説明

管継手

【課題】 管にモーメントがかかったときの流体の漏出を抑える。
【解決手段】 管継手10は、継手本体20と、食込みリング24と、締付ナット22とを備えている。継手本体20の受口部には、管12の一端が差し込まれる。食込みリング24はその受口部に挿入される。食込みリング24は、受口部から縮径作用を受けると管12に食込む。締付ナット22はリング推進部を有している。リング推進部は、食込みリング24に推進力を与える。締付ナット22は継手本体20に接続される。食込みリング24が、本体側食込部と、接触部と、隙間食込部とを有している。本体側食込部は受口部に挿入される。本体側食込部は受口部から縮径作用を受けて受口部と管12との隙間に食込む。接触部は締付ナット22に接触して締付ナット22から推進力を受ける。隙間食込部は締付ナット22の螺進に伴って締付ナット22と管12との隙間に食込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手に関し、特に、管にモーメントがかかったときの流体の漏出を抑えることができる、管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は管継手を開示する(非特許文献1の図2005参照)。この管継手は、継手本体と、締付ナットと、金属製のスリーブとを備えている。継手本体は、受口部を有する。受口部には管の一端が差し込まれる。受口部の外周には雄ねじが設けられる。締付ナットは管の外周に嵌められる。スリーブは、管の外周に嵌められる。スリーブの一端は、継手本体の受口部に挿入される。受口部の内周に、第1のテーパ面が形成されている。第1のテーパ面は、スリーブの一端が当たると、その一端に縮径作用を与える。締付ナットの内周に、第2のテーパ面が形成されている。第2のテーパ面は、スリーブの他端が当たると、その他端に縮径作用を与える。スリーブが管の一端に食い込むことで管継手と管とが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】JIS、鉄鋼製管継手用語、B0151(1973)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に開示された管継手には、管に曲げモーメントがかかったとき流体の漏出が起こりやすいという問題点がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、管にモーメントがかかったときの流体の漏出を抑えることができる、管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図面を参照して本発明の管継手を説明する。なお、この欄で図中の符号を使用したのは、発明の内容の理解を助けるためであって、内容を図示した範囲に限定する意図ではない。
【0007】
本発明のある局面にしたがうと、管継手10,14,16は、継手本体20,720,740と、食込みリング24,224,424,724,744と、締付ナット22,222,722とを備えている。継手本体20,720,740は、受口部30,830,930、および、雄ねじ40,840を有する。受口部30,830,930には、管12の一端が差し込まれる。雄ねじ40,840は受口部30,830,930の外周に設けられる。食込みリング24,224,424,724,744は、継手本体20,720,740の受口部30,830,930に挿入される。食込みリング24,224,424,724,744を管12が貫通可能である。締付ナット22,222,722は雌ねじ82,282,882、および、リング推進部84,284,884を有している。雌ねじ82,282,882は雄ねじ40,840に螺合する。リング推進部84,284,884は、食込みリング24,224,424,724,744に推進力を与える。締付ナット22,222,722は雌ねじ82,282,882によって継手本体20,720,740に接続される。締付ナット22,222,722を管12が貫通可能である。食込みリング24,224,424,724,744が、本体側食込部110,810,910と、接触部114,314,814,914と、隙間食込部112,312,512,812,912とを有している。本体側食込部110,810,910は、継手本体20,720,740の受口部30,830,930に挿入される。本体側食込部110,810,910は、受口部30,830,930に管12の一端が差し込まれている状態で受口部30,830,930から縮径作用を受けると受口部30,830,930と管12との隙間に食込む。接触部114,314,814,914は、締付ナット22,222,722に接触して締付ナット22,222,722から推進力を受ける。隙間食込部112,312,512,812,912は、締付ナット22,222,722を管12が貫通している時、締付ナット22,222,722の螺進に伴って締付ナット22,222,722と管12との隙間に食込む。
