説明

簡易造水装置

【課題】簡易造水装置を、その造水能力および利便性の低下を招くことなく、できるだけコンパクトにパッケージ化できるようにする。
【解決手段】原水Wの流路Lの一部をなすと共に通過する原水Wの濾過をなす濾過ユニット1と、前記流路Lに原水Wを送り込むための送水ポンプ2と、濾過ユニット1を経て生成された生活用水W’を蓄える貯水槽3と、送水ポンプ2に電力を供給する発電手段4と、これらを載せるパレット体5とを備えている。貯水槽3は折り畳み可能な袋状体により構成され、パレット体5は第一パレット50と第二パレット51から構成されていると共に、第一パレット50上に貯水槽3が搭載され、かつ、第二パレット51上に濾過ユニット1、送水ポンプ2及び発電手段4が載置されるようになっている。第一パレット50の内部に折り畳まれた貯水槽3の収納部が形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般河川の水や、その他の水源の水を原水として、この原水から飲み水などとなる生活用水を生成する造水装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
水道による給水ができない状況が生じたときに、あるいはまた、水源はあるが水道がない場所において、一般河川の水や、その他の水源の水を原水として、この原水から飲み水などとなる生活用水を生成する造水装置としては、従来より各種のものが利用されている。しかるに、かかる造水装置は一般に、非常時に利用されるものであり、また、これを利用する現場への保管場所からの搬送を要する場合が少なくないため、これを利用しないときはできるだけコンパクトに纏めることができることが望まれる。しかるに、かかる造水装置は、前記原水の濾過ユニットと、この濾過ユニットに原水を送り込む送水ポンプ、濾過ユニットにより濾過生成された生活用水の貯留槽を最低限の構成要素として必要とすることから、容易にはコンパクト化させ難い。自転車を利用した移動式造水機も提案されているが、(特許文献1参照)この造水機は可搬性は高い反面、非常時に自治体などで要求されるような造水能力(単位時間当たりの生活用水の生成容量)は期待し難く、また、生成された生活用水を蓄える構造を備えていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−86934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の簡易造水装置を、その造水能力および利便性の低下を招くことなく、できるだけコンパクトにパッケージ化できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、簡易造水装置を、原水から生活用水を生成する造水装置であって、原水の流路の一部をなすと共に通過する原水の濾過をなす濾過ユニットと、前記流路に原水を送り込むための送水ポンプと、前記濾過ユニットを経て生成された生活用水を蓄える貯水槽と、送水ポンプに電力を供給する発電手段と、これらを載せるパレット体とを少なくとも備えており、
前記貯水槽は折り畳み可能な袋状体により構成され、
前記パレット体は第一パレットと第二パレットから構成されていると共に、第一パレット上に貯水槽が搭載され、かつ、第二パレット上に濾過ユニット、送水ポンプ及び発電手段が載置されるようになっており、
しかも、第一パレット又は第二パレットの内部に折り畳まれた貯水槽の収納部が形成してあるものとした。
【0006】
かかる造水装置は、これを利用する必要がないときは、パレット体内に折り畳んだ貯水槽を納めることで保管に都合の良い大きさに纏めておくことができ、したがってまた、設置場所までの搬送も容易となる。また、貯水槽以外の構成部材は第二パレット上に載置され、かつ、貯水槽は第一パレット上に搭載されるので、展開設置状態は安定的である。
【0007】
前記第一パレットの一辺部と第二パレットの一辺部とをヒンジ部を介して接合させ、このヒンジ部を中心に第二パレットの載置面に対し第一パレットの搭載面が略直交する起立位置まで第一パッレットの回動が可能となるようにしておくこともある。また、この場合さらに、起立位置にある第一パレットの姿勢保持手段を備えさせておくこともある。このようにした場合、第一パレットを起立位置に回動させることで、造水装置を利用する必要がないときには、その水平方向の大きさを第二パレットの載置面の広さに縮小させることができ、前記保管などに一層都合の良い態様にすることができる。また、前記姿勢保持手段により、この態様を安定的に維持させることができる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、簡易送水装置の造水能力及び利便性の低下を招くことなく、これをできるだけコンパクトにパッケージ化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は簡易造水装置の概要構成を示した模式図である。
【図2】図2は第一パレットを展開位置に位置づけた状態における簡易造水装置の平面構成図である。
【図3】図3は第一パレットを展開位置に位置づけた状態における簡易造水装置の正面構成図である。
