説明

粉体分級装置

【課題】気体と混合状態にて搬送される原料粉体を複数種類の大きさまたは密度の粉体に分級する粉体分級処理において、流路の分岐部分における乱流の発生を抑制して、分級精度を高めることができる粉体分級装置を提供する。
【解決手段】長方形状流路断面を有する原料粉体流路を第1粉体流路と第2粉体流路とに分岐して分級処理を行う構成において、原料粉体流路を画定する第2壁部が分岐部分にて、第2粉体流路の開口部が形成された第1壁部へ向かうような段部を有し、段部が原料粉体流路の流路方向に対して傾斜された傾斜面を有する構成を採用する。これにより、流路の分岐部分において、開口部と対向する第2壁部近傍にて乱流が発生することを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体と混合状態にて搬送される原料粉体を、粉体のサイズまたは密度(もしくは比重)に応じて分離することで、原料粉体を複数種類の粉体に分級する粉体分級装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原料粉体を気体に混合させて搬送して、粉体のサイズまたは密度に応じて複数の種類の粉体に分級するような粉体分級装置として様々な構成のものが知られている。例えば、原料粉体を細粉と粗粉とに分級処理するような粉体分級装置では、原料粉体として例えばミクロンオーダーの粒径分布を含む、いわゆる微細な粉体が取り扱われる。
【0003】
このような従来の粉体分級装置において、原料粉体流路として長方形状流路断面を採用した粉体分級装置が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「矩形ジェット・バーチャル・インパクターの分級性能に対する加速距離の影響」後藤邦彰、宮脇祥子、増田弘昭、エアロゾル研究第3巻第3号pp.212-220(1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、分級処理が行われる原料粉体の対象が多様化しており、さらに原料粉体から細粉や粗粉(あるいは高密度粉体や低密度粉体)を高い分級精度でもって分級し、所定の粒径(あるいは密度)範囲の粉体を選択的に確実に取り出したいという要望が増えつつある。
【0006】
しかしながら、非特許文献1の粉体分級装置のように長方形状流路断面の原料粉体流路を細粉流路と粗粉流路とに分岐させて原料粉体の分級を行うような構成では、分岐部分の形状によっては乱流が発生する場合がある。このような乱流の発生は、分級精度に直接的に影響し、分級精度の向上を阻害する要因となる。
【0007】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、気体と混合状態にて搬送される原料粉体を、粉体のサイズまたは密度(もしくは比重)に応じて複数種類の粉体に分級する粉体分級処理において、流路の分岐部分における乱流の発生を抑制して、分級精度を高めることができる粉体分級装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0009】
本発明の第1態様によれば、気体と混合された状態で供給される原料粉体を、慣性力を用いて第1粉体と第2粉体とに分級する粉体分級装置において、互いに対向する第1壁部および第2壁部によりその長方形状流路断面におけるそれぞれの長辺が画定された原料粉体流路と、第1壁部および第2壁部によりその長方形状流路断面におけるそれぞれの長辺が画定され、分岐部分にて原料粉体流路に連通されるとともに原料粉体流路と略同じ流路方向に配置された第1粉体流路と、分岐部分にて第1壁部に開口された長方形状開口部を通じて原料粉体流路に連通される第2粉体流路と、を備え、分岐部分において第2壁部は第1壁部へ向かう段部を有し、段部が原料粉体流路の流路方向に対して傾斜された傾斜面を有する、粉体分級装置を提供する。
【0010】
本発明の第2態様によれば、第1粉体流路の短辺方向の幅が原料粉体流路の短辺方向の幅よりも小さく、第1粉体流路の短辺方向の幅の中心が、原料粉体流路の中心に対して第1壁部側へ偏心されている、第1態様に記載の粉体分級装置を提供する。
【0011】
本発明の第3態様によれば、分岐部分における原料粉体流路より第2粉体流路への分岐角度が鋭角である、第1態様または第2態様に記載の粉体分級装置を提供する。
【0012】
