説明

粉体塗装用定量供給制御装置

【課題】
粉体塗装における塗装品質の向上には、粉体ガンからの噴霧の安定性が要求され、供給された粉体をそのまま噴霧する方式が主流の粉体塗装の供給装置においては、安定定量供給が課題となる。
【解決手段】
粉体塗料を圧縮エアと共に供給する供給ポンプと、粉体を噴霧する粉体ガンと、前記供給ポンプと粉体ガンを結び粉体を流す供給ホースを備えた粉体定量供給装置において、粉体ガンの粉体導入部に流量検出手段を設け、該流量検出手段からの検出信号を受けて供給量を管理する。流量検出手段を粉体の流速を検出する手段によって流量を測定する装置を用いることによって、流量と流速の要因を把握でき同時に管理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体塗装における粉体塗料を塗装ガンに供給するための定量供給装置で、特に粉体ガンから噴霧される粉体の流量を把握し、安定したレベルで維持して塗装品質の均一化を図ることのできる安定供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体塗装は溶剤を使用しないため、省資源はもとより揮発性有機化合物の排出を防止できることから環境に優しく、また塗膜強度に優れる等の利点や、被塗装物に塗着しなかった塗料を回収して再使用することが容易で、資源の有効活用にも優れている塗装方法として知られている。
一方、粉体塗装方法の一つとして、粉体塗料を被塗装物に噴霧し、主には高電圧静電気の帯電効果を活用した静電塗装によって付着させ、加熱溶融によって密着後固化させて塗膜を形成する粉体静電ガンによる塗装方法は、被塗装物の形状に限定を受けにくく汎用性が高い塗装方法として広く工業化されている。
【0003】
この方法では静電気により被塗装物への塗着を行っているために、これまで粉体静電ガンからの粉体塗料噴霧は厳密な管理が要求されることがすくなかった。しかし噴霧流量のばらつきは、被塗装物への付着に影響を及ぼし、結果として塗膜品質の不均一を生じ、更に必要以上の噴霧量で塗装される頻度が増加することで塗着の効率の低下を招くなどの問題が生ずる。このことは回収しなければならない塗料が増加し、粉体塗装における回収再利用の効果も、不純物の混入した粉体塗料の使用比率が増加し、塗膜への品質低下につながることにもなる。
【0004】
このような静電ガンによる粉体塗装では、圧縮空気と共にスプレーガンへ流動状態で供給するための粉体供給装置と、被塗装物に向けて噴霧するスプレーガンとして一般的に静電粉体スプレーガンと、噴霧時に被塗装物に付着しなかった粉体塗料を回収して再使用に供する粉体回収装置等の設備を必要とする。
【0005】
これらの設備のうち、粉体の安定定量供給は最終的に塗膜品質への影響が大きく、品質の向上のみならず生産性の向上にも重要な課題であり、これまでも多くの改善提案がなされてきている。一般に粉体の供給用として用いられるポンプは圧縮エアの流動に伴う負圧を利用して吸引し圧縮エアと共に送り出すインジェクタ方式のポンプあるいは螺旋空間容積の移動によるスクリューフィーダ方式や往復ピストンによるシリンダ方式の容積型ポンプ等が用いられている。
【0006】
定量供給のためにはポンプからの吐出量が正確に制御されることが重要であるが、インジェクタ方式の場合、供給量は吸引力を生み出す圧縮エアの圧力によって左右される他、供給路の抵抗等に左右され定量を安定供給することが難しく、定量供給には流量計による測定とその結果をフィードバックして前記圧縮エアを調節したり調整バルブを使用するなどの複雑な制御が必要とされている。
【0007】
これに対しシリンダ方式等の容積型のポンプは、定量性から見るとインジェクタ方式に比べ優れており、安定した供給ができる特徴があるが、粉体の搬送には圧縮エアが必要であり、スプレーガンからの噴霧条件によって実質的な粉体噴霧量が変動するため、定量供給を必要とする場合には、前記と同様に流量測定による確認と制御が求められる。
【0008】
定量供給を保証するための流量測定手段は、粉体の供給通路に沿って設けた一対の測定用電極間で静電容量を測定し流量を測定する静電容量式、もしくは流動化した粉体を計測用管路に導入して加速し、その管路の前後に発生する差圧を検出して流量を測定する差圧式等が知られている。
これらの技術は、特開平7−187387号公報、特開平10−96657号公報等に示されているが、いずれも粉体供給ポンプ部に一体的に設けられ、定量の粉体を供給する設備として提供されている。
【0009】
しかし粉体塗装にあっては、粉体スプレーガンの動作位置が一定でないケースが殆どであり、粉体を圧送する時の供給ホースは長さが変わり、また経路形状の変化により管内の流動が不規則になる等、供給装置の下流側に誤差要因があって、正確な粉体の流量管理が困難とされている。
【0010】
正確な粉体の流量管理は、現在の環境問題に対応する粉体塗装の拡大利用を図るにおいて、液体塗装に遅れている粉体塗装の高品質化、高機能化による高精度の塗装を管理する上で必要とされる。したがって粉体スプレーガンから吐出されるときの噴霧流量を正確に把握し、適正な流量管理をすることが求められてきている。
【0011】
また、粉体を搬送する場合、一般的にはエアを用いて流動状態を維持して搬送される。この搬送エアは同時に噴霧時にスプレーガンからの噴霧パターンの形成に使用され、噴霧時のパターンは被塗装物に対する適正な塗着を行うための大きな要素となって、塗着効率や仕上がりでの塗膜品質に大きく影響する。例えば搬送用のエアが多く、粉体スプレーガンから噴霧されるときに噴霧の速度が速くなれば、はね返りが多くなり噴霧流量が同じでも静電塗装における塗着効率が低下する等の問題点が発生する。

