説明

簡易冷房装置

【課題】
建築基準法第二十八条の二による換気装置に付帯させる家屋の備え付けの冷房装置に関し、換気装置の送風ファンを一部に利用する装置とする。
【解決手段】
扁平な水槽16内に相対する一対の側壁19を貫通して多数の熱良導体の送風細管18群が前記水槽16内の水面に接触可能に設けてあり、これに水を吸い上げるテープ27が巻付けてあり、
前記水槽16の蓋20には水槽排気口と水槽吸気口21が設けてあり、この水槽排気口22は家屋に設置される換気装置Mの排気口11に、また水槽吸気口21はこの家屋内に開口する吸気口13にそれぞれ連通可能であり、
多数の送風細管18群の吸気側は前記吸気口13に、また、他方前記送風細管18群の吐出側はこれらを一括して家屋内に開口する吐出口24にそれぞれ接続可能にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は建築基準法第二十八条の二を新設したことによる換気装置に付帯させる冷房装置に関し、家屋の備え付けの冷房装置に係わり、前記換気装置の送風ファンを一部に利用する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の冷房装置は一般に家屋完成後家電製品である冷房乃至空気調和装置を屋内に後付け工事で設置しており、価格も相当に高価である。
今般平成16年7月1日施行の建築基準法の前記改正により、建材や接着剤に有害物質が使用される可能性があるため、家屋には必ず24時間換気のできる装置を家屋の新築工事には取り付けることが義務付けられた。
しかし、換気装置だけでも、従来の室内用の空調装置と同程度の費用が嵩み、需要者の負担は重い。
【特許文献1】特開202−323237号公開公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこでこの発明は、この改正建築基準法第二十八条の二により取り付けられた換気装置の全部又は一部を利用し、効率がよく、構造も簡単であり、冷房効果は顕著で、メンテナンスも簡単であり、価格も低廉な冷房装置を新築家屋は勿論、中古乃至既築の家屋の床下乃至天井裏にも簡単に設置可能な冷房装置を市場に提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は前記の課題を達成するために、特許請求の範囲の各請求項に示す各発明とすることによって、課題を解決した。即ち家屋の一部に送風ファン付きの換気装置が設けてある家屋に取り付ける冷房装置であって、
1)扁平な水槽内に相対する一対の側壁を貫通して多数の熱良導体よりなる送風細管群が、概ね前記水槽内の水面に接触可能に設けてあり、これら送風細管群にはそれぞれ織布、編布、不織布連通気泡の合成樹脂製スポンジの一種より成る毛細管現象により水を吸い上げるシート乃至テープ布が巻付けてあり、
2)前記水槽の上面には蓋が設けてあって、この蓋には水槽内で発生する湿り空気を家屋外に排除する水槽排気口と水槽吸気口が設けてあり、この水槽排気口は家屋に設置される換気装置の排気ファンを備えた排気口に連通可能に設けてあり、また水槽吸気口はこの家屋内に開口する吸気口に連通可能に設けてあり、
3)また前記多数の送風細管群の吸気側はこれらを一括して家屋内に開口する前記吸気口乃至別個の吸気口に接続可能としてあり、他方前記多数の送風細管群の吐出側はこれらを一括して家屋内に開口する吐出口それぞれ接続可能にしてあり、前記送風細管と連なる冷房空気路の一部には冷房用の送風ファンが装備してある。
以上1)乃至3)の構成より成る簡易冷房装とする。
【0005】
また前記送風管群は水槽内の水面部の群と完全に水没する位置の2つの群よりなることを特徴とする要件を加えた発明とした。
また請求項1記載の発明において、各送風細管の両端を一括した構成としては、前記水槽に隣接するヘッダーを介在させた構成としてあることを特徴とする発明とした。
また前記各送風細管の内側は直径乃至半径方向の熱伝導板が前記各送風細管と一体に形成してあることを特徴とする要件を加えた。
また前記水槽の少なくとも水面以下の部分は断熱材で被覆してあることを特徴とする場合もある
【発明の効果】
【0006】
前記の各請求項記載の発明において、室内の気温が快適な場合においては、水槽内の水は抜いておく。而して冷房用の送風ファンを止め、通常の換気装置として使用する。
この場合室内の空気は一旦空の水槽内を通過して屋外に排気される。
