説明

粉体撹拌装置

【課題】粉体を均質に混合して高品質の混合物を得ることができ、作業性の向上及び撹拌コストの低減をも実現し得る粉体撹拌装置を提供する。
【解決手段】公転用モータ3と、公転用モータ3の出力により粉体容器4を公転軸11回りに公転させる公転機構10と、自転用モータ5と、公転する粉体容器4を自転用モータ5の出力により自転軸19回りに自転させる自転機構20と、粉体容器4の自転軸19の公転軸11に対する傾きθの調整を行う角度調整機構30を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の撹拌(粉体同士の擦れ合いによる研磨及び脱泡を含む)を行うのに用いられる粉体撹拌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記した粉体撹拌装置に類するものとしては、例えば、公転用駆動源と、この公転用駆動源の出力により鉛直方向の中心軸回りに回転する支持体と、この支持体に取付けられて中心軸回りに公転する被混練物を収容する容器と、自転用駆動源と、この自転用駆動源の出力により容器をその容器中心軸回りに自転させる自転機構を備えたものがあり、容器は、通常その容器中心軸を公転中心軸に対して傾斜させた状態で支持体に取り付けられる。
【0003】
この撹拌装置では、公転中心軸に対して傾斜させた状態の容器を公転させることで生じる遠心力により被混練物を容器の内壁に押し付け、さらに、容器を自転させることで容器内の被混練物を撹拌して混練するようになっている。
最近では、特許文献1に開示されているように、容器の自転速度を変えることで、混練及び脱泡の双方をいずれも良好に行えるようにした撹拌装置が開発されている。
【0004】
この撹拌装置では、容器の自転速度を変えることができるので、ある程度品質の高い混練物を得ることができるものの、被混練物が粉体である場合には、容器の自転速度を変えただけでは、粉体が均質に混ざり合わないことがある。そこで、この不均質化を避けるべく、撹拌する粉体の種類に応じて、容器の公転中心軸に対する傾き角度を適宜変更するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−271465公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記した従来の撹拌装置では、容器の公転中心軸に対する傾き角度を変更するに際して、容器を支持体から一旦取り外して、容器中心軸の公転中心軸に対する角度を適宜変更した後、再度支持体に取り付けるようになっているので、この作業が煩雑で且つ手間隙のかかるものとなっており、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、粉体を均質に混合して高品質の混合物を得ることができるのは勿論のこと、作業性の向上及び撹拌コストの低減をも実現することが可能な粉体撹拌装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、粉体(例えば粒子径0.5μmの粉体)を収容する粉体容器を中心軸回りに公転させつつ自転させて、該粉体容器内の粉体を撹拌する粉体撹拌装置であって、公転用駆動源と、この公転用駆動源の出力により前記粉体容器を中心軸回りに公転させる公転機構と、自転用駆動源と、前記中心軸回りに公転する前記粉体容器を前記自転用駆動源の出力により容器中心軸回りに自転させる自転機構と、前記粉体容器の容器中心軸の前記中心軸に対する角度の調整を行う角度調整機構を備えた構成としたことを特徴としており、この粉体撹拌装置の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る粉体撹拌装置では、前記粉体容器に対する給排気により粉体の搬入搬出を行う粉体搬送機構を備えた構成としている。
本発明に係る粉体撹拌装置において、公転用駆動源の出力により粉体容器を中心軸回りに公転させる公転機構には、ベルト及びプーリによるベルトドライブ方式を用いることができる。
【0009】
また、粉体容器を自転用駆動源の出力により容器中心軸回りに自転させる自転機構には、公転機構と同じくベルトドライブ方式を用いることができるが、容器をより高速で自転させて、容器内の粉体に1000G程度の加速度を生じさせるために、非接触伝達式のマグネットドライブ方式を採用することが望ましい。
