説明

簡易測定キット

【課題】複数の検査項目をまとめて同時にかつ簡便に検査でき、また検査方法として、一つの検査項目に対して複数の検査指示薬を用いかつ予め設定された時間間隔を設けて複数の化学反応段階を用いる検査方法も採用できる簡易測定キットを提供する。
【解決手段】検水中の複数成分を一度に測定する簡易測定キットにおいて、測定開始時に検水を貯留する検水貯留室3と、測定する成分に応じた測定用試薬が充填されており、検水と測定用試薬10との化学反応を行う反応室5と、検水を、検水貯留室3から反応室5に誘導する検水落下管4と、検水の誘導開始を制御する排気口キャップ7とを備え、反応室5および検水落下管4は、上記複数成分のそれぞれに対応した各検出方法ごとに備えられ、各検出方法における呈色反応の完了時刻は、検水落下管4の形状を調整することにより、上記各検出方法のすべてにおいて揃えられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質検査などの現場において、検水に含まれる複数種の標的物質を一度にかつ簡易に検出可能な簡易測定キットおよび簡易測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、簡便に水質等を検査するために様々な技術が用いられてきた。例えば、特許文献1において示されている従来技術として、図14(a)に示されるように、検査用指示薬21が封入された、内部が観察可能な可撓性を有する気密容器20に、画鋲等22を用いて穴を開け、図14(b)に示されるように、手を用いて気密容器20内の空気を抜き、図14(c)に示されるように、気密容器20を検水23に浸し、穴から検水23を気密容器20内に吸入し、図14(d)に示されるように、化学反応により発色した検水23の色を分析用標準色表24を用いて比色する技術が記載されている。
【0003】
上記従来技術の改良型として、特許文献2において、画鋲等22を用いてユーザが気密容器20に穴を開ける代わりに、気密容器20が引き抜き可能な栓部材を予め備えており、ユーザがその栓部材を引き抜くことにより、検査対象液の吸入に適した位置に適切な口径の通孔が常に得られ、ユーザによる個人差が無くなり分析の信頼性が向上する、という技術が開示されている。
【0004】
なお、上記の技術では、検水23と化学反応される検査用指示薬21には、検水23との化学反応を行うまでは、分離しておく必要がある二種類以上の検査指示薬21を用いることは出来ない。この点を解決する技術として、特許文献3において、分析試薬の蓋状試薬容器の技術が開示されている。この技術は、開口部から所定量の検水の注入が可能とされる透明な容器本体と、この容器本体の前記開口部側から締め込みによって装着が可能とされる蓋本体と、この蓋本体に装填され、所定の試薬を収納する試薬収納容器と、前記蓋本体の前記容器本体に対する締め込み量に応じて前記蓋本体内部に押し込まれ、前記蓋本体に装填される前記試薬収納容器を突き破って前記試薬を前記容器本体内部に放出させるカッターとを具備している、という技術が開示されている。
【0005】
多数の検査項目を簡単且つ短時間に検査できる技術として、特許文献4において、多種類の試験紙を台紙に固定した水質検査用紙と、色濃度表と、検水を秤量するための小型スプーンもしくは小型スポイトと、これらを収納または貼付するケースよりなる水質検査キット、または指示薬を白色の吸水性基材に含浸させ、その上面を非透光性シートで密閉してなる水質検査用シートと、色濃度表と、検水を秤量するための小型スプーンもしくは小型スポイトと、これらを収納または貼付するケースよりなる水質検査キットという技術が開示されている。
【0006】
また、マイクロ化学チップという技術がある。マイクロ化学チップは、ラボオンチップ、マイクロTAS(Micro Total Analysis System)、マイクロリアクタなどとも呼ばれている。例えば、特許文献5において、マイクロ化学チップとは、板状の基体と、該基体の表面に形成され、流体が流通される1つ以上のチャネルを有し、チャネルの始端には、流体が貯留される流体貯留部がチャネルに連通して形成され、チャネルの終端には、流体排出部がチャネルに連通して形成され、チャネルのうち、流体貯留部の近傍に押出しタイプのポンプ部が基体に一体に形成されているものとして、開示されている。
【特許文献1】実用新案出願公開平3−17562(1991年2月21日公開)
【特許文献2】国際公開番号WO2002/090973(2002年11月14日公開)
【特許文献3】国際公開番号WO98/03265(1998年1月29日公開)
【特許文献4】特開平10−288612(1998年10月27日公開)
【特許文献5】特開2003−240757(2003年8月27日公開)
【非特許文献1】http://www.nitto.co.jp/company/culture/ad/science/science_41/index.html (2006年4月24日確認)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、特許文献2、および特許文献3に開示されている技術を用いた場合、複数の検査項目を検査するには、その検査項目の種類と同じ数の容器およびその容器に充填された検査用指示薬の種類を用意し、1つずつ検査を行う必要があり、手間がかかるという問題点がある。
【0008】
また、特許文献1、特許文献2、および特許文献4に開示されている技術では、検水との化学反応を行うまでは、分離しておく必要がある二種類以上の検査指示薬を用いることは出来ないという問題点がある。
【0009】
特許文献3の方法では、検水との化学反応を行うまでは、分離しておく必要がある二種類以上の検査指示薬を用いることは出来るが、検査方法として、複数の化学反応を、予め設定された時間間隔を開けて行わせる検査方法を採用することはできない。
【0010】
また、特許文献5に開示されているマイクロ化学チップでは、非特許文献1に、「マイクロ化学チップがなければ熱レンズ顕微鏡では測れない。熱レンズ顕微鏡でなければマイクロ化学チップを測れない。」との記述があるように、マイクロ化学チップでの反応結果を測るためには、熱レンズ顕微鏡が必要である。すなわち、フィールドワークなどにおいて熱レンズ顕微鏡を携帯することは困難なので、マイクロ化学チップでは、簡便に水質測定等を行うことはできない。
【0011】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、検水中の複数成分の測定結果をまとめて同時にかつ簡便に検査でき、また検査方法として、一つの検査項目に対して複数の検査指示薬を用いかつ予め設定された時間間隔を設けて複数の化学反応段階を用いる検査方法も採用できる簡易測定キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明に係る簡易測定キットは、上記の課題を解決するために、検水中の複数成分を一度に測定する簡易測定キットにおいて、測定開始時に上記検水を貯留する検水貯留手段と、測定する成分に応じた測定用試薬が充填されており、上記検水と上記測定用試薬との化学反応が行われる反応手段と、上記検水を、上記検水貯留手段から上記反応手段に誘導する検水誘導手段と、上記検水の誘導開始を制御する誘導開始制御手段とを備え、上記反応手段および上記検水誘導手段は、上記複数成分のそれぞれに対応した各検出方法ごとに備えられ、上記各検出方法における呈色反応の完了時刻は、上記検水誘導手段および/または上記誘導開始制御手段の形状を調整することにより、上記各検出方法のすべてにおいて揃えられていることを特徴とする。
【0013】
