説明

管路自走車

【課題】管路の内部を移動可能な台車と、台車に搭載され管路の状態を検査するための検査用機器と、を備える管路自走車において、管路の凹凸を支障なく乗り越えやすくする。
【解決手段】台車が、車幅方向と直交する前後方向に延びる1対のシャシ部材13a,13bと、これらシャシ部材の間を車幅方向に連結するピッチング軸14と、を備え、1対のシャシ部材13a,13bがピッチング軸14を中心として揺動自在に構成される。各シャシ部材13a,13bのそれぞれに複数の車輪16a,16bおよびその駆動手段(モータ20a,20bなど)を個別に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管路の内部を移動可能な管路自走車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下水管,雨水管,送水管などの施工後の管路の状態を管路の内側から検査するため、管路の内部を移動可能な自走車が用いられる。自走車は、管路の内部を走行可能な台車と、台車に搭載される検査用機器と、を備えて構成される。特許文献1に記載の管路自走車においては、検査用機器として管路の内部を撮影するカメラ手段が備えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−164698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような自走車にあっては、管路の内部を走行中、管路の凹凸(例えば、管路に付着する堆積物)があると、台車が管路の凹凸に応じて上下するようになる。台車は、ボディ(シャシ)が一体物のため、例えば、台車の右側の車輪が管路の凸部に乗り上げると、反対側の車輪が管路から浮き上がり、台車の走行に支障を来す可能性が考えられる。
【0005】
この発明は、このような不具合を解消するためになされたものであり、管路の凹凸を支障なく乗り越えやすい、管路自走車の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、管路の内部を移動可能な台車と、台車に搭載され管路の状態を検査するための検査用機器と、を備える管路自走車において、前記台車は、車幅方向と直交する前後方向に延びる1対のシャシ部材と、これらシャシ部材の間を車幅方向に連結するピッチング軸と、を備え、前記1対のシャシ部材が前記ピッチング軸を中心として揺動自在に構成され、前記1対のシャシ部材の各々に複数の車輪を車幅方向と直交する前後方向に並べてそれぞれ回転自在な支持状態に配置すると共に、前記1対のシャシ部材の各々に複数の車輪の全部または一部を駆動輪として回転駆動する駆動手段を備えて構成されることを特徴する管路自走車である。
【発明の効果】
【0007】
この発明においては、管路の内部を走行中、管路の内部に凹凸(例えば、管路に付着する堆積物)があっても、左右のシャシ部材がそれぞれ個々にピッチング軸を中心として管路の凹凸に応じて揺動(ピッチング動作)するため、車輪が管路から浮き上がるようなことがなくなり、台車が管路の凹凸を支障なく乗り越えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施形態を説明するための、自走車の概略構成を示す平面図である。
【図2】同じく走行状態を説明する自走車の側面図である。
【図3】同じく管路の断面および自走車の正面を示す説明図である。
【図4】同じく管路の断面および自走車の正面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図に基づいて、この発明の実施形態に係る管路自走車を説明する。
【0010】
管路自走車10は、下水管,雨水管,送水管などの施工後の管路状態を管路内側から検査するために用いられるものであり、管路内部を走行可能な台車11と、台車11に搭載される検査用機器12と、を備えて構成される。
【0011】
