簡易便器、糞尿処理簡易便器セットおよび簡易便器の使用方法
【課題】糞尿の発熱処理に適応して衛生的に廃棄して、使い捨て可能な簡易便器を安価に提供し、糞尿処理簡易便器セットおよび簡易便器の使用方法を提供する。
【解決手段】容器状に成形され、少なくとも糞尿が接触する内面が撥水性を有する撥水素材で形成された内材と、内材の外側に配置される耐熱性又は断熱性を有する外材と、を備えた簡易便器1である。
【解決手段】容器状に成形され、少なくとも糞尿が接触する内面が撥水性を有する撥水素材で形成された内材と、内材の外側に配置される耐熱性又は断熱性を有する外材と、を備えた簡易便器1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ての簡易便器、糞尿処理簡易便器セットおよびその使用方法に係り、より詳しくは、例えば疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰および発熱剤を含む糞尿処理剤を用いて、便器に受けた糞尿の発熱処理が可能な簡易便器、糞尿処理簡易便器セットおよび簡易便器の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地震等の災害による長期の停電および断水時等においては、トイレットが使用できなくなり、各家庭では糞尿が大量に溜まってしまう。大量に溜まった糞尿からは悪臭が発散し続け、そのままにしておくと、その臭気により生活環境が著しく悪化してしまう。
【0003】
このような災害時には、例えば、糞尿をプラスチック製の袋に入れ、密封状態でとりあえず保管しておく方法等が採られているが、プラスチック製の袋は破損し易いため、保管中に破損して糞尿が漏れ出し、周囲に悪臭を発散させてしまう等の問題がある。また、プラスチック製の袋内で糞尿が時間とともに腐敗し、溜まった臭気ガスの圧力で袋内から臭気ガスが漏れ出てしまう等の問題もある。
【0004】
そこで、ダンボール紙製の組み立て構造体を使い捨ての簡易便器(簡易トイレット)とすること(特許文献1参照)や、木製や紙製等の枠体内にポリエチレン袋等の袋体を内装したものを簡易便器とし、糞尿を受ける袋体を使い捨てること(特許文献2および3参照)などが提案されている。
【0005】
また、糞尿を積極的に処理する方法としては、おが屑中に糞尿を導入し、おが屑および糞尿ともども攪拌して、糞尿中の微生物により糞尿を処理する方法(特許文献4参照)や、生石灰の微粒子の表面を高級脂肪酸、その塩およびそのエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の被覆剤で被覆してなる糞尿処理剤、ならびにそれを用いた糞尿の処理方法(特許文献5参照)などが提案されている。
【特許文献1】特開2006−296925号公報
【特許文献2】特開2000−1496号公報
【特許文献3】特開2006−223725号公報
【特許文献4】特開平11−300324号公報
【特許文献5】特開2002−210496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、使い捨ての簡易便器を使用しても、そのまま廃棄したのでは臭気を発し、また衛生面から好ましくなく、環境を汚染する虞がある。したがって、特許文献4および5のような糞尿処理方法との併用によって糞尿を処理した後に、簡易便器を廃棄することが好ましい。
【0007】
しかしながら、特許文献4に記載の処理方法は、微生物による処理であるため、処理能力に限界があり、処理速度も遅い等の問題がある。
【0008】
また、特許文献5に記載の生石灰の微粒子を含む糞尿処理剤を用いて、その水和反応により糞尿を発熱処理しようとすると、使い捨ての簡易便器(特許文献1〜3参照)の場合には、反応熱で焦げて穴が開いたり、引火したりするなどの虞があるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、糞尿の発熱処理に適応して衛生的に廃棄して、使い捨て可能な簡易便器を安価に提供すること、糞尿処理簡易便器セットおよび簡易便器の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的は、下記の手段により達成される。
【0011】
(1)容器状に成形され、少なくとも糞尿を受ける内面が撥水性を有する撥水素材で形成された内材と、該内材の外側に配置される耐熱性又は断熱性を有する外材と、を備えてなることを特徴とする簡易便器。
【0012】
(2)可燃性素材により形成された容器内に、前記外材を介して、前記内材を内装したことを特徴とする、(1)に記載の簡易便器。
【0013】
(3)前記容器は蓋体を備え、該蓋体には前記容器内に投入される糞尿処理剤の撹拌開口部が開設されていることを特徴とする、(2)に記載の簡易便器。
【0014】
(4)前記蓋体は、内蓋と、当該内蓋を上から覆う外蓋とを有し、前記内蓋及び前記外蓋の各一辺は前記容器の開口部にそれぞれ連接されていることを特徴とする、(3)に記載の簡易便器。
【0015】
(5)前記内蓋と前記外蓋との間には、吸水材及び活性炭を配置するための空間が形成されていることを特徴とする、(4)に記載の簡易便器。
【0016】
(6)前記蓋体は、前記容器と分離して形成されていることを特徴とする、(3)に記載の簡易便器。
【0017】
(7)前記蓋体には、活性炭の挿入開口部が開設されていることを特徴とする、(6)に記載の簡易便器。
【0018】
(8)前記内材が容器として折り畳み成形され、前記外材が既設便器内に内装可能な袋体であることを特徴とする、(1)に記載の簡易便器。
【0019】
(9)前記内材の撥水面でない側の面に、前記外材が層状に形成され、これらが容器として折り畳み成形されることを特徴とする、(1)に記載の簡易便器。
【0020】
(10)前記撥水素材は、一方の面に樹脂層を有する可燃性素材であることを特徴とする、(1)から(9)のいずれか1つに記載の簡易便器。
【0021】
(11)前記外材は、80℃以上450℃以下の温度において難燃性を有する素材を有することを特徴とする、(1)から(10)のいずれか1つに記載の簡易便器。
【0022】
(12)前記(1)から(11)のいずれか1つに記載の簡易便器と、該便器内に受けた糞尿を発熱処理する糞尿処理剤と、を備えていることを特徴とする糞尿処理簡易便器セット。
【0023】
(13)前記(5)に記載の簡易便器と、該便器内に受けた糞尿を発熱処理する糞尿処理剤と、吸水材と、活性炭と、を備えていることを特徴とする糞尿処理簡易便器セット。
【0024】
(14)前記糞尿処理剤が、少なくとも、疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰および発熱剤を含む粉体剤であることを特徴とする(12)または(13)に記載の糞尿処理簡易便器セット。
【0025】
(15)前記(1)に記載の簡易便器に糞尿を受け、該便器内の糞尿と糞尿処理剤とを混合して、発熱反応により糞尿を処理することを特徴とする簡易便器の使用方法。
【0026】
(16)前記(5)に記載の簡易便器に糞尿を受け、前記内蓋を閉じて当該内蓋の上に吸水材を載せると共に、当該吸水材の上に活性炭を載せ、当該活性炭の上から前記外蓋を閉じ、該便器内の糞尿と糞尿処理剤とを混合して、発熱反応により糞尿を処理することを特徴とする簡易便器の使用方法。
【0027】
(17)前記簡易便器を既設便器の便座内に配置することを特徴とする(15)または(16)に記載の簡易便器の使用方法。
【0028】
(18)前記簡易便器の前記外材を既設便器内に内装した後、該外材内に前記内材を配置して糞尿を受け、前記糞尿処理剤により糞尿を処理することを特徴とする(15)に記載の簡易便器の使用方法。
【0029】
(19)前記糞尿処理剤により糞尿を発熱処理する際に、前記簡易便器の上部開口部を蓋体で覆うことを特徴とする(15)に記載の簡易便器の使用方法。
【0030】
(20)前記糞尿処理剤が、少なくとも、疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰および発熱剤を含む粉体剤であることを特徴とする(15)から(19)のいずれか1項に記載の簡易便器の使用方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る簡易便器によれば、糞尿を受ける容器状の内材が撥水素材で形成され、その少なくとも糞尿が接触する内面が撥水性を有するので、内材内に受けた糞尿の水分が外に漏れ出ることはない。また、内材の外側に耐熱性又は断熱性を有する外材が配置されているので、内材の内側で発生した熱から保護することができる。したがって、内材内に受けた糞尿に糞尿処理剤を混合して、発熱反応により糞尿を処理しても、簡易便器が反応熱で焦げて穴が開いたり、引火したりするのを防止することができる。よって、糞尿の発熱処理に適応して衛生的に廃棄して、使い捨て可能な簡易便器を安価に提供することができる。
【0032】
また、糞尿処理簡易便器セットによれば、糞尿を発熱処理する糞尿処理剤と、発熱処理しても焦げて穴が開いたり、引火したりしない簡易便器と、を組み合わせているので、糞尿の発熱処理後に衛生的に簡易便器を廃棄しうる。
【0033】
また、本発明に係る簡易便器の使用方法によれば、簡易便器に受けた糞尿と糞尿処理剤とを混合することにより、処理後において、糞尿を粉末化できるため、取り扱い性に優れ、輸送コストが安価である等の利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0035】
〔第1の実施形態の簡易便器〕
図1は本発明に係る簡易便器の第1の実施形態を示す斜視図である。図2は第1の実施形態の簡易便器の内部構造を示す模式図である。図3は第1の実施形態の簡易便器の使用状態を示す平面図である。
【0036】
図1および図2を参照して、本発明に係る簡易便器の基本形態は、容器状に成形され、撥水素材で形成された内材2と、この内材2の外側に配置される耐熱性又は断熱性を有する外材3と、を備えており、後述する第2および第3の実施形態においても同様である。第1の実施形態の簡易便器1は、具体的には、可燃性素材により形成された容器4内に、外材3を介して、内材2を内装している。
【0037】
容器4は、例えば、底面が矩形で上面が開放された箱体状(上面が開放された中空直方体状)を呈しているが、他の形状であってもよく、容器形状は限定されない。例えば、図4に示すように、容器4の前方の幅を縮めて上方から見た形を台形としてもよい。このように構成することにより、使い勝手が良くなる。容器4を可燃性素材としたのは、焼却物としての廃棄を可能にするためであり、例えば、ダンボール紙、ボール紙、または木材等が挙げられるが、本実施形態では、軽量化を考慮するとダンボール紙で成形することが好ましい。
【0038】
内材2は糞尿を直接受ける部材であり、少なくとも糞尿を受ける内面(糞尿接触面)が撥水性を有する撥水素材により形成されている。内材2としては、例えば、紙、ビニール、木材等の可燃性素材の一方の面にシリコン樹脂等の樹脂をコーティングまたはラミネート等したものが挙げられ、特に剥離紙(離型紙)が好適に用いられる。
【0039】
前記容器4と内材2との間に介設される外材3は、例えば、80℃以上450℃以下の温度において難燃性(耐熱性)、又は断熱性を有する素材により形成されており、前記内材2の外側に配置されて、内材2の耐熱性又は断熱性、および強度を補っている。80℃以上の温度で難燃性を要求するのは、後述する糞尿処理剤の水和反応により系内が80℃〜95℃に達するからである。450℃以下の温度で難燃性を要求するのは、後述する糞尿処理剤が粉体であるため系内で熱が伝達され難く、その水和反応による発熱時に局部的に200℃〜400℃近くに上昇していると推察されるからである。耐熱性素材としては、例えば、エアフォームやポリエステル,ナイロン,ポリエチレン等にアルミニウム箔を蒸着したアルミ蒸着フィルム材、ナイロン蒸着ビニール材、ガラスやセラミック,シリカ,アルミナ等の繊維材、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂ラミネート紙、ポリエチレン(PE)等の樹脂発泡断熱紙、またはエンボス加工紙スリーブ、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP),エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)等の樹脂加工材などが挙げられる。なお、外材3として、厚めのダンボール紙を使用することも可能である。このように構成すれば、断熱効果を得ることができると共に、コストを低減することも可能となる。
【0040】
すなわち、箱体状の容器4内に、外材3および内材2が層状に重ね合わされている。図1および図3を参照して、外材3および内材2を備えた容器4は、その上部開口部を覆う蓋体5を備えており、この蓋体5の略中央部には、簡易便器1内に後述する糞尿処理剤を投入し、へら等を挿入して糞尿と混合して撹拌するための撹拌開口部6が開設されている。本実施形態では、蓋体5は容器4と分離して形成されている。なお、撹拌開口部6は楕円形状を呈しているが、長円孔や長方形孔など形状は限定されない。
【0041】
なお、外材3および内材2を備えた容器4の上部開口部を蓋体5で覆ったまま排便を行うことも可能であり、この場合には、撹拌開口部6を排便取入れ口として使用することができ、例えば、既設便器10の便座11内に配置して使用し、その際に排便取入れ口は使用者が排便し易い部位に位置するように開設される。
【0042】
また、この蓋体5の撹拌開口部6の長手方向両側には、活性炭9の挿入開口部7が開設されている。この挿入開口部7は一対の矩形状の長孔として形成されているが、その形状、数、開設位置は限定されない。活性炭9は、例えば、不織布等の袋内に収容されている。活性炭9は、前記挿入開口部7を覆うように上方から装着される。なお、活性炭9は、前記挿入開口部7の位置に蓋体5の内側から装着されてもよい。
