説明

管路の内張り材及びその製造方法、管路の内張り方法並びに内張りされた管路

【課題】 筒状布帛とモルタルとを確実に接着し、既設管路の内面にモルタルによる強固な内張りを確実に施す。
【解決手段】 管路8の内面に間隔をおいてスペーサー9を取り付け、当該管路8内に、筒状布帛4の内面に気密層5を形成し、外面に砂粒6を接着した内張り材1を挿通し、当該内張り材1内に圧力流体を送入して前記スペーサー9に圧接すると共に、前記管路8と内張り材1との間にモルタル12を注入して前記砂粒6に含浸せしめ、当該モルタル12を硬化させる。
【効果】 筒状布帛の内面に気密層を形成し、表面に砂粒が接着されているので、その内張り材を管路内に挿通して当該管路と内張り材との間にモルタルを注入することにより、モルタルが前記砂粒を取り込んで硬化し、当該砂粒を介して筒状布帛とモルタルとが強固に接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下水道管などの既設管路に対する内張りに関するものであって、特に管路との間をモルタルで充填するための内張り材及びその製造方法、管路の内張り方法並びに内張りされた管路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来既設管路内にセメントによる内張りを施す方法としては、特開昭56−131879号公報に記載された方法が知られている。この方法は、既設管路内に鉄条筒を介して内挿管を挿入し、既設管路と内挿管との間の空所にセメントミルクを注入し、硬化させるものである。
【0003】
しかしながらこの方法においては、既設管路や内挿管とセメントとの接着が十分とは言えない。特に内挿管が繊維製の筒状布帛よりなるものである場合には、かかる繊維とセメントとを確実に接着することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56−131879号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、筒状布帛とモルタルとを確実に接着し、既設管路の内面にモルタルによる強固な内張りを確実に施すことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
而して本発明の管路の内張り材の第一の発明は、筒状布帛の内面に気密層を形成し、前記筒状布帛の外面に砂粒を接着したことを特徴とするものである。また当該管路の内張り材の第二の発明は、筒状布帛の内面及び外面に、砂粒を接着したことを特徴とするものである。これらの内張り材の発明においては、前記砂粒の直径が、1〜10mmであることが適当である。
【0007】
次に管路の内張り材の製造方法の第一の発明は、内面に気密層を形成した筒状布帛の外面に接着剤を塗布し、その外側から乾燥した砂粒を振りかけて前記接着剤に接着し、次いで前記接着剤を硬化させることを特徴とするものである。
【0008】
また管路の内張り材の製造方法の第二の発明は、筒状布帛の内面及び外面に接着剤を塗布し、当該筒状布帛内に乾燥した砂粒を注入して前記接着剤に接着し、前記筒状布帛の外側から乾燥した砂粒を振りかけて前記接着剤に接着し、次いで前記接着剤を硬化させることを特徴とするものである。
【0009】
これらの管路の内張り材の製造方法の発明においては、前記接着剤としては、エポキシ系接着剤を使用するのが好ましい。
【0010】
次に管路の内張り方法の第一の発明は、管路の内面に間隔をおいてスペーサーを取り付け、当該管路内に、筒状布帛の内面に気密層を形成し、外面に砂粒を接着した内張り材を挿通し、当該内張り材内に圧力流体を送入して前記スペーサーに圧接すると共に、前記管路と内張り材との間にモルタルを注入して前記砂粒に含浸せしめ、当該モルタルを硬化させることを特徴とするものである。
【0011】
また管路の内張り方法の第二の発明は、管路の内面に間隔をおいてスペーサーを取り付け、当該管路内に、筒状布帛の内外面に砂粒を接着した外部内張り材を挿通し、当該外部内張り材の内面に間隔をおいてスペーサーを取り付け、前記外部内張り材内に、筒状布帛の内面に気密層を形成し、外面に砂粒を接着した内部内張り材を挿通し、当該内部内張り材内に圧力流体を送入して前記スペーサーに圧接すると共に、前記外部内張り材を管路内面に取り付けたスペーサーに圧接し、前記管路と外部内張り材との間及び外部内張り材と内部内張り材との間にモルタルを注入して前記砂粒に含浸せしめ、当該モルタルを硬化させることを特徴とするものである。
【0012】
これらの管路の内張り方法の発明においては、前記内張り材又は内部内張り材内に、水を注入することが好ましい。
【0013】
次に内張りされた管路の第一の発明は、管路内に当該管路内面と間隔をおいて、筒状布帛の内面に気密層を形成し当該筒状布帛の外面に砂粒を接着した内張り材を挿通し、前記間隔内にモルタルを充填してなることを特徴とするものである。
【0014】
また内張りされた管路の第二の発明は、管路内に当該管路内面と間隔をおいて、筒状布帛の内外面に砂粒を接着した外部内張り材を挿通し、当該外部内張り材内に当該外部内張り材内面と間隔をおいて、筒状布帛の内面に気密層を形成し当該筒状布帛の外面に砂粒を接着した内部内張り材を挿通し、前記管路と外部内張り材との間隔及び外部内張り材と内部内張り材との間隔内にモルタルを充填してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、筒状布帛の内面に気密層を形成し、表面に砂粒が接着されているので、その内張り材を管路内に挿通して当該管路と内張り材との間にモルタルを注入することにより、モルタルが前記砂粒を取り込んで硬化し、当該砂粒を介して筒状布帛とモルタルとが強固に接着するのである。