【0008】
隙間食込部112,312,512,812,912が、締付ナット22,222,722の螺進に伴って締付ナット22,222,722と管12との隙間に食込む。締付ナット22,222,722はその雌ねじ82,282,882によって継手本体20,720,740の雄ねじ40,840に螺合している。これにより、管12は隙間食込部112,312,512,812,912を介して締付ナット22,222,722に支持されていることとなる。この状態において管12にモーメントがかかると、隙間食込部112,312,512,812,912を介して締付ナット22,222,722に支持されている箇所がその支点となる。これにより、本体側食込部110,810,910に対する引抜力が抑えられる。引抜力が抑えられるので、管12内を流れる流体の漏出を抑えることができる。
【0009】
また、上述した隙間食込部112,512が、複数の食込端部130,530を有していることが好ましい。複数の食込端部130,530は、管12を取囲むよう配置される。この場合、食込端部130,530のいずれかが接触部114,314と一体となっている。
【0010】
食込端部130,530のいずれかが接触部114,314と一体となっていることにより、管12にモーメントがかかったとき、接触部114,314と一体となっている食込端部130,530が管12を支えることとなる。管12が支えられるので、上述した引抜力は一層効果的に抑えられる。
【0011】
もしくは、上述した食込端部530が突起622を有することが好ましい。突起622は締付ナット22と管12との隙間で管12に食込む。締付ナット22と管12との隙間で突起622が管12に食込むことにより、管12が抜けにくくなる。管12が抜けにくくなるので、上述した引抜力は一層効果的に抑えられる。
【0012】
また、上述した隙間食込部312が、筒状端部318を有することが好ましい。管12は筒状端部318を貫通可能である。筒状端部318は、締付ナット22と管12との隙間に食込む。締付ナット22と管12との隙間に筒状端部318が食込む。筒状端部318は筒状である。これにより、隙間食込部312のうち締付ナット22と管12との隙間に食込む部分が筒状でない場合に比べ、筒状端部318から管12へかかる圧力は抑えられる。圧力が押さえられるので、隙間食込部312のうち締付ナット22と管12との隙間に食込む部分が筒状でない場合に比べ、隙間食込部312が管12へ食込みにくくなる。隙間食込部312が管12へ食込みにくくなるので、縮径用テーパ面46と管12の外周との隙間に対する本体側食込部110の食い込みがスムーズに進む。食い込みがスムーズに進むので、そうでない場合に比べ、そこでのシール作用が高くなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の管継手によれば、管にモーメントがかかったときの流体の漏出を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかる管継手の半欠截断面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる継手本体の半欠截断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる締付ナットの半欠截断面図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる食込みリングの半欠截断面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる管継手へ管を接続している途中における管継手および管の半欠截断面図である。
【図6】本発明の第1変形例にかかる締付ナットの半欠截断面図である。
【図7】本発明の第1変形例にかかる食込みリングの半欠截断面図である。
【図8】本発明の第2変形例にかかる食込みリングの半欠截断面図である。
【図9】本発明の第3変形例にかかる管継手の半欠截断面図である。
【図10】本発明の第3変形例にかかる継手本体の半欠截断面図である。
【図11】本発明の第3変形例にかかる締付ナットの半欠截断面図である。
【図12】本発明の第3変形例にかかる食込みリングの半欠截断面図である。
【図13】本発明の第4変形例にかかる管継手の半欠截断面図である。
