説明

管継手

【課題】雌部材に雄部材が差し込まれることにより互いに連結される管継手において、当該管継手を通過する流体の圧力損失を抑えた管継手を提供する。
【解決手段】雄側弁孔40を有した雄側筒体31と、雄側弁孔40に向けて付勢された雄側弁体41と、を有した雄部材30と、雄側筒体31が差し込まれる雌側連結部33が筒端に形成され、雌側連結部33の底面13bに開口する雌側弁孔20が形成された雌側筒体11と、雌側弁孔20を塞ぐかたちをなして雌側弁孔20に向けて付勢された雌側弁体21と、を有した雌部材10と、を備える。雄側弁体41及び雌側弁体21が互いに永久磁石で形成されており、雄側弁孔40側における雄側弁体41の極性と雌側弁孔20側における雌側弁体21の極性とが同じ極性となるように配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄部材と雌部材とから構成され、雌部材に雄部材が差し込まれることにより互いに連結されて流体が流通可能になる管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、雌部材に雄部材が差し込まれることにより互いに連結されて流体が流通可能になる管継手として、例えば特許文献1に開示されている管継手が知られている。
特許文献1において管継手を構成する雄部材及び雌部材の各々は、略円筒形状をなす弁箱の内部に、弁孔が貫通形成された弁座に向けて、コイルばねによって付勢された弁体が配設されている。雄部材及び雌部材の各弁体には、弁孔を塞いでいるときに該弁孔から突出する突出部が形成されている。そして雌部材に雄部材が差し込まれると、雄部材及び雌部材の各弁体は、互いの突出部が当接して、コイルばねの付勢力に抗する押圧力を他方の弁体から受ける。これにより、各弁体が弁座から離間し、雄部材及び雌部材の弁孔が互いに連通して雄部材と雌部材との間で流体が流通可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−106920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の管継手においては、各々の弁体の突出部が貫挿された状態で互いの弁孔が連通している。そのため、弁孔における流体の流路がその貫挿している突出部の分だけ狭くなってしまい、弁孔を通過する流体に大きな圧力損失が生じやすかった。なお、こうした問題は、互いに弁体が配設された雌部材に雄部材を差し込むことにより流体が流通可能となる管継手であれば概ね共通した問題である。
【0005】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、雌部材に雄部材が差し込まれることにより互いに連結される管継手において、当該管継手を通過する流体の圧力損失を抑えた管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の管継手は、雄側弁孔を筒端に有した雄側筒体と、前記雄側弁孔を塞ぐかたちをなし前記雄側筒体内にて前記雄側弁孔に向けて付勢された雄側弁体と、を有した雄部材と、前記雄側筒体が差し込まれる凹状の雌側連結部が筒端に形成され、前記雌側連結部の底面に開口する雌側弁孔が形成された雌側筒体と、前記雌側弁孔を塞ぐかたちをなし前記雌側筒体内にて前記雌側弁孔に向けて付勢された雌側弁体と、を有した雌部材と、を備え、前記雌側連結部に前記雄側筒体が差し込まれることによって、前記雄側弁孔と前記雌側弁孔とが互いに連通する管継手において、前記雄側弁体及び前記雌側弁体が互いに永久磁石で形成されており、前記雄側弁体における前記雄側弁孔側の極性と前記雌側弁体における前記雌側弁孔側の極性とが互いに同じ極性であることを要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の管継手によれば、雌部材に雄部材が差し込まれると、雌側弁体及び雄側弁体の磁力に基づく反発力によって、雌側弁体は雌側筒体内を雌側弁孔から離れるように変位し、雄側弁体は雌側筒体内を雄側弁孔から離れるように変位する。これにより、雄部材と雌部材とが互いに連結した状態では、雌側弁体及び雄側弁体が各々の弁孔に貫挿されることなく、雌側弁孔と雄側弁孔とが連通することになる。それゆえに、雌側弁孔及び雄側弁孔が雌側弁体あるいは雄側弁体によって狭められることがないことから、管継手を通過する流体の圧力損失を抑えることができる。