当該構成において、まず検水がユーザにより検水貯留手段に注入される。次にユーザによる誘導開始制御手段の操作により、検水貯留手段に保持された検水が、一斉に、各検出方法に対応した検水誘導手段を介して、各検出方法に対応した反応手段に誘導される。検水誘導手段の形状は、各検出方法において呈色反応が完了するまでに要する時間を考慮して、検水を反応手段に到達させるまでの、予め決められた時間差を設けるように設計されている。
【0014】
例えば、ある成分の検出方法において呈色反応が1分で完了し、別の成分の検出方法において呈色反応が5分で完了する場合、1分で完了する検出方法に対応した検水誘導手段は、5分で完了する検出方法に対応した検水誘導手段よりも、5倍の時間をかけて、検水を反応手段に誘導する。
【0015】
各反応手段を設ける位置および数、そして各検水誘導手段内に検水が滞留する時間は、測定する成分(標的物質)の検出方法により設計される。また、標的物質の検出方法は、従来技術による検出方法を用いる。
【0016】
検水中の標的物質と測定用試薬(検査用指示薬)との呈色反応により、反応液が発色する。この着色の有無を目視することにより、検水中における標的物質の有無の知見が得られる。また、この発色の色調度合いを目視し、標準色と比色することにより、検水中における標的物質の濃度の概略に関する知見が得られる。なお、目視による比色以外に、比色計による比色を行ってもよい。血液型、血糖値などの測定に用いることも出来る。
【0017】
上記の構成によれば、各検出方法において呈色反応が完了するまでの時間差を、検水誘導手段が調整するので、検水中の複数成分の測定結果をまとめて同時にかつ簡便に検査できるという効果を奏する。
【0018】
(2)また、本発明の簡易測定キットは、上記構成に加えて、一つの上記検出方法に用いられる上記反応手段、上記検水誘導手段、および/または上記誘導開始制御手段は複数であることを特徴とする。
【0019】
当該構成において、各検出方法により用いられる化学反応の数に対応して、反応手段の数が決まる。
【0020】
例えば、3つの試薬を順に作用させ反応液を発色させる検出方法の場合には、第1の試薬が充填された反応手段により最初の反応が行われ、その反応液が、検水誘導手段により第2の試薬が充填された次の反応手段に導かれて反応が行われ、さらにその反応液が、検水誘導手段により第3の試薬が充填された最後の反応手段に導かれて反応が行われる。
【0021】
上記の構成によれば、複数の測定用試薬を予め定められた時間間隔を用いて、検水に加えることが出来るので、一つの検査項目に対して複数の検査指示薬を用いかつ予め設定された時間間隔を設けて複数の化学反応段階を用いる検査方法も採用できるという効果を奏する。
【0022】
(3)また、本発明の簡易測定キットは、上記構成に加えて、上記反応手段に予め充填されている上記測定用試薬は、粉体状、紙状、ゲル状、ペースト状、または固形状の形態であることを特徴とする。
【0023】
当該構成において、試薬の形状が紙状であるとは、粉体の試薬または水溶性の試薬を紙または繊維素などの試薬保持機能を持つ保持材に付着または浸潤させたものをいう。ここでいう繊維素とは、ロックウール繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維等の無機繊維質類などから選ばれる1種あるいは2種以上の混合物・複合物であり、例えば、リトマス試験紙のような態様である。ゲル状とは、溶解性を高めるために水分含量を高めた試薬粉体をいう。ペースト状とは、試薬保持機能を持つ保持材に付着または浸潤させたものをいい、例えば、ゼオライト等の珪酸塩鉱物類、活性炭や木炭等の炭素材料、鹿沼土、珪藻土、火山礫等で例示される天然土壌成分またはその焼成物、ロックウール繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維等の無機繊維質類などから選ばれる1種あるいは2種以上の混合物・複合物であり、水分含有量の高い試薬の保持材として使用する。固形状とは、タブレットのような形状のものである。発泡剤等の助剤を混ぜてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、測定用試薬の種類および標的物質の検出に使用される化学反応の種類により測定用試薬の形状が選択できるので、反応手段への測定用試薬の充填を適切に行うことが出来るという効果を奏する。
【0025】
(4)また、本発明の簡易測定キットは、上記構成に加えて、上記検水を貯留する第2の検水貯留手段と、上記第2の検水貯留手段に貯留された上記検水を、上記反応手段に誘導する第2の検水誘導手段と、上記第2の検水誘導手段による上記検水の誘導開始を制御する第2の誘導開始制御手段とをさらに備え、上記誘導開始制御手段および上記第2の誘導開始制御手段は、ユーザによりいずれか一方を選択可能に設けられていることを特徴とする。
【0026】
当該構成において、ユーザにより、検水が検水貯留手段に投入された場合は、誘導開始制御手段による各検出反応の一斉測定開始後、最初の反応手段において、例えば、前処理などの処理が検水に対して行われる。この場合、最初の反応手段には、前処理を行うための試薬が充填されている。前処理が完了した反応液は、検水誘導手段により、本来の、標的物質を測定するための化学反応を行う、次の反応手段へと導かれる。
【0027】
これに対し、ユーザにより、検水が第2の検水貯留手段に投入された場合は、第2の誘導開始制御手段による各検出反応の一斉測定開始後、検水は、前処理に用いられる最初の反応手段ではなく、本来の、標的物質を測定するための化学反応を行う反応手段へと導かれる。
【0028】
上記の構成によれば、ユーザが検水の投入場所を選択することにより、検出方法の一部を選択することができるという効果を奏する。
【0029】
(5)また、本発明の簡易測定キットは、上記構成に加えて、測定用試薬液を貯留する試薬液貯留手段と、上記試薬液貯留手段に貯留された上記測定用試薬液を、上記反応手段に誘導する試薬液誘導手段と、上記試薬液誘導手段による上記測定用試薬液の誘導開始を制御する試薬液誘導開始制御手段とをさらに備えたことを特徴とする。
【0030】
当該構成において、別途用意しておいた測定用試薬液を試薬液貯留手段に注入することにより、測定用試薬液を用いて反応手段により化学反応が行われる。
【0031】
上記の構成によれば、反応手段に予め充填しておくことが出来ない測定用試薬液を用いる、標的物質の検出方法も用いることが出来るので、検水の測定において、より多くの標的物質の検出が行え、また、標的物質の検出により適した検出方法を採用できるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る簡易測定キットは、以上のように、測定開始時に上記検水を貯留する検水貯留手段と、測定する成分に応じた測定用試薬が充填されており、上記検水と上記測定用試薬との化学反応を行う反応手段と、上記検水を、上記検水貯留手段から上記反応手段に誘導する検水誘導手段と、上記検水の誘導開始を制御する誘導開始制御手段とを備え、上記反応手段および上記検水誘導手段は、上記複数成分のそれぞれに対応した各検出方法ごとに備えられ、上記各検出方法における呈色反応の完了時刻は、上記検水誘導手段の形状を調整することにより、上記各検出方法のすべてにおいて揃えられることを特徴とする。
【0033】
各検出方法において呈色反応が完了するまでの時間差を、検水誘導手段が調整するので、検水中の複数成分の測定結果をまとめて同時にかつ簡便に検査できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
〔第1の実施の形態〕
本発明に係る簡易測定キットを、金属イオン測定キットとして用いる例について、図1および図2を用いて以下に説明する。なお、金属測定キットは、検水中の金属イオンを分析するものであるが、尿中や唾液中のミネラルを測定することも出来るので、臨床検査分野においても利用可能である。
【0035】
<簡易測定キット1の形状について>
