説明

米100%で作る米麺の麺生地の製造方法とこれに必用な専用機の練り棒

【課題】本発明の米100%の米麺は、小麦アレルギーや蕎麦アレルギー等穀類のアレルギーで悩む人々に、従来のうどん、そば、ラーメン等と同様の食味と食感で日常的に食する食品として、安心して食してもらえる麺類を提供すること。
【解決手段】米以外の穀類及び添加物を一切使わず、粳米と餅米の超微粉末を精製し、粳米と餅米の特徴を活かして小麦グルテン同様の粘りを引き出し、米100%の米麺を製造することが出来た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦や雑穀等の穀類は一切使わず純粋に米100%で作る米麺の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、麺類は小麦粉や蕎麦粉を主原料として単体又は複合体で製造されているが、近年米の需要が伸び悩む中で、米をうどん等の麺類に加工して米の需要を促すための方策が模索されるようになり、様々な方法で米を主原料とする麺類が多く提案されている。しかしながらこれらの麺類は米単独では麺類に加工することは不可能とされ、米と小麦粉を混ぜ合わせ、さらに添加物を混入して食感を補う方法が開示されている(特許文献1参照。)。また米を炊いて練りつぶし、これに小麦粉を加え水で粘度を調整して熟成し、米入り麺生地を造る方法が開示されている(特許文献2参照。)。さらに米も含めた雑穀を特殊粉砕機を使用して微粉末にすることで、小麦粉との親和性をはかり食感の改善を図ろうとする方法等も開示されているが(特許文献3参照。)。いずれの方法も小麦粉を使用することで一定の商品価値を生み出そうとしていることに変わりはない。
【0003】
さらにまた、アミラーゼを溶かした水に生米を浸漬し、冷凍処理して乾燥しこれを粉砕機で200メッシュ以上の微粉末にし、パンや麺類の加工用に提供しようとする方法も開示されているが、この方法においても小麦粉を使うことを良しとしており、また、小麦粉に近い微粉末を製成するには時間と労力が掛かり過ぎる欠点がある(特許文献4参照。)。
【0004】
しかるに、前記技術では本発明が目指す、小麦アレルギー、蕎麦アレルギーで悩む人々が安心して食べられる麺類を提供することができない。
【0005】
【特許文献1】特開平9−135669号公報
【特許文献2】特開平5−308917号公報
【特許文献3】特開2005−21112号公報
【特許文献4】特開平11−32706号公報
【特許文献5】特開2004−208560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように米粉を原料とした麺類は多少を問わず小麦粉を混入しなければ食味と食感を補うことができない欠点がある。
【0007】
本発明ではこの欠点を解消して、小麦アレルギーや蕎麦アレルギーで悩む多くの人々のために、米以外に、アレル源を持つ穀物は一切使わず、純粋に米100%で製造した米麺を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこの目的を達成するために米粉と小麦粉の違いを検証した結果、米と小麦は基本的に細胞の組成が異なるため、米粉はいくら細かく粉砕しても、小麦粉のような澱粉質でまろやかな微粒子を得ることが出来ないことが判明した。
【0009】
しかも、粳米粉には小麦粉のようなグルテンによる強力な粘りで麺生地のつながりを強める働きがないため、いくら超微粒の米粉を獲得したとしても、粳米粉単独では水や湯で撹拌混練したくらいではとうてい麺類の麺生地には適さないことも解った。
【0010】
そこで、本発明の目的を達成するために、第一の課題解決手段による作用は、小麦グルテンの代わりに重量比で粳米粉70%餅米粉を30%の割合で配合し、その中へ重量比で3%のぬるま湯をそそいで、撹拌しながら加湿、熟成、乾燥の手順を経て最終的に米粉の含水量を2%以下になるまで乾燥すると、米粉の細胞膜には無数のひび割れができる、そこへ熱湯をそそぐことで一気に水分を吸収した細胞はバラバラに崩壊し細胞内の澱粉が一気に放出される、放出された澱粉は熱湯によってα化し初期段階の麺生地が生成される。
【0011】
次に、第2の課題解決手段による作用は、この初期段階の麺生地を増粘機の臼に移し、しかも臼を回転させながら麺生地を搗き混ぜて練ることで、餅米と粳米が完全に混練され、互いの欠点を補完し合った米麺の麺生地を生成する。
【0012】
