説明

管継手

【課題】 破断することなく、管周方向に容易に縮径し得る管継手を提供する。
【解決手段】 シールリング4は、管周方向に環状に連なったゴムリング40と、ゴムリング40内に収容され、ゴムリング40の断面形状を保形する環状のコイルスプリング41とを備え、ゴムリング40には、コイルスプリング40を収容する断面が略円形の収容孔43と、収容孔43を管の外周側において開口させてコイルスプリング41を収容孔内43に挿入可能とした円周溝とが形成されて、ゴムリング40の断面が略C字状に形成され、このように、ゴムリング40の断面が略C字状に形成されていることにより、ゴムリング40が管周方向に縮径するのを容易としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管の管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体管を継ぐ管継手は、種々のものが提案されている(特許文献1〜4参照)。
【特許文献1】実開昭49−133213号(第1図)
【特許文献2】特開昭53−85525号(図面)
【特許文献3】実開昭56−55180号(第1図)
【特許文献4】実開平4−90790号(図3)
【発明の開示】
【0003】
従来より、図6A,Bに示すシールリング100が知られている。シールリング100は、断面円形のゴムリング103内にコイルスプリング104が内蔵されている。このシールリング100はゴムリング103内に収容孔105が形成されていることにより、ゴムリング103の断面積が小さな力で変化するようにして、管種の相違による管外径の相違に対処できるようにしている。
【0004】
しかし、かかる従来のシールリング100は、図6Aに示すように、複数の円弧状の分割部101を互いに接着することにより、流体管の外周面に接触するリング状に形成していた。そのため、流体管の管種の違い等により、シールリングが該管周方向に大きく縮径する場合には、ゴムリング内に生じる応力が極めて大きくなる。そのため、ゴムリングが接着面102において破断するおそれがある。
したがって、本発明の目的は、周方向に大きく圧縮変形しても、破断することがないように、管周方向に容易に縮径し得る管継手を提供することである。
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の管継手は、第1流体管の受口の内周面と、第2流体管の挿口の外周面とに接触するシールリングを押輪で前記第1流体管の受口の奥に向って押すことにより、前記両流体管の間をシールする管継手であって、前記シールリングは、管周方向に環状に連なったゴムリングと、前記ゴムリング内に収容され、前記ゴムリングの断面形状を保形する環状のコイルスプリングとを備え、前記ゴムリングには、前記コイルスプリングを収容する断面が略円形の収容孔と、前記収容孔を管の外周側において開口させて前記コイルスプリングを前記収容孔内に挿入可能とした円周溝とが形成されて、ゴムリングの断面が略C字状に形成され、このように、前記ゴムリングの断面が略C字状に形成されていることにより、前記ゴムリングが管周方向に縮径するのを容易としたことを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、シール時には、ゴムリングが受口のテーパ状の内周面と押輪のテーパ状の押面とで、圧縮されて、両流体管の間をシールする。このとき、ゴムリングは、コイルスプリングによって、略C字状の断面形状が失われることなく保持されるから、シール機能が発揮される。
また、ゴムリングの内径に比べ挿口の外径が小さい場合、ゴムリングは、管軸方向に押されると共に管径方向の内方に向って押されることにより、縮径すると同時に、横断面積が増大する。この際、ゴムリングの断面が略C字状であるから、ゴムリングが損傷することなくゴムリングの断面積が増大する。また、ゴムリングは、環状に連なって形成されているので、つまり、接着剤で継がれていないから、破断するおそれがない。
さらに、ゴムリングの断面は略C字状であるから、ゴムリングが円周溝の方に向かって変形することが可能である。つまり、ゴムリングは円周溝の幅が狭まるように変形可能である。したがって、縮径時に、容易に断面積が増大する。