【0043】
排便取入れ口6および挿入開口部7には、臭気漏れ等を防止するため、例えば、内部を視認可能な無色透明、有色透明、または半透明のナイロン(登録商標)を蒸着した耐熱性ビニール等の保護シート8が蓋体5の内側から装着されている。この保護シート8は、糞尿処理剤を投入したり、撹拌用のへら等を挿入し易いように、例えば、その幅方向中央部においてシート同士が重なり合うように装着されている。
【0044】
なお、前述したように、内材2がシート状やフィルム状である場合には、本実施形態のように、前記容器4内に、外材3を介して、内材2を内装する。しかし、これに限るものではなく、例えば、内面側に樹脂コーティングまたは樹脂ラミネートしたダンボール紙等を材料として、内材2自体を箱体状の容器として形成し、その外側を外材3で覆う構造に形成し、前記容器4を省略してもよい。
【0045】
以上のように構成された第1の実施形態の簡易便器1によれば、糞尿を受ける内材2の少なくとも糞尿が接触する内面が撥水性を有する撥水素材で形成されているので、内材2内に受けた糞尿の水分が内材2の外に漏れ出ることはない。また、内材2の外側に耐熱性又は断熱性を有する外材3が配置されているので、内材2の内側で発生した熱から保護することができる。また、強度を外材3により補うことができる。したがって、後述するように、内材2内に受けた糞尿と糞尿処理剤とを混合して、糞尿処理剤に含まれる生石灰の水和反応する際、糞尿処理剤が粉体剤であるため系内が局部的に200℃〜400℃近くの温度に上昇しても、簡易便器1が反応熱で焦げて穴が開いたり、引火するのを防止することができる。このように本実施形態によれば、糞尿の発熱処理に適応して衛生的に廃棄して、使い捨て可能な簡易便器1を安価に提供することができる。
【0046】
また、この簡易便器1は、後述する糞尿処理剤と組み合わせて、糞尿処理簡易便器セットとしても構成することができる。この糞尿処理簡易便器セットによれば、糞尿を発熱処理する糞尿処理剤と、この糞尿処理剤により発熱処理しても焦げて穴が開いたり、引火したりしない簡易便器1と、を組み合わせているので、糞尿の発熱処理後に衛生的に使用後の簡易便器を廃棄しうる。糞尿処理剤の具体的成分については後述する。
【0047】
次に、前述のように構成された第1の実施形態の簡易便器1の使用方法を説明する。
【0048】
図3(a)を参照して、第1の実施形態の簡易便器1は、例えば、既設便器10の便座11内に配置して使用される。このように簡易便器1を前記便座11内に配置する場合、糞尿を受け易いように、蓋体5を取った状態で配置する。これに限定されるものではなく、外材3および内材2を備えた容器4の上部開口部を蓋体5で覆ったままで簡易便器1を使用する場合には、簡易便器1の蓋体5の撹拌開口部6を排便取入れ口として使用し、この排便取入れ口は使用者が排便し易い部位に位置することになる。これらは、使用状態の一例であり、例えば、介護ベッドなどトイレット以外の場所で使用しても構わない。
【0049】
第1の実施形態の簡易便器1における内材2内に使用者の排便を受けた後、外材3および内材2を備えた容器4の上部開口部を蓋体5で覆い、内材2内の糞尿に撹拌開口部6から糞尿処理剤を添加し、この撹拌開口部6からへら等を挿入して糞尿と糞尿処理剤とを混合して、発熱反応により糞尿を処理する。糞尿処理剤は、疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰および発熱剤を含む粉体剤であり、さらに必要に応じて、吸水材および/または添加剤を含有していてもよい。以下、糞尿処理剤の構成成分について詳述する。
【0050】
(表面処理される生石灰)
本発明で用いられる表面処理される生石灰(CaO)の形態は、特に限定されないが、大便に対して効果的に分散させるという観点から、粉粒状であることが好ましい。また、その平均粒径は、0.1μm〜5mmの範囲であることが好ましく、0.5μm〜2mmの範囲であることがより好ましく、1μm〜1mmの範囲であることが特に好ましい。前記表面処理される生石灰の平均粒径が0.1μm未満である場合には、製造が困難となり生産コストが高くなる場合がある。一方、5mmより大きい場合には、得られる糞尿処理剤と糞尿との接触面積が減少し、反応効率が低下する場合がある他、糞尿処理時に塊状物が生じ、未反応物が残存する場合がある。また、必要に応じて、前記表面処理される生石灰は、平均粒径の異なる2種以上の生石灰を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明において、前記平均粒径は、粒度分布測定装置により測定した値を採用するものとする。
【0051】
(疎水性の被覆剤)
本発明で用いられる疎水性の被覆剤は、該被覆剤を使用して生石灰の表面を処理した際に、生石灰に対して疎水性を付与することができ、かつ、被覆後の生石灰を粉粒状にし易くする化合物であることが好ましい。
【0052】
前記被覆剤の具体例としては、例えば、パラフィン、ステアリルアミン、高級脂肪酸、高級脂肪酸の塩、または高級脂肪酸のエステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物などが挙げられ、これらの中でも、高級脂肪酸、高級脂肪酸の塩、および高級脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。かかる高級脂肪酸としては、炭素数8〜26の一価または多価の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数8〜24の一価または多価の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸がより好ましく、炭素数10〜20の一価の飽和脂肪酸が特に好ましい。前記高級脂肪酸の具体例としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などが挙げられる。前記高級脂肪酸の塩の具体例としては、アンモニウム塩;ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;またはカルシウム塩、マグネシウム塩などの第2族の金属塩などが挙げられる。また、前記高級脂肪酸のエステルの具体例としては、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、sec−ブチルエステル、tert−ブチルエステル、イソブチルエステル、n−ヘキシルエステルなどのアルキルエステル;またはシクロヘキシルエステルなどのシクロアルキルエステルなどが挙げられる。
【0053】
被覆剤の使用量は、表面処理される生石灰に対し、0.01〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜3質量%の範囲であることがより好ましく、0.4〜1.5質量%の範囲であることが特に好ましい。被覆剤の使用量が、0.01質量%未満である場合には、糞尿処理時に、十分な反応遅延効果が得られず、急激に反応が進行し、均一な混合ができないために塊状物が生成する他、反応生成物の疎水性が保たれず、水分の混入等により元の糞尿の形態に戻る虞がある。一方、10質量%を超える場合には、生石灰の活性表面積が減少するため効率的に反応が進行しない虞がある他、コストが高くなる虞がある。
【0054】
(疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰)
疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰の製造方法は、本発明の糞尿処理剤およびそれを用いた糞尿処理方法に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。具体的には、例えば、被覆剤の融点よりも高い温度において、生石灰粉末と被覆剤とを混合する方法、または被覆剤の融点より若干低い温度に保持した生石灰粉末に、攪拌下、前記被覆剤の溶融物を噴霧する方法等が好ましく挙げられる。また、前記生石灰は、通常、炭酸カルシウムを焼成して製造されるため、焼成により得られた生石灰を所定の温度まで冷却した後、前記の表面処理方法に付すこともまた好ましい。前記の表面処理した生石灰は、必要に応じて、異なる使用量の被覆剤を用いて表面処理した生石灰を、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0055】
前記の表面処理した生石灰の形状は、特に限定されないが、粉粒状であることが好ましい。また、その平均粒径は、0.1μm〜5mmの範囲であることが好ましく、0.5μm〜2mmの範囲であることがより好ましく、1μm〜1mmの範囲であることが特に好ましい。
【0056】
(発熱剤)
本発明で用いられる発熱剤は、本発明の簡易便器の使用方法において悪影響を及ぼさない限り、特に制限されず、公知の発熱剤を使用することができるが、糞尿処理の系内において、水分、空気、または消石灰(Ca(OH)2)等との反応により発熱し、前記被覆剤の溶融に必要な熱量を供給しうる物質であることが好ましい。かかる発熱剤の具体例としては、例えば、生石灰、粉体アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、または無水塩化マグネシウム等が挙げられる。これらの化合物は単独でもまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
これらの中でも、糞尿処理にも寄与できるという観点から、生石灰を用いることが好ましい。この場合の生石灰の使用量は、前記表面処理した生石灰100質量部に対して、20〜200質量部の範囲であることが好ましく、処理後の処理物を粉末として得るという観点から、25〜150質量部の範囲であることがより好ましく、25〜100質量部の範囲であることが特に好ましい。生石灰の使用量が20質量部未満である場合には、発熱量が少なく、前記表面処理した生石灰の活性化が効率的に行えないために、糞尿処理時間が長くなる虞がる。一方、生石灰の使用量が200質量部を超える場合には、発生する過剰な熱量により、前記表面処理した生石灰が即座に活性化され、塊状物が生じ、未反応物が残存する虞がある。
【0058】
しかしながら、前記発熱剤の使用量は、前記の発熱剤が生石灰である場合の使用量に制限されず、前記被覆剤の種類および使用量、ならびに発熱剤の種類などに基づき適宜調整可能である。
【0059】
また、発熱剤として生石灰を用いる場合、形状は特に限定されないが、粉粒状であることが好ましい。また、その平均粒径は0.1μm〜5mmであることが好ましく、0.5μm〜2mmであることがより好ましい。
【0060】
なお、前記の疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰が、糞尿処理時に水分等との反応による凝集を起こさず、かつ、糞尿処理時の混合条件により効率的に粉砕されうる場合、または前記疎水性の被覆剤の欄で述べたような物理的および/もしくは化学的機構により、被覆剤で表面処理した生石灰の表面から被覆剤が剥離され、活性面が露出した生石灰と糞尿との反応により、本発明で使用される前記表面処理した生石灰の表面に存在する被覆剤溶融に必要な熱量が供給されうる場合等においては、前記の表面処理した生石灰を発熱剤として使用することも可能である。
【0061】
(吸水材)
本発明の糞尿処理剤は、吸水材をさらに含むことが好ましい。本発明で用いられうる吸水材は、活性な生石灰と糞尿との反応を制御する観点、すなわち、糞尿中に含まれる水分が、一度に生石灰の活性表面と反応して凝集により塊状物を生成し、未反応の糞尿が残存することを抑制する観点から添加されるものである。前記吸水材は、本発明の糞尿処理剤およびそれを用いた糞尿処理方法において悪影響を及ぼさない限り、特に制限はなく、公知の物質を使用することができるが、吸水性を有し、かつ吸水した水分が、生石灰の活性表面との接触において反応しうる物質であることが好ましい。かかる吸水材の例としては、例えば、おが屑、水溶紙、繊維束、不織布、ピートモス、または草炭等が挙げられる。これらは単独でもまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。吸水材の使用量は、吸水材の種類や形状、および被処理物である糞尿中に含まれる水分量などにより適宜調整可能であるが、糞尿処理剤100質量部に対して、1〜10質量部の範囲であることが好ましく、2〜6質量部の範囲であることがより好ましい。
【0062】
(添加剤)
本発明の糞尿処理剤は、本発明の糞尿処理剤およびそれを用いた糞尿処理方法において悪影響を及ぼさない限り、吸水材に代えてまたは吸水材に加えてその他の添加剤をさらに含有していてもよい。かかる添加剤の例としては、臭気対策の観点から、香料、消臭剤、または脱臭剤;前記表面処理した生石灰の水に対する濡れ性を向上させるという観点から、アルコール等の親水性有機化合物、または界面活性剤;糞尿中の水分含量を制御するという観点から、シリカゲル、無水硫酸ナトリウム等の乾燥剤、吸水性樹脂等の保水剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独でもまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0063】
前記香料の例としては、例えば、レモンオイル、レモングラス、シナモン油、ラベンダー油、ベチパー等が挙げられる。
【0064】