【図4】図4は第一パレットを起立位置に位置づけた状態における簡易造水装置の平面構成図である。
【図5】図5は第一パレットを起立位置に位置づけた状態における簡易造水装置の正面構成図である。
【図6】図6は第一パレットを起立位置に位置づけた状態における簡易造水装置の右側面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜図6に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について説明する。この実施の形態にかかる簡易造水装置は、水道による給水ができない状況が生じたときに、あるいはまた、水源はあるが水道がない場所において、一般河川の水や、その他の水源の水を原水Wとして、この原水Wから飲み水などとなる生活用水W’を生成するものである。かかる造水装置は、典型的には、災害時や、離島、工事現場などでの生活用水W’の確保のために利用される。かかる造水装置は、かかる原水Wからの生活用水W’の生成をこの装置のみをもって完結的になし得るものである。それと共に、かかる造水装置は、通常時、つまりこれを利用する必要がないときは、保管に都合の良い大きさに纏めておくことができ、したがってまた、設置場所までの搬送も容易で、さらに、設置場所においては安定的な展開設置ができるようになっている。これにより、かかる造水装置は、自治体や自治会での管理・利用に特に適している。
【0011】
かかる造水装置は、濾過ユニット1と、送水ポンプ2と、貯水槽3と、発電手段4と、これらを載せるパレット体5とを備えている。図示の例では、かかる造水装置はさらに、逆洗手段6を備えている。
【0012】
濾過ユニット1は、原水Wの流路Lの一部をなすと共に通過する原水Wの濾過をなすものである。図示の例では、流路Lを途中から分岐して並列に配置された二つの濾過ユニット1、1のそれぞれに原水Wを送り込んでその濾過をなすようにしている。各濾過ユニット1はそれぞれ筒一端を原水Wの流入部1bとし、筒他端を濾過された水、つまり、原水Wから生成された生活用水W’の流出部1cとした筒状のハウジング1a内に図示しないフィルタエレメント(濾材)を納めて構成されている。流入部1bから送り込まれた原水Wはかかるフィルタエレメントにより濾過され生活用水W’となる。図示の例ではかかるフィルタエレメントとして中空糸膜を束状にしたものを利用するのに適した構成となっている。図示の例では、フィルタエレメントを構成する各中空糸膜はその長さを前記ハウジング1aの筒軸に沿わせることとなる。図示の例では、ハウジング1aの筒両端間には脱気部1dが設けられており、逆洗時には前記流入部1b及び流出部1cのいずれか一方を閉鎖させ且つ他方を開放させ開放させた他方から逆洗手段6を構成するコンプレッサー6aからのエアを送り込むと共に、この脱気部1dを開放してかかるエアを排気するようになっている。なお、図1においては、かかる逆洗手段6を構成するコンプレッサー6aとその吸気系及び配水系の流路L’を模式的に表した線分を破線で表している。また、図1中、符号L”で示すのは、造水装置に塩素注入装置を含ませて構成する場合の塩素の注入流路である。
【0013】
送水ポンプ2により前記流路Lの取水端Laからこの流路Lに原水Wが送り込まれ、濾過ユニット1での原水Wの濾過がなされる。かかる濾過ユニット1を経て生成された生活用水W’は貯水槽3に蓄えられる。図示の例では、並列に配置された二つの濾過ユニット1、1から送り出された生活用水W’は単一の貯水槽3に送り込まれ蓄えられるようになっている。かかる送水ポンプ2及び前記コンプレッサー6a及び流路Lを構成する各弁は発電手段4から供給される電力により稼働される。かかる発電手段4としてはガソリン発電機などを用いることができる。各図中、符号7で示されるのは発電手段4、送水ポンプ2、コンプレッサー6a、各弁の制御をなす制御盤である。
【0014】
パレット体5は、略同じ大きさの第一パレット50と第二パレット51から構成されている。図示の例では、第一パレット50及び第二パレット51はいずれも、平面視の状態で正方形状をなすように構成されている。そして、第一パレット50上に貯水槽3が搭載され、かつ、第二パレット51上に濾過ユニット1、送水ポンプ2、発電手段4及び逆洗手段6がが載置されるようになっている。図2〜図6中、符号9で示されるのは前記流路L、L’を構成する配管の主要部の配設位置である。
【0015】
図示の例では、各パレット50、51共に、天板52と底板53とを、両者の間に間隔を形成させるように、縦板を介して連接させている。また、第一パレット50の一辺部50aと第二パレット51の一辺部51aとがヒンジ部54を介して接合されており、このヒンジ部54を中心に第二パレット51の載置面(前記天板52の外面)と第一パレット50の搭載面(前記天板52の外面)とを略同面上に位置させた展開状態(図2、図3)から、第二パレット51の載置面に対し第一パレット50の搭載面が略直交する起立位置(図4〜図6)まで第一パレット50の回動が可能となっている。図示の例では、第一パレット50の一辺部50aの両端隅部にそれぞれ、プレート一端側をこの一辺部から側方に突き出させるようにヒンジプレート54aが備え付けられていると共に、一対のヒンジプレート54a、54a間に第二パレット51の一辺部51aが納められ、かつ、このヒンジプレート54aのプレート一端部と第二パレット51の一辺部51aの隣接する隅部とがヒンジ軸54bにより回動可能に組み合わされている。
