説明

米飯用炊き込み調味料

【課題】炊飯時に芯飯が発生せず、且つトマト風味を有する米飯用炊き込み調味料を提供する。
【解決手段】トマト原料を酵素で処理した酵素処理トマトを含有することを特徴とする米飯用炊き込み調味料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯時の芯飯の発生を抑制する米飯用炊き込み調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生米と調味料と具材とを炊飯してつくる炊き込み御飯では、炊き上がった御飯の一部が硬い状態の芯飯となる場合がある。炊き込み御飯のなかでもトマトペーストやトマトケチャップなどのトマト原料を含むトマト風味を有する炊き込み御飯、例えばチキンピラフ、トマトライス、チキンライスなどは好まれてつくられるが、芯飯となることが特に多くある。
芯飯のない炊き込み御飯を得る米飯用炊き上げ調味料及び炊飯方法として、クエン酸Naを含有することを特徴とする米飯用炊き上げ調味料(特許文献1)が開示されている。
しかし、トマト原料を使用する炊き込み御飯において芯飯の発生を抑制できる方法はなく、芯飯の発生を抑制する米飯用炊き込み調味料が強く望まれていた。
【0003】
【特許文献1】特開平06−030715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、炊飯時に芯飯が発生せず、且つトマト風味を有する米飯用炊き込み調味料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、酵素で処理したトマトを使用することにより炊飯時の芯飯発生が飛躍的に改善すること見出した。本発明者らは、これらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、トマト原料を酵素で処理した酵素処理トマトを含有することを特徴とする米飯用炊き込み調味料、からなっている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の米飯用炊き込み調味料は、炊飯前に添加して炊飯することにより、芯飯がなく食感が良好でトマト風味を有する炊き込み御飯を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の米飯用炊き込み調味料は、トマト原料を酵素で処理した酵素処理トマトを配合することにより得られる。また得られた米飯用炊き込み調味料を使用することにより芯飯のないトマト風味を有する炊き込み御飯が得られる。
【0008】
本発明でいうトマト原料とは、日本農林規格に規定されているトマト加工品であるトマトジュース、トマトミックスジュース、トマトピューレ、トマトペースト、トマトケチャップ、トマトソース、チリソース及び固形トマトのことをいう。さらに、日本農林規格に規定されているトマト加工品以外のトマトを起源とするものでもよく、例えばトマトを搾汁した後に残るトマトパルプや生のトマトなどが挙げられる。これらのトマト原料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。トマト原料として好ましくは、濃縮トマト(トマトピューレ、トマトペーストなど)が挙げられる。
濃縮トマトとは、トマトを破砕して搾汁し、又は裏ごしし、皮、種子を除去した後濃縮したものであり、無塩可溶性固形分が8%以上のものをいう。トマトピューレは前記濃縮トマトのうち無塩可溶性固形分が8%以上24%未満のものであり、トマトペーストは無塩可溶性固形分が24%以上のものをいう。トマトケチャップとは、濃縮トマトに食塩、香辛料、食酢、砂糖類及びたまねぎ又はにんにくを加えて調味したもので可溶性固形分が25%以上のものをいう。
【0009】
本発明でいう酵素とは、トマト原料に含まれる高粘性物質や繊維質等を分解する能力を有すればよく、具体的にはペクチナーゼ、セルラーゼが挙げられる。ペクチナーゼをトマト原料に添加すると、トマト原料の特性であるパルプ質を保持したまま、パルプとパルプの間にある粘度の高い液体(ペクチン等を含む)を分解してその粘度を低下させることができる。また、セルラーゼをトマト原料に添加すると、トマトの繊維質であるセルロースを微細化して粘度を低下させることができる。尚、ペクチナーゼとセルラーゼは併用することもできる。市販品では、セルロシンAC40(エイチビィアイ社製)、ペクチナーゼG「アマノ」(天野エンザイム社製)、セルラーゼXL−531(ナガセケムテックス社製)などが挙げられる。
【0010】
本発明でいう酵素処理トマトとは、上記トマト原料と酵素とを公知の方法で反応させることにより得られる。例えば、トマト原料に酵素を加え均一に混合し、酵素活性に適した温度に保持し反応をさせればよい。
【0011】
酵素をトマト原料に添加する方法は特に限定されず、酵素をトマト原料に均一に混合すればよい。酵素を直接トマト原料に添加しても良く、また予め水に溶解させて酵素水溶液としこれをトマト原料に添加することもできる。トマト原料を酵素と反応させる際、トマト原料が粘稠である場合には水を加えて流動性を調整するのが好ましく、例えばトマト原料がトマトペーストの場合、トマトペースト100質量部に対して水を約50〜200質量部、好ましくは約70〜150質量部加えることが好ましい。
【0012】
トマト原料への酵素添加量は特に限定されないが、酵素反応に適した濃度範囲を選ぶのが好ましく、例示すると、酵素の力価によって異なるがトマト原料100質量部に対し約0.001〜10質量部、より好ましくは約0.05〜2質量部となるように添加する。酵素添加量が約0.001質量部より少ないと、酵素反応が不完全となり芯飯抑制効果が弱くなり好ましくない。一方、酵素添加量が約10質量部を超えると、味の点で劣るので好ましくない。
【0013】
トマト原料と酵素の処理温度は、酵素の活性に適した温度であれば良く、例えば約20〜70℃、より好ましくは約40〜60℃にすれば良い。約20℃より低いと酵素活性が低く反応が進みにくく、約70℃より高いと酵素活性が阻害され好ましくない。また処理の際のpHは酵素活性に適したpHであればよく、例えば約2〜7、より好ましくは約4〜6がよい。pH2以下、もしくは7以上であると活性が低く反応が進みにくい。
【0014】
トマト原料と酵素の処理時間は、保持温度、pH、酵素添加量によって異なるが、約30分〜16時間、より好ましくは1〜8時間が良い。30分より短いと酵素反応が充分でないため芯飯抑制効果が充分でなく、16時間より長いとトマト原料の風味の面で好ましくない。
【0015】
酵素処理トマトの製造方法は、公知の混合機器を用いて原料トマトと酵素を混合して反応させれば良く、例えば、保温機能と撹拌プロペラ付きのタンクに原料トマトと酵素と所望により水を加え、約50℃で約1時間保持して酵素反応を行った後、反応液を約80℃に加温して酵素を失活することにより得られる。酵素との反応は、撹拌をしてもよくまた撹拌をせず静置してもよいが、攪拌を行った方が反応が速く進み好ましい。
【0016】
本発明の米飯用炊き込み調味料は酵素処理トマト以外に従来公知の調味素材を使用することができ、例えば、食塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、核酸系調味料、畜肉エキス、魚介エキス、酵母エキス、蛋白加水分解物、野菜エキス、食用油脂、乳製品(バター)、酒類(ワイン、清酒など)、味醂、ビネガー、醤油、香味野菜、香辛料、澱粉、増粘多糖類、香料、酸味料などが挙げられる。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、酵素処理トマト以外のトマト原料、例えばトマトジュース、トマトミックスジュース、トマトピューレ、トマトペースト、トマトケチャップ、トマトソース、固形トマトなどを併用することができる。上記調味素材と共に具材として、畜肉類、魚介類、野菜類、キノコ類などを加えることもできる。
【0017】
米飯用炊き込み調味料は、上記した調味素材や具材を混合してもよく、所望により加熱してもよい。調味素材の混合は従来の混合装置を用いればよく、例えば、ホットニーダー、煮炊攪拌機、攪拌機付き縦型タンクなどが挙げられる。
【0018】
上記のように得られた炊き込み用米飯調味組成物はそのまま用いることもできるが、包装体に包装して冷凍保管や冷蔵保管しても良く、レトルト殺菌などの加熱殺菌をしても良く、或いは調味料を常温で保管できるように水分活性やpHなど調整してもよい。
【0019】
本発明の米飯用炊き込み調味料は、水洗いした米などの穀類と水と具材などを炊飯器などで炊き上げることによりトマトライス、チキンライス、チキンピラフなどのトマト風味の炊き込み御飯を得ることができる。
使用する穀類としては特に制限はなく、白米、7分つき米、半つき米、玄米、もち米等の米類を用いることができ、また、麦や大麦・きび・粟・稗・黒米粟などの雑穀類を用いることもできるが、白米を用いることが風味の面で好ましい。
炊飯方法は特に制限はなく、従来の炊飯方法と炊飯器具が用いることができる。
【0020】
本発明の米飯用炊き込み調味料は、炊き込み御飯に目的とするトマト風味を呈する範囲内の量を洗米に加えて炊き上げればよい。例えば、トマト原料がトマトペースト(無塩可溶性固形分:29%)である酵素処理トマトを用いる場合、酵素処理トマトに含まれるトマトペーストの量は、生米100質量部に対して約2.5〜10質量部であり、好ましくは約3〜6質量部になる様にすればよい。酵素処理トマトに含まれるトマトペースト量が約2.5質量部より少ないとトマトの風味が少なく好ましくない。酵素処理トマトに含まれるトマトペースト量が約10質量部より多いと炊飯時に焦げが生じることがあり好ましくない。
【0021】
以下に本発明を実施例で説明するが、これは本発明を単に説明するだけのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0022】
[酵素処理トマトの作製]
トマト原料(商品名:トマトペースト トルコ産 CB;カゴメ社製 無塩可溶性固形分29%;1000g)と水(1000g)を3Lのステンレス製ジョッキに入れスパチュラでよく撹拌した後に酵素(商品名:セルロシンAC40;エイチビィアイ社製、セルラーゼ酵素、ペクチナーゼ含有酵素製剤 セルラーゼ活性4000U/g;10g)を加え均一になるまで撹拌した後、50℃まで加熱した。プロペラ型汎用型撹拌翼(型式:プロペラR;新東科学社製)を付けた自動攪拌機(型式:トルネードSM−103;アズワン社製)を用いて120rpmで撹拌しながら、50℃・湿度50%の恒温器中で1時間保持した。その後80℃まで加熱して酵素を失活し、常温まで冷却したのち水で質量補正して2000gの酵素処理トマトを得た。
【0023】
<米飯用炊き込み調味料の作製1>
[実施例1]
酵素処理トマトの作製で得た酵素処理トマトをそのまま用いたものを米飯用炊き込み調味料(実施例品1)とした。
[比較例1]
酵素処理トマトの作製において、酵素を加えない以外は同様に処理したものを作製し、これを米飯用炊き込み調味料(比較例品1)とした。
【0024】
<炊き込み御飯の作製1>
[試験例1]
電気炊飯器の釜に、生米(2400g)を入れ洗米した後、水(米へ付着した水を含め3120g:生米質量対比1.3倍量)を加えた。30分間浸漬した後、実施例品1(120g)を加えよく混合し、電気炊飯器(型式:ナショナル電子ジャー炊飯器SR−UH36;松下電器産業社製)を用いて炊飯した。炊飯後、お釜から取り出した炊き込み御飯の中心部分を約50グラム採取し25℃まで放冷して炊き込み御飯(試験例品1)を得た。
[試験例2]
試験例1の実施例品1(120g)を240gに替えた以外は試験例1と同様に炊飯を行って炊き込み御飯(試験例品2)を得た。
[試験例3]試験例1の実施例品1(120g)を480gに替えた以外は試験例1と同様に炊飯を行って炊き込み御飯(試験例品3)を得た。
[試験例4]
試験例1の実施例品1(120g)を比較例品1(120g)に替えた以外は試験例1と同様に炊飯を行って炊き込み御飯(試験例品4)を得た。
[試験例5]
試験例1の実施例品1(120g)を比較例品1(240g)に替えた以外は実施例1と同様に炊飯を行って炊き込み御飯(試験例品5)を得た。
[試験例6]
試験例1の実施例品1(120g)を比較例品1(480g)に替えた以外は実施例1と同様に炊飯を行って炊き込み御飯(試験例品6)を得た。
各炊き込み御飯に使用した米飯用炊き込み調味料の種類、生米100質量部に対する米飯用炊き込み調味料に含まれるトマトペーストの量をまとめたものを表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
<炊き込み御飯の評価方法と評価1>
[食感と風味の評価と評価基準]
得られた炊き込み御飯(試験例品1〜6)を用いて食感(芯飯の出来具合)と風味の評価を、下記表2に示す評価基準に従い10名のパネラーで評価した。結果は10名の評点の平均値として求め、以下の基準に従って記号化した。結果を表3に示す。
○:良好 平均値2.5以上
△:やや悪い 平均値1.5以上2.4未満
×:悪い 平均値1.5未満
【0027】
【表2】

【0028】
[破断強度の測定]
得られた炊き込み御飯(試験例品1〜6)を、レオメーター(型式:レオナーII;山電社製)を用いて破断強度を測定した。その際使用した機器と測定条件は下記のとおりである。
ブランジャーNo11(ワイヤータイプ)
プランジャーガイドNo102
測定条件:ロードセル:20N、測定速度:0.1mm/sec
炊き込み御飯3粒をプランジャーガイドNo102の中心と中心から約2cm離れた両わきに設置し、破断強度を10回測定し、最大荷重(N)の平均値を求めた。測定の平均値を表3に示す。
【0029】
【表3】

結果より、トマト原料を酵素で処理した酵素処理トマトである実施例品1を使用した炊き込み御飯(試験例品1〜3)の食感、風味はともに良好であり、破断強度は0.007Nより小さい数値を示した。トマト原料を酵素で処理をしていないトマト原料である比較例品1を使用した炊き込み御飯(試験例品4〜6)の風味は良好であるが食感が悪い又はやや悪い評価であり、破断強度は0.007Nより大きな数値を示した。
【0030】
<米飯用炊き込み調味料の作製2>
[実施例2]
鍋に大豆油(40g;日清オイリオグループ社製)を入れ80℃まで熱した後、約2cm角にカットした鶏肉(136g)、約2cm角にカットした玉ねぎ(56g)、約0.5cmにカットした人参(68g)を入れて炒め、鶏肉に火が通った後に、酵素処理トマト(実施例品1:192g)、ポークエキス(28g、商品名:ポークエキスG;理研ビタミン社製)、砂糖(64g)、食塩(44g)、水(104g)、ホール状のスイートコーン(68g)を加え85℃まで加熱した。約40℃まで冷却し水で800gに質量補正した後、レトルトパウチに充填しレトルト処理(120℃、35分間殺菌)して米飯用炊き込み調味料(実施例品2)を800g作製した。
[比較例2]
実施例2の酵素処理トマト(実施例品1:192g)をトマトペースト(96g)と水(96g)に替えた以外は実施例2と同様に米飯用炊き込み調味料(比較例品2)を800g作製した。
【0031】
<炊き込み御飯の作成2>
[試験例7]
電気炊飯器の釜に、生米(2400g)を入れ洗米した後、水(米へ付着した水を含め3120g:生米質量対比1.3倍量)を加えた。30分間浸漬した後、米飯用炊き込み調味料(実施例品2:800g)を加えよく混合し、電気炊飯器(型式:ナショナル電子ジャー炊飯器SR−UH36;松下電器産業社製)を用いて炊飯した。炊飯後、お釜から取り出した炊き込み御飯の中心部分を約50グラム採取し25℃まで放冷して炊き込み御飯(試験例品7)を得た。
【0032】
[試験例8]
試験例7の米飯用炊き込み調味料(実施例品2:800g)を米飯用炊き込み調味料(比較例品2:800g)に替えた以外は試験例7と同様に炊き込み御飯(試験例品8)を作製した。
各炊き込み御飯に使用した米飯用炊き込み調味料の種類、生米100質量部に対する米飯用炊き込み調味料に含まれるトマトペーストの量をまとめたものを表4に示す。
【0033】
【表4】

【0034】
<炊き込み御飯の評価方法と評価2>
炊き込み御飯の評価方法と評価1と同じ方法、評価基準で炊き込み御飯(試験例品7、8)の食感と風味、破断強度を評価し、その結果を表5に示す。
【0035】
【表5】

結果より、トマト原料を酵素で処理をした酵素処理トマトを配合した米飯用炊き込み調味料(実施例品2)を使用した炊き込み御飯(試験例品7)の食感、風味はともに良好であり、破断強度は0.007Nより小さい数値を示した。トマト原料を酵素で処理をした酵素処理トマトを配合していない米飯用炊き込み調味料(比較例品2)を使用した炊き込み御飯(試験例品8)の風味は良好であるが食感が悪く、破断強度は0.007Nより大きな数値を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トマト原料を酵素で処理した酵素処理トマトを含有することを特徴とする米飯用炊き込み調味料。