説明

節水器具

【課題】吐水量の調節を容易に行う。
【解決手段】一端が給水口3への取付開口部となり、他端が水流を吐水する吐水側開口部13となるケーシング11と、ケーシング11内において、給水口3より給水される水流を絞る第一の孔部24が形成された絞り部材21と、一方の面を吐水側開口部13に臨む吐水面31aとし、吐水面31aと反対側に第一の孔部24と繋がる第二の孔部33が形成されると共に、第二の孔部33からの水流を吐水面31aより吐出する複数の吐水孔36が形成されたノズル部材31とを備え、第一の孔部24又は第二の孔部33の何れか一方が他方に対して回転することで、第一の孔部24と第二の孔部33とのずれ量が変わり水量を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛇口等の給水口に取り付けられ、吐水量を自在に調節することができる節水器具に関する。
【背景技術】
【0002】
本件出願人は、先に、下記特許文献1記載の節水器具を提案している。この節水器具では、ケーシング内に、減圧コマと節水コマと順に配設し、減圧コマで蛇口からの流水の圧力を減圧し、減圧コマと節水コマとの間の空間部で水を滞留させてから節水コマの吐水孔より水を吐出するようにしている。減圧コマは、蛇口からの流水を絞る絞り部材としても機能するものであり、吐水孔へ供給する水量を決定するものとなる。
【0003】
また、特許文献1の節水器具では、水圧を調節することで節水を行うようにし、水圧が低減されることで、吐出孔から吐出される水流が飛散し、周囲が汚損することを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/044703号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蛇口での水圧は、その建物の給水設備、階数等によってバラツキがあり、同じではない。また、厨房設備の蛇口であるのか、洗面所の蛇口であるのか、等の用途によっても、求められる水量や水圧は異なる。更に、蛇口からの水量や水圧の好みは、使用者によっても異なる。
【0006】
上述した特許文献1に記載の一形態の節水器具では、このような要求に応えるため、様々な種類の減圧コマを予め用意しておき、予め用意した減圧コマの中から所望の減圧コマを選択する必要がある。施工場所に応じて減圧コマを選択する作業は、熟練を要する作業であり、減圧コマの交換作業は、節水器具の分解組立を改めて行う必要があり、面倒な作業となる。一般に、節水器具の取付作業は、施設稼働中となるため、なるべく短期間に行う必要がある。
【0007】
また、吐出孔より吐出される水が飛散することを防止するには、水圧の他、吐出方向の制御も水圧や水量との関係で重要である。例えば、洗面化粧台の洗面器に対して吐水されるとき、水圧が高く水量が多すぎると、水滴が洗面器の外にまで飛散してしまうおそれがある。特に、洗面器の上の方に向かって吐水されたときには、水滴が洗面器の外にまで飛散し易い。
【0008】
本発明は、吐水量の調節を容易に行うことができる節水器具を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、吐水量を制限しつつ、水の吐出方向を容易に調節することができる節水器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明に係る節水器具は、給水口に取り付け得る取付開口部と、吐水側として開口した吐水側開口部と、を有してなる略筒状のケーシングと、上記ケーシング内において、上記給水口より給水される水流を絞る第一の孔部が形成された絞り部材と、上記吐水側開口部に臨む吐水面を有し、該吐水面と反対側に上記第一の孔部と繋がる第二の孔部が穿孔されると共に、該第二の孔部からの水流を該吐水面より吐出する複数の吐水孔が貫穿されたノズル部材とを備える。
【0011】
上記第一の孔部と上記第二の孔部とを互いに相対回転させることによって上記第一の孔部と上記第二の孔部とのずれ量が変わり、吐水量を調節する。
【0012】
また、上記第一の孔部と上記第二の孔部とは、重なって連通させ得るように構成されていると良い。
【0013】
更に、上記吐水孔は、上記吐水面の周囲に貫穿されていると良い。
【0014】
更に、上記絞り部材と上記ノズル部材との間には、上記第二の孔部からの水流が上記吐水孔に至るまでの間に水流が衝合して減圧する空間部が形成されていると良い。
【0015】
更に、上記絞り部材、上記ノズル部材の何れか一方には、突起が形成され、他方には、上記突起が選択的に係合される凹部が複数形成され、上記絞り部材と上記ノズル部材とが相対回転することで、上記突起が上記凹部に選択的に係合し、上記第一の孔部と上記第二の孔部とのずれ量の設定状態を一定に保持するようにしても良い。
【0016】
また、上記第二の孔部は、上記ノズル部材に対して回転可能に取り付けられる水量調節体に形成するようにしても良い。
【0017】
更に、上記ノズル部材は、上記複数の吐水孔によって形成された環状の吐水孔列が形成されており、上記絞り部材は、上記複数の吐水孔の内の何れかの吐水孔を選択的に閉塞する閉塞突起を有し、上記ノズル部材は、上記絞り部材に対して回転可能であり、上記ノズル部材は、回転することによって、すべての吐水孔を開放する準節水位置と上記吐水孔の何れかを上記閉塞突起で閉塞する節水位置とに切り替わるようにしても良い。
【0018】
好ましくは、上記ノズル部材は、上記環状の吐水孔列が同心円をなすように複数形成され、回転することによって、上記何れかの環状の吐水孔列が上記絞り部材の閉塞突起によって閉塞され節水位置となるようにする。
【0019】
更に、上記ケーシング内に配設されるパッキンを備え、上記絞り部材と上記ノズル部材との組立体は、該組立体の外表面が球体の最大直径部分を含む略半球面状をなし、上記パッキンの上記組立体の略半球面状の外表面と接する面が、上記組立体の略半球面状の外表面に対応する略球面状の座面をなし、上記吐水側開口部の上記組立体と当接する内周部が、上記組立体の最大外径より小さい内径部を有し、上記組立体は、上記吐水面が上記吐水側開口部より外部に臨むように上記パッキンの上記略球面状の座面に対して摺動可能に配設され、上記吐水面の角度を可変とするようにしても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第一の孔部と上記第二の孔部とが互いに相対回転することで、第一の孔部と第二の孔部とのずれ量が変わり、吐水量を調節することができるように構成している。したがって、吐水量の調節を容易に行うことができる。すなわち、節水器具を取り付ける場所や用途に応じて吐水量調節を容易に行うことができる。
【0021】