台車11は、1対のシャシ部材13(13a,13b)と、これらシャシ部材13の間を連結するピッチング軸14と、を備えて構成される。1対のシャシ部材13a,13bは、台車11の車幅方向と直交する中心線p(台車11の前後方向と平行に延びる直線)を挟む左右両側に配置される。ピッチング軸14は、1対のシャシ部材13a,13bを揺動自在な支持状態に連結するものであり、軸の一端部が1対のシャシ部材13の片側に回転不能に支持され、軸の他端部が1対のシャシ部材13の反対側に軸受を介して回転自在に支持される。軸の中間部は、1対のシャシ部材13a,13bの間(所定の間隔に設定される)に露出され、後述する支持軸15の基端が結合される。
【0012】
1対のシャシ部材13a,13bの各々に複数の車輪16(16a,16b)が台車11の前後方向に並べて配置される。各車輪16の車軸は、各シャシ部材13にそれぞれ軸受を介して回転自在に支持される。複数の車輪16a,16bは、1対のシャシ部材13a,13bの各々に配置され、図示の場合、台車11の前後左右の四輪を構成する。左右の前輪16a,16bおよび左右の後輪16a,16bは、互いの車軸が静止時、同軸上に設定される。各車輪16は、シャシ部材13の車幅方向の外側にあって、接地面がシャシ部材13の上方へ突出しない(迫り出さない)取付状態でシャシ部材13の底部より下方に配置される。
【0013】
1対のシャシ部材13a,13bの各々に複数の車輪16a,16b(図示の場合、前後の二輪)を回転駆動する駆動手段18(18a,18b)が設けられる。駆動手段18は、駆動源となるモータ20(20a,20b)と、その回転出力を前後の二輪へ伝達する動力伝達機構(図示せず)と、を備えて構成される。モータ20として電動モータが用いられ、各シャシ部材13に後方へ突出するように組み付けられる。動力伝達機構は、例えば、モータ20a,20bの出力軸と連結するシャフト(伝動軸)と、このシャフト回転を前輪16a,16bおよび後輪16a,16bの車軸回転に変換する歯車機構と、から構成される。動力伝達機構は、シャシ部材13a,13bの内側にそれぞれ収装され、モータ20a,20bから出力される回転を適度に減速して前輪16a,16bおよび後輪16a,16bを同一の回転数をもって駆動する。各駆動手段18は、モータ20の電源および制御のための電力・信号ケーブルが備えられる。動力伝達機構は、シャフト(伝動軸)に代えてチェーンを用いて構成しても良い。
【0014】
検査用機器12として管路の内部を撮影するためのカメラ手段が用いられる。カメラ手段12aは、互いに揺動可能な1対のシャシ部材13a,13bとの干渉が避けられる位置に搭載される。図示の場合、カメラ手段12aの支持軸15が設けられる。支持軸15は、一端(基端)がピッチング軸14の中間部に結合され、他端(先端)側が1対のシャシ部材13a,13bの間を台車11の中心線pに沿って延ばされる。カメラ手段12aは、1対のシャシ部材13a,13bの間から台車11の前方へ突出する支持軸15の先端部に取り付けられる。
【0015】
1対のシャシ部材13a,13bの間(間隔)は、カメラ手段12aでなく支持軸15の幅に合わせればよく、台車11の車幅を小さく設定することができる。また、カメラ手段12aは、台車11の前方に配置され、1対のシャシ部材13の上方へ突出するのが避けられるため、台車の車高を低く抑えられる。台車11の後方に配置されるモータ20についても、各シャシ部材13の後端に組み付けられ、各シャシ部材13の上方へ突出しないため、台車11の車高が低く抑えられるのである。
【0016】
カメラ手段12aは、管路の状態を全体的に撮影する上からカメラレンズが管路の中心(中央)にあって車両の前方に正対する配置状態にあることが望ましい。図3は、管路25の径が最小の場合における、自走車10のカメラ手段12aの配置を例示するものであり、管路25の中心にあってカメラレンズが車両の前方に正対する配置に設定される。管路25の径が大きくなると、管路25を走行する自走車に対し、管路25の中心が高くなる。そのため、支持軸15上にカメラ手段12aの取付部が設定され、取付部にカメラ手段12aの位置(高さ)を調整するための機構(例えば、カメラ手段12aを上下へ平行移動させるリンク機構)が備えられる。また、カメラ手段12aの位置が高くなると、自走車10の重心位置が高くなるため、車両の安定性を確保する上から、台車11の車幅が変えられるようになっている。
【0017】