即ち、餅米の強力な粘りを粳米のぱさつきで補い、粳米のぱさつきを餅米の粘りで補うことで、餅のようなしつこい粘りのないしかも可塑性のある、極めてまろやかで調和のとれた、俗にいう腰の強い米麺の麺生地を製造することができる。
【0013】
上記、第2の課題解決手段による作用は、増粘機の臼の回転にともない麺生地も一緒に回転するので、これを練り棒の押し圧運動により、あたかも職人が手打ち麺の麺生地を練るような状態を醸し出すことができる。このような状態で練り上げた米100%の米麺の麺生地は、生麺で茹で上げても乾麺にして茹で上げても、上質な食味と食感のある米麺を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上述べてきたように本発明の米100%の米麺は、製造工程を極力省略し、しかも人肌の感覚で練ることで成し得た米麺は、従来のうどん、そば、ラーメン等と同様の食味と食感で日常的に食する食品として完成したもので、小麦アレルギーや蕎麦アレルギーに悩む人々にも安心して食してもらえる米麺が提供できる。
【0015】
また一般の健常者にも新しい食材として歓迎されており、小麦粉に代えて米を使用することで、米の消費拡大にも貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0017】
既に述べてきたように、米と小麦の違いはいうまでもなく両者の持つ特有のタンパク質と細胞の組成の違いに由来するもので、米の栄養素は繊維質の多い厚い細胞膜に覆われていると記されている(平凡社世界大百科事典)ことから推測すれば、米を機械的に粉砕して微粉末を得ることが、いかに困難であるかが理解できる。
【0018】
小麦の製粉に関しては米の組成の逆を推測すれば当業者としてはこの際は十分である。
【0019】
しかるに、米粉を小麦粉に近い微粉末に粉砕するには、高額で特殊な製粉機が必用となり多額の投資が求められるため、中小企業にはとうてい手の届かない分野として敬遠され、機械的な発想で進める汎用の製粉技術はまだ開発されていない。
【0020】
本発明では、前記、米の組成を理解した上で、超微粉末を得るための手段として、普通に製粉された米粉を極限まで乾燥し、一気に加湿することで機械力に頼らず、自然力を利用して米の細胞膜を自ら崩壊させることで目的を達成した。
【0021】
請求項1記載の本発明では、粳米も餅米も普通の製粉機で普通に粉砕した米粉で粉粒は特に制限しないが細かいほど好ましい、これを重量比で粳米粉70%餅米粉30%の割合で混合し、これに対して重量比で3%のぬるま湯を加えて攪拌機で撹拌し、米粉が均等に吸湿し膨潤するまで攪拌機の投入口を塞いで35℃を保って撹拌しながら約30分熟成する。
【0022】
米粉が均等に吸湿し膨潤したことを確認し、次に米粉の温度を70℃〜80℃に保つよう攪拌機を加温して、前工程で吸湿し膨潤した米粉を撹拌しながら60分で急速に乾燥し、さらに90℃に温度を上げて10分間最後の仕上げ乾燥を行うのである。
【0023】
そして、この最後の仕上げ乾燥によって米粉の水分を2%以下にまで乾燥することで、繊維質の多い厚い細胞膜には無数のひび割れが発生する、これに熱湯をそそきながら90℃から100℃の温度を保って撹拌を続けると、米粉は吸湿して細胞膜はバラバラに崩壊し細胞膜に包まれていた、澱粉が放出され熱湯でα化した米粉は半練り状になって米麺の初期の麺生地3が生成され、次の増粘工程に移行する。
【0024】
本発明の請求項2記載の動作においては、前記、請求項1記載の手順を経て最後の仕上げ乾燥に至った後、これに冷水を噴霧しながら撹拌して温度を下げていくと、米粉は吸湿して細胞膜はバラバラに崩壊し、澱粉は放出されるが低温のためα化することもなく、米粉特有のざらつきもなくなり、小麦粉以上の超微粉末を乾燥状態で精製することができ、これをサイロに保管するか、又は袋詰めにして保管することも他用途に転用することもできる。
【0025】
本発明の請求項3記載の増粘機の動作工程において、上下に餅つき運動をする円形の練り棒2は先端部の押し圧面に円周部より中心部に向けて緩やかな窪み6が形成されていて、混練する麺生地を包み込むような形状になっている、しかもこの先端部には臼1の回転に抵抗して麺生地3を揉み圧するように数条から10条のウエーブ7が設けてあることを特徴としている。
【0026】
前工程の攪拌機から移された米麺の麺生地3を受け入れた臼1は、無段変速で回転し、麺生地3の練り始めと仕上げ段階の回転を温度の低下と粘りの増幅に合わせて、慣用技術の自動装置で回転を落とし粘度を感知して増粘工程を終える。
【0027】