また、絞り部材とノズル部材とが相対回転することで、一方に設けられた突起が他方に設けられた複数の凹部に対して選択的に係合し、第一の孔部と第二の孔部とのずれ量の設定状態を一定に保持することができ、吐水量の切り替え作業を容易に行うことができる。
【0022】
更に、複数の吐水孔によって形成された環状の吐水孔列が形成され、何れかの吐水孔を閉塞突起で選択的に閉塞することで、吐水量調節を容易に行うことができる。
【0023】
更に、絞り部材と上記ノズル部材との組立体の外表面を略半球面状とし、パッキンの組立体の略半球面状の外表面と接する面を、組立体の略半球面状の外表面に対応する略球面状の座面とすることで、吐水方向を容易に変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明が適用された節水器具の分解断面図である。
【図2】本発明が適用された節水器具の断面図である。
【図3】絞り部材を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は断面図、(D)は底面図である。
【図4】ノズル部材を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は断面図、(D)は底面図である。
【図5】絞り部材とノズル部材とを組み合わせ、絞り部材を断面で示した側面図である。
【図6】絞り部材の第一の孔部とノズル部材の第二の孔部との重なり度合いを示す平面図であり、(A)はやや開いた状態を示し、(B)は更に閉じた状態を示し、(C)は最も閉じた状態を示したものであり、(D)は再び開口量が増して(B)と同等の開き状態を示したものである。
【図7】本発明の変形例である節水器具の分解断面図である。
【図8】上記変形例となる節水器具の外周吐水孔列の吐水孔と内周吐水孔列の吐水孔がある位置の断面図である。
【図9】上記変形例となる節水器具の外周吐水孔列の吐水孔のみがある位置の断面図である。
【図10】ケーシングを示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
【図11】絞り部材を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
【図12】ノズル部材を示す図であり、(A)は平面図、(B)は外周吐水孔列の吐水孔と内周吐水孔列の吐水孔がある位置のA−A’断面図、(C)は外周吐水孔列の吐水孔のみがある位置のB−B’断面図、(D)は底面図である。
【図13】閉塞突起と係合凹部の関係を示す内周吐水孔列に沿った断面図であり、(A)は閉塞突起が吐水孔を閉塞した状態を示し、(B)は吐水孔を開放した状態を示す。
【図14】水量調節体を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は側面図である。
【図15】絞り部材の第一の孔部と水量調節体の第二の孔部との重なり度合いを示す平面図であり、(A)はやや開いた状態を示し、(B)は更に閉じた状態を示し、(C)は最も閉じた状態を示したものであり、(D)は再び開口量が増して(B)と同等の開き状態を示したものである。
【図16】パッキンを示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は底面図である。
【図17】本発明が適用された節水器具が外周吐水孔列からのみ吐水する状態を示す断面図であり、(A)は真下に吐水する状態、(B)は図中左側に向けて吐水する状態、(C)は図中右側に向けて吐水する状態を示す。
【図18】本発明が適用された節水器具が外周及び内周の吐水孔列から吐水する状態を示す断面図であり、(A)は真下に吐水する状態、(B)は図中左側に向けて吐水する状態、(C)は図中右側に向けて吐水する状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明が適用された節水器具について図面を参照して説明する。
【0026】
[全体構成]
図1及び図2に示すように、本発明が適用された節水器具1は、水道の蛇口2に取り付けられるケーシング11と、蛇口2より給水される水量を絞る絞り部材21と、水を吐出するノズル部材31とを備えている。
【0027】
[ケーシングの説明]
ケーシング11は、図1及び図2に示すように、筒状に形成され、一端が、蛇口2等の給水口3に取り付けられる取付開口部12となっており、他端が、水流を吐出する側の開口である吐水側開口部13となっている。取付開口部12の内周面には、ねじ溝12aが形成されており、蛇口2のねじ部に締め付けることによって、ケーシング11が蛇口2等に取り付くようになっている。勿論、ねじ溝12aの形成部位は、取付開口部12の内周面に限らず、例えば外周面であっても良く、また給水口3に対してケーシング11を取り付ける手段はねじ溝に限定されるものでもない。
【0028】
このケーシング11内の空間部には、上述した絞り部材21とノズル部材31とが内蔵されることになる。ねじ溝12aの下側には、パッキン14aを取り付けるための取付凹部14が形成されている。パッキン14aは、蛇口2とケーシング11との間の水漏れを防止するためのものであり、例えばリング状のゴムパッキンにより形成されているが、本発明においてパッキンは必須の部材ではなく、例えば、絞り部材21を水密性が確保されるように構成することによってパッキン同等の効果を発現させるようにしても良い。パッキン14aは、取付凹部14に取り付けられ、ねじ溝12aが蛇口2のねじ部に締め付けられると、蛇口2に圧接され、蛇口2とケーシング11との間の水密性を確保して水漏れを防止する。
【0029】
また、ケーシング11の吐水側開口部13側の内周面には、ノズル部材31を取り付ける取付段部15が形成される。取付段部15には、ノズル部材31が係合され、吐水側開口部13からの脱落を防止する。ケーシング11内には、このノズル部材31の上に、絞り部材21が配設されることになる。
【0030】
[絞り部材の説明]
絞り部材21は、図1−図3に示すように、略円柱状に形成され、上下に、フランジ部22,23が形成されている。絞り部材21は、上側のフランジ22が設けられた上面略中央部に、通水孔となる第一の孔部24が厚さ方向に貫通して形成されている。第一の孔部24は、ここでは四つ等間隔に四角形の頂部位置の配位で設けられ、水流が安定となるように形成されている。なお、第一の孔部24は、この例に特に限定されるものではなく、例えば各孔部の水流が安定になるように構成されていれば、数や形状や大きさは特に限定されるものではない。複数の第一の孔部24は、蛇口2の給水口3から供給される水の流量を制限するようにしている。
【0031】