【特許文献1】特開平7−187387号公報
【特許文献2】特開平10−96657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
粉体塗装における粉体供給の定量安定性は重要な課題であり、塗装仕上げの品質向上だけでなく、塗装時の塗着効率や作業性にも影響し、省資源、環境の改善につながることになる。本発明は、定量安定供給を行うにあたって供給量の制御と、流量計による流量検出をフィードバックして流量管理する場合の精度を高め、粉体の安定定量供給により、噴霧のバラツキを改善し、ソフトで均一な噴霧状態を可能とする定量供給制御装置を得ることが課題である。

【課題を解決するための手段】
【0013】
制御装置からの出力信号に基づき、粉体塗料を圧縮エアと共に供給する供給ポンプによって、粉体を噴霧する粉体ガンに、供給ホースで粉体を定量供給する装置において、粉体ガンの粉体導入部もしくは一部に流量検出手段(流量計)を設け、該流量検出手段からの検出信号を受けて前記の制御装置により供給量を管理する。
またエアとともに噴霧される流動化された粉体の流速を検出する手段を、粉体スプレーガンの導入部もしくは一部に設け、その検出信号により噴霧流体速度を求め、制御装置において流速を管理する。

【発明の効果】
【0014】
本発明では粉体定量供給制御装置において、粉体スプレーガンの粉体導入部に粉体流量検出手段を配置したことにより、スプレーガンから噴霧される粉体流量を正確に検出し、その実質流量をもとに自動管理が可能となる。粉体供給ポンプから供給された粉体の実質供給量が、ポンプの下流側に設けられる供給ホースの長さや、スプレーガンの作動位置による変動要因を削減でき、正確な流量の自動管理が可能となる。
【0015】
またスプレーガンに噴霧流の流速を検出する手段を設け、検出値を制御装置に入力し、流速制御を管理することによってスプレーガンから噴霧される粉体の噴霧流速を適正に管理することができ、被塗装物に対する塗着条件を効率の良い範囲に維持して粉体塗料の有効使用と、粉体塗装の品質を向上させることができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に本発明の概要を示すように、本発明は粉体スプレーガン1、粉体供給ポンプ2、粉体塗装制御装置3からなり、粉体スプレーガン1には、噴霧する粉体の導入部に流量検出手段4が設けられ、構成上は粉体スプレーガン1に組み込まれても、着脱可能にしても良い。この流量検出手段4は、粉体の通過域の流路にセンサを設け、粉体の流通状態から流量を算出するもので、検出データが粉体塗装制御装置に組み込まれた演算手段11によって算出され、制御信号12もしくは表示信号13として出力される。
【0017】
粉体塗装制御装置3は、粉体スプレーガン1の操作により作動される高電圧の荷電のほか、粉体供給ポンプ2の供給作動制御、噴霧制御を行うための制御入力14が組み込まれた調整盤の機能を有している。粉体塗装制御装置3に設定した塗装条件によって、噴霧における荷電条件、噴霧量もしくは供給量、補助エアの調整等が設定され、ガン制御出力15及びポンプ制御出力12として粉体スプレーガン1もしくは制御機器22に出力される。
【0018】
粉体供給ポンプ2は供給槽21を備えたポンプで、仕様及び構造等は用途や目的によって選択され、特に限定されるものではないが、供給量や供給状態を管理できる自動制御が可能な機能を備えている必要がある。したがって粉体供給ポンプ2は、粉体塗料槽21から吸引もしくは送り込まれた粉体を吐出するポンプであり、前述のインジェクタ方式や容積型のポンプが用いられる。また吐出量が調整できる機能を有し、供給ホース5を介して粉体スプレーガン1に供給するために搬送エアを使用し、かつその搬送エアも調整できる制御機器22を備えている。
【0019】
これらの制御機器22は、粉体供給ポンプ2側によらず、粉体塗装制御装置3側に組み込まれ、その制御信号例えば制御エアが粉体供給ポンプ2側に供給されるように構成しても良い。
【0020】