形状および大きさは、特に制限されないが、片手で保持することができ、かつ、片手でも分析操作を行うことができる形状および大きさであることが好ましい。
【0036】
具体的な形状としては、カード状、箱状、またはフィルム状などである。簡易測定キット1を正面から見た場合の形状としては、多角形、正方形、四角形、正三角形、円形などが考えられるが、四角形であることが好ましい。
【0037】
なお、フィルム状などの形状であり、検水を自然落下させることが出来ない場合や測定速度を速めたい場合など、シリンジ等により加圧して検水を簡易測定キット1に注入しても良いし、フィルムの上から特定箇所を指で揉むことにより検水を簡易測定キット1内で移動させる構成でもよい。
【0038】
具体的な大きさとしては、簡易測定キット1を正面から見た場合の四角形の一辺の長さは、1〜300mmであり、10〜150mmであることが好ましく、40〜90mmであることがより好ましい。また、厚さは、0.01〜80mmであり、0.1〜20mmであることが好ましく、0.5〜3mmであることがより好ましい。
【0039】
また、簡易測定キット1の大きさは、どの程度のサンプル量を扱うかにより決定してもよい。
【0040】
<簡易測定キット1の構成について>
図1および図2を用いて、簡易測定キット1の構成を説明する。簡易測定キット1は、基本的に、検水を注入する検水注入口2、検水を一定量保持する検水貯留室3(検水貯留手段)、標的物質を検出する化学反応を行う反応室5(反応手段)、反応室5に充填された検査用指示薬10、検水貯留室3に保持された検水を各反応室5に導く検水落下管4(検水誘導手段)、検水を反応室に導くために反応室5内の空気を排気する排気管8(誘導開始制御手段)、および排気管8からの排気を止める排気口キャップ7(誘導開始制御手段)から構成される。
【0041】
簡易測定キット1内に形成される各部材の形状は、図示された形状に限るものではない。例えば反応室5は、反応試薬が充填でき、反応が適正に行われる形状であればよく、図に示す様な球状である必要はなく、また、検水落下管4は、検水や反応液を次の反応室5に導くことができる形状であればよく、その断面は円でなくてもよい。
【0042】
具体的な製造方法の例としては、二枚の板のうち、一枚の表面をレーザカット等により切削し、上記各部材を形成した後、切削面を覆う形でもう一枚の板を貼り合わせることで、簡易測定キット1を製造することができる。
【0043】
なお、例えば、標的物質が錫であり、その検出方法として、ジチオール法を用いる場合、呈色反応には、加熱が必要である。そのため、加熱を必要とする反応室5では、図2(b)に示すように、反応室5を二重構造とし、反応室5を包む空間6に、例えば水酸化カルシウムのような水と接触すると発熱する発熱体6を充填すればよい。この反応室5を包む空間6には、発熱用給水管9を通して、検水貯留室3の検水を導き、水酸化カルシウムを発熱させ、反応室5の加熱を行ってもよい。また、化学反応による発熱体以外に、例えばニクロム線などを用いて、電気により加熱する方法でも良い。
【0044】
<検水貯留室3について>
検水貯留室3の形状は、すべての検水落下管4に等しく検水を導ける形状であれば、特にその形状を問わない。但し、その容積としては、反応室5に充填された検査用指示薬10等の化学物質の反応に必要な量の検水を貯留できるだけの容積が必要である。検水貯留室3の検水注入口2には、異物の混入を防ぐためにプレフィルターを設置しても良い。
【0045】
<検水落下管4について>
検水落下管4の長さは、その簡易測定キット1により分析を行う標的物質の検査方法のうち、発色までの反応時間の、最も短い検査方法と最も長い検査方法との相対的な時間差により設定される。
【0046】
図3において示すように、検水落下管4の長さと、検水が反応室5内の試薬10との反応を開始するまでの時間とは比例する。
【0047】
従って、図1に示すように、試薬10と接触して瞬時に発色する検査方法であれば、検水貯留室3から反応室5までの検水落下管4の長さを長くし、試薬10と接触後、発色までに時間のかかる検査方法では、検水貯留室3から反応室5までの検水落下管4の長さを短くしたり、排気管8の長さおよび/または太さを加減する。
【0048】
一般的に、水等の溶媒が管内を流れるとき、その流れには層流および乱流の二つの流れがある。検水落下管4内を流れる検水流体粒子が、なめらかに線を描いて整然と運動する状態を層流と言う。これに対し、不規則な混乱した運動を乱流と言う。
【0049】
また、検水流体と検水落下管4の内壁との間に相対運動があるときには、摩擦を生じ、相対運動を妨げようとする検水流体摩擦が発生し、さらに、検水流体内部の摩擦である内部摩擦、および検水流体と固体との間の摩擦である外部摩擦が発生する。流体摩擦は、流体の摩擦により速度勾配が存在するときに生じ、流れが層流である場合、摩擦は流体の粘性のみにより生じるが、流れが乱流である場合、流体の粘性のみにより生じる摩擦とは別の性質の強い摩擦が現れる。
【0050】
検水落下管4内の流れが層流になるか乱流になるかについて、管の内径、流れの速さ、水の密度、または水の粘度など、個々の値は直接関与せず、以下に示す式により求められるレイノルズ数Reにより定まる。すなわち、検水落下管4内の検水の落下速度は、以下の式により求められるレイノルズ数Reにより影響を受ける。なお、以下の式において、pは管の内径を表し、vは動粘性係数を表し、uは特性速度(流速)を表す。
【0051】
Re = up/v
レイノルズ数Reが、ある値よりも低ければ、流れは層流となり、ある値よりも高ければ、流れは乱流となる。この境界をなすレイノルズ数を臨界レイノルズ数Recという。通常の条件下における臨界レイノルズ数Recの下限は約2,000とされている。
【0052】
本発明に係る簡易測定キットにおいては、標的物質の検出方法により検水落下管4の長さを変えることに特徴があるが、検水落下管4の長さを設計する際の指標は、検水が落下して反応室5に到達するまでの時間(落下速度)ではなく、検水が反応室5に到達してから呈色反応が完了するまでの時間(反応時間)としている。
【0053】
この指標を採用する理由は、検水の成分や測定環境における周囲温度・湿度などの諸条件は常に一定ではない事により、検水が反応室5に到達するまでの時間を予め算出することが出来ないためである。
【0054】
例えば、呈色反応に要する時間が1分であるカルシウムの検出方法と、呈色反応に要する時間が3分である塩化物の検出方法とを、一つの簡易測定キット1により同時測定する場合、塩化物検出用の検水落下管4の長さを1cmとすると、カルシウム検出用は3cmの長さに設定することになる。
【0055】
つまり、本発明に係る簡易測定キットにおいては、呈色反応に要する時間の最も長い検出方法の反応時間を1として、すなわち基準として、個々の検出方法において要する反応時間により、検水落下管4の長さを設定する。
【0056】
検水落下管4の内径および排気管8の内径は、簡易測定キット1の所望する大きさや、検水を反応室5に導く方法を重力を用いた自然落下によるとするか加減圧によるとするかにより決定すればよい。
【0057】
検水貯留室3との接続端から最下段の反応室との接続端までの検水落下管4の長さは、、1〜300mmであるが、1〜150mmであることが好ましく、1〜90mmであることがより好ましい。
【0058】
なお、検水の落下時間は、すべての検水落下管4の内径を統一し、検水落下管4の長さにより調整してもよいし、すべての検水落下管4の長さを統一し、検水落下管4の内径により検水の落下速度を調整してもよい。
【0059】
<検水落下管4により検水を反応室5に導く方法について>
