説明

管継手

【課題】管体の挿入をスムーズにしながら管体の挿入だけで確実に抜け不能に保持する。
【解決手段】スリーブ3の突起部3aに対する管体Bの先端面B2の突き当たりで、スリーブ3の摺動面3bがテーパー面2aに沿って管体Bの挿入方向Nへ押動され、それに伴い突起部3aが拡径して突起部3aから管体Bの先端面B2が外れる。それにより、弾性部材4で摺動面3bがテーパー面2aに沿って挿入方向Nと逆方向Uへ勢い良く押圧され、それに伴いスリーブ3が一気に縮径変形して突起部3aを管体Bの外表面B3に食い込ませ、管体Bがニップル1の外周面1aとの間に挿入方向Nと逆方向Uへ移動不能に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば合成樹脂やゴムなどの軟質材料で形成された可撓性を有する変形可能なホースやチューブなどの管体を差し込むだけで接続できる工具不要なワンプッシュ式の管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の管継手として、筒体とナット状部材とストッパとスプリングとからなり、前記筒体の内部にパイプがはめ止まれるリング状穴を形成し、前記リング状穴の内周にシール部材が嵌着され、前記パイプの挿入によって、その内周が前記シール部材に当接しやや抵抗を受けながら進むと同時に、前記パイプの外周が前記ストッパの金属片の凹凸形状部に当り、前記ストッパを内部側に向かって移動させ、そのテーパ面を前記ナット状部材のテーパ面から離れる向きに移動させようとするが、前記ストッパはスプリングにより反対方向に押圧されているため、結果として前記ストッパは移動せず、前記ナット状部材の前記テーパ面と前記ストッパの前記テーパ面が一定の押圧力で当接した状態に保持されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−227592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来の管継手では、挿入されたパイプの内周がシール部材に当接しやや抵抗を受けると同時に、該パイプの外周がスプリングにより移動不能に押圧されたストッパの凹凸形状部に当たるため、パイプの挿入が一定の抵抗力を受けて円滑とは云えず、その抵抗力で作業者によってはパイプの挿入作業を途中で止めるおそれがあった。
それによって、パイプ内を通る流体圧力(内圧)が上昇したり、例えば地震などで振動すると、パイプの外れ事故や流体漏れの発生原因となり、長期に亘ってパイプの接続状態を確実に保持できないという問題があった。
さらに、パイプの内周がシール部材に圧接しながら挿入されるため、パイプの挿入に伴いシール部材がめくれ変形して位置ズレし、流体漏れが発生するという問題もあった。
特に、パイプの内径やシール部材の取り付け外径に僅かでも寸法誤差が生じると、シール部材のめくれ変形や位置ズレが発生し易くなって、流体の漏れ事故になってしまった。
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものであり、管体の挿入をスムーズにしながら管体の挿入だけで確実に抜け不能に保持することなどを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために本発明は、可撓性を有する管体の内表面と対向して設けられるニップルと、前記ニップルの外周面と対向して前記管体の挿入方向へ徐々に大径となるように設けられるテーパー面を有する締め付け部材と、前記テーパー面に沿ってその傾斜方向へ往復動自在で且つ径方向へ弾性的に拡径及び縮径変形可能に設けられるスリーブと、前記スリーブを前記テーパー面に沿って前記管体の挿入方向と逆方向へ押圧するように設けられる弾性部材と、を備え、前記スリーブは、その内周面に前記ニップルの前記外周面に向け突出形成され、前記管体の挿入時において前記管体の先端面と前記管体の挿入方向へ対向して突き当たるように配置されるとともに、前記管体の挿入方向と逆方向への移動に伴い前記管体の外表面に向けて縮径変形するように配置される突起部と、前記スリーブの外周面に前記テーパー面と対向して形成され、前記突起部と前記管体の前記先端面との突き当たりに伴い前記テーパー面に沿って前記管体の挿入方向へ移動し、前記弾性部材により前記管体の挿入方向と逆方向へ移動するように配置される摺動面と、を有し、前記突起部は、前記管体の前記先端面との突き当たりに伴い前記管体の挿入方向へ移動されることで、前記突起部から前記管体の前記先端面が外れるように拡径変形し、前記弾性部材による前記管体の挿入方向と逆方向への移動に伴って、前記管体の外径よりも小さく縮径変形するように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
