説明

簡易便器

【技術課題】 地震等の災害時に避難所等において、手軽に使用できる簡易便器を提供する。
【解決手段】 1枚のプラスチック板を枠体に形成することができると共に、このプラスチック板の上縁に係合部6を突設して成る便器本体1を1枚もので形成する。次に、前記便器本体1の係合部6が下方から貫通して係合することができる係合溝12を形成すると共に、中央に透穴10を形成して成る便座止板9と、前記便座止板9に続けて一体成形されていると共に、前記透穴10に対応する位置に便座穴16を形成して成る便座板15と、前記便座板15に続けて一体成形されている蓋板20と、から成るプラスチック板製の便座本体8を1枚もので形成する。更に、前記便座止板9と便座板15との間に周縁23を挟み込んで固定し、便座穴16及び透穴10を介して多角形に形成された便器本体1内に取り付け自在の排泄物収容袋21を形成し、上記便器本体1と便座本体8を組み立て、これに排泄物収容袋21を取り付けて使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平たく折り畳まれているものを簡単に組み立てて使用することができると共に、不使用時には平たく折り畳んで格納あるいは運搬することができる地震、水害、火災等でトイレが使用できないとき、あるいは、レジャーや乗物内において、手軽に使用できる折り畳み式の簡易便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震や水害等に際してトイレが使用できない時に、簡易に使用できる便器として、特開2003−19087号公報に掲載されている構造のものが公知である。
この簡易便器は、組立て、折り畳み、収納、および携帯が容易で耐荷重強度に優れた板紙製の折り畳み式簡易便器であって、簡易便器(10)は一枚の板紙の打ち抜き成形により形成されており、最初に一方の便座形成パネル(14R)を水平に折り曲げ、その上に排泄物収納袋(48)の縁枠(52)を載せ、次に他方の便座形成パネル(14L)を水平に折り曲げることにより簡易便器(10)に組立て、使用後は排泄物収納袋(48)を取り出し、逆の順序で簡易便器(10)を薄く折り畳んで収納することができるように構成したものである。
【0003】
しかし、上記簡易便器には、次のような欠点がある。
1.全体が紙製であることから、雨や水に濡れると強度が著しく低下してしまうため、 使用する場所や天気に気を遣う必要がある。
2.紙製であるため、水で汚れを洗い落とすことができないことから、使用を重ねると 清潔感が無くなる。
3.防臭についての工夫がない。
4.排泄物収容袋について密封手段がないため、処分するときに不便であると共に、内 部からの臭いが周囲に出てしまう。
5.便器に蓋が無いため、そのまま置いておくと抵抗があることから、その都度折り畳 む必要があり、不便であると共に、子供の場合にはこの折り畳みや、使用時の組み立 てができない場合があり、大人がいちいち手を貸す必要がある。
6.屋外等で使用する場合、露出した臀部を隠す手段がない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記した1〜6の欠点をすべて解消できる簡易便器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、簡易便器において、1枚のプラスチック板を折り曲げて4角形以上の多角形の枠体に形成することができると共に、前記枠体の上縁に係合部を突設して成る便器本体と、
前記便器本体を多角形状の枠体に形成したときに、その係合部が下方から貫通して係合することができる係合溝を形成すると共に、中央に透穴を形成して成る便座止板と、前記便座止板に折り畳み部を経由して一体に形成されていると共に、前記透穴に対応する位置に便座穴を形成して成る便座板、前記便座板に折り畳み部を経由して一体に形成されていると共に、前記便座板の上面を覆うことができる大きさの蓋板と、から成るプラスチック板製の便座本体と、
前記便座止板と便座板との間に周縁を挟み込んで固定し、便座穴及び透穴を介して多角形に形成された便器本体内に取り付けられる排泄物収容袋と、
から成ることを特徴とするものである。
【0006】
更に、請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の便座止板において、透穴の周囲には、複数箇所に突起が形成されていると共に、排泄物収容袋の周囲及び便座板には、前記突起に対応する位置に固定孔が形成されていて、便座に排泄物収容袋を固定したときに、この突起で排泄物収容袋が止められて、排泄物の重みで落下しないように構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
更に、請求項3に記載の発明においては、請求項1又は2の何れか1項に記載の排泄物収容袋には、密閉手段が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
更に、請求項4に記載の発明においては、請求項1〜3の何れか1項に記載の排泄物収容袋の内面には、消臭剤が塗布されていることを特徴とするものである。
【0009】
更に、請求項5に記載の発明においては、請求項1〜4の何れか1項に記載の排泄物収容袋は、プラスチックフィルム又は内面に防水層を形成した紙で製作されていることを特徴とするものである。
【0010】
更に、請求項6に記載の発明においては、請求項1〜5の何れか1項に記載の排泄物収容袋内には、吸水材が組み込まれていることを特徴とするものである。
【0011】
更に、請求項7に記載の発明においては、請求項1〜6の何れか1項に記載の排泄物収容袋は、原則として、1回ずつの使い捨てタイプであることを特徴とするものである。
【0012】
[作用]
使用に当っては、先ず便器本体を折り畳み部に沿って折り曲げることにより、平面四角形以上の多角形から成る枠体に形成し、この枠体上に、便座本体の便座止板を置き、便器本体の係合部を係合溝内に下方から貫通させることにより、便器本体側の多角形状の枠体を固定し、併せて便器本体上に便座本体を固定する。次に、排泄物収容袋の周縁を便座止板上に置き、袋を便器本体内に落とし込み、この上に便座板を折り畳んで便座止板上に重ね合わせると、前記排泄物収容袋の周縁は便座止板と便座板の間に挟まれて固定される。
使用する時は、この状態において、便座板の上に腰をかけて行う。
【0013】
排泄が終った場合には、便座板を開き、便座止板から排泄物収容袋を引き上げ、密閉手段で袋の口を閉じ、そのまま所定の場所に処分する。
次に使用する場合は、上記と同じく排泄物収容袋を便座本体に取り付けて行う。
便器を使用しない場合には、蓋板を閉じておくか、便器本体から便座本体を取り外し、便器本体及び便座本体を平たく折り畳んでおく。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果は次のとおりである。
1.全体をプラスチック製としたことにより、雨や水によって強度が低下したりしない 。
2.汚れた時は、水を用いて洗うことができる。
3.排泄物収容袋に消臭剤が備えられているため、臭いが出ない。
4.排泄物収容袋には密閉手段があるため、処分するときに臭いが周囲に出ない。
5.便器に蓋があるため、この蓋を閉じておくことで、仮に組み立てたまま人の目につ くところに置いても、抵抗がない。
6.便座本体に蓋板がついているため、この蓋板を立てて使用することにより、臀部を 外見に晒さないで済む。
【実施例】
【0015】
以下に、本発明の実施例を、図1〜図5に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係る簡易便器において、各部品を分解した状態の説明図、図2は、便器本体を展開した状態の説明図、図3(A)は、便座本体を展開した状態の説明図、(B)は、A−A′線部分の拡大断面図、図4は、本発明便器を使用している状態の説明図、図5は、排泄物を収容した袋を密閉して処分する状態の説明図である。
【0016】
先ず、便器本体1について説明する。この便器本体1は、図2に示すように、展開した状態において、平板状を呈するプラスチック板製であって、折り畳み部7を中央にして対称的に2枚の前面壁2、2aを形成し、更に、この前面壁2、2aの左右に、折り畳み部7を境として対称的に側面壁3、3aを形成し、更に、この側面壁3、3aの左右に折り畳み部7を境として対称的に後面壁4、4aを形成すると共に、この後面壁4、4aの左右に続いて、折り畳み部7を境として、小幅壁5、5aを形成し、更に、前記各壁の上縁中央部に、各壁の横幅よりやや小さい幅の係合部6を一体に形成した構成である。
【0017】
なお、折り畳み部7は、図2(B)に示すように、外側となる部位にカット部7aが形成され、内側となる部位には薄肉部7bが形成されていて、各壁は、この折り畳み部7で、半折り自在の構造となっている。
8は、便座本体であって、この便座本体8は、図1、図2に示すように、中央に透穴10を設けると共に、この透穴10をとり囲むように縁部11が形成され、更に、この縁部11には、前記便器本体1を折り畳み部7で多角形の枠体に形成したときに、各係合部6が下方から上向きに貫通して、便器本体1の形状を保つことができるように、係合溝12が形成されて、更に、上面4ヶ所には突起13が形成された便座止板9と、更に、この便座止板9に続いて、折り畳み部14を境にして内側に半折りすることができると共に、中央に前記便座止板9の透穴10に対応する位置に便座穴16を形成し、更に、前記突起13が係合する止穴18を4ヶ所に形成した便座板15と、この便座板15に続いて、折り畳み部19を境にして外側に半折りできる蓋板20とが一連に連なるようにして一体に形成されていて、素材はプラスチックである。
なお、この便座本体の折り畳み部14、19は、前記した図2(B)の折り畳み部7と同様に、折り畳み方向に対してその裏面側にカット部7aが形成され、折り畳み側の内面には薄肉部7bが形成されている。
上記した便器本体1と便座本体8は、射出成形で製造されているが、一板のプラスチック板をカットして製造しても良い。
【0018】
21は、排泄物収容袋であって、この排泄物収容袋21は、図1に示すように、紙を素材としていて、内面に防水及び防臭加工(コーティング又はラミネート)が施されていると共に、前記突起13に嵌め込んで固定するための止孔24が周囲4ヶ所に形成されている。また、周縁23の対角位置には、結び片22、22aが一体に形成されている。また、内部には、尿を吸収するための吸水材26が組み込んである。
なお、結び片22、22aは、結んだときに、袋内を密閉できる位置ならば、どの位置、形状でも良い。また、袋21の口の部分に、感圧接着剤層、あるいはジッパーを形成して、口を貼り合わせて、あるいは閉じて密閉できるように構成しても良い。
【0019】
上記構造の簡易便器について、次に使用例を図1及び図4、図5に基づいて説明する。
便器本体1は、図1に示すように、折り畳み部7で内側に折り曲げて、平面6角形状(8角形状)の枠体に形成し、この上に、便座本体8側の便座止板9を水平に置きながら、便座本体1側の係合部6を各係合溝12内に嵌め込んで、便座本体1に固定し、次に、便座板15を内側に折り畳んで突起13を止孔18に嵌合させて折り重ね、次に、蓋体20を便座板15の上に折り重ねて、便座穴16を閉塞した状態としておく。
次に、排泄時には、蓋板20及び便座板15を開き、図5に示した排泄物収容袋21の止め孔24を便座下板9の突起13に通して止め、図4に示すように、袋21を穴から下に落とし込み、次に便座板15を再び折り畳んで袋の周縁23を便座下板9と便座板15との間に挟み込んで固定し、図4に示すように、便座板15上に腰掛けるようにして用いる。
【0020】
排泄が終った時には、便座板15を開き、排泄物収容袋21の結び片22、22aを持って袋21を引き上げ、結び片22、22aをきつく結ぶことにより、内部を密閉して、臭いが外に漏れ出ないようにしてから、所定の方法で処分を行う。このとき、尿は吸水材26に吸収されているため、漏れ出ることがない。
簡易便器の格納或いは運搬等に際しては、便器本体1及び便座本体8を解体し、便器本体1側は2つ折り又は4つ折り等にして折り畳み、便座本体8側は3つ折りにして折り畳み、両方とも偏平化してしまう。
この結果、小型になると共に、場所をとらなくなり、重ね置きもできるようになる。
なお、排泄物収容袋21の材質は、紙製のものが、そのまま処分できて便利であり、環境保全にも適しているが、已を得ない場合には、プラスチックフィルム製であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る簡易便器の分解斜視図
【図2】便器本体の展開図
【図3】便座本体の展開図
【図4】使用状態の説明図
【図5】排泄物を処分するときの袋の説明図
【符号の説明】
【0022】
1 便器本体
6 係合縁
8 便座本体
9 便座下板
12 係合溝
13 突起
15 便座板
18 止孔
20 蓋板
21 排泄物収容袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚のプラスチック板を折り曲げて4角形以上の多角形の枠体に形成することができると共に、前記枠体の上縁に係合部を突設して成る便器本体と、
前記便器本体を多角形状の枠体に形成したときに、その係合部が下方から貫通して係合することができる係合溝を形成すると共に、中央に透穴を形成して成る便座止板と、前記便座止板に折り畳み部を経由して一体に形成されていると共に、前記透穴に対応する位置に便座穴を形成して成る便座板、前記便座板に折り畳み部を経由して一体に形成されていると共に、前記便座板の上面を覆うことができる大きさの蓋板と、から成るプラスチック板製の便座本体と、
前記便座止板と便座板との間に周縁を挟み込んで固定し、便座穴及び透穴を介して多角形に形成された便器本体内に取り付けられる排泄物収容袋と、
から成る簡易便器。
【請求項2】
請求項1に記載の便座止板において、透穴の周囲には、複数箇所に突起が形成されていると共に、排泄物収容袋の周囲及び便座板には、前記突起に対応する位置に固定孔が形成されていて、便座に排泄物収容袋を固定したときに、この突起で排泄物収容袋が止められて、排泄物の重みで落下しないように構成されていることを特徴とする簡易便器。
【請求項3】
請求項1又は2の何れか1項に記載の排泄物収容袋には、密閉手段が形成されていることを特徴とする簡易便器。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の排泄物収容袋の内面には、消臭剤が塗布されていることを特徴とする簡易便器。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の排泄物収容袋は、プラスチックフィルム又は内面に防水層を形成した紙で製作されていることを特徴とする簡易便器。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の排泄物収容袋内には、吸水材が組み込まれていることを特徴とする簡易便器。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の排泄物収容袋は、原則として、1回ずつの使い捨てタイプであることを特徴とする簡易便器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−149966(P2006−149966A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348852(P2004−348852)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(501133007)リブランコーポレーション株式会社 (3)
【Fターム(参考)】