説明

籾摺り機の脱ぷ装置

【課題】 気体や液体のシリンダを採用した簡単でコスト的に優れた脱ぷ部の構造であっても、両ロールを接触させること無く残粒除去作業を行なうことができる脱ぷ部の構成を採用することによって、両ロールの偏磨耗や片減り現象を解消し、脱ぷ装置の故障の低減と、両ロールの長寿命化を現実化し、コストパフォーマンスに優れる脱ぷ装置を提供する。
【解決手段】 一時的にシリンダロットをロックできるシリンダを採用し、籾タンクに備えたレベルセンサが検知できなくなること条件に、シリンダをロック状態として、固定回転軸のロールと移動回転軸のロールとの間の隙間を、脱ぷに適した間隔を維持して脱ぷ作業を継続できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾摺り機における液体又は気体のシリンダを利用した、脱ぷロールの位置制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、籾摺り機における脱ぷ装置のロール開閉機構として、特開昭60‐41554号公報(特許文献1)のような、エアシリンダを利用したものや、特開平02‐31841号公報(特許文献2)の油圧装置を使用して、一方の籾摺りロールを移動自在に装設されている。
【0003】
また、特開昭60−38038号公報(特許文献3)のように、一方の籾摺りロールと連結した遊動体にアームを回転自在に備え、このアームを回転させるロール隙間調節モータの駆動によって籾摺りロールの一方を移動自在とした構成が記載されている。
【0004】
さらに、特許文献3において、脱ぷロールを駆動するモータの設定電流値によって脱ぷロールの接触圧を検知し、この接触状態から一定時間の離隔によって脱ぷロールの初期間隔の設定を行なう籾摺り選別機のロール間隔設定装置が記載されている。
【0005】
特開2006−7168公報(特許文献4)には、ロール間隔自動制御装置において、初期ロール間隔を固定状態としながら、再開籾摺り作業の初期にロール間隔の初期設定を省略して、前回籾摺り作業時のロール間隔を維持しながら籾摺り作業を再開できる籾摺り機も公知となっている。
【0006】
【特許文献1】特開昭60−041554号公報
【特許文献2】特開平02−031841号公報
【特許文献3】特開昭60−038038号公報
【特許文献4】特開2006−007168公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2のように気体や液体を利用したシリンダによって、一方の脱ぷロールを他方の脱ぷロールに押し付けながら、脱ぷロール同士の間に籾を通過させて籾の脱ぷ作用を促し、そのロール間に挟まれる籾によって脱ぷロールが接触しないように構成されているが、両脱ぷロール間に供給される籾が滞った場合には、両ロールが接触し、回転速度が異なるロールであるのでロールの表面が磨耗し、場合によっては煙を発生しながら溶け出す現象を引き起こす場合が発生する。
【0008】
そこでシリンダによって脱ぷロールの移動を行なう籾摺り機の脱ぷ装置においては、両ロール間に籾を供給するための籾タンクにレベルセンサを備えて、レベルセンサがオフになった場合に、ロール間に供給する籾をシャッタによって閉としてその供給を停止すると共に、ロールが接触しないタイミングで移動脱ぷロールを待機位置に戻して、ロール同士の接触、即ち「空摺り」を未然に防ぐように制御されている。
【0009】
以上のように構成した気体や液体のシリンダを利用した脱ぷ装置の脱ぷロールの移動方式は、構造が簡単で故障の確率が少なく、コスト面に優れる利点が挙げられるものの、籾タンク内には残粒が発生し、残粒の処理作業を行なう必要が発生する。脱ぷ作業終了時の籾タンク内に残る籾の処理作業においては、籾摺り作業者が手動で籾タンク内の残粒を脱ぷ部に供給するためのシャッタの開閉と、脱ぷロールの開閉を行なう作業が発生し、作業者がロール同士を接触させないように配慮しても、籾タンク内に残粒がなくなった時にロール間に籾が供給されない状態が発生し、短時間ではあるが両ロールを接触(空摺り)させながら脱ぷ作業を行なう必要性が発生する。その結果、両ロールに偏磨耗や片減り現象が発生し、通常脱ぷ作業時の異音や振動の発生を引き起こし、脱ぷ装置自体の故障を引き起こす結果となることがあった(図8参照)。
【0010】