【0008】
請求項2に記載の管継手は、前記雄側弁体及び雌側弁体の少なくとも一つが球体形状をなしていることを要旨とする。
請求項2に記載の管継手によれば、球体形状をなす弁体の周囲において流路面積が急激に変化を抑えることができる。これにより、弁体の周囲を通過する流体の圧力損失を抑えることができる。それゆえに、管継手を通過する流体の圧力損失をさらに抑えることができる。
【0009】
請求項3に記載の管継手は、前記雄側筒体及び前記雌側筒体の少なくとも一つでは、該筒体の軸線方向と直交する面での該筒体の断面積が、閉弁位置にある弁体を含む部位よりも開弁位置にある弁体を含む部位で大きいことを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の管継手によれば、開弁位置にある弁体の周囲における流路面積を大きくすることができることから、弁体の周囲を通過する流体の圧力損失を抑えることができる。それゆえに、管継手を通過する流体の圧力損失をさらに抑えることができる。
【0011】
請求項4に記載の管継手は、前記雄側弁体及び前記雌側弁体の少なくとも一方は、対応する弁孔に向けて弾性部材の弾性力によって付勢されていることを要旨とする。
請求項4に記載の管継手によれば、弁体を弾性部材で付勢することによって、管継手の内部構造が簡素化されることから、管継手を通過する流体の圧力損失をさらに抑えることができる。
【0012】
請求項5に記載の管継手は、前記雄側弁体及び前記雌側弁体の少なくとも一方は、対応する弁孔に向けて当該弁孔付近に設けられた磁性体との磁力によって付勢されていることを要旨とする。
【0013】
請求項5に記載の管継手によれば、弁体と、対応する弁孔付近に設けられた磁性体との磁力に基づく吸着力によって、対応する弁孔に向けて弁体を付勢することができる。これにより、弾性部材を有する構成においては、弁孔に向けて付勢される弁体は、弾性部材による弾性力に加えて、磁性体による磁力を加えた力で付勢される。そして該磁力は、弁体が閉弁位置に配置されている場合に最も大きくなる。その結果、閉弁位置にある弁体をより大きな力で弁孔に向けて付勢することができる。それゆえに、弁孔から流体が漏出することを抑えることができる。また、弾性部材を有していない構成においては、管継手の内部構造がさらに簡素化されることから、管継手を通過する流体の圧力損失をさらに抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る管継手を構成する雄部材及び雌部材の断面構造を示す断面図であって、非連結状態における雄部材及び雌部材の断面構造を示す図。
【図2】第1実施形態において、連結状態における雄部材及び雌部材の断面構造を示す断面図。
【図3】本発明の第2実施形態に係る管継手を構成する雄部材及び雌部材の断面構造を示す断面図であって、非連結状態における雄部材及び雌部材の一部の断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る管継手の第1実施形態について図1及び図3を参照して説明する。図1に示されるように、第1実施形態における管継手は、雌部材10と雄部材30とによって構成され、雌部材10に雄部材30が軸線方向Aに沿って差し込まれることにより互いに連結される。
(雌部材10)
雌部材10が有する雌側筒体11は、軸線方向Aに沿って延び両端が開口した略円筒形状に形成されている。雌側筒体11の下端には、雄部材30が差し込まれるための凹状の雌側連結部13が一体形成されている。雌側連結部13の下端は、雄部材30が差し込まれやすくなるために外側に拡開されている。こうした雌側連結部13の内側面には、差し込まれた雄部材30に圧接して、雌側連結部13と雄側筒体31との間をシールするための環状のシール部材14が装着されている。
【0016】
雌側筒体11の上端に形成されたフランジ部15には、円筒状をなす雌側接続部16のフランジ部17が、図示しないガスケットを介して、雌側筒体11の開口部11aを覆うように連結されている。雌側接続部16のフランジ部17は円環状に形成されており、その中心付近には軸線方向Aに沿って雌側連結部13とは反対方向に延びる筒状の外部接続端18が延設されている。外部接続端18には、図示しない外部の配管が接続される。そして、雌部材10には、雌側筒体11及び外部接続端18の内周面によって、雌側流路19が構成されている。
【0017】