【図14】本発明の第4変形例にかかる継手本体の半欠截断面図である。
【図15】本発明の第4変形例にかかる食込みリングの半欠截断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0016】
[管継手の構造]
図1を参照しつつ、本実施形態にかかる管継手10の構成を説明する。本実施形態にかかる管継手10は、継手本体20と、締付ナット22と、食込みリング24とにより構成される。この管継手10により接続される管12は、銅管およびステンレス管を始めとする金属管である。
【0017】
図2を参照しつつ、継手本体20の構成を説明する。図2に示すように、継手本体20は筒状に形成される。この両端に受口部30が設けられている。受口部30の外周には雄ねじ40が形成されている。継手本体20の外周における軸方向中間位置には多角形の工具受け部32が形成されている。工具受け部32にはスパナなどの工具が掛けられる。
【0018】
受口部30には、管12の一端が差し込まれる。この受口部30の開口端42のすぐ奥に開口側定径部44が形成されている。開口側定径部44の内径は一定である。開口側定径部44の内部空間は継手本体20の中心軸150に沿うまっすぐな円柱状の空間である。開口側定径部44の奥に縮径用テーパ面46が形成されている。縮径用テーパ面46は、受口部30の開口端42から見て開口側定径部44の奥へ向かうにつれ漸次窄まっている。開口端42から見て縮径用テーパ面46の奥に奥側定径部48が形成されている。奥側定径部48の内径もまた一定である。そのため、奥側定径部48の内部空間は継手本体20の中心軸150に沿うまっすぐな円柱状の空間となっている。開口端42から見て奥側定径部48の奥に管端ストッパ部50が形成されている。管端ストッパ部50のうち奥側定径部48との境界部分には曲面60が形成されている。
【0019】
図3を参照しつつ、締付ナット22について説明する。締付ナット22は、雌ねじ82と、リング推進部84と、縮径用テーパ面86と、管通過口88とを備える。雌ねじ82は、締付ナット22内周のうち本体側開口端80のすぐ奥に設けられる。雌ねじ82は継手本体20の雄ねじ40に螺合する。リング推進部84は、本体側開口端80からみて雌ねじ82の奥に設けられる。リング推進部84は食込みリング24に対して推進力を与える。縮径用テーパ面86は、本体側開口端80からみてリング推進部84の奥に設けられる。縮径用テーパ面86は、本体側開口端80から見て奥へ向かうにつれ漸次窄まっている。管通過口88は、本体側開口端80からみて縮径用テーパ面86の奥に設けられる。管12の一端は管通過口88を通って継手本体20の受口部30に差し込まれる。管通過口88の端には、挿入用開口端90が設けられている。
【0020】
本実施形態の場合、締付ナット22の雌ねじ82および継手本体20の雄ねじ40のうち少なくとも一方には、図示しない潤滑層が形成される(以下、潤滑層が形成される箇所を「潤滑箇所」と称する)。本実施形態の場合、潤滑層は、塗料タイプの潤滑材を潤滑箇所に焼付塗装することにより形成される。潤滑材は、有機または無機のバインダー中に二硫化モリブデン粉末を分散させたものである。潤滑層は、そのほかに、フッ素樹脂などの潤滑材を塗装したり、あるいはクロムめっきを施したりすることによっても形成することができる。
【0021】
図4を参照しつつ、食込みリング24について説明する。本実施形態にかかる食込みリング24は筒状である。食込みリング24は、本体側食込部110と、隙間食込部112と、接触部114とを有する。本体側食込部110は継手本体20の受口部30に挿入される。本体側食込部110は食込みリング24の本体側端部120に近づくにつれ窄まっている。本体側食込部110の端には本体側曲面124が設けられている。隙間食込部112は、締付ナット22の内部に挿入される。本実施形態において、隙間食込部112は2つの食込端部130,130を有する。これらは管12を取囲むよう配置される。これらは接触部114と一体となっている。2つの食込端部130,130の間には間隙116が設けられている。これにより、食込端部130,130は、本体側食込部110が設けられている部分よりたわみやすくなっている。各食込端部130,130は食込みリング24のナット側端部122に近づくにつれ窄まっている。食込端部130,130の端にはナット側曲面126が設けられている。接触部114は、本体側食込部110と隙間食込部112との間に配置される。接触部114は、締付ナット22のリング推進部84から推進力を受ける。食込みリング24の内径の最小値は、管12の外径よりも少し大きい。本実施形態の場合、食込みリング24は金属製である。
