説明

簡易載荷試験方法

【課題】より容易な載荷試験を可能にする簡易載荷試験方法を実現する。
【解決手段】杭圧入機10は、後側のクランプ装置11bが支持する既設杭Pに荷重を掛ける載荷油圧シリンダ3を備えており、その載荷油圧シリンダ3の駆動によって、後側のクランプ装置11bが支持する載荷試験対象の既設杭Pに荷重を掛けて簡易に載荷試験を行うことができるので、杭圧入機10が複数の杭を連設する過程で、その杭圧入機10によって載荷試験対象の既設杭Pに荷重を掛けて簡易載荷試験を行うことを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易載荷試験方法に係り、特に、支持杭の施工において杭の支持力を明確にするために行う、杭圧入機を用いた簡易載荷試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地盤に埋設された鋼管杭などの支持力を測定する載荷試験が行われている。
具体的には、載荷試験の対象となる杭に並設されている既設杭に取り付けられた載荷試験用アタッチメントが、その試験対象杭を押し下げる荷重を負荷して載荷試験を行う技術(例えば、特許文献1参照)や、載荷試験の対象となる杭の両側の既設杭をクランプユニットで保持することで、載荷試験装置の載荷ユニットを試験対象杭に配設して、その載荷ユニットが試験対象杭を押し下げる荷重を負荷して載荷試験を行う技術(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【特許文献1】特開2003−27518号公報
【特許文献2】特開2004−204484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術の場合、所定の杭の圧入施工が完了した後に、載荷試験用アタッチメントや載荷試験装置を杭に設置して載荷試験を行うため、その載荷試験用のアタッチメントや装置を設置したり撤去したりする手間がかかるので、工期や工費が増大してしまうことがあった。
また、圧入施工が完了した既設杭を利用し、その既設杭から反力をとって試験対象杭を押し下げる荷重を負荷して載荷試験を行う場合、その既設杭に作用する反力が既設杭を引き抜く力となって作用するので、既設杭を抜き上げてしまう恐れがあり、結果として支持力が発現されないことが懸念された。そして、既設杭に引抜力を作用させたくない場合に、試験用の仮設杭を設置することがあるが、その仮設杭の設置や撤去には手間がかかるので、工期や工費が増大してしまうことがあった。
【0004】
本発明の目的は、より容易な載荷試験を可能にする簡易載荷試験方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、簡易載荷試験方法であって、
地盤に圧入または回転圧入された既設杭の上端側を支持する複数のクランプ装置によって前記既設杭から反力を取り、昇降可能なチャック装置で杭を把持して下降させることにより前記既設杭に並ぶ位置に新たな杭を圧入または回転圧入する杭圧入機を用いて、複数の杭を連設する過程で、
反力を取られ引抜き力が作用した前記既設杭に対して、施工時の最終工程において前記杭圧入機によって再び圧入力を載荷してその既設杭に支持力を発現させて、その圧入力をもって支持力を確認することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、簡易載荷試験方法であって、
地盤に圧入または回転圧入された既設杭の上端側を支持する複数のクランプ装置によって前記既設杭から反力を取り、昇降可能なチャック装置で杭を把持して下降させることにより前記既設杭に並ぶ位置に新たな杭を圧入または回転圧入する杭圧入機を用いて、複数の杭を連設する過程で、
前記複数のクランプ装置のうち、前記チャック装置から最も離れた配置のクランプ装置が備える載荷機構部によって、そのクランプ装置が支持する所定の既設杭に荷重を掛けることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、簡易載荷試験方法であって、
地盤に圧入または回転圧入された既設杭の上端側を支持する複数のクランプ装置によって前記既設杭から反力を取り、昇降可能なチャック装置で杭を把持して下降させることにより前記既設杭に並ぶ位置に新たな杭を圧入または回転圧入する杭圧入機を用いて、複数の杭を連設する過程で、
