説明

米飯の製造方法及びその装置

【課題】極めて短時間で米の浸漬を行い、その上、浸漬時に洗米を同時に行う米飯の製造方法及びその装置を提供することを技術的課題とする。
【解決手段】洗米時間及び浸漬時間も含めて短時間で米飯を製造する方法であって、所定量の米及び水を、上部に開口部を形成した容器に投入する工程と、前記容器内の米及び水を、大気圧よりも高い圧力が維持されたチャンバー内で、マイクロ波の照射により100℃を越える所定の温度まで急速に加熱する加熱工程と、前記加熱工程後に、前記チャンバー内の圧力を徐々に減圧する減圧工程とからなる予備炊飯工程と、予備炊飯工程後に前記容器内の米の仕上げ炊飯を行う仕上げ炊飯工程とを含む米飯の製造方法において、前記予備炊飯工程の減圧工程時に、前記水の一部を前記米に吸収させ、残りは容器外に排出させる、という技術的手段を講じた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬工程及び洗米工程も含め、短時間で炊飯可能な米飯の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、米飯を大量に製造するための業務用の炊飯装置がある。前記炊飯装置には、ガス式、IH式又はスチーム式など様々な加熱手段のものがあり、マイクロ波を用いたものもある。例えば、特許文献1に記載されている加熱式調理装置のように、6kgの米を1つの容器で一度に炊飯できるものがある。しかし、前記調理装置では浸漬時間を考慮すると炊飯が完了するまでに90分以上の時間を必要とする。
【0003】
また、加圧した状態でマイクロ波を照射して米飯を製造することが行われている。例えば、特許文献2には、洗米済みの米粒及び水を容器に充填し、該容器を密封してから、加圧した状態でマイクロ波を照射し、前記米粒及び水を、110〜130℃の温度にて加熱して殺菌処理すると共に炊飯することが記載されている。特許文献2に記載されている米飯の製造方法では、浸漬していない米粒をそのまま容器に密閉して炊飯することも可能と記載されているが、この場合の炊飯時間は記載されておらず不明である。また、米粒を洗米してから容器に密封する必要があり、浸漬工程が省略できても洗米工程までは省略することはできない。
【0004】
業務用の炊飯装置では、大量の米飯を短時間にて製造することが求められており、その上、装置のコンパクト化及び低コスト化のために、炊飯に必要な工程数を少なくすることも望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−10914
【特許文献2】特開平6−133710
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点にかんがみ、極めて短時間で米の浸漬を行って炊飯時間を短縮し、その上、浸漬時に洗米を同時に行うことで、洗米工程を別途設ける必要がない米飯の製造方法及びその装置を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、洗米時間及び浸漬時間も含めて短時間で米飯を製造する方法であって、所定量の米及び水を、上部に開口部を形成した容器に投入する工程と、前記容器内の米及び水を、大気圧よりも高い圧力が維持されたチャンバー内で、マイクロ波の照射により100℃を越える所定の温度まで急速に加熱する加熱工程と、前記加熱工程後に、前記チャンバー内の圧力を徐々に減圧する減圧工程とからなる予備炊飯工程と、予備炊飯工程後に前記容器内の米の仕上げ炊飯を行う仕上げ炊飯工程とを含む米飯の製造方法において、前記予備炊飯工程の減圧工程時に、前記水の一部を前記米に吸収させ、残りは容器外に排出させる、という技術的手段を講じた。
【0008】
また、請求項2の発明は、前記減圧工程において、前記加熱工程の直後に、前記チャンバー内の圧力を減圧して前記容器内の水を沸騰させ、沸騰状態を維持するように徐々にチャンバー内の圧力を大気圧まで減圧させることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、前記予備炊飯工程の加熱工程において、前記容器内の米及び水を、140℃を超える温度まで急速に加熱することを特徴とする。