前記界面活性剤としては、各種の界面活性剤を使用することができ、その具体的な例としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤;アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホサクシネート、アルキルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート、アリールスルホネートなどのアニオン系界面活性剤;長鎖第1級アミン塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルピリジニウム塩、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリドなどのカチオン系界面活性剤;または塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、塩酸アルキルポリアミノエチルグリシンなどの両性系界面活性剤等が挙げられる。
【0065】
また、糞尿処理剤を糞尿に添加する際に用いられうる、後述の水溶性樹脂からなる包袋、水溶紙からなる包袋、または水解性不織布からなる包袋も、本発明の糞尿処理剤の添加剤として含有されうる。
【0066】
(糞尿処理剤)
本発明の糞尿処理剤の調製方法は、特に制限されず、例えば、疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰、および発熱剤を混合し、必要に応じて、さらに吸水材および/または所望の添加剤を混合する方法等が挙げられる。
【0067】
前記表面処理した生石灰は、疎水性の被覆剤で被覆されているため、得られる糞尿処理剤の耐湿性が高まるだけではなく、糞尿処理時に糞尿と接触してもすぐには反応を起こさない反応遅延性を有していることから、生石灰の活性表面と直ちに接触して塊状物等を生成することがない。したがって、糞尿と本発明の糞尿処理剤とは均一に混合されうる。しかし、前記被覆剤として高級脂肪酸、特に炭素数が15〜26である高級脂肪酸を使用した場合には疎水性がより高く、水分を多く含有する糞尿と混合すると攪拌が困難となる場合がある。このような場合には、粉体の攪拌を容易にするという観点から、界面活性剤等の添加剤または比較的疎水性の低い高級脂肪酸の塩、特に炭素数が8〜14である高級脂肪酸の塩を糞尿処理剤にさらに添加して使用してもよい。
【0068】
前記糞尿処理剤を糞尿に添加する方法としては、特に限定されないが、取り扱いの容易性等の観点から、例えば、前記糞尿処理剤を予め包袋に入れておき、糞尿処理時に前記包袋をそのまま糞尿に添加する方法が好ましい。この場合の包袋は、糞尿処理時に糞尿処理剤が糞尿に効率的に拡散するよう、水溶性樹脂からなる包袋、水溶紙からなる包袋、または水解性不織布からなる包袋であることが好ましい。なお、これらの態様を含め、前記糞尿処理剤は、耐湿、耐水条件下で保存することが好ましい。
【0069】
次に、前記糞尿処理剤を用いた糞尿処理について説明する。
【0070】
前述したように、糞尿処理は、簡易便器1の内材2内に受けた糞尿と前記糞尿処理剤と糞尿とを混合して行う。糞尿は、大便単独でもよいし、小便単独でもよいし、大便と小便との混合物であってもよい。
【0071】
前記糞尿処理剤の使用量は、被処理物である糞尿100質量部に対し、1〜200質量部の範囲であることが好ましく、10〜150質量部の範囲であることがより好ましく、80〜120質量部であることがさらに好ましい。前記使用量が、1質量部未満である場合には、糞尿の吸着処理が十分に行えず、未反応物が残存してしまう虞がある。一方、200質量部より多い場合には、処理効率が悪くなる虞がある。
【0072】
糞尿処理は、本発明の簡易便器の使用方法に悪影響を及ぼさない限り、特に制限されず、例えば、トイレット内において簡易便器1内の糞尿に前記糞尿処理剤を添加し攪拌する処理方法、またはベランダ、風呂場、庭先等のトイレット外に簡易便器1を移動させて、簡易便器1内の糞尿に前記糞尿処理剤を添加し攪拌する処理方法などが挙げられる。
【0073】
前記のような処理により発熱剤が糞尿との反応により発熱して、前記表面処理した生石灰の被覆剤を溶融し生石灰の活性表面を露出させ、前記生石灰が、さらに糞尿中の水分と反応して発熱すると共に、反応生成物である水酸化カルシウムが糞尿を吸着することにより処理後の物質は粉末として得られる。こうして得られた処理後の粉末は、前記被覆剤の効果により疎水性を有し、雨水等の水分の混入等によっても元の糞尿の形態に戻ることはない。また、前記の処理系内は、温度が80〜95℃にも達し、かつ、強アルカリ性であるため糞尿中の菌を殺菌することができ、処理後の物質の腐敗による悪臭の発生を抑制することができる。
【0074】
〔第2の実施形態の簡易便器〕
次に、本発明に係る簡易便器の第2の実施形態について説明する。図5は第2の実施形態の容器の斜視図である。以下、第1の実施形態と相違する点について説明し、共通する点については適宜説明を省略する。
【0075】
図5に示すように、第2の実施形態の容器40は、第1の実施形態と同様に、底面が矩形で上面が開放された箱体状(上面が開放された中空直方体状)を呈している。但し、第1の実施形態では、蓋体5は容器4と分離して形成されているが、第2の実施形態では、蓋体41は、内蓋42と、当該内蓋42を上から覆う外蓋43とを有し、内蓋42及び外蓋43の各一辺は容器40の開口部44にそれぞれ連接されている。
【0076】
一対の内蓋42は、開口部44の対向する一対の辺にそれぞれ連接されている。図5に示すように、内蓋42には切り欠き45が形成されている。
【0077】
図6は、内方に折り曲げられた内蓋の平面図である。図6に示すように、一対の内蓋42が開口部44に向けて内方に折り曲げられると、中央に内蓋窓46が形成される。但し、内蓋42は、必ずしも一対のでなくてもよく、開口部44の全体を覆うことが可能な、中央に内蓋窓46が形成された1枚の板状の蓋であってもよい。なお、一対の内蓋42の先端部近傍42a同士は、例えば両面接着剤等により接合される。但し、一対の内蓋42の先端部近傍42a双方に係合部を形成して相互に係合させてもよい。
【0078】
外蓋43は、開口部44の内蓋42が連接される2つの辺の間の辺に連接されている。この外蓋43は、開口部44側の遊び部47と、中央に外蓋窓50が形成された遊び部47に連接された本体部48と、本体部48に連接され開口部44に挿入され得る爪部49とを有している。図7は、内方に折り曲げられた外蓋の平面図である。図5に示すように、遊び部47と本体部48との間には、折り曲げ線51が形成されている。遊び部47の幅は例えば2cm程度が好ましい。
【0079】
外蓋窓50には、臭気漏れ等を防止するため、例えば、内部を視認可能な無色透明、有色透明、または半透明のナイロン(登録商標)を蒸着した耐熱性ビニール等の保護シートが外蓋43の内側から装着されていることが好ましい。この保護シートは、糞尿処理剤を投入したり、撹拌用のへら等を挿入し易いように、例えば、その幅方向中央部においてシート同士が重なり合うように装着されていることが好ましい。
【0080】
図8は、内蓋の上面に吸水材及び活性炭をセットした状態を示す側面図、図9は、図8の右方向から見た図である。図9に示すように、折り曲げ線51に沿って外蓋43を内方に折り曲げると、内蓋42と外蓋43との間には、吸水材52及び活性炭9を配置するための空間が形成される。
【0081】
活性炭9は、例えば、不織布等の袋内に収容されている。
【0082】
吸水材52は、スポンジのように水分を吸収する布等のシート状部材である。材質としては、例えばアクリル等が挙げられる。条件としては、水蒸気の熱で変質しない材質が望ましい。
【0083】
使用の際には、簡易便器に糞尿を受け、内蓋42を閉じた後、内蓋42の上に吸水材52が載せられ、吸水材52の上に活性炭9が載せられる。続いて、活性炭9の上から外蓋43が閉じられる。なお、外部からへら等を挿入するために蓋体41の中央部を塞がないように吸水材52および活性炭9を形成ないし配置することが好ましい。吸水材52および活性炭9は、それぞれ、1枚ものであっても、複数個に分割されたものであってもよい。そして、該便器内の糞尿と糞尿処理剤とを混合して、発熱反応により糞尿を処理する。
【0084】
このように活性炭9の下に吸水材52を配置すれば、活性炭9の孔が初期に水蒸気で塞がってしまうために臭気ガスの吸着が低下することが防止される。
【0085】
第2の実施形態の簡易便器は、基本的に第1の実施形態と同様の作用効果を奏するが、特に第2の実施形態によれば、容器の形態がより簡易となり、例えば平面状に折り畳んだ状態で保管も可能となる。
【0086】
図10は、第2の実施形態の容器の変形例の斜視図である。図10に示す容器40aは、外蓋43が先端側、すなわち爪部49の外側にミシン目54を介して、へらを製作し得るへら用部分53をさらに有している点で、図5の容器40と相違している。
【0087】
使用の際には、図11に示すように、外蓋43から、へら用部分53をミシン目54に沿って切り取る。切り取られたへら用部分53のミシン目55に沿って切り目を入れ、一対の折り曲げ線56に沿って上方に折り曲げると、図12に示すようなへらが製作される。このように、へらが簡単かつ容易に製作できるので、利便性が向上する。
【0088】
第1の実施形態および第2の実施形態において、容器4、40、40aは、底面が四角形で上面が開放された箱体を呈しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の容器は、上面が開放された中空円柱体、中空楕円柱体等の他の形状であってもよく、容器の形状は限定されない。
【0089】
図13は、上面が開放された中空の長円柱体である容器の一例を示す斜視図、図14は、図13の容器の側面の展開図を示す図である。この場合、例えば底面および蓋体としてダンボール紙等の各種板材が使用され得る。
【0090】
容器60の側面61は、差し込んで結合するための爪部62と、爪部62が差し込まれ得る複数のスリット63とを有している。このように構成すれば、爪部62を差し込む位置を適宜変更することにより容器60の大きさを調整することができ、利便性が向上する。
【0091】
〔第3の実施形態の簡易便器〕
次に、本発明に係る簡易便器の第3の実施形態について説明する。図15は第3の実施形態の簡易便器の使用状態を示す模式図である。図16は第3の実施形態における内材の折り畳み手順を示す模式図である。
【0092】
前述したように、本発明に係る簡易便器は、撥水素材で形成された内材2と、この内材2の外側に配置される耐熱性又は断熱性を有する外材3と、を備えている。図15を参照して、第3の実施形態の簡易便器21は、具体的には、内材2が容器として折り畳み成形され、外材3が既設便器10内に内装可能な袋体23により構成されている。
【0093】
内材2は、折り畳んだ状態で保管され、使用時には内部に空間ができるように開口縁部Fを拡げて容器状に成形される(図16(e)参照)。撥水素材としては、前述したように、例えば、紙、ビニール等の可燃性素材における一方の面にシリコン樹脂等の樹脂をコーティングまたはラミネート等したものが挙げられる。特に、本実施形態の内材2は容器状に折り畳み成形されるので、折り畳み成形し易いシート状またはフィルム状の撥水素材であることが好ましく、例えば、剥離紙(離型紙)が好適に用いられる。
【0094】
図16を参照して、シート状またはフィルム状の内材2の折り畳み手順を説明する。この折り畳み構造は内材2を容器24として折り畳み成形する一例であり、その構造や折り畳み手順等は限定されない。
【0095】
内材2は、例えば、正方形の剥離紙であって、上面(表面)に撥水加工が施されている。この内材2は、図16(a)のような展開した状態で、SL、L1、L2、L3、L4の各ラインを想定する。
【0096】
まず、図16(b)のように、正方形の対角線上のセンターラインSLを基準として、内側(上面側)へ折り畳んで直角二等辺三角形を作成する。次に、図16(c)のように、直角二等辺三角形の両側に左右対称に斜めに立ち上がった傾斜線L1およびL2を基準として、直角二等辺三角形の両側端部を内側へ折り畳んで重ね合わせ、五角形を作成する。次に、図16(d)のように、横線L3およびL4を基準として、五角形の上部に位置する直角二等辺三角形の部分を上面側(表面側)と下面側(裏面側)との相反する方向へそれぞれ折り畳んで重ね合わせ、逆台形を作成する。内材2は、この状態でも容器状に折り畳まれているが、図16(e)のように、開口縁部Fを外側へ折り返すことにより、開口縁部Fを補強でき、各折り畳み片を折り畳んだ状態に維持できる。そして、開口縁部Fを拡げれば、内材2は容器24として成形されることになる(以下、「内材容器24」ともいう。)。
【0097】
外材3の耐熱素材としては、80℃以上450℃以下の温度において難燃性(耐熱性)を有する素材、例えば、エアフォームやポリエステル,ナイロン,ポリエチレン等にアルミニウム箔を蒸着したアルミ蒸着フィルム材、ナイロン蒸着ビニール材、ガラスやセラミック,シリカ,アルミナ等の繊維材、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂ラミネート紙、ポリエチレン(PE)等の樹脂発泡断熱紙、またはエンボス加工紙スリーブ、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP),エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)等の樹脂加工材などが挙げられ、これらを利用して袋体23として形成される。特に袋体23は既設便器10の内側に沿って内装されるので、既設便器10の内形状に沿い易い柔軟性を有していることが好ましく、例えば、少なくとも内面にナイロンを蒸着したビニール袋が好適に用いられる。
【0098】