前述した特徴を有する本発明は、スリーブの突起部に対する管体の先端面の突き当たりで、スリーブの摺動面がテーパー面に沿って管体の挿入方向へ押動され、それに伴い突起部が拡径して突起部から管体の先端面が外れ、それにより、弾性部材で摺動面がテーパー面に沿って挿入方向と逆方向へ勢い良く押圧され、それに伴いスリーブが一気に縮径変形して突起部を管体の外表面に食い込ませ、管体がニップルの外周面との間に挿入方向と逆方向へ移動不能に保持されるので、管体の挿入をスムーズにしながら管体の挿入だけで確実に抜け不能に保持することができる。
その結果、挿入されたパイプがシール部材に当接しやや抵抗を受けると同時に移動不能なストッパの凹凸形状部に当たる従来のものに比べ、作業者の経験などに関係なく、誰が管体の挿入作業を行っても、抵抗なく管体の先端面が所定位置に突き当たるまで確実に挿入できる。
それにより、管体内を通る流体圧力(内圧)が上昇したり、例えば地震などで振動しても管体の外れ事故や流体漏れを防止でき、長期に亘って管体の接続状態を確実に保持することができる。
したがって、半永久的に管体の抜けが発生せず、且つ半永久的に管体とのシール性能を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る管継手の全体構成を示す縦断正面図であり、(a)が管体の接続開始時を示し、(b)が管体の接続完了時を示している。
【図2】図1(b)の(2)−(2)線に沿える拡大縦断側面図である。
【図3】図1(b)において管体と締め付け部材を省略した部分的な拡大正面図である。
【図4】管継手と管体の接続工程を示す縮小縦断正面図であり、(a)〜(c)に工程順に示されている。
【図5】本発明の他の実施形態に係る管継手の全体構成を示す縦断正面図であり、(a)が管体の接続開始時を示し、(b)が管体の接続完了時を示している。
【図6】図5(b)において管体と締め付け部材を省略した部分的な拡大正面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る管継手の全体構成を示す縦断正面図であり、(a)が管体の接続開始時を示し、(b)が管体の接続完了時を示している。
【図8】同分解斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る管継手の全体構成を示す縦断正面図であり、(a)が管体の接続開始時を示し、(b)が管体の接続完了時を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る管継手Aは、図1〜図9に示すように、管体Bの内表面B1と対向して設けられるニップル1と、ニップル1の外周面1aと対向してその軸方向へ傾斜するように設けられるテーパー面2aを有する締め付け部材2と、締め付け部材2のテーパー面2aに沿ってその傾斜方向へ往復動自在で且つ径方向へ弾性的に拡径及び縮径変形可能に設けられるスリーブ3と、スリーブ3をテーパー面2aに沿ってその傾斜方向へ押圧するように設けられる弾性部材4を、主要な構成要素として備えている。
ニップル1とスリーブ3との間に形成される挿入空間Sに対して、管体Bの一端に配置される接続端部Baを挿入することにより、図1(a)に示されるように、スリーブ3が弾性部材4に抗して管体Bの挿入方向N(以下「管挿入方向N」という)へ移動し、その後、図1(b)に示されるように、スリーブ3が管挿入方向Nと逆方向U(以下「管抜け方向U」という)へ逆移動して、管体Bの接続端部Baがニップル1とスリーブ3の間に挟み込まれ、そのまま引き抜き不能に接続保持される。
【0010】
ニップル1は、例えば真鍮などの金属や硬質合成樹脂などの剛性材料で、後述する管体Bの内径と略同じか又はそれよりも若干小さな外径を有する円筒状に形成するか、或いは例えばステンレスなどの変形可能な剛性材料からなる板材をプレス加工やその他の成形加工することで、管体Bの内径と略同じか又はそれよりも若干小さな外径を有する肉厚が薄い円筒状に形成される。
さらに、ニップル1の外周面1aには、後述する管体Bの接続端部Baにおける内表面B1及び後述するスリーブ3の内周面と対向して周方向へ延びる環状凹部1bを形成し、環状凹部1b内に例えばOリングなどの弾性変形可能な環状シール材1cを嵌入装着して軸方向へ移動不能に保持するとともに、環状シール材1cの外周端を外周面1aから若干突出させて、後述する管体Bの内表面B1に圧接させることが好ましい。