第一の孔部24は、厚さ方向の全部に亘って形成されるのではなく、取付開口部12側に寄って形成されており、絞り部材21には、複数の第一の孔部24に連続して、下流側のフランジ部23の中央部を開口した略円筒状の接続凹部25が形成されている。接続凹部25には、ノズル部材31の円筒部32が嵌合されることになる。
【0032】
複数の第一の孔部24の周囲には、有底の環状凹部26が形成されている。本発明において、この環状凹部26は必ずしも必要なものではないが、樹脂成形を用いて絞り部材21を形成する場合には、省材料化を図り得る上、成形による寸法安定性の悪化を抑制することが可能となる。
【0033】
他方のフランジ部23には、外周部に、下方に突出するスペーサ突部27が環状に形成されている。スペーサ突部27は、絞り部材21の下側に配置されるノズル部材31の位置決めをすると共に、絞り部材21とノズル部材31との間に減圧するための空間部28を形成しつつ、絞り部材21とノズル部材31との接合部周辺の水密性を確保し、ノズル部材21とケーシング11との接触部周辺からの漏水を防止するように構成される。
【0034】
また、スペーサ突部27の先端面には、突起29が形成されている。突起29は、後述するノズル部材31に形成された複数の凹部に選択的に係合し、絞り部材21に対するノズル部材31の回転位置を視認しながら段階的に調節できるようにしている。
【0035】
[ノズル部材の説明]
ノズル部材31は、図1、図2及び図4に示すように、略円柱状をなし、上面の中央部に円筒部32が形成されている。勿論、ノズル部材の上面中央部に形成される円筒部32は、必ずしも円筒状である必要はなく、例えば多角筒状をなすものとすることもでき、第一の孔部と第二の孔部と当接部周辺にある程度の水密性が得られるものであれば特に限定されるものではない。円筒部32には、絞り部材21の複数の第一の孔部24に対応した第二の孔部33が複数形成されている。各第二の孔部33は、円筒部32の先端面に、第一の孔部24に繋がる入口33aが形成され、側面に出口33bが形成され、流路が略L字をなすように形成されている。
【0036】
なお、第二の孔部33は、この例に特に限定されるものではなく、例えば各孔部の水流が安定になるように構成されていれば、数や形状や大きさは特に限定されるものではない。
【0037】
円筒部32は、絞り部材21の下流側に形成された接続凹部25に嵌合される。これにより、絞り部材21の第一の孔部24とノズル部材31の第二の孔部33とは、水流方向に重なり、繋がることになる。したがって、第一及び第二の孔部24,33を通った水は、出口33bよりノズル部材31の上面に流出する。
【0038】
ノズル部材31の上面には、外周部に、係合段部34が形成されている。係合段部34は、絞り部材21の下面に環状に形成されたスペーサ突部27に係合される。これにより、ノズル部材31は、絞り部材21の下流側に空間部28を作出した状態で位置決めされ、取り付けられる。また、係合段部34は、絞り部材21のスペーサ突部27が係合されることで、絞り部材21とノズル部材31との間の水密性を確保すると共に、絞り部材21に対してノズル部材31を、絞り部材21の接続凹部25に嵌合された円筒部32を中心に回転する際のガイド部として機能する。
【0039】
また、円筒部32の外形を多角筒状とし、これに対応して絞り部材31の接続凹部25の内形を多角柱状に形成した場合には、絞り部材21とノズル部材31との相対回転の調整の都度、互いを離間させて抜き出さなければならないが、離脱させない限り互いの位置ずれが生じることもなくなるという効果が得られる。したがって、この場合、外部からの意図しない作用などによって吐水量が変わってしまうおそれがない。
【0040】
係合段部34が形成されている部分は、フランジ部35となっており、このフランジ部35は、ケーシング11の取付段部15によって、下側から支持される。
【0041】
ノズル部材31には、上流面から吐水面31aとなる下流面に亘って複数の吐水孔36が形成されている。吐水孔36は、係合段部34の内側に形成され、第二の孔部33の出口33bとは離れた位置に形成されている。この吐水孔36は、ノズル部材31の外周側に環状に一列形成されているが、列の数は、二列、三列等複数列であっても良い。
【0042】
ノズル部材31の下流面、すなわちケーシング11の吐水側開口部13より外部に臨む吐水面31aは、平坦に形成しても良いが、ここでは、中心が最も窪んだ断面がサイクロイド曲線を描くような曲面といった凹部で形成されている。吐水面31aをサイクロイド曲線を描くような曲面で形成したときには、吐水孔36より吐水される水流がやや広がり、ケーシング11の吐水側開口部13より吐水される水流全体を太く見せることができる。
【0043】
また、ノズル部材31のフランジ部35には、凹部37が複数、ここでは四つ形成されている。凹部37は、フランジ部35の上流面と側面を開口して形成され、上流面からの深さが異なるように形成されている。具体的に、一端側の凹部37aが最も浅く形成され、凹部37b、凹部37cと順に深くなり、凹部37dが最も深く形成されている。これら凹部37a−37dには、絞り部材21のスペーサ突部27の先端面の突起29が選択的に係合される。突起29は、隣接する凹部37に移動するとき、凹部37間を乗り上げる際にクリック感を発生させ、使用者に、何段階ノズル部材31を回転させたのかを認識できるようにする。また、ケーシング11の周回方向に、突起29と凹部37とを外部に臨ませるように、開口部を設けることで、使用者がどの凹部に突起29が係合しているかを目視により確認できるようにすることができる。
【0044】
なお、絞り部材21とノズル部材31とは、相対的に何れかが回転すれば良く、絞り部材21が回転するようにしても良い。
【0045】
[節水器具の組立]
以上のように構成された節水器具1は、次のように組み立てられる。先ず、図5に示すように、絞り部材21とノズル部材31とは、絞り部材21の接続凹部25に、ノズル部材31の円筒部32を嵌合し、絞り部材21のスペーサ突部27を、ノズル部材31の係合段部34に係合させることによって組み合わされる。この際、絞り部材21の突起29を何れかの凹部37に係合させる。
【0046】
この後、絞り部材21が組み合わされたノズル部材31は、ケーシング11内の取付段部15に、フランジ部35を係合させて、ケーシング11内において、下側から支持されるようにして取り付けられる。
【0047】
次いで、ケーシング11には、取付開口部12側の取付凹部14にリング状のパッキン14aが係合される。ここでは、パッキン14aは絞り部材21とは別体に設けられているが絞り部材21と一体的に設けても良い。この後、ケーシング11は、蛇口2にねじ止めされる。パッキン14aは、蛇口2が圧接されることで、蛇口2とケーシング11との間の水密性を確保して水漏れを防止する。