雌側連結部13の底面13bには、雌側流路19の下端を構成する雌側弁孔20が軸線方向Aに沿って貫通している。雌側弁孔20は、軸線方向Aの下側に向けて狭窄された孔であり、雌側弁体21が当接するための雌側弁座22が、該雌側弁孔20の下端部に形成されている。雌側弁体21は、雌側筒体11の内部に収容される球体であり、雌側筒体11の内径のうち、雌側弁座22の内径よりも大きく、且つ雌側弁座22以外の部位の内径よりも小さい直径を有している。この雌側弁体21は、雌側接続部16に上端が支持されたコイルばね23によって、雌側筒体11内において雌側弁孔20に向けて付勢されている。コイルばね23は、雌側接続部16に立設された環状の規制部25に嵌入されることによって軸線方向Aと交差する方向への移動が規制されている。雌側弁体21は、永久磁石であり、且つ雌側弁孔20側の磁極がN極となり、外部接続端18側の磁極がS極となるように、コイルばね23の下端に固設されている。図1において、雌側弁体21は、コイルばね23の弾性力によって雌側弁座22に当接した位置である閉弁位置に配置されている。
【0018】
雌側弁座22の内側面は、雌側弁体21における雌側弁孔20側の半球面が密接するような半球面状に形成されている。雌側弁座22は、雌側筒体11の内径が徐々に縮径した縮径部26における雌側連結部13側に形成され、雌側弁体21を収容するための収容部27に形成されている。この雌側弁座22の内側面には、閉弁位置にある雌側弁体21に圧接して、該雌側弁体21と該雌側弁座22との間をシールする図示しない環状のシール部材が装着されている。
(雄部材30)
雄部材30が有する雄側筒体31は、軸線方向Aに沿って延び両端が開口した多段の略円筒形状に形成されている。雄側筒体31における軸線方向Aの中間には、軸線方向Aの下側よりも縮径された縮径部32が形成され、該縮径部32の上側には、上記雌側連結部13内を摺動可能な雄側連結部33が一体的に形成されている。
【0019】
雄側筒体31の下端に形成されたフランジ部35には、円筒状をなす雄側接続部36のフランジ部37が、図示しないガスケットを介して、雄側筒体31の開口部31aを覆うように連結されている。雄側接続部36のフランジ部37は円環状に形成されており、その中心付近には、軸線方向Aに沿って雄側連結部33とは反対方向に延びる外部接続端38が延設されている。外部接続端38には、図示しない外部の配管が接続される。そして、雄部材30には、雄側筒体31及び外部接続端38の内周面によって、雄側流路39が構成されている。
【0020】
雄側連結部33の端面33bには、雄側流路39の上端を構成する雄側弁孔40が軸線方向Aに沿って貫通している。雄側弁孔40は、軸線方向Aの上側に向けて狭窄された孔であり、雄側弁体41が当接するための雄側弁座42が、該雄側弁孔40の上端部に形成されている。雄側弁体41は、雄側筒体31の内部に収容される球体であり、雄側筒体31の内径のうち、雄側弁座42の内径よりも大きく、且つ雄側弁座42以外の部位の内径よりも小さい直径を有している。この雄側弁体41の直径は、上述した雌側弁体21の直径と互いに等しい。
【0021】
雄側弁体41は、雄側接続部36に下端が支持されたコイルばね43によって、雄側弁孔40に向けて付勢されている。コイルばね43は、雄側接続部36に立設された環状の規制部45に嵌入されることによって軸線方向Aと交差する方向への移動が規制されている。雄側弁体41は、雌側弁体21と等しい磁気量及び重量を有した永久磁石であり、且つ雄側弁孔40側の磁極がN極となり、外部接続端38側の磁極がS極となるように、コイルばね43の上端に固設されている。図1において、雄側弁体41は、コイルばね43の弾性力によって雄側弁座42に当接した位置である閉弁位置に配置されている。
【0022】
雄側弁座42の内側面は、雄側弁体41における雄側弁孔40側の半球面が密接するような半球面形状に形成されている。雄側弁座42は、雄側筒体31の内径が徐々に縮径した縮径部32における雄側連結部33側に形成されている。この雄側弁座42の内側面には、閉弁位置にある雄側弁体41に圧接して、該雄側弁体41と該雄側弁座42との間をシールする図示しない環状のシール部材が配設されている。
(雌側弁体21の磁気量と雄側弁体41の磁気量)