【0022】
なお、食込みリング24のうち隙間食込部112が設けられている部分の肉厚は、食込みリング24のうち本体側食込部110が設けられている部分の肉厚より薄い。つまり、食込みリング24のうち隙間食込部112が設けられている部分の内径は、食込みリング24のうち本体側食込部110が設けられている部分の内径より大きい。
【0023】
[管の接続手順]
図5は、管継手10へ管12を接続している途中における管継手10および管12の半欠截断面図である。図1と図5とを参照しつつ、管12の接続手順について説明する。予め、施工者は、図5に示すように、継手本体20の受口部30内に食込みリング24の本体側食込部110を挿入しておく。さらに、施工者は、締付ナット22の雌ねじ82を継手本体20の雄ねじ40に螺合させておく。この仮組み状態では、食込みリング24の隙間食込部112が受口部30から突出する。また締付ナット22の縮径用テーパ面86が食込みリング24の隙間食込部112の端に接触する。締付ナット22は継手本体20の工具受け部32から離れている。
【0024】
次いで、このように仮組みした管継手において、施工者は、管12の一端部に締付ナット22を貫通させ、かつ、その管12の一端部を継手本体20の受口部30内に差し込む。この管12の一端部は管端ストッパ部50に突き当たる。その後、施工者は、継手本体20の工具受け部32にスパナなどの工具を掛ける。施工者が締付ナット22を他のスパナなどの工具で締付け方向に回転させると、図1に示すように締付ナット22は工具受け部32に当たるまで螺進する。その際、継手本体20の雄ねじ40および締付ナット22の雌ねじ82の少なくとも一方に潤滑層が形成されているので、それら雌ねじ82と雄ねじ40の接触面間での摩擦を低減できる。摩擦を低減できるので、柄の短いスパナなどでも小さい操作力で容易に締付ナット22を回すことができる。
【0025】
締付ナット22を回した結果、締付ナット22が継手本体20の工具受け部32に密着すると、管12の接続は完了する。
【0026】
[シール部形成作用]
締付ナット22の螺進に伴い、締付ナット22のリング推進部84が食込みリング24の接触部114を押すことで、食込みリング24が継手本体20の受口部30の中へ進む。食込みリング24が受口部30の中へ進むと、本体側食込部110が受口部30の縮径用テーパ面46に接触する。本体側食込部110が縮径用テーパ面46に接触すると縮径用テーパ面46は本体側食込部110に縮径作用を与える。縮径作用を受けることで、本体側食込部110は、その外径を小さくしながら受口部30の縮径用テーパ面46と管12の外周との隙間に楔状に食い込む。これにより、本体側食込部110は管12の外周と縮径用テーパ面46とに密着する。
【0027】
[支持部形成作用]
また、締付ナット22の螺進に伴い、食込みリング24の隙間食込部112は締付ナット22の縮径用テーパ面86から縮径作用を受ける。その後、隙間食込部112は、その外径を小さくしながら締付ナット22の管通過口88の内周と管12の外周との隙間に食い込む。隙間食込部112がそこへ食込むことで、管12は、隙間食込部112を介して締付ナット22に支持されることとなる。
【0028】
[効果の説明]
以上のようにして、本実施形態にかかる管継手10によれば、締付ナット22の締め付けによりシール部が形成される。これとともに、管12は締付ナット22に支持される。
【0029】
管12が締付ナット22に支持されず、かつ、縮径用テーパ面46に支持されていると、管12にモーメントがかかったとき、管12の外周面のいずれかの箇所に引抜力がかかることとなる。引抜力がかかるとその箇所から管12内を通過する流体が漏出しやすくなる。
【0030】
一方、本実施形態にかかる管継手10を用いると、隙間食込部112が締付ナット22の内周と管12の外周との隙間に食い込むことで、管12は締付ナット22に支持される。管12が締付ナット22に支持されるので、管12に曲げモーメントがかかったときの支点は、その締付ナット22によって支持されている箇所となる。その箇所が支点となることで、管12に曲げモーメントがかかっても、上述したシール部にかかる引抜力が抑えられる。引抜力が抑えられるので、管12にモーメントがかかったときの流体の漏出を抑えることができる。
【0031】
[変形例の説明]
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示である。本発明の範囲は上述した実施形態に基づいて制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更をしてもよいのはもちろんである。