【0048】
[節水器具の動作]
以上のような節水器具1は、蛇口2の給水口3から水が供給されると、水が絞り部材21の第一の孔部24とノズル部材31の第二の孔部33を通って絞り部材21とノズル部材31との間の空間部28に供給される。空間部28には、第一及び第二の孔部24,33で水量が絞られて供給されることになる。そして、水流は、第二の孔部33で水流の方向が曲げられ、また、空間部28で、第二の孔部33の出口33bから流出する水流が互いに衝合することで、水圧が減圧される。この後、減圧された水は、ノズル部材31の吐水孔36から吐水される。
【0049】
・水量調節
水量調節は、ノズル部材31を絞り部材21に対して回転させることにより行われる。具体的に、絞り部材21の第一の孔部24と第二の孔部33の入口33aとが最も重なっているときは、最も絞りが開いた状態であり、水量も最も大きくなる。そして、図6(A)、図6(B)に示すように、第一の孔部24と第二の孔部33の入口33aとの重なり度合いが小さくなると、その分、流路が小さくなり、水量が絞られることになる。図6(C)は、第一の孔部24と第二の孔部33の入口33aとが最もずれ、最も水量が絞られた状態となる。更に、ノズル部材31を絞り部材21に対して相対回転させると図6(D)に示すように再び開口量が大きくなり、図6(B)と同等程度の開口量となり、回転に合わせて順次開口量が段階的に変化するようになっている。
【0050】
図6に示すような開口量の段階的な切り替えは、ノズル部材31を回転させることによって行われるものであり、絞りが最も開いた状態では、絞り部材21の突起29がノズル部材31の最も浅い凹部37aに係合される。絞りが順に閉じるに連れ、突起29は、順に、凹部37b,37cに係合され、図6(C)に示すように、絞りが最も閉じたとき、最も深い凹部37dに係合される。このように、水量調節後の設定状態は、突部29が選択的に37a−37dの何れかに係合することで保持されることになる。
【0051】
このノズル部材31の回転操作の方法は特に限定されるものではなく、節水器具1が分解された状態において、絞り部材21に対してノズル部材31を回転させても良い他、分解するまでもなく、組立後の状態において、指や治具を使って、ケーシング11の吐水側開口部13より臨むノズル部材31を回転させても良い。更に、ノズル部材31に、ケーシング11より外部に臨む操作突起を設けて、この操作突起を用いてノズル部材31を回転させても良い。
【0052】
[節水器具の効果]
以上のような節水器具1によれば、ノズル部材31と絞り部材21とを相対回転させることよって、第一の孔部24と第二の孔部33の入口33aの重なり度合いを容易に調節することができる。すなわち、水量の絞り調整をノズル部材31を回転させるだけで行うことができる。このように、節水器具1は、節水器具1を取り付ける場所や用途に応じて適宜吐水量調節を容易に行うことができる。また、吐水量調節を容易に行うことができるので、従来のように、吐水量を調節するための減圧コマ等を多数用意しておく必要がなくなる。また、絞り部材21の突起29をノズル部材31の凹部37に選択的に係合させることで、絞りの調整作業を段階的乃至連続的に行うことができ、水量の調節作業を容易に行うことができる。
【0053】
なお、絞りの調節を段階的に行わない場合には、突起29と凹部37を設けないようにすればよい。特に、円筒部32の外形を多角筒状とし、これに対応して絞り部材31の接続凹部25の内形を多角柱状に形成した場合には、位置ずれが発生しにくいため、突起29と凹部37を設けないようにしても良い。また、複数の凹部37の間隔は、一定でなくても良い。
【0054】
[節水器具の変形例]
以下、本発明の変形例となる節水器具について図面を参照して説明する。
【0055】
[全体構成]
図7−図9に示すように、本発明が適用された節水器具101は、水道の蛇口102の給水口103に取り付けられるケーシング111と、蛇口102の給水口103より給水される吐水量を絞る絞り部材121と、水を吐出するノズル部材131と、ケーシング111内に配設されて蛇口102とケーシング111との間の水漏れを防止する水密用のパッキン151とを備えている。
【0056】
[ケーシングの説明]
ケーシング111は、図7−図10に示すように、筒状に形成され、一端が、蛇口102等の給水口103に取り付けられる取付開口部112となっており、他端が、水を吐出する側として構成される吐水側開口部113となっている。取付開口部112の内周面には、ねじ溝112aが形成されており、蛇口102のねじ部に締め付けることによって、ケーシング111が蛇口102等に取り付くようになっている。勿論、ねじ溝112aの形成部位は、取付開口部112の内周面に限らず、例えば外周面であっても良く、また、給水口103に対してケーシング111を取り付ける手段は、ねじ溝に限定されるものでもない。
【0057】
このケーシング111内の空間部には、上述した絞り部材121とノズル部材131とパッキン151とが内蔵されることになる。吐水側開口部113の近傍には、段部114が形成され、パッキン151の吐水側開口部113側に位置する先端部が係合する。パッキン151は、吐水側開口部113側に位置する先端部が段部114に係合することによって、ケーシング111内に位置決めされた状態で取り付けられる。
【0058】
吐水側開口部113は、後述する絞り部材121とノズル部材131の組立体154を支持する球面支持部113aを有し、更に、先端側に向かって拡径する吐水口113bが形成されている。球面支持部113aは、後述するパッキン151の拡径部153の曲面と同じ曲率の曲面となっており、組立体154をノズル部材131の吐水面131a近傍で支持し、組立体154が吐水側開口部113より脱落しないようにする。すなわち、この球面支持部113aは、組立体154の最大直径より小さい直径部を有しており、外方に向かって凸状の球面状座面に構成される。また、吐水口113bは、外方に向かって拡径した形状に形成されることで、吐水面131aを傾斜させた際にもノズル部材131の吐水面131aより吐水される水流が吐水側開口部113の周縁に触れないようにしている。
【0059】
[絞り部材の説明]
絞り部材121は、図7−図9及び図11に示すように、略椀形をなし、外側の湾曲面の頂部に、突出部122が形成されている。この突出部122には、中央部に、厚さ方向に貫通した通水孔123が形成されている。この通水孔123は、下流側に向かって凸状に形成された略円錐状の発条底部123aを有し、この発条底部123aには、上流側から下流側に向かって貫通した複数の第一の孔部124が穿孔されている。複数の第一の孔部124は、同じ大きさの孔で等間隔に穿孔され、ここでは四つ等間隔に四角形の頂部位置の配位で設けられている。