本実施の形態においては、検水を検水貯留室から検水落下管4を通って自然落下させる構成について説明するが、これ以外に、検水貯留室3をシリンダまたはシリンジにより加圧してから排気口キャップ7を外し、検水を反応室5に導く構成でもよいし、排気管8側をシリンダまたはシリンジにより減圧してから排気口キャップ7を外し、検水を反応室5に導く構成でもよいし、毛管現象を用いて、検水を反応室5に導く構成でもよい。これらの構成を採る場合、反応室5を設置する位置は、適切に検水を反応室5に注入できる位置であればよく、検水貯留室3の下方ではなくても構わない。
【0060】
<反応室5の大きさについて>
反応室5の大きさおよび形状は、反応室5に流入する検水と検査指示薬10とが適切に化学反応を行える大きさおよび形状であれば、特に制限はない。また、簡易測定キット1内のすべての反応室5の大きさは、基本的にすべて同じでもよいし、内部に充填する検査用指示薬の量や形状など、また反応の種類などにより、反応室ごとに異なる大きさおよび形状としてもよい。
【0061】
<反応室5の内容物について>
反応室5には、検査用指示薬10に加えて、pH調整剤、防腐剤、乾燥剤、酸化防止剤、増量剤、反応促進剤、反応遅延剤等を含んでもよい。
【0062】
反応室5の内容物(検査用指示薬10および添加物)は、試薬の貯蔵安定性および検査分析の操作性の観点から、固体であることが好ましく、試薬の検水への溶解性および化学反応の迅速性の観点から、粉体であることがより好ましい。
【0063】
また、内容物の性状等は、粉体状(試薬の粉体)、紙状(試薬溶解物を紙等に含浸させてあるもの)、ゲル状(溶解性を高めるために水分含量を高めた試薬粉体)、ペースト状(試薬保持機能を持つ保持材に付着または浸潤させたもの)、または固形状(試薬粉体を造粒および/または造形したもの)などに、適宜変化させてもよい。
【0064】
<排気管8および排気口キャップ7について>
図2において、図1に示す反応室5の拡大図を示す。図2(a)は、化学反応時に加熱を必要としない反応室5の例である。各反応室5には、排気管8が接続されており、すべての排気管8は排気口キャップ7経路に接続されている。従って、検水貯留室3に検水が溜まった状態において排気口キャップ7を外すと、反応室5内の空気が排気管8を通って簡易測定キット1の外部に排出され、検水が検水貯留室3から検水落下管4を通って反応室5に流入する。
【0065】
<検水落下管4および反応室5の組合せについて>
一本の検水落下管4およびその検水落下管4の途中および最下端に設けられた一つ以上の反応室5により、一種類の標的物質の分析が行われる。すなわち、各反応室には、異なる試薬10が予め充填されており、検水と接触することにより、呈色反応が行われる。
【0066】
例えば、図1に示すように、pHの分析をリトマス法により行う場合であれば、一本の検水落下管4の最下端に一つの反応室5を設け、その反応室5内において、リトマス法による呈色反応を行えばよい。
【0067】
また、シリカの検出をシリコモリブデン酸法であれば、一本の検水落下管4の、中間に三つの反応室5a、5b、5cを設け、最下端に一つの反応室5dを設ければよい。
【0068】
なお、検水落下管4の途中に設けられる反応室同士の間隔は、次の化学反応段階までに要する時間に応じて調整すればよい。例えば、上記のシリカの場合であれば、反応室5aにて行われた反応には時間がかかるので、次の反応室5bまでの検水落下管4の距離は長いのに対して、反応室5bにて行われた反応はすぐに終了するので、次の反応室5cまでの検水落下管4の距離は短い。
【0069】
<簡易測定キット1の材質について>
標的物質の検出方法において用いられる薬品と化学反応を起こさない、すなわち耐薬品性を持つものであれば、特に材質は限定されない。例えば、ガラス類、ブチルゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、エチレンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、再生ゴム等で例示されるゴム類、ケイ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン、メタクリル樹脂、ポリエステル、フェノール樹脂等で例示される合成樹脂類等を用いる事ができる。また、これらのうち、1種あるいは2種以上の混合物・複合物などを用いることができる。
【0070】
また、最下端の反応室5部分は、その中で発色した反応液の色を確認するために、透明または半透明である必要があるが、それ以外の部分については、不透明であっても構わない。
【0071】
なお、化学反応に加熱を要する反応室5をプラスチックにより構成する場合、熱により不足する強度を、遮熱板等を補強材として反応室5の外側に設けることにより補ってもよい。遮熱板に熱伝導率の高い材料を使用することにより、反応室5内の熱を均一に拡散させることができるので、反応室5内では、熱は試薬に適正に加えられ、反応室5外では、熱は簡易測定キット1の強度を弱めないように拡散される。
【0072】
また、化学反応に冷却を要する反応室5をプラスチックにより構成する場合、低温により不足する強度を、保温剤などを補強剤として反応室5の外側に設けることにより、補ってもよい。保温剤に熱伝導率の低い材料を使用することにより、反応室5の低温状態を均一に一定時間保持することができるので、反応室5内では、低温帯は試薬に適正に加えられ、反応室5外では、低温帯が拡散されない。
【0073】
<簡易測定キット1の包装について>
簡易測定キット1の包装材は、防湿性の包装材であれば、特に制限はないが、ラミネート包装材であることが好ましく、アルミラミネート包装材であることがより好ましい。これらの包装材による、簡易測定キット1の包装は、簡易測定キット1を外環境(外気、紫外線など)から遮断することができる方法であればよく、特に制限はない。また、この包装には、簡易測定キット1と共に、乾燥剤、酸化防止剤、脱酸素材等を含んでもよい。このように包装すれば、簡易測定キット1内の試薬の性能を長期間、安定に維持する事が出来る。
【0074】
<簡易測定キット1の使用温度について>
後述する、呈色反応に加熱が必要な反応およびその反応を行う反応室を除き、簡易測定キット1は、化学反応が正常に行われる温度で使用されるのであれば、使用温度は特に制限はされないが、10℃から30℃であることが好ましい。
【0075】
<簡易測定キット1の使用方法および動作について>
以下に、簡易測定キット1の使用方法および一般的な動作の概略を一例を挙げて説明する。
(1)ユーザが、検水を検水注入口2から注ぎ入れる。
(2)注がれた検水は、検水貯留室3において、保持される。
(3)ユーザが排気口キャップ7を抜き取ると、反応室5に接続された排気管8を介して、反応室内の空気が排出され、検水貯留室3内に保持されていた検水が、検水落下管4の中を落下する。
(4)予め定められた時間をかけて検水落下管4の中を落下した検水は、反応室5に流入し、反応室5に充填されている検査指示薬10と化学反応を起こす。
(5)予め定められた、最も発色にかかる時間が長い反応の反応時間が経過した後、各検水落下管4の最下段の反応室5にある液体の色を標準の色列表と比較し、同じ色調または似た色調を探し、その場所に記載されている数値を読むことにより、簡単に検水中の被検物質の有無または濃度を測定することができる。
(6)使用後、簡易測定キット1を廃棄する。本発明に係る簡易測定キットは使い捨て型である。
【0076】
なお、液体の色調を標準の色調列表と比較する際には、目視によっても良いし、特定の吸光波長を計測する方法、例えば、吸光度計や比色計などを用いても良い。
【0077】
<標的物質および検査方法について>
簡易測定キット1により検出される標的物質は、水を主成分とする液体中に含まれ得るものであることが好ましい。以下に、簡易測定キット1により検出する標的物質と、その検出方法と、発色までに要する時間とを例示する。なお、反応時間については、pH測定に用いるリトマス法を反応基準値1として例示する。