【0016】
また筒所布帛の内外面に砂粒を接着した外部内張り材を管路に挿通し、その外部内張り材の内側に、筒状布帛の内面に気密層を形成し表面に砂粒を接着した内部内張り材を挿通し、前記管路と外部内張り材との間及び、外部内張り材と内部内張り材との間にモルタルを注入することにより、前記砂粒を取り込んでモルタルが硬化すると共に、当該モルタルが外部内張り材を貫通して一体化し、前記砂粒を介して筒状織布とモルタルとが強固に接着すると共に、モルタルが筒状織布によって補強される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】管路の内張り材の第一の発明の主要部の中央縦断面図
【図2】内張りされた管路の第一の発明の中央縦断面図
【図3】内張りされた管路の第一の発明の横断面図
【図4】内張りされた管路の第一の発明の主要部の拡大中央縦断面図
【図5】管路の内張り材の第二の発明の主要部の中央縦断面図
【図6】内張りされた管路の第二の発明の主要部の拡大中央縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明を図面に基づいて説明する。図1は本発明の管路の内張り材1の、第一の発明を示すものであって、たて糸2とよこ糸3とを織成した筒状布帛4の内面に気密層5が形成され、外面には砂粒6が接着材7を介して接着されている。
【0019】
砂粒6は直径が1〜10mmのものが適当であり、それらの砂粒6が混合して筒状布帛4の外面に接着されている。また砂粒6を筒状布帛4に接着する接着剤7としては、エポキシ系の接着剤が適している。
【0020】
この管路の内張り材1を製造するには、内面に気密層5を形成した筒状布帛4の外面に接着剤7を塗布し、その外側から乾燥した砂粒6を振りかけて前記接着剤7に接着し、次いで前記接着剤7を硬化させることにより、製造することができる。
【0021】
前記筒状布帛4の内面に気密層5を形成するには、筒状布帛4の内側にプラスチックチューブを引き込んで、当該プラスチックチューブの内側に圧縮空気を送入して膨らませ、筒状布帛4の内面に接着することができる。また他の方法として、筒状布帛4の外面に気密層5を形成し、それを流体圧力により内外面を反転して、気密層5を筒状布帛4の内側に位置せしめることも可能である。
【0022】
而して前記内張り材1を使用して管路8に内張りするには、図2及び図3に示すように、内張りされる管路8の内面に間隔をおいて複数のスペーサー9を取り付け、当該管路8内に前記内張り材1を挿通し、当該内張り材1内に送水口10から水などの圧力流体を送入して内張り材1の外面を前記スペーサー9に圧接せしめる。
【0023】
次いで前記管路8と内張り材1との間に、モルタル圧入口11からモルタル12を注入することにより、当該モルタル12が前記内張り材1における砂粒6の間に含浸し、当該モルタル12を固化させることにより、モルタル12は前記砂粒6を一体に取り込んだ状態で固化し、砂粒6を介して内張り材1とモルタル12とが固着され、当該モルタル12を介して管路8の内面に内張り材1が内張りされる。
【0024】
而して本発明によれば、内張り材1における筒状布帛4と砂粒6とは接着剤7により強固に接着されており、また砂粒6は本来モルタルの構成要素であるから、砂粒6はモルタル12に対して強固に一体化する。
【0025】
さらに下水道管などに用いられるヒューム管はコンクリートよりなり、モルタルと同質の材料よりなるので、モルタル12との接着性は良好であり、結果的に管路8の内面にモルタル12を介して内張り材1が強固に内張りされるのである。
【0026】
前記内張り材1内に送入する圧力流体は、空気であっても差し支えはないが、管路8と内張り材1との間にモルタル12を注入することにより内張り材1に浮力が作用するので、その浮力を軽減するために水を送入するのが好ましい。
【0027】
次に図5は、本願の第二の発明による内張り材13を示すものであって、たて糸2とよこ糸3とを筒状に織成した筒状布帛4の内面及び外面に、接着材7を介して砂粒6が接着されている。
【0028】
この発明における砂粒6の粒径は、先の第一の発明の内張り材1と同様に、直径が1〜10mmのものが適当であり、それらの砂粒6が混合して筒状布帛4の外面に接着されている。また砂粒6を筒状布帛4に接着する接着剤7としては、エポキシ系の接着剤が適している。
【0029】
この内張り材13を製造するには、筒状布帛4の内面及び外面に接着剤7を塗布し、当該筒状布帛4内に乾燥した砂粒6を注入して前記接着剤7に接着し、前記筒状布帛の外側から乾燥した砂粒6を振りかけて前記接着剤7に接着し、次いで前記接着剤7を硬化させることにより製造することができる。
【0030】
次にこの内張り材13を使用して管路8の内面に内張りするには、図6に示すように、管路8の内面に間隔をおいて複数のスペーサー9を取り付け、当該管路8内に、外部内張り材として前記内張り材13を挿通する。
