説明

簡易止水装置

【課題】構造が単純で低価格で、動力も保守点検も格別に必要としない簡易止水装置を提供する。
【解決手段】 家屋、庭、車庫等の出入口(E)に立設される一対の方立て(10、10)と、この方立てに当接されるパッキン(2,2)が取り付けられている止水板(1)とから構成する。止水板(1)の方にフック(3,3)を、そして方立て(10,10)の方に係止ピン(14,14)を設ける。これにより、止水板(1)は方立て(10,10)に対して着脱自在にセットされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定面積の止水板と、該止水板が着脱自在に取り付けられる方立てあるいは当支柱とからなる簡易止水装置に関するもので、特に小規模の止水装置として好適な簡易止水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
雨水、河川水、海水等の氾濫水が地下室、建造物の屋敷内等に浸水するのを防止する防水装置は、本出願人により、例えば特許文献1、2により提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−241261
【特許文献2】特願2001−326873
【0004】
本出願人が提案している特許文献1に記載されている可動防水装置は、海水、河川水、雨水等の氾濫水が地下室へ浸水するのを堰き止める防水板と、該防水板を地下から上方へガイド装置に沿って駆動する駆動装置とから構成されている。防水板は地下室の入口の地下に配置され、そして駆動装置は水道水が供給される水圧式のピストンシリンダユニットから構成されている。したがって、氾濫水が浸水する恐れがあるときには、ピストンシリンダユニットに水道水を供給すると、地下室の入口に配置されている防水板が地下から所定高さまで駆動され、氾濫水が地下に進入することが防止される。
【0005】
特許文献2に示されている水圧駆動式の防水装置は、通常は地下に配置され、防潮時に地上へ駆動される防水板と、この防水板に対応して地上に設けられている枠状支柱体と、防水板を地下から地上へ駆動する駆動装置とから構成されている。駆動装置は、水道水で作動する水圧ピストン・シリンダユニットからなり、防水板は、所定位置までは枠状支柱体に非接触的に駆動され、所定位置に達すると、その縁部分が枠状支柱体に当接するようになっている。したがって、大波、高潮等の発生が予想されるときは、水道水を水圧ピストン・シリンダユニットに供給すると、防水板が所定高さまで駆動され、海水の浸水が防止される。また、地下室の入り口に設けておくと、雨水、海水等の氾濫水が地下室へ浸水することを防ぐことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、本出願人が特許文献1、2により提案している可動防止装置あるいは水圧駆動式の防水装置によると、水道水あるいはタンク中の雨水により防水板を地下から所定高さまで駆動することができ、災害時の氾濫水の防止装置として有益であり、実施する上で格別問題はない。特に、災害時にガス、電気等のサービスが停止するようなときにも最後までサービスされ、あるいは復旧も一番早いといわれる水道水が利用されるので、停電時にも作動し、しかも遠隔的にも駆動することができ、災害時の防水装置としては有益である。また、防水板を駆動する動力も、設置スペースも格別に必要とせず、しかも必要時には手動的に確実に駆動することができるという特徴も有する。また、後者の圧駆動式の防水装置によると、海岸の風景を損なわいという利点もある。
【0007】
しかしながら、改良すべき点も認められる。例えば、防水板が水道水で駆動されるので、広い面積で重量のある防水板も駆動することができ、比較的大規模な防水装置には適しているが、装置が大型化しスト高になることがあり、家庭的あるいは小規模の防水装置としては必ずしも適しているとはいえない。また、復旧も一番早いといわれる水道水が利用されているとしても、復旧が遅れると、用をなさないこともあり得る。さらには、水道水という極めて単純な駆動源が適用されているが、水道栓とピストンシリンダユニットとの間の配管にはバルブが設けられ、バルブを開閉して防水板を駆動するようになっているので、一応自動駆動系を構成している。したがって、ある程度の保守点検も必要で個人向けの防水装置としては不向きなこともある。
本発明は、上記したような従来の点を改良した止水装置を提供しようとするもので、具体的には構造が単純で低価格で、動力も保守点検も格別に必要としない簡易止水装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、所定面積の止水板と、家屋、庭、車庫等の出入口に立設される一対の方立てとからなり、前記止水板をパッキンを介して前記方立てに当接すると、前記止水板により出入口が氾濫水に対して遮断されるようになっている止水装置であって、前記止水板は、前記方立てに対してラッチ手段により着脱自在に構成されている。