コイルばね23によって支持された雌側弁体21に対して永久磁石のN極が軸線方向Aに沿って近づくと、当該雌側弁体21は、その磁力に基づく反発力によって、コイルばね23の付勢力に抗して雌側弁孔20から徐々に離間する。同じく、コイルばね43によって支持された雄側弁体41に対して永久磁石のN極が軸線方向Aに沿って近づくと、当該雄側弁体41は、その磁力に基づく反発力によって、コイルばね43の付勢力に抗して雄側弁孔40から徐々に離間する。
【0023】
そこで、コイルばね23,43のばね定数と、雌側弁体21及び雄側弁体41の磁気量とは、下記条件1、及び条件2を満たすように設定されている。なお、以下では、雌側連結部13の底面13bとシール部材14との距離を最小離間距離とする。また、縮径部26における外部接続端18側の端部と雌側連結部13の底面13bとの距離を最大離間距離とする。ちなみに、縮径部32における外部接続端38側の端部と雄側連結部33の端面33bとの距離は、上記最大離間距離である。
(条件1)雌側弁座22に密着した雌側弁体21と雄側弁座42に密着した雄側弁体41とが軸線方向Aに沿って互いに近づけられて、雌側弁体21と雄側弁体41との距離が最小離間距離よりも近くなる状態では、雌側弁体21が雌側弁座22から離れ、且つ雄側弁体41が雄側弁座42から離れる。
(条件2)雌側弁体21が雌側弁座22から離れ、雄側弁体41が雄側弁座42から離れ、これら雌側弁体21の位置と雄側弁体41の位置とが安定した状態では、雌側連結部13の底面13bと雌側弁体21との距離が最大離間距離となり、且つ雄側連結部33の端面33bと雄側弁体41との距離が最大離間距離となる。
【0024】
なお、雌側弁体21が取り得る位置のうち、雌側連結部13の底面13bと雌側弁体21との距離が最大離間距離となる位置を雌側弁体21の開弁位置という。また、雄側弁体41が取り得る位置のうち、雄側連結部33の端面33bと雄側弁体41との距離が最大離間距離となる位置を雄側弁体41の開弁位置という。
(作用)
次に、上述した構成の管継手の作用について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0025】
まず、図1に示されるように、雌部材10の雌側連結部13と雄部材30の雄側連結部33とが軸線方向Aで対向するように配置される。そして、雌部材10と雄部材30とが互いに近づけられて雌側連結部13に雄側連結部33が差し込まれると、雄側連結部33が雌側連結部13内を摺動して雌側連結部13の底面13bと雄側連結部33との端面33bが当接する。
【0026】
この一連の過程において、雌側弁体21及び雄側弁体41が互いに同極であるN極が相対向していることから、互いの磁力に基づく反発力が徐々に強くなる。そして、雌側連結部13の内側面と雄側連結部33の外側面とがシール部材14でシールされた後、雌側弁体21と雄側弁体41との距離が最小離間距離よりも小さくなると、上記条件1に基づき、雌側弁体21は、コイルばね23の付勢力に抗して雌側弁座22から離間して雌側弁孔20を開放する。同様に、雄側弁体41は、コイルばね43の付勢力に抗して雄側弁座42から離間して雄側弁孔40を開放する。そして、図2に示されるように、雌側連結部13の底面13bまで雄側連結部33の端面33bを差し込んだ状態において、雌側弁体21の位置と雄側弁体41の位置が安定すると、上記条件2に基づき、雌側弁体21及び雄側弁体41の各々が開弁位置に配置される。これにより、雌側流路19と雄側流路39は、雌側弁孔20及び雄側弁孔40を通じて連通し、図2に矢印で示すように流体の流通が可能となる。
【0027】
一方、雌部材10と雄部材30との連結が解除される際には、雌部材10から雄部材30が引き抜かれる。この一連の過程において、雌側弁体21及び雄側弁体41は、互いの磁力に基づく反発力が徐々に小さくなる。そして、雌側弁体21と雄側弁体41との距離が最小離間距離よりも大きくなると、上記条件1に基づき、雌側弁体21は、コイルばね23の付勢力によって、雌側弁孔20に向かって雌側筒体11内を変位する。同様に、雄側弁体41は、コイルばね43の付勢力によって、雄側弁孔40に向かって雄側筒体31内を変位する。この際、雌側弁体21は、内径が縮径された縮径部26の内周面に案内されながら収容部27に収容されたのち当該雌側弁体21の閉弁位置まで変位する。また雄側弁体41は、同じく、内径が縮径された縮径部32の内周面に案内されながら当該雄側弁体41の閉弁位置まで変位する。その後、雌側連結部13の内側面と雄側連結部33の外側面とのシールが解除されて、雌部材10と雄部材30との連結が解除される。
