説明

粉体塗料の調色方法およびフルカラー用粉体塗料

【課題】色の偏析、まだら感、濃淡などの不良のない、ほぼ均一な色目を有する塗膜を形成することのできる粉体塗料の調色方法およびフルカラー用粉体塗料を提供する。
【解決手段】所定の色を有する複数色の粉体塗料および顔料処理品を所望の比率で配合し、混合装置を用いてドライブレンドにより所望の色に調色する粉体塗料の調色方法であって、前記粉体塗料として、イエロー(Y)粉体塗料、マゼンタ(M)粉体塗料、およびシアン(C)粉体塗料を用い、前記顔料処理品として、マゼンタ顔料をアルミニウムオキサイドまたはシリカと混合したマゼンタ顔料処理品およびシアン顔料をアルミニウムオキサイドまたはシリカと混合したシアン顔料処理品を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数色の粉体塗料を配合して調色する調色方法およびフルカラー用粉体塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉体塗装は、溶剤を用いずに空気を媒体として塗装するため安全性が高く、かつ環境に及ぼす影響が少ないので、家庭電化製品などの分野で普及しつつある。粉体塗装に用いられる粉体塗料は、一般に、粉体のもとになる結着樹脂中に、着色剤やその他の添加剤などを配合し、溶融混練したのち粉砕、分級して製造される。このように製造された粉体塗料を、摩擦やコロナ放電などによって一定の極性に帯電させた後、被塗物の表面に静電付着させる。その後、付着した粉体塗料を加熱溶融する。あるいは気流中に浮遊した粉体塗料中に、予熱された被塗物を挿入して、当該被塗物の表面に、上記予熱を利用して粉体塗料を溶融、流展させたりすることで、被塗物の表面に連続した塗膜が形成される。
【0003】
粉体塗料は、粉体のもとになる結着樹脂中に、目的とする色目にあわせて調色された着色剤を添加し、溶融混練することによって、あらかじめ所定の色目に調色された状態で製造される。この製造方法は、家庭電化製品のような、同じ色の塗料を大量に消費するいわゆる大ロットの塗装には適しているものの、多色の塗料が少量ずつ必要な小ロットの塗装の場合は、効率的な製造方法とはいえない。小ロットの場合は、予め決められた色に調色された何種類かの粉体塗料を、目的とする色目にあわせて調合し、回転翼式のミキサーなどの混合装置を用いてドライブレンドすることにより、所定の色目を有する粉体塗料を製造する方法が効率的な方法として検討されている。
【0004】
特許文献1には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の、いわゆる色の3原色とブラック(K)の粉体塗料を用い、それらの所定量を被塗布物に付着させ、焼き付ける粉体塗装方法が開示されている。
【特許文献1】特開平09−262536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の粉体塗装方法の場合には、焼き付けにより形成される塗膜に、色の偏析、まだら感、濃淡などの不良が生じるという問題があった。また、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3原色にあらかじめ調色され透光性の粉体塗料を、目的とする色目にあわせてブレンドして調色を行ない、調色後の粉体塗料を用いて塗膜を形成する場合には、形成された塗膜に、同様に色の偏析、まだら感、濃淡などの不良が生じるという問題があった。特に、淡色のイエロー(Y)に濃色のシアン(C)やマゼンタ(M)を少量ブレンドしたとき、およびマゼンタ(M)にシアン(C)を少量ブレンドしたときに、上記不良が顕著に観察される。
【0006】
その場合を、図2に示す従来のイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色の粉体塗料による色相環図を用いて説明する。従来、図2に示す斜線部分の色相の粉体塗料をドライブレンドにより作製しようとすると、特に、塗膜に、色の偏析、まだら感、濃淡などの不良が生じるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、複数色の粉体塗料をドライブレンドしているにもかかわらず、色の偏析、まだら感、濃淡などの不良のない、ほぼ均一な色目を有する塗膜を形成することのできる新規な粉体塗料の調色方法およびフルカラー用粉体塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の技術的構成を具備するものであって、それにより前記課題を解決することができたものである。すなわち、本発明の粉体塗料の調色方法は、所定の色を有する粉体塗料と顔料処理品とを所望の比率で配合し、混合装置を用いてドライブレンドにより所望の色を形成する調色方法であって、前記粉体塗料として、イエロー(Y)粉体塗料、マゼンタ(M)粉体塗料、およびシアン(C)粉体塗料を用い、前記顔料処理品として、マゼンタ顔料をアルミニウムオキサイドまたはシリカと混合したマゼンタ顔料処理品およびシアン顔料をアルミニウムオキサイドまたはシリカと混合したシアン顔料処理品を用いることを特徴とする。
【0009】
本発明において、前記粉体塗料と前記顔料処理品とを配合し、混合装置を用いてドライブレンドにより所望の色を得る場合、前記粉体塗料と前記顔料処理品の合計量に対して、前記顔料処理品が5重量%未満であることが好ましい。
【0010】
本発明のフルカラー用粉体塗料は、イエロー(Y)粉体塗料、マゼンタ(M)粉体塗料およびシアン(C)粉体塗料と、マゼンタ顔料をアルミニウムオキサイドまたはシリカと混合したマゼンタ顔料処理品およびシアン顔料をアルミニウムオキサイドまたはシリカと混合したシアン顔料処理品とを用い、混合装置によりドライブレンドによって所望の色を形成した粉体塗料よりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粉体塗料の調色方法によれば、色の偏析、まだら感、濃淡などの不良のない、ほぼ均一な色目を有する塗膜を形成することができる。すなわち、本発明においては、イエロー(Y)粉体塗料、マゼンタ(M)粉体塗料、およびシアン(C)粉体塗料を用い、前記顔料処理品として、マゼンタ顔料をアルミニウムオキサイドまたはシリカと混合したマゼンタ顔料処理品およびシアン顔料をアルミニウムオキサイドまたはシリカと混合したシアン顔料処理品を用い、それらをドライブレンドすることによって粉体塗料のフルカラー化を実現することができる。また、本発明の粉体塗料の調色方法によれば、混練によらずドライブレンドすることによって様々な色相の粉体塗料を作製することができ、少量多品種のフルカラー用粉体塗料を経済的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に用いる粉体塗料について説明する。
本発明に用いる粉体塗料は、結着樹脂、着色剤、および所望により、硬化剤、その他の添加剤を含有している。結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等が使用できる。表面に付着させることで適正な正帯電性を得ることができる。硬化剤としては、イソシアネート、アミン、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素酸、酸ジヒドラジド、イミダゾール等が挙げられる。その他の添加剤としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、およびケイ酸カルシウム等の充填剤、アクリルオリゴマー、およびシリコーン樹脂等の流展剤および発泡防止剤等が例示できる。
【0013】
次に、上記粉体塗料に用いる着色剤について述べる。
イエロー(Y)系の着色剤としては、たとえば縮合アゾ系顔料、イソインドリン系顔料、あるいはベンズイミダゾロン系顔料などがあげられる。このうち縮合アゾ系顔料としては、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、およびC.I.ピグメントイエロー95などがあげられる。またイソインドリン系顔料としては、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110などがあげられる。さらにベンズイミダゾロン系顔料としては、C.I.ピグメントイエロー154などがあげられる。また、上記以外の他のイエロー系の着色剤としては、たとえば黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、アンチモンイエローなどの無機顔料、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー65、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー115、C.I.ピグメントイエロー130、C.I.ピグメントイエロー133、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー169などの有機顔料、C.I.ソルベントイエロー16、C.I.ソルベントイエロー33、C.I.ソルベントイエロー56、C.I.ソルベントイエロー60、C.I.ソルベントイエロー61、C.I.ソルベントイエロー162、C.I.アシッドイエロー1、C.I.アシッドイエロー23などの染料などがあげられる。イエロー系の着色剤の配合量は、やはり鮮明な色味が得られ、しかも粉体塗料の透光性が低下しないようにするために、結着樹脂100重量部に対して1.0〜20重量部程度、好ましくは1.5〜8.0重量部、さらに好ましくは2.5〜4.0重量部、特に好ましくは2.5〜3.5重量部の範囲に設定される。
【0014】
マゼンタ(M)系の着色剤としては、たとえばキナクリドン系顔料が使用される。かかるキナクリドン系顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド122があげられる。また、上記以外の他のマゼンタ系の着色剤としては、たとえばベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、マンガン紫、赤口黄鉛、モリブデンオレンジなどの無機顔料、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド49:2、C.I.ピグメントレッド50、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド60、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド90、パーマネントレッドFNG、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット25、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16などの有機顔料、スピロンレッド、インダンスレンブリリアントオレンジRK、インダンスレンブリリアントオレンジGKなどの染料などがあげられる。マゼンタ系の着色剤の配合量は、マゼンタ(M)粉体塗料の場合、鮮明な色味が得られ、しかも粉体塗料の透光性が低下しないことを考慮すると、結着樹脂100重量部に対して1.0〜20重量部程度、好ましくは2.0〜8.0重量部、さらに好ましくは2.5〜4.0重量部、特に好ましくは2.5〜3.5重量部の範囲に設定される。
【0015】
シアン(C)系の着色剤としては、とくにフタロシアニン系顔料が好適に使用される。かかるフタロシアニン系顔料の具体例としては、銅フタロシアニン系顔料、たとえばカラーインデックスによる分類のうちC.I.ピグメントブルー15やその誘導体があげられる。例えば、その塩素化物や、銅フタロシアニンのスルホン酸のバリウム塩(C.I.ピグメントブルー17)などがある。また、無金属フタロシアニン系顔料(C.I.ピグメントブルー16)なども用いることができる。上記以外の他のシアン系の着色剤としては、たとえば紺青(プルシアンブルー)、コバルトブルーなどの無機顔料、C.I.ピグメントブルー18、C.I.ピグメントブルー16などの有機顔料、C.I.バットブルー6、C.I.ソルベントブルー70などの染料などがあげられる。これらシアン系の着色剤の配合量は、シアン(C)粉体塗料の場合、鮮明な色味が得られ、しかも粉体塗料の透光性が低下しないことを考慮すると、結着樹脂100重量部に対して1.0〜20重量部程度、好ましくは2.0〜8.0重量部、さらに好ましくは2.5〜4.0重量部、特に好ましくは2.5〜3.5重量部の範囲に設定される。
【0016】
本発明における粉体塗料は、結着樹脂と上記着色剤を乾式混合し、熱溶融混練した後、粉砕、分級することによって得ることができる。その他、懸濁重合法、乳化重合法などの重合法を採用して作製することもできる。
【0017】
次に、顔料処理品について説明する。本発明において使用するマゼンタ顔料処理品は、マゼンタ顔料をアルミニウムオキサイドまたはシリカと混合することによって作製することができる。また、シアン顔料処理品は、シアン顔料をアルミニウムオキサイドまたはシリカと混合することによって作製することができる。顔料としては、上記のマゼンタ系着色剤およびシアン系着色剤に記載した顔料と同様のものを用いることができる。処理される顔料の粒径は1μm以下が好ましい。
【0018】
これら顔料の処理(表面処理)は、顔料と表面処理剤としてのアルミニウムオキサイドまたはシリカとを混合し、機械的な混合により乾式混合により行なうことができる。乾式混合に用いる混合機の例としては、V型ブレンダー、コーン型ブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどがあげられる。トリボ帯電式の塗装ガンシステムを用いる場合は、表面処理剤としてアルミニウムオキサイドを用い、コロナ帯電式の塗装ガンシステムを用いる場合は、表面処理剤としてシリカを用いればよい。
【0019】
表面処理剤であるアルミニウムオキサイド又はシリカの粒径は、10〜40nmの範囲が好ましい。顔料に対する表面処理剤の添加量は、顔料100重量部に対して5〜30重量部の範囲が好ましい。
【0020】
本発明では、イエロー(Y)粉体塗料、マゼンタ(M)粉体塗料およびシアン(C)粉体塗料に加えて、マゼンタ顔料処理品およびシアン顔料処理品の合計5種の色相を原色とする。
【0021】
本発明を図1を用いて説明する。図1は本発明の調色方法に用いる粉体塗料および顔料処理品による色相環図である。図において、YYMは黄赤の色相、MMCは紫の色相、YYCは黄緑の色相を示す。図1に示すように、塗膜に、色の偏析、まだら感、濃淡などの不良が生じていた範囲の色相(YYM、MMC、YYC)(図2の斜線部分の色相)の粉体塗料は、イエロー(Y)粉体塗料、マゼンタ(M)粉体塗料、またはシアン(C)粉体塗料に、マゼンタ顔料処理品、またはシアン顔料処理品をドライブレンドすることにより作製される。また、他の色相の粉体塗料は、イエロー(Y)粉体塗料、マゼンタ(M)粉体塗料およびシアン(C)粉体塗料を適宜組合せてドライブレンドすることによって作製することができる。それにより、塗膜不良を生じない、あらゆる色相の粉体塗料をドライブレンドによって作製することが可能となり、粉体塗料のフルカラー化をなすことができる。
【0022】
本発明において、粉体塗料に顔料処理品を混ぜてドライブレンドする際には、粉体塗料に対して、顔料処理品が5重量%未満、好ましくは1重量%未満、更に好ましくは0.01〜0.6重量%になるように配合される。配合量が5重量%を超えると、顔料処理品の色が濃すぎて、塗膜に色の偏析、まだら感、濃淡などの不良が生じるので、上記の範囲に設定される。
【0023】
本発明に用いる粉体塗料の粒子径は、体積平均粒子径が5〜20μm(コールターカウンターTAII型での測定値)という範囲が好ましい。体積平均粒子径が5μm未満の粉体粒子は、ファンデルワールス力などに起因する粒子間力が大きくなるため凝集しやすく、粉体としての流動性が悪化するため、粉体塗料として実用的でない。さらに、このような小粒径の粉体粒子を一般的な溶融混練、粉砕分級方法で製造しようとすると、粉砕分級工程で大きなエネルギーを必要とするため、製造コストがかなり高くなってしまう。逆に、体積平均粒子径が20μmを越えると、薄く均一な粉体付着層を被塗装面に得ることができず、したがって良好な薄膜が得られない。
【0024】
本発明の調色方法は、上記の方法で得られる粉体塗料および顔料処理品を所望の比率で配合し、混合装置を用いてドライブレンドにより所望の色を調色するものであるが、ドライブレンドの方法については、特に限定されるものではない。ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速ミキサーによる乾式混合方法を採用することができる。
【0025】
[実施例および比較例]
次に、本発明の調色方法について、実施例と比較例を用いて、さらに詳細に説明する。なお、以下の「部」は、重量部を意味する。
【0026】
1)各色の粉体塗料の作製
(1)イエロー(Y)粉体塗料
ポリエステル樹脂(日本ユピカ社製:GV−180) 84部
硬化剤(マックオーター社製:アルキュア4000) 16部
流展剤(BASF社製:アクロナール4F) 1部
発泡防止剤(みどり化学社製:ベンゾイン) 1部
イエロー顔料(クラリアント社製:トナーイエローHG) 3部
上記配合比からなる原料をスーパーミキサーにて混合した後に、110℃の温度条件下で加圧ニーダーにより溶融混練し、冷却後にハンマークラッシャーで粗粉砕する。その後、ジェットミルで粉砕しながら風力分級機により体積平均粒子径10μmの粉体塗料を得た。
【0027】
(2)マゼンタ(M)粉体塗料
上記のイエロー顔料をマゼンタ顔料(大日精化社製:クロモファインマゼンタ6878)3部に変更した以外は、上記と同様の製造法で体積平均粒子径10μmの粉体塗料を得た。
【0028】
(3)シアン(C)粉体塗料
上記のイエロー顔料をシアン顔料(大日精化社製:フタロシアニンブルー4920)3部に変更した以外は、上記と同様の製造法で体積平均粒子径10μmの粉体塗料を得た。
【0029】
2)顔料処理品の作製
(1)マゼンタ顔料処理品(トリボ用)
マゼンタ顔料(大日精化社製:クロモファインマゼンタ6878) 80部
アルミニウムオキサイド(デグサ社製:アルミナC) 20部
上記配合比からなる原料をヘンシェルミキサーにて混合し、その後にフルイ(74μm)を通過させて、マゼンタ顔料処理品(トリボ用)を得た。
【0030】
(2)シアン顔料処理品(トリボ用)
シアン顔料(大日精化社製:フタロシアニンブルー4920 80部
アルミニウムオキサイド(デグサ社製:アルミナC) 20部
上記配合比からなる原料をヘンシェルミキサーにて混合し、その後にフルイ(74μm)を通過させて、シアン顔料処理品(トリボ用)を得た。
【0031】
(3)マゼンタ顔料処理品(コロナ用)
マゼンタ顔料(大日精化社製:クロモファインマゼンタ6878) 80部
シリカ(デグサ社製:アエロジルR972) 20部
上記配合比からなる原料をヘンシェルミキサーにて混合し、その後にフルイ(74μm)を通過させて、マゼンタ顔料処理品(コロナ用)を得た。
【0032】
3)調色
【実施例1】
【0033】
・黄赤色
イエロー(Y)粉体塗料にマゼンタ顔料処理品(トリボ用)が0.2重量%となるように添加し、ヘンシェルミキサーでドライブレンドした。
・黄緑色
イエロー(Y)粉体塗料にシアン顔料処理品(トリボ用)が0.2重量%となるように添加し、ヘンシェルミキサーでドライブレンドした。
・紫色
シアン(C)粉体塗料にマゼンタ顔料処理品(トリボ用)が0.2重量%となるように添加し、ヘンシェルミキサーでドライブレンドした。
【実施例2】
【0034】
・黄赤色
イエロー(Y)粉体塗料にマゼンタ顔料処理品(コロナ用)が0.2重量%となるように添加し、ヘンシェルミキサーでドライブレンドした。
【0035】
[比較例1]
・黄赤色
イエロー(Y)粉体塗料とマゼンタ(M)粉体塗料を重量比75/25になるように配合し、ドライブレンドした。
・黄緑色
イエロー(Y)粉体塗料とシアン(C)粉体塗料を重量比75/25になるように配合し、ドライブレンドした。
・紫色
マゼンタ(M)粉体塗料とシアン(C)粉体塗料を重量比75/25になるように配合し、ドライブレンドした。
【0036】
[比較例2]
・黄赤色
イエロー(Y)粉体塗料にマゼンタ顔料を0.2重量%になるように添加し、ドライブレンドした。
【0037】
[塗装]
実施例1、比較例1及び比較例2の各粉体塗料をトリボ型粉体塗装機で0.8mm×70mm×150mmのホワイトテストピース(パルテック社製 商品名:PB−137T)に塗布し、180℃で20分間焼き付けて塗膜を有する塗装板を得た。なお、塗膜の膜厚は20〜30μmになるように調整した。
【0038】
また、実施例2の粉体塗料をコロナ型粉体塗装機で0.8mm×70mm×150mmのホワイトテストピース(パルテック社製 商品名:PB−137T)に塗布し、180℃で20分間焼き付けて塗膜を有する塗装板を得た。なお、塗膜の膜厚は20〜30μmになるように調整した。
【0039】
形成された塗膜を目視で観察して、色の偏析、まだら感がないものを混色性の欄で○、あるものを×と評価し、濃淡がないものを凝集性の欄で○、あるものを×と評価した。また、総合判定の欄で、実用に耐え得る塗膜が形成された場合を○、実用に耐え得ない塗膜の場合を×と評価した。その結果を色相および配合材料と共に表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
[評価結果]
表1の結果から明らかなように、実施例1および2では、混色性、凝集性、総合判定の全てについて評価○であった。また、実施例1および2の結果から明らかなように、本発明においては、トリボ型粉体塗装およびコロナ型粉体塗装の何れにも適用できる粉体塗料を用いることができた。
【0042】
これに対して、粉体塗料のみをドライブレンドした比較例1の場合には、混色性および総合判定が評価×となった。また、粉体塗料と前処理していない顔料をドライブレンドした比較例2の場合には、混色性、凝集性および総合判定が評価×となった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の調色方法に用いる粉体塗料および顔料処理品による色相環図である。
【図2】イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色の粉体塗料による色相環図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の色を有する複数色の粉体塗料および顔料処理品を所望の比率で配合し、混合装置を用いてドライブレンドにより所望の色に調色する粉体塗料の調色方法であって、前記粉体塗料として、イエロー(Y)粉体塗料、マゼンタ(M)粉体塗料、およびシアン(C)粉体塗料を用い、前記顔料処理品として、マゼンタ顔料をアルミニウムオキサイドまたはシリカと混合したマゼンタ顔料処理品およびシアン顔料をアルミニウムオキサイドまたはシリカと混合したシアン顔料処理品を用いることを特徴とする粉体塗料の調色方法。
【請求項2】
前記粉体塗料と前記顔料処理品とを配合し、混合装置を用いてドライブレンドにより所望の色を得る場合、前記粉体塗料と前記顔料処理品の合計量に対して、前記顔料処理品が5重量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の粉体塗料の調色方法。
【請求項3】
イエロー(Y)粉体塗料、マゼンタ(M)粉体塗料およびシアン(C)粉体塗料と、マゼンタ顔料をアルミニウムオキサイドまたはシリカと混合したマゼンタ顔料処理品およびシアン顔料をアルミニウムオキサイドまたはシリカと混合したシアン顔料処理品とを用い、混合装置によりドライブレンドによって所望の色が形成された粉体塗料よりなることを特徴とするフルカラー用粉体塗料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−31286(P2008−31286A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205891(P2006−205891)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】