説明

簡易温度調節袋

【課題】 保冷手段の使用時において、使用者が快適な温度で使用し得るようにした簡易体温調節袋を提供することにある。
【解決手段】 通気性を有する素材により形成してある外袋1の内部に、袋表側布5aと袋裏側布5bとの間に1枚〜複数枚の仕切部材3を設け、仕切部材3によって区画された複数の収納空間7を備え、収納空間7の各々が出し入れ口4に通じ、保冷手段2を収めることを可能にしたことを特徴とする。
出し入れ口Rに開閉部4を備え、開閉部4は袋裏側布5bに出し入れ口4よりも前方に延長する延長布5cを設け、該延長布5cの先部を出し入れ口4の上側に重なるように折返し、その延長布折返部5dの両側縁を縫製していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば氷枕や水枕等に代表される保冷手段を入れて使用する簡易温度調節袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水枕や氷枕等の保冷手段を用いて身体(主に頭部)の体温を下げる場合、直接使用すると冷たすぎるし、結露水によって身体や寝具が濡れるため、保冷手段をタオルで包んだり外袋の口から内部に入れ、保冷手段をタオルや外袋にて保護することが知られている。また外袋の内部に湯たんぽや使い捨てカイロ(携帯カイロとも称される)等の保温手段を入れ、保温手段を外袋にて保護することも知られている。そして前述外袋の素材としては、綿布或いは樹脂糸布が一般に使用されており、使用者の身体に触れる接触側のフィット性を良くする等といった工夫も種々なされている。(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平11−155895号公報(1頁目、図1)
【特許文献2】特開2000−152813号公報(1頁目、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、水枕や氷枕、或いは生鮮魚介類の保冷に用いる畜冷剤封入体、株式会社白元の登録商標名「アイスノン」等の保冷手段を袋体に入れ、袋体を保冷手段の保護袋として用いた場合、袋体の内部へ保冷手段を単に収めるだけであったため、袋体の素材を介して使用者の皮膚に過剰な冷気が伝わったり、或いは氷枕の外面に生じる結露水で敷布や敷き布団等を濡らし、不快感を与えたり、取扱に注意を要する等の問題点があった。
【0004】
また、保冷手段にタオルを巻きつけて使用する場合もあり、その場合でもタオルが結露水で濡れるので、敷布や敷き布団等を濡らす問題点があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、保冷手段を適温に、且つ快適に使用し得るようにした簡易温度調節袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の簡易温度調節袋は請求項1として、通気性を有する素材により形成してある外袋の袋表側布と袋裏側布との間に1枚〜複数枚の仕切部材を設け、外袋の内部に仕切部材によって区画された複数の収納空間を備え、収納空間の各々が出し入れ口に通じ、出し入れ口より任意収納空間内に保冷手段を収め得るようにしたことを特徴とする。
また請求項2は、請求項1の簡易温度調節袋において、出し入れ口に開閉部を備え、開閉部は袋裏側布に出し入れ口よりも前方に延長する延長布を設け、該延長布の先部を出し入れ口の上側に重なるように折返し、その延長布折返部の両側縁を縫製していることを特徴とする。
【0006】
ここで保冷手段とは、水枕や氷枕、或いは畜冷剤封入袋体等が挙げられる。更に、外袋と仕切部材の形成素材については、外袋内を区画して、その中に保冷手段を収められるものであれば特に限定するものではないが、例えば、通気孔をハニカム状に配したハニカム地、或いは目の細かなメッシュシート地等を適用すれば、使用時に通気性が確保されるし、綿布等の如く一定の吸水性を有するものを適用すれば、保冷手段の収納後、時間の経過と共に生じた結露水を吸水したり、防水することができる。
更に仕切部材の配置状態については、使用者との接触面側において、各収納空間が重なるように区画される位置にあればよく、また仕切部材と収納空間の数は、需要者の要望に応じて製造段階で増減できる。各収納空間の出し入れ口は、同じ長さの仕切部材を重ねて縫着することで揃え得るが、長さが順次短くなる仕切部材の下端を揃えて縫着し、収納長さの異なる収納空間、即ち、出し入れ口を棚状に備えておくと、使用者における保冷手段の選択収容が容易となる。
【0007】
本発明の簡易温度調節袋を前記のように形成すれば、仕切部材の介在によって、外袋の中に層状に折り重なった複数の収納空間が形成される。そして各収納空間の内の何れかに保冷手段を収め、例えば本発明の簡易温度調節袋を氷枕の保護袋として使用する場合であれば、仮に現状では使用者が冷た過ぎると感じた際には、当初収めた収納空間から遠ざかる側の他の収納空間に移すことで、使用者と氷枕との間に更に仕切部材が介在して、使用者に伝わる冷たさが和らかになる。保冷手段の収納空間より上側、又は下側の収納空間にタオル等を入れることで、更に冷熱の伝達を和らげることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の簡易温度調節袋は上記構造のとおりであるから、次に記載する効果を奏する。