【0010】
そして、請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の米飯の製造方法によって製造された米飯であり、ご飯性状が、米粒の表面及び中心が硬く、前記表面及び中心の間の中間部が軟らかい外硬内軟芯硬の状態であることを特徴とし、請求項5の発明は、炊飯歩留まりが255以上であることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項6の発明は、洗米及び浸漬の工程も含めて短時間で米飯を製造する米飯製造装置であり、所定量の米を、上方に開口部を設けた容器に充填する米計量充填部と、所定量の浸漬水を、前記容器に充填する水計量充填部と、前記容器内の米及び水に加圧した状態でマイクロ波を照射する加圧部と、前記容器の開口部に蓋を装着する蓋装着部と、蓋を装着された容器の仕上げ炊飯を行う仕上げ炊飯部とから構成され、前記加圧部に、前記容器内から排出された水を排水する手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、予備炊飯工程時に原料である米の浸漬だけではなく、洗米も同時に短時間で行うことができる。すなわち、洗米と浸漬の2つの工程を1つの装置で同時に行うので、洗米に必要な時間を別途設ける必要がなく、米飯を製造する時間を短縮できる。その上、従来必要であった洗米装置及び浸漬装置が不要となるので、米飯の製造装置を安価かつ小型に製造することが可能となる。
【0013】
また、圧力及び温度を制御し、大気圧よりも高い圧力下で、マイクロ波の照射により容器内の米及び水を加熱するので、短時間で効率良く浸漬を行うことができる。なお、過乾燥米(水分13%以下)や胴割れ米は、一般的な方法によって浸漬を行うと、浸漬中に水浸割れが発生して砕米となってしまい、この砕米を炊飯すると割れ飯となりご飯の品質が著しく低下してしまう。しかし、本発明の予備炊飯では、浸漬時の加熱により米の表面付近から溶け出した溶質分が、米表面をコーティングするように硬化するため、この硬化作用により過乾燥米や胴割れ米の浸漬中における水浸割れを防止することができる。
【0014】
さらに、本発明の米飯の製造方法は、炊飯を、予備炊飯と仕上げ炊飯の2段階で行うので、製造後の米飯のご飯性状が、米粒の表面及び中心が硬く、前記表面及び中心の間の中間部が軟らかい外硬内軟芯硬の状態となっている。この状態により、通常の米飯よりも水分が高めの場合でも食味が低下することはなく、むしろ食味が向上する。このため、水分を高めにした米飯を製造できるので、炊飯歩留まり(炊き増え率)を上げることが可能となり、使用する米の量を節約することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の米飯の製造装置に係る概略平面図であり、図2は同製造装置における容器自動供給部、米計量充填部、加圧部の構造を示す概略図であり、図3は前記加圧部に用いる加圧加熱装置の構造を示すための概略断面図であり、図4は、仕上げ炊飯部の構造を示す概略図である。
【0016】
図1及び図2において、符号1は本発明に係る米飯の製造装置であり、符号2は容器自動供給部である。容器自動供給部2は、耐熱性の合成樹脂性容器2cを多数積み重ねた状態で待機させておく容器貯留部2aと、該容器貯留部2a下部から容器2cを1つずつ自動で取り出す容器供給部2bとからなり、連続的に容器2cをコンベア装置3に供給する。
【0017】
コンベア装置3は、一対のスプロケット3a,3b及び補助スプロケット3c,3dにチェーン3eが巻回されており、該チェーン3eに、容器受けパレット3f…が間隙をおいて多数取り付けられている。該容器受けパレット3f…は、1枚のパレットに1個の容器2cが収容可能であり、容器2cはコンベア装置3により順次搬送される。容器受けパレット3fには、容器2cの下部を嵌め込むための孔が形成されており、容器2cは、前記孔に嵌め込まれた状態で容器受けパレット3fに収容される構造となっている。