具体的には、1対のシャシ部材13(13a,13b)を連結するピッチング軸14が交換可能に構成される。管路25の径が大きくなると、ピッチング軸14が長いものと交換され、台車11の車幅が大きくなるので、車両の安定性が良好に確保される(図4、参照)。カメラ手段12aの位置調整機構については、高さの調整ばかりでなく、向きや角度の調整も行えるようにすると良い。
【0018】
カメラ手段12aは、管路25の内部を照明するためのライトや管路25の内部の音を採取するためのマイクが配置され、照明を含む駆動電源のほか、撮影映像の信号や採取音の信号を伝送する電力・信号ケーブルが備えられる。
【0019】
例えば、下水管(管路)を検査する場合、自走車10は、地上からマンホールを通して地下の管路25(下水管)へ搬入される。地上においては、電源が用意され、台車11のモータ20(20a,20b)の駆動やカメラ手段12aの作動を制御するための操作装置やカメラ手段12aの撮影映像や採取音を視聴するためのモニタなどが設備される。自走車10は、モータ20およびカメラ手段12aの電力・信号ケーブルが地上設備(電源,モニタ,操作装置)に接続され、地下の管路25へ降ろされるのである。地上設備については、車両(例えば、ワンボックスカー)に積み込み、自走車10と共に搬送可能とすると良い。
【0020】
管路25において、自走車10は、地上の電源および操作装置から供給される電力および信号に基づいてモータ20a,20bが駆動される。カメラ手段12aも地上からの電力および信号に基づいて作動する。各車輪16a,16bが同一の回転数に駆動されると、自走車は、管路を直進することになり、左右の車輪16aと16bとの間に回転数の差を与えると、台車11の進行方向が変えられるようになる。カメラ手段12aは、管路25の内部を照明しながら撮影し、採取音の信号と共にその撮影映像の信号を地上のモニタへ伝送する。
【0021】
地上においては、自走車10の運転(走行)を操作しつつ、モニタの映像や音を確認することによって、管路状態の検査が進められることになる。
【0022】
管路25の内部は、とくに下水管においては、管路25に付着する堆積物によって凹凸(図3の矢示A、参照)が生じやすく、自走車10が管路25の凹凸に妨げられ、走行に支障を来す可能性が考えられる。図示の場合、自走車10は、1対のシャシ部材13a,13bがピッチング軸14を中心として揺動自在に構成される。このため、管路25の内部を走行中、管路25の内部に凹凸があっても、1対のシャシ部材13a,13bがそれぞれ個々にピッチング軸14を中心として管路25の凹凸に応じて揺動(ピッチング動作)する(図2、参照)。この揺動に伴って車輪16(16a,16b)が浮き上がりにくくなり、管路25の凹凸を乗り越えやすくなるのである。各車輪16は、接地面がシャシ部材13の上方へ突出しない(迫り出さない)取付状態に配置されるので、各シャシ部材13a,13bの揺動に伴って管路25の天井側(上壁面側)と接触することがない。また、シャシ部材13の底部より接地面が低いため、シャシ部材13の底部が堆積物などに接触しにくい。その結果、自走車10は、管路25の凹凸を支障なく円滑に走行することができる。
【0023】
車輪16の接地面については、管路25の断面が円形と限らないので、図示の場合、車軸と平行な接地面30aと、接地面30aの両側に形成される接地面30b,30cと、の3面から構成される。両側の接地面30b,30cは、車軸に対して傾斜するテーパ面に設定される。外側(車軸方向へシャシ部材13から離れる側)のテーパ面30bは、シャシ部材13から離れるに従って外径が小さくなる傾斜面に形成され、内側(外側のテーパ面30bと反対側)のテーパ面30cは、シャシ部材13へ近づくに従って外径が小さくなる傾斜面に形成される(図3、参照)。テーパ面30a,30bが車軸に対して傾斜する角度は、管路25の径に合わせて設定されるものとする。言い換えれば、自走車10の車輪16は、管路25の径に応じて交換可能に構成されるのである。
【0024】
このようなテーパ面30b,30cを持つ車輪16により、管路25の凹凸が車輪16中央の接地面30aの内側にあっても、車輪16のテーパ面30cが凹凸に接地するようになる。このため、接地面積が増え、車輪16の回転(駆動力)が管路25の凹凸へ伝わり、シャシ部材13a,13b間の揺動と相俟って台車11が管路25の凹凸を乗り越えやすくなる、という効果が想定される。
【0025】