特許文献3や特許文献4では、機械的に移動ロールの位置を制御して、固定ロールと移動ロールの隙間を、脱ぷに適した間隔を取るように構成されているが、ロール同士の位置の決定の要素として、ロールを一時的に接触させる作業が行なわれているので、ロールの「空摺り」現象を解決する手段に至っていない。また、機械的に移動ロールの位置調節を行なう方式は、構造的に複雑で、コストも高く、故障の確率がシリンダ方式と比べ格段に高くなる欠点を有するものである。
【0011】
そこで本発明では、気体や液体のシリンダを採用し、簡単でコスト的に優れた脱ぷ部の構造であっても、両ロールを接触させること無く通常の脱ぷ作業を継続して行なえると共に、脱ぷ部に供給する籾タンクの残粒処理作業においても通常の脱ぷ作業時のロール間隔を維持して、両ロールを接触させること無く残粒除去作業を行なうことができる脱ぷ部の構成を採用することによって、両ロールの偏磨耗や片減り現象を解消し、脱ぷ装置の故障の低減と、両ロールの長寿命化を現実化し、コストパフォーマンスに優れる脱ぷ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は請求項1ないし請求項5に係わる籾摺り機の脱ぷ装置を提案する。
【0013】
即ち請求項1記載の籾摺り機の脱ぷ装置は、固定回転軸と移動回転軸に回転周速度が異なる高速脱ぷロールと低速脱ぷロールをそれぞれ軸装し、液体又は気体で作動するシリンダによって、固定回転軸のロールに移動回転軸のロールが接する方向に移動できるよう構成した籾摺り機の脱ぷ装置において、シリンダの作動によってロール同士が接触しようとする方向に加圧され、ロール間に供給される籾の脱ぷ作用を継続出来るロールの間隙を、シリンダのロック状態で一時的に保持し、脱ぷ動作を継続して行なえるように構成したことを特徴とするものである。
【0014】
請求項2記載の籾摺り機の脱ぷ装置は、請求項1記載の籾摺り機の脱ぷ装置において、固定回転軸のロールと移動回転軸のロールとの間に供給される籾のその残量が設定以下になった場合に、両ロールの間の脱ぷ作用を継続出来るロールの隙間をシリンダのロック状態で一時的に保持することを特徴とするものである。
【0015】
請求項3記載の籾摺り機の脱ぷ装置は、請求項1又は請求項2記載の籾摺り機の脱ぷ装置において、脱ぷ装置の上方に備えられた籾タンクにレベルセンサを備え、籾タンクから固定回転軸のロールと移動回転軸のロールとの間に定量的に供給される籾によって、籾タンク内の残量がレベルセンサで検知できなくなること条件に、シリンダをロック状態とすることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4記載の籾摺り機の脱ぷ装置は、請求項1、2又は請求項3記載の籾摺り機の脱ぷ装置において、籾摺り作業終了時のロールの隙間を保持し、再開籾摺り作業の初期の段階まで、シリンダをロック状態とすることを特徴とするものである。
【0017】
請求項5記載の籾摺り機の脱ぷ装置は、請求項4記載の籾摺り機の脱ぷ装置において、籾タンクに備えたレベルセンサの検知によって、シリンダのロック状態を解除することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係わる籾摺り機の脱ぷ装置によれば、気体や液体のシリンダを採用して簡単でコスト的に優れた脱ぷ部の構造であっても、両ロールを接触させること無く通常の脱ぷ作業を継続して行なえると共に、脱ぷ部に供給する籾タンクの残粒処理作業においても通常の脱ぷ作業時のロール間隔を維持して、両ロールを接触させること無く残粒除去作業を行なうことができる脱ぷ部の構成を採用することによって、両ロールの偏磨耗や片減り現象を解消し、脱ぷ装置の故障の低減と、両ロールの長寿命化を現実化し、コストパフォーマンスに優れる脱ぷ装置を提供することが出来る。
【0019】
さらに、シリンダを利用した脱ぷ装置であっては、籾タンク内の残粒を除去するために不可欠であった、自動運転から手動運転への切り替え動作を不必要として、作業者の作業低減と作業時間の短縮を可能とすることができる。
【0020】
また、脱ぷ作業終了においても従前のロール間隔をロック状態を継続させることによって、次回の再脱ぷ作業を素早く再開することが出来るので、円滑な籾摺り作業と籾摺り再開時間の短縮をも可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明に係わる脱ぷ装置を備える、籾摺り機の断面省略図である。図2は脱ぷ装置を備える、籾摺り機のレイアウト略図、図3は本発明に係わる脱ぷ装置にシリンダを備えた状態を示す正面略図、図4は本発明の実施の形態のシリンダの基本回路を示す図、図5は本発明の実施の形態のシリンダの状態を表す図、図6は本発明の実施の形態のフローチャート図、図7は本実施形態の運転動作を示す略図、図8は従来の実施形態の動作を示す略図である。