請求項1の簡易温度調節袋は、保冷手段の使用時に、積層状態にある収納空間の一つを選択し、その収納空間内に保冷手段を入れることで、適切な温度に調節ができる。しかも保冷手段の使用時に起こる結露水による不快感を避けることができる。
また請求項2の簡易温度調節袋は、請求項1の特徴に加えて、出し入れ口に開閉部を備えているので、保冷手段の出し入れを容易にしながら、不意な脱落を防ぐことができる。その結果、利便性が飛躍的に高まることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における簡易温度調節袋の最良形態を説明すると、図1の如く矩形状をなす外袋1の長手側に出し入れ口4を設け、出し入れ口4に開閉部8を一体に備えるもので、外袋1は1枚の布地を折り重ね、その一方を袋表側布5a、他方を袋裏側布5bとし、その間に仕切部材3を1枚〜数枚介在し、仕切部材3ともども折り重ね部の左右を縫着し、外袋1の内部に、1枚〜数枚の仕切部材3を備え、袋表側布5aと仕切部材3の間、袋裏側布5bと仕切部材3の間、及び仕切部材3,3の間に保冷手段2の収納空間7を各々形成するものである。
説明の便宜上、身体に接触する方を袋表側布5aとし、反対側を袋裏側布5bとし、数枚の仕切部材3を、袋表側布5aから第一仕切部材3a、第二仕切部材3b、第三仕切部材3cとし、また収納空間7を、袋表側布5aから第一収納空間7a、第二収納空間7b、第三収納空間7c、第四収納空間7dとし、各収納空間7の出し入れ口4を、第一出し入れ口4a、第二出し入れ口4b、第三出し入れ口4c、第四出し入れ口4dとする。
【0010】
開閉部8は出し入れ口4に対して覆い被さるように設けてあり、例えば袋裏側布5bに出し入れ口4より外側に延長する延長布5cを設け、該延長布5cを袋表側布5a側に折り曲げ、延長布折返部5dの先を袋表側布5aの先上部に重なるようにし、延長布折返部5dの左右部を直接、或いは織テープ等を介してミシン等で縫着したものであり、出し入れ口4より収納空間7に保冷手段2を収める場合、図2の如く使用者の指F等で強制的に押し開いて開口し、この押し開きを解除することで出し入れ口4を自然に塞ぐものである。
【0011】
外袋1を構成する袋表側布5aと袋裏側布5b、及び外袋1の内部に介在する仕切部材3a,3b,3cの素材として、少なくとも通気性を有する生地を用い、好ましくは吸水性や伸縮性、体圧分散効果に優れた生地、例えば、目の細かなメッシュ地10や細かなハニカム通気孔を無数に設けたハニカム地11を用いる。更に、弾力性と形状保持性に富んだ特殊立体構造の生地、例えば図7(イ)の如くメッシュ地10やハニカム地11の少なくとも片面に布地12を備えた複合生地、図7(ハ)の如くメッシュ地10やハニカム地11を二重に備えた復層生地、図7(ロ)の如く二枚のメッシュ地10,10間やハニカム地11,11間に硬質繊維13を介在したサンドイッチ生地を使用することも可能である。何れにしても、外袋1内に数区画の収納空間7を設け、その内の1区画に保冷手段2を収められるものであれば特に限定するものではない。
【0012】
本発明による簡易温度調節袋の使用状態について説明すると、保冷手段2として畜冷剤を冷却固化した蓄冷剤封入体2Aを収納する場合、図2の如く外袋1の出し入れ口4を塞いでいる開閉部8を使用者の指F等で強制的に押し開き、任意出し入れ口4から収納空間7内に向けて蓄冷剤封入体2Aを入れ、蓄冷剤封入体2Aを入れ終わった所で開閉部8の押し開きを解除すれば、開閉部8は弾力で閉鎖状態に自然復帰する。
このようにして蓄冷剤封入体2Aを収納した本発明の簡易温度調節袋は、水枕の如く使用し得るものである。
【0013】
次に本発明による簡易温度調節袋の使用状態について以下に説明すると、先ず図3のように第3収納空間7cに蓄冷剤封入体2Aを納め、これを図5(イ)のように枕代わりとする。この場合、使用者の後頭部Hと蓄冷剤封入体2Aとの間には、外袋1の袋表側布5aと、2枚の仕切部材3a,3bが介在することになる。これにより使用者の後頭部Hとの間に、空気の層が形成されて適切な保冷状態になると共に、蓄冷剤封入体2Aに発生する結露水の多くが、蓄冷剤封入体2Aより下側に位置する第三仕切部材3cに吸収されたり、防水される。その結果、水滴が外袋1の袋裏側布5bに表出せず、快適な使用感が得られる。
【0014】
また使用者個人の感覚により、現状のままでは保冷効果が得られない場合には、蓄冷剤封入体2Aを図5(ロ)の如く後頭部Hに近い第二収納空間7bに移し替えたり、或いは冷た過ぎると感じた場合には、後頭部Hから離れた第三収納空間7c、更に第四収納空間7dに移し替えるといった使い分けが可能である。
更に、保冷手段2の冷熱が強すぎる場合、第二収納空間7bより下側の第三収納空間7cに保冷手段2を入れ、該収納空間7cより上側の第二収納空間7bや第一収納空間7aにタオル等を入れれば、一段と冷熱の影響を押さえることができる。反対に、最下収納空間7より上側の収納空間7に保冷手段2を入れ、その収納空間7より下側の収納空間7に熱反射材(表面にアルミフイルムを備えた)やタオル等を入れれば、冷熱を有効に使用し得る。