第3の実施形態の簡易便器21は、基本的に第1の実施形態および第2の実施形態の簡易便器と同様の作用効果を奏するが、特に第3の実施形態によれば、容器24として成形される内材2が折り畳み可能であり、外材3が袋体23であるため、不使用時の保管場所を取らない。
【0099】
また、この簡易便器21も、糞尿処理剤と組み合わせて、糞尿処理簡易便器セットとしても構成することができる。この糞尿処理簡易便器セットによれば、糞尿を発熱処理する糞尿処理剤と、この糞尿処理剤により発熱処理しても焦げて穴が開いたり、引火したりしない簡易便器21と、を組み合わせているので、糞尿の発熱処理後に衛生的に使用後の簡易便器21を廃棄しうる。
【0100】
次に、前述のように構成された第2の実施形態の簡易便器21の使用方法を説明する。
【0101】
図15を参照して、第3の実施形態の簡易便器21の使用方法は、例えば、前記簡易便器21を構成する耐熱性素材の外材3としての袋体23(ナイロン蒸着ビニール袋)を既設便器10の内側に沿って内装し、該袋体23の開口縁部を外側へ折り返して便座上を覆うように拡げる。既設便器10の内側に袋体23を内装した後、該袋体23内において、便座内に位置するように撥水素材の容器24として折り畳み成形した内材2を配置する。そして、この状態で使用者が排便することにより、内材容器24内に糞尿を受ける。排便後、トイレット内またはトイレット外において、内材容器24の耐熱性を補うべく、内材容器24の周囲に外材3としての袋体23を密着させ、内材容器24内の糞尿に糞尿処理剤を添加し、へら等で混合して、発熱反応により糞尿を処理する。糞尿処理剤には、第1の実施形態において詳述したと同一のもの、すなわち、疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰および発熱剤を含む粉体剤であって、必要に応じて、吸水材および/または添加剤を含有するものを用いる。したがって、第3の実施形態の簡易便器21の使用方法においても、糞尿処理剤は水和反応により糞尿を発熱処理することになる。この糞尿処理剤を用いた糞尿処理において、糞尿処理剤の使用量、撹拌方法、混合開始温度、処理場所等は第1の実施形態の使用方法と同様である。
【0102】
第3の実施形態の簡易便器21の使用方法は、基本的に第1の実施形態および第2の実施形態の使用方法と同様の作用効果を奏するが、特に第3の実施形態の使用方法によれば、糞尿の発熱処理後に袋体23の開口部を結んで閉じることにより、使用済みの内材容器24および処理後の物質を袋体23内に密封することができ、より衛生的であり、廃棄も容易である。
【0103】
〔第4の実施形態の簡易便器〕
次に、本発明に係る簡易便器の第4の実施形態について説明する。図17は第4の簡易便器の使用状態を示す模式図である。
【0104】
図17を参照して、第4の実施形態の簡易便器31は、具体的には、撥水素材の内材2の撥水面でない側の面に、耐熱性素材の外材3が層状に重ね合わされて形成され、これらが容器34として折り畳み成形されている。内材2と外材3とは、内材2の外側に外材3をコーティング、ラミネート、蒸着等により一体形成したシート状またはフィルム状の素材であってもよいし、単にシート状またはフィルム状の内材2と外材3とを重ね合わせたものであっても構わない。
【0105】
内材2および外材3は、例えば、図16に示したような折り畳み手順によって容器34として折り畳み成形される。内材2は、折り畳んだ状態で保管され、使用時には内部に空間ができるように開口縁部Fを拡げて容器状に成形される(図16(e)参照)。
【0106】
内材2としては、前述したように、例えば、紙、ビニール等の可燃性素材における一方の面にシリコン樹脂等の樹脂をコーティングまたはラミネート等したものが挙げられ、剥離紙(離型紙)が好適に用いられる。外材3としては、80℃以上450℃以下の温度において難燃性(耐熱性)を有する素材、例えば、エアフォームやポリエステル,ナイロン,ポリエチレン等にアルミニウム箔を蒸着したアルミ蒸着フィルム材、ナイロン蒸着ビニール材、ガラスやセラミック,シリカ,アルミナ等の繊維材、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂ラミネート紙、ポリエチレン(PE)等の樹脂発泡断熱紙、またはエンボス加工紙スリーブ、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP),エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)等の樹脂加工材などが挙げられる。特に、本実施形態の内材2および外材3は容器34として折り畳み成形されるので、折り畳み成形し易いシート状またはフィルム状の素材であることが好ましい。
【0107】
また、内材2および外材3により折り畳み成形された容器34には、糞尿を処理する際に該容器34の上部開口部を覆う蓋体35が備えられている。この蓋体35は、例えば、ダンボール紙により形成されている。
【0108】
第4の実施形態の簡易便器31は、基本的に第3の実施形態の簡易便器21と同様の作用効果を奏するが、特に第4の実施形態によれば、内材2および外材3が容器34として折り畳み成形されるので、第3の実施形態の袋体23が不要であり、使用に際して煩雑でない。
【0109】
また、この簡易便器31も、糞尿処理剤と組み合わせて、糞尿処理簡易便器セットとしても構成することができる。この糞尿処理簡易便器セットによれば、糞尿を発熱処理する糞尿処理剤と、この糞尿処理剤により発熱処理しても焦げて穴が開いたり、引火したりしない簡易便器31と、を組み合わせているので、糞尿の発熱処理後に衛生的に使用後の簡易便器31を廃棄しうる。
【0110】
次に、前述のように構成された第4の実施形態の簡易便器31の使用方法を説明する。
【0111】
図17を参照して、第4の実施形態の簡易便器31の使用方法は、例えば、既設便器10の便座内に位置するように、内材2および外材3を折り畳み成形した容器34を配置する。そして、この状態で使用者が排便することにより、容器34内に糞尿を受ける。排便後、トイレット内またはトイレット外において、この容器34内の糞尿に糞尿処理剤を混合して、発熱反応により糞尿を処理する。その際、容器34の上部開口部を蓋体35で覆う。糞尿処理剤には、第1の実施形態の簡易便器1の使用方法において詳述したと同一のもの、すなわち、疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰および発熱剤を含む粉体剤であって、必要に応じて、吸水材および/または添加剤を含有するものを用いる。したがって、第4の実施形態の簡易便器31の使用方法においても、糞尿処理剤は水和反応により糞尿を発熱処理することになる。この糞尿処理剤を用いた糞尿処理において、糞尿処理剤の使用量、撹拌方法、混合開始温度、処理場所等は第1の実施形態の使用方法と同様である。
【0112】
第4の実施形態の簡易便器31の使用方法は、基本的に第3の実施形態の使用方法と同様の作用効果を奏するが、特に第4の実施形態の使用方法によれば、糞尿を発熱処理する際に容器34の上部開口部を蓋体35で覆うので、水蒸気の飛散を防止することができ、その後も使用済み容器34の上部開口部を覆うことにより衛生的である。
【0113】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。例えば糞尿処理剤としては、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、例えば生石灰から構成された糞尿処理剤等の任意の形態の糞尿処理剤が使用され得る。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、トイレットの関連分野に好適に用いられうる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明に係る簡易便器の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態の簡易便器の内部構造を示す模式図である。
【図3】第1の実施形態の簡易便器の使用状態を示す平面図である。
【図4】容器の平面形状の一例を示す図である。
【図5】第2の実施形態の容器の斜視図である。
【図6】内方に折り曲げられた内蓋の平面図である。
【図7】図7は、内方に折り曲げられた外蓋の平面図である。
【図8】内蓋の上面に吸水材及び活性炭をセットした状態を示す側面図である。
【図9】図8の右方向から見た図である。
【図10】第2の実施形態の容器の変形例の斜視図である。
【図11】へら用部分を示す図である。
【図12】製作されたへらの斜視図である。
【図13】上面が開放された中空の長円柱体である容器の一例を示す斜視図である。
【図14】図13の容器の側面の展開図を示す図である。
【図15】第3の簡易便器の使用状態を示す模式図である。
【図16】第3の実施形態における内材の折り畳み手順を示す模式図である。
【図17】第4の簡易便器の使用状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0116】
1 簡易便器、
2 内材、
3 外材、
4 容器、
5 蓋体、
6 排便取入れ口、
7 挿入開口部、
8 保護シート、
9 活性炭、
10 既設便器、
11 便座、
21 簡易便器、
23 袋体、
24 容器、
31 簡易便器、
34 容器、
35 蓋体
40、40a、60 容器、
41 蓋体、
42 内蓋、
43 外蓋、
46 内蓋窓、
50 外蓋窓、
52 吸水材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ての簡易便器、糞尿処理簡易便器セットおよびその使用方法に係り、より詳しくは、例えば疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰および発熱剤を含む糞尿処理剤を用いて、便器に受けた糞尿の発熱処理が可能な簡易便器、糞尿処理簡易便器セットおよび簡易便器の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地震等の災害による長期の停電および断水時等においては、トイレットが使用できなくなり、各家庭では糞尿が大量に溜まってしまう。大量に溜まった糞尿からは悪臭が発散し続け、そのままにしておくと、その臭気により生活環境が著しく悪化してしまう。
【0003】
このような災害時には、例えば、糞尿をプラスチック製の袋に入れ、密封状態でとりあえず保管しておく方法等が採られているが、プラスチック製の袋は破損し易いため、保管中に破損して糞尿が漏れ出し、周囲に悪臭を発散させてしまう等の問題がある。また、プラスチック製の袋内で糞尿が時間とともに腐敗し、溜まった臭気ガスの圧力で袋内から臭気ガスが漏れ出てしまう等の問題もある。
【0004】
そこで、ダンボール紙製の組み立て構造体を使い捨ての簡易便器(簡易トイレット)とすること(特許文献1参照)や、木製や紙製等の枠体内にポリエチレン袋等の袋体を内装したものを簡易便器とし、糞尿を受ける袋体を使い捨てること(特許文献2および3参照)などが提案されている。
【0005】
また、糞尿を積極的に処理する方法としては、おが屑中に糞尿を導入し、おが屑および糞尿ともども攪拌して、糞尿中の微生物により糞尿を処理する方法(特許文献4参照)や、生石灰の微粒子の表面を高級脂肪酸、その塩およびそのエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の被覆剤で被覆してなる糞尿処理剤、ならびにそれを用いた糞尿の処理方法(特許文献5参照)などが提案されている。
【特許文献1】特開2006−296925号公報
【特許文献2】特開2000−1496号公報
【特許文献3】特開2006−223725号公報
【特許文献4】特開平11−300324号公報
【特許文献5】特開2002−210496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、使い捨ての簡易便器を使用しても、そのまま廃棄したのでは臭気を発し、また衛生面から好ましくなく、環境を汚染する虞がある。したがって、特許文献4および5のような糞尿処理方法との併用によって糞尿を処理した後に、簡易便器を廃棄することが好ましい。
【0007】
しかしながら、特許文献4に記載の処理方法は、微生物による処理であるため、処理能力に限界があり、処理速度も遅い等の問題がある。
【0008】
また、特許文献5に記載の生石灰の微粒子を含む糞尿処理剤を用いて、その水和反応により糞尿を発熱処理しようとすると、使い捨ての簡易便器(特許文献1〜3参照)の場合には、反応熱で焦げて穴が開いたり、引火したりするなどの虞があるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、糞尿の発熱処理に適応して衛生的に廃棄して、使い捨て可能な簡易便器を安価に提供すること、糞尿処理簡易便器セットおよび簡易便器の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的は、下記の手段により達成される。
【0011】
(1)容器状に成形され、少なくとも糞尿を受ける内面が撥水性を有する撥水素材で形成された内材と、該内材の外側に配置される耐熱性又は断熱性を有する外材と、を備えてなることを特徴とする簡易便器。
【0012】
(2)可燃性素材により形成された容器内に、前記外材を介して、前記内材を内装したことを特徴とする、(1)に記載の簡易便器。
【0013】
(3)前記容器は蓋体を備え、該蓋体には前記容器内に投入される糞尿処理剤の撹拌開口部が開設されていることを特徴とする、(2)に記載の簡易便器。
【0014】