【0031】
次いで、当該外部内張り材13の内面に間隔をおいて複数のスペーサー9を取り付け、前記外部内張り材13内に、内部内張り材としての前記第一の発明による内張り材1を挿通する。
【0032】
而して当該内部内張り材1内に水などの圧力流体を送入して外部内張り材13の内面に取り付けた前記スペーサー9に圧接すると共に、前記外部内張り材13を管路8内面に取り付けたスペーサー9に圧接し、前記管路8と外部内張り材13との間及び、外部内張り材13と内部内張り材1との間にモルタル12を注入し、当該モルタル12を硬化させることにより内張りすることができる。
【0033】
このように外部内張り材13と内部内張り材1とにより二重の内張りを形成することにより、管路8に亀裂が生じて内張りに大きな外水圧が作用したような場合においても、その外水圧に十分に耐えることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 内張り材、内部内張り材
4 筒状布帛
5 気密層
6 砂粒
7 接着剤
8 管路
9 スペーサー
12 モルタル
13 外部内張り材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状布帛(4)の内面に気密層(5)を形成し、前記筒状布帛(4)の外面に砂粒(6)を接着したことを特徴とする、管路の内張り材
【請求項2】
筒状布帛(4)の内面及び外面に、砂粒(6)を接着したことを特徴とする、管路の内張り材
【請求項3】
前記砂粒(6)の直径が、1〜10mmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の管路の内張り材
【請求項4】
内面に気密層(5)を形成した筒状布帛(4)の外面に接着剤(7)を塗布し、その外側から乾燥した砂粒(6)を振りかけて前記接着剤(7)に接着し、次いで前記接着剤(7)を硬化させることを特徴とする、管路の内張り材の製造方法
【請求項5】
筒状布帛(4)の内面及び外面に接着剤(7)を塗布し、当該筒状布帛(4)内に乾燥した砂粒(6)を注入して前記接着剤(7)に接着し、前記筒状布帛(4)の外側から乾燥した砂粒(6)を振りかけて前記接着剤(7)に接着し、次いで前記接着剤(7)を硬化させることを特徴とする、管路の内張り材の製造方法
【請求項6】
前記接着剤(7)が、エポキシ系接着剤であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の管路の内張り材の製造方法
【請求項7】
管路(8)の内面に間隔をおいてスペーサー(9)を取り付け、当該管路(8)内に、筒状布帛(4)の内面に気密層(5)を形成し、外面に砂粒(6)を接着した内張り材(1)を挿通し、当該内張り材(1)内に圧力流体を送入して前記スペーサー(9)に圧接すると共に、前記管路(8)と内張り材(1)との間にモルタル(12)を注入して前記砂粒(6)に含浸せしめ、当該モルタル(12)を硬化させることを特徴とする、管路の内張り方法
【請求項8】
管路(8)の内面に間隔をおいてスペーサー(9)を取り付け、当該管路(8)内に、筒状布帛(4)の内外面に砂粒(6)を接着した外部内張り材(13)を挿通し、当該外部内張り材(13)の内面に間隔をおいてスペーサー(9)を取り付け、前記外部内張り材(13)内に、筒状布帛(4)の内面に気密層(5)を形成し、外面に砂粒(6)を接着した内部内張り材(1)を挿通し、当該内部内張り材(1)内に圧力流体を送入して前記外部内張り材(13)に取り付けたスペーサー(9)に圧接すると共に、前記外部内張り材(13)を管路(8)内面に取り付けたスペーサー(9)に圧接し、前記管路(8)と外部内張り材(13)との間及び外部内張り材(13)と内部内張り材(1)との間にモルタル(12)を注入して前記砂粒(6)に含浸せしめ、当該モルタル(12)を硬化させることを特徴とする、管路の内張り方法
【請求項9】
前記内張り材(1)又は内部内張り材(1)内に、水を注入することを特徴とする、請求項7又は8に記載の管路の内張り方法
【請求項10】
管路(8)内に当該管路(8)内面と間隔をおいて、筒状布帛(4)の内面に気密層(5)を形成し当該筒状布帛(4)の外面に砂粒(6)を接着した内張り材(1)を挿通し、前記間隔内にモルタル(12)を充填してなることを特徴とする、内張りされた管路
【請求項11】
管路(8)内に当該管路(8)内面と間隔をおいて、筒状布帛(4)の内外面に砂粒(6)を接着した外部内張り材(13)を挿通し、当該外部内張り材(13)内に当該外部内張り材(13)内面と間隔をおいて、筒状布帛(4)の内面に気密層(5)を形成し当該筒状布帛(4)の外面に砂粒(6)を接着した内部内張り材(1)を挿通し、前記管路(8)と外部内張り材(13)との間隔及び外部内張り材(13)と内部内張り材(1)との間隔内にモルタル(12)を充填してなることを特徴とする、内張りされた管路

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−136908(P2012−136908A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291341(P2010−291341)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】