説明

米100%パスタの製造方法

【課題】小麦粉などの他のデンプン質を一切使用せずに米100%パスタを製造する。
【解決手段】所定量Xの米粉を糊状にしてつなぎとして使用し、これを所定量Y(Xの3.2〜4.4倍)の米粉を加えて製麺する。米粉の合計使用量(X+Y)の28〜33%以上の水を所定量Xの米粉に対して加えて撹拌した後、必要に応じて余剰水を捨てて米粉の合計使用量(X+Y)の28〜33%の水を含む状態の米粉とし、この含水状態の米粉を蒸した後に撹拌することにより米粉を乳化もしくは糊化して米粉糊とし、この米粉糊と所定量Yの米粉とを混ぜて撹拌することにより糸状に連続した米麺生地とし、この米麺生地をパスタマシーンで所望形状に製麺する。さらに、このようにして製麺された半生状態の米100%パスタをオーブンで焼くことにより、常温での長期保存性を高めた即席パスタ食品とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は米以外のデンプン質を使用せずに米100%のパスタ様食品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食生活の多様化・欧米化などにより日本古来の伝統的食料である米の消費量が近年減少傾向にあり、これを打開するために、米粉を原料としてパスタ用食品を製造する方法が従来より各種提案されている。
【0003】
たとえば、下記特許文献1、2では、米粉に馬鈴薯デンプンや小麦粉などの他のデンプン質を混合したものを用いて生麺を製造している。
【特許文献1】特開昭54−55745号公報
【特許文献2】特開昭54−70450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら従来技術では、米粉を主原料としつつも馬鈴薯や小麦粉などの他のデンプン質を混合することが必須とされており、米100%パスタを製造するものではない。このため、米粉の使用量が相対的に少なく、米の需要拡大効果が薄い。また、デンプンとして小麦粉を使用すると、小麦粉アレルギー体質の人が食べることができないという問題もある。
【0005】
従来は、米粉の他に馬鈴薯や小麦粉などの米以外のデンプン質を用いて製麺していた理由は、このようなデンプン質をつなぎとして使用することが製麺上不可欠であると認識されていたためである。
【0006】
そこで、本発明者は、他のデンプン質を用いずに米粉100%で製麺するための手法について長期に亘り試行錯誤を重ねた結果、そのための好適な手法を見出し、本発明を完成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、請求項1記載の発明は、所定量Xの米粉を糊状にしてつなぎとして使用し、これを所定量Y(Xの3.2〜4.4倍)の米粉を加えて製麺する米100%パスタの製造方法である。
【0008】
請求項2記載の発明は、所定量Xの米粉を糊状にしてつなぎとして使用し、これを所定量Y(Xの3.2〜4.2倍)の米粉を加えて製麺する米100%パスタの製造方法であって、米粉の合計使用量(X+Y)の28〜33%以上の水を所定量Xの米粉に対して加えて撹拌した後、必要に応じて余剰水を捨てて米粉の合計使用量(X+Y)の28〜33%の水を含む状態の米粉とし、この含水状態の米粉を蒸した後に撹拌することにより米粉を乳化もしくは糊化して米粉糊とし、この米粉糊と所定量Yの米粉とを混ぜて撹拌することにより糸状に連続した米麺生地とし、この米麺生地をパスタマシーンで所望形状に製麺することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、所定量Xの米粉を糊状にしてつなぎとして使用し、これを所定量Y(Xの3.5〜4.2倍)の米粉を加えて製麺する米100%パスタの製造方法であって、米粉の合計使用量(X+Y)の30〜31%以上の水を所定量Xの米粉に対して加えて撹拌した後、必要に応じて余剰水を捨てて米粉の合計使用量(X+Y)の30〜31%の水を含む状態の米粉とし、この含水状態の米粉を蒸した後に撹拌することにより米粉を乳化もしくは糊化して米粉糊とし、この米粉糊と所定量Yの米粉とを混ぜて15〜40秒間撹拌することにより糸状に連続した米麺生地とし、この米麺生地をパスタマシーンで所望形状に製麺することを特徴とする。
【0010】
また、本発明によれば、請求項1ないし3のいずれか記載の方法により製麺された半生状態の米100%パスタをオーブンで焼いて、常温での長期保存性を高めたパスタ食品とすることができる(請求項4)。
【0011】