【0032】
<第1変形例の説明>
図6は第1変形例にかかる締付ナット222の半欠截断面図である。図7は本発明の第1変形例にかかる食込みリング224の半欠截断面図である。図6と図7とを参照しつつ、第1変形例について説明する。
【0033】
締付ナット222は、雌ねじ282と、リング推進部284と、縮径用テーパ面286と、管通過口288とを備える。締付ナット222の雌ねじ282、リング推進部284、縮径用テーパ面286、および、管通過口288は、上述した締付ナット22の雌ねじ82、リング推進部84、縮径用テーパ面86、および、管通過口88と同じ機能を有する。締付ナット222にかかる雌ねじ282、リング推進部284、縮径用テーパ面286、および、管通過口288の寸法は、締付ナット22にかかる雌ねじ82、リング推進部84、縮径用テーパ面86、および、管通過口88と異なる。これらは締付ナット222の設計者によって適宜設定される。
【0034】
食込みリング224は、本体側食込部110と、隙間食込部312と、接触部314とを有する。隙間食込部312は、締付ナット222の内部に挿入される。接触部314は、本体側食込部110と隙間食込部312との間に配置される。接触部314は、締付ナット222のリング推進部284から推進力を受ける。隙間食込部312は、ナット側テーパ部316と、筒状端部318とを有する。ナット側テーパ部316はナット側端部322に近づくにつれ窄まっている。筒状端部318はナット側テーパ部316の端に設けられる。筒状端部318にはナット側曲面326が設けられている。ナット側曲面326が設けられている部分を除き、筒状端部318の外径は一定である。筒状端部318の内径は一定である。上述した食込みリング24と同様、食込みリング224の内径の最小値は管12の外径よりも少し大きく、かつ、食込みリング224は金属製である。
【0035】
本変形例にかかる食込みリング224および締付ナット222は、上述した食込みリング24および締付ナット22と同様に用いることができる。本変形例にかかる食込みリング224および締付ナット222を用いる場合、施工者が食込みリング224および締付ナット222を継手本体20へ取付け、管12を挿入し、締付ナット222を締付け方向に回転させると、上述した管継手10と同様、縮径用テーパ面46と管12の外周との隙間に食込みリング224の本体側食込部110が食い込むことで、シール部が形成される。さらに、締付ナット222の螺進に伴い、食込みリング224の隙間食込部312が締付ナット222の縮径用テーパ面286から縮径作用を受ける。その後、筒状端部318が、締付ナット222の管通過口288の内周と管12の外周との隙間に食い込む。一方、上述したように、ナット側曲面326が設けられている部分を除き、筒状端部318の外径は一定である。筒状端部318の内径は一定である。これにより、上述した食込みリング24に比べ、隙間食込部312の管12に対する食込みが抑えられる。食込みが抑えられることで、縮径用テーパ面46と管12の外周との隙間に対する本体側食込部110の食い込みがスムーズに進む。
【0036】
<第2変形例の説明>
図8は第2変形例にかかる食込みリング424の半欠截断面図である。図8を参照しつつ、第2変形例について説明する。
【0037】
食込みリング424は、本体側食込部110と、隙間食込部512と、接触部114とを有する。隙間食込部512は、締付ナット22の内部に挿入される。隙間食込部512は、4つの食込端部530を有する。これら食込端部530の間には、間隙516が設けられている。その結果、隙間食込部512は、本体側食込部110よりたわみやすくなっている。食込端部530の先端にはナット側曲面526が設けられている。ナット側曲面526が設けられている部分を除き、食込端部530の外径は一定である。食込端部530の内径は先端部分を除き一定である。上述した食込みリング24と同様、食込みリング424の内径の最小値は管12の外径よりも少し大きく、かつ、食込みリング424は金属製である。
【0038】
また、食込端部530の先端部分の内周面には、突起622が設けられている。また、食込端部530は接触部114と一体となっている。
【0039】
本変形例にかかる食込みリング424は、上述した食込みリング24と同様に用いることができる。食込みリング24の代わりに本変形例にかかる食込みリング424を用いる場合、締付ナット22の螺進に伴い、隙間食込部512が、締付ナット22の内周と管12の外周との隙間に進入する。隙間食込部512の突起622が管12の外周面に食込む。これにより、管12にモーメントがかかったときのシール性能の低下を効果的に抑えることができる。