【0018】
なお、本実施例では、1つの容器2cを収容可能な容器受けパレット3fを用いているが、これに限定されることなく、製造設備の規模により適宜変更すればよい。例えば、個食用の無菌パック米飯を製造するような場合には、横4列、縦1列で4個の容器2cを収容可能な容器受けパレットを用いるようにすればよい。
【0019】
容器自動供給部2の次の工程には、異物吸引装置4が設けられ、容器2c内の塵埃や異物が吸引除去される。さらに、異物吸引装置4の次の工程には、米計量充填部5が設けられ、容器2cに所定量、例えば10kgの米が充填される。米計量充填部5には、高速で計量・排出が可能な公知の組み合わせ計量機を採用すればよい。図2に示すように、原料である米は、中央上部のホッパ5aに投入され、中央の円錐フィーダ5bにより側部に設けられた中間ホッパ5cに供給される。中間ホッパ5cでは所定量の原料を貯留した後、複数の計量ホッパ5dに排出される。そして、目標の重量値となすべく複数の計量ホッパ5dの計量値が組み合わされ、組み合わせに合致した原料が集合シュート5e、排出バルブ5f、ホッパ5gを経て容器2cに供給されることになる。
【0020】
米計量充填部5に供給する原料には、通常、精白米を用いるが、胚芽残存率の高い胚芽米、分搗き米及び玄米等を用いてもよい。また、原料は、容器2cの底部に層厚が厚くならないように一様に投入するとよい。この様にすることで、マイクロ波を用いた加熱による加熱ムラを防ぐことができる。なお、本発明では、原料を事前に洗米する必要がない。また、浸漬しておく必要もない。
【0021】
米計量充填部5の次の工程には、水計量充填部6が設けられ、該水計量充填部6のノズル6aから容器2cに予備炊飯水が充填される。水計量充填部6の次の工程には、加圧部25が設けられている。水計量充填部6で予備炊飯水が充填された容器2cは、押し上げシリンダ12により容器受けパレット3fから押し上げられ、油圧式の押し込みシリンダ10により加圧加熱装置9の下チャンバー35の上に搬送される。
【0022】
前記加圧部25にて、容器2c内の米の浸漬及び洗米を行う予備炊飯工程が行われる。ここで、加圧部25で用いる加圧加熱装置9について図3を用いて説明する。図3は、加圧加熱装置9の概略断面図である。符号30は油圧シリンダであって、該油圧シリンダの昇降動作によりベース板31が支柱32に沿って昇降する。ベース板31の上面には複数の支持体34が立設しており、該支持体34により下チャンバー35が支持されている。符号36はマイクロ波発振装置であって、導波管37により上チャンバー38に接続している。下チャンバー35は、油圧シリンダ30の昇降動作により上方に押し上げられる構造になっており、押し上げられた時に、上チャンバー38に押し付けられる。上チャンバー38には、容器2cを収容できる大きさの窪みが設けられており、該窪みにより、下チャンバー35が押し上げられた時に、密封された空間であるチャンバー40が形成される。
【0023】
チャンバー40には、上方に導波管37が接続されており、マイクロ波発振装置36で発振されたマイクロ波が導波管37を経て照射される。本実施例においては、チャンバー40に対して、8つのマイクロ波発振装置36から6kWの出力のマイクロ波がそれぞれ照射される構造としている。なお、配設するマイクロ波発振装置36の個数は8個に限定されるものではなく、また、マイクロ波発振装置36の出力は6kWに限定されるものではなく、目的とする米飯の製造条件によりそれぞれ適切な個数又は出力に変更すればよい。ところで、隣接するマイクロ波発信装置から照射するマイクロ波の周波数を変えることで、マイクロ波が干渉することを防止することができる。なお、チャンバー40と導波管37との接続部には、遮蔽板が配設されている(図示していない)。この遮蔽板は、当然、マイクロ波は透過するが、空気は漏れないものを用いている。
【0024】