前記複数のクランプ装置を挟んで前記チャック装置の反対側となる配置に備えられる載荷機構部によって、所定の既設杭に荷重を掛けることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の簡易載荷試験方法において、
前記複数のクランプ装置が前記既設杭を支持するとともに、前記チャック装置が地盤に圧入または回転圧入した新たな杭を把持した状態で、前記載荷機構部により所定の既設杭に荷重を掛けて、載荷試験を行うことを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4の何れか一項に記載の簡易載荷試験方法において、
前記杭圧入機によって圧入または回転圧入された全ての既設杭に対して、前記載荷機構部により荷重を掛けて、載荷試験を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、簡易載荷試験方法であって、
地盤に圧入または回転圧入された既設杭の上端側を支持する複数のクランプ装置によって前記既設杭から反力を取り、昇降可能なチャック装置で杭を把持して下降させることにより前記既設杭に並ぶ位置に新たな杭を圧入または回転圧入する杭圧入機を用いて、複数の杭を連設する過程で、
前記チャック装置により前記既設杭に荷重を掛けて、載荷試験を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易載荷試験に用いる杭圧入機は、クランプ装置などが支持する既設杭に荷重を掛ける載荷機構部を備えているので、その載荷機構部の駆動によって、載荷試験対象の所定の既設杭に荷重を掛けて簡易に載荷試験を行うことができる。
そして、この杭圧入機を用いて複数の杭を連設する過程で、杭圧入機によって載荷試験対象の既設杭に荷重を掛けて簡易載荷試験を行うことができるので、所定の杭の圧入施工が完了した後に、載荷試験装置を杭に設置したり撤去したりする手間や、試験用の仮設杭を設置したり撤去したりする手間を省くことができることとなって、より容易に好適な簡易載荷試験を実行することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る杭圧入機及び杭圧入機を用いる杭の簡易載荷試験方法の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
(実施形態1)
杭圧入機10は、図1に示すように、所定の杭(例えば、鋼管杭など)を地盤Gに圧入または回転圧入(以下、単に「圧入」)する圧入機であり、既に地盤Gに圧入された既設杭Pの上端側を掴んで支持する複数(例えば、3つ)のクランプ装置11…を備えたサドル12と、サドル12に対して前後動可能なスライドベース13と、スライドベース13上で左右に旋回可能なリーダマスト14と、リーダマスト14の前面に昇降可能に取り付けられるチャック装置15と、リーダマスト14に対してチャック装置15を昇降駆動するメイン油圧シリンダ16等を備えている。
【0014】
クランプ装置11は、先に圧入された既設の杭である鋼管杭の上端側に挿入された状態で、クランプ用油圧シリンダ2c(図3参照)により水平方向に広げられるように拡径して、その鋼管杭の内壁面を押圧することで、その鋼管杭(既設杭)の上端側を掴むことによって、杭圧入機10を既設杭Pの上端部に支持させる。
特に、クランプ装置11は、掴んで支持した既設杭Pから反力を取って、杭圧入機10が新たに杭を圧入することができるように、杭圧入機10を既設杭Pの上端部に設置するようになっている。
なお、クランプ装置11…は、例えば、先頭の基準となるクランプ装置11を除いて、サドル12に対して左右や前後に移動可能となっており、これにより円弧等の湾曲した線に沿って並んで圧入された複数の杭の上端側を複数のクランプ装置11でそれぞれ掴むことが可能となっているとともに、杭列の各杭の間隔が多少異なることがあって対応できるようになっている。
【0015】
そして、この杭圧入機10は、図1に示すように、チャック装置15に最も近い配置となる前側のクランプ装置11fと、チャック装置15から最も離れた配置となる後側のクランプ装置11bと、クランプ装置11fとクランプ装置11bの間の配置となる中央側のクランプ装置11cとの、3つのクランプ装置11を備えている。
【0016】
後側のクランプ装置11bは、図2(a)(b)に示すように、サドル12に支持される支持部1と、既設杭Pである鋼管杭の内壁面に対して拡径してその鋼管杭を把持して支持する把持部2と、所定の既設杭Pを把持した状態の把持部2を杭圧入機10(サドル12)と接離する方向に移動させて、そのクランプ装置11bが支持する所定の既設杭Pに荷重を掛ける載荷機構部である載荷油圧シリンダ3と、を備えている。