【0028】
以上説明したように、上記第1実施形態に係る管継手によれば、以下列記するような効果が得られるようになる。
(1)雌部材10に雄部材30が差し込まれると、雌側弁体21及び雄側弁体41の磁力に基づく反発力によって、雌側弁体21は雄側筒体31内を雌側弁孔20から離れるように変位し、雄側弁体41は雌側筒体11内を雄側弁孔40から離れるように変位する。すなわち、雌側弁体21が雌側弁孔20に貫挿されることなく、且つ雄側弁体41が雄側弁孔40に貫挿させることなく、これら雌側弁孔20と雄側弁孔40とが連通可能になる。それゆえに、雌部材10と雄部材30とが連通する状態において、雌側弁孔20と雄側弁孔40とが雌側弁体21と雄側弁体41とによって狭められることがないことから、管継手を通過する流体の圧力損失を抑えることができる。
【0029】
(2)雌側弁体21及び雄側弁体41が球体形状をなしていることから、開弁位置にある雌側弁体21及び雄側弁体41の周囲において流路面積が急激に変化することを抑えることができる。これにより、雌側弁体21及び雄側弁体41の周囲を通過する流体の圧力損失を抑えることができる。それゆえに、管継手を通過する流体の圧力損失をさらに抑えることができる。
【0030】
(3)閉弁位置にある雌側弁体21は、雌側筒体11のうち、縮径部26よりも雌側連結部13側の収容部27に収容される。一方、開弁位置にある雌側弁体21は、雌側筒体11のうち、縮径部26よりも外部接続端18側に収容される。すなわち、雌側筒体11の軸線方向と直交する面での該筒体の断面積が、閉弁位置にある雌側弁体21を含む部位よりも開弁位置にある雌側弁体21を含む部位で大きくなる。
【0031】
これにより、雌側筒体11の内径が軸線方向Aにおいて一定である場合に比べて、開弁位置にある雌側弁体21の周囲における流路面積を大きくすることができる。これは、雄部材30についても同様である。その結果、雌側弁体21の周囲を通過する流体の圧力損失を抑えることができる。それゆえに、管継手を通過する流体の圧力損失をさらに抑えることができる。
【0032】
(4)また、閉弁位置へ変位する雌側弁体21は、縮径部26の内周面に案内されながら収容部27に収容される。同様に、閉弁位置へ変位する雄側弁体41は、縮径部32の内周面で案内されながら雄側連結部33に収容される。これにより、対応する閉弁位置に各弁体21,41を円滑に変位させることができる。
【0033】
(5)雌側弁体21を弾性部材であるコイルばね23で付勢することによって、雌側筒体11内の構造を簡素化することができる。同様に、雄側弁体41を弾性部材であるコイルばね43で付勢することによって、雄側筒体31内の構造を簡素化することができる。それゆえに、管継手を通過する流体の圧力損失をさらに抑えることができる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る管継手の第2実施形態について図3を参照して説明する。なお、第2実施形態の管継手は、第1実施形態における管継手と主要な構成が同じである。そのため、第2実施形態においては、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、第1実施形態と同じ構成については同じの符号を付すことによりその詳細な説明は省略する。
(雌部材10)
第2実施形態の雌部材10において、雌側連結部13の底面13bには、鉄等の磁性体からなる環状の雌側磁性体51が固定されている。また雌側磁性体51の中心部分には、雌側弁孔20と略等しい径を有して、雌側弁孔20に連通する連通孔52が穿設されている。すなわち、第2実施形態の雌部材10において、雌側弁体21には、コイルばね23による弾性力と、雌側弁体21と雌側磁性体51との磁力との合力が雌側弁孔20へ向けた付勢力として作用している。
(雄部材30)
第2実施形態の雄部材30において、雄側連結部33の端面33bには、鉄等の磁性体からなり、雄側連結部33の外径よりも小さな外径を有する環状の雄側磁性体56が固定されている。また雄側磁性体56の中心部分には、雄側弁孔40と略等しい径を有して、雄側弁孔40に連通する連通孔57が穿設されている。すなわち、第2実施形態の雄部材30において、雄側弁体41には、コイルばね43による弾性力と、雄側弁体41と雄側磁性体56との磁力との合力が雄側弁孔40へ向けた付勢力として作用している。