【0022】
図1及び図2に示す1は籾摺り装置であって、脱ぷ部2、選別部3、送風部4、搬送部5及び複数の昇降機6(a・b・c)の集合体から構成される。脱ぷ部2は、脱ぷ装置7の下方に風力選別装置(唐箕)8と、上方に籾タンク9を備え、籾タンク9は昇降機6aと接続されている。送風部4は脱ぷ部2の風力選別部8に接続されていて、脱ぷ装置7で分離された籾殻52を吸引し、機外に排出する。
【0023】
選別部3は複数の選別板からなる揺動装置10と、その略上方に位置する昇降機6bと接続された混合米タンク11からなり、揺動装置10から排出される粒状体を各昇降機の投入ホッパまで移動させるための、搬送部5が揺動装置10の下方に備えている。揺動装置10の排出経路の一部は、昇降機6cに供給されるようになっており、選別された良品が昇降機6cより籾摺り機の外部に排出される。
【0024】
脱ぷ部2につながる昇降機6aは、籾50を籾タンク9に供給するための昇降機であって、昇降機6aの投入ホッパに投入の開閉を行なうための投入シャッタ12が、そして籾タンク9には、脱ぷ装置7に籾50の供給と停止を行なうための籾摺りシャッタ13が設けられている。また、籾タンク9にはその内部の籾量を検知するため、籾タンク下限センサ14と籾タンク上限センサ15が配置されている。
【0025】
選別部3は脱ぷ部2から供給される粒状体を昇降機6bに受け入れるためのホッパを備えており、混合米タンク11は昇降機6bからその内部に供給される粒状物の量を検知するためのセンサを備えている。図2では混合米タンク下限センサ16と混合米タンク上限センサ17の二つを備えているが、上限のセンサ一つであってもよい。
【0026】
籾摺り機1の稼動によって、昇降機6aの投入ホッパに投入された籾50は、昇降機6aを揚穀して籾タンク9内に堆積する。そして籾タンク下限センサ14が「ON」となると籾摺りシャッタ13が「開」となり、籾タンク9から脱ぷ装置7へ籾50の供給を開始する。昇降機6aから籾タンク9内に供給される籾50が、籾タンク上限センサ15が「ON」となる位置まで供給された場合は、投入ホッパに備えられた投入シャッタ12が作動し、昇降機6a内への籾供給を停止するようになっている。
【0027】
脱ぷ装置7内に進入した籾50は、装置内の高速で回転する回転速度が異なる二つのロールの間に挟まれて、多くの籾50が玄米51と籾殻52に脱ぷ分離される。そして風力選別部8内を通過する過程で、送風部4からの吸引風で籾殻52だけが分離されて送風部4から機外に排出され、玄米51と脱ぷされなかった籾(以下、混合米という。)が風力選別部8内を流下し、昇降機6bに供給され混合米タンク11に堆積される。
【0028】
混合米タンク11内に堆積した混合米は、混合米タンク上限センサ17がONの後、揺動装置10の複数の選別板に供給され、玄米51と籾50とを選別を開始し、それぞれの選別板の玄米層から排出される玄米は昇降機6cに供給し、籾摺り機1の機外の別経路に排出される。混合米層から排出される混合米は、昇降機6bに供給されて混合米タンク11に再度堆積する。籾層から排出された籾は昇降機6aに供給されて、再び籾タンク9から脱ぷ装置7に移行して、籾摺り、選別経路を通過する。
【0029】
揺動装置10の稼動の後、混合米タンク11の混合米タンク上限センサ17がONとなると、籾タンク9の籾摺りシャッタ13が閉となって混合米タンクに混合米の供給を停止し、混合米タンク下限センサ16がOFFとなると揺動装置10は停止し、待機状態となる。
【0030】
籾摺り作業終了においては、籾タンク下限センサ14及び混合米タンク下限センサ16がOFF状態となって、籾タンク9及び混合米タンク11内に溜まる籾及び混合米を排出するため、各下限センサを感知しないモードに切り替えて、籾摺りシャッタ13の開閉及び揺動装置10を手動で稼動させて、それぞれのタンク内の残粒を取り出すことによって、籾摺り作業が完了する。
【実施例1】
【0031】
以上のように構成された籾摺り機1において、本発明では脱ぷ装置7を以下のように構成させている。
