説明

管理方法、および管理システム

【課題】 管理作業者が実際に個別の管理対象の樹木等の場所に赴いて観察することを確実にするとともに、得られた管理データを前記管理作業者以外の人が遠隔地でも閲覧して把握することを可能にする樹木管理技術の提案。
【解決手段】本発明の管理システムは、
樹木等の管理対象物に1対1に対応させるとともに管理対象物に付設させた電子情報担持体と、電子情報担持体に書き込み保持された管理情報を読みとる読み取り機能、電子情報担持体に書き込むべき管理情報を入力する入力機能、及び入力した管理情報を電子情報担持体に書き込む書き込み機能とを備えた携帯情報端末と、携帯情報端末との間で管理情報を送受信する管理装置と、を備えている。管理対象物に付設させた電子情報担持体とは、当該管理対象物に直接密接させたものや、当該管理対象物の近傍に配設したものをいう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公園、山林、街路等に植生している樹木や、道路や橋脚やトンネルや貯水槽等の構造物等の管理対象物の状況を総合的に管理する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、公園、山林の樹木の植生状況を管理する方法としては、樹木に管理番号札を掛け、ノート等の管理台帳に前記管理番号毎の状況記入欄を設けて、管理作業者が、個別の樹木を観察して、その状況を筆記用具を用いて記入することによって管理することが行われている。
前記管理作業者は、自分の担当する領域の樹木を、自分の管理台帳に自分の様式で記録することが多かった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述したように個々の管理作業者が管理台帳に記入して管理する方法では、管理データの有効な利用が困難であるという問題とともに、その担当する管理作業者以外の者では樹木の状況が把握しにくいという問題がある。
また、管理対象の樹木を、定められた所定の期間に観察することが不確実であるという問題があった。
樹木の管理に限らず、道路や橋脚やトンネルや貯水槽等の構造物等の管理の場合も同様であった。
【0004】
そこで、本発明は、管理作業者が実際に個別の管理対象物の場所に赴いて観察することを確実にするとともに、得られた管理データを前記管理作業者以外の人が遠隔地でも閲覧して把握することを可能にする管理技術の提案を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる請求項1の管理方法においては、
管理対象物に1対1に対応させた電子情報担持体に、当該樹木の管理情報を書き込み保持させることによって、当該管理対象物を管理することを特徴としている。
請求項2の管理システムは、
請求項1に記載の管理方法に用いる管理システムであって、
管理対象物に1対1に対応させるとともに前記管理対象物に付設させた電子情報担持体と、
前記電子情報担持体に書き込み保持された管理情報を読みとる読み取り機能、前記電子情報担持体に書き込むべき管理情報を入力する入力機能、及び入力した管理情報を前記電子情報担持体に書き込む書き込み機能とを備えた携帯情報端末と、
前記携帯情報端末との間で管理情報を送受信する管理装置と、
を備えていることを特徴としている。
なお、管理対象物に付設させた電子情報担持体とは、当該管理対象物に直接密接させたものや、当該管理対象物の近傍に配設したものをいう。
請求項3において、
前記電子情報担持体は、不揮発性半導体メモリを内蔵していることを特徴としている。
請求項4において、
前記電子情報担持体は、携帯情報端末を用いて、管理情報を書き込み、もしくは読み取り可能としたことを特徴としている。
請求項5において、
前記電子情報担持体に保持される管理情報は、書換えしない固定項目と、書換えする維持管理項目とから構成されていることを特徴としている。
請求項6において、
前記電子情報担持体と前記携帯情報端末とは、非接触で管理情報の送受信を可能としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の管理方法によれば、管理対象物に1対1に対応させた電子情報担持体に、当該管理対象物の管理情報を書き込み保持させることによって、当該管理対象物を管理するので、前記管理情報を読み取り可能な携帯情報端末等を用いて効率よく且つ正確に管理することができる。