図示される例では、ニップル1の外周面1aにおいて、管挿入方向Nへ第1の環状凹部1b及び第1の環状シール材1cと第2の環状凹部1b及び第2の環状シール材1cが二組それぞれ所定間隔を空けて配置され、環状凹部1bを除いた外周面1a全体が管挿入方向Nへ平滑な面に形成されている。
また、その他の例として図示しないが、環状凹部1b及び環状シール材1cを一組のみ配置したり、ニップル1の軸方向へ三組以上の環状凹部1b及び環状シール材1cを所定間隔毎に配置したり、環状凹部1bの配設位置と関係なく、管挿入方向Nへ環状突起と環状溝がそれぞれ交互に複数ずつ形成された竹の子状に形成することも可能である。
【0011】
締め付け部材2は、例えばステンレスなどの錆難い金属材料やその他の剛性材料で、その軸方向一部が後述するスリーブ3の外径よりも大きい内径を有する略円筒状に形成され、ニップル1側に対してその軸方向へ移動不能に取り付けるか又は連結している。
締め付け部材2の内周面には、後述するスリーブ3の締め付け手段として、管挿入方向Nに向けて徐々に大径となるとともに、管抜け方向Uへ向けて徐々に小径となるように傾斜するテーパー面2aが形成されている。
締め付け部材2の内周面において管抜け方向Uの先端側には、後述するスリーブ3と対向する係止部2bが形成され、スリーブ3を管抜け方向Uへ移動した際に係止部2bと突き当たることにより、スリーブ3のそれ以上の管抜け方向Uへの移動を防止している。
【0012】
スリーブ3は、例えばポリアセタール樹脂やそれ以外の表面の滑り性と耐熱性に優れた合成樹脂などの弾性変形可能な材料で、径方向へ拡径及び縮径変形可能な略円筒状に形成され、その内径が、拡径時には後述する管体Bの外径と略同じか又はそれよりも大きく、縮径時には管体Bの外径よりも小さくなるように設定している。
さらに、スリーブ3は、ニップル1の外周面1aと締め付け部材2のテーパー面2aに沿って管挿入方向N及び管抜け方向Uへ往復動自在に支持されている。
スリーブ3の内周面には、周方向へ環状又は環状に近い状態でニップル1の外周面1aに向け突出形成される突起部3aを有している。
突起部3aは、管体Bの挿入時には後述する管体Bの接続端部Baにおける先端面B2と管挿入方向Nへ対向して突き当たるように配置されるとともに、管抜け方向Uへの移動に伴い接続端部Baの外表面B3に向けてその内端を管体Bの外径よりも小さく縮径変形させるように形成されている。
突起部3aの個数は、管挿入方向Nへ複数の突起部3aを配置することが好ましい。
図示される例では、スリーブ3の内周面において、その軸方向中間位置に第1の突起部3aが、管挿入方向Nの奥側端部に第2の突起部3aが二つそれぞれ所定間隔を空けて一体成形されている。特に、図1(b)に示される管体Bの接続完了状態において、第1の突起部3aと第2の突起部3aを第1の環状シール材1cと第2の環状シール材1cよりもそれぞれ管挿入方向N奥側に配置することが好ましい。
また、その他の例として図示しないが、突起部3aを一つのみ形成したり、スリーブ3の軸方向へ三つ以上の突起部3aを所定間隔毎に形成することも可能である。
【0013】
さらに、スリーブ3は、その外周面に締め付け部材2のテーパー面2aと対向して形成される摺動面3bと、突起部3a及び摺動面3bをスリーブ3の径方向へ弾性的に拡径及び縮径変形させる弾性変形部3cを有している。
摺動面3bは、スリーブ3の外周面に沿って周方向へ環状又は環状に近い状態で、締め付け部材2のテーパー面2aと略平行となるように形成され、締め付け部材2内にセットしてないテーパー面2aと不接触状態において、摺動面3bの最大径部位をテーパー面2aの最大径部位よりも大径となるように寸法設定することで、摺動面3bがテーパー面2aに対し常時弾性的に圧接するように構成されている。
詳しく説明すると、摺動面3bは、突起部3aと管体Bの先端面B2との突き当たりに伴いテーパー面2aに沿って管挿入方向Nへ移動し、また後述する弾性部材4により管抜け方向Uへ移動するように配置されている。
【0014】
弾性変形部3cは、スリーブ3の軸方向一部にすり割りや凹みなどを切欠形成して、径方向へ弾性変形し易く構成され、摺動面3bがテーパー面2aに接触しながら管挿入方向Nへ向けて後退移動することにより、摺動面3bをスムーズに拡径変形させるとともに、摺動面3bがテーパー面2aに接触しながら管抜け方向Uへ前進復動することにより、摺動面3bをスムーズに縮径変形させるように構成している。