【0040】
<第3変形例の説明>
図9は第3変形例にかかる管継手14の半欠截断面図である。図9を参照しつつ、第3変形例について説明する。
【0041】
本実施形態にかかる管継手14は、継手本体720と、締付ナット722と、食込みリング724とにより構成される。これらの機能は、第1実施形態にかかる継手本体20、締付ナット22、および、食込みリング24と同一である。したがって、ここではその詳細な説明は繰返さない。
【0042】
図10を参照しつつ、継手本体720の構成を説明する。図10に示すように、継手本体720は筒状に形成される。この両端に受口部830が設けられている。受口部830の外周には雄ねじ840が形成されている。継手本体720の外周における軸方向中間位置には工具受け部832が形成されている。受口部830と工具受け部832と雄ねじ840との機能は、第1実施形態にかかる受口部30、工具受け部32、および、雄ねじ40と同一である。したがって、ここではその詳細な説明は繰返さない。
【0043】
受口部830の開口端842のすぐ奥に接触部収容部841が形成されている。接触部収容部841には食込みリング724の接触部が収容される。接触部収容部841の奥には、開口側定径部844と、縮径用テーパ面846と、奥側定径部848と、管端ストッパ部50とが形成されている。開口側定径部844と、縮径用テーパ面846と、奥側定径部848との機能は、第1実施形態にかかる開口側定径部44、縮径用テーパ面46、および、奥側定径部48と同一である。開口側定径部844と、縮径用テーパ面846と、奥側定径部848との形態は、若干短くなっていることを除けば、第1実施形態にかかる開口側定径部44、縮径用テーパ面46、および、奥側定径部48と同一である。奥側定径部848の奥には管端ストッパ部50が設けられている。管端ストッパ部50のうち奥側定径部848との境界部分には曲面60が形成されている。
【0044】
図11を参照しつつ、締付ナット722について説明する。締付ナット722は、雌ねじ882と、リング推進部884と、縮径用テーパ面886と、管通過口888とを備える。雌ねじ882と、リング推進部884と、縮径用テーパ面886と、管通過口888との機能は、第1実施形態にかかる雌ねじ82、リング推進部84、縮径用テーパ面86、および、管通過口88と同一である。
【0045】
図12を参照しつつ、食込みリング724について説明する。本実施形態にかかる食込みリング724は筒状である。食込みリング724は、本体側食込部810と、隙間食込部812と、接触部814とを有する。本体側食込部810の端には本体側曲面824が設けられている。隙間食込部812の端にはナット側曲面826が設けられている。本体側食込部810と、隙間食込部812と、接触部814との機能は、第1実施形態にかかる本体側食込部110、隙間食込部112、および、接触部114と同一である。なお、第1実施形態にかかる隙間食込部112と異なり、本変形例にかかる隙間食込部812は2つの食込端部に分かれていない。
【0046】
管12の接続手順は、第1実施形態にかかる継手本体20と同様である。したがって、その詳細な説明は繰返さない。
【0047】
<第4変形例の説明>
図13は第4変形例にかかる管継手16の半欠截断面図である。図13を参照しつつ、第4変形例について説明する。
【0048】
本実施形態にかかる管継手16は、継手本体740と、締付ナット722と、食込みリング744とにより構成される。継手本体740と食込みリング744との機能は、第1実施形態にかかる継手本体20、および、食込みリング24と同一である。したがって、ここではその詳細な説明は繰返さない。
【0049】
図14を参照しつつ、継手本体740の構成を説明する。図14に示すように、継手本体740は筒状に形成される。この両端に受口部930が設けられている。受口部930の外周には雄ねじ840が形成されている。継手本体720の外周における軸方向中間位置には工具受け部832が形成されている。受口部930の機能は、第1実施形態にかかる受口部30と同一である。したがって、ここではその詳細な説明は繰返さない。
【0050】
受口部930の開口端942のすぐ奥には、開口側定径部944と、縮径用テーパ面946と、奥側定径部948と、管端ストッパ部50とが形成されている。開口側定径部944と、縮径用テーパ面946と、奥側定径部948との機能は、第1実施形態にかかる開口側定径部44、縮径用テーパ面46、および、奥側定径部48と同一である。開口側定径部944と、縮径用テーパ面946と、奥側定径部948との形態は、若干短くなっていることを除けば、第1実施形態にかかる開口側定径部44、縮径用テーパ面46、および、奥側定径部48と同一である。奥側定径部848の奥には管端ストッパ部50が設けられている。管端ストッパ部50のうち奥側定径部848との境界部分には曲面60が形成されている。
