説明

管継手

【課題】 継手本体と管との間に食込みリングをよく食い込ませることにより高いシール性を確保する。
【解決手段】 管継手10は、継手本体20と、食込みリング24と、締付ナット22とを備えている。継手本体20は受口部を有する。食込みリング24は継手本体20の受口部に挿入される。食込みリング24は受口部から縮径作用を受けると管の外周に食込む。食込みリング24が、本体側テーパ部と、ナット側テーパ部と、進入部とを有している。ナット側テーパ部は、締付ナット22から縮径作用を受ける。進入部は、ナット側テーパ部の先端に配置される。締付ナット22が食込みリング24に推進力を与える際、進入部が管12の外周面と締付ナット22の管包囲部との隙間に進入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手に関し、特に、継手本体と管との間に食込みリングをよく食い込ませることにより高いシール性を確保できる、管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は管継手を開示する(非特許文献1の図2005参照)。この管継手は、継手本体と、締付ナットと、金属製のスリーブとを備えている。継手本体は、受口部を有する。受口部には管の一端が差し込まれる。受口部の外周には雄ねじが設けられる。締付ナットは管の外周に嵌められる。スリーブは、管の外周に嵌められる。スリーブの一端は、継手本体の受口部に挿入される。受口部の内周に、第1のテーパ面が形成されている。第1のテーパ面は、スリーブの一端が当たると、その一端に縮径作用を与える。締付ナットの内周に、第2のテーパ面が形成されている。第2のテーパ面は、スリーブの他端が当たると、その他端に縮径作用を与える。スリーブが管の一端に食い込むことで管継手と管とが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】JIS、鉄鋼製管継手用語、B0151(1973)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に開示された管継手には、シール性能が低いという問題点がある。この問題点の原因の一種には、継手本体と管との間にスリーブがあまり食い込まないことがある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、継手本体と管との間に食込みリングをよく食い込ませることにより高いシール性を確保できる、管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図面を参照して本発明の管継手を説明する。なお、この欄で図中の符号を使用したのは、発明の内容の理解を助けるためであって、内容を図示した範囲に限定する意図ではない。
【0007】
本発明のある局面にしたがうと、管継手10は、継手本体20と、食込みリング24と、締付ナット22とを備えている。継手本体20は、受口部30、および、雄ねじ40を有する。受口部30には、管12の一端が差し込まれる。管12を流体が通過する。雄ねじ40は受口部30の外周に設けられる。食込みリング24は継手本体20の受口部30に挿入される。食込みリング24は受口部30から縮径作用を受けると管12の外周に食込む。締付ナット22は雌ねじ82とリング推進部84とを有している。雌ねじ82は雄ねじ40に螺合する。リング推進部84は、食込みリング24に縮径作用と推進力とを与える。食込みリング24が、本体側テーパ部110と、ナット側テーパ部112と、進入部114とを有している。本体側テーパ部110は、継手本体20の受口部30に挿入される。本体側テーパ部110は、受口部30から縮径作用を受ける。ナット側テーパ部112は、締付ナット22の内部に挿入される。ナット側テーパ部112は、締付ナット22から縮径作用を受ける。進入部は、ナット側テーパ部112の先端に配置される。締付ナット22が、管包囲部をさらに有している。管包囲部は、雌ねじ82およびリング推進部84から見て継手本体20の受口部30とは反対側に配置される。管包囲部は、管12が貫通する。管包囲部は、管12の外周面を包囲する。締付ナット22が食込みリング24に推進力を与える際、進入部が管12の外周面と締付ナット22の管包囲部との隙間に進入する。
【0008】
締付ナット22が食込みリング24に推進力を与える際、進入部が管12の外周面と締付ナット22の管包囲部との隙間に進入することにより、進入部が設けられていない場合に比べ、ナット側テーパ部112は管12に食込み難くなる。管12に食込み難いので、ナット側テーパ部112のうち管12に食込んだ部分は抵抗となり難くなる。抵抗となり難いので、食込みリング24の本体側テーパ部110は、進入部が設けられていない場合に比べ、継手本体と管との間へスムーズに食込む。その結果、高いシール性を確保できる。
【0009】
また、上述した進入部114が、環状部を有していることが望ましい。進入部114が環状部を有する場合、その環状部が管12の外周面と締付ナット22の管包囲部との隙間に進入することとなる。環状部は、ナット側テーパ部112の先端から複数の板状部が突出している場合に比べ、変形し難い。変形し難いので、管12の表面に食込み難い。環状部が管12に食込み難いので、高いシール性を確保できる。
【0010】