本発明の第4態様によれば、第2壁部の段部の角部分が曲面で構成されている、第1態様から第3態様のいずれか1つに記載の粉体分級装置を提供する。
【0013】
本発明の第5態様によれば、第1壁部に形成された第2粉体流路の長方形状開口部において、第1粉体流路に隣接する長辺側端部にエッジ部が形成されている、第1態様から第4態様のいずれか1つに記載の粉体分級装置を提供する。
【0014】
本発明の第6態様によれば、第1壁部に形成された第2粉体流路の長方形状開口部の長辺方向の幅が、原料粉体流路の長辺方向の幅よりも小さい、第1態様から第5態様のいずれか1つに記載の粉体分級装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、長方形状流路断面を有する原料粉体流路を第1粉体流路と第2粉体流路とに分岐して分級処理を行う構成において、原料粉体流路を画定する第2壁部が分岐部分にて、第2粉体流路の開口部が形成された第1壁部へ向かうような段部を有し、段部が原料粉体流路の流路方向に対して傾斜された傾斜面を有する構成が採用されている。したがって、流路の分岐部分において、開口部と対向する第2壁部近傍にて乱流が発生することを抑制できる。よって、粉体分級装置において分級精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一の実施の形態にかかる粉体分級システムのフロー図
【図2A】本発明の実施の形態の粉体分級装置の外観正面図
【図2B】本発明の実施の形態の粉体分級装置の外観側面図
【図3】本発明の実施の形態の粉体分級装置の分解図
【図4】本発明の実施の形態の粉体分級装置内における各流れの模式図
【図5A】本発明の実施の形態の分級部の外観側面図
【図5B】図5Aの分級部のA−A線断面図
【図5C】図5Aの分級部の流路分岐部分の拡大図
【図6】本発明の別の実施の形態にかかる分級部の流路分岐部分の拡大図
【図7】本発明のさらに別の実施の形態にかかる分級部の流路分岐部分の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
本発明の一の実施の形態にかかる粉体分級装置を備える粉体分級システムの主要な構成について、図1に示すフロー図を用いて説明する。
【0019】
図1に示すように、粉体分級システム1は、定量フィーダ2と、分散機3と、粉体分級装置4と、細粉回収用バグフィルタ5と、粗粉回収用バグフィルタ6と、真空ポンプ7と、クリーンエア供給部8とを備えている。
【0020】
本実施の形態にかかる粉体分級システム1では、例えば0.1μm〜数十μmの粒径分布を含むような原料粉体を気体に混合させた状態(すなわち、固気混合状態)にて搬送して、粉体分級装置4にて細粉(第2粉体:例えば粒径0.1μm〜1μm程度)と粗粉(第1粉体:例えば1μmを超える粒径)に分級して回収するシステムである。
【0021】
このような原料粉体としては、ファインセラミックス、金属材料、高分子材料、電池・電子材料、複合材料、医薬品材料、食品材料など、電子、エネルギ、医療、食品などの各種技術分野にて用いられる無機物および有機物の微粉を対象とするものである。原料粉体から特定の仕様(サイズ、密度など)の粉体を選択的に取り出す処理が本発明の粉体分級処理である。また、原料粉体に含まれる特定の仕様の粉体以外の異物を、原料粉体から取り除く処理についても本発明の粉体分級処理に含まれる。
【0022】
定量フィーダ2は、粉体分級システム1内に対して、原料粉体を定量供給する装置であり、本実施の形態では、例えばマイクロフィーダが用いられる。
【0023】
分散機3はエジェクタを備え、定量フィーダ2にて定量供給された原料粉体をエジェクタ内に通過させることにより解砕して分散させる。分散機3としてはこのように原料粉体を解砕・分散する機能を有する装置であればよく、エジェクタ以外の構成を採用しても良い。
【0024】
粉体分級装置4は、分散機3にて分散されて気体と混合状態にて搬送される原料粉体に対して、慣性力を用いて細粉と粗粉とに選択的に分級する装置である。この粉体分級装置4には、分散部9および分級部10が備えられおり、装置内に供給された原料粉体に対して、分散部9にて再度分散処理を行った後、分級部10にて分級処理を行う。また、粉体分級装置4には、クリーンエア供給部8が接続されており、装置内にクリーンエアが供給される。クリーンエア供給部8より供給されるクリーンエアの流れにより原料粉体が取り囲まれた状態にて分級部10にて分級処理が行われるため、分級部10の内壁面に原料粉体が付着することが防止され、高い分級精度を得ることができる。なお、粉体分級装置4の詳細な構成については後述する。