図3に示すように、脱ぷ装置7は固定回転軸20と移動回転軸21に回転周速度が異なる高速脱ぷロール22と低速脱ぷロール23を軸装している。移動回転軸21はシリンダ24と連結されていて、シリンダの伸縮によって移動回転軸21が固定回転軸20に接近、即ち開閉自在となっている。
【0032】
このシリンダ24は液体若しくは気体をシリンダ内部への供給によって作動するシリンダであって、シリンダ内への液体若しくは気体の供給口25a・b・cを備えると共に、シリンダロット26自体を機械的にロックする構成を備えるもの(例えばSMC株式会社 SNAロック付シリンダSeries)である。
【0033】
図3に示すシリンダ24の供給口25aは、シリンダロット26を押出して低速脱ぷロール23を高速脱ぷロール22に接触させる方向に、供給口25bはシリンダロット26を収納する方向に、供給口25cはシリンダをロック状態とする場合に液体又は気体を供給する場合に使用するものである。なお、シリンダのロック状態を行なう場合は、電磁弁又は減圧弁27を操作し、供給口25aと供給口25cに同じ圧力を加えて中立状態を形成させる(図4参照)。
【0034】
上記内容を図示すると、図5のように表され、図5のマル1図では籾摺り機1自体に電源が供給されていない場合と、電源投入直後の待ち状態にある場合を示す図であって、籾タンク9内に籾50の供給がなされず、シリンダ24に供給口25bから圧縮空気又は液体が供給されてシリンダロット26が収納されている待機位置で待機し、籾摺りシャッタ13が籾タンク9の下端の排出口を塞ぎ、移動回転軸21が固定回転軸20から距離をもって離れている状態である。
【0035】
図5のマル2図は、籾摺り装置1が稼動し、昇降機から籾50が籾タンク9内に投入され、籾タンク下限センサ14をONさせることでシリンダ24の供給口25aから圧縮空気又は液体がシリンダ内部に供給されシリンダロット26を押出し、移動回転軸21を固定回転軸20方向に押し付けると共に、籾摺りシャッタ13が開となって籾タンク内の籾50を固定回転軸20と移動回転軸21に軸装した、高速脱ぷロール22と低速脱ぷロール23の間に層状に籾50が供給される状態である。高速脱ぷロール22と低速脱ぷロール23はシリンダ24によって押し付けられ、お互いに接触する方向に働くが、お互いのロールの間には層状に供給される籾50が両ロールの接触を防止し、両ロールの回転差によって籾50が籾殻52と玄米51に脱ぷされやすい隙間を保持しながら、脱ぷ作業を継続することが出来る。
【0036】
図5のマル3図は、籾タンク下限センサ14がOFFの状態、例えば籾タンク9内の籾残量が少なくなった場合で、脱ぷ作業中に籾が籾タンク内に無くなった、若しくは籾タンク内に供給される籾の量が極端に少ない場合の状態を示している。この場合、籾タンク9内に堆積している籾の残量が籾タンク下限センサ14以下、即ち籾タンク下限センサ14がOFFとなった場合に、シリンダ24はシリンダロット26を機械的にロックすると同時に、供給口25aと25cに圧縮空気又は液体を供給して、シリンダをロック状態としている。高速脱ぷロール22と低速脱ぷロール23が図5のマル2図のシリンダロット26によってロールを押し付ける方向に働き、両ロールの隙間が籾の脱ぷに最適な間隔を保った状態で、マル3図のようにその間隔を固定して脱ぷ作業を継続することが出来る。
【0037】
本発明に係わる脱ぷ装置7の運転動作は図6のフローチャート図に示すように、籾摺り機全体の電源ON、そして運転を開始させる。運転の開始と共に昇降機・搬送機・脱ぷ装置7の固定回転軸20の高速脱ぷロール22と移動回転軸21の低速脱ぷロール23が回転を開始する。昇降機6aの昇降機投入シャッタ12が開となるので、昇降機6aを揚穀する籾50が籾タンク9内に堆積を始め、籾タンク下限センサ14がONとなると、設定時間後にシリンダ24からシリンダロット26が高速脱ぷロール22側に低速脱ぷロール23を押し付けると同時に、籾摺りシャッタ13が開となり、籾タンク9内の籾50を高速脱ぷロール22と低速脱ぷロール23の間に層状に供給を開始して、ロール隙間が脱ぷに最適な間隔を層状に供給される籾の脱ぷ作用によって形成しながら脱ぷ作業が継続して行なわれる。
【0038】
脱ぷ作業が終了、即ち籾タンク9内に籾の供給が行なわれなくなり、籾タンク下限センサ14がOFFの状態になった場合にシリンダ24のシリンダロット26をロック状態として、籾タンク下限センサ14がON状態からOFF状態に切り替わる直前の、シリンダロット26を常に加圧して良好に脱ぷ作業が行なわれる両ロールの隙間を維持した状態をシリンダのロックによって形成させる。