符号39は、照射されたマイクロ波が外部に漏れないようにするために設けられたチョークである。符号42は、チャンバー40内を加圧するための圧縮空気を送風するための送管である。該送管42は別途設けられたエアーコンプレッサ(図示していない)に接続されており、該エアーコンプレッサから圧縮空気が、減圧弁43、圧力計45、電磁弁44及び安全弁60を経てチャンバー40内に送られる。符号41はパッキンであり、下チャンバー35を上チャンバー38に押し付けることで形成されるチャンバー40内から空気が漏れるのを防ぐためのものであって、チャンバー40の気密性を維持するために設けられている。
【0025】
下チャンバー35の上方には、窪み40bが形成されており、この窪み40bを被うように有孔板28が配設されている。容器2cは、押し込みシリンダ10によって下チャンバー35の有孔板28の上に搬送される。窪み40bは、洗米時(予備炊飯工程)の排水をスムーズに行うために設けられたものであり、底面には、排水用の送管46が配設されている。なお、送管46は、チャンバー40内の圧力を降圧する時に用いる送管も兼ねている。該送管46は、ドレントラップ61に接続されている。ドレントラップ61は、予備炊飯工程時に容器2cから排出された水を装置外へ排出するために設けられており、該水は自動ボールバルブ62から自動的に排出される。
【0026】
符号50は、ドレントラップ61と送管63とを接続するための送管であり、送管63は、別途設けられた電磁弁47、スピードコントローラ48及び電磁弁49に接続されており、これら電磁弁47、スピードコントローラ48及び電磁弁49を制御することによりチャンバー40内の圧力を所定の速度で降圧することができる。また、下チャンバー35が油圧シリンダ30の昇降運動により上下方向に動くため、送管63はフレキシブルなものを用いている。
【0027】
本実施例では、加圧加熱装置9を1台だけ用いているが、例えば、コンベア装置3を分岐させるなどして加圧加熱装置9を増設し、単位時間あたりの生産量を増やすことも可能である。
【0028】
加圧部25での予備炊飯工程の次の工程には、水計量補充部11が設けられており、容器2cは、取り出しシリンダ16により加圧部25の加圧加熱装置9から取り出され、コンベア装置18により水計量補充部11に搬送される。なお、コンベア装置18は、コンベア装置3と同様の構造である。前記取り出しシリンダ16は、昇降シリンダ17に取り付けられており、容器2cを加圧加熱装置9から取り出す際、取り出し部20を加圧加熱装置9に伸ばし、取り出し部20が容器2cに引っかかるように、昇降シリンダ17によって高さ方向の位置を下げ、そして取り出し部20を縮めて容器2cを取り出す。
【0029】
水計量補充部11では、水計量補充部11のノズルから容器2cに仕上げ炊飯用の炊飯水が補充される。本発明においては、加圧部25より後の工程を後処理工程としている。水計量補充部11の次の工程には、蓋装着部7が設けられている。蓋装着部7では、容器2cの上方開口部に蓋を被せる。該蓋には、仕上げ炊飯時に容器2c内の蒸気を逃がすための弁が設けられている。
【0030】
蓋をされた容器2cは、順次容器移送装置8に供給される。該容器移送装置8は、複数個のローラに巻回されたコンベアベルトと、エアシリンダにより水平方向に往復動可能な押し込み機構と、該押し込み機構に取り付けられた押し込み部材とから構成され、蓋装着部7から搬送された容器2cを横送りコンベア13に移送する役目をする。なお、図1においては、製造装置1を「コ」の字状に配置するために横送りコンベア13を設けているが、設置面積が大きく、折り返し不要の場合は横送りコンベア13を省略することができる。横送りコンベア13により搬送された容器2cは、押し込み装置29によって、仕上げ炊飯部14に搬入される。
【0031】
次に、図1及び図4を参照して仕上げ炊飯部14について説明する。仕上げ炊飯部14は、トンネル状の本体14aと、該本体14aの両端部に配置された一対のプーリ14b,14cと、該プーリ14b,14cに巻回されたコンベアベルト14dと、該コンベアベルト14dの上方又は下方に配置された多数のマイクロ波照射部14e…と、排熱部14gと、インバータ部14hと、制御部14iとから構成される。仕上げ炊飯用のマイクロ波照射部14e…は、例えば、周波数2.45GHZ〜2.50GHZ,波長12cm程度のマイクロ波を照射し、数分間の照射により、容器2c内の内容物を100℃まで加熱することができる。