pH:リトマス法、1(反応基準値)
カルシウム:フタレインコンプレクソン法、反応基準値の2倍
金属総量:UDV法、フタレインコンプレクソン法、反応基準値の2倍
塩化物:硫酸銀比濁法、反応基準値の3倍
銅:バソクプロイン・キレート変法、クプリゾン変法、ジエチルジチオカルバミド変法、反応基準値の3倍
鉛:PAR変法、反応基準値の3倍
硫化物:メチレンブルー変法、反応基準値の3倍
アルミニウム:エリオクロム・シアン変法、反応基準値の5倍
バリウム:硫酸バリウム比濁法、反応基準値の5倍
クロム6価:ジフェニルカルバジド法、反応基準値の5倍
鉄:オルトフェナンスロリン法、バソフェナンスロリン法、ビピリジル法、反応基準値の5倍
カリウム:テトラフェニルボロン変法、反応基準値の5倍
マンガン:過ヨウ素酸酸化法、PAN法、反応基準値の5倍
ニッケル:ジメチルグリオキシム法、反応基準値の5倍
シリカ:シリコモリブデン酸法、ヘテロポリブルー法、反応基準値の5倍
亜鉛:ジンコン法、反応基準値の5倍
錫:ジチオール法(冷却法)、反応基準値の10倍
シアン:4−ピリジンカルボン酸ピラゾロン法、ピリジンーバンビツール酸変法、シェーンバイン変法、反応基準値の20倍
【0078】
〔第2の実施の形態〕
本発明に係る簡易測定キットを、CODおよび窒素等を測定するキット、すなわち地球環境測定キットとして用いる例について、図4を用いて以下に説明する。
【0079】
<簡易測定キット1bの構成について>
図4において、簡易測定キット1bの構成を示す。なお、第1の実施の形態と同一の機能を有し重複する部分に関しては、説明を省略する。
【0080】
簡易測定キット1bは、図4に示すように、pH、塩化物、アンモニウム態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素、リン酸、硫酸、およびCOD値を、同時に簡便に測定するものである。
【0081】
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同じく、各検査方法により、発色までの時間が異なるので、最も遅い呈色反応に合わせて、すべての呈色反応の発色を同時に確認できるように、検水落下管4の長さが調整されている。
【0082】
例えば、COD値の呈色反応は最も時間がかかるので、反応室5aにおいて反応開始した反応液を、時間をかけて反応室5bに導くため、簡易測定キット1bでは、異形の検水落下管4aを採用している。図中においては、異形の検水落下管4aとして、ジグザグ形状の落下管を記載している。該落下管を異形とする理由は検水の移動量を増加させるためであるので、該落下管は、必ずしもジグザグ形状である必要は無く、例えば反応室5bを中心にその外周部を周回する形状などでも構わない。
【0083】
<標的物質および検査方法について>
以下に、簡易測定キット1bにより検出する標的物質およびその検出方法を例示する。
pH:リトマス法
塩化物:硫酸銀比濁法
アンモニウム態窒素:サリチル酸法、ネスラー法、インドフェノール法
亜硝酸態窒素:ナフチルエチレンジアミン法
硝酸態窒素:ナフチルエチレンジアミン法、カドミウム還元法
リン酸:アスコルビン酸還元法、バナモリブドリン酸法、モリブデン青法
硫酸塩:硫酸バリウム法、塩化バリウム法
COD値:アルカリ性過マンガン酸カリウム法
【0084】
〔第3の実施の形態〕
図8および図9を用いて、本実施の形態に係る簡易測定キット1hおよび1iについて、以下に説明する。本実施の形態に係る簡易測定キット1hおよび1iが、上記第1の実施の形態または第2の実施の形態における簡易測定キット1または1bと大きく異なる点は、二次反応用貯留室3bを備える点である。すなわち、複数段に分けて(複数の反応室5に分けて)行われる反応の途中において、再度液体等を注入でき、二次反応が得られる点に特徴がある。
【0085】
<簡易測定キット1hおよび1iの構成について>
図8(a)において、簡易測定キット1hの構成を示す。簡易測定キット1hは、簡易測定キット1の構成に加え、再注入口2b、二次反応用貯留室3b(第2の検水貯留手段、試薬液貯留手段)、栓14(第2の誘導開始制御手段、試薬液誘導開始制御手段)、および二次反応用貯留室3bと検水落下管4を繋ぐ導水管4c(第2の検水誘導手段、試薬液誘導手段)を備えている。図8(b)は、二次反応用貯留室3bの周辺の拡大図であり、図8(c)は、二次反応用貯留室3bと検水落下管4とを接続する導水管4cの部分の拡大図である。
【0086】
なお、第1の実施の形態と同一の機能を有し重複する部分に関しては、説明を省略する。
【0087】
図8(c)の拡大図に示すように、二次反応用貯留室3bには、トンネル12が設けられており、このトンネル12の中を検水落下管4が通っている。
【0088】
図8(b)では、二次反応用貯留室3bと、図示される3本の検水落下管4のそれぞれとが、導水管4cにより接続された構成を示しているが、必ずしも二次反応用貯留室3bとすべての検水落下管4とが接続されている必要は無い。また、導水管4cは、反応室5bの上部において検水落下管4と接続されているが、必ずしも検水落下管4の上から2番目にある反応室5bの上部において検水落下管4と接続されている必要は無い。
【0089】
すなわち、液体を二次反応用貯留室3bからどの検水落下管4に導くか、また検水落下管4のどの位置(どの反応室5の上部に)に導くかは、標的物質の検出方法ごとに決定すればよい。
【0090】
また、再注入口2b、二次反応用貯留室3b、栓14、および導水管4Cの位置や形状は、上述の機能を果たすものであればよく、図8に示すものには限らない。
【0091】
図9において、簡易測定キット1iの構成を示す。最も左側の検水落下管4が、非常に長く、多く(例えば、図においては12個)の反応室5を持つ構成である。検水は、検水貯留室3から垂直に落下した後、簡易測定キット1iの下側を通り、検水落下管4のなだらかな傾斜に沿って流れ(すなわち検水は適切に反応室間を流れる)、簡易測定キット1iの右下端の反応室5に到達する。最も左側の検水落下管4以外の構成は、簡易測定キット1hの構成と同一なので、説明を省略する。
【0092】
<二次反応用貯留室3bの使用手順の概要について>
再注入口2bから注入された液体が、反応室5bに流入し、反応が行われるまでの動作は、次のとおりである。
【0093】
まず、液体が、再注入口2bから二次反応用貯留室3bに適量注入される。この際、二次反応用貯留室3bから導水管4cへの流路は、栓14により塞がれている。
【0094】
次に、ユーザにより、栓14が外されると、液体は、二次反応用貯留室3bから下方に流れ、二次反応用貯留室3bに接続された導水管4cを通り、反応室5bに流入し、反応が行われる。栓14は構造的にすべて連結されているので、例えば、外部から栓14に結ばれた紐を引くことなどにより、すべての栓を同時に開放することが出来る。
【0095】
<二次反応用貯留室3bの第1の用途について>
二次反応用貯留室3bには、二つの用途がある。まず第1の用途について説明した後、第2の用途について説明する。
【0096】
二次反応用貯留室3bの第1の用途は、標的物質の検出方法のうち、複数の反応段階の途中で新たな液状試薬の投入が必要な場合に使用する、という用途である。
【0097】