【0060】
なお、第一の孔部124は、この例に特に限定されるものではなく、例えば各孔部の水量が均等になるように構成されていれば、数や形状や大きさは特に限定されるものではない。通水孔123は、複数の第一の孔部124によって構成することで、蛇口102の給水口103から供給される水の流量を調節可能に制限するようにしている。
【0061】
また、外側の湾曲面の反対側の底面には、通水孔123の周囲に複数の閉塞突起125が複数形成され、後述のノズル部材131からの水の吐出量を制御するための閉塞手段とされる。閉塞突起125は、通水孔123を中心にして、環状に等間隔に形成されている。閉塞突起125は、次に説明するノズル部材131の吐水孔132を選択的に閉塞する。
【0062】
更に、底面には、湾曲面に連続する環状のガイド片126が形成されている。ガイド片126の先端部には、内側に突出してガイド突起126aが複数形成されている。ガイド突起126aは、次に説明するノズル部材131のガイド溝133に係合することによって、絞り部材121に対してノズル部材131が回転し得るようにする。
【0063】
[ノズル部材の説明]
ノズル部材131は、図7−図9及び図12に示すように、略円柱状をなし、外周面が絞り部材121の湾曲面と同じ曲率で湾曲するように形成されている。このノズル部材131には、厚さ方向に貫通した多数の吐水孔132が形成されている。吐水孔132は、例えば直径が1mm弱の大きさとなっている。そして、ノズル部材131の底面が吐水面131aとなっており、平坦に形成されている。具体的に、ノズル部材131には、複数の吐水孔132で構成される環状の外周吐水孔列132aと内周吐水孔列132bとが同心円状に形成されている。外周吐水孔列132aは、常時吐水される部分となり、内周吐水孔列132bは、絞り部材121の閉塞突起125によって選択的に閉塞される。
【0064】
なお、内周吐水孔列132bを構成する吐水孔132の孔径と外周吐水孔列132aを構成する吐水孔132の孔径は、同じであっても良く、また、内周吐水孔列132bを構成する吐出孔132の方が大きくても良く、更に、内周吐水孔列132bを構成する吐水孔132の方が小さくても良い。
【0065】
また、吐水面131aは、平坦面の他、中心が最も窪んだ断面がサイクロイド曲線を描くような曲面といった凹部で形成しても良い。吐水面131aをサイクロイド曲線を描くような曲面で形成したときには、吐水孔132より吐水される水流がやや広がり、ケーシング111の吐水側開口部113より吐水される水流全体を太く見せることができる。
【0066】
具体的に、内周吐水孔列132bでは、図13に示すように、内周吐水孔列132bを構成する各吐水孔132の入口に、閉塞突起125が係合する第一の係合凹部135が形成されている。また、隣接する吐水孔132同士の間には、閉塞突起125が係合する第二の係合凹部136が形成されている。図13(A)に示すように、閉塞突起125が吐水孔132と連続した第一の係合凹部135に係合しているときには、吐水孔132は閉塞され、内周吐水孔列132bからは吐水されない状態となる(節水位置)。一方、図13(B)に示すように、閉塞突起125が吐水孔132,132の間の第二の係合凹部136に係合しているときには、吐水孔132は開放され、内周吐水孔列132bからも吐水される状態となる(準節水位置)。
【0067】
ノズル部材131の外周上端部には、絞り部材121のガイド突起126aが係合するガイド溝133が形成されている。ガイド溝133には、ガイド突起126aが係合することで、絞り部材121に対してノズル部材131が回転するようになる。そして、絞り部材121に対してノズル部材131が回転することで、図13(A)に示す、内周吐水孔列132bから吐水されない状態と図13(B)に示す内周吐水孔列132bからも吐水される状態とが切り替えられることになる。
【0068】
なお、内周吐水孔列132bにおいて、隣接する吐水孔132同士の間に設ける第一の係合凹部135の数は、1つでも、複数であっても良い。また、閉塞突起125の数や間隔は、内周吐水孔列132bから吐出する吐水量の切換を何段階行うかによって決められるもので、本発明では特に限定されるものではない。また、同心円状に設けられる環状の吐水孔列は、2つに限定されるものではなく、1つでも、3つ以上であっても良い。吐出孔列が1つの場合は、選択的に幾つかの吐水孔が閉塞突起に閉塞される構成となる。また、吐水孔列を3つ以上設けた場合には、すべて又は幾つかの吐水孔列の吐水孔が、閉塞突起によって選択的に閉塞されるようにすれば良い。
【0069】
ノズル部材131の中央部には、絞り部材121の通水孔123の開口量を調節する水量調節手段としての水量調節体141が取り付けられる取付孔134が形成されている。この取付孔134は、厚さ方向に貫通した貫通孔であり、円筒部134aが形成されていると共に、ノズル部材131の上面側に拡径部134bが形成されている。円筒部134aと拡径部134bとの境界部には、縦方向の凹凸溝134cが周回方向に形成されており、水量調節体141の回転の滑り止めとなっている。
【0070】
[水量調節体の説明]
水量調節体141は、図7−図9及び図14に示すように、流路が形成される流路形成部142とノズル部材131の取付孔134に挿嵌される嵌合部143とを有し、流路形成部142が嵌合部143に対して拡径する形状となっている。流路形成部142には、絞り部材121の通水孔123にある第一の孔部124に対応する第二の孔部144が複数形成されている。複数の第二の孔部144は、第一の孔部124の数に対応しており、同じ大きさの孔が等間隔に、ここでは四つ等間隔に四角形の頂部位置の配位で設けられている。第二の孔部144のそれぞれは、上面と側面を開口する略L字状の流路によって形成され、上面に、入口144aが形成され、側面に、出口144bが形成されている。第二の孔部144は、この例に特に限定されるものではなく、例えば各孔部の水流が安定になるように構成されていれば、数や形状や大きさは特に限定されるものではない。
【0071】
絞り部材121の第一の孔部124と水量調節体141の第二の孔部144の入口144aとが最も重なっているときは、最も絞りが開いた状態であり、吐水量も最も大きくなる。そして、図15(A)、図15(B)に示すように、第一の孔部124と第二の孔部144の入口144aとの重なり度合いが小さくなると、その分、流路が狭くなり、吐水量が絞られることになる。図15(C)は、第一の孔部124と第二の孔部144の入口144aとが最もずれ、最も吐水量が絞られた状態となる。更に水量調節体141を絞り部材121に対して相対回転させると図15(D)に示すように再び開口量が大きくなり図15(B)と同等程度の開口量となり、回転に合わせて順次開口量が段階的に変化するように構成される。