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の止水装置において、パッキンが止水板の方に固定的に設けられ、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の止水装置において、止水板が、発泡アルミニウムまたはアルミニウム製のハニカム構造体のコアと、該コアを被覆しているアルミニウムの表面材とからなる複合材から構成され、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの項に記載の止水装置において、ラッチ手段が止水板と方立てのいずれかの一方に取り付けられているフックと、他方に取り付けられている係止ピンとからなり、そして請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいじれかの項に記載の止水装置において、ラッチ手段が止水板を貫通して方立てに達する摘付きボルトからなる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によると、簡易止水装置は、所定面積の止水板と、家屋、庭、車庫等の出入口に立設される一対の方立てとからなり、前記止水板をパッキンを介して前記方立てに当接すると、前記止水板により出入口が氾濫水に対して遮断され、そして前記止水板は前記方立てに対してラッチ手段により着脱自在に構成されているので、必要なときには簡単に止水板を方立てにセットするだけで、氾濫水の浸入を阻止することができるという本発明に特有な効果が得られる。また、構造は単純で安価であり、しかも保守点検は必要としない。したがって、小規模の個人的な設備にも負担増なしで容易に設置できる効果も得られる。また、他の発明によると、パッキンは止水板の方に固定的に設けられ、止水板は通常は納屋、物置等に収納されているので、パッキンが日光等により劣化するようなこともない。止水板が発泡アルミニウムまたはアルミニウム製のハニカム構造体のコアと、該コアを被覆しているアルミニウムの表面材とからなる複合材から構成されている発明によると、耐食性にも優れ、軽量で手動操作に適し、且つ強度も大きい簡易止水装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面により、本発明の実施の形態を説明する。図1の(イ)は、本発明の第1の実施の形態に係わる方立てを立てた状態で示す斜視図、図1の(ロ)は、止水板の斜視図、その(ハ)はラッチ状態を拡大して示す要部の側面図であるが、これらの図に示されているように、第1の実施の形態に係わる止水装置は、略方形を呈する所定面積の止水板1と、該止水板1が取り付けられる一対の方立て10、10とからなっている。そして、詳しくは後述するが止水板1は、立てられると氾濫水の浸水を防止するが、通常は納屋等に収納されるようになっている。
【0011】
止水板1は、図1には示されていないが、コア材と、その表面を被覆した表面材とからなる複合材から構成されている。このような複合材のコアは、発泡アルミニウムあるいはアルミニウム製のハニカム構造体からなり、表面材はアルミニウムの薄板から構成されている。このアルミニウムの複合材は、軽量で耐食性にも優れ、強度も大きく所定の水圧に耐えることができる。
【0012】
この複合材からなる止水板1の裏面すなわち方立て10、10に接する部分の両側面には、所定幅のパッキン2、2が設けられている。また、止水板1の両側部には、上下方向に所定の間隔をおいて複数個、例えば2個の、ラッチ手段としてのフック3、3がピン4により回動自在に取り付けられている。フック3、3は、図1の(ハ)に拡大して示されているように、その内側部は湾曲している。そして、先端部5は所定の重量がある。したがって、一旦ラッチすると緩まないし、また外れもしない。つまり、係合状態は保持されることになる。本実施の形態による止水版1は、前述したような複合材から構成されているので、軽量で持ち運びに支障はないが必要に応じて取っ手が取り付けられる。
【0013】
本実施の形態によると、対からなる方立て10、10は、少なくとも一面は望ましくは当面11を有するような空洞の、例えばアルミニウム合金製の角材から構成されている。そして、家屋、庭、車庫等の出入口Eに、所定の間隔をおいて、地面から所定高さになるように設けられている。このように構成されている方立て10、10の側面12、12には、止水板1のフック3、3に対応する位置に、係止ピン14、14が設けられている。なお、図示の実施の形態によると、方立て10、10の外側はブロック塀H、Hで封鎖され、ここから氾濫水は浸入しないようになっている。
【0014】
次に、上記第1の実施の形態の使用方法を説明する。止水の必要のない時は、止水板1は納屋等の適当な場所に保管しておく。出入口Eは、人の出入り、荷物の搬入、搬出等に自由に利用できる路面の一部となる。このように利用するとき、本実施の形態によると、方立て10、10は常時設けられているが、係止ピン14、14は側面12、12に設けられ、しかも「ピン」という単純な構造であるので、利用に支障をきたすようなことはない。また、外観を損なうようなこともない。
【0015】
雨水、河川水等の氾濫水が外部OUTから、内部1Nへ浸入する恐れが生じるとき、あるいは浸入が始まったら、止水板1を、そのパッキン2、2を介して方立て10,10の当面11、11に当接させる。そうして、フック3、3を係止ピン14、14に係止する。そうすると、止水板1はパッキン2、2を介して、方立て10、10に圧接され、圧接状態がフック3、3の形状と係止ピン14、14により維持される。これにより、氾濫水の浸入が防止される。不使用時に、逆の手順で取り外すことができることは明らかである。