【0017】
支持部1には、載荷油圧シリンダ3の基部が固定されている。
なお、このクランプ装置11bには、左右一対の2つの載荷油圧シリンダ3が備えられている。
【0018】
把持部2は、載荷油圧シリンダ3を介して支持部1に接続されている固定部2aと、固定部2aに対して接離する可動部2bと、可動部2bを移動させるクランプ用油圧シリンダ2cと、を備えている。なお、このクランプ装置11bにおける把持部2には、載荷油圧シリンダ3の左右にそれぞれ3つ、計6つのクランプ用油圧シリンダ2cが備えられている。また、把持部2の上部には、既設杭Pの上端面に当接する鍔部2eが形成されている。
このクランプ用油圧シリンダ2cがロッド部2dを前後方向に押し伸ばすことによって、図3(a)(b)に示すように、固定部2aから可動部2bが押し出されて、把持部2が拡径することとなって、把持部2が既設杭Pの上端側を把持して支持するようになっている。
【0019】
載荷油圧シリンダ3は、そのロッド部3aを上下方向に押し伸ばすことによって、図4(a)(b)に示すように、把持部2を杭圧入機10(サドル12)から離間する方向に移動させて、その把持部2が把持する所定の既設杭Pを押圧する載荷機構部として機能する。
【0020】
なお、前側のクランプ装置11fと中央側のクランプ装置11cは、後側のクランプ装置11bにおける載荷油圧シリンダ3を備えない構成であって、それらクランプ装置11f、11cの各把持部2が既設杭Pの上端側を把持して支持するようになっている。
【0021】
スライドベース13は、サドル12に対し前方に移動してチャック装置15を水平に前側に移動させることにより、サドル12を移動することなく、先頭のクランプ装置11が支持している既設杭Pの先に、二本の杭を前後方向に並べて順次圧入可能となっている。
リーダマスト14は、スライドベース13に対し左右に旋回可能とされることにより、順次並んで圧入される杭の列の方向を直角にまげたり、湾曲して曲げたりすることが可能となっている。
これらスライドベース13とリーダマスト14とにより、圧入機本体のクランプ装置11…を備えたサドル12に対してチャック装置15を水平方向に移動可能となっている。
【0022】
チャック装置15は、その背面側がリーダマスト14の前面側に昇降可能に嵌合した状態とされるとともに、リーダマスト14とチャック装置15に接続されたメイン油圧シリンダ16により昇降駆動されるようになっている。
また、チャック装置15の内部には、所定の油圧シリンダの駆動により作動して、上下に貫通した状態の杭を外側の四方から押圧して把持する図示しない杭把持部が設けられている。
そして、チャック装置15の昇降範囲は限られているので、杭を把持してチャック装置15を下降させることと、杭を離してチャック装置15を上昇させることを繰り返すようになっている。これにより、1ストローク分ずつ杭を圧入することが繰り返され、チャック装置15の昇降範囲より深く杭を地中に圧入することが可能になっている。
【0023】
なお、杭圧入機10は、順次杭を圧入する際に、新たに圧入した杭に対してクランプ装置11を備えるサドル12を移動させるようにして、杭の一本分に対応して前進することができる。この杭圧入機10の杭上の移動に関する動作は従来公知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。
【0024】
次に、本発明に係る簡易載荷試験方法であって、杭圧入機10を用いる杭の簡易載荷試験方法について説明する。
【0025】
まず、図1に示すように、地盤Gに圧入されて連設された既設杭Pの上端側をクランプ装置11f、11c、11bで支持しつつ、その既設杭Pから反力を取って、杭圧入機10がチャック装置15を昇降させることにより、既設杭Pに並ぶ位置に新たな杭P1を圧入して並設する。
【0026】
こうして新たな杭P1を既設杭Pに並設することを繰り返して、杭圧入機10が複数の杭を順次連設する過程で、載荷試験を行う対象の所定の既設杭Pを後側のクランプ装置11bが支持する工程において、その杭の簡易載荷試験が実行される。
【0027】
そして、杭圧入機10における前側のクランプ装置11fと中央側のクランプ装置11cと後側のクランプ装置11bとによって、それぞれ既設杭Pを支持した状態において、クランプ装置11f、11cが支持する既設杭Pを反力杭とすることにより、後側のクランプ装置11bにおいて載荷試験対象杭である既設杭Pを把持する把持部2を、載荷油圧シリンダ3がロッド部3aを押し出す駆動(図4(b)参照)によって下降させて、そのクランプ装置11bが支持する載荷試験対象の既設杭Pに荷重を掛けて簡易載荷試験を行う。