(4)前記蓋体は、内蓋と、当該内蓋を上から覆う外蓋とを有し、前記内蓋及び前記外蓋の各一辺は前記容器の開口部にそれぞれ連接されていることを特徴とする、(3)に記載の簡易便器。
【0015】
(5)前記内蓋と前記外蓋との間には、吸水材及び活性炭を配置するための空間が形成されていることを特徴とする、(4)に記載の簡易便器。
【0016】
(6)前記蓋体は、前記容器と分離して形成されていることを特徴とする、(3)に記載の簡易便器。
【0017】
(7)前記蓋体には、活性炭の挿入開口部が開設されていることを特徴とする、(6)に記載の簡易便器。
【0018】
(8)前記内材が容器として折り畳み成形され、前記外材が既設便器内に内装可能な袋体であることを特徴とする、(1)に記載の簡易便器。
【0019】
(9)前記内材の撥水面でない側の面に、前記外材が層状に形成され、これらが容器として折り畳み成形されることを特徴とする、(1)に記載の簡易便器。
【0020】
(10)前記撥水素材は、一方の面に樹脂層を有する可燃性素材であることを特徴とする、(1)から(9)のいずれか1つに記載の簡易便器。
【0021】
(11)前記外材は、80℃以上450℃以下の温度において難燃性を有する素材を有することを特徴とする、(1)から(10)のいずれか1つに記載の簡易便器。
【0022】
(12)前記(1)から(11)のいずれか1つに記載の簡易便器と、該便器内に受けた糞尿を発熱処理する糞尿処理剤と、を備えていることを特徴とする糞尿処理簡易便器セット。
【0023】
(13)前記(5)に記載の簡易便器と、該便器内に受けた糞尿を発熱処理する糞尿処理剤と、吸水材と、活性炭と、を備えていることを特徴とする糞尿処理簡易便器セット。
【0024】
(14)前記糞尿処理剤が、少なくとも、疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰および発熱剤を含む粉体剤であることを特徴とする(12)または(13)に記載の糞尿処理簡易便器セット。
【0025】
(15)前記(1)に記載の簡易便器に糞尿を受け、該便器内の糞尿と糞尿処理剤とを混合して、発熱反応により糞尿を処理することを特徴とする簡易便器の使用方法。
【0026】
(16)前記(5)に記載の簡易便器に糞尿を受け、前記内蓋を閉じて当該内蓋の上に吸水材を載せると共に、当該吸水材の上に活性炭を載せ、当該活性炭の上から前記外蓋を閉じ、該便器内の糞尿と糞尿処理剤とを混合して、発熱反応により糞尿を処理することを特徴とする簡易便器の使用方法。
【0027】
(17)前記簡易便器を既設便器の便座内に配置することを特徴とする(15)または(16)に記載の簡易便器の使用方法。
【0028】
(18)前記簡易便器の前記外材を既設便器内に内装した後、該外材内に前記内材を配置して糞尿を受け、前記糞尿処理剤により糞尿を処理することを特徴とする(15)に記載の簡易便器の使用方法。
【0029】
(19)前記糞尿処理剤により糞尿を発熱処理する際に、前記簡易便器の上部開口部を蓋体で覆うことを特徴とする(15)に記載の簡易便器の使用方法。
【0030】
(20)前記糞尿処理剤が、少なくとも、疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰および発熱剤を含む粉体剤であることを特徴とする(15)から(19)のいずれか1項に記載の簡易便器の使用方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る簡易便器によれば、糞尿を受ける容器状の内材が撥水素材で形成され、その少なくとも糞尿が接触する内面が撥水性を有するので、内材内に受けた糞尿の水分が外に漏れ出ることはない。また、内材の外側に耐熱性又は断熱性を有する外材が配置されているので、内材の内側で発生した熱から保護することができる。したがって、内材内に受けた糞尿に糞尿処理剤を混合して、発熱反応により糞尿を処理しても、簡易便器が反応熱で焦げて穴が開いたり、引火したりするのを防止することができる。よって、糞尿の発熱処理に適応して衛生的に廃棄して、使い捨て可能な簡易便器を安価に提供することができる。
【0032】
また、糞尿処理簡易便器セットによれば、糞尿を発熱処理する糞尿処理剤と、発熱処理しても焦げて穴が開いたり、引火したりしない簡易便器と、を組み合わせているので、糞尿の発熱処理後に衛生的に簡易便器を廃棄しうる。
【0033】
また、本発明に係る簡易便器の使用方法によれば、簡易便器に受けた糞尿と糞尿処理剤とを混合することにより、処理後において、糞尿を粉末化できるため、取り扱い性に優れ、輸送コストが安価である等の利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0035】
〔第1の実施形態の簡易便器〕
図1は本発明に係る簡易便器の第1の実施形態を示す斜視図である。図2は第1の実施形態の簡易便器の内部構造を示す模式図である。図3は第1の実施形態の簡易便器の使用状態を示す平面図である。
【0036】
図1および図2を参照して、本発明に係る簡易便器の基本形態は、容器状に成形され、撥水素材で形成された内材2と、この内材2の外側に配置される耐熱性又は断熱性を有する外材3と、を備えており、後述する第2および第3の実施形態においても同様である。第1の実施形態の簡易便器1は、具体的には、可燃性素材により形成された容器4内に、外材3を介して、内材2を内装している。
【0037】
容器4は、例えば、底面が矩形で上面が開放された箱体状(上面が開放された中空直方体状)を呈しているが、他の形状であってもよく、容器形状は限定されない。例えば、図4に示すように、容器4の前方の幅を縮めて上方から見た形を台形としてもよい。このように構成することにより、使い勝手が良くなる。容器4を可燃性素材としたのは、焼却物としての廃棄を可能にするためであり、例えば、ダンボール紙、ボール紙、または木材等が挙げられるが、本実施形態では、軽量化を考慮するとダンボール紙で成形することが好ましい。
【0038】
内材2は糞尿を直接受ける部材であり、少なくとも糞尿を受ける内面(糞尿接触面)が撥水性を有する撥水素材により形成されている。内材2としては、例えば、紙、ビニール、木材等の可燃性素材の一方の面にシリコン樹脂等の樹脂をコーティングまたはラミネート等したものが挙げられ、特に剥離紙(離型紙)が好適に用いられる。
【0039】
前記容器4と内材2との間に介設される外材3は、例えば、80℃以上450℃以下の温度において難燃性(耐熱性)、又は断熱性を有する素材により形成されており、前記内材2の外側に配置されて、内材2の耐熱性又は断熱性、および強度を補っている。80℃以上の温度で難燃性を要求するのは、後述する糞尿処理剤の水和反応により系内が80℃〜95℃に達するからである。450℃以下の温度で難燃性を要求するのは、後述する糞尿処理剤が粉体であるため系内で熱が伝達され難く、その水和反応による発熱時に局部的に200℃〜400℃近くに上昇していると推察されるからである。耐熱性素材としては、例えば、エアフォームやポリエステル,ナイロン,ポリエチレン等にアルミニウム箔を蒸着したアルミ蒸着フィルム材、ナイロン蒸着ビニール材、ガラスやセラミック,シリカ,アルミナ等の繊維材、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂ラミネート紙、ポリエチレン(PE)等の樹脂発泡断熱紙、またはエンボス加工紙スリーブ、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP),エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)等の樹脂加工材などが挙げられる。なお、外材3として、厚めのダンボール紙を使用することも可能である。このように構成すれば、断熱効果を得ることができると共に、コストを低減することも可能となる。
【0040】
すなわち、箱体状の容器4内に、外材3および内材2が層状に重ね合わされている。図1および図3を参照して、外材3および内材2を備えた容器4は、その上部開口部を覆う蓋体5を備えており、この蓋体5の略中央部には、簡易便器1内に後述する糞尿処理剤を投入し、へら等を挿入して糞尿と混合して撹拌するための撹拌開口部6が開設されている。本実施形態では、蓋体5は容器4と分離して形成されている。なお、撹拌開口部6は楕円形状を呈しているが、長円孔や長方形孔など形状は限定されない。
【0041】
なお、外材3および内材2を備えた容器4の上部開口部を蓋体5で覆ったまま排便を行うことも可能であり、この場合には、撹拌開口部6を排便取入れ口として使用することができ、例えば、既設便器10の便座11内に配置して使用し、その際に排便取入れ口は使用者が排便し易い部位に位置するように開設される。
【0042】
また、この蓋体5の撹拌開口部6の長手方向両側には、活性炭9の挿入開口部7が開設されている。この挿入開口部7は一対の矩形状の長孔として形成されているが、その形状、数、開設位置は限定されない。活性炭9は、例えば、不織布等の袋内に収容されている。活性炭9は、前記挿入開口部7を覆うように上方から装着される。なお、活性炭9は、前記挿入開口部7の位置に蓋体5の内側から装着されてもよい。
【0043】
排便取入れ口6および挿入開口部7には、臭気漏れ等を防止するため、例えば、内部を視認可能な無色透明、有色透明、または半透明のナイロン(登録商標)を蒸着した耐熱性ビニール等の保護シート8が蓋体5の内側から装着されている。この保護シート8は、糞尿処理剤を投入したり、撹拌用のへら等を挿入し易いように、例えば、その幅方向中央部においてシート同士が重なり合うように装着されている。
【0044】
なお、前述したように、内材2がシート状やフィルム状である場合には、本実施形態のように、前記容器4内に、外材3を介して、内材2を内装する。しかし、これに限るものではなく、例えば、内面側に樹脂コーティングまたは樹脂ラミネートしたダンボール紙等を材料として、内材2自体を箱体状の容器として形成し、その外側を外材3で覆う構造に形成し、前記容器4を省略してもよい。
【0045】
以上のように構成された第1の実施形態の簡易便器1によれば、糞尿を受ける内材2の少なくとも糞尿が接触する内面が撥水性を有する撥水素材で形成されているので、内材2内に受けた糞尿の水分が内材2の外に漏れ出ることはない。また、内材2の外側に耐熱性又は断熱性を有する外材3が配置されているので、内材2の内側で発生した熱から保護することができる。また、強度を外材3により補うことができる。したがって、後述するように、内材2内に受けた糞尿と糞尿処理剤とを混合して、糞尿処理剤に含まれる生石灰の水和反応する際、糞尿処理剤が粉体剤であるため系内が局部的に200℃〜400℃近くの温度に上昇しても、簡易便器1が反応熱で焦げて穴が開いたり、引火するのを防止することができる。このように本実施形態によれば、糞尿の発熱処理に適応して衛生的に廃棄して、使い捨て可能な簡易便器1を安価に提供することができる。
【0046】
また、この簡易便器1は、後述する糞尿処理剤と組み合わせて、糞尿処理簡易便器セットとしても構成することができる。この糞尿処理簡易便器セットによれば、糞尿を発熱処理する糞尿処理剤と、この糞尿処理剤により発熱処理しても焦げて穴が開いたり、引火したりしない簡易便器1と、を組み合わせているので、糞尿の発熱処理後に衛生的に使用後の簡易便器を廃棄しうる。糞尿処理剤の具体的成分については後述する。
【0047】
次に、前述のように構成された第1の実施形態の簡易便器1の使用方法を説明する。
【0048】
図3(a)を参照して、第1の実施形態の簡易便器1は、例えば、既設便器10の便座11内に配置して使用される。このように簡易便器1を前記便座11内に配置する場合、糞尿を受け易いように、蓋体5を取った状態で配置する。これに限定されるものではなく、外材3および内材2を備えた容器4の上部開口部を蓋体5で覆ったままで簡易便器1を使用する場合には、簡易便器1の蓋体5の撹拌開口部6を排便取入れ口として使用し、この排便取入れ口は使用者が排便し易い部位に位置することになる。これらは、使用状態の一例であり、例えば、介護ベッドなどトイレット以外の場所で使用しても構わない。
【0049】
第1の実施形態の簡易便器1における内材2内に使用者の排便を受けた後、外材3および内材2を備えた容器4の上部開口部を蓋体5で覆い、内材2内の糞尿に撹拌開口部6から糞尿処理剤を添加し、この撹拌開口部6からへら等を挿入して糞尿と糞尿処理剤とを混合して、発熱反応により糞尿を処理する。糞尿処理剤は、疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰および発熱剤を含む粉体剤であり、さらに必要に応じて、吸水材および/または添加剤を含有していてもよい。以下、糞尿処理剤の構成成分について詳述する。
【0050】
(表面処理される生石灰)
本発明で用いられる表面処理される生石灰(CaO)の形態は、特に限定されないが、大便に対して効果的に分散させるという観点から、粉粒状であることが好ましい。また、その平均粒径は、0.1μm〜5mmの範囲であることが好ましく、0.5μm〜2mmの範囲であることがより好ましく、1μm〜1mmの範囲であることが特に好ましい。前記表面処理される生石灰の平均粒径が0.1μm未満である場合には、製造が困難となり生産コストが高くなる場合がある。一方、5mmより大きい場合には、得られる糞尿処理剤と糞尿との接触面積が減少し、反応効率が低下する場合がある他、糞尿処理時に塊状物が生じ、未反応物が残存する場合がある。また、必要に応じて、前記表面処理される生石灰は、平均粒径の異なる2種以上の生石灰を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明において、前記平均粒径は、粒度分布測定装置により測定した値を採用するものとする。
【0051】
(疎水性の被覆剤)