【0025】
細粉回収用バグフィルタ5は、粉体分級装置4にて分級された細粉を含む粉体気流を濾過して細粉を回収する。同様に、粗粉回収用バグフィルタ6は、粉体分級装置4にて分級された粗粉を含む粉体気流を濾過して粗粉を回収する。
【0026】
図1に示すように、粉体分級システム1において、上述したそれぞれの装置構成は管路(原料粉体の搬送用配管)にて接続されている。真空ポンプ7は、粉体分級システム1の管路全体の下流側端部に接続されており、管路内を吸引することにより、管路内が負圧に保たれて原料粉体の気流による搬送が行われる。なお、本実施の形態では、真空ポンプ7を用いた真空吸引搬送方式を採用した例について説明するが、原料粉体の搬送方法はその他方式を採用しても良く、例えば、圧縮空気を用いた圧送方式を採用しても良い。
【0027】
細粉回収用バグフィルタ5および粗粉回収用バグフィルタ6のそれぞれの出口の管路上には、開度調節弁5a、6a、流量計5b、6b、および圧力計5c、6cが設けられている。また、クリーンエア供給部8の管路上においても開度調節弁8a、流量計8b、および圧力計8cが設けられている。それぞれの流量計および圧力計が適切な値を示すようにそれぞれの開度調節弁を調節することで、クリーンエア、細粉、粗粉の各流れのバランスを制御できる。
【0028】
次に、粉体分級装置4の構成について図面を参照しながら説明する。粉体分級装置4の外観図(正面図)を図2Aに示し、外観図(側面図)を図2Bに示し、分解図を図3に示す。なお、図3の分解図では、図2Aおよび図2Bの粉体分級装置4の外観図に示す構成部材の中の主要な構成部材について示している。
【0029】
図2A、図2Bおよび図3に示すように、粉体分級装置4は、原料粉体導入部11と、分散板押さえ部材12と、分散板13と、分散板受け部材14と、整流板15と、整流板押さえ部材16と、合流部17と、分離部18と、クリーンエア導入部19と、細粉排出部20と、粗粉排出部21とを備えている。
【0030】
原料粉体導入部11は、定量フィーダ2および分散機3より管路を経由して搬送される原料粉体の投入口となっている。原料粉体導入部11は、管路との接続部分である円形状断面の原料粉体の流路を長方形状断面の流路に変換する、いわゆるコートハンガー型流路を有する。
【0031】
本実施の形態では、分散板13と、この分散板13を上流側および下流側から挟むようにして保持する分散板押さえ部材12および分散板受け部材14とにより、分散部9が構成されている。分散板押さえ部材12は原料粉体導入部11に接続されており、原料粉体導入部11よりの長方形状断面の流れにて原料粉体が分散部9に供給される。分散板13は複数のエジェクタが横一列に隣接配置された構成を有しており、それぞれのエジェクタ内に原料粉体を通過させることで、原料粉体を解砕して分散させる機能を有する。
【0032】
クリーンエア導入部19はクリーンエア供給部8と管路にて接続され、粉体分級装置4におけるクリーンエアの導入口となっている。分散板押さえ部材12および整流板押さえ部材16は、クリーンエア導入部19に接続されたクリーンエアの流路を形成する。クリーンエア流路は、分散部9の原料粉体流路の外周全体を囲み、原料粉体流路と区分された流路として形成される。クリーンエア流路には整流板15が配置され、整流板15は上流側および下流側から分散板押さえ部材12および整流板押さえ部材16により挟まれて保持される。なお、整流板15は、例えば網状の金属部材を積層して構成される。
【0033】
合流部17は分散板受け部材14と接続され、その内側に原料粉体流路を有するとともに、分離部18の内側に配置されることにより、分離部18との内壁面との間で原料粉体流路を囲むクリーンエア流路を形成する。合流部17の下流側先端にて、原料粉体流路とクリーンエア流路とが連通され、分離部18内にて原料粉体の流れを囲むようなクリーンエアの流れが形成される。
【0034】