次に、冷房装置を使用する場合は、前記水槽に水を供給し、前記シート又はテープ布が巻き付けてある空気細管の一部が水面に達する程度にまで水張りする。
而して、この水は毛細管現象により、前記各空気細管に巻きつけられたシート乃至テープを濡らし蒸発し、換気装置及び冷房装置の双方の送風ファンを運転すると、その気化の潜熱により各送風細管及び水槽内の水を冷却する。
【0007】
蒸発した湿り空気は換気装置の排気ファンによって順次屋外に室内の汚れた空気と共に排気される。
従って、水槽内の空気部は常時室内より空気が供給されるため、水蒸気は飽和状態とならず、蒸発は促進され続け、水槽内送風細管群及び水温は気化の潜熱で低下し、水槽内の気温より通常は低くなる。
他方室内の空気は冷房装置の吸気口からも吸い込まれ、空気細管群を通って、この中で冷却されて、吐出口より冷気となって室内に放出され、屋内を冷房する。
その日の気象条件により、冷房を一時的に不要のときは、冷房装置のファンのみを停止すれば、換気装置はそのまま正常に作用する。
換気装置の排気ファンは水槽より排気側に設け水て槽内が多少負圧とし、水の蒸発が促進され、冷房効果も促進される。
冷房を要する期間中において、稀に冷房が不要の時に水槽の水を特に抜く必要はない。
【0008】
請求項2記載の発明においては、前記空気管群は水槽内の水面部の群と完全に水没する位置の2つの群よりなることを特徴とするから、特に水没している送風細管群においては、これらの管を冷却された水の接触伝導によって、水槽内の水温はその上部の換気空気流よりも低くなり、水没した送風細管郡の内部を流れる空気と有効に熱交換され、全体として、送風細管群の熱交換面積が広くなり、熱交換効率が高くなる。
【0009】
請求項3項記載の発明においては、各送風細管の両端部分は水槽と隣接するヘッダーによってそれぞれ一纏めにしてあるから、構造が簡単となり、吐出側は結露水の分離がこのヘッダーで出来、室内に結露水がキャリオーバーするのを防ぐ。
請求項4記載の発明においては、前記各送風細管の内側は直径乃至半径方向の熱伝導板が前記各送風細管と一体に形成してあることを特徴とするから、これらの中を流れる空気の熱は、送風細管の内周面及び熱伝導板を介しても送風細管群表面に伝導し、効率よく空気は冷却される。
【0010】
請求項5記載の発明においては、前記水槽の少なくとも水面以下の部分は断熱材で被覆してあるから、特に水槽内の水温は低く保たれ、その分冷気が吐出口から吐出される。
尤もこの水槽を天井裏に設置した場合は前記断熱材で被覆しなくとも、その分天井裏が冷却されることになり、冷房効果を補助する作用をなす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1
図1、図2及び図6に示すものであり、請求項1、2及び4記載の発明を含む実施の形態であり、図中10は家屋であり、これには24時間換気可能な換気装置Mが装備してある。この換気装置Mは一般には排気口11に排気ファン12が設けてあり、吸気口13は換気すべき部屋Sの中に開口している。従って換気すべき部屋Sへの吸気は出入り口や換気口14から自然吸気するようにしてある。尤も前記換気口14に吸気フアンを設けることを妨げるものではない。
この発明はこの換気装置Mのダクト15の中間一部に扁平な水槽16の空気部分17を接続し、換気される空気は一度この扁平な水槽16の空気部分17を一旦通過して、外部に排気される。
水槽16の大きさは、長さ約1m、幅60cm、深さ10m〜15cmとしてあるが、この大きさに限定的な意味はない。鋼板、硬度合成樹脂板などによって形成してある。
【0012】
この発明においては、前記扁平な水槽16の水面WLに沿って熱良導体の一種である銅製の細長い送風細管18が多数通常6本乃至15本を水槽16の一対の相対する側壁19を貫通して設けてあり、これら送風細管18群と、側壁19の間は水が漏れないようにしてある。
【0013】
この扁平な水槽16は蓋20が開閉自在に設けてあり、この蓋20には換気装置Mのダクト外に接続するための水槽吸気口21と水槽排気口22が設けてあり、水槽吸気口21は換気装置Mの部屋内に開口する吸気口13側に接続可能としてあり、通常は排気フアン12の吸気側のダクト15aに接続して使用され、水槽排気口22は家屋の排気口11に接続して使用される。
【0014】