【0039】
そして再度、籾タンク下限センサ14がONとなった場合は、シリンダのロック状態を解除し、シリンダロット26を加圧して両ロールが接触する方向に圧力を加えながら脱ぷ作業が行なわれる。
【0040】
籾摺り作業が終了し、籾摺り機の運転を停止した場合には、シリンダのロック状態を維持しながら、まず昇降機の投入シャッタ12を閉とし、次いで籾摺りシャッタ13の閉、その後昇降機・搬送機・脱ぷ装置7の回転をOFFとし、装置全体の回転部の運転を停止させる。シリンダのロック状態は、電源をOFFとしない限り継続し、電源のOFFでシリンダのロック状態を解除しシリンダロットを待機位置に移動するように構成されている。
【0041】
図示はしていないが、前回の脱ぷ作業から電源をOFFとしないで、再起動させて脱ぷ作業を行なう場合は、既に籾摺りシャッタ13が開状態そして、シリンダがロック状態にあるので、昇降機6aから投入される籾50は直ちに脱ぷ作業を行なえることが出来、脱ぷ動作の時間の短縮と、複雑な脱ぷ作業の設定を行なう必要がない。
【0042】
従前の気体又は液体のシリンダを利用した脱ぷ装置においては、図8に示すように脱ぷ装置7に供給される籾50が途絶えるとロール同士が接触してしまうため、籾タンク下限センサを設けて、このセンサがOFFとなることで、脱ぷ作業を停止即ちロール同士を遠ざけて接触の防止と、籾摺りシャッタを閉として脱ぷ装置への籾50の供給を停止し、籾摺り作業を終了させる動作を行なわせていた(全自動運転)。しかしこの作業終了時においては籾タンク下限センサが感知しない部分に残粒が残り、この籾タンクに残る残粒の処理をするために、籾タンク下限センサを感知しないモード、または手動運転に切り替え、籾タンク内に籾の堆積を作業者が確認しながら、籾摺りシャッタの開閉動作と、移動回転軸のロールを固定回転軸の固定されたロールに押し付ける動作を行なう必要が発生する。
【0043】
しかしこの籾摺りシャッタとロールの開閉作業を手動で行なう操作は、籾摺りシャッタの開によって供給される籾50の落下が、ロールの閉のタイミングより遅い場合は、両ロールの間隔が脱ぷに適さない距離で籾が落下して次工程に脱ぷされない籾を通過させてしまう。またロールの閉のタイミングが早い場合は、ロール間に籾が供給されていないので両ロールが接触し、振動やロールの偏磨耗の発生の原因となる。
上記の手動での脱ぷ操作を作業者が複数回繰り返すことで籾タンク内の籾を排出することが出来るが、作業者に多くの操作の負担と、場合によってはロール及び籾摺り機への過負荷を招き、ロール及び籾摺り機の故障の一因になる可能性がある。
【0044】
そこで本案の示す脱ぷの作業工程は、図7に示すように、電源投入後の全自動運転開始において、籾摺りシャッタ13の開と同時に低速脱ぷロール23が高速脱ぷロール22に接触する方向に圧力が加わり、両ロールの隙間は脱ぷに適したロールの圧力によって維持しながら脱ぷ作業が継続される。そして籾タンク下限センサ14がOFFとなった場合にシリンダのシリンダロット26を機械的に固定すると同時に、シリンダ内の圧力を中立として押し引きの無いシリンダ内部状態を構成し、両ロールの間隔が籾タンク下限センサ14がOFFになる若干前のON状態の間隔を維持することができるので、籾タンク9内に籾50の残量が少なくそして残量がなくなっても、両ロールが接触せず籾摺りに適した隙間を維持したまま、そして籾摺りシャッタ13も開の状態のまま、たとえ昇降機6aや揺動装置10からの少量で不定量そして断続的に供給される籾であっても、籾タンク9に堆積させることを必要としないで良好に脱ぷ作業を行なうことを可能としている。
【0045】
また、籾摺り作業終了動作においても、それぞれの動力を備える装置は停止するものの、固定・移動回転軸の回転は停止しているが、シリンダロット26は両ロール間隔を脱ぷに適した距離を維持して固定されているので、籾摺り機の再起動時には、籾摺りシャッタ13の開動作だけで迅速に脱ぷ作業を開始することが出来、籾タンク下限センサ14のONと同時、即ち籾タンク9に多くの籾の堆積が確認されたらシリンダロット26の固定を解除し、シリンダに設定された気体又は液体の圧力によって両ロールを押し付ける力を再修正して、脱ぷに適した両ロール間隔を維持していくようになっている。