特に図2Bに示すように、分離部18内では、図示下方側へ向かう原料粉体流路22が、下方へ向かう粗粉流路24(第1粉体流路)と大略横方向に分岐された細粉流路23(第2粉体流路)とに分岐されている。この流路の分岐部分において、慣性力を利用した原料粉体の分級処理が行われ、細粉流れおよび粗粉流れの分離が行われる。なお、本実施の形態では、合流部17および分離部18により分級部10が構成されている。分級部10の詳細な構成については後述する。
【0035】
分離部18の細粉流路23は細粉排出部20に接続され、粗粉流路24は粗粉排出部21に接続される。また、細粉排出部20は管路を介して細粉回収用バグフィルタ5に接続され、粗粉排出部21は管路を介して粗粉回収用バグフィルタ6に接続される。
【0036】
ここで、粉体分級装置4における原料粉体およびクリーンエアなどのそれぞれの流路について、概略的に図4に示す。
【0037】
図4に示すように、粉体分級装置4に供給された原料粉体の流路は、原料粉体導入部11にて、円形状断面の流路25から長方形状断面の流路26へと変換されて、分散板13へと導かれる。分散板13内のそれぞれのエジェクタを通過した原料粉体は、合流部17(および分散板受け部材14)内の長方形状断面の流路27へと吐出される。
【0038】
一方、クリーンエア導入部19から粉体分級装置4に供給されたクリーンエアは、分散板押さえ部材12内にて、長方形状断面の原料粉体流路26を囲むような枠断面状の流路28となって、合流部17の外周へと導かれる。
【0039】
合流部17の外周では、下流側へ向かって枠状断面のクリーンエア流路28の外径が絞られて、合流部17の先端にて原料粉体流路27とクリーンエア流路28とが合流し、その外周全体がクリーンエアにより囲まれた原料粉体流路22となる。
【0040】
その後、分離部18内において、原料粉体流路22が細粉流路23と粗粉流路24とに分岐され、この分岐部分にて原料粉体が細粉と粗粉とに分級される。
【0041】
次に、分級部10(合流部17および分離部18)の詳細な構成について、図5A〜図5Cを用いて説明する。図5Aは分級部10の外観側面図であり、図5Bは図5AにおけるA−A線断面図であり、図5Cは流路分岐部分(図5AのB部)の拡大図である。
【0042】
図5Aおよび図5Bに示すように、分級部10は、分離部18の内部空間に合流部17が挿入配置されることにより構成されている。合流部17は、その中央に上下方向に貫通する原料粉体流路27を有しており、分散部9からの原料粉体がこの原料粉体流路27を通じて分離部18内に供給される。また、合流部17の外壁部と分離部18の内壁部との間に枠状断面を有するクリーンエア流路28が形成されており、分離部18内に供給される原料粉体の流れの外周全体を囲むように、このクリーンエア流路28を通じてクリーンエアが分離部18内に供給される。なお、クリーンエア流路28の気流は、整流板15を通過する際に整流されて、気流の乱れが抑制される。
【0043】
分離部18内の原料粉体とクリーンエアの合流部分では、長方形状断面の原料粉体流路22が形成されている。この原料粉体流路22は、分岐部分30にて、同じく長方形状断面の粗粉流路24と細粉流路23とに分岐されている。
【0044】
ここで分岐部分30付近を示す図5Cを参照して、分岐部分30近傍の流路構成について詳細に説明する。
【0045】
図5Cに示すように、分離部18内の内壁部である互いに対向する第1壁部(壁面)31と第2壁部(壁面)32とにより、原料粉体流路22はその長方形状断面におけるそれぞれの長辺が画定されている。第1壁部31には、分岐部分30にて長方形状開口部33が形成されており(特に、図5B参照)、この開口部33を通じて細粉流路23が原料粉体流路22に連通されている。また、第1壁部31および第2壁部32は分岐部分30よりもさらに図示下方に延在しており、粗粉流路24の長方形状断面におけるそれぞれの長辺が第1壁部31および第2壁部32により画定されている。
【0046】
第2壁部32は、分岐部分30において第1壁部31に向かって突出した段部34を備える。段部34は原料粉体流路22の流れ方向に対して傾斜した傾斜面35を有するとともに、段部34の角部分が例えば曲面で構成されている。
【0047】
粗粉流路24の短辺方向の幅W2は、原料粉体流路22の短辺方向の幅W1よりも小さく形成されている。原料粉体流路22は、図示上下方向(例えば鉛直方向)をその流路方向としており、粗粉流路24は原料粉体流路22と略同じ流路方向に配置されている。さらに、粗粉流路24の短辺方向の幅の中心は、原料粉体流路22の中心に対して第1壁部31側へ偏心されている。そのため、第2壁部32において、開口部33を挟んで原料粉体流路22側と粗粉流路24側との間に段差が形成されている。このように段差が形成されていることにより、開口部33の近傍において乱流が発生することを抑制できる。