もしくは、上述した環状部が円筒形部分を有することが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の管継手によれば、継手本体と管との間に食込みリングをよく食い込ませることにより高いシール性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態にかかる管継手の半欠截断面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる継手本体の半欠截断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる締付ナットの半欠截断面図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる食込みリングの半欠截断面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる管継手へ管を接続している途中における管継手および管の半欠截断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0014】
[管継手の構造]
図1を参照しつつ、本実施形態にかかる管継手10の構成を説明する。本実施形態にかかる管継手10は、継手本体20と、締付ナット22と、食込みリング24とにより構成される。この管継手10により接続される管12は、銅管およびステンレス管を始めとする金属管である。
【0015】
図2を参照しつつ、継手本体20の構成を説明する。図2に示すように、継手本体20は筒状に形成される。この両端に受口部30が設けられている。受口部30の外周に対応する位置には雄ねじ40が形成されている。継手本体20の外周における軸方向中間位置には多角形の工具受け部32が形成されている。工具受け部32にはスパナなどの工具が掛けられる。
【0016】
受口部30には、管12の一端が差し込まれる。この受口部30の開口端42のすぐ奥に開口側定径部44が形成されている。開口側定径部44の内径は一定である。開口側定径部44の内部空間は継手本体20の中心軸150に沿うまっすぐな円柱状の空間である。開口側定径部44の奥に縮径用テーパ面46が形成されている。縮径用テーパ面46は、受口部30の開口端42から見て開口側定径部44の奥へ向かうにつれ漸次窄まっている。開口端42から見て縮径用テーパ面46の奥に奥側定径部48が形成されている。奥側定径部48の内径もまた一定である。そのため、奥側定径部48の内部空間は継手本体20の中心軸150に沿うまっすぐな円柱状の空間となっている。開口端42から見て奥側定径部48の奥に管端ストッパ部50が形成されている。管端ストッパ部50のうち奥側定径部48との境界部分には曲面60が形成されている。
【0017】
図3を参照しつつ、締付ナット22について説明する。締付ナット22は、雌ねじ82と、推進用テーパ面84と、管包囲部86とを備える。雌ねじ82は、締付ナット22内周のうち本体側開口端80のすぐ奥に設けられる。雌ねじ82は継手本体20の雄ねじ40に螺合する。推進用テーパ面84は、本体側開口端80からみて雌ねじ82の奥に設けられる。推進用テーパ面84は、本体側開口端80から見て奥へ向かうにつれ漸次窄まっている。締付ナット22の中心軸152ひいては雌ねじ82の中心軸に対する推進用テーパ面84の傾きは、継手本体20の中心軸150ひいては雄ねじ40の中心軸に対する縮径用テーパ面46の傾きより大きい。管包囲部86は、本体側開口端80からみて推進用テーパ面84の奥に設けられる。本実施形態においては、管包囲部86の内径は一定である。管包囲部86の端には、挿入用開口端88が設けられている。なお、本実施形態の場合、上述したリング推進部は推進用テーパ面84によって構成されている。
【0018】
本実施形態の場合、締付ナット22の雌ねじ82および継手本体20の雄ねじ40のうち少なくとも一方には、図示しない潤滑層が形成される(以下、潤滑層が形成される箇所を「潤滑箇所」と称する)。本実施形態の場合、潤滑層は、塗料タイプの潤滑材を潤滑箇所に焼付塗装することにより形成される。潤滑材は、有機または無機のバインダー中に二硫化モリブデン粉末を分散させたものである。潤滑層は、そのほかに、フッ素樹脂などの潤滑材を塗装したり、あるいはクロムめっきを施したりすることによっても形成することができる。
【0019】
図4を参照しつつ、食込みリング24について説明する。本実施形態にかかる食込みリング24は、本体側テーパ部110と、ナット側テーパ部112と、進入部114とを有する。本体側テーパ部110は継手本体20の受口部30に挿入される。本体側テーパ部110は食込みリング24の本体側端部120に近づくにつれ窄まっている。本体側テーパ部110の端には本体側曲面124が設けられている。ナット側テーパ部112は、締付ナット22の内部に挿入される。ナット側テーパ部112は本体側テーパ部110から離れるにつれ窄まっている。ナット側テーパ部112の肉厚は本体側テーパ部110から離れるにつれ薄くなっている。進入部114はナット側テーパ部112の先端に設けられている。進入部114の先端にはナット側曲面126が設けられている。本実施形態の場合、本実施形態の場合、進入部114のうちナット側曲面126が設けられている箇所以外は円筒形である。これにより、本実施形態にかかる進入部114は、一端に曲面が設けられている環状部によって構成されていることとなる。また、本実施形態において、食込みリング24は金属製である。
【0020】
[管の接続手順]
図5は、管継手10へ管12を接続している途中における管継手10および管12の半欠截断面図である。図1と図5とを参照しつつ、管12の接続手順について説明する。予め、施工者は、図5に示すように、継手本体20の受口部30内に食込みリング24の本体側テーパ部110を挿入しておく。さらに、施工者は、締付ナット22の雌ねじ82を継手本体20の雄ねじ40に螺合させておく。この仮組み状態では、食込みリング24のナット側テーパ部112が受口部30から突出する。また締付ナット22の推進用テーパ面84が食込みリング24のナット側テーパ部112の端に接触する。締付ナット22は継手本体20の工具受け部32から離れている。
【0021】