【0051】
図15を参照しつつ、食込みリング744について説明する。本実施形態にかかる食込みリング744は筒状である。食込みリング744は、本体側食込部910と、隙間食込部912と、接触部914とを有する。本体側食込部910の端には本体側曲面924が設けられている。隙間食込部912の端にはナット側曲面926が設けられている。本体側食込部910と、隙間食込部912と、接触部914との機能は、第1実施形態にかかる本体側食込部110、隙間食込部112、および、接触部114と同一である。なお、第1実施形態にかかる隙間食込部112と異なり、本変形例にかかる隙間食込部912は2つの食込端部に分かれていない。
【0052】
管12の接続手順は、第1実施形態にかかる継手本体20と同様である。したがって、その詳細な説明は繰返さない。
【0053】
<その他の変形例の説明>
継手本体20の形状はソケットに限定されない。例えば、継手本体はエルボあるいはチーズであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10,14,16…管継手
12…管
20,720,740…継手本体
22,222,722…締付ナット
24,224,424,724,744…食込みリング
30,830,930…受口部
32,832…工具受け部
40,840…雄ねじ
42,842,942…開口端
44,844,944…開口側定径部
46,86,286,846,886,946…縮径用テーパ面
48,848,948…奥側定径部
50…管端ストッパ部
60…曲面
80…本体側開口端
82,282,882…雌ねじ
84,284,884…リング推進部
88,288,888…管通過口
90…挿入用開口端
110,810,910…本体側食込部
112,312,512,812,912…隙間食込部
114,314,814,914…接触部
116,516…間隙
120…本体側端部
122,322…ナット側端部
124,824,924…本体側曲面
126,326,526,826,926…ナット側曲面
130,530…食込端部
150…中心軸
316…ナット側テーパ部
318…筒状端部
622…突起
841…接触部収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の一端が差し込まれる受口部、および、前記受口部の外周に設けられる雄ねじを有する継手本体と、
前記継手本体の受口部に挿入され、かつ、前記管が貫通可能な食込みリングと、
前記雄ねじに螺合する雌ねじ、および、前記食込みリングに推進力を与えるリング推進部を有しており、前記雌ねじによって前記継手本体に接続され、かつ、前記管が貫通可能な締付ナットと、を備える管継手であって、
前記食込みリングが、
前記継手本体の受口部に挿入され、前記受口部に前記管の一端が差し込まれている状態で前記受口部から縮径作用を受けると前記受口部と前記管との隙間に食込む本体側食込部と、
前記締付ナットに接触して前記締付ナットから推進力を受ける接触部と、
前記締付ナットを前記管が貫通している時、前記締付ナットの螺進に伴って前記締付ナットと前記管との隙間に食込む隙間食込部とを有していることを特徴とする、管継手。
【請求項2】
前記隙間食込部が、前記管を取囲むよう配置される複数の食込端部を有しており、
前記食込端部のいずれかが前記接触部と一体となっていることを特徴とする、請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記食込端部が、前記締付ナットと前記管との隙間で前記管に食込む突起を有することを特徴とする、請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
前記隙間食込部が、前記管が貫通可能で、かつ、前記締付ナットと前記管との隙間に食込む筒状端部を有していることを特徴とする、請求項1に記載の管継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−255475(P2012−255475A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128061(P2011−128061)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000231121)JFE継手株式会社 (140)
【Fターム(参考)】