【0072】
流路形成部142の入口144aが形成された上面は、中央部が最も低くなるように形成されており、水量調節体141の回転中心軸がズレたり振れたりしないように位置決めすると共に、絞り部材121の発条底部123aによる外方に向かう付勢力によって水量調節体141を常時付勢し、流路形成部142とノズル部材131の中央に穿設される取付孔134における拡径部134bとの接触面の水密性を高めつつ、水量調節体141の意図しない回転を防止するように構成される。
【0073】
なお、第一及び第二の孔部124,144の数は、特に限定されるものではない。また、第一及び第二の孔部124,144は、二つ以上に分岐する流路を形成するように設けることが良く、更に好ましくは、上述のように四方向に等間隔に四角形の頂部位置の配位で設けるのが良い。また、第一及び第二の孔部124,144の形状は、円形に限定されるものではなく、菱形等の四角形やその他の多角形であっても良い。すなわち、第二の孔部144は、例えば各孔部の水流が安定になるように構成されていれば、数や形状や大きさは特に限定されるものではない。
【0074】
以上のような流路形成部142は、ノズル部材131の中央にある取付孔134における拡径部134bに嵌合され、これらの当接面の水密性が得られるように構成されることになる。流路形成部142に一体の嵌合部143は、ノズル部材131の中央にある取付孔134の円筒部134aに嵌合される。嵌合部143は、その長さが取付孔134の吐水面131aよりやや突出する長さに形成され、その先端面が手触りを良くするため円弧状面となっている。なお、先端面には、水量調節体141を回転するための「+」や「−」のスクリュドライバの溝等を設けるようにしても良い。
【0075】
また、嵌合部143と流路形成部142との境界部分には、ノズル部材131の取付孔134の内周面に形成された凹凸溝134cに係合する凹凸部145が形成されている。凹凸部145は、凹凸溝134cと係合することで、水量調節体141の回転の滑り止めとなる。
【0076】
水量調節体141は、嵌合部143を、ノズル部材131の取付孔134の円筒部134aに嵌合し、流路形成部142を、拡径部134bに圧接させることによって、ノズル部材131の取付孔134に取り付けられる。すると、流路形成部142の上面とノズル部材131の第一の孔部124が形成された底面との間には、閉塞突起125が第一の係合凹部135又は第二の係合凹部136に突き当たることで空間部146が形成される。空間部146では、水量調節体141の第二の孔部144の出口144bから流出する水流が互いに衝合することで水圧を減圧する。水量調節体141は、取付孔134に取り付けられたとき、嵌合部143の先端部がノズル部材131の吐水面131aより突出する。
【0077】
図8及び図9に示すように、流量を調節するには、吐水面131aより突出した嵌合部143の先端部を押圧し持ち上げることで凹凸溝134cと凹凸部145とが係合した状態を解除し、この解除した状態で、水量調節体141を回転することとなる。
【0078】
[パッキンの説明]
パッキン151は、例えばゴムパッキンであり、図7−図9及び図16に示すように、円筒部152と拡径部153とが中心軸線を一致させて一体に形成されている。拡径部153の湾曲面は、絞り部材121の外側の湾曲面の曲率及びノズル部材131の外周面の曲率に対応した球面状座面となっている。拡径部153の先端部は、ケーシング111に挿入された際、ケーシング111の吐水側開口部113の近傍に形成された段部114に係合する。また、円筒部152の先端部の外周面には、係合段部156が形成されている。この係合段部156は、例えば蛇口102の先端が係合される。かくして、パッキン151は、吐水側開口部113側に位置する先端部が段部114に係合し、係合段部156に蛇口102が係合圧接されることで、蛇口102とケーシング111との間の水漏れを防止する。
【0079】
図7−図9に示すように、ノズル部材131に水量調節体141が取り付けられ、絞り部材121に組み付けられた組立体154は、略半球状をなし、拡径部153の球面座面を摺動し、ノズル部材131の吐水面131aの角度を変更し得るように構成される。パッキン151の円筒部152と拡径部153とで構成される外側のコーナ部は、摺動する組立体154の突出部122、すなわち絞り部材121の突出部122が係合し、可動範囲を規制する規制部155となる。
【0080】
[節水器具の組立]
以上のように構成された節水器具101は、次のように組み立てられる。先ず、ノズル部材131の取付孔134には、図15に示すように、絞り部材121の第一の孔部124と水量調節体141の第二の孔部144の入口144aとの重なり度合いを調節して、水量調節体141が取り付けられる。次いで、ノズル部材131は、絞り部材121が組み合わされ、組立体154とされる。
【0081】
この組立体154は、パッキン151に組み合わされる。具体的に、パッキン151の円筒部152に、絞り部材121の突出部122を臨ませるようにして、パッキン151の拡径部153内に組み合わされる。この後、組立体154が組み合わされたパッキン151は、ケーシング111内に配設される。具体的に、パッキン151は、吐水側開口部113側に位置する先端部が段部114に係合される。
【0082】
この後、ケーシング111は、取付開口部112の内周面にあるねじ溝112aを蛇口102のねじ部に締め付けることによって、ケーシング111が蛇口102等に取り付けられる。パッキン151は、係合段部156に蛇口102が係合圧接されることで、蛇口102とケーシング111との間の水漏れを防止することができる。
【0083】
[節水器具の動作]
以上のような節水器具101は、蛇口102の給水口103から水が供給されると、水が絞り部材121の通水孔123より第一の孔部124と水量調節体141の第二の孔部144を通って絞り部材121とノズル部材131との間の空間部146に供給される。空間部146には、絞り部材121等で吐水量が絞られて供給されることになる。そして、水流は、第二の孔部144で水流の方向が曲げられ、また、空間部146で、第二の孔部144の出口144bから流出する水流が互いに衝合することで、水圧が減圧される。この後、減圧された水は、ノズル部材131の吐水孔132から吐水される。
【0084】
・吐水方向の調節