本発明において用いる米粉は、その全部または一部に玄米、発芽玄米その他米から得られる粉状物を含むものであっても良い(請求項5)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来の生麺パスタと同様にして調理することができるパスタを製造することができるが、このパスタは、米粉を乳化ないし糊化して得た米粉糊をつなぎとして使用しているので、小麦粉などの他のデンプン質を一切使用せず、米100%で製造されたパスタである。したがって、米の需要拡大に大きく貢献することができると共に、小麦粉アレルギー体質の人でも食することができる食品素材として有用性が高い。
【0013】
さらに、このようにして得られた米100%パスタをオーブンで焼き、これをスープや乾燥具材などと共に個食分カップ状などの容器に入れて、パスタ食品とすることができる。生の米粉は虫がつきやすく常温での長期保存性が悪いという問題があるが、このようにパスタを焼くことにより常温でも1年以上も日持ちする食品となり、そのままスナック菓子などとして食したり、あるいは既存のカップラーメンなどと同じようにして熱湯を注いだ後に蓋をして3〜4分程度で簡便に食することができるので、保存食や災害時の非常食にも最適なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明による米100%パスタの製造方法の好適な実施形態について詳述する。
【実施例1】
【0015】
この実施例では、米粉1.5kgを糊状にしてつなぎとして使用し、これに米粉5.5kgを加えて製麺しており、合計7kgの米粉を用いて米100%パスタを製造する。製麺に際して用いる水量は、米粉の合計使用量の28〜33%、より好ましくは30〜31%であり、この実施例では米粉の合計使用量7kgに対して30%に相当する2.1リットルの水を用いて製麺している。
また、つなぎとして使用する米粉量と麺生地として使用する米粉量の割合は、前者を1として後者が3.2〜4.4、より好ましくは3.5〜4.2程度の範囲とする。この範囲を超えてつなぎとしての米粉量が多くなると製造された麺が過剰な水分を含むものとなって食感が悪くなり、反対に麺生地としての米粉量が多くなると製造された麺がぱさぱさとなって割れやすくなる。この実施例では、つなぎとしての米粉量1.5kgに対して麺生地としての米粉量5.5kgを用いているので、その割合は1:3.67となっている。
【0016】
まず、米粉糊を調製するため、米粉1.5kgに対して水2.5〜3.0リットルを加えて良くかき混ぜる。この場合の加水割合は米粉1kgに対して1.67〜2.0リットルとなる。米粉1kgに対する加水が1.6リットルに満たないと、良くかき混ぜても米粉が粉状のまま残ってしまうので、この下限値よりも大きい加水割合とすることが必須である。米粉1kgに対する加水が3.0リットル以上になると、後の捨て水量が多くなって無駄となる。
【0017】
このようにして良くかき混ぜた後、米粉が水に浸かった状態を数時間、好ましくは3〜4時間程度保持して馴染ませた後、余剰水分を捨てる。捨て水量は、米粉の合計使用量7kgに対して30%に相当する2.1リットルの水を残すように決定する。したがって、当初の加水量が2.5リットルであれば約0.4リットルの水を捨て、当初の加水量が3.0リットルであれば約0.9リットルの水を捨てる。
【0018】
捨て水後の水量が上記範囲(米粉の合計使用量の28〜33%、より好ましくは30〜31%、この実施形態では30%=2.1リットル)の下限値に満たないと、米粉に水を十分に吸わせることができないために粉状が残ってしまって蒸し工程を経ても十分に糊化させることができず、また、上記範囲の上限値を上回ると蒸し工程を経ても液状に止まってしまって同じく十分に糊化させることができない。
【0019】
また、米粉を浸水状態に保持する時間は、短すぎると米粉に水を十分に吸わせることができないために粉状が残って十分に糊化させることができず、また、この時間が長すぎると米粉の状態が悪くなり、特に夏場は腐敗するおそれが生ずるので、2〜10時間程度とし、好ましくは3〜4時間程度とする。
【0020】
このようにして適量の水を吸わせた状態の米粉を布に包み、常用の蒸し器に入れて1時間程度蒸し処理する。蒸し時間が短すぎると糊状に固めることができず、逆に長すぎると米粉が水分を吸いすぎて前述の所定範囲(米粉の合計使用量の28〜33%、より好ましくは30〜31%、この実施形態では30%=2.1リットル)の含水状態を確保することが困難となる。
【0021】
蒸し器内で数時間の蒸し処理が行われることにより米粉糊の表面には余剰水分が付着した状態となるが、蒸し器から布ごと取り出して数分間、たとえば5〜7分間程度放置すると、表面に付着した余剰水分が取れ、前述の所定範囲(米粉の合計使用量の28〜33%、より好ましくは30〜31%、この実施形態では30%=2.1リットル)の水を含水した状態に戻る。