本発明で用いられる疎水性の被覆剤は、該被覆剤を使用して生石灰の表面を処理した際に、生石灰に対して疎水性を付与することができ、かつ、被覆後の生石灰を粉粒状にし易くする化合物であることが好ましい。
【0052】
前記被覆剤の具体例としては、例えば、パラフィン、ステアリルアミン、高級脂肪酸、高級脂肪酸の塩、または高級脂肪酸のエステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物などが挙げられ、これらの中でも、高級脂肪酸、高級脂肪酸の塩、および高級脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。かかる高級脂肪酸としては、炭素数8〜26の一価または多価の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数8〜24の一価または多価の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸がより好ましく、炭素数10〜20の一価の飽和脂肪酸が特に好ましい。前記高級脂肪酸の具体例としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などが挙げられる。前記高級脂肪酸の塩の具体例としては、アンモニウム塩;ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;またはカルシウム塩、マグネシウム塩などの第2族の金属塩などが挙げられる。また、前記高級脂肪酸のエステルの具体例としては、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、sec−ブチルエステル、tert−ブチルエステル、イソブチルエステル、n−ヘキシルエステルなどのアルキルエステル;またはシクロヘキシルエステルなどのシクロアルキルエステルなどが挙げられる。
【0053】
被覆剤の使用量は、表面処理される生石灰に対し、0.01〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜3質量%の範囲であることがより好ましく、0.4〜1.5質量%の範囲であることが特に好ましい。被覆剤の使用量が、0.01質量%未満である場合には、糞尿処理時に、十分な反応遅延効果が得られず、急激に反応が進行し、均一な混合ができないために塊状物が生成する他、反応生成物の疎水性が保たれず、水分の混入等により元の糞尿の形態に戻る虞がある。一方、10質量%を超える場合には、生石灰の活性表面積が減少するため効率的に反応が進行しない虞がある他、コストが高くなる虞がある。
【0054】
(疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰)
疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰の製造方法は、本発明の糞尿処理剤およびそれを用いた糞尿処理方法に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。具体的には、例えば、被覆剤の融点よりも高い温度において、生石灰粉末と被覆剤とを混合する方法、または被覆剤の融点より若干低い温度に保持した生石灰粉末に、攪拌下、前記被覆剤の溶融物を噴霧する方法等が好ましく挙げられる。また、前記生石灰は、通常、炭酸カルシウムを焼成して製造されるため、焼成により得られた生石灰を所定の温度まで冷却した後、前記の表面処理方法に付すこともまた好ましい。前記の表面処理した生石灰は、必要に応じて、異なる使用量の被覆剤を用いて表面処理した生石灰を、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0055】
前記の表面処理した生石灰の形状は、特に限定されないが、粉粒状であることが好ましい。また、その平均粒径は、0.1μm〜5mmの範囲であることが好ましく、0.5μm〜2mmの範囲であることがより好ましく、1μm〜1mmの範囲であることが特に好ましい。
【0056】
(発熱剤)
本発明で用いられる発熱剤は、本発明の簡易便器の使用方法において悪影響を及ぼさない限り、特に制限されず、公知の発熱剤を使用することができるが、糞尿処理の系内において、水分、空気、または消石灰(Ca(OH)2)等との反応により発熱し、前記被覆剤の溶融に必要な熱量を供給しうる物質であることが好ましい。かかる発熱剤の具体例としては、例えば、生石灰、粉体アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、または無水塩化マグネシウム等が挙げられる。これらの化合物は単独でもまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
これらの中でも、糞尿処理にも寄与できるという観点から、生石灰を用いることが好ましい。この場合の生石灰の使用量は、前記表面処理した生石灰100質量部に対して、20〜200質量部の範囲であることが好ましく、処理後の処理物を粉末として得るという観点から、25〜150質量部の範囲であることがより好ましく、25〜100質量部の範囲であることが特に好ましい。生石灰の使用量が20質量部未満である場合には、発熱量が少なく、前記表面処理した生石灰の活性化が効率的に行えないために、糞尿処理時間が長くなる虞がる。一方、生石灰の使用量が200質量部を超える場合には、発生する過剰な熱量により、前記表面処理した生石灰が即座に活性化され、塊状物が生じ、未反応物が残存する虞がある。
【0058】
しかしながら、前記発熱剤の使用量は、前記の発熱剤が生石灰である場合の使用量に制限されず、前記被覆剤の種類および使用量、ならびに発熱剤の種類などに基づき適宜調整可能である。
【0059】
また、発熱剤として生石灰を用いる場合、形状は特に限定されないが、粉粒状であることが好ましい。また、その平均粒径は0.1μm〜5mmであることが好ましく、0.5μm〜2mmであることがより好ましい。
【0060】
なお、前記の疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰が、糞尿処理時に水分等との反応による凝集を起こさず、かつ、糞尿処理時の混合条件により効率的に粉砕されうる場合、または前記疎水性の被覆剤の欄で述べたような物理的および/もしくは化学的機構により、被覆剤で表面処理した生石灰の表面から被覆剤が剥離され、活性面が露出した生石灰と糞尿との反応により、本発明で使用される前記表面処理した生石灰の表面に存在する被覆剤溶融に必要な熱量が供給されうる場合等においては、前記の表面処理した生石灰を発熱剤として使用することも可能である。
【0061】
(吸水材)
本発明の糞尿処理剤は、吸水材をさらに含むことが好ましい。本発明で用いられうる吸水材は、活性な生石灰と糞尿との反応を制御する観点、すなわち、糞尿中に含まれる水分が、一度に生石灰の活性表面と反応して凝集により塊状物を生成し、未反応の糞尿が残存することを抑制する観点から添加されるものである。前記吸水材は、本発明の糞尿処理剤およびそれを用いた糞尿処理方法において悪影響を及ぼさない限り、特に制限はなく、公知の物質を使用することができるが、吸水性を有し、かつ吸水した水分が、生石灰の活性表面との接触において反応しうる物質であることが好ましい。かかる吸水材の例としては、例えば、おが屑、水溶紙、繊維束、不織布、ピートモス、または草炭等が挙げられる。これらは単独でもまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。吸水材の使用量は、吸水材の種類や形状、および被処理物である糞尿中に含まれる水分量などにより適宜調整可能であるが、糞尿処理剤100質量部に対して、1〜10質量部の範囲であることが好ましく、2〜6質量部の範囲であることがより好ましい。
【0062】
(添加剤)
本発明の糞尿処理剤は、本発明の糞尿処理剤およびそれを用いた糞尿処理方法において悪影響を及ぼさない限り、吸水材に代えてまたは吸水材に加えてその他の添加剤をさらに含有していてもよい。かかる添加剤の例としては、臭気対策の観点から、香料、消臭剤、または脱臭剤;前記表面処理した生石灰の水に対する濡れ性を向上させるという観点から、アルコール等の親水性有機化合物、または界面活性剤;糞尿中の水分含量を制御するという観点から、シリカゲル、無水硫酸ナトリウム等の乾燥剤、吸水性樹脂等の保水剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独でもまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0063】
前記香料の例としては、例えば、レモンオイル、レモングラス、シナモン油、ラベンダー油、ベチパー等が挙げられる。
【0064】
前記界面活性剤としては、各種の界面活性剤を使用することができ、その具体的な例としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤;アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホサクシネート、アルキルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート、アリールスルホネートなどのアニオン系界面活性剤;長鎖第1級アミン塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルピリジニウム塩、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリドなどのカチオン系界面活性剤;または塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、塩酸アルキルポリアミノエチルグリシンなどの両性系界面活性剤等が挙げられる。
【0065】
また、糞尿処理剤を糞尿に添加する際に用いられうる、後述の水溶性樹脂からなる包袋、水溶紙からなる包袋、または水解性不織布からなる包袋も、本発明の糞尿処理剤の添加剤として含有されうる。
【0066】
(糞尿処理剤)
本発明の糞尿処理剤の調製方法は、特に制限されず、例えば、疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰、および発熱剤を混合し、必要に応じて、さらに吸水材および/または所望の添加剤を混合する方法等が挙げられる。
【0067】
前記表面処理した生石灰は、疎水性の被覆剤で被覆されているため、得られる糞尿処理剤の耐湿性が高まるだけではなく、糞尿処理時に糞尿と接触してもすぐには反応を起こさない反応遅延性を有していることから、生石灰の活性表面と直ちに接触して塊状物等を生成することがない。したがって、糞尿と本発明の糞尿処理剤とは均一に混合されうる。しかし、前記被覆剤として高級脂肪酸、特に炭素数が15〜26である高級脂肪酸を使用した場合には疎水性がより高く、水分を多く含有する糞尿と混合すると攪拌が困難となる場合がある。このような場合には、粉体の攪拌を容易にするという観点から、界面活性剤等の添加剤または比較的疎水性の低い高級脂肪酸の塩、特に炭素数が8〜14である高級脂肪酸の塩を糞尿処理剤にさらに添加して使用してもよい。
【0068】
前記糞尿処理剤を糞尿に添加する方法としては、特に限定されないが、取り扱いの容易性等の観点から、例えば、前記糞尿処理剤を予め包袋に入れておき、糞尿処理時に前記包袋をそのまま糞尿に添加する方法が好ましい。この場合の包袋は、糞尿処理時に糞尿処理剤が糞尿に効率的に拡散するよう、水溶性樹脂からなる包袋、水溶紙からなる包袋、または水解性不織布からなる包袋であることが好ましい。なお、これらの態様を含め、前記糞尿処理剤は、耐湿、耐水条件下で保存することが好ましい。
【0069】
次に、前記糞尿処理剤を用いた糞尿処理について説明する。
【0070】
前述したように、糞尿処理は、簡易便器1の内材2内に受けた糞尿と前記糞尿処理剤と糞尿とを混合して行う。糞尿は、大便単独でもよいし、小便単独でもよいし、大便と小便との混合物であってもよい。
【0071】
前記糞尿処理剤の使用量は、被処理物である糞尿100質量部に対し、1〜200質量部の範囲であることが好ましく、10〜150質量部の範囲であることがより好ましく、80〜120質量部であることがさらに好ましい。前記使用量が、1質量部未満である場合には、糞尿の吸着処理が十分に行えず、未反応物が残存してしまう虞がある。一方、200質量部より多い場合には、処理効率が悪くなる虞がある。
【0072】
糞尿処理は、本発明の簡易便器の使用方法に悪影響を及ぼさない限り、特に制限されず、例えば、トイレット内において簡易便器1内の糞尿に前記糞尿処理剤を添加し攪拌する処理方法、またはベランダ、風呂場、庭先等のトイレット外に簡易便器1を移動させて、簡易便器1内の糞尿に前記糞尿処理剤を添加し攪拌する処理方法などが挙げられる。
【0073】
前記のような処理により発熱剤が糞尿との反応により発熱して、前記表面処理した生石灰の被覆剤を溶融し生石灰の活性表面を露出させ、前記生石灰が、さらに糞尿中の水分と反応して発熱すると共に、反応生成物である水酸化カルシウムが糞尿を吸着することにより処理後の物質は粉末として得られる。こうして得られた処理後の粉末は、前記被覆剤の効果により疎水性を有し、雨水等の水分の混入等によっても元の糞尿の形態に戻ることはない。また、前記の処理系内は、温度が80〜95℃にも達し、かつ、強アルカリ性であるため糞尿中の菌を殺菌することができ、処理後の物質の腐敗による悪臭の発生を抑制することができる。
【0074】
〔第2の実施形態の簡易便器〕
次に、本発明に係る簡易便器の第2の実施形態について説明する。図5は第2の実施形態の容器の斜視図である。以下、第1の実施形態と相違する点について説明し、共通する点については適宜説明を省略する。