次いで、このように仮組みした管継手において、施工者は、管12の一端部に締付ナット22を貫通させ、かつ、その管12の一端部を継手本体20の受口部30内に差し込む。この管12の一端部は管端ストッパ部50に突き当たる。その後、施工者は、継手本体20の工具受け部32にスパナなどの工具を掛ける。施工者が締付ナット22を他のスパナなどの工具で締付け方向に回転させると、図1に示すように締付ナット22は工具受け部32に当たるまで螺進する。その際、継手本体20の雄ねじ40および締付ナット22の雌ねじ82の少なくとも一方に潤滑層が形成されているので、それら雌ねじ82と雄ねじ40の接触面間での摩擦を低減できる。摩擦を低減できるので、柄の短いスパナなどでも小さい操作力で容易に締付ナット22を回すことができる。
【0022】
締付ナット22を回した結果、締付ナット22が継手本体20の工具受け部32に密着すると、管12の接続は完了する。
【0023】
[シール部形成作用]
締付ナット22の螺進に伴い、推進用テーパ面84が食込みリング24を押すことで、食込みリング24が継手本体20の受口部30の中へ進む。
【0024】
食込みリング24が受口部30の中へ進むと、食込みリング24の本体側テーパ部110が受口部30の縮径用テーパ面46に接触する。本体側テーパ部110が接触すると縮径用テーパ面46は本体側テーパ部110に縮径作用を与える。縮径作用を受けることで、本体側テーパ部110は、その外径を小さくしながら縮径用テーパ面46と管12の外周との隙間に楔状に食い込む。これにより、シール作用が形成される。
【0025】
なお、本体側テーパ部110がそのように食い込み終える直前に食込みリング24のナット側テーパ部112と進入部114とが推進用テーパ面84から縮径作用を受ける。これにより進入部114は、その外径を小さくしながら推進用テーパ面84と管12の外周との隙間に食い込む。しかし、進入部114が環状部によって構成されており、かつ、その環状部のうち一部は円筒形である。これにより、ナット側テーパ部112は管12の外周に食込み難い。
【0026】
[効果の説明]
以上のようにして、本実施形態にかかる管継手10によれば、締付ナット22の締め付けによって縮径用テーパ面46と管12の外周との隙間にシール部が形成される。しかも、ナット側テーパ部112が管12の外周に食込み難い構造となっている。これにより、、継手本体20と管12との間に食込みリング24をよく食い込ませることができる。
【0027】
また、進入部114が環状部によって構成されており、かつ、その環状部のうち一部は円筒形である。これにより、たとえばナット側テーパ部112の先端から複数の板状部が突出している場合に比べ、変形し難い。
【0028】
[変形例の説明]
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示である。本発明の範囲は上述した実施形態に基づいて制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更をしてもよいのはもちろんである。
【0029】
例えば、食込みリング24の進入部114は円筒形の部分に代えて角筒型の部分を有していてもよい。もちろん、ナット側テーパ部112の先端から複数の板状部が突出しているものであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
10…管継手
12…管
20…継手本体
22…締付ナット
24…食込みリング
30…受口部
32…工具受け部
40…雄ねじ
42…開口端
44…開口側定径部
46…縮径用テーパ面
48…奥側定径部
50…管端ストッパー部
60…曲面
80…本体側開口端
82…雌ねじ
84…推進用テーパ面
86…管包囲部
88…挿入用開口端
110…本体側テーパ部
112…ナット側テーパ部
120…本体側端部
122…ナット側端部
124…本体側曲面
126…ナット側曲面
150,152…中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が通過する管の一端が差し込まれる受口部、および、前記受口部の外周に設けられる雄ねじを有する継手本体と、
前記継手本体の受口部に挿入され、前記受口部から縮径作用を受けると前記管の外周に食込む食込みリングと、
前記雄ねじに螺合する雌ねじ、および、前記食込みリングに縮径作用と推進力とを与えるリング推進部を有しており、前記雌ねじによって前記継手本体に接続される締付ナットと、を備える管継手であって、
前記食込みリングが、
前記継手本体の受口部に挿入され、前記受口部から縮径作用を受ける本体側テーパ部と、
前記締付ナットの内部に挿入され、前記締付ナットから縮径作用と推進力とを受けるナット側テーパ部と、
前記ナット側テーパ部の先端に配置される、進入部とを有しており、
前記締付ナットが、前記雌ねじおよび前記リング推進部から見て前記継手本体の受口部とは反対側に配置され、前記管が貫通し、かつ、前記管の外周面を包囲する管包囲部をさらに有しており、
前記締付ナットが前記食込みリングに推進力を与える際、前記進入部が前記管の外周面と前記締付ナットの前記管包囲部との隙間に進入することを特徴とする、管継手。
【請求項2】
前記進入部が、前記管が貫通する環状部を有していることを特徴とする、請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記環状部が円筒形部分を有することを特徴とする、請求項2記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−255474(P2012−255474A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128060(P2011−128060)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000231121)JFE継手株式会社 (140)
【Fターム(参考)】