【0035】
なお、コイルばね23,43のばね定数と、雌側弁体21及び雄側弁体41の磁気量と、雌側磁性体51及び雄側磁性体56の磁気量とは、上記条件1、条件2に加え、下記条件3を満たすように設定されている。
(条件3)雌部材10と雄部材30とが連結された状態にて、これらの連結状態が雌側磁性体51と雄側磁性体56との相互作用に基づく斥力で解除されない。
【0036】
以上説明したように、上記第2実施形態に係る管継手によれば、第1実施形態に記載した(1)〜(5)に記載した効果に加えて、以下に示す効果を得ることができる。
(6)雌側弁体21は、雌側弁孔20に向けて、コイルばね23による弾性力に加えて、雌側弁体21と雌側磁性体51との間の磁力によって付勢されている。そして該磁力は、雌側弁体21が閉弁位置に位置しているときに最も大きくなる。その結果、雌側弁座22に対して、閉弁位置にある雌側弁体21をその磁力の分だけより大きな力で押圧することができる。それゆえに、非連結状態の雌部材10において、雌側弁孔20から流体が漏出することを抑えることができる。同様に、非連結状態の雄部材30において、雄側弁孔40から流体が漏出することを抑えることができる。
(他の実施形態)
なお、上記実施の形態は、以下のような態様をもって実施することもできる。
【0037】
・第2実施形態にてコイルばね23が割愛された構成であってもよい。この際、例えば、雌側弁体21として、雌側弁孔20側の端部と雌側接続部16側の端部とが雌側筒体11内で入れ替わることを防止すべく、雌側弁体21を軸線方向Aに沿って案内する案内部材が別途設けられる構成が好ましい。例えば、このような案内部材は、雌側筒体11内に配設されて軸線方向Aに沿って延び、且つ雌側弁体21が貫挿される棒部材として具現化することが可能である。こうした構成によれば、雌側筒体11内からコイルばね23が割愛されていることから、雌側筒体11の内部構造を簡素化することができる。また、雄部材30についても同様のことがいえる。それゆえに、管継手を通過する流体の圧力損失をさらに抑えることができる。
【0038】
・第2実施形態の雌部材10では、雌側連結部13の底面13bに雌側磁性体51が配設されている。これに限らず、雌側磁性体は、閉弁位置にある雌側弁体21によって雌側弁座22が押圧されるような位置に配設されていればよく、例えば雌側弁座22に埋設された磁性体であってもよい。
【0039】
・第2実施形態の雄部材30では、雄側連結部33の端面33bに雄側磁性体56が配設されている。これに限らず、雄側磁性体は、閉弁位置にある雄側弁体41によって雌側弁座22が押圧されるような位置に配設されていればよく、例えば内周縁部で雄側弁孔40を形成する環状の磁性体であってもよい。
【0040】
・弁体を付勢する弾性部材は、コイルばねに限らず、例えば板ばね等であってもよい。
・雌側筒体11及び雄側筒体31の少なくとも一方において、その内径が一定であってもよい。
【0041】
・雌側弁体21と雄側弁体41とは、その形状が球体形状に限られるものではない。すなわち、雌側弁体21は、閉弁位置にあることによって、雌側弁座22に配設されたシール部材が圧接されて雌側弁孔20から流体の漏出が抑えられる形状であればよい。また、雄側弁体41は、閉弁位置にあることによって、雄側弁座42に配設されたシール部材が圧接されて雄側弁孔40から流体の漏出が抑えられる形状であればよい。
【0042】
・雌側弁体21と雄側弁体41とは、その重量が互いに異なっていてもよい。なお、雌側弁体21の重量が雄側弁体41の重量よりも小さい場合には、重量が大きい雄側弁体41が雄側弁孔40から離間し難くなるため、重量の小さい雌側弁体21の雌側接続部16側への変位を規制する規制部を雌側筒体11に設ける構成が好ましい。これにより、重量の大きい雄側弁体41は、規制部に変位が規制された雌側弁体21から離間するように雄側接続部36側へと変位する。反対に、雄側弁体41の重量が雌側弁体21の重量よりも小さい場合には、重量が大きい雌側弁体21が雌側弁孔20から離間し難くなるため、重量の小さい雄側弁体41の雄側接続部36側への変位を規制する規制部を雄側筒体31に設ける構成が好ましい。これにより、重量の大きい雌側弁体21は、規制部に変位が規制された雄側弁体41から離間するように雌側接続部16側へと変位する。
【0043】