【0048】
細粉流路23の短辺方向の幅W3は、原料粉体流路22の短辺方向の幅W1以下に形成されている。このように細粉流路23の幅W3を設定することにより、細粉流路23内の流速を一定以上とすることができ、細粉流路23の内壁への細粉の付着を抑制できる。
【0049】
また、図5Cに示すように、原料粉体流路22、粗粉流路24、および細粉流路23のそれぞれの短辺方向の幅W1、W2、W3は、それぞれの流路方向において一定幅に形成されている。例えば、細粉流路23の幅W3が下流側に向かって拡大するような場合には、流速変動により細粉が壁面に付着してしまう。このようにそれぞれの幅W1、W2、W3がそれぞれの流路方向において例えば所定の距離の区間だけ一定幅に形成されていることにより、壁面への原料粉体の付着を抑制できる。
【0050】
分岐部分30において細粉流路23と原料粉体流路22との間の角度(分岐角度)θは、例えば鋭角に設定されている。このように分岐角度θを鋭角に設定することで、慣性力を用いた高い精度の分級処理を実現できる。また、第2壁部32に形成された開口部33の図示下端にはエッジ部33aが形成されており、一方図示上端には曲面部(R部)33bが形成されている。このように細粉流路23と粗粉流路24との境界位置にエッジ部33aが形成されていることにより、原料粉体の流れを乱すことなく細粉の流れと粗粉の流れとにスムーズに分けることができる。
【0051】
また、図5Bに示すように、分岐部分30において第1壁部31に形成された開口部33の長辺方向の幅L2は、原料粉体流路22の幅L1よりも小さく形成されている。また、原料粉体流路22の長方形状断面の短辺を画定する第3壁部36および第4壁部37から、開口部33の長辺方向の両端部が離間するように、開口部33が第1壁部31に形成されている。原料粉体流路22の長辺方向の端部では、流速のバラツキや乱流の発生などが生じる可能性があり、このように開口部33の幅L2を設定することで、このような部分の気流が開口部33を通して細粉流路23内に積極的に導入されることを抑制できる。なお、本実施の形態では、粗粉流路24の長辺方向の幅は、原料粉体流路22の幅L1と同じに形成されている。
【0052】
なお、図4および図5Bでは、粗粉流路24の長辺方向の幅L1が略一定状態にて図示下方に向けて延在するような場合、すなわち直線状の流路として延在する場合を例として説明している。このように粗粉流路24が直線状の流路として延在するような構成では、第3壁部36および第4壁部37が傾斜面や段状とならないため、粗粉が壁面に付着することを抑制できる。なお、このような粗粉流路24の形態は直線状の流路に限られず、例えば、図2Aおよび図3に示すように下方に向かって長辺方向の幅が減少するように絞られた流路としても良い。また、所定の距離だけ直線状の流路として、その後絞られた流路としても良い。
【0053】
本実施の形態の粉体分級装置4によれば、分級部10においける流路の分岐部分30において、細粉流路23の開口部33と対向する第2壁部32に、第1壁部31に向かう段部34が形成されており、さらに段部34が傾斜面35を有している。したがって、細粉流路23の開口部33と対向する第2壁部32付近において、段部34の傾斜面35により気流を案内することができ、乱流が発生することを抑制できる。よって、粉体分級装置4において分級精度を向上させることができる。
【0054】
特に、原料粉体流路22の幅W1よりも粗粉流路24の幅W2が小さく、さらに原料粉体流路22に対して粗粉流路24が細粉流路23側へ偏心されるような構成では、第1壁部31の開口部33に対向する第2壁部32近傍の位置において、部分的に圧力の低い領域が形成されて乱流が発生する場合があり、このような段部34をこの付近に設けることで、乱流が発生するおそれがある領域を埋めることができるとともに、傾斜面35にて分岐される気流を案内することができる。
【0055】
また、段部34の角部が曲面にて構成されていることにより、気流を円滑に案内することができる。傾斜面35の角度は、段部34の突出量や分岐部分におけるそれぞれの流路の方向およびサイズなどを考慮して決定することが好ましい。