上記の液状試薬とは、例えば、水、pH緩衝液(フタル酸水素カリウム−塩酸緩衝液、フタル酸水素カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、トリス緩衝液、グリシン+塩化ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、クエン酸ナトリウム−塩酸緩衝液、クエン酸ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、ホウ砂−水酸化ナトリウム緩衝液、Britton-Robinson緩衝液、リン酸二水素カリウム−リン酸水素二ナトリウム緩衝液、Walpole緩衝液、Good緩衝液など)、溶剤(エーテル、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、パラフィン等で例示される炭化水素系有機溶剤、クロロホルム、ジクロロエタン、塩化ブチル等で例示されるハロゲン化炭化水素系有機溶剤、エタノール、メタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等で例示されるアルコール系有機溶剤、ジベンジルエーテル、フルフラール等で例示されるエーテル・アセタール系有機溶剤、アセトアルデヒド、アセチルアセトン等で例示されるケトン・アルデヒド系有機溶剤、安息香酸エチル、酢酸エチル、プロピオン酸ベンジル、リン酸トリメチル等で例示されるエステル系有機溶剤、エチレングリコール、エチルエーテル、グリセリン等で例示される多価アルコール誘導体系有機溶剤、ギ酸、酢酸、オレイン酸等で例示されるカルボン酸・無水物系有機溶剤、カテコール、フェノール等で例示されるフェノール系有機溶剤、アニリン、ピリジン、ピコリン等で例示される含窒素化合物系有機溶剤、ジエチル硫酸、ジメチル硫酸等で例示される含硫黄化合物系有機溶剤、トリフルオロ酢酸、フルオロベンゼン等で例示されるフッ素化合物系有機溶剤、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等で例示される無機溶剤、グルコース、マルトース、ヒスチジン、アルギニン、セルロース等で例示される天然炭素系化合物から選ばれる1種またはその混合物)である。
【0098】
<二次反応用貯留室3bの第2の用途について>
二次反応用貯留室3bの第2の用途は、検水の前処理が不要な場合は、二次反応用貯留室3bを検水貯留室3の代わりに使用する、という用途である。
【0099】
つまり、検水に対して前処理が必要な場合は、検水注入口2から検水を注入し、簡易測定キット1hまたは1iを使用する。この際、各検水落下管4の最初の反応室5aには、前処理剤が充填されており、反応室5aにおいて前処理反応が行われる。
【0100】
これに対し、検水に対して前処理が不要な場合は、再注入口2bから検水を注入し、簡易測定キット1hまたは1iを使用する。検水を反応室5aに導く必要が無いので、二次反応用貯留室3bに検水を注入することにより、反応室5bにおける反応から、処理を行うことが出来る。すなわち、検水の種類により、前処理を行うか否かを選択することが出来る。
【0101】
<前処理および前処理剤について>
上記の前処理剤とは、例えば、還元剤、酸化剤、マスキング剤、または脱色用、脱塩用、加水分解用の酵素剤などである。
【0102】
例えば、前処理の例として、検水がタンパク質等と複合体を形成している金属類を含む場合が挙げられる。この場合、反応室5a内に予め充填されている、例えばプロテアーゼ等の酵素による加水分解反応を用いて、タンパク質と金属とを分離する必要がある。
【0103】
また、例えば、検水が、多種類の有機物と複合体を形成しており前処理が必要な場合であり、かつ有機物の成分が多種類であるか不明である場合に、各反応室5aにそれぞれ充填された、異なった種類の有機物分解酵素を用いて前処理を行うことも出来る。
【0104】
この場合、特定の有機物分解酵素により検水が分解され流動性が良くなった場合、目視により検水が検水落下管4中を落下する速度が増したか否かを判別出来るので、検水中の有機物の種類を判別することも出来る。
【0105】
さらに、検水中に含まれる特定の有機成分に特異的に反応する酵素、共役酵素、補酵素、酵素反応阻害剤などからなる少なくとも1種またはこれらを組み合わせて多段階反応をさせることによって有機物を定量する、いわゆる、酵素定量法として当該キットを使用することができる。
【0106】
例として、ピルビン酸、ホスホエノールピルビン酸、D−2−ホスホグリセリン酸が共存している検水に対し、まず、ラクテート−デヒドロゲナーゼ(LDH)を作用させた場合、LDH反応が定量的に進行するので、ピルビン酸の定量が可能となる。さらに、この反応液にピルベイト−キナーゼ(PK)を加えれば、PK反応とLDH反応とが共役作用し、ホスホエノールピルビン酸の定量が可能となる。そしてさらに、この反応液にエノラーゼを加えれば、エノラーゼ反応はPKおよびLDHと共役し、D−2−ホスホグリセリン酸が定量できる。このようにして、1つのキットの中で、ピルビン酸、ホスホエノールピルビン酸、D−2−ホスホグリセリン酸を1つの反応経路で定量することができる。
【0107】
つまり、反応室5aをLDH反応室、反応室5bをPK反応室、そして反応室5cをエノラーゼ反応室として設定し、多段階に反応を進行/定量させる。
【0108】
なお、上記の有機物分解酵素とは、例えば、プロテアーゼ、ペクチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、リグナーゼ、リパーゼ、デキストリナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、ベンジルアルコール−デヒドロゲナーゼ、カタラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エノラーゼ、ファティ−アシッド−シンセターゼ、グルコース−6リン酸−デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、イソシトレイト−リアーゼ、ラクテイト−オキシダーゼ、マレイト−デヒドロゲナーゼ、ニトレイト−レダクターゼ、オクサレート−デカルボキシラーゼ、ペクチナーゼ、リボヌクレアーゼ、ストレプトキナーゼ、トランスケトラーゼ、ウリカーゼ、キサンチン−オキシナーゼなどから選ばれる1種またはその混合物で例示されるが、有機物分解に関与する酵素であれば特に限定されるものではない。
【0109】
また、例えば、検水として海水を扱う場合、ナトリウムイオンが化学反応を妨害し、正常な測定が困難となるので、各反応室5aにナトリウムイオンを選択的に除去する吸着剤や濾過膜などを充填し、海水の脱塩処理を行う。脱塩処理により検水中のナトリウムイオンのみが除去されるので、他成分の正確な測定が可能となる。
【0110】
例えば、上記吸着剤として、キレート剤、添着剤、イオン交換樹脂、濾過膜などの化学的・物理的吸着剤が挙げられる。
【0111】
なお、上記マスキング剤は、例えば、シアン化カリウム、トリエタノールアミン、アセチルアセトン、BAL、チオ尿素、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、3−メルカプトポロピオン酸、2−アミノエタンチオール、チオグリコール酸、ユニチオール、シュウ酸、チオシュウ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、タイロン、アスコルビン酸、ヨウ化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫化水素、硫化ナトリウム、フッ化アンモニウム、リン酸アンモニウム、ヒドロキシルアミン、1,10フェナントロリン、過酸化水素、EDTA、Ba−EGTA、イミノ二酢酸型キレート樹脂、アミドキシム型キレート樹脂、アミノリン酸型キレート樹脂、リン酸型キレート樹脂、ポリアミン型キレート樹脂、ピコリルアミン型キレート樹脂、ジチオカルバミン型キレート樹脂、8−ヒドロキシキノリン型キレート樹脂等により、例示される。
【0112】
〔第4の実施の形態〕
図13を用いて、薬物を測定するキット、すなわち摂取薬物簡易測定キット1kについて説明を行う。なお、ここでいう薬物とは、有機リン酸系農薬、アルキルピリジニウム塩系農薬、フェノチアジン系薬物、イミプラミン・デスメチルイミプラミン、アセトアミノフェンなどで例示される薬物である。