多数本ある前記送風細管18群の吸込口側23は一つにフレキシブルダクトで纏められて部屋Sに開口する吸気口13bに接続可能にしてある。前述の送風細管18群の吸込口側23は換気装置の吸込口13に接続可能にしてあっても、この発明としては何ら変わるところがない。
前記水槽16から吐出口24までの間のダクト25の一部には気液分離装置の一種であるトラップ26又は通風断面積の大きいヘッダーを通常備え送風細管18内で結露した水滴が吐出口24から部屋S内に飛散しないよう前記トラップ26又は前記ヘッダーによって水滴を捕まえるようにしてある。
各送風細管18には不織布、織布又は編布の一種のシート乃至テープ27実施例では耐腐蝕性のある合成樹脂繊維、又はガラス繊維製の織布テープ(包帯様のもの)が巻き付けてある。勿論これらは天然繊維製でもよく、連通気泡の合成樹脂スポンジ、若しくは不織布シート又はテープでもよい。要は毛細管現象によって水を吸い上げ、送風細管18表面を濡らす効果のある材料であれば材質構造に限定はない。
また各送風細管18の内部には半径方向乃至直径方向にフィン18bを設けて、熱交換面積を広くしてある。
その他、水槽16の外側であって、水面以下に相当する部分は断熱材で被覆する場合もある。例えば合成樹脂発泡体36で被覆して、冷却された水が外部の熱で上昇しないようにし、専ら送風細管18の中を流れる空気との熱交換に冷却熱が作用するようにしてある。
【0015】
実施の態様2
請求項2記載の発明を含む実施の形態である。
第3図、第4図に示すものであり、前記実施の形態1と同一符号のところは同一の構成部材であり、同一の作用効果を奏する。
異なるところは扁平な水槽16の深さが若干実施の形態1より深く、その深さは10cm乃至20cmとしてあり、前記送風細管18群の外に完全に水槽16内の水に水没する位置にもう一組の第2の送風細管18a群が設けてある。この第2の送風細管18a群には前記のシート乃至テープ27は巻き付けてない。
更に、全ての送風細管18及び18aを纏める吸気ヘッダー30及び吐出ヘッダー31が前記水槽16の前記側壁19に隣接して設けてあり、図3においては一つの扁平な箱の中に一対の相対抗する前記側壁19で3個に区切り、中央が水槽16とし、その両端が吸気側ヘッダー30、吐出側ヘッダー31としてある。
従って、吸気ヘッダー30には屋内の開口する吸気13bに適宜のダクトで接続可能にしてあり、吐出側のヘッダー31は屋内に開口する吐出口24に適宜のダクトで接続可能にしてある。前記吐出側のヘッダー31は実施の形態1のトラップ26と同様に、各送風細管18aより充分断面積が大きく、風速が遅くなり、結露水が空気と分離して、吐出側ヘッダー31の底に溜まり、この吐出側ヘッダー31にはドレーンパイブ34が接続可能としてある。
【0016】
その他、前記2つの実施の形態のものには水槽16の蓋20には給水装置28が設けてあり、図2に示すものにおいては、水槽16内の水位が低下すればその分供給され、所定水位になれば給水が停止するものが装備してある。
また水槽16の側壁の一部には、オーバーフローパイプ29が設けてあり、万一過給水がされたとしても、溢水するように設けてあり、オーバーフローパイプ29はドレーンパイプ34に接続してある。このドレーンパイプ34は水槽16の底35及び前記吐出側ヘッダー31の水が排出できるようにしてある。
前記給水装置28は公知のものであり、吐出ノズル32と、吸気ノズル33が下向にも受けてあり、水槽内の水位が吸気ノズルを塞げばその位置で給水装置28のタンク中の水の放出が停止する機構のものが、構造が簡単で好ましいがフロートバブル機構のものでも、或いは水槽に水位センサを設け、この水位センサの所望水位検出信号により給水弁を閉じ、水位センサの水位低下信号によって給水弁を開けるものでもよい。
【0017】
また各送風細管18は図5のCに示すようにそれぞれ外側のフィン18cを設けたものでも、この発明の送風細管18及び18aの概念に含まれ、フィン18cは軸方向でも円周方向でもスパイラルでも特に制限はない(図5A、B及び、C参照)。
送風細管郡18の外周面に円周方向のフィンを設ける場合は水槽内の気流が前記送風細管18群と直交する方向になるように前記水槽吸気口21と水槽排気口22の位置を選定する。尤も水没する送風細管18a群については、それらの外側のフィンの方向について何らの制限もない。
その他、図6に示すように、水没する送風細管18aに外側に前記のフィン18cを設ける代わりに、不錆金属切り屑18dを巻き付け、伝熱面積を広げても、この発明の範囲に属する。