図示される例では、スリーブ3の軸方向一部、詳しくは軸方向中間位置から管挿入方向Nの奥側端部に亘って、摺動面3bが膨出形成されるとともに、摺動面3bよりも軸方向へ直線状に長く延びるすり割り(スリット)を周方向へ複数切欠形成している。
また、その他の例として図示しないが、軸方向中間位置のみに摺動面3bを膨出形成したり、摺動面3bと軸方向へほぼ同じ長さで直線状に延びるすり割りを切欠形成したり、スリーブ3の軸方向全長に亘って一つのすり割りを切欠形成したり、スリーブ3の軸方向両端部から軸方向へ延びるすり割りを周方向へ複数切欠形成したり、曲線などの非直線状に延びるすり割りを形成することも可能である。
【0015】
そして、突起部3aは、管体Bの先端面B2と対向する突き当たり面を、その内端に向かって管挿入方向Nへ徐々に傾斜させるとともに、該突き当たり面の内端を管体Bの外表面B3に向けて鋭角に尖らせることが好ましい。
それにより、突起部3aの拡径変形に伴って管体Bの先端面B2の外周縁がスムーズに外れて通過し、突起部3aの縮径変形に伴ってその内端が管体Bの外表面B3に確実に食い込むように形成されている。
さらに、ニップル1の外周面1aにおいて、スリーブ3の突起部3aと管体Bの先端面B2との突き当たり後に生じるスリーブ3の拡径変形経路P中に、環状凹部1b及び環状シール材1cを配設することが好ましい。
スリーブ3の拡径変形経路Pとは、ニップル1の外周面1aにおいて、挿入された管体Bの先端面B2がスリーブ3の突起部3aに突き当たり管挿入方向Nへ押動されることにより、弾性変形部3cの弾性拡径で突起部3a及び摺動面3bが拡径変形する領域を言う。
【0016】
弾性部材4は、例えばコイルバネやスプリングなどの少なくとも一方向へ弾性的に伸縮変形可能に形成される弾性体であり、ニップル1又は締め付け部材2側とスリーブ3とに亘って管挿入方向N及び管抜け方向Uへ伸縮変形可能に配置され、常時スリーブ3を管抜け方向Uへ向けて弾性的に押圧している。
図示される例では、ニップル1の外周面1aにおいて管挿入方向Nの奥側に突出形成される段部1dと、スリーブ3において管挿入方向Nの奥側端部3dに配置された環状のバネ受け5との間に、弾性部材4としてコイルバネを介装することにより、コイルバネの押圧力がスリーブ3に対し周方向へ均一に作用するようにしている。
また、その他の例として図示しないが、弾性部材4としてコイルバネとは異なる弾性体を用いたり、バネ受け5を介さずスリーブ3と弾性部材4を接触させたり、締め付け部材2とスリーブ3に亘って弾性部材4を配置することも可能である。
【0017】
一方、管体Bは、例えば塩化ビニルなどの軟質合成樹脂やシリコーンゴムやその他のゴムなどの可撓性を有する軟質材料で成形される例えばホースやチューブなどであり、その内表面B1と外表面B3が平坦なものが好ましい。
管体Bの具体例として、図示される例では単層構造のホースを用いている。
また、その他の例として図示しないが、その透明又は不透明な外層と内層との間に中間層として、複数本か又は単数本の合成樹脂製ブレード(補強糸)が螺旋状に埋設される積層ホース(ブレードホース)や、中間層として合成樹脂製又は金属製の断面矩形などの帯状補強材と断面円形などの線状補強材を螺旋状に巻き付けて一体化した螺旋補強ホース(フォーランホース)や、金属製線材や硬質合成樹脂製線材を螺旋状に埋設した螺旋補強ホースなどを用いることも可能である。
【0018】
さらに、前述したニップル1には、他の機器(図示しない)や他の管体(図示しない)などが接続される継手本体6を設け、継手本体6を介してそれに接続される他の機器や他の管体などと、ニップル1の外周面1aに接続される管体Bを連結させることが好ましい。
【0019】
このような本発明の実施形態に係る管継手Aによると、図4(a)に示されるように、ニップル1とスリーブ3との間に形成される挿入空間Sに向け、管体Bの接続端部Baを差し込むことで、先ず、管体Bの先端面B2がスリーブ3における突起部3a(第1の突起部3a)に突き当たり、この突き当たり状態を維持しながら管体Bを押し込むことで、スリーブ3の摺動面3bが締め付け部材2のテーパー面2aに沿って摺動し、突起部3aを含むスリーブ3全体が弾性部材4の押圧力に抗して管挿入方向Nへ移動する。
それにより、図1(a)に示されるように、スリーブ3の摺動面3bがテーパー面2aに沿って管挿入方向Nへ押動されるため、弾性変形部3cの弾性拡径により摺動面3bと突起部3a(第1の突起部3a及び第2の突起部3a)が徐々に拡径変形する。