自走車10は、管路25に対する適用範囲を広げる上から車幅や車高を小さく収められるように構成することが要求されるばかりでなく、管路25への搬入や管路25からの搬出を行う際の取り扱いが容易となるように台車などの軽量化も要求される。
【0026】
車幅や車高については、既述のように構成することにより、最小限に収められるようになる。また、ピッチング軸14が交換可能のため、管路25の径が大きくなっても、車両の安定性を確保することができる。台車11の重量についても、車幅や車高が小さく収められるため、軽量化が図れる。
【0027】
1対のシャシ部材を連結するピッチング軸の配置については、例えば、片側のシャシ部材13aにピッチング軸が回転不能な支持状態にある場合、シャシ部材13aの前方に配置されるカメラ手段12aと、シャシ部材13(例えば、13a)の後方に配置されるモータ20aと、によって重量バランスが確保されるようになる。従って、ピッチング軸14は、これらの重量バランスから決まるシャシ部材13aの重心位置に合わせて配置される。反対側のシャシ部材13b)については、ピッチング軸14が回転自在な支持状態のため、シャシ部材13bの前後の重量バランスを確保する上から、例えば、シャシ部材13bの前側にカウンタウエイトが配置されることになる。
【0028】
管路25は、図示の場合、断面円形であるが、自走車10は、これに適用が制限されるものでなく、断面矩形の管路25に適用することもできる。また、検査用機器12については、カメラ手段12a以外に諸種のものが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明に係る管路自走車は、下水管に限らず、各種の管路に対し、管路状態を検査するために広く適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10 自走車
11 台車
12 検査用機器
12a カメラ手段
13(13a,13b) シャシ部材
14 ピッチング軸
15 支持軸
16(16a,16b) 車輪
18(18a,18b) 駆動手段
20(20a,20b) 電動モータ
25 管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路の内部を移動可能な台車と、台車に搭載され管路の状態を検査するための検査用機器と、を備える管路自走車において、
前記台車は、車幅方向と直交する前後方向に延びる1対のシャシ部材と、これらシャシ部材の間を車幅方向に連結するピッチング軸と、を備え、前記1対のシャシ部材が前記ピッチング軸を中心として揺動自在に構成され、
前記1対のシャシ部材の各々に複数の車輪を車幅方向と直交する前後方向に並べてそれぞれ回転自在な支持状態に配置すると共に、前記1対のシャシ部材の各々に複数の車輪の全部または一部を駆動輪として回転駆動する駆動手段を備えて構成されることを特徴する管路自走車。
【請求項2】
前記1対のシャシ部材の各々に配置される駆動手段は、駆動源となるモータと、その回転出力を駆動輪へ伝達する機構と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の管路自走車。
【請求項3】
前記検査用機器は、管路の状態を撮影するためのカメラ手段であることを特徴とする請求項1に記載の管路自走車。
【請求項4】
前記ピッチング軸は、軸の一端が前記1対のシャシ部材の片側に回転不能に支持され、軸の他端は前記1対のシャシ部材の反対側に回転自在に支持される一方、前記ピッチング軸に支持軸の基端が結合され、前記支持軸の先端側に前記カメラ手段の取付部が設けられることを特徴とする請求項3に記載の管路自走車。
【請求項5】
前記取付部は、前記カメラ手段の位置を調整するための機構が備えられることを特徴とする請求項4に記載の管路自走車。
【請求項6】
前記ピッチング軸は、前記1対のシャシ部材に対して取り外し可能に構成されることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1つに記載の管路自走車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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