なお、ゴムリングは圧縮時(縮径時)にゴムが断面の外方および収容孔の双方に向かって膨脹できるので、管種の相違による管外径の相違があっても、シール可能である。
【0007】
本発明においては、前記ゴムリングの断面形状は前記円周溝の両側に、管外径の内方に行くに従い広がる非円弧状の“ハの字”状の被押圧面を有し、前記被押圧面が前記第1流体管の受口の内周面と前記押輪の押面とに接触するのが好ましい。
この態様によれば、管の外径が変化しても被押圧面が第1流体管および押輪の面に沿った状態で押されることにより、シール機能を向上させることができる。
【0008】
本発明においては、両流体管に抜出力が働いた際に、係合突部が挿口の外周面に食い込んで、両流体管が離脱するのを防止する抜出防止機構を更に備え、前記抜出防止機構は、管の円周方向の第1切欠部が切欠された全体が略C字状で不連続の第1ロックリングと、管の円周方向に前記第1切欠部とは異なる第2切欠部が切欠された全体が略C字状で不連続の第2ロックリングとを有し、前記第1ロックリングの第1切欠部において前記第2ロックリングが連続しており、一方、前記第2ロックリングの第2切欠部において前記第1ロックリングが連続しているのが好ましい。
【0009】
ここで、従来よりロックリングを設けることより流体管の抜け止めが図られている。しかし、従来のロックリングは、1本であるため、大きな力が加わった場合、流体管の離脱を防止できないおそれがあった。
一方、本態様によれば、ロックリングを2本設けているので、両流体管の離脱を十分に防止することができる。しかも、一方のロックリングの切欠部に対応する部位については他方のロックリングが連続しているので、円周方向にバランスのとれた離脱防止力が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
図1A,Bは管の外径の異なる第2流体管2に本管継手を用いた場合をそれぞれ示す縦断面図である。図2A,Bは、図1A,Bに対応する要部の拡大断面図である。
図1A(B)に示すように、本管継手は、第1流体管1と第2流体管2とを継ぐものであり、押輪3、シールリング4および係合リング5を備えている。
本継手は、シールリング4を押輪3により第1流体管1の受口14の奥に向って押すことにより、両流体管1,2の間をシールする。図2A(B)に示すように、シールリング4が、第1流体管1の受口14の内周面14aと、第2流体管2の端部の挿口22の外周面22aとに接触することにより前記シールが行われる。
【0011】
図1A(B)の第1流体管1の第1フランジ11と、押輪3の第2フランジ32とは、第1締付ボルトおよびナット6a,6bを介して互いに締め付けられることにより固定される。一方、押輪3の第3フランジ33と係合リング5の第4フランジ54とは、第2締付ボルトおよびナット7a,7bを介して互いに締め付けられることより固定される。なお、押輪3の第2フランジ32と第3フランジ33とは、管周方向に交互に形成されている。
【0012】
シールリング4:
図2A(B)に示すように、シールリング4は、第1流体管1の受口14の内周面14a、第2流体管2の挿口22の外周面22a、および押輪3の押面3aに接している。シールリング4は、ゴムリング40を備えている。
図3Aはシールリング4の正面図である。図3Aおよび図5の斜視図に示すように、ゴムリング40は、その全体が周方向に継ぎ目のない環状に形成されている。すなわち、ゴムリング40は金型内において、継がれることなく周方向に一体の環状に形成されている。
図3Bはゴムリング40を一部破断した側面図である。図3Bに示すように、ゴムリング40には、第2流体管2(図2)の外周側において開口された円周溝42が形成されている。円周溝42は、ゴムリング40の外周面に沿ってゴムリング40の全周に渡って開口している。
【0013】
図3Cは、図3Aにおけるシールリング4の拡大されたIIIC-IIIC 端面図である。図3Cに示すように、ゴムリング40は、内部にコイルスプリング41を収容するための収容孔43が形成されている。収容孔43は、コイルスプリング41を収容するために断面が略円形に形成されている。収容孔43は、図3Aの破線で示すように、ゴムリング40の内部の全周に渡って環状に形成されている。収容孔43には、前記円周溝42が連なっている。したがって、収容孔43は、ゴムリング40の外周面に向って開口している。