具体的には、載荷油圧シリンダ3の駆動によって、クランプ装置11bの把持部2が載荷試験対象の既設杭Pを地盤Gに押し込む際の、沈下量測定点の変位を杭圧入機10を基準として測定することによって簡易載荷試験が行われる。また、不動点とする既設杭Pの杭頭を基準として変位を計測することによって、簡易載荷試験を行ってもよい。
なお、載荷試験対象の既設杭Pを地盤Gに押し込むための反力は、前側のクランプ装置11fと中央側のクランプ装置11cとが支持する既設杭Pと地盤Gとの間で作用する引き抜き抵抗から得られる。また、この簡易載荷試験を行う場合、載荷試験対象の既設杭Pを地盤Gに押し込むクランプ装置11bに隣り合う配置となる中央側のクランプ装置11cが既設杭Pの把持を開放した状態で、前側のクランプ装置11fが支持する既設杭Pから反力を取るようにしてもよい。こうすることで、載荷試験の対象である既設杭Pの隣の既設杭Pが変位してしまうことを抑え、載荷試験対象の既設杭Pへの影響を抑えることができる。
このように載荷試験対象の既設杭Pの地盤Gにおける支持力の評価に要するデータが、その既設杭Pに掛かる荷重と、その既設杭Pの変位との関係として得られる。
【0028】
また、載荷試験対象の既設杭Pに荷重を掛けて簡易載荷試験を行う際には、杭圧入機10のチャック装置15が地盤Gに圧入中の新たな杭P1を把持した状態を維持している。
チャック装置15が地盤Gに圧入中の新たな杭P1を把持することによって、この新たな杭P1も反力杭とする簡易載荷試験を行うことができる。
【0029】
そして、簡易載荷試験終了後、載荷油圧シリンダ3のロッド部3aを初期状態(図4(a)参照)に引き戻して、杭圧入機10は、既設杭Pに並ぶ位置に新たな杭P1を圧入する作業を継続する。
【0030】
以上のように、本発明に係る杭圧入機10は、後側のクランプ装置11bが支持する既設杭Pに荷重を掛ける載荷油圧シリンダ3を備えているので、その載荷油圧シリンダ3の駆動によって、後側のクランプ装置11bが支持する載荷試験対象の既設杭Pに荷重を掛けて簡易載荷試験を行うことができる。
つまり、杭圧入機10を用いて複数の杭を連設する過程で、その杭圧入機10によって載荷試験対象の既設杭Pに荷重を掛けて簡易載荷試験を行うことができるので、所定の杭の圧入施工が完了した後に、載荷試験装置を杭に設置したり撤去したりする手間や、試験用の仮設杭を設置したり撤去したりする手間を省くことができることとなって、より容易に好適な簡易載荷試験を実行することが可能になる。
従って、この杭圧入機10を用いる載荷試験は、より容易な簡易載荷試験方法であるといえる。
【0031】
特に、この杭圧入機10は、複数(3つ)備えるクランプ装置11(11f、11c、11b)のうち、チャック装置15から最も離れた配置の後側のクランプ装置11bに載荷油圧シリンダ3が配設され、最後部となるクランプ装置11bにおいて簡易載荷試験を実行することができるので、載荷試験を完了した既設杭Pを反力杭とすることがない。具体的には、反力を取られ引抜き力が作用した既設杭Pに対して、施工時の最終工程において再び圧入力を載荷してその既設杭Pに支持力を発現させて、その圧入力をもって支持力を確認することができる。
つまり、杭圧入機10が、簡易載荷試験を終えた既設杭Pを前側のクランプ装置11fや中央側のクランプ装置11cで支持することはなく、その既設杭Pを反力杭として利用せず抜き上げるような力を作用させることがないため、既設杭Pは簡易載荷試験を終えた後の状態を維持し、確認された支持力は保持されることとなる。従って、簡易載荷試験に関するデータの有効性は高く、計測された支持力について高い信頼性を有する支持杭となる。
また、チャック装置15から最も離れた配置の載荷機構部(載荷油圧シリンダ3)により、最終工程として全ての杭に対して簡易載荷試験を実行することができることとなる。
【0032】
(実施形態2)
次に、本発明に係る杭圧入機及び杭圧入機を用いる杭の簡易載荷試験方法の実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同一部分には同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0033】