以上のような節水器具101では、図8及び図9に示すように、ノズル部材131を絞り部材121に組み合わせてなる組立体154は、上半球に下半球の一部を足した完全なる半球体よりやや大きいものとなる。すなわち、この組立体154は、この組立体154を含む球体の最大直径R1を含む半球体となり、吐水面131aの直径R2が最大直径R1よりやや小さくなる形状となっている。そして、組立体154は、絞り部材121の外面とノズル部材131の外面とで連続的な略半球面状の外表面を構成する。
【0085】
パッキン151の拡径部153を構成する球面とケーシング111の吐水側開口部113近傍の球面支持部113aとは、組立体154の外表面がなす略半球面に対応した連続的な球面をなし、組立体154の転動に伴う摺動を許容する球面座面となっている。
【0086】
なお、本発明では、少なくともパッキン151の拡径部153が球面座面となっていれば、組立体154は転動可能であるから、ケーシング111の球面支持部113aは必ずしも球面座面となっていなくても良い。
【0087】
更に、球面支持部113aの直径R3は、組立体154の最大直径R1より小さくなっており、組立体154がケーシング111より脱落しないようになっている。
【0088】
したがって、組立体154は、例えば、吐水面131aを指等で偏圧的に押圧することによって、絞り部材121の突出部122がパッキン151の規制部155に突き当たるまでの範囲内で、自在に傾けることができる。また、吐水中にあっては、パッキン151の内側の空間において発生する内圧によって、絞り部材121やノズル部材131がパッキン151に圧接されることになる。したがって、吐水面131aの調節した傾きが使用中にずれてしまうこともない。
【0089】
図17(A)及び図18(A)は、吐水面131aの傾きを0°として、吐水方向を鉛直にした状態を示している。また、図17(B)及び図18(B)は、吐水面131aを一方に最大限傾けた状態を示している。この状態では、組立体154を構成する絞り部材121の突出部122がパッキン151の規制部155に突き当たり、これ以上吐水面131aが傾かないようになっている。更に、図17(C)及び図18(C)は、吐水面131aを他方に最大限傾けた状態を示している。この状態でも、組立体154を構成する絞り部材121の突出部122がパッキン151の規制部155に突き当たり、これ以上吐水面131aが傾かないようになっている。
【0090】
なお、この吐水方向の調節を行うに当たっては、上述した水量調節体141は必ずしも設ける必要はない。水量調節体141を設けない場合には、ノズル部材131の取付孔134を設けなければよい。また、組立体154は、完全な半球体であっても良い。
【0091】
・第一の水量調節
節水器具101では、ノズル部材131を絞り部材121に対して回転させることで、節水の程度を調節することができる。具体的に、この節水器具101において、外周吐水孔列132aからは、常時吐水され、吐水される水流が常に太く見えるようにしている。これに対して、内周吐水孔列132bでは、絞り部材121の閉塞突起125によって、ノズル部材131の吐水孔132が選択的に閉塞される。具体的に、図13(A)及び図17(A)−(C)に示すように、閉塞突起125が吐水孔132と連続した第一の係合凹部135に係合しているときには、吐水孔132は閉塞され、内周吐水孔列132bからは吐水されない状態となる(節水位置)。一方、図13(B)及び図18(A)−(C)に示すように、閉塞突起125が吐水孔132,132の間の第二の係合凹部136に係合しているときには、吐水孔132は開放され、内周吐水孔列132bからも吐水される状態となる(準節水位置)。すなわち、ノズル部材131が準節水位置にあるとき、吐水面131aからの流線は、二重となり、節水位置にあるとき、流線は一重となる。
【0092】
節水器具101では、常に、ノズル部材131が節水位置にあるとき、外周吐水孔列132aから吐水され、その内側で内周吐水孔列132bから吐水されないようになっている。したがって、節水器具101では、内周吐水孔列132bから吐水されず吐水量が減ったことを見た目で分からないようにしながら節水を行うことができる。
【0093】
このノズル部材131の回転操作の方法は特に限定されるものではなく、節水器具101が分解された状態において、絞り部材121に対してノズル部材131を回転させても良い他、分解するまでもなく、組立後の状態において、指や治具を使って、ケーシング111の吐水側開口部113より臨むノズル部材131を回転させても良い。更に、ノズル部材131に、ケーシング111より外部に臨む操作突起を設けて、この操作突起を用いてノズル部材131を回転させても良い。また、絞り部材121、ノズル部材131の何れか一方に、突起を設け、他方に、突起が選択的に係合される凹部を複数設け、絞り部材121とノズル部材131とが相対回転することで、突起が凹部に選択的に係合するようにして、絞り部材121とノズル部材131の相対的位置を一定に保持するようにしても良い。更に、ケーシング111を開口部を設けて、何れの凹部に突起部が係合されているのかを目視できるようにし、設定状態を目視で確認できるようにしても良い。
【0094】
なお、この節水調節を行うに当たっては、上述した水量調節体141は必ずしも設ける必要はない。水量調節体141を設けない場合には、上述のように、ノズル部材131の取付孔134を設けなければよい。
【0095】
・第二の水量調節
節水器具101では、水量調節体141を回転することによって、吐水量を調節することができる。絞り部材121の第一の孔部124と水量調節体141の第二の孔部144の入口144aとが最も重なっているときは、最も絞りが開いた状態であり、吐水量も最も多くなる。そして、図15(A)、図15(B)に示すように、第一の孔部124と第二の孔部144の入口144aとの重なり度合いが小さくなると、その分、流路が小さくなり、吐水量が絞られることになる。図15(C)は、第一の孔部124と第二の孔部144の入口144aとが最もずれ、最も吐水量が絞られた状態となる。更に水量調節体141を絞り部材121に対して相対回転させると図15(D)に示すように再び開口量が大きくなり図15(B)と同等程度の開口量となり、回転に合わせて順次開口量が段階的乃至連続的に変化するようになっている。
【0096】
この水量調節は、例えば、節水器具101が組み立てられた状態において、吐水面131aより突出した嵌合部143の先端部を押圧し持ち上げることで凹凸溝134cと凹凸部145とが係合した状態を解除乃至弱めて解放し、この解放した状態で、水量調節体141を回転させることによってなされる。
【0097】
[節水器具の効果]