本発明に係る粉体撹拌装置は、粉体の混ぜ合わせ処理に適用することができるほか、粉体同士を互いに擦れ合わせて研磨する処理や、粉体に他の粉体をコーティングする処理にも適用することができ、脱泡処理にも適用することが可能である。
【0010】
本発明に係る粉体撹拌装置では、公転中心軸に対して傾斜させた状態の粉体容器を公転させることで生じる遠心力により粉体を粉体容器の内壁に押し付け、さらに、粉体容器を自転させることで粉体容器内の粉体を撹拌して混合するようになっている。
ここで、混合物の不均質化を避けるべく、角度調整機構により粉体容器を動作させて、撹拌する粉体に最適な容器の傾きになるように、容器中心軸の中心軸に対する角度を調整すれば、粉体容器の公転中心軸に対する傾き角度の変更作業が完了することとなる。
【0011】
つまり、粉体容器を着脱する必要がない分だけ、粉体容器の傾き角度の変更作業が簡単なものとなり、これに伴って変更作業に要する時間も少なくて済むこととなる。
また、本発明に係る粉体撹拌装置において、粉体容器に給気したり粉体容器から排気したりする粉体搬送機構により、粉体容器に対する粉体の搬入搬出を行うようになせば、粉体の搬入搬出時間の短縮化が図られるうえ、粉体容器から粉体を余すところなく除去し得ることとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る粉体撹拌装置では、上記した構成としているので、粉体を均質に混合して高品質の混合物を得ることができるのは言うまでもなく、作業性の向上を実現することができると共に、撹拌コストの低減化をも実現することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
また、本発明の請求項2に係る粉体撹拌装置では、上記した構成としているので、請求項1に係る粉体撹拌装置と同様の効果が得られるのに加えて、さらなる撹拌コストの低減化を実現できると共に、粉体容器から粉体を確実に除去することができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る粉体撹拌装置を示す正面説明図である。
【図2】図1に示した粉体撹拌装置のA−A線に基づく断面説明図である。
【図3】図1に示した粉体撹拌装置のB−B線に基づく断面説明図である。
【図4】本発明に係る粉体撹拌装置の他の実施形態を示す部分正面説明図である。
【図5】図4に示した粉体撹拌装置の粉体搬送機構の配管説明図(a),(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る粉体撹拌装置を図面に基づいて説明する。
図1〜図3は、本発明に係る粉体撹拌装置の一実施形態を示している。
図1に示すように、この粉体撹拌装置1は、底板2aを有するベース2と、このベース2の底板2a上に固定された公転用駆動源としての公転用モータ3と、この公転用モータ3の出力により粉体Pを収容する円筒状の粉体容器4を公転させる公転機構10と、ベース2の底板2a上に固定された自転用駆動源としての自転用モータ5と、粉体容器4を自転用モータ5の出力により自転させる自転機構20を備えている。
【0015】
公転機構10は、図2にも示すように、ベース2の天板2bに固定された鉛直方向に沿う軸受部2cに回転自在に支持される中空状を成す公転軸(中心軸)11と、公転軸11の上端部に固定された横長の箱型フレーム12と、公転軸11を間にして対称配置された2個の容器ホルダ13,13を具備しており、公転用モータ3の出力軸3a及び公転軸11にそれぞれ取り付けたプーリ14,14間にベルト15を掛け渡すことで、公転用モータ3からの出力を公転軸11に伝達して、容器ホルダ13,13を公転軸11回りに公転させるようになっている。
【0016】
この場合、容器ホルダ13,13は、図3にも示すように、いずれも箱型フレーム12にホルダ支持体16を介して水平軸17回りに回転可能に支持されている。この容器ホルダ13は、粉体容器4を収容して固定する円筒状のホルダ本体18と、このホルダ本体18の下側に同軸に固定されて、ホルダ支持体16に設けた軸受部16aに回転自在に支持される自転軸(容器中心軸)19を有している。
【0017】
一方、自転機構20は、中空軸である公転軸11の中心に配置されてこの公転軸11に回転自在に支持された自転出力伝達軸21と、この自転出力伝達軸21の上端部に固定された駆動側マグネットホイール22と、容器ホルダ13のホルダ本体18の下部周囲に配置された動作側グネットホイール23を具備している。
この自転機構20では、自転用モータ5の出力軸5a及び自転出力伝達軸21にそれぞれ取