【0032】
仕上げ炊飯が終了した容器2cは、仕上げ炊飯装置14の排出口(図示せず)から排出され、該排出口に別途設けられた出荷台15に搬送される。出荷台15に搬送された容器2cは、製品として出荷される。出荷の際、別の容器に容器2c内の米飯を移し替えてから出荷することも可能であるが、そのままの状態で出荷することができ、容器の移し替えの工程を省略することができる。また、容器2cを保温性のあるものにすると良く、仕上げ炊飯工程後の蒸らしを効率良く行うことができる。
【0033】
以下、上記のような米飯の製造装置1を用いて米飯を製造する方法について説明する。図1及び図2に示すように、容器自動供給部2から減菌された容器2cが取り出されて容器受けパレット3f…に供給され、コンベア装置3によって容器2cは順次搬送される。そして、異物吸引装置4により容器2c内の塵埃や異物が吸引除去された後、米計量充填部5に至る。なお、この工程の前後において紫外線による容器2cの殺菌を行ってもよい。
【0034】
米計量充填部5においては、容器2c内にあらかじめ殺菌された所定量の米が順次計量・充填される。前記所定量は、目的により自由に変更することが可能である。本実施例では10kgの米を充填している。次いで、水計量充填部6において、あらかじめ殺菌された予備炊飯水が順次計量・充填される。
【0035】
前記予備炊飯水が充填された容器2cは、加圧部25に送られる。加圧部25では、極めて短時間で、容器2c内に充填された米に前記予備炊飯水を吸水させ、かつ前記米を洗米する予備炊飯工程が行われる。なお、予備炊飯工程は、マイクロ波の照射によって加熱する加熱工程と、加熱工程後の減圧工程の2つの工程からなる。この予備炊飯工程について、図5を用いて説明する。図5は、横軸に時間(秒)、縦軸にチャンバー40内の温度(℃)をとったグラフであり、加圧部25に送られた容器2cを加熱する条件を示している。なお、チャンバー40内の温度と同じ時間軸でマイクロ波のon/off制御の状態及びチャンバー40内の圧力の状態も示している。
【0036】
押し込みシリンダ10により、加圧部25に配設されている加圧加熱装置9の下チャンバー35上に送られてきた容器2cは、下チャンバー35を押し上げることで形成されるチャンバー40内に収容され、チャンバー40が形成された時点で、減圧弁43により調整された圧縮空気を、電磁弁44を開いて送管42によりチャンバー40内に送り、チャンバー40内を加圧する。チャンバー40内の圧力が3.0〜4.0kg/cm、好ましくは3.4〜3.8kg/cm、より好ましくは約3.6kg/cmに加圧された時点で、マイクロ波発振装置36によるマイクロ波の照射を開始する。
【0037】
マイクロ波の照射により、容器2c内の内容物を100℃を超える所定の温度、好ましくは110℃〜130℃、より好ましくは130℃程度まで急激に加熱する。チャンバー40内は加圧されているため、予備炊飯水を100℃を超える温度まで加熱することが可能である。なお、140℃まで前記内容物を加熱することで滅菌を行うことも可能である。ただし、その場合には製造後の米飯の食味が低下するおそれがある。また、容器2c内の温度、特に予備炊飯水の温度を急激に上昇させるので、容器2c内の米粒表面の汚れ、糠等が予備炊飯水に溶出し始めている。
【0038】
チャンバー40内の圧力値と、加熱する予備炊飯水の沸点とには密接な関係があり、前記圧力値が高ければ当然沸点も高くなり、前記圧力値が低ければ沸点も低くなる。沸点が高くなりすぎると食味低下の原因となるおそれがあり、沸点が低いと米の浸漬が短時間では十分に行えないので、これらを考慮して適切な圧力値を決定する必要がある。
【0039】
マイクロ波の照射開始後、容器2c内の予備炊飯水の温度が所定の温度になった時点で、マイクロ波の照射を停止し、チャンバー40内の圧力の減圧を開始する。本発明では、マイクロ波の照射により容器2c内の内容物を急激に加熱する工程を加熱工程としている。なお、前記内容物とは、容器2c内に投入した米及び予備炊飯水を示す。