図5に示すように、杭圧入機20は、複数のクランプ装置11を備えており、チャック装置15に近い配置となる前側のクランプ装置11fと、チャック装置15から離れた配置となる後側のクランプ装置11bとの、2つのクランプ装置11を備えている。
そして、後側のクランプ装置11bに、そのクランプ装置11bが支持する所定の既設杭Pに荷重を掛ける載荷機構部である載荷油圧シリンダ3が配設されている。
【0034】
このように、2つのクランプ装置11を備えている杭圧入機20であれば、前側のクランプ装置11fで支持する既設杭Pを反力杭として利用し、後側のクランプ装置11bが支持する載荷試験対象の既設杭Pに荷重を掛けて簡易載荷試験を行うことができる。
そして、実施形態1の杭圧入機10と同様に、この杭圧入機20を用いて複数の杭を連設する過程で、杭圧入機20によって載荷試験対象の既設杭Pに荷重を掛けて簡易載荷試験を実行することができる。
【0035】
(実施形態3)
次に、本発明に係る杭圧入機及び杭圧入機を用いる杭の簡易載荷試験方法の実施形態3について説明する。なお、実施形態1と同一部分には同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0036】
図6に示すように、杭圧入機30は、複数(例えば、2つ)のクランプ装置11を備えており、それら複数のクランプ装置11を挟んで、前方のチャック装置15の反対側となる後方の位置に、所定の既設杭Pに荷重を掛ける載荷機構部33を備えている。
【0037】
載荷機構部33は、載荷試験対象の既設杭Pの上端に当接する載荷部33aと、その載荷部33aを杭圧入機10(サドル12)と接離する方向に移動させて、既設杭P側に押し出す載荷油圧シリンダ3と、を備えている。
そして、この載荷機構部33は、2つのクランプ装置11が支持する既設杭Pの後方の配置に連設されている既設杭Pに載荷部33aを押し付けるように載荷油圧シリンダ3を駆動させることによって、その既設杭Pに荷重を掛けることができる。
【0038】
このように、杭圧入機30は、2つのクランプ装置11より後方に位置する既設杭Pに荷重を掛ける簡易載荷試験を行うことができる。具体的には、杭圧入機30は、2つのクランプ装置11が支持する既設杭Pの後方に並設されている既設杭Pに荷重を掛けることができる載荷機構部33を備えているので、その載荷機構部33の作動によって、載荷試験対象の既設杭Pに荷重を掛けて簡易載荷試験を行うことができる。
つまり、この杭圧入機30であれば、2つのクランプ装置11で支持する既設杭Pを反力杭として利用し、載荷機構部33の載荷部33aが当接する載荷試験対象の既設杭Pに荷重を掛けて簡易載荷試験を行うことができる。
そして、実施形態1の杭圧入機10と同様に、この杭圧入機30を用いて複数の杭を連設する過程で、杭圧入機30によって載荷試験対象の既設杭Pに荷重を掛けて簡易載荷試験を実行することができる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、杭圧入機10、20、30におけるチャック装置15を下降させることで、既設杭Pに荷重を掛けて簡易載荷試験を行うようにしてもよい。
この場合、杭圧入機(10、20、30)を、既設杭P上を後退移動させながら、後方の配置となったチャック装置15で既設杭Pに荷重を掛けることが好ましい。なお、杭圧入機(10、20、30)を後退移動させる際には、チャック装置15に既設杭Pの杭頭を挟持・解放可能な周知のアタッチメントを取り付けることとなる。
【0040】
なお、以上の実施の形態においては、載荷試験対象の既設杭Pを地盤Gに押し込む鉛直載荷試験を例に杭の載荷試験を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、載荷試験対象の既設杭Pを把持部2で把持して引き上げる荷重を負荷する引抜載荷試験を行うことにも、本発明を適用してもよい。
【0041】
また、以上の実施の形態においては、クランプ装置11は、鋼管杭の内壁面を押圧することで、その鋼管杭(既設杭)の上端側を掴むとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、クランプ装置は、鋼管杭などの既設杭の外面や上面を把持し、その既設杭の上端側を掴む構成であってもよい。
【0042】
また、以上の実施の形態においては、クランプ装置11が2つや3つの場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、クランプ装置11は4つ以上の任意の数であってもよい。