その後、図4(b)に示されるように、突起部3a(第1の突起部3a)の拡径変形に伴って、その先端内径が管体Bの先端外径よりも大きくなると、突起部3a(第1の突起部3a)から管体Bの先端面B2が外れ、最終的には、図4(c)に示されるように、管体Bの先端面B2が、突起部3a(第2の突起部3a)から外れて、ニップル1の管挿入方向N奥側に突出形成される段部1dに突き当たって挿入が完了する。
それにより、図1(b)に示されるように、弾性部材4でスリーブ3の摺動面3bがテーパー面2aに沿って管抜け方向Uへ勢い良く押圧され、それに伴いスリーブ3が一気に縮径変形して突起部3aの内端を管体Bの外表面B3に食い込ませ、管体Bがニップル1の外周面1aとの間に管抜け方向Uへ移動不能に挟持される。
したがって、管体Bの挿入をスムーズにしながら管体Bの挿入だけで確実に抜け不能に保持することができる。
【0020】
特に、ニップル1の外周面1aにおいて、スリーブ3の突起部3aと管体Bの先端面B2との突き当たりにより生じるスリーブ3の拡径変形経路P中に、管体Bの内表面B1と対向する環状のシール部材1cを突出させて設けた場合には、管体Bの押し込みによって、突起部3aに対し管体Bの先端面B2が圧接し続けており、この圧接状態でスリーブ3の突起部3aが拡径変形すると、可撓性を有する管体Bの先端面B2及び内表面B1の先端縁も、突起部3aとの間に生ずる摩擦抵抗により僅かに拡径変形する。そのため、ニップル1の軸線とそれに挿入される管体Bの軸線とが径方向へ多少偏心しても、ニップル1の外周面1aから突出する環状のシール部材1cに対し、管体Bの内表面B1の先端縁が強く突き当たることなくスムーズに乗り越えて通過する。
それにより、管体Bの挿入に伴うシール部材1cのめくれ変形や位置ズレなどを防止することができる。
その結果、管体Bの内径やシール部材1cに僅かな寸法誤差が生じても流体漏れを確実に防止でき、長期に亘り密閉保持できて安全性の向上を図れる。
【0021】
さらに、図1(b)に示される管体Bの接続完了時において、突起部3a(第1の突起部3aと第2の突起部3a)を環状シール材1c(第1の環状シール材1cと第2の環状シール材1c)よりもそれぞれ管挿入方向N奥側に配置した場合には、管体Bが経時変化によりクリープ(永久歪)現象が発生して若干肉薄になっても、弾性部材4でスリーブ3が更に管抜け方向Uへ縮径移動して、その突起部3a(第1の突起部3aと第2の突起部3a)と環状シール材1c(第1の環状シール材1cと第2の環状シール材1c)との間に、若干肉薄になった管体Bが挟み込まれる。
それにより、管体Bにクリープが発生してもシール性を維持することができる。
その結果、長期に亘り密閉保持できて安全性の更なる向上を図れる。
【0022】
また、スリーブ3の内周面に突起部3a(第1の突起部3aと第2の突起部3a)を管挿入方向Nへ複数配置した場合には、図1(a)及び図4(b)に示されるように、挿入される管体Bの先端面B2が複数の突起部3a(第1の突起部3aと第2の突起部3a)に対してそれぞれ突き当たりと外れ通過を複数回繰り返すため、スリーブ3が弾性部材4で複数回往復動するとともに、図1(b)に示されるように、スリーブ3の縮径変形により管体Bの外表面B3に対して複数の突起部3a(第1の突起部3aと第2の突起部3a)がそれぞれ食い込む。
それにより、テーパー面2aに対しスリーブ3をスムーズに摺動させて確実に縮径変形させることができる。
その結果、テーパー面2aに対するスリーブ3の引っ掛かりや接着などの作動不良を防止しながら管体Bの複数箇所をより確実に保持することができる。
次に、本発明の各実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0023】
この実施例1は、図1(a)(b)〜図4(a)(b)(c)に示すように、スリーブ3の外周面においてその管挿入方向Nの奥側端部、すなわち弾性部材4に近い部位を傾斜状に膨出形成することで、スリーブ3の軸方向一部のみに摺動面3bが一体成形される場合を示すものである。
スリーブ3の外周面においてその管挿入方向Nの端部奥側を除く部位には、環状の凹溝部3eを形成して、摺動面3bを除く軸方向大部分の肉厚寸法が薄くなることにより、弾性変形部3cの弾性拡径で突起部3a及び摺動面3bが径方向へ弾性変形し易くなっている。
【0024】
図1〜図4に示される例では、締め付け部材2がその基端側内周面に雌ネジ部2cを刻設したナットであり、雌ネジ部2cを、ニップル1又は継手本体6に設けられる締め付け部材2の取付手段7に対し螺着させることで、ニップル1側に対してその軸方向へ移動不能に取り付けられている。