本発明の管理システムによれば、請求項1に記載の管理方法に用いる管理システムであって、管理対象物に1対1に対応させた電子情報担持体と、前記電子情報担持体に書き込み保持された管理情報を読みとる読み取り機能、前記電子情報担持体に書き込むべき管理情報を入力する入力機能、及び入力した管理情報を前記電子情報担持体に書き込む書き込み機能とを備えた携帯情報端末と、前記携帯情報端末との間で管理情報を送受信する管理装置と、を備えているので、前記管理装置に随時最新の管理情報が蓄積されるように運用することによって、管理情報の共有が可能となり、効率よく且つ正確に管理することができる。
前記電子情報担持体に保持される管理情報は、書換えしない固定項目と、書換えする維持管理項目とから構成されているので、効率よく且つ正確な管理・運用が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の管理方法では、管理対象物のそれぞれに1個づつICタグ等の電子情報担持体を取り付け、その電子情報担持体に、当該管理対象物の管理履歴の情報を書き込み保持させる。そして、次回の管理作業においては、前記電子情報担持体に新たな管理情報を書き込むことによって当該管理対象物を管理する。このような管理作業では、前記管理情報を読み取り可能な携帯情報端末等を用いて効率よく且つ正確に管理することができる。
そのための装置としては、管理対象物に1対1に対応させたICタグ等の電子情報担持体と、前記電子情報担持体に書き込み保持された管理情報を読みとる読み取り機能、前記電子情報担持体に書き込むべき管理情報を入力する入力機能、及び入力した管理情報を前記電子情報担持体に書き込む書き込み機能とを備えたPDA等の携帯情報端末と、前記携帯情報端末との間で管理情報を有線や無線の媒体を介して送受信するサーバコンピュータ等の管理装置と、を備えているので、前記管理装置に随時最新の管理情報が蓄積されるように運用することによって、管理情報の共有が可能となり、効率よく且つ正確に管理することができる。
【実施例1】
【0008】
以下に、本発明を樹木の管理に採用した場合の樹木管理方法、および樹木の管理システムを、その実施例の図面に基づいて詳細に説明する。
図1において、
A1は管理対象物としての樹木、T1は該樹木A1に対応させて取り付けられた電子情報担持体としてのICタグである。他の樹木T2、T3・・・にも同様に1対1に対応させたICタグT2、T3・・・が取り付けられている。これらのICタグは、後述する携帯情報端末との通信手段と、携帯情報端末による管理情報の書き込み機能と読み出し機能を備えている。
Mは管理作業者、PはPDA等の携帯情報端末である。この携帯情報端末Pは、携帯型のコンピュータの機能を備えており、キーボード、ディスプレイ、メモリ、電源、ICタグとの通信手段、ホストコンピュータとの通信手段を備えている。
前記ICタグと携帯情報端末との通信手段は、電波等を利用した非接触通信手段である。
【0009】
図2には、ICタグの種々の形態を例示した。図2の(イ)に示したICタグは、スプリング付きの輪で樹幹に取り付けるように構成されたものであり、図2の(ロ)に示したICタグは、管理対象の樹木の近くの地面に差し込むように構成されたものであり、図2の(ハ)に示したICタグは、キーホルダー状の形態で紐等で樹木や樹名盤(表)に吊り下げるように構成されたものであり、図2の(ニ)に示したICタグは、樹名盤(表)の裏面等に埋め込んだものである。
本願でいうICタグとしては、種々の形態が採用可能であるが、例えば、電波を用いてデータの読み出しや書き込みを行うことのできる技術(RFID)を用いた識別体を使用できる。電源を内蔵せずに携帯情報端末からの電波を受信して電源に供するパッシブタグ構成とすることにより、半永久的に使用することができる。なお、太陽電池で駆動する電源を内蔵してアクティブタグとしてもよい。
【0010】
前記ICタグに書き込み保存される管理情報の例を表1に示した。
表1に示したように、1本の樹木に関する管理情報は、例えば15項目の固定項目と、12項目の維持管理項目とから構成されている。
固定項目は、一回書き込んだらその樹木がその場所に存在している間は書き換えない項目であり、例えば、表1に示したような項目と内容(例)とから構成されている。
維持管理項目は、管理観察した結果に応じて書き換えることができる項目であり、例えば、表1に示したような項目と内容(例)とから構成されている。
なお、表1において★印を付した項目は表示された内容候補(表2参照)の中から選択するだけで入力できるように設定されている。
【表1】

【表2】

【0011】
次に、図3と図4を参照して、ホストコンピュータと、携帯情報端末と、ICタグとの間の管理情報の送受信の形態、および管理情報の入力形態を説明する。
新規に管理対象となった樹木に関して管理情報を入力する場合は、図4のステップS1に示したように、携帯情報端末Pのキーボードを操作して、表1の各項目に必要な内容を入力する。入力した後、ステップS2で、対象の樹木に設置されているICタグに管理情報を送信して書き込む。