【0056】
なお、分級部10の分岐部分30における流路の分岐形態は、図5Cに示す形態のみに限定されない。例えば、図6に示すように、細粉流路23と原料粉体流路22との間の分岐角度θが、90度を超える角度、すなわち鈍角に設定されても良い。また、分岐角度θは90度に設定されても良い。
【0057】
また、図5Cに示すように、第1壁部31において、開口部33を介して原料粉体流路22側の部分と粗粉流路24側の部分との間に段差が形成されるような場合に代えて、図7に示すように、第1壁部31においてこのような段差が形成されないようにする場合であっても良い。
【0058】
また、段部34は、少なくとも分岐部分30において形成されていれば良く、例えば分岐部分30以降の粗粉流路24において第2壁部32が第1壁部31から遠ざかるように、部分的な突出部として段部が形成されても良い。
【0059】
なお、上述の説明では、段部34の角部が曲面で形成される場合について説明したが、気流速度や要求される分級精度などによっては角部を曲面で形成しなくても良い。
【0060】
上述の実施の形態では、粉体分級装置4が、原料粉体を粉体サイズに応じて分離して、粗粉(第1粉体)と細粉(第2粉体)とに分級するような場合を例として説明したが、本発明の粉体分級装置は、このような場合についてのみ限定されない。本発明の粉体分級装置にて、原料粉体を粉体密度に応じて分離して、原料粉体を高密度粉体(第1粉体)と低密度粉体(第2粉体)とに分級するような場合であっても良い。
【0061】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 粉体分級システム
2 定量フィーダ
3 分散機
4 粉体分級装置
5 細粉回収用バグフィルタ
6 粗粉回収用バグフィルタ
7 真空ポンプ
8 クリーンエア供給部
9 分散部
10 分級部
13 分散板
17 合流部
18 分離部
22 原料粉体流路
23 細粉流路
24 粗粉流路
30 分岐部分
31 第1壁部
32 第2壁部
33 開口部
33a エッジ部
34 段部
35 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体と混合された状態で供給される原料粉体を、慣性力を用いて第1粉体と第2粉体とに分級する粉体分級装置において、
互いに対向する第1壁部および第2壁部によりその長方形状流路断面におけるそれぞれの長辺が画定された原料粉体流路と、
第1壁部および第2壁部によりその長方形状流路断面におけるそれぞれの長辺が画定され、分岐部分にて原料粉体流路に連通されるとともに原料粉体流路と略同じ流路方向に配置された第1粉体流路と、
分岐部分にて第1壁部に開口された長方形状開口部を通じて原料粉体流路に連通される第2粉体流路と、を備え、
分岐部分において第2壁部は第1壁部へ向かう段部を有し、段部が原料粉体流路の流路方向に対して傾斜された傾斜面を有する、粉体分級装置。
【請求項2】
第1粉体流路の短辺方向の幅が原料粉体流路の短辺方向の幅よりも小さく、第1粉体流路の短辺方向の幅の中心が、原料粉体流路の中心に対して第1壁部側へ偏心されている、請求項1に記載の粉体分級装置。
【請求項3】
分岐部分における原料粉体流路より第2粉体流路への分岐角度が鋭角である、請求項1または2に記載の粉体分級装置。
【請求項4】
第2壁部の段部の角部分が曲面で構成されている、請求項1から3のいずれか1つに記載の粉体分級装置。
【請求項5】
第1壁部に形成された第2粉体流路の長方形状開口部において、第1粉体流路に隣接する長辺側端部にエッジ部が形成されている、請求項1から4のいずれか1つに記載の粉体分級装置。
【請求項6】
第1壁部に形成された第2粉体流路の長方形状開口部の長辺方向の幅が、原料粉体流路の長辺方向の幅よりも小さい、請求項1から5のいずれか1つに記載の粉体分級装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−187479(P2012−187479A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51881(P2011−51881)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000129183)株式会社カワタ (120)
【Fターム(参考)】