また、その他の例として図示しないが、ニップル1側に対し締め付け部材2を螺着以外の固着方法で、締め付け部材2の取付手段7に対して着脱自在に連結したり、着脱不能に連結することも可能である。
【0025】
さらに図1〜図4に示される例では、ニップル1の管挿入方向N奥側に筒状の継手本体6が突出して一体形成され、継手本体6には、他の機器や他の管体などの管接続口(図示しない)に接続するための接続部6aと、例えばスパナやレンチなどの工具(図示しない)が係合する工具係合部6bと、締め付け部材2の取付手段7としてその雌ネジ部2cが螺合する雄ネジ部6cとを、それぞれ一体形成している。
接続部6aは、斯かる管継手Aに接続する他の機器や他の管体などにおける管接続口の内周面に内ネジが刻設される場合には、これと対応する外ネジを刻設し、また該管接続口の外周面に外ネジが刻設される場合には、これと対応する内ネジを刻設している。図示例では、接続部6aとして外ネジが刻設されている。
工具係合部6bとしては、六角ナットが形成されている。
また、その他の例として図示しないが、ニップル1と継手本体6を別個に形成して、ニップル1と継手本体6を着脱自在に取り付けることも可能である。
【0026】
このような本発明の実施例1に係る管継手Aによると、スリーブ3の摺動面3bを除く軸方向大部分が肉薄に形成されて、弾性変形部3cの弾性拡径により突起部3a及び摺動面3bが径方向へ弾性変形し易くなっているため、挿入された管体Bの先端面B2がスリーブ3の突起部3aに突き当たり管挿入方向Nへ押動されるだけで、突起部3a及び摺動面3bがスムーズに拡径変形して、突起部3aから管体Bの先端面B2が確実に外れる。
それにより、作動性が向上して管体Bの挿入を更にスムーズにしながら管体Bの挿入だけでより確実に抜け不能に保持することができるという利点がある。
【実施例2】
【0027】
この実施例2は、図5(a)(b)及び図6に示すように、スリーブ3の外周面に環状の凹溝部3eが形成されずに外周面の略全体を直線状に傾斜させて、スリーブ3の軸方向略全長に亘り摺動面3bを一体成形した構成が、図1〜図4に示した実施例1とは異なり、それ以外の構成は図1〜図4に示した実施例1と同じものである。
【0028】
図5及び図6に示される例では、スリーブ3の外周面においてその管抜け方向Uの先端側端部を除いて略全体が傾斜状に膨出形成されることで、スリーブ3の軸方向略全部に摺動面3bが一体成形されている。
また、その他の例として図示しないが、スリーブ3の外周面全体を傾斜状に膨出形成して、スリーブ3の軸方向全体に摺動面3bが一体成形されるようにすることも可能である。
【0029】
このような本発明の実施例2に係る管継手Aによると、図5(b)に示される管体Bの接続完了時において、突起部3a(第1の突起部3a)の径方向外側の外周面が摺動面3bとなって締め付け部材2のテーパー面2aに圧接するため、突起部3a(第1の突起部3a)を管体Bの外表面B3により強く食い込ませることができる。
それにより、管体Bの挿入だけでより確実に抜け不能に保持することができて、シール性をより向上させることができるという利点がある。
【実施例3】
【0030】
この実施例3は、図7(a)(b)及び図8に示すように、ニップル1と別個に筒状の継手本体6を形成し、継手本体6に対してニップル1及び締め付け部材2を回転自在に組み付けることにより、継手本体6に対して管体Bを回転自在に接続した構成が、図1〜図4に示した実施例1又は図5及び図6に示した実施例2とは異なり、それ以外の構成は図1〜図4に示した実施例1又は図5及び図6に示した実施例2と同じものである。
詳しく説明すると、ニップル1と別個に形成された筒状の継手本体6に対して、締め付け部材2の取付手段7が設けられたニップル1を回転自在に組み付けることにより、管体Bの接続完了時において締め付け部材2と共に管体Bが、継手本体6に対して回転可能に接続されるように構成している。
【0031】
図7(a)(b)及び図8に示される例では、継手本体6の中心にニップル1を遊嵌状に挿通する貫通孔6dが開設される。貫通孔6dと対向するニップル1の外周面1aには、その軸方向へ貫通孔6dを挟むように、係止凸部1eと凹溝部1fがそれぞれ周方向に形成され、凹溝部1fに環状部材8を軸方向へ移動不能で且つ着脱自在に嵌入装着して、環状部材8及び係止凸部1eで貫通孔6dを挟み込むことにより、継手本体6に対してニップル1が回転自在に組み付けられている。継手本体6の貫通孔6dと、それを挿通するニップル1の外周面1aの対向面のうちいずれか一方には、例えばOリングなどの弾性変形可能な環状シール材1gが装着されて、両者間を回転自在に密閉している。