【0022】
この米粉糊をミキサーに入れて均一に混合して塊のない状態とした後、ミキサーを止めて、新たに米粉を5.5kg入れて、再びミキサーで混合撹拌することにより、糸状に連続した米麺生地とする。米粉糊とするために用いた当初の米粉使用量1.5kgに加えて、この段階で5.5kgの米粉が新たに用いられるので、米粉の合計使用量は7.0kgとなる。新たに米粉を入れた後の混合撹拌時間は、短すぎると糸状に連続した米麺生地を得ることができず、長すぎると球状の塊となってしまって、いずれも製麺機にかけることができないため、15秒〜40秒、より好ましくは20〜30秒とする。
【0023】
得られた糸状の米麺生地は、常用の各種パスタマシーンで様々な形のパスタ(スパゲッティ、リングイネ、フェットチーネ、タニアテッレ、マカロニ、ペンネ、ラザニアなど)に製麺することができる。
【0024】
このようにして製麺されたパスタは、従来の生麺パスタと同様にして調理することができるが、米粉を乳化ないし糊化したものをつなぎとして使用しているので、小麦粉などの他のデンプン質を一切使用せず、米100%で製造されたパスタである。したがって、米の需要拡大に大きく貢献することができると共に、小麦粉アレルギー体質の人でも食することができる食品素材として有用性が高い。
【実施例2】
【0025】
実施例1によりパスタマシーンから出て来る半生状態の米100%パスタをオーブンで焼き、これをカップ状などの容器に入れて、スナック菓子状の食品とすることができる。生の米粉は虫がつきやすく常温での長期保存性が悪いという問題があるが、このようにパスタを焼くことにより常温でも1年以上も日持ちする食品となり、既存のスナック菓子などと同じようにして簡便に食することができるので、保存食や災害時の非常食にも最適なものとなる。パスタを焼く処理条件は、常用のオーブンにて180〜200℃で8〜10分間とする。
【実施例3】
【0026】
実施例1によりパスタマシーンから出て来る半生状態の米100%パスタをオーブンで焼き、これをスープや乾燥具材などと共に個食分カップ状などの容器に入れて、即席パスタ食品とすることができる。生の米粉は虫がつきやすく常温での長期保存性が悪いという問題があるが、このようにパスタを焼くことにより常温でも1年以上も日持ちする食品となり、既存のカップラーメンなどと同じようにして熱湯を注いだ後に蓋をして3〜4分程度で簡便に食することができるので、保存食や災害時の非常食にも最適なものとなる。パスタを焼く処理条件は、常用のオーブンにて180〜200℃で8〜10分間とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量Xの米粉を糊状にしてつなぎとして使用し、これを所定量Y(Xの3.2〜4.4倍)の米粉を加えて製麺する米100%パスタの製造方法。
【請求項2】
所定量Xの米粉を糊状にしてつなぎとして使用し、これを所定量Y(Xの3.2〜4.2倍)の米粉を加えて製麺する米100%パスタの製造方法であって、米粉の合計使用量(X+Y)の28〜33%以上の水を所定量Xの米粉に対して加えて撹拌した後、必要に応じて余剰水を捨てて米粉の合計使用量(X+Y)の28〜33%の水を含む状態の米粉とし、この含水状態の米粉を蒸した後に撹拌することにより米粉を乳化もしくは糊化して米粉糊とし、この米粉糊と所定量Yの米粉とを混ぜて撹拌することにより糸状に連続した米麺生地とし、この米麺生地をパスタマシーンで所望形状に製麺することを特徴とする米100%パスタの製造方法。
【請求項3】
所定量Xの米粉を糊状にしてつなぎとして使用し、これを所定量Y(Xの3.5〜4.2倍)の米粉を加えて製麺する米100%パスタの製造方法であって、米粉の合計使用量(X+Y)の30〜31%以上の水を所定量Xの米粉に対して加えて撹拌した後、必要に応じて余剰水を捨てて米粉の合計使用量(X+Y)の30〜31%の水を含む状態の米粉とし、この含水状態の米粉を蒸した後に撹拌することにより米粉を乳化もしくは糊化して米粉糊とし、この米粉糊と所定量Yの米粉とを混ぜて15〜40秒間撹拌することにより糸状に連続した米麺生地とし、この米麺生地をパスタマシーンで所望形状に製麺することを特徴とする米100%パスタの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか記載の方法により製麺された半生状態の米100%パスタをオーブンで焼いて、常温での長期保存性を高めたパスタ食品とすることを特徴とする米100%パスタの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか記載の方法において、米粉が玄米、発芽玄米その他米から得られる粉状物を含むことを特徴とする米100%パスタの製造方法。