【0075】
図5に示すように、第2の実施形態の容器40は、第1の実施形態と同様に、底面が矩形で上面が開放された箱体状(上面が開放された中空直方体状)を呈している。但し、第1の実施形態では、蓋体5は容器4と分離して形成されているが、第2の実施形態では、蓋体41は、内蓋42と、当該内蓋42を上から覆う外蓋43とを有し、内蓋42及び外蓋43の各一辺は容器40の開口部44にそれぞれ連接されている。
【0076】
一対の内蓋42は、開口部44の対向する一対の辺にそれぞれ連接されている。図5に示すように、内蓋42には切り欠き45が形成されている。
【0077】
図6は、内方に折り曲げられた内蓋の平面図である。図6に示すように、一対の内蓋42が開口部44に向けて内方に折り曲げられると、中央に内蓋窓46が形成される。但し、内蓋42は、必ずしも一対のでなくてもよく、開口部44の全体を覆うことが可能な、中央に内蓋窓46が形成された1枚の板状の蓋であってもよい。なお、一対の内蓋42の先端部近傍42a同士は、例えば両面接着剤等により接合される。但し、一対の内蓋42の先端部近傍42a双方に係合部を形成して相互に係合させてもよい。
【0078】
外蓋43は、開口部44の内蓋42が連接される2つの辺の間の辺に連接されている。この外蓋43は、開口部44側の遊び部47と、中央に外蓋窓50が形成された遊び部47に連接された本体部48と、本体部48に連接され開口部44に挿入され得る爪部49とを有している。図7は、内方に折り曲げられた外蓋の平面図である。図5に示すように、遊び部47と本体部48との間には、折り曲げ線51が形成されている。遊び部47の幅は例えば2cm程度が好ましい。
【0079】
外蓋窓50には、臭気漏れ等を防止するため、例えば、内部を視認可能な無色透明、有色透明、または半透明のナイロン(登録商標)を蒸着した耐熱性ビニール等の保護シートが外蓋43の内側から装着されていることが好ましい。この保護シートは、糞尿処理剤を投入したり、撹拌用のへら等を挿入し易いように、例えば、その幅方向中央部においてシート同士が重なり合うように装着されていることが好ましい。
【0080】
図8は、内蓋の上面に吸水材及び活性炭をセットした状態を示す側面図、図9は、図8の右方向から見た図である。図9に示すように、折り曲げ線51に沿って外蓋43を内方に折り曲げると、内蓋42と外蓋43との間には、吸水材52及び活性炭9を配置するための空間が形成される。
【0081】
活性炭9は、例えば、不織布等の袋内に収容されている。
【0082】
吸水材52は、スポンジのように水分を吸収する布等のシート状部材である。材質としては、例えばアクリル等が挙げられる。条件としては、水蒸気の熱で変質しない材質が望ましい。
【0083】
使用の際には、簡易便器に糞尿を受け、内蓋42を閉じた後、内蓋42の上に吸水材52が載せられ、吸水材52の上に活性炭9が載せられる。続いて、活性炭9の上から外蓋43が閉じられる。なお、外部からへら等を挿入するために蓋体41の中央部を塞がないように吸水材52および活性炭9を形成ないし配置することが好ましい。吸水材52および活性炭9は、それぞれ、1枚ものであっても、複数個に分割されたものであってもよい。そして、該便器内の糞尿と糞尿処理剤とを混合して、発熱反応により糞尿を処理する。
【0084】
このように活性炭9の下に吸水材52を配置すれば、活性炭9の孔が初期に水蒸気で塞がってしまうために臭気ガスの吸着が低下することが防止される。
【0085】
第2の実施形態の簡易便器は、基本的に第1の実施形態と同様の作用効果を奏するが、特に第2の実施形態によれば、容器の形態がより簡易となり、例えば平面状に折り畳んだ状態で保管も可能となる。
【0086】
図10は、第2の実施形態の容器の変形例の斜視図である。図10に示す容器40aは、外蓋43が先端側、すなわち爪部49の外側にミシン目54を介して、へらを製作し得るへら用部分53をさらに有している点で、図5の容器40と相違している。
【0087】
使用の際には、図11に示すように、外蓋43から、へら用部分53をミシン目54に沿って切り取る。切り取られたへら用部分53のミシン目55に沿って切り目を入れ、一対の折り曲げ線56に沿って上方に折り曲げると、図12に示すようなへらが製作される。このように、へらが簡単かつ容易に製作できるので、利便性が向上する。
【0088】
第1の実施形態および第2の実施形態において、容器4、40、40aは、底面が四角形で上面が開放された箱体を呈しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の容器は、上面が開放された中空円柱体、中空楕円柱体等の他の形状であってもよく、容器の形状は限定されない。
【0089】
図13は、上面が開放された中空の長円柱体である容器の一例を示す斜視図、図14は、図13の容器の側面の展開図を示す図である。この場合、例えば底面および蓋体としてダンボール紙等の各種板材が使用され得る。
【0090】
容器60の側面61は、差し込んで結合するための爪部62と、爪部62が差し込まれ得る複数のスリット63とを有している。このように構成すれば、爪部62を差し込む位置を適宜変更することにより容器60の大きさを調整することができ、利便性が向上する。
【0091】
〔第3の実施形態の簡易便器〕
次に、本発明に係る簡易便器の第3の実施形態について説明する。図15は第3の実施形態の簡易便器の使用状態を示す模式図である。図16は第3の実施形態における内材の折り畳み手順を示す模式図である。
【0092】
前述したように、本発明に係る簡易便器は、撥水素材で形成された内材2と、この内材2の外側に配置される耐熱性又は断熱性を有する外材3と、を備えている。図15を参照して、第3の実施形態の簡易便器21は、具体的には、内材2が容器として折り畳み成形され、外材3が既設便器10内に内装可能な袋体23により構成されている。
【0093】
内材2は、折り畳んだ状態で保管され、使用時には内部に空間ができるように開口縁部Fを拡げて容器状に成形される(図16(e)参照)。撥水素材としては、前述したように、例えば、紙、ビニール等の可燃性素材における一方の面にシリコン樹脂等の樹脂をコーティングまたはラミネート等したものが挙げられる。特に、本実施形態の内材2は容器状に折り畳み成形されるので、折り畳み成形し易いシート状またはフィルム状の撥水素材であることが好ましく、例えば、剥離紙(離型紙)が好適に用いられる。
【0094】
図16を参照して、シート状またはフィルム状の内材2の折り畳み手順を説明する。この折り畳み構造は内材2を容器24として折り畳み成形する一例であり、その構造や折り畳み手順等は限定されない。
【0095】
内材2は、例えば、正方形の剥離紙であって、上面(表面)に撥水加工が施されている。この内材2は、図16(a)のような展開した状態で、SL、L1、L2、L3、L4の各ラインを想定する。
【0096】
まず、図16(b)のように、正方形の対角線上のセンターラインSLを基準として、内側(上面側)へ折り畳んで直角二等辺三角形を作成する。次に、図16(c)のように、直角二等辺三角形の両側に左右対称に斜めに立ち上がった傾斜線L1およびL2を基準として、直角二等辺三角形の両側端部を内側へ折り畳んで重ね合わせ、五角形を作成する。次に、図16(d)のように、横線L3およびL4を基準として、五角形の上部に位置する直角二等辺三角形の部分を上面側(表面側)と下面側(裏面側)との相反する方向へそれぞれ折り畳んで重ね合わせ、逆台形を作成する。内材2は、この状態でも容器状に折り畳まれているが、図16(e)のように、開口縁部Fを外側へ折り返すことにより、開口縁部Fを補強でき、各折り畳み片を折り畳んだ状態に維持できる。そして、開口縁部Fを拡げれば、内材2は容器24として成形されることになる(以下、「内材容器24」ともいう。)。
【0097】
外材3の耐熱素材としては、80℃以上450℃以下の温度において難燃性(耐熱性)を有する素材、例えば、エアフォームやポリエステル,ナイロン,ポリエチレン等にアルミニウム箔を蒸着したアルミ蒸着フィルム材、ナイロン蒸着ビニール材、ガラスやセラミック,シリカ,アルミナ等の繊維材、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂ラミネート紙、ポリエチレン(PE)等の樹脂発泡断熱紙、またはエンボス加工紙スリーブ、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP),エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)等の樹脂加工材などが挙げられ、これらを利用して袋体23として形成される。特に袋体23は既設便器10の内側に沿って内装されるので、既設便器10の内形状に沿い易い柔軟性を有していることが好ましく、例えば、少なくとも内面にナイロンを蒸着したビニール袋が好適に用いられる。
【0098】
第3の実施形態の簡易便器21は、基本的に第1の実施形態および第2の実施形態の簡易便器と同様の作用効果を奏するが、特に第3の実施形態によれば、容器24として成形される内材2が折り畳み可能であり、外材3が袋体23であるため、不使用時の保管場所を取らない。
【0099】
また、この簡易便器21も、糞尿処理剤と組み合わせて、糞尿処理簡易便器セットとしても構成することができる。この糞尿処理簡易便器セットによれば、糞尿を発熱処理する糞尿処理剤と、この糞尿処理剤により発熱処理しても焦げて穴が開いたり、引火したりしない簡易便器21と、を組み合わせているので、糞尿の発熱処理後に衛生的に使用後の簡易便器21を廃棄しうる。
【0100】
次に、前述のように構成された第2の実施形態の簡易便器21の使用方法を説明する。
【0101】
図15を参照して、第3の実施形態の簡易便器21の使用方法は、例えば、前記簡易便器21を構成する耐熱性素材の外材3としての袋体23(ナイロン蒸着ビニール袋)を既設便器10の内側に沿って内装し、該袋体23の開口縁部を外側へ折り返して便座上を覆うように拡げる。既設便器10の内側に袋体23を内装した後、該袋体23内において、便座内に位置するように撥水素材の容器24として折り畳み成形した内材2を配置する。そして、この状態で使用者が排便することにより、内材容器24内に糞尿を受ける。排便後、トイレット内またはトイレット外において、内材容器24の耐熱性を補うべく、内材容器24の周囲に外材3としての袋体23を密着させ、内材容器24内の糞尿に糞尿処理剤を添加し、へら等で混合して、発熱反応により糞尿を処理する。糞尿処理剤には、第1の実施形態において詳述したと同一のもの、すなわち、疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰および発熱剤を含む粉体剤であって、必要に応じて、吸水材および/または添加剤を含有するものを用いる。したがって、第3の実施形態の簡易便器21の使用方法においても、糞尿処理剤は水和反応により糞尿を発熱処理することになる。この糞尿処理剤を用いた糞尿処理において、糞尿処理剤の使用量、撹拌方法、混合開始温度、処理場所等は第1の実施形態の使用方法と同様である。
【0102】
第3の実施形態の簡易便器21の使用方法は、基本的に第1の実施形態および第2の実施形態の使用方法と同様の作用効果を奏するが、特に第3の実施形態の使用方法によれば、糞尿の発熱処理後に袋体23の開口部を結んで閉じることにより、使用済みの内材容器24および処理後の物質を袋体23内に密封することができ、より衛生的であり、廃棄も容易である。
【0103】
〔第4の実施形態の簡易便器〕
次に、本発明に係る簡易便器の第4の実施形態について説明する。図17は第4の簡易便器の使用状態を示す模式図である。
【0104】
図17を参照して、第4の実施形態の簡易便器31は、具体的には、撥水素材の内材2の撥水面でない側の面に、耐熱性素材の外材3が層状に重ね合わされて形成され、これらが容器34として折り畳み成形されている。内材2と外材3とは、内材2の外側に外材3をコーティング、ラミネート、蒸着等により一体形成したシート状またはフィルム状の素材であってもよいし、単にシート状またはフィルム状の内材2と外材3とを重ね合わせたものであっても構わない。
【0105】
内材2および外材3は、例えば、図16に示したような折り畳み手順によって容器34として折り畳み成形される。内材2は、折り畳んだ状態で保管され、使用時には内部に空間ができるように開口縁部Fを拡げて容器状に成形される(図16(e)参照)。
【0106】
内材2としては、前述したように、例えば、紙、ビニール等の可燃性素材における一方の面にシリコン樹脂等の樹脂をコーティングまたはラミネート等したものが挙げられ、剥離紙(離型紙)が好適に用いられる。外材3としては、80℃以上450℃以下の温度において難燃性(耐熱性)を有する素材、例えば、エアフォームやポリエステル,ナイロン,ポリエチレン等にアルミニウム箔を蒸着したアルミ蒸着フィルム材、ナイロン蒸着ビニール材、ガラスやセラミック,シリカ,アルミナ等の繊維材、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂ラミネート紙、ポリエチレン(PE)等の樹脂発泡断熱紙、またはエンボス加工紙スリーブ、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP),エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)等の樹脂加工材などが挙げられる。特に、本実施形態の内材2および外材3は容器34として折り畳み成形されるので、折り畳み成形し易いシート状またはフィルム状の素材であることが好ましい。
【0107】
また、内材2および外材3により折り畳み成形された容器34には、糞尿を処理する際に該容器34の上部開口部を覆う蓋体35が備えられている。この蓋体35は、例えば、ダンボール紙により形成されている。