環状部材8は、例えばポリカーボネートなどの弾性変形可能な材料又はその他の合成樹脂で形成され、図示例のように、その中心孔8aと連続する切り込み8bが切欠形成された略C字形に成形して弾性変形させることで、ニップル1の凹溝部1fに組み付けるか、又は中心孔8aを通るように複数に分割してニップル1の凹溝部1fに組み付ける。
環状部材8の外周面には、締め付け部材2の取付手段7としてその雌ネジ部2cが螺合する雄ネジ部8cが一体形成されている。環状部材8の外周面又は締め付け部材2の外周面のいずれか一方か、若しくは環状部材8の外周面及び締め付け部材2の外周面の両方には、治具や工具などと周方向へ係合する係合部8d,2dを形成し、治具や工具などにより両者を螺合させて組み付けることが好ましい。
そして、強度が必要な継手本体6を除いてニップル1及び環状部材8は、合成樹脂で形成することが好ましい。
また、その他の例として図示しないが、ニップル1の凹溝部1fに対して環状部材8を回転自在に装着することも可能である。
【0032】
このような本発明の実施例3に係る管継手Aによると、継手本体6に対して管体Bが回転自在に接続されるため、管体Bの接続時に継手本体6に対して管体Bが捻れたとしても、その捻れ方向と逆回転して戻すことが可能になる。
それにより、継手本体6に対する管体Bの捻れを解消することができる。
その結果、継手本体6と管体Bの接続箇所に管体Bの捻れによって圧力が作用せず、長期に亘って接続保持できるとともに、管体B内を流体がスムーズに流れ、部分的に滞留などを防止することができるという利点がある。
【0033】
さらに、環状部材8の外周面又は締め付け部材2の外周面のいずれか一方か、若しくは環状部材8の外周面及び締め付け部材2の外周面の両方に、治具や工具などと周方向へ係合する係合部8d,2dを形成して、治具や工具などにより両者を螺合させて組み付ける場合には、管体Bの接続後において第三者による締め付け部材2の分解や管体Bの取り外しなどが困難となる。それにより、管体Bの接続状態を長期間に亘って保持できる。
また、継手本体6を除いてニップル1及び環状部材8を合成樹脂で形成した場合には、継手本体6とニップル1を切削加工により一体形成したものに比べ、製造コストを低減化できて大量生産に有利である。
【0034】
そして、図7(a)(b)及び図8に示される例では、ニップル1の環状凹部1bを中心として、少なくとも管抜け方向U(管挿入方向Nの上流側)に配置される外周面1aには、環状凹部1bに嵌入装着(嵌装)される、例えばOリングなどからなる弾性変形可能な環状シール材1cの外周端に向かって徐々に突出する複数のリブ部1hを、それぞれ周方向へ所定間隔毎に突出形成している。
リブ部1hは、その外面を環状凹部1bの直前に向かって管挿入方向Nへ徐々にニップル1の径方向へ突出するように傾斜させ、その最も管挿入方向N側に配置される最突出部位の突出高さを、締め付け部材2で圧縮変形された環状シール材1cの外周端よりも若干低く設定することが好ましい。
さらに、環状凹部1bよりも管挿入方向N(の下流側)に配置される外周面1aには、環状シール材1cの外周端やリブ部1hの最突出部位よりも低い環状平坦部1iを、管体Bの内径と略同じになるように形成することが好ましい。
リブ部1hの外面は、図示例のように略直線状に傾斜させることが好ましい。
また、その他の例として図示しないが、リブ部1hの数を変更したり、リブ部1hの平面形状を変更したり、リブ部1hの外面を曲線状に傾斜させたり、することも可能である。
【0035】
このように環状シール材1cが嵌装される環状シール材1cよりも管挿入方向Nの上流側直前に、複数のリブ部1hを周方向へ所定間隔毎に突出形成した場合には、図4(a)に示されるように、ニップル1の外周面1aに沿って管体Bの接続端部Baを差し込む際に、複数のリブ部1hにより管体Bの内表面B1において各リブ部1hと当接する部位がそれぞれ拡径変形しながら環状シール材1cの外周端に接近するため、管体Bの先端面B2が環状シール材1cに突き当たることがなく、環状凹部1bからの環状シール材1cのはみ出しやめくれを効果的に防止されるため、環状シール材1cによるシール性が保たれ、流体の漏れを確実に防止することができる。さらに、複数のリブ部1hが周方向へ所定間隔毎に配置されるため、管体Bの内表面B1との接触面積が減少し摩擦抵抗が小さくなって、管体Bをスムーズに差し込むことができる。
【実施例4】
【0036】