【0113】
従来、毒物の摂取による疾患や薬物乱用者などの摂取毒物が不明の場合、該毒物の特定作業は、数種類の測定反応を行う必要があり、結果としてその対処に時間がかかってしまうという欠点があった。本実施の形態に係る摂取薬物簡易測定キット1kは、少量の尿、血液などで例示される体液などの検体を使用して、同時に毒物の呈色反応により確認できるものである。
【0114】
<簡易測定キット1kの構成について>
図13において、簡易測定キット1kの構成を示す。なお、第1または第3の実施の形態と同一の機能を有し、重複する部分については、説明を省略する。
【0115】
簡易測定キット1kは、図13に示すように、有機リン酸系農薬、アルキルピリジニウム塩系農薬、フェノチアジン系薬物、イミプラミン・デスメチルイミプラミン、アセトアミノフェンの有無を同時に簡便に確認するものである。
【0116】
本実施の形態においても、第1または第3の実施の形態と同じく、各検査方法により、発色までの時間が異なるので、最も遅い呈色反応に合わせて、すべての呈色反応の発色を同時に確認できるように検水落下管4の長さおよび/または太さが調整されている。
【0117】
また、第3の実施の形態と同じく、二次反応用貯留室3bが設けられており、検水の状態により除タンパクなどの前処理が必要な場合は、検水貯留室3から測定を開始し、また、前処理が不要な場合は、二次反応用貯留室3bに検水を注入し、測定を開始する。
【0118】
〔その他の実施の形態〕
<簡易測定キットの構成の変形例について>
図5において示す簡易測定キット1cにおいては、検水落下管4の配置は、各検水落下管4が垂直方向に平行に配置されているのではなく、検水貯留室の一点から放射状に配置されているものである。
【0119】
図6において示す簡易測定キット1dにおいては、検水落下管4の途中に膜フィルタ11が設置されており、膜フィルタ11により、通過物と非通過物とが分種される。まず、図中1Wayで示される方向に検水を落下させ、反応室5aにおける反応物を膜フィルタ11により分種する。膜フィルタ11の通過物は、そのまま反応室5bおよび5cに達し、化学反応が行われる。その後、簡易測定キット1dを左に90度傾けることにより、図中2Wayで示される方向に、膜フィルタ11の非通過物を落下させ、反応室5dおよび反応室5eにおいて、化学反応を行わせる。
【0120】
簡易測定キット1dのこの構成は、例えば、標的物質の検出に酵素反応等の加水分解が必要な場合や、分子量差異による測定方法を採用する場合などに使用される構成である。
【0121】
なお、膜フィルタ11には、セルラーゼやプロテアーゼなどの分解酵素を埋め込み、例えば、汚泥の抽出物を検水として投入することにより、汚泥の主体が植物系であるかやタンパク質であるかなどを分析することも出来る。
【0122】
図7において示す簡易測定キット1eは、同一のキットの方向を変えて2面を使用し、2度に分けて多くの標的物質を検出する構成であるので、多品目の測定が可能である。

図10において示す簡易測定キット1fは、1つの反応経路すなわち1本の検水落下管4内を落下する反応液が、検水落下管4の分岐により、2以上の経路に分割される構成を持つものである。反応室5aからの反応液は分けられ、反応室5bと反応室5cとに導かれる。
【0123】
図11に示す簡易測定キット1jは、最も簡易な構造を持ち、排気管8が無い点に特徴がある。また、図7に示す簡易測定キット1eが二面を使用することが出来るのと同様に、本簡易測定キット1jも、上下二面を使用することが出来る点に特徴がある。なお、上下など二面以上を使用する簡易測定キットは、これらに限らない。例えば、簡易測定キット1e・1j以外の簡易測定キットを、上下二面を使用する形に構成することも、簡易測定キットの底面同士を向かい合わせる形に組み合わせて構成することにより、可能である。
【0124】
図11(a)は、簡易測定キット1jの全体図であり、図11(b)は、一本の検水落下管4を拡大して示した図であり、図11(c)は、図11(b)に示した検水落下管4を側面から見た図である。
【0125】
簡易測定キット1jにおいては、検水落下管4は、U字形状をしており、その最下部のU字部に検査用指示薬10が設置されている。すなわち、検水落下管4のU字部が反応室5の役割を担い、U字部から先、排気口までの部分が排気管8の役割を担っているので、第1の実施の形態において述べた形状の反応室5および排気管8は設けない。但し使用方法は、各検水落下管4に対応して有る複数の排気口キャップ7を外す点以外は、第1の実施の形態において説明した方法と同一なので、説明を省略する。
【0126】
なお、簡易測定キット1jの上下を反転させると再度使用することが出来るので、合計2回の測定を行うことが出来る。
【0127】
また、簡易測定キット1jにおける検水落下管4は、U字形状に限らず、V字形状や凹字形状でもよい。すなわち、検水落下管4の中を検水が落下する際に、検水落下管4内の空気を適切に抜くことが出来、検水と検査用指示薬との呈色反応を簡易測定キット1j内において適切に行うことが出来るのであれば、検水落下管4の形状は上記の例に限定されるものではない。
【0128】
図12に示す簡易測定キット1gは、第1の実施の形態において説明した簡易測定キット1や、第2の実施の形態において説明した簡易測定キット1bなどを複数個重ねた構造を持つものである。
【0129】
<標的物質および検査方法について>
上記の説明において例示した、簡易測定キット1、1bにより検出する標的物質およびその検出方法以外の、測定可能な標的物質および検出方法を以下に例示する。これらの例示から分かるとおり、発色が得られる化学反応(呈色反応)であれば、本発明に係る簡易測定キットにおいて採用することが出来る。
還元糖:ベルトラン法
溶存酸素:ウィンクラー法
タンニン:タングステン−リン酸モリブデン法
チアミン:ジアゾ法
アスコルビン酸:インドフェノール法
オゾン:インディゴ法
界面活性剤:ブロムフェノールブルー法、メチレンブルー法、チオシアン酸コバルトアンモニウム法
過酸化水素:DPD法
カドミウム:PAN法
ヨウ素:DPD法
コバルト:PAN法
モリブデン:チオグリコール法
残留塩素:DPD法
二酸化塩素:DPD法
シアヌール酸:メラミン比濁法
臭素:DPD法
ヒドラジン:ジメチルアミノベンズアルデヒド法
フェノール:アミノアンチピリン法
フッ化物:SPADNS法
ホウ素:アゾメチン・EDTA法、クルクミン反応
タンパク質:ニンヒドリン反応、ビウレット反応、キサントプロテイン法
サリチル酸:トリンダー変法、塩化第二鉄変法
酸性ホスファターゼ:ナフチルリン酸変法
青酸化合物:ピリジン−ピラゾロン法、シェーンバイン−パーゲンシュテッヘル法ベンジジン変法、ロダン変法
パラコート:ハイドロサルファイト法
ヒ素:ベルリンブルー変法
銀:ローダニン法
ビスマス:ヨウ化カリウム法
コバルト:ニトロソR法
マグネシウム:キシリジルブルー法
アンチモン:ローダミン法、ヨウ化カリウム法
チタン:ジアンチピリルメタン法
バナジウム:PAR法
ベリリウム:ベリロン変法
タングステン:チオシアン酸変法
フッ素:ランタン−アリザリン−コンプレクソン法
有機リン系農薬:DTNB法、4−(4−ニトロベンジル)ピリジン呈色法
アルキルピリジウムナトリウム系農薬:ハイドロサルファイト法
メタノール:重クロム酸−硫酸混液呈色法
エタノール:重クロム酸−硫酸混液呈色法
フェネチルアミン:金属コロイド粒子免疫法
グルホシネート:ニンヒドリン呈色法
メタンフェタミン:シモン反応法、イムノクロマトグラフィー法
アセトアミノフェン:酸分解−インドフェノール法、ニトロ変法
バルビルール酸:銅−ピリジン法、イムノアッセイ法
テオフィリン:イムノクロマトグラフィー法