新規入力した管理情報は、管理事務所に帰った後に、携帯情報端末PからホストコンピュータHに通信機能を用いてダウンロードする。(ステップS3)
このとき、図5に示したように、ホストコンピュータHの管理用の画面を表示させて、管理対象領域の地図を表示させて、管理対象の樹木の位置を地図上に指定することによって、当該樹木の位置情報が確定されて、位置情報を含んだ管理情報がホストコンピュータHのハードディスク等に記録される。
【0012】
管理情報を変更する場合は、ステップS4において、管理対象の樹木を調査・観察して入力すべき維持管理情報を、携帯情報端末Pに入力する。ステップS5においては、対象の樹木に設置されているICタグに入力された維持管理情報を送信して、このとき、送信された維持管理情報は上書きして書き込まれる。
入力して書き換えた維持管理情報は、管理事務所に帰った後に、携帯情報端末PからホストコンピュータHに通信機能を用いてダウンロードする。(ステップS3)
このようにして、前記ホストコンピュータHには管理対象の各樹木の最新の維持管理情報が蓄積される。なお、維持管理情報は、上書きせずに、過去の管理情報も日付けとともに記録しておくことによって、当該樹木の来歴を随時確認することができる。
なお、前記ホストコンピュータHと携帯情報端末Pとの管理情報の送受信は、例えば、毎月1回ずつ行う。そして、このときの送受信される管理情報は最新情報のみをやり取りするものとし、通信時間の短縮を図るとよい。
【0013】
前記管理情報には、管理対象の樹木の位置(緯度、経度)も含まれているので、図5に示したように、ホストコンピュータHの管理用の画面を表示させて、管理対象領域の地図を表示させると、その地図の領域に存在する管理対象の各樹木がそれぞれマーク等で表示される。その何れかの樹木のマーク等をクリックすると、その樹木の管理情報を表示させることもできる。このような作業は、ホストコンピュータH上でできるので、管理監督者等が維持管理計画を効果的、且つ正確に立案することが容易になる。
また、前記ホストコンピュータHと同様に、他の関係する事業体にも同様のホストコンピュータを設置し、これらのホストコンピュータ間をネットワークで接続することによって、更に広範囲の樹木の管理情報を共有して、それらの樹木の管理を効率よく且つ正確に行うことが容易になるのである。
【0014】
特定の管理作業者でなくても、各樹木の現在の状況、および過去の状況を随時確認することができるので、管理作業者が交代しても十分な引き継ぎが可能となる。
また、各ICタグには、例えば、樹齢・樹高・幹回り・診断方法・病名・処置方法・倒木危険度・開花状況等の正確な管理情報を書き込むことができる。
また、病気が発生しても、過去の管理情報も参照できるので、より適切な処置が行え、倒木の危険を予知することも可能になる。
また、樹木の寿命は人間に比べて長いものがあるため、その樹木管理は人間の世代を越えて行う必要があるという点で特異性を持ったものである。寿命が数百年〜千年以上の樹木もあるため、それらの樹木管理に用いるICタグの寿命も半永久的なものが望まれる。その点でも、電源を内蔵しないパッシブタグの寿命は半永久的であるので、樹木管理に適している。
【実施例2】
【0015】
実施例2では、道路のメンテナンス管理用に本発明を採用した場合を示した。
この場合には、ICタグTは、図6に示したように、歩車道境界ブロックや既設表示板等に取り付ける。前記ICタグTに記録する情報は、道路のメンテナンス管理用に必要な事項を、固定項目と維持管理項目に分けて記録する。
【実施例3】
【0016】
実施例3では、貯水槽のメンテナンス管理用に本発明を採用した場合を示した。
この場合には、ICタグTは、図7に示したように、貯水槽に取り付ける。
改正水道法によって、貯水槽の設置者は、最低年に1回以上の清掃と水質検査を実施するように義務化されている。前記ICタグTに記録する情報は、貯水槽のメンテナンス管理用に必要な事項を、固定項目と維持管理項目に分けて記録する。
【実施例4】
【0017】
実施例4では、橋脚のメンテナンス管理用に本発明を採用した場合を示した。
この場合には、ICタグTは、図8に示したように、橋脚部に取り付ける。
コンクリート構造物の保守点検、補修業務に利用する。前記ICタグTに記録する情報は、橋脚のメンテナンス管理用に必要な事項を、固定項目と維持管理項目に分けて記録する。
【実施例5】
【0018】
実施例5では、トンネルのメンテナンス管理用に本発明を採用した場合を示した。