【0016】
また、この実施の形態にあっては、第二パレット51に前記起立位置にある第一パレット50の姿勢保持手段8が備えられている。図示の例では、かかる姿勢保持手段8は、第二パレット51の一辺部51aにおいてその両端において前記天板52からこの天板52に直交する向きに突き出す鉛直片8aと、この鉛直片8aと起立位置にある第一パレット50の天板52とをボルト止めするボルト及びナットとから構成されている。
【0017】
一方、前記貯水槽3は、第一パレット50の搭載面内に納まる底面3aとこれに対向する天面3bと両面間に亘る周回側面3cとを備えた袋状体として構成されている。かかる貯水槽3の下部にはその内部に蓄えられた生活用水W’の供給部となる水栓3dが備えられている。かかる貯水槽3は、水を漏らさないように構成されたシート、典型的には、合成樹脂製のシートから構成されており、底面3aを第一パレット50の搭載面に接しさせてこの第一パレット50上に立ち広げられて搭載された使用状態から折り畳み可能となっている。かかる貯水槽3は典型的には図示しない支柱により使用状態の形を保持される。
【0018】
そして、この実施の形態にあっては、折り畳んだ貯水槽3を、第一パレット50又は第二パレット51の内部、図示の例では第一パレット50の内部に形成された収納部51bに収納できるようにしてある。(図4〜図6)すなわち、図示の例では、第一パレット50を構成する天板52と底板53との間の間隔内に折り畳んだ貯水槽3を収納できるようになっている。
【0019】
これにより、かかる造水装置は、これを利用する必要がないときは、パレット体5内に折り畳んだ貯水槽3を納めることで保管に都合の良い大きさに纏めておくことができ、したがってまた、設置場所までの搬送も容易となる。また、貯水槽3以外の構成部材は第二パレット51上に載置され、かつ、貯水槽3は第一パレット50上に搭載されるので、展開設置状態は安定的である。
【0020】
特に、この実施の形態にあっては、第一パレット50を起立位置に回動させることで、造水装置を利用する必要がないときには、その水平方向の大きさを第二パレット51の載置面の広さに縮小させることができ、前記保管などに一層都合の良い態様にすることができる。また、前記姿勢保持手段8により、この態様を安定的に維持させることができる。
【0021】
第一パレット50内に貯水槽3を折り畳んで納め、かつ、この第一パレット50を起立位置に位置づけさせた状態から、前記姿勢保持手段8のボルト止めを解いて第一パレット50を第二パレット51の側方に伏倒回動させることで、この第一パレット50上に貯水槽3を搭載させた造水装置の利用可能状態を容易に作り出すことができる。
【符号の説明】
【0022】
W 原水
W’ 生活用水
L 流路
1 濾過ユニット
2 送水ポンプ
3 貯水槽
4 発電手段
5 パレット体
50 第一パレット
51 第二パレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水から生活用水を生成する造水装置であって、
原水の流路の一部をなすと共に通過する原水の濾過をなす濾過ユニットと、
前記流路に原水を送り込むための送水ポンプと、
前記濾過ユニットを経て生成された生活用水を蓄える貯水槽と、
送水ポンプに電力を供給する発電手段と、
これらを載せるパレット体とを少なくとも備えており、
前記貯水槽は折り畳み可能な袋状体により構成され、
前記パレット体は第一パレットと第二パレットから構成されていると共に、第一パレット上に貯水槽が搭載され、かつ、第二パレット上に濾過ユニット、送水ポンプ及び発電手段が載置されるようになっており、
しかも、第一パレット又は第二パレットの内部に折り畳まれた貯水槽の収納部が形成してあることを特徴とする簡易造水装置。
【請求項2】
第一パレットの一辺部と第二パレットの一辺部とがヒンジ部を介して接合されており、このヒンジ部を中心に第二パレットの載置面に対し第一パレットの搭載面が略直交する起立位置まで第一パッレットの回動が可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の簡易造水装置。
【請求項3】
起立位置にある第一パレットの姿勢保持手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載の簡易造水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−31211(P2011−31211A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182139(P2009−182139)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(509036791)明豊工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】