【0016】
次に、図2によりラッチ手段の他の実施の形態を説明する。なお、、図1に関して説明した構成要素には同じ参照数字を付けて重複説明はしない。図2に示されている実施の形態では、止水板1は方立て10、10の当面11、11に摘付きボルト15、15で取り付けられるようになっている。本実施の形態によると、より確実に取り付けることができる。
【0017】
図2の(ハ)には、止水板1をスライド楔16と門型ラッチ17とにより取り付ける実施の形態が示されている。すなわち、止水板1が設置される路面には、所定幅の溝Mが方立て10、10間に予め設けられている。止水板1を取り付けるときは、止水板1の下端部を溝Mに装着し、スライド楔16を例えば足で圧入して固定する。そして、止水板1の上端部と方立て10、10の上端部との間に門型ラッチ17を落とし込む。これにより、止水板1が取り付けられる。図2の(ハ)には、スライド楔16に代えた回動楔16’の実施の形態が示されている。止水板1を幅広の溝M’に装着して、回動楔16’を矢印方向に回転させて、止水板1の下端部を固定できることは明らかである。上端部には門型ラッチが落とし込まれるが、図2の(ハ)には示されていない。
【0018】
本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、色々な形で実施できる。例えば、止水板1は再生プラスチック、FRP、塩ビ板等のプラスチックから形成できる。また、アルミニウム製の板材あるいは不錆鋼板から構成することもできる。一方、方立て10、10は、門柱としても利用できる。したがって、特許請求の範囲の「方立て」の文言には門柱のような部材も含まれることになる。このとき、止水板1にはパッキンが設けられているので、方立ての方に意匠効果を持たせ、当面11は必ずしも平面ではなくても実施できることは明らかである。さらには、出入り口Eに止水板1をはめ込む浅い溝を設けておくこともできる。また、方立て10、10に例えば安全対策としてクッション材が設けられているときは、このクッション材をパッキンの代用とすることもできる。ラッチ手段のフックと係止ピンは、相対的であるので、フックの方を方立てに、そして係止ピンを止水板の方に設けることもできる。また、パッキンについても同様であり、特にパッキンは別部材として用意しておき、止水板を方立てに取り付けるときに介在させるように実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態を図で、その(イ)は方立ての使用状態を示す斜視図、その(ロ)は止水板の斜視図、そしてその(ハ)は要部の拡大側面図である。
【図2】本発明のラッチ手段の他の形態を示す図で、その(イ)、(ロ)および(ハ)はそれぞれ異なる実施の形態を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 止水板 2 パッキン
2 フック 10 方立て
11 当面 15 摘付きボルト
16 スライド楔 16’ 回動楔
17 門型ラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定面積の止水板と、家屋、庭、車庫等の出入口に立設される一対の方立てとからなり、前記止水板をパッキンを介して前記方立てに当接すると、前記止水板により出入口が氾濫水に対して遮断されるようになっている止水装置であって、
前記止水板は、前記方立てに対してラッチ手段により着脱自在になっていることを特徴とする簡易止水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の止水装置において、パッキンが止水板の方に固定的に設けられている簡易止水装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の止水装置において、止水板が、発泡アルミニウムまたはアルミニウム製のハニカム構造体のコアと、該コアを被覆しているアルミニウムの表面材とからなる複合材から構成されている簡易止水装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載の止水装置において、ラッチ手段が止水板と方立てのいずれかの一方に取り付けられているフックと、他方に取り付けられている係止ピンとからなる、簡易止水装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいじれかの項に記載の止水装置において、ラッチ手段が止水板を貫通して方立てに達する摘付きボルトからなる、簡易止水装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−214178(P2006−214178A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28268(P2005−28268)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(501481621)有限会社ノムラフォーシーズ (15)
【出願人】(392015480)株式会社南星 (3)
【Fターム(参考)】