この場合には、ICタグTは、図9に示したように、トンネル入口や補修個所等に取り付ける。前記ICタグTに記録する情報は、トンネルのメンテナンス管理用に必要な事項を、固定項目と維持管理項目に分けて記録する。
トンネルの附帯設備は多いため、それらの設備毎に異なるメンテナンス業者が必要となる。異なるメンテナンス業者で管理情報の共有が簡単になる。
【実施例6】
【0019】
実施例6では、事故現場の管理用に本発明を採用した。
この場合には、ICタグTは、事故多発現場の歩車道境界ブロックや既設表示板等に図6と同様に取り付ける。そして、事故現場における事故の発生毎に、ICタグに事故の状況等を蓄積しておくことにより、事故防止のための対策を研究して講じることができる。
【0020】
本発明の管理方法、管理システムは、さらに種々のものの管理に使用できる。
例えば、ビルや土地等の不動産の管理にも応用でき、その所有者や面積等の情報に加えて、備品の管理に使用することができる。
また、不動産に限らず、各種車両等の動産の管理にも使用できる。
例えば、当該車両のメンテナンス経歴や所有移転の経歴等の情報や、車庫証明の情報等を管理できる。当該車両のバンパーの裏側等にICタグを取り付けて、読み取れるようにすると各種管理に便利になる。
さらには、ペット等の小動物に附帯させて管理に供したり、衣類等の持ち物に取り付けてクリーニング業者に依頼する場合に他人の衣類との混同を防止するために利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を採用した樹木管理方法とそのシステムの実施の形態の構成を示した構成図である。
【図2】ICタグの種々の形態の説明図である。
【図3】前記樹木管理システムの全体の構成を説明する説明図である。
【図4】前記樹木管理システムの運用の流れを説明する説明図である。
【図5】前記樹木管理システムによる位置表示例を説明する説明図である。
【図6】本発明の別の実施例におけるICタグの設置状況を説明する説明図である。
【図7】本発明の別の実施例におけるICタグの設置状況を説明する説明図である。
【図8】本発明の別の実施例におけるICタグの設置状況を説明する説明図である。
【図9】本発明の別の実施例におけるICタグの設置状況を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0022】
A1,A2,A3, 管理対象の樹木
H ホストコンピュータ
M 管理作業者、
P 携帯情報端末
T1,T2,T3,T ICタグ、管理情報担持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理対象物に1対1に対応させた電子情報担持体に、当該管理対象物の管理情報を書き込み保持させることによって、当該管理対象物を管理することを特徴とする管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の管理方法に用いる管理システムであって、
管理対象物に1対1に対応させるとともに前記管理対象物に付設させた電子情報担持体と、
前記電子情報担持体に書き込み保持された管理情報を読みとる読み取り機能、前記電子情報担持体に書き込むべき管理情報を入力する入力機能、及び入力した管理情報を前記電子情報担持体に書き込む書き込み機能とを備えた携帯情報端末と、
前記携帯情報端末との間で管理情報を送受信する管理装置と、
を備えていることを特徴とする管理システム。
【請求項3】
前記電子情報担持体は、不揮発性半導体メモリを内蔵していることを特徴とする請求項2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記電子情報担持体は、携帯情報端末を用いて、管理情報を書き込み、もしくは読み取り可能としたことを特徴とする請求項に記載の管理システム。
【請求項5】
前記電子情報担持体に保持される管理情報は、書換えしない固定項目と、書換えする維持管理項目とから構成されていることを特徴とする請求項 に記載の管理システム。
【請求項6】
前記電子情報担持体と前記携帯情報端末とは、非接触で管理情報の送受信を可能としたことを特徴とする請求項に記載の管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−31673(P2006−31673A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143897(P2005−143897)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)
【出願人】(000112691)フジテコム株式会社 (9)
【出願人】(501289821)株式会社ティーム (1)
【Fターム(参考)】