アンフェタミン:シモン反応、イムノアッセイ法
コカイン代謝物:チオシアン酸コバルト法、イムノアッセイ法
大麻代謝物:ファーストブルーB法、チュケノア法、ジプロムキノンクロルイミド法、イムノアッセイ法
オピエイト:イムノアッセイ法
ベンゾジアゼビン系:イムノアッセイ法
ブロバリン:4−(4−ニトロベンジル)ピリジン呈色法
カーバメート系農薬:DTNB法、4−(4−ニトロベンジル)ピリジン呈色法
クロルプロマジン:FPN法
レボメプロマジン:FPN法
プロマジン:FPN法
フルフェナジン:FPN法
プロメタジン:FPN法
ペルフェナジン:FPN法
3・4環系抗うつ薬:ホレスト反応、イムノアッセイ法
リゼルギル酸ジエチルアミド:エールリッヒ法
【0130】
<補足事項>
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明に係る簡易測定キットは、化学の知識が無い者でも簡単に水質調査などの分析が行えるので、環境についての学習用教材などの用途にも広く好適に使用できる。また、血液や唾液内の複数の成分(酵素、ミネラル、ウイルス、生態代謝物など)を一度に検出することができるので、臨床検査などの用途にも広く好適に使用できる。さらに、ストレスが与えられると唾液中のミネラルイオン濃度が高まることを利用し、唾液中のミネラルイオン濃度を測定してストレス度をチェックする用途にも広く好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る簡易測定キット1の概要図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る反応室5の構造を示す拡大図であり、(a)は加熱を要しない反応を行う反応室5の拡大図であり、(b)は加熱を要する反応を行う反応室5の拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る検水落下管4内を検水が落下する際の時間を説明する図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る簡易測定キット1bの概要図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る簡易測定キットの変形例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る簡易測定キットの変形例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る簡易測定キットの変形例を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る簡易測定キット1cの概要を示す図であり、(a)は簡易測定キット1cの全体図であり、(b)は二次反応用貯留室3b周辺の拡大図であり、(c)は(b)の一部の拡大図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る簡易測定キットの変形例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る簡易測定キットの変形例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る簡易測定キットの変形例を示す図であり、(a)は全体図であり、(b)は一本の検水落下管4の構造を示す拡大図であり、(c)は(b)で示した構造の側面図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る簡易測定キットの変形例を示す図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係る簡易測定キット1kの概要を示す図である。
【図14】従来技術による簡易測定方法の手順を示す図であり、(a)は測定キットに穴を開ける様子を示す図であり、(b)は内部の空気を抜く様子を示す図であり、(c)は検水を吸入する様子を示す図であり、(d)は比色を行う様子を示す図である。
【符号の説明】
【0133】
1 簡易測定キット
1b 簡易測定キット
1c 簡易測定キット
1d 簡易測定キット
1e 簡易測定キット
1f 簡易測定キット
1g 簡易測定キット
1h 簡易測定キット
1i 簡易測定キット
1j 簡易測定キット
1k 簡易測定キット
2 検水注入口
2b 再注入口
3 検水貯留室(検水貯留手段)
3b 二次反応用貯留室(第2の検水貯留手段、試薬液貯留手段)
4 検水落下管(検水誘導手段)
4a 検水落下管(検水誘導手段)
4c 導水管(第2の検水誘導手段、試薬液誘導手段)
5 反応室(反応手段)
5a 反応室(反応手段)
5b 反応室(反応手段)
5c 反応室(反応手段)
5d 反応室(反応手段)
5e 反応室(反応手段)
6 反応室を包む空間
7 排気口キャップ(誘導開始制御手段)
8 排気管(誘導開始制御手段)
9 発熱用給水管
10 検査用指示薬
11 膜フィルタ
12 トンネル
13 入水口
14 栓(第2の誘導開始制御手段、試薬液誘導開始制御手段)
20 気密容器
21 検査用指示薬
22 画鋲等
23 検水
24 分析用標準色表


【特許請求の範囲】
【請求項1】
検水中の複数成分を一度に測定する簡易測定キットにおいて、
測定開始時に上記検水を貯留する検水貯留手段と、
測定する成分に応じた測定用試薬が充填されており、上記検水と上記測定用試薬との化学反応が行われる反応手段と、
上記検水を、上記検水貯留手段から上記反応手段に誘導する検水誘導手段と、
上記検水の誘導開始を制御する誘導開始制御手段と
を備え、
上記反応手段および上記検水誘導手段は、
上記複数成分のそれぞれに対応した各検出方法ごとに備えられ、
上記各検出方法における呈色反応の完了時刻は、
上記検水誘導手段および/または上記誘導開始制御手段の形状を調整することにより、上記各検出方法のすべてにおいて揃えられていることを特徴とする簡易測定キット。
【請求項2】
一つの上記検出方法に用いられる上記反応手段、上記検水誘導手段、および/または上記誘導開始制御手段は複数であることを特徴とする請求項1に記載の簡易測定キット。
【請求項3】
上記反応手段に予め充填されている上記測定用試薬は、粉体状、紙状、ゲル状、ペースト状、または固形状の形態であることを特徴とする請求項1または2に記載の簡易測定キット。
【請求項4】
上記検水を貯留する第2の検水貯留手段と、
上記第2の検水貯留手段に貯留された上記検水を、上記反応手段に誘導する第2の検水誘導手段と、
上記第2の検水誘導手段による上記検水の誘導開始を制御する第2の誘導開始制御手段と
をさらに備え、
上記誘導開始制御手段および上記第2の誘導開始制御手段は、
ユーザによりいずれか一方を選択可能に設けられていることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の簡易測定キット。
【請求項5】
測定用試薬液を貯留する試薬液貯留手段と、
上記試薬液貯留手段に貯留された上記測定用試薬液を、上記反応手段に誘導する試薬液誘導手段と、
上記試薬液誘導手段による上記測定用試薬液の誘導開始を制御する試薬液誘導開始制御手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の簡易測定キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−333689(P2007−333689A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169025(P2006−169025)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(502192502)
【Fターム(参考)】