・雌側弁体21と雄側弁体41とは、その磁気量が互いに異なっていてもよい。なお、雌側弁体21の磁気量が雄側弁体41の磁気量よりも小さい場合には、磁気量が大きい雄側弁体41が雄側弁孔40から離間し難くなるため、磁気量の小さい雌側弁体21の雌側接続部16側への変位を規制する規制部を雌側筒体11に設ける構成が好ましい。これにより、磁気量の大きい雄側弁体41は、規制部に変位が規制された雌側弁体21から離間するように雄側接続部36側へと変位する。反対に、雄側弁体41の磁気量が雌側弁体21の磁気量よりも小さい場合には、磁気量が大きい雌側弁体21が雌側弁孔20から離間し難くなるため、磁気量の小さい雄側弁体41の雄側接続部36側への変位を規制する規制部を雄側筒体31に設ける構成が好ましい。これにより、磁気量の大きい雌側弁体21は、規制部に変位が規制された雄側弁体41から離間するように雌側接続部16側へと変位する。
【0044】
なお、上述した規制部が設けられずとも、上記条件1及び条件2が満たされるように、雌側弁体21と雄側弁体41との重量の差や磁気の量に応じた付勢力の差がコイルばね23,43に与えられる構成であってもよい。
【0045】
・各弁体21,41の磁気量やコイルばね23,43のばね定数は、雌側連結部13に差し込まれた雄側連結部33にシール部材14が圧接した状態になってから、各弁体21,41が弁孔20,40から離間するように構成するとよい。
【符号の説明】
【0046】
A…軸線方向、10…雌部材、11…雌側筒体、11a…開口部、13…雌側連結部、13b…底面、14…シール部材、15…フランジ部、16…雌側接続部、17…フランジ部、18…外部接続端、19…雌側流路、20…雌側弁孔、21…雌側弁体、22…雌側弁座、23…コイルばね、25…規制部、26…縮径部、27…収容部、30…雄部材、31…雄側筒体、31a…開口部、32…縮径部、33…雄側連結部、33b…端面、35…フランジ部、36…雄側接続部、37…フランジ部、38…外部接続端、39…雄側流路、40…雄側弁孔、41…雄側弁体、42…雄側弁座、43…コイルばね、45…規制部、51…雌側磁性体、52…連通孔、56…雄側磁性体、57…連通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄側弁孔を筒端に有した雄側筒体と、前記雄側弁孔を塞ぐかたちをなし前記雄側筒体内にて前記雄側弁孔に向けて付勢された雄側弁体と、を有した雄部材と、
前記雄側筒体が差し込まれる凹状の雌側連結部が筒端に形成され、前記雌側連結部の底面に開口する雌側弁孔が形成された雌側筒体と、前記雌側弁孔を塞ぐかたちをなし前記雌側筒体内にて前記雌側弁孔に向けて付勢された雌側弁体と、を有した雌部材と、
を備え、
前記雌側連結部に前記雄側筒体が差し込まれることによって、前記雄側弁孔と前記雌側弁孔とが互いに連通する管継手において、
前記雄側弁体及び前記雌側弁体が互いに永久磁石で形成されており、
前記雄側弁体における前記雄側弁孔側の極性と前記雌側弁体における前記雌側弁孔側の極性とが互いに同じ極性である
ことを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記雄側弁体及び雌側弁体の少なくとも一つが球体形状をなしている
請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記雄側筒体及び前記雌側筒体の少なくとも一つでは、該筒体の軸線方向と直交する面での該筒体の断面積が、閉弁位置にある弁体を含む部位よりも開弁位置にある弁体を含む部位で大きい
請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
前記雄側弁体及び前記雌側弁体の少なくとも一方は、対応する弁孔に向けて弾性部材の弾性力によって付勢されている
請求項1〜3のいずれか一項に記載の管継手。
【請求項5】
前記雄側弁体及び前記雌側弁体の少なくとも一方は、対応する弁孔に向けて当該弁孔付近に設けられた磁性体との磁力によって付勢されている
請求項1〜4のいずれか一項に記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−2462(P2013−2462A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131092(P2011−131092)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】