発熱用などである。
【0048】
さらにまた、管球を構成するバルブの材質や形状あるいは被膜の有無や種類などは問わない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態の管球例えば一般照明用の電球の概略を示す正面図である。
【図2】図1中のバルブ内に封装されたマウント構体で、(a)は正面図、(b)は要部(フック部)を拡大して示す側面図である。
【図3】マウント構体の他の実施の形態を示す要部(フック部)を拡大して示す側面図である。
【符号の説明】
【0050】
L:電球
1:ガラスバルブ
2:管球用マウント構体
3:ステム
4:リード線
5:フック部
52:溶接点
6:コイル状フィラメント
62:レグ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のリード線の先端を折返し形成したフック部に、コイル状フィラメントのレグ部を挟着させるとともにこのフック部の重合部を溶接により固着してなることを特徴とする管球用マウント構体。
【請求項2】
フック部のリード線横断面形状が、略扁平状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の管球用マウント構体。
【請求項3】
ガラスバルブと;
このガラスバルブの端部に気密封着された上記請求項1または2に記載のマウント構体と;
を具備していることを特徴とする管球。
【請求項4】
管球が、電球または放電ランプであることを特徴とする請求項3に記載の管球。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−166125(P2008−166125A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354637(P2006−354637)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】