【0108】
第4の実施形態の簡易便器31は、基本的に第3の実施形態の簡易便器21と同様の作用効果を奏するが、特に第4の実施形態によれば、内材2および外材3が容器34として折り畳み成形されるので、第3の実施形態の袋体23が不要であり、使用に際して煩雑でない。
【0109】
また、この簡易便器31も、糞尿処理剤と組み合わせて、糞尿処理簡易便器セットとしても構成することができる。この糞尿処理簡易便器セットによれば、糞尿を発熱処理する糞尿処理剤と、この糞尿処理剤により発熱処理しても焦げて穴が開いたり、引火したりしない簡易便器31と、を組み合わせているので、糞尿の発熱処理後に衛生的に使用後の簡易便器31を廃棄しうる。
【0110】
次に、前述のように構成された第4の実施形態の簡易便器31の使用方法を説明する。
【0111】
図17を参照して、第4の実施形態の簡易便器31の使用方法は、例えば、既設便器10の便座内に位置するように、内材2および外材3を折り畳み成形した容器34を配置する。そして、この状態で使用者が排便することにより、容器34内に糞尿を受ける。排便後、トイレット内またはトイレット外において、この容器34内の糞尿に糞尿処理剤を混合して、発熱反応により糞尿を処理する。その際、容器34の上部開口部を蓋体35で覆う。糞尿処理剤には、第1の実施形態の簡易便器1の使用方法において詳述したと同一のもの、すなわち、疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰および発熱剤を含む粉体剤であって、必要に応じて、吸水材および/または添加剤を含有するものを用いる。したがって、第4の実施形態の簡易便器31の使用方法においても、糞尿処理剤は水和反応により糞尿を発熱処理することになる。この糞尿処理剤を用いた糞尿処理において、糞尿処理剤の使用量、撹拌方法、混合開始温度、処理場所等は第1の実施形態の使用方法と同様である。
【0112】
第4の実施形態の簡易便器31の使用方法は、基本的に第3の実施形態の使用方法と同様の作用効果を奏するが、特に第4の実施形態の使用方法によれば、糞尿を発熱処理する際に容器34の上部開口部を蓋体35で覆うので、水蒸気の飛散を防止することができ、その後も使用済み容器34の上部開口部を覆うことにより衛生的である。
【0113】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。例えば糞尿処理剤としては、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、例えば生石灰から構成された糞尿処理剤等の任意の形態の糞尿処理剤が使用され得る。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、トイレットの関連分野に好適に用いられうる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明に係る簡易便器の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態の簡易便器の内部構造を示す模式図である。
【図3】第1の実施形態の簡易便器の使用状態を示す平面図である。
【図4】容器の平面形状の一例を示す図である。
【図5】第2の実施形態の容器の斜視図である。
【図6】内方に折り曲げられた内蓋の平面図である。
【図7】図7は、内方に折り曲げられた外蓋の平面図である。
【図8】内蓋の上面に吸水材及び活性炭をセットした状態を示す側面図である。
【図9】図8の右方向から見た図である。
【図10】第2の実施形態の容器の変形例の斜視図である。
【図11】へら用部分を示す図である。
【図12】製作されたへらの斜視図である。
【図13】上面が開放された中空の長円柱体である容器の一例を示す斜視図である。
【図14】図13の容器の側面の展開図を示す図である。
【図15】第3の簡易便器の使用状態を示す模式図である。
【図16】第3の実施形態における内材の折り畳み手順を示す模式図である。
【図17】第4の簡易便器の使用状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0116】
1 簡易便器、
2 内材、
3 外材、
4 容器、
5 蓋体、
6 排便取入れ口、
7 挿入開口部、
8 保護シート、
9 活性炭、
10 既設便器、
11 便座、
21 簡易便器、
23 袋体、
24 容器、
31 簡易便器、
34 容器、
35 蓋体
40、40a、60 容器、
41 蓋体、
42 内蓋、
43 外蓋、
46 内蓋窓、
50 外蓋窓、
52 吸水材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器状に成形され、少なくとも糞尿を受ける内面が撥水性を有する撥水素材で形成された内材と、該内材の外側に配置される耐熱性又は断熱性を有する外材と、を備えてなることを特徴とする簡易便器。
【請求項2】
可燃性素材により形成された容器内に、前記外材を介して、前記内材を内装したことを特徴とする請求項1に記載の簡易便器。
【請求項3】
前記容器は蓋体を備え、該蓋体には前記容器内に投入される糞尿処理剤の撹拌開口部が開設されていることを特徴とする請求項2に記載の簡易便器。
【請求項4】
前記蓋体は、内蓋と、当該内蓋を上から覆う外蓋とを有し、前記内蓋及び前記外蓋の各一辺は前記容器の開口部にそれぞれ連接されていることを特徴とする請求項3に記載の簡易便器。
【請求項5】
前記内蓋と前記外蓋との間には、吸水材及び活性炭を配置するための空間が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の簡易便器。
【請求項6】
前記蓋体は、前記容器と分離して形成されていることを特徴とする請求項3に記載の簡易便器。
【請求項7】
前記蓋体には、活性炭の挿入開口部が開設されていることを特徴とする請求項6に記載の簡易便器。
【請求項8】
前記内材が容器として折り畳み成形され、前記外材が既設便器内に内装可能な袋体であることを特徴とする請求項1に記載の簡易便器。
【請求項9】
前記内材の撥水面でない側の面に、前記外材が層状に形成され、これらが容器として折り畳み成形されることを特徴とする請求項1に記載の簡易便器。
【請求項10】
前記撥水素材は、一方の面に樹脂層を有する可燃性素材であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の簡易便器。
【請求項11】
前記外材は、80℃以上450℃以下の温度において難燃性を有する素材を有することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の簡易便器。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の簡易便器と、該便器内に受けた糞尿を発熱処理する糞尿処理剤と、を備えていることを特徴とする糞尿処理簡易便器セット。
【請求項13】
請求項5に記載の簡易便器と、該便器内に受けた糞尿を発熱処理する糞尿処理剤と、吸水材と、活性炭と、を備えていることを特徴とする糞尿処理簡易便器セット。
【請求項14】
前記糞尿処理剤が、少なくとも、疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰および発熱剤を含む粉体剤であることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の糞尿処理簡易便器セット。
【請求項15】
請求項1に記載の簡易便器に糞尿を受け、該便器内の糞尿と糞尿処理剤とを混合して、発熱反応により糞尿を処理することを特徴とする簡易便器の使用方法。
【請求項16】
請求項5に記載の簡易便器に糞尿を受け、前記内蓋を閉じて当該内蓋の上に吸水材を載せると共に、当該吸水材の上に活性炭を載せ、当該活性炭の上から前記外蓋を閉じ、該便器内の糞尿と糞尿処理剤とを混合して、発熱反応により糞尿を処理することを特徴とする簡易便器の使用方法。
【請求項17】
前記簡易便器を既設便器の便座内に配置することを特徴とする請求項15または請求項16に記載の簡易便器の使用方法。
【請求項18】
前記簡易便器の前記外材を既設便器内に内装した後、該外材内に前記内材を配置して糞尿を受け、前記糞尿処理剤により糞尿を処理することを特徴とする請求項15に記載の簡易便器の使用方法。
【請求項19】
前記糞尿処理剤により糞尿を発熱処理する際に、前記簡易便器の上部開口部を蓋体で覆うことを特徴とする請求項15に記載の簡易便器の使用方法。
【請求項20】
前記糞尿処理剤が、少なくとも、疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰および発熱剤を含む粉体剤であることを特徴とする請求項15から請求項19のいずれか1項に記載の簡易便器の使用方法。
【請求項1】
容器状に成形され、少なくとも糞尿を受ける内面が撥水性を有する撥水素材で形成された内材と、該内材の外側に配置される耐熱性又は断熱性を有する外材と、を備えてなることを特徴とする簡易便器。
【請求項2】
可燃性素材により形成された容器内に、前記外材を介して、前記内材を内装したことを特徴とする請求項1に記載の簡易便器。
【請求項3】
前記容器は蓋体を備え、該蓋体には前記容器内に投入される糞尿処理剤の撹拌開口部が開設されていることを特徴とする請求項2に記載の簡易便器。
【請求項4】
前記蓋体は、内蓋と、当該内蓋を上から覆う外蓋とを有し、前記内蓋及び前記外蓋の各一辺は前記容器の開口部にそれぞれ連接されていることを特徴とする請求項3に記載の簡易便器。
【請求項5】
前記内蓋と前記外蓋との間には、吸水材及び活性炭を配置するための空間が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の簡易便器。
【請求項6】
前記蓋体は、前記容器と分離して形成されていることを特徴とする請求項3に記載の簡易便器。
【請求項7】
前記蓋体には、活性炭の挿入開口部が開設されていることを特徴とする請求項6に記載の簡易便器。
【請求項8】
前記内材が容器として折り畳み成形され、前記外材が既設便器内に内装可能な袋体であることを特徴とする請求項1に記載の簡易便器。
【請求項9】
前記内材の撥水面でない側の面に、前記外材が層状に形成され、これらが容器として折り畳み成形されることを特徴とする請求項1に記載の簡易便器。
【請求項10】
前記撥水素材は、一方の面に樹脂層を有する可燃性素材であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の簡易便器。
【請求項11】
前記外材は、80℃以上450℃以下の温度において難燃性を有する素材を有することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の簡易便器。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の簡易便器と、該便器内に受けた糞尿を発熱処理する糞尿処理剤と、を備えていることを特徴とする糞尿処理簡易便器セット。
【請求項13】
請求項5に記載の簡易便器と、該便器内に受けた糞尿を発熱処理する糞尿処理剤と、吸水材と、活性炭と、を備えていることを特徴とする糞尿処理簡易便器セット。
【請求項14】
前記糞尿処理剤が、少なくとも、疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰および発熱剤を含む粉体剤であることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の糞尿処理簡易便器セット。
【請求項15】
請求項1に記載の簡易便器に糞尿を受け、該便器内の糞尿と糞尿処理剤とを混合して、発熱反応により糞尿を処理することを特徴とする簡易便器の使用方法。
【請求項16】
請求項5に記載の簡易便器に糞尿を受け、前記内蓋を閉じて当該内蓋の上に吸水材を載せると共に、当該吸水材の上に活性炭を載せ、当該活性炭の上から前記外蓋を閉じ、該便器内の糞尿と糞尿処理剤とを混合して、発熱反応により糞尿を処理することを特徴とする簡易便器の使用方法。
【請求項17】
前記簡易便器を既設便器の便座内に配置することを特徴とする請求項15または請求項16に記載の簡易便器の使用方法。
【請求項18】
前記簡易便器の前記外材を既設便器内に内装した後、該外材内に前記内材を配置して糞尿を受け、前記糞尿処理剤により糞尿を処理することを特徴とする請求項15に記載の簡易便器の使用方法。
【請求項19】
前記糞尿処理剤により糞尿を発熱処理する際に、前記簡易便器の上部開口部を蓋体で覆うことを特徴とする請求項15に記載の簡易便器の使用方法。
【請求項20】
前記糞尿処理剤が、少なくとも、疎水性の被覆剤で表面処理した生石灰および発熱剤を含む粉体剤であることを特徴とする請求項15から請求項19のいずれか1項に記載の簡易便器の使用方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−11448(P2009−11448A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174256(P2007−174256)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(506190360)
【出願人】(507223133)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(506190360)
【出願人】(507223133)
【Fターム(参考)】
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