【0015】
開閉部8の構造は最良形態に限定されるものではなく、例えば図4の如く袋裏側布5bに袋表側布5aより外側に延長する延長布5cを設け、該延長布折返部5dの裏側に雌マジックテープ8aを、袋表側布5aの出し入れ口4側に雄マジックテープ8bを縫着し、延長布折返部5dを袋表側布5aの先上部に重なるように折り返し、雌雄マジックテープ8a,8bの噛み合わせにて出し入れ口4を塞ぐものである。
延長布折返部5dの裏側に雄マジックテープ8bを、袋表側布5aの出し入れ口4側に雌マジックテープ8aを縫着しても同様である。
また、開閉部8の付設を省略することも可能である。
【0016】
実施形態で用いた簡易温度調節袋は、外袋1の内部に仕切部材3を3枚設け、収納空間7として4室を設けているが、仕切部材3の増設数と収納空間7の室数は特に限定するものではなく、仕切部材3の増設数として採用し得る範囲は1〜5枚程度、最適な範囲は2,3枚であり、収納空間7の室数として採用し得る範囲は2〜6程度、最適な範囲は3〜5室である。
外袋1の構成は実施形態に限定されるものではなく、2枚の布地を重ね合わせ、その一方を袋表側布5a、他方を袋裏側布5bとし、その間に仕切部材3を1枚〜数枚介在し、仕切部材3ともども重ね合わせて3方を縫着することも可能である。
【0017】
袋裏側布5bに重なる第三仕切部材3cと第二仕切部材3bと第一仕切部材3aの長さを順次短くし、一端を布地の折返部に揃え、折り返した袋表側布5aを第一仕切部材3aより短くして縫着することで、袋表側布5aより収納長さが順次長くなる収納空間7a,7b,7c,7dを形成し、即ち、出し入れ口4a,4b,4c,4dを棚状に備えておくと、任意出し入れ口4から収納空間7への保冷手段2の選択収容が容易になる。反対に袋裏側布5bに重なる第三仕切部材3cと第二仕切部材3bと第一仕切部材3aに同じ仕切部材3を用いることで、出し入れ口4a,4b,4c,4dを揃えるこができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の簡易温度調節袋は、保温手段6の例えば使い捨てカイロ6Aの保護袋としても使用可能であり、その場合、図6(イ)(ロ)の如く前述した蓄冷剤封入体2Aと同様であるが、外袋1の出し入れ口4から収納空間7に使い捨てカイロ6Aを納めるものであり、この場合であっても、使い捨てカイロ6Aを収める収納空間7a,7b,7c,7dの選択によって、使い捨てカイロ6Aと使用者の腰部Lとの間に介在する袋表側布5a及び各仕切部材3a,3b,3cの枚数を加減し、即ち、段階的な温度調節が可能となる。
保温手段6を収めた場合、温冷が逆になるが、同様の作用・効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による簡易温度調節袋の平面図である。
【図2】本発明による簡易温度調節袋の一使用状態を示す断面図である。
【図3】図1のA‐A線縦断面図である。
【図4】開閉部の構造例を示す簡易温度調節袋の平面図である。
【図5】保冷手段を入れた簡易温度調節袋の使用状態を示す一部切側面図である。
【図6】保温手段を入れた簡易温度調節袋の使用形態を示す一部切欠側面図である。
【図7】外袋と仕切部材の素材構造例を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 外袋
2 保冷手段、2A 蓄冷剤封入体
3,3a,3b,3c 仕切部材
4,4a,4b,4c 出し入れ口
5a 袋表側布
5b 袋裏側布
5c 延長布
5d 延長布折返部
6 保温手段、6A 使い捨てカイロ
7,7a,7b,7c,7d 収納空間
8 開閉部、8a,8b マジックテープ
10 メッシュ地、11 ハニカム地
12 布地、13 硬質繊維
F 指(使用者)
H 後頭部(使用者)
L 腰部(使用者)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有する素材により形成してある外袋(1)の袋表側布(5a)と袋裏側布(5b)との間に1枚〜複数枚の仕切部材(3)を設け、外袋(1)の内部に仕切部材(3)によって区画された複数の収納空間(7)を備え、収納空間(7)の各々が出し入れ口(4)に通じ、出し入れ口(4)より任意収納空間(7)内に保冷手段(2)を収め得るようにしたことを特徴とする簡易温度調節袋。
【請求項2】
出し入れ口(R)に開閉部(4)を備え、開閉部(4)は袋裏側布(5b)に出し入れ口(4)よりも前方に延長する延長布(5c)を設け、該延長布(5c)の先部を出し入れ口(4)の上側に重なるように折返し、その延長布折返部(5d)の両側縁を縫製していることを特徴とする請求項1記載の簡易温度調節袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−236402(P2007−236402A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317946(P2005−317946)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(591128235)
【Fターム(参考)】