この実施例4は、図9(a)(b)に示すように、継手本体6の貫通孔6dを挟むように、ニップル1の外周面1aに、抜け止め部材9を突出させて設けるとともに、環状凸部1jが周方向に一体形成され、環状凸部1jの外周面に締め付け部材2の取付手段7としてその雌ネジ部2cが螺合する雄ネジ部1kを一体形成した構成が、図7〜図8に示した実施例3とは異なり、それ以外の構成は図7〜図8に示した実施例3と同じものである。
【0037】
図9(a)(b)に示される例では、ニップル1の外周面1aに周設される環状凹溝1mに対し、抜け止め部材9として例えばC型リングやE型リングなどからなる止め輪を着脱自在に嵌入装着して、抜け止め部材9の外周端を継手本体6の貫通孔6dの孔縁部分に突き当てることで、継手本体6に対してニップル1が回転自在に組み付けられている。
また、その他の例として図示しないが、抜け止め部材9として止め輪以外のものを取り付けて抜け止めすることも可能である。
【0038】
このような本発明の実施例4に係る管継手Aによると、前述した実施例3と同様な作用効果が得られる。
【0039】
なお、図示例では、管体Bとして単層構造のホースを用い、それ以外に積層ホースや螺旋補強ホースなどに変えることも説明したが、これに限定されず、ホースに代えてチューブなどを用いても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 ニップル 1a 外周面
2 締め付け部材 2a テーパー面
3 スリーブ 3a 突起部
3b 摺動面 4 弾性部材
6 継手本体 B 管体
B1 内表面 B2 先端面
B3 外表面 N 管体の挿入方向(管挿入方向)
U 管体の挿入方向と逆方向(管抜け方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する管体の内表面と対向して設けられるニップルと、
前記ニップルの外周面と対向して前記管体の挿入方向へ徐々に大径となるように設けられるテーパー面を有する締め付け部材と、
前記テーパー面に沿ってその傾斜方向へ往復動自在で且つ径方向へ弾性的に拡径及び縮径変形可能に設けられるスリーブと、
前記スリーブを前記テーパー面に沿って前記管体の挿入方向と逆方向へ押圧するように設けられる弾性部材と、を備え、
前記スリーブは、その内周面に前記ニップルの前記外周面に向け突出形成され、前記管体の挿入時において前記管体の先端面と前記管体の挿入方向へ対向して突き当たるように配置されるとともに、前記管体の挿入方向と逆方向への移動に伴い前記管体の外表面に向けて縮径変形するように配置される突起部と、
前記スリーブの外周面に前記テーパー面と対向して形成され、前記突起部と前記管体の前記先端面との突き当たりに伴い前記テーパー面に沿って前記管体の挿入方向へ移動し、前記弾性部材により前記管体の挿入方向と逆方向へ移動するように配置される摺動面と、を有し、
前記突起部は、前記管体の前記先端面との突き当たりに伴い前記管体の挿入方向へ移動されることで、前記突起部から前記管体の前記先端面が外れるように拡径変形し、前記弾性部材による前記管体の挿入方向と逆方向への移動に伴って、前記管体の外径よりも小さく縮径変形するように構成されたことを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記ニップルの前記外周面において、前記スリーブの前記突起部と前記管体の前記先端面との突き当たりにより生じる前記スリーブの拡径変形経路中に、前記管体の内表面と対向する環状のシール部材を突出させて設けたことを特徴とする請求項1記載の管継手。
【請求項3】
前記管体の接続完了時において、前記突起部を前記シール部材よりも前記管体の挿入方向奥側に配置したことを特徴とする請求項2記載の管継手。
【請求項4】
前記スリーブの内周面に前記突起部を、前記管体の挿入方向へ複数配置したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の管継手。
【請求項5】
前記ニップルと別個に筒状の継手本体を形成し、前記継手本体に対して前記管体が回転自在に接続されるように、前記ニップル及び前記締め付け部材を前記継手本体に対して回転自在に組み付けたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−29193(P2013−29193A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−19252(P2012−19252)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【出願人】(000134534)株式会社トヨックス (122)
【Fターム(参考)】