以上のような節水器具101によれば、ケーシング111内に、絞り部材121とノズル部材131が設けられることで、吐水量を絞り節水することができる。具体的に、絞り部材によって絞られた水流が、更にノズル部材131によって適度な吐水量と水勢に調節されて吐出孔列132a,132bから吐水されるので、使用感の良好な節水を行うことができる。更に、水量調節体141によって、外部からの簡単な操作で吐出孔列132a,132bに供給される吐水量を調節することもでき、これにより、水圧や吐水量の微調整を行うことが可能となる。
【0098】
加えて、絞り部材121とノズル部材131との組立体154は、パッキン151内に摺動可能に取り付けられ、吐水面131aの角度を可変とする。したがって、外部からの簡単な操作で水の吐出方向を容易に調節することができる。これによって、節水を行いながら、水圧を上げたときにも、吐出方向を調節することで、水滴が洗面器の外にまで飛散して、洗面器の周囲が汚損することを防止できる。すなわち、節水器具101では、吐水や水滴が洗面器の外にまで飛散しない範囲で、使い勝手が良いように、吐水量や吐出方向を容易に微調節することができる。
【0099】
[節水器具の変形例]
なお、以上、本発明が適用された節水器具1,101について説明したが、節水器具1,101は、本発明の一例であり、節水器具1は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形しても良い。
【符号の説明】
【0100】
1 節水器具、2 蛇口、11 ケーシング、12 取付開口部、12a ねじ溝、13 吐水側開口部、14 取付凹部、14a パッキン、15 取付段部、21 絞り部材、22,23 フランジ部、24 第一の孔部、25 接続凹部、26 環状凹部、27 スペーサ突部、28 空間部、29 突起、31 ノズル部材、31a 吐水面、32 円筒部、33 第二の孔部、33a 入口、33b 出口、34 係合段部、35 フランジ部、36 吐水孔、37,37−37d 凹部
101 節水器具、102 蛇口、111 ケーシング、112 取付開口部、112a ねじ溝、113 吐水側開口部、113a 球面支持部、113b 吐水口、114 段部、121 絞り部材、122 突出部、123 通水孔、123a 発条底部、124 第一の孔部、125 閉塞突起、126 ガイド片、126a ガイド突起、131 ノズル部材、131a 吐水面、132 吐水孔、132a 外周吐水孔列、132b 内周吐水孔列、133 ガイド溝、134 取付孔、134a 円筒部、134b 拡径部、134c 凹凸溝、135 第一の係合凹部、136 第二の係合凹部、141 水量調節体、142 流路形成部、143 嵌合部、144 第二の孔部、144a 入口、144b 出口、145 凹凸部、146 空間部、151 パッキン、152 円筒部、153 拡径部、154 組立体、155 規制部、156 係合段部、161 突起、162 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水口に取り付け得る取付開口部と、吐水側として開口した吐水側開口部と、を有してなる略筒状のケーシングと、
上記ケーシング内において、上記給水口より給水される水流を絞る第一の孔部が形成された絞り部材と、
上記吐水側開口部に臨む吐水面を有し、該吐水面と反対側に上記第一の孔部と繋がる第二の孔部が穿孔されると共に、該第二の孔部からの水流を該吐水面より吐出する複数の吐水孔が貫穿されたノズル部材とを備え、
上記第一の孔部と上記第二の孔部とを互いに相対回転させることによって上記第一の孔部と上記第二の孔部とのずれ量が変わり、吐水量を調節することができるように構成されることを特徴とする節水器具。
【請求項2】
上記第一の孔部と上記第二の孔部とは、重なって連通させ得るように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の節水器具。
【請求項3】
上記吐水孔は、上記吐水面の周囲に貫穿されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の節水器具。
【請求項4】
上記絞り部材と上記ノズル部材との間には、上記第二の孔部からの水流が上記吐水孔に至るまでの間に水流が衝合して減圧する空間部が形成されていることを特徴とする請求項1−請求項3の何れかに記載の節水器具。
【請求項5】
上記絞り部材、上記ノズル部材の何れか一方には、突起が形成され、
他方には、上記突起が選択的に係合される凹部が複数形成され、
上記絞り部材と上記ノズル部材とが相対回転することで、上記突起が上記凹部に選択的に係合し、上記第一の孔部と上記第二の孔部とのずれ量の設定状態を一定に保持することを特徴とする請求項1−請求項4の何れかに記載の節水器具。
【請求項6】
上記第二の孔部は、上記ノズル部材に対して回転可能に取り付けられる水量調節体に形成されていることを特徴とする請求項1−請求項5の何れかに記載の節水器具。
【請求項7】
上記ノズル部材は、上記複数の吐水孔によって形成された環状の吐水孔列が形成されており、
上記絞り部材は、上記複数の吐水孔の内の何れかの吐水孔を選択的に閉塞する閉塞突起を有し、
上記ノズル部材は、上記絞り部材に対して回転可能であり、
上記ノズル部材は、回転することによって、すべての吐水孔を開放する準節水位置と上記吐水孔の何れかを上記閉塞突起で閉塞する節水位置とに切り替わることを特徴とする請求項1−請求項6記載の何れかに記載の節水器具。
【請求項8】
上記ノズル部材は、上記環状の吐水孔列が同心円をなすように複数形成され、
回転することによって、上記何れかの環状の吐水孔列が上記絞り部材の閉塞突起によって閉塞され節水位置となることを特徴とする請求項7に記載の節水器具。
【請求項9】
上記ケーシング内に配設されるパッキンを備え、
上記絞り部材と上記ノズル部材との組立体は、該組立体の外表面が球体の最大直径部分を含む略半球面状をなし、
上記パッキンの上記組立体の略半球面状の外表面と接する面が、上記組立体の略半球面状の外表面に対応する略球面状の座面をなし、
上記吐水側開口部の上記組立体と当接する内周部が、上記組立体の最大外径より小さい内径部を有し、
上記組立体は、上記吐水面が上記吐水側開口部より外部に臨むように上記パッキンの上記略球面状の座面に対して摺動可能に配設され、上記吐水面の角度を可変とすることを特徴とする請求項1−請求項8の何れかに記載の節水器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−256669(P2011−256669A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134176(P2010−134176)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(395017405)
【Fターム(参考)】