【0043】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る杭圧入機を示す側面図である。
【図2】載荷機構部を備えるクランプ装置を示す上面図(a)と、側面図(b)である。
【図3】載荷機構部を備えるクランプ装置の内部を示す上面図であって、把持部の縮径時(a)と、把持部の拡径時(b)を示す説明図である。
【図4】載荷機構部を備えるクランプ装置の内部を示す側面図であって、載荷油圧シリンダの初期状態(a)と、載荷油圧シリンダの作動状態(b)を示す説明図である。
【図5】実施形態2の杭圧入機を示す側面図である。
【図6】実施形態3の杭圧入機を示す側面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 支持部
2 把持部
2a 固定部
2b 可動部
2c クランプ用油圧シリンダ
3 載荷油圧シリンダ(載荷機構部)
10 杭圧入機
11b クランプ装置
11c クランプ装置
11f クランプ装置
15 チャック装置
20 杭圧入機
30 杭圧入機
11 クランプ装置
33 載荷機構部
33a 載荷部
P 既設杭
P1 杭
G 地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に圧入または回転圧入された既設杭の上端側を支持する複数のクランプ装置によって前記既設杭から反力を取り、昇降可能なチャック装置で杭を把持して下降させることにより前記既設杭に並ぶ位置に新たな杭を圧入または回転圧入する杭圧入機を用いて、複数の杭を連設する過程で、
反力を取られ引抜き力が作用した前記既設杭に対して、施工時の最終工程において前記杭圧入機によって再び圧入力を載荷してその既設杭に支持力を発現させて、その圧入力をもって支持力を確認することを特徴とする簡易載荷試験方法。
【請求項2】
地盤に圧入または回転圧入された既設杭の上端側を支持する複数のクランプ装置によって前記既設杭から反力を取り、昇降可能なチャック装置で杭を把持して下降させることにより前記既設杭に並ぶ位置に新たな杭を圧入または回転圧入する杭圧入機を用いて、複数の杭を連設する過程で、
前記複数のクランプ装置のうち、前記チャック装置から最も離れた配置のクランプ装置が備える載荷機構部によって、そのクランプ装置が支持する所定の既設杭に荷重を掛けることを特徴とする簡易載荷試験方法。
【請求項3】
地盤に圧入または回転圧入された既設杭の上端側を支持する複数のクランプ装置によって前記既設杭から反力を取り、昇降可能なチャック装置で杭を把持して下降させることにより前記既設杭に並ぶ位置に新たな杭を圧入または回転圧入する杭圧入機を用いて、複数の杭を連設する過程で、
前記複数のクランプ装置を挟んで前記チャック装置の反対側となる配置に備えられる載荷機構部によって、所定の既設杭に荷重を掛けることを特徴とする簡易載荷試験方法。
【請求項4】
前記複数のクランプ装置が前記既設杭を支持するとともに、前記チャック装置が地盤に圧入または回転圧入した新たな杭を把持した状態で、前記載荷機構部により所定の既設杭に荷重を掛けて、載荷試験を行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の簡易載荷試験方法。
【請求項5】
前記杭圧入機によって圧入または回転圧入された全ての既設杭に対して、前記載荷機構部により荷重を掛けて、載荷試験を行うことを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の簡易載荷試験方法。
【請求項6】
地盤に圧入または回転圧入された既設杭の上端側を支持する複数のクランプ装置によって前記既設杭から反力を取り、昇降可能なチャック装置で杭を把持して下降させることにより前記既設杭に並ぶ位置に新たな杭を圧入または回転圧入する杭圧入機を用いて、複数の杭を連設する過程で、
前記チャック装置により前記既設杭に荷重を掛けて、載荷試験を行うことを特徴とする簡易載荷試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−275389(P2009−275389A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126577(P2008−126577)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000141521)株式会社技研製作所 (83)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】