【0046】
従来行なわれている、引用文献3及び4のように機械的にロールの位置を変更する装置であっても、初期のロール間隔を決定するためロール同士を接触させる動作を行なわせている。しかし本発明を用いることで、継続して行なわれる通常の籾摺り作業、そして残粒を処理する作業においても、両ロールを一度も接触させること無く脱ぷ作業を行なうことができるので、ロールの偏磨耗の発生、そして装置自体にロール同士を接触させる場合の負荷の発生の防止を可能として、装置自体の故障を防止することが出来る。
【0047】
また、シリンダを利用した簡単な脱ぷ装置を提供することが出来るので、コストの面で優れ、故障の少ない農業経営に配慮した農業機械の提供を行なうことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係わる脱ぷ装置を備える、籾摺り機の断面省略図である。
【図2】脱ぷ装置を備える籾摺り機のレイアウト略図である。
【図3】本発明に係わる脱ぷ装置にシリンダを備えた状態を示す正面略図である。
【図4】本発明の実施の形態のシリンダの基本回路を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態のシリンダの状態を表す図である。
【図6】本発明の実施の形態のフローチャート図である。
【図7】本実施形態の運転の動作を示す略図である。
【図8】従来の実施形態の動作を示す略図である。
【符号の説明】
【0049】
1 籾摺り機
2 脱ぷ部
3 選別部
4 送風部
5 搬送部
6a 昇降機
6b 昇降機
6c 昇降機
7 脱ぷ装置
8 風力選別部
9 籾タンク
10 揺動装置
11 混合米タンク
12 投入シャッタ
13 籾摺りシャッタ
14 籾タンク下限センサ
15 籾タンク上限センサ
16 混合米タンク下限センサ
17 混合米タンク上限センサ
20 固定回転軸
21 移動回転軸
22 高速脱ぷロール
23 低速脱ぷロール
24 シリンダ
25a 供給口
25b 供給口
25c 供給口
26 シリンダロット
27 電磁弁又は減圧弁
50 籾
51 玄米
52 籾殻




【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定回転軸と移動回転軸に回転周速度が異なる高速脱ぷロールと低速脱ぷロールをそれぞれ軸装し、
液体又は気体で作動するシリンダによって、固定回転軸のロールに移動回転軸のロールが接する方向に移動できるよう構成した籾摺り機の脱ぷ装置において、
シリンダの作動によってロール同士が接触しようとする方向に加圧され、ロール間に供給される籾の脱ぷ作用を継続出来るロールの間隙を、シリンダのロック状態で一時的に保持し、脱ぷ動作を継続して行なえるように構成したことを特徴とする、籾摺り機の脱ぷ装置。
【請求項2】
固定回転軸のロールと移動回転軸のロールとの間に供給される籾のその残量が設定以下になった場合に、両ロールの間の脱ぷ作用を継続出来るロールの隙間をシリンダのロック状態で一時的に保持することを特徴とする、請求項1記載の、籾摺り機の脱ぷ装置。
【請求項3】
脱ぷ装置の上方に備えられた籾タンクにレベルセンサを備え、籾タンクから固定回転軸のロールと移動回転軸のロールとの間に定量的に供給される籾によって、籾タンク内の残量がレベルセンサで検知できなくなること条件に、シリンダをロック状態とすることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の、籾摺り機の脱ぷ装置。
【請求項4】
籾摺り作業終了時のロールの隙間を保持し、再開籾摺り作業の初期の段階まで、シリンダをロック状態とすることを特徴とする、請求項1、2又は請求項3記載の、籾摺り機の脱ぷ装置。
【請求項5】
籾タンクに備えたレベルセンサの検知によって、シリンダのロック状態を解除することを特徴とする、請求項4記載の、籾摺り機の脱ぷ装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−241048(P2009−241048A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94436(P2008−94436)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(308020892)金子農機株式会社 (21)
【Fターム(参考)】