【0040】
図5のグラフで示しているように、マイクロ波の照射を停止し、それと同時に電磁弁47を開いてチャンバー40内の圧力を減圧し始めても、タイムラグにより数秒間は、チャンバー40内の圧力が低下せず、前記内容物の温度は上昇する。
【0041】
予備炊飯工程における加熱工程後、スピードコントローラ48を制御して一定の割合でチャンバー40内の圧力を減圧させる。減圧開始後、チャンバー40内の沸点が下がるため、容器21c内の予備炊飯水が沸騰する。そして、一定の割合で減圧させる ので、容器2c内の予備炊飯水は沸騰状態を維持したまま、温度を下げていく。本発明ではこの工程を減圧工程としている。
【0042】
減圧工程では予備炊飯水が沸騰しているので、該予備炊飯水の米への吸水が促進される。また、容器2c内に投入する米に、胴割れ米が混入している場合でも、胴割れ米に生じている割れ目付近の澱粉がアルファ化して決着し、この決着が前記割れ目をふさぐように作用するため、炊飯終了後に割れ飯が発生することを防止することができる。
【0043】
さらに、沸騰している予備炊飯水の活発な動きにより容器2c内の米の表面が洗われ、該表面に付着している汚れや糠等が予備炊飯水に溶出する。そして汚れや糠等が溶出した予備炊飯水は、一部は気化し、残りは容器外へ排出される。
【0044】
ここで、前記排出について説明すると、減圧工程では、チャンバー40内は減圧され続けているので、容器2c内は常に負圧となっている。このため、容器2c内の予備炊飯水は吸い出されるように容器外へ排出される。容器外へ排出した予備炊飯水は、有孔板28の複数の孔から送管46、ドレントラップ61及び自動ボールバルブ62を経由して加圧加熱装置9から排出される。ただし、容器2c内の米は、水とは異なり粘性があるため減圧工程において容器外に排出されるようなことはない。
【0045】
チャンバー40内の圧力が大気圧と同レベルまで減圧された時点で減圧工程は終了する。この時点で、水計量充填部6にて充填された予備浸漬水の一部は米に吸水され、残りは気化若しくは容器外に排出されている。このため、加圧加熱装置9から取り出された容器2c内に水が単体で残留していることはない。判りやすく言い換えれば、容器2cを傾けても水がこぼれることはない。本発明において、加圧した状態で予備炊飯工程を行うのは、短時間で原料である米の浸漬を行うことを目的としているためであり、また、減圧させながら沸騰状態を維持させることで洗米の作用効果が得られるからである。
【0046】
減圧工程終了後、取り出しシリンダ16によって加圧加熱装置9から容器2cを取り出し、該容器2cを次工程の水計量補充部11に搬送する。容器2cを加圧加熱装置9から取り出すためには、チャンバー40内の圧力を大気圧と同じレベルまで減圧させる必要があるので、減圧工程が終了する数秒前に電磁弁49を開き、チャンバー40内を確実に大気圧と同レベルまで減圧する。
【0047】
加圧加熱装置9から取り出された容器2c内の米は、この時点で、水分が30%〜50%となっており、好ましくは34%〜40%になっている。また、米粒表面に近いほど水分が高く、中心部は水分が低い状態であるが、予備炊飯工程の減圧時(減圧工程)に米粒表面の水分が蒸発しているため、中心部よりも水分は高いが、表面と中心部の間の中間部よりは水分が低くなっている。そして、アルファ化度は、97%程度であり、表面に近いほどアルファ化している。
【0048】
予備炊飯工程が終了した容器2cは、コンベア装置18により水計量補充部11に送られる。水計量補充部11では、仕上げ炊飯用の炊飯水が順次計量・補充され、次の工程である蓋装着部7に送られる。蓋装着部7に送られた容器2cは、容器2cの上方開口部に蓋が装着される。この蓋の装着を予備炊飯工程後に行うのは、加圧部25においてチャンバー40内の圧力を減圧する際、容器2c内の圧力をスムーズに減圧させるためと、容器2c内の予備炊飯水の蒸発及び排出を効率良く行うためとである。
【0049】
蓋装着後、容器2cは蓋装着部7の搬出口から搬出され、容器移送装置8、横送りコンベア13及び押し込み装置29を経て仕上げ炊飯部14に搬入される。この際、容器2cには蓋がされているので、容器2c内への異物や微生物等の混入を防ぐことができる。
【0050】
仕上げ炊飯部14において、容器2cはコンベアベルト14d上を搬送されながら、マイクロ波照射部14eからマイクロ波の照射が行われ、容器2c内の内容物が100℃の温度まで加熱されて仕上げ炊飯が行われる。マイクロ波照射部14eを通過する容器2cは、約3〜15分間、好ましくは3〜10分間、より好ましくは5分間、約100℃の温度で加熱され、仕上げ炊飯が終了する。予備炊飯工程にて、97%程度まで米がアルファ化しているので、仕上げ炊飯も短時間で行うことができる。本発明では、仕上げ炊飯部14での工程を仕上げ炊飯工程としている。
【0051】
仕上げ炊飯工程では、マイクロ波の照射により容器2c内の圧力が高まり、容器2c内部から外向きの方向に前記圧力がかかる。しかし、蓋には蒸気逃がし弁が設けられているので、容器2c内の圧力は適切に保たれる。このため、容器2cに装着されている蓋が加熱により仕上げ炊飯部14内で外れるようなことはない。
【0052】
また、加圧部25での予備炊飯工程により、米粒の表面の水分が、該米粒の中心部よりも高いが、表面と中心部の間の中間部よりも低い状態になっており、この状態で仕上げ炊飯を行うので、炊飯後のご飯性状が、米粒の表面及び中心部が硬く、表面及び中心部の間の中間部が軟らかい外硬内軟芯硬の状態となる。この状態により、通常の米飯よりも水分が高めの場合でも食味が低下することはなく、むしろ食味が向上する。なお、ここでいう「硬く」とは、前記中間部に比べて硬いのであって、決して炊飯が不十分なわけではない。
【0053】
本発明の米飯の製造方法では、通常の米飯よりも水分高めの米飯を製造しても、この米飯の食味が低下することがないので、米飯の水分を高めにして炊飯歩留まり(炊き増え率)を高くすることができる。一般的なご飯の炊飯歩留まりは224程度であるが、本発明の製造方法では、炊飯後の米飯の水分を調節することで炊飯歩留まりを255以上にすることができる。
【0054】
最終工程である仕上げ炊飯工程後、容器2cは仕上げ炊飯部14の搬出口(図示せず)から出荷台15上に搬出され、出荷される。本発明では、蒸らしは、容器2cが出荷台15に搬出されてから容器2c内で自然に行われる。
【0055】
上述した米飯の製造方法によれば、予備炊飯工程時に加熱工程及び減圧工程の2工程を、同一のチャンバー内にて行い、これら2工程を約60秒(加熱工程30秒+減圧工程30秒)という極めて短時間で行うことが可能となる。なお、前記予備炊飯工程に必要な時間は、自由に変更することができるので、米飯の製造条件に合わせて、30秒〜180秒、好ましくは50秒〜120秒の間で適切に変更すればよく、その際、加熱工程及び減圧工程のそれぞれの時間は、適宜変更すればよい。
【実施例1】
【0056】
予備炊飯工程時の洗米作用を確認するために、上述の米飯の製造方法における予備炊飯工程を行い、試験により洗米歩留まりを求めた。前記試験では、原料に一般的な白米(2006年度産の新潟コシヒカリ:重量65.01g、水分14.87%(絶乾法:105℃、5時間で測定))を使用し、予備炊飯水には25℃の水(81.25g)を使用し、チャンバー40内の圧力は3.6kg/cmとした。
【0057】
予備炊飯工程後、前記白米の重量は83.77g、水分は34.84%(絶乾法:130℃2時間+105℃24時間で測定)であった。この結果、下記の数式1により、
【0058】
【数1】

【0059】
洗米歩留まりは98.63%と計算された。なお、予備炊飯工程の2つの工程である加熱工程及び減圧工程の時間により洗米度合いを調節することができ、該時間を長くすると洗米度合いは強くなり、短くすると弱くなる。

【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明における米飯の製造装置に係る概略平面図である。
【図2】同製造装置における容器自動供給部、米計量充填部、水計量充填部及び加圧部の構造を示す概略図である。
【図3】加圧加熱装置の概略断面図である。
【図4】仕上げ炊飯部の構造を示す概略図である。
【図5】予備炊飯工程を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
【0061】
1 米飯の製造装置
2 容器自動供給部
3 コンベア装置
4 異物吸引装置
5 米計量充填部
6 水計量充填部
7 蓋装着部
8 容器移送装置
9 加圧加熱装置
10 押し込みシリンダ
11 水計量補充部
12 押し上げシリンダ
13 横送りコンベア
14 仕上げ炊飯部
15 出荷台
16 取り出しシリンダ
17 昇降シリンダ
18 コンベア装置
19 押圧部
20 取り出し部
25 加圧部
28 有孔板
29 押し込み装置
30 油圧シリンダ
31 ベース板
32 支柱
33 昇降ガイド
34 支持体
35 下チャンバー
36 マイクロ波発振装置
37 導波管
38 上チャンバー
39 チョーク
40 チャンバー
41 パッキン
42 送管
43 減圧弁
44 電磁弁
45 圧力計
46 送管
47 電磁弁
48 スピードコントローラ
49 電磁弁
50 送管
60 安全弁
61 ドレントラップ
62 自動ボールバルブ
63 送管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗米時間及び浸漬時間を含めて短時間で米飯を製造する方法であって、
所定量の米及び水を、上部に開口部を形成した容器に投入する工程と、
前記容器内の米及び水を、大気圧よりも高い圧力が維持されたチャンバー内で、マイクロ波の照射により100℃を越える所定の温度まで急速に加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後に、前記チャンバー内の圧力を減圧する減圧工程とからなる予備炊飯工程と、
予備炊飯工程後に前記容器内の米の仕上げ炊飯を行う仕上げ炊飯工程と、
を含む米飯の製造方法において、
前記予備炊飯工程が終了した時点で、前記水の一部は前記米に吸収され、残りは容器外に排出され、容器内に水が残留しないことを特徴とする米飯の製造方法。
【請求項2】
前記減圧工程において、前記加熱工程の直後に、前記チャンバー内の圧力を減圧して前記容器内の水を沸騰させ、沸騰状態を維持するように徐々にチャンバー内の圧力を大気圧まで減圧させることを特徴とする請求項1に記載の米飯の製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程において、前記容器内の米及び水を、140℃を超える温度まで急速に加熱することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の米飯の製造方法。
【請求項4】
ご飯性状が、米粒の表面及び中心が硬く、前記表面及び中心の間の中間部が軟らかい外硬内軟芯硬の状態であることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のいずれかの製造方法により製造された米飯。
【請求項5】
炊飯歩留まりが255以上であることを特徴とする請求項4に記載の米飯。
【請求項6】
所定量の米を、上方に開口部を設けた容器に充填する米計量充填部と、
所定量の浸漬水を、前記容器に充填する水計量充填部と、
前記容器内の米及び水に加圧した状態でマイクロ波を照射する加圧部と、
前記容器の開口部に蓋を装着する蓋装着部と、
蓋を装着された容器の仕上げ炊飯を行う仕上げ炊飯部とを含む米飯の製造装置において、
前記加圧部に、前記容器内から排出された水を排水する手段を設けたことを特徴とする米飯の製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−220327(P2008−220327A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66853(P2007−66853)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】