本シールリング4を組み立てる際には、ゴムリング40の開口した前記円周溝42からコイルスプリング41を収容孔43に挿入する。なお、コイルスプリング41としては、環状のものを用いてもよいし、直線状のコイルスプリング41を収容孔43に挿入することで環状に湾曲させて用いてもよい。
【0014】
図3Cのシールリング4の断面形状において、円周溝42の両側には、非円弧状の“ハの字”状の非押圧面44,44が形成されている。図2A(B)に示すように、非押圧面44,44は、第2流体管2の外径から内方に向かう管径方向Rに行くに従い、広がるように形成されている。非押圧面44,44は、第1流体管1の受口14の内周面14aと、押輪3の押面3aとにそれぞれ接触する。
【0015】
シールリング4の装着方法:
シールリング4の装着は、第2流体管2の挿口22の外周に、環状のシールリング4を嵌め込んだ後、第1流体管1と押輪3とを第1締付ボルトおよびナット6a,6bによって締結することにより行う。
【0016】
前記装着により、前記受口14の内周面14aと、押輪3の押面3aとが、ゴムリング40の非押圧面44,44に接触すると共に、ゴムリング40の下部が第2流体管2の外周面22aに接触する。
【0017】
したがって、シール時には、ゴムリング40が第1流体管1の受口14のテーパ状の内周面14aと、押輪3のテーパ状の押面3aとで圧縮され、両流体管1,2の間をシールする。このとき、ゴムリング40は、コイルスプリング41によって、略C字状の断面形状が失われることなく保持されるから、収容孔43が設けられていても、シール機能が発揮される。
【0018】
第1締付ボルトおよびナット6a,6bを締め付けると、第1流体管1および押輪3により、ゴムリング40の非押圧面44,44が、第1流体管1の受口14の内周面14aと、押輪3の押面3aとに密着するように変形する。かかる密着により、シールリング4が管径方向Rの内方に向って押圧される。一方、第2流体管2の外周面22aに接触しているゴムリング40の接触面は、第2流体管2の外周面22aに沿うように変形される。この変形により、円周溝42が狭まると共に、第1流体管1、第2流体管2および押輪3に接触していないゴムリング40の他の部分の断面積が増大する。
【0019】
ここで、シールリング4の内径に比べ、第1流体管1の挿口22の外径が小さい場合、図1B,図2Bに示すように、ゴムリング40は、管軸方向Xに圧縮されると共に管径方向Rの内方に向って押し付けられることにより縮径する。この際、コイルスプリング41が周方向に縮むと共に、ゴムリング40の断面が略C字状であることにより、円周溝42の幅が狭くなるようにゴムリング40が変形するのでゴムリング40が損傷することなくゴムリング40の断面積が増大する。
また、ゴムリング40の断面は略C字状であるから、縮径時に、円周溝42が狭まると共に、容易に断面積が増大する。そのため、第1締付ボルトおよびナット6a,6bの軸力を小さくすることができるので、多大な労力を要することなく本継手を装着することができる。
【0020】
抜出防止機構:
図1A(B)の係合リング5内には、複数個の係合ピース53が設けられている。係合ピース53の内周側には、第1および第2ロックリング51,52が設けられている。係合リング5、係合ピース53およびロックリング51,52は、抜出力が働いた際に両流体管1,2が離脱するのを防止する抜出防止機構を構成している。
【0021】
図5に示すように、第1ロックリング51は、第1切欠部51aが切欠された全体が略C字状で不連続な環状に形成されている。第2ロックリング52は、第2切欠部52aが切欠された全体が略C字状で不連続な環状に形成されている。第1ロックリング51は、第2ロックリング52の第2切欠部52aにおいて連続しており、一方、第2ロックリング52は、第1ロックリング51の第1切欠部51aにおいて連続するように装着される。
【0022】
図4Aは、ロックリング51(52)の正面図を示す。図4Bは、図4Aにおける拡大されたIVA-IVA 端面図を示す。
図4Bに示すように、ロックリング51(52)には、抜出力が働いた際に、第1流体管1(図2)の外周に食い込む係合突条(係合突部の一例)51b(52b)が形成されている。
【0023】
ここで、図2Aに示すように、係合リング5の内部は、テーパ状に形成されており、複数個の係合ピース53は、それぞれ係合リング5内に挿入されている。第2締付ボルトおよびナット7a,7b(図1)を締め付けると、押輪3の突部35が係合ピース53を係合リング5の奥に向って管軸方向Xに押す。かかる係合ピース53の移動により、第1および第2ロックリング51,52が第2流体管2の内方に向かって若干移動し第2流体管2の外周面に接触する。
【0024】
両流体管1,2に抜出力が働いた場合には、図4Bに示す第1および第2ロックリング51,52の係合突部51b,52bが、第2流体管2の挿口22に食い込み、両流体管1,2が離脱するのを防止する。
【0025】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、ゴムリングの円周溝は、ゴムリングの全周にわたって形成されていなくてもよく、少なくとも、コイルスプリングを挿入し得る程度に形成されていればよい。
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は流体管同士を接続するための継手に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例にかかる管継手の縦断面図である。
【図2】同要部の拡大された縦断面図である。
【図3】3Aはシールリングの正面図、3Bは一部破断された側面図。3Cは拡大されたIIIC-IIIC 端面図である。
【図4】4Aはロックリングの正面図、4Bは拡大されたIVA-IVA 端面図である。
【図5】シールリングおよびロックリングの概略斜視図である。
【図6】6Aは従来のシールリングを示すを示す正面図、6Bは同断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1:第1流体管
2:第2流体管
3:押輪
3a:押面
4:シールリング
5:係合リング(抜出防止機構)
14:受口
22:挿口22
40:ゴムリング
41:コイルスプリング
42:円周溝
43:収容孔
44:非押圧面
51,52:ロックリング(抜出防止機構)
51b,52b:係合突部
53:係合ピース(抜出防止機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体管の受口の内周面と、第2流体管の挿口の外周面とに接触するシールリングを押輪で前記第1流体管の受口の奥に向って押すことにより、前記両流体管の間をシールする管継手であって、
前記シールリングは、管周方向に環状に連なったゴムリングと、前記ゴムリング内に収容され、前記ゴムリングの断面形状を保形する環状のコイルスプリングとを備え、
前記ゴムリングには、前記コイルスプリングを収容する断面が略円形の収容孔と、前記収容孔を管の外周側において開口させて前記コイルスプリングを前記収容孔内に挿入可能とした円周溝とが形成されて、ゴムリングの断面が略C字状に形成され、
このように、前記ゴムリングの断面が略C字状に形成されていることにより、前記ゴムリングが管周方向に縮径するのを容易とした管継手。
【請求項2】
請求項1において、前記ゴムリングの断面形状は前記円周溝の両側に、管外径の内方に行くに従い広がる非円弧状の“ハの字”状の被押圧面を有し、前記被押圧面が前記第1流体管の受口の内周面と前記押輪の押面とに接触する。
【請求項3】
請求項1において、両流体管に抜出力が働いた際に、係合突部が挿口の外周面に食い込んで、両流体管が離脱するのを防止する抜出防止機構を更に備え、
前記抜出防止機構は、管の円周方向の第1切欠部が切欠された全体が略C字状で不連続の第1ロックリングと、管の円周方向に前記第1切欠部とは異なる第2切欠部が切欠された全体が略C字状で不連続の第2ロックリングとを有し、
前記第1ロックリングの第1切欠部において前記第2ロックリングが連続しており、一方、前記第2ロックリングの第2切欠部において前記第1ロックリングが連続している管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−307923(P2006−307923A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129327(P2005−129327)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(399130348)株式会社水研 (19)
【Fターム(参考)】