噴霧時、粉体供給ポンプ2より供給ホース5を介して送られた粉体は、粉体スプレーガンの導入部に設けた流量検出手段4でその流量を検出され、粉体塗装制御装置3にフィードバックされる。粉体塗装制御装置3では、調整もしくは演算によって指示した値と比較し、必要に応じて補正した信号を出力して制御機器22を作動させ、適正値を維持する。
【0021】
流量検出手段4としての流量計は特に限定されるものではないが、粉体スプレーガンの導入部に検出用のセンサが設けられて、スプレーガンからの噴霧流量が実質的に測定できるものであれば良く、差圧もしくは静電容量等の測定値が粉体塗装制御装置に出力できることでよい。
【0022】
同様に粉体スプレーガン1からエアと共に噴霧される流動化粉体の流速を測定するセンサを粉体スプレーガン1の導入部もしくは一部に設け、構成上は粉体スプレーガン1に組み込まれても、着脱可能にしても良いがその信号を粉体塗装制御装置3に出力する。粉体塗装制御装置3では測定された流速を表示したり、測定値が適正か否かの判別及び制御機器に対して補正制御を行うように構成される。この場合の流速は、粉体スプレーガンの特定部分の流速を代表特性として設定し、適正な粉体塗装が行われた時の値と比較し、その範囲を予め実験もしくは経験値より設定しておくことで制御すればよく、例えばセンサ部の流速を把握しておけば、噴霧位置での流速値で表す必要は無い。
【0023】
通常静電塗装では被塗装物の塗着位置では流速が無く、静電気による吸引力で塗着されれば良いが、噴霧直後には被塗装物に向かわせる流速が必要であり、また被塗装物形状によっては粉体粒子の飛行力による凹部への入り込みが必要である等、噴霧には一定の適正流速が必要とされる。適正流速の調整はポンプの方式によっても異なるが、一般的な方法としては搬送エアもしくは補助エアを調整機器で制御して調整することができる。
【0024】
本発明における粉体の流量と流速は適正な噴霧条件をつくりだし、維持する上で互いに密接な関連があり、両方の制御を同時に管理することによって、さらに精度の高い粉体供給制御が可能となる。これらの制御は、粉体塗装制御装置に組み込まれた演算プログラムによって、入力された他の調整データに基づいて実施され、適正条件における管理が可能となる。

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の全体装置の概要を示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 粉体スプレーガン
2 供給ポンプ
3 粉体塗装制御装置
4 流量検出手段
5 供給ホース
21 供給槽
22 制御機器





【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体塗料を圧縮エアと共に供給し供給量が調整可能の供給ポンプと、前記粉体塗料を噴霧する粉体スプレーガンと、前記供給ポンプと粉体スプレーガンを結ぶ供給ホースを備え、前記供給ポンプの粉体供給量を制御する制御装置の信号により供給量を制御する粉体定量供給制御装置において、粉体スプレーガンの粉体導入部もしくは一部に流量検出手段を設け、該流量検出手段からの検出信号を前記制御装置にフィードバックして供給量を管理する粉体塗装用定量供給制御装置。
【請求項2】
粉体スプレーガンと、該粉体スプレーガンに粉体塗料を圧縮エアと共に供給し、粉体塗料と圧縮エア供給量がそれぞれ調整可能の供給ポンプと、これらの供給量を制御する制御装置を備え、前記粉体スプレーガンより噴霧される流速を検出する手段を粉体スプレーガンの導入部もしくは一部に設け、その検出信号により噴霧流体速度を求めて制御装置にフィードバックし、流速を管理する粉体塗装用定量供給制御装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−7596(P2007−7596A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193589(P2005−193589)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(390028495)アネスト岩田株式会社 (224)
【Fターム(参考)】