増粘動作において、臼1の回転にともなって麺生地3も回転を始める、この臼1と共に回転する麺生地3を練り棒2が押し圧する、このとき押し圧された麺生地3は臼1と練り棒2の間のわずかな隙間で捻れるように引き延ばされる状態となる、この引き延ばしこそが麺の腰を強める要となる動作で、いわゆる職人が手打ちうどんの麺生地を練る手のひらの押し圧の動作に近い効果が得られる、これは研究の末開発したもので、その動作は、練り棒2の先端部に設けられた緩やかな窪み6とウエーブ7の形状にありこの形状が絶妙なコンビネーションで職人技の増粘効果を発揮するので本発明において、麺生地の製造には欠くことのできない練り棒2の特徴的形状である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
上述してきたように本発明では、従来の製法による米麺の欠点を細かく分析し、欠点の原因である米粉の粒度と澱粉の問題を解消したことで、巨額の初期投資を必用とせず、既存の設備を改造し、または慣用技術の臼と杵を進化させた発明で、極めて低コストで製粉から麺生地の生産、圧延、条切、乾燥、流通のプロセスを通して、従来からの小麦麺類と同等に位置付けても全く遜色のない米100%の米麺の生産に目処がついた。
【0029】
本発明の米麺を小麦麺と同じ条件で乾麺にして6ヶ月保存し10日を目処に6ヶ月間定期的に、小麦麺と同一の条件で試食したところ全く遜色のない食味と食感を確認できた。
【0030】
今日、米麺を最も嘱望されている消費者は小麦アレルギー、蕎麦アレルギーで悩んでいる人々で日本全国に約50万人〜80万人いるといわれているこの人々を対象に、本発明の米麺を提供することを目的としているが、一般の健常者にも市場を広げて行けば、低迷する米の需要を促す効果が期待できる、尚、原料となる米は新米、古米、古々米のいずれを使用しても製品となった米麺は、食味も、食感も全く変わらないことが確認できたことは本発明の成果である。
【0031】
さらに本発明の成果である製粉技術は、小麦粉に遜色のない超微粒の米粉を大量に生産し、市場に流通させるもくろみを実現させるには、請求項2記載のシステムをトンネル釜のカテゴリーに採用すれば、巨額な設備投資を要せずして、設備を設置、稼働させることができ、経済効果の大きい新しい産業としての活路が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態を示す攪拌機の斜視図
【図2】本発明の実施の形態を示す練り棒の一部切開断面図
【図3】本発明の実施の形態を示す臼と練り棒と麺生地の断面図
【符号の説明】
【0033】
1 臼
2 練り棒
3 麺生地
4 支軸
5 攪拌機
6 窪み
7 ウエーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
普通に製粉した、粳米粉70%餅米粉30%を攪拌機に投入し重量比で3%のぬるま湯を加えて加湿し、米粉の温度を35℃に保つよう投入口を塞いで約30分撹拌熟成する、次に米粉の温度を70℃〜80℃に保つよう撹拌機を加温して60分撹拌乾燥し、さらに攪拌機を加温して米粉の温度を90℃まで上げて10分間撹拌乾燥した後、熱湯をそそぎながら撹拌し米澱粉のα化を成し、増粘工程に移行して増粘機で練り上げて成る、米粉100%で添加物も一切使わないことを特徴とする米麺の麺生地の製造方法。
【請求項2】
普通に製粉した、粳米粉70%餅米粉30%を攪拌機に投入し重量比で3%のぬるま湯を加えて加湿し、米粉の温度を35℃に保つよう投入口を塞いで約30分撹拌熟成する、次に米粉の温度を70℃〜80℃に保つよう撹拌機を加温して60分撹拌乾燥し、さらに攪拌機を加温して米粉の温度を90℃まで上げて10分間撹拌乾燥した後、撹拌を続けながら冷水を噴霧して加湿して成る請求項1記載の超微粒米粉の製造方法。
【請求項3】
円形の練り棒で先端の押し圧面に米麺の麺生地を包み込むように円周部より中心部に向けて緩やかな窪みを形成し、さらにこの面に数条から10条のウエーブを設けたことを特徴とする請求項1記載の増粘機の練り棒。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−135574(P2007−135574A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367108(P2005−367108)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(305043836)
【出願人】(305043744)
【Fターム(参考)】