実施の形態1及び2の効果
【0018】
前記二つの実施の形態においては、本件発明の効果と同様の効果を奏する外、水槽16が床下に設けてあるから、万一水槽16の水が何らかの原因、例えば地震などで水がこぼれたとしても家屋の居住区を水で濡すおそれはない。
また送風細管18及び18a内で結露が生じたとしても、トラップ26又は吐出側のヘッダー31で捕捉され水滴が部屋S内にキャリオーバーすることはない。
またこれら実施の形態のものには、既に換気装置Mが取り付けてある住宅においても、床下に水槽を設置し、可撓性のダクトを一部の壁内や、これに添せて若しくはダクトを天井裏などに通して設置することによって、簡単に取り付けられる。
前記不錆金属切り屑35を送風細管18cに巻きつけたものにおいては、メンテナンスの作業時、簡単に前記不錆金属切り屑18dを送風細管18cから取り外せ、メンテナンス作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1の水槽部縦断正面図である。
【図2】図1の縦断側面図である。
【図3】実施の形態2の水槽部縦断正面図である。
【図4】図3の縦断側面図である。
【図5】各送風細管の断面形状の実施の形態を示す説明図である。
【図6】他の実施の形態を示す水槽の一部断面図である。
【図7】家屋に設置した状態の概略説明図である。
【符号の説明】
【0020】
M 換気装置
10 家屋
11 排気口
12 排気ファン
13 吸気口
14 換気口
15 ダクト
16 扁平な水槽
17 空気部分
18 送風細管
19 側壁
20 蓋
21 水槽吸気口
22 水槽排気口
23 送風細管の吸込口側
WL 液面
S 部屋
24 吐出口
25 ダクト
26 トラップ
27 テープ乃至シート
28 給水装置
29 オーバーフローパイプ
30 吸気側のヘッダー
31 吐出側のヘッダー
32 吐出ノズル
33 吸気ノズル
34 ドレーンパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家屋の一部に送風ファン付きの換気装置が設けてある家屋に取り付ける冷房装置であって、
1)扁平な水槽内に相対する一対の側壁を貫通して多数の熱良導体よりなる送風細管群が、概ね前記水槽内の水面に接触可能に設けてあり、これら送風細管群にはそれぞれ織布、編布、不織布、連通気泡の合成樹脂製スポンジの一種よりなる毛細管現象により水を吸い上げるシート乃至テープが巻付けてあり、
2)前記水槽の上面には蓋が設けてあって、この蓋には水槽内で発生する湿り空気を家屋外に排除する水槽排気口と水槽吸気口が設けてあり、この水槽排気口は家屋に設置される換気装置の排気ファンを備えた排気口に連通可能に設けてあり、また水槽吸気口はこの家屋内に開口する吸気口に連通可能に設けてあり、
3)また前記多数の送風細管群のそれぞれの吸気側はこれらを一括して家屋内に開口する前記吸気口乃至別個の吸気口に接続可能としてあり、他方前記多数の送風細管群の吐出側はこれらを一括して家屋内に開口する吐出口それぞれ接続可能にしてあり、前記送風細管群と連なる空気路の一部には冷房用の送風ファンが装備してある。
以上1)乃至3)の構成より成る簡易冷房装置。
【請求項2】
前記送風細管群は水槽内の水面部の群と完全に水没する位置の2つの群よりなることを特徴とする請求項1記載の簡易冷房装置。
【請求項3】
請求項1記載の発明において、各送風細管の両端を一括した構成としては、前記水槽に隣接するヘッダーを介在させた構成としてあることを特徴とする請求項1又は2記載の簡易冷房装置。
【請求項4】
前記各送風細管群の内側は直径乃至半径方向の熱伝導板が前記各送風細管と一体に形成してあることを特徴とする請求項1、2又は3記載の簡易冷房装置。
【請求項5】
前記扁平な水槽の少なくとも水面以下の部分は断熱材で被覆してあることを特徴とする請求項1、2又は3記載の簡易冷房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−38320(P2006−38320A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217483(P2004−217483)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(504240429)有限会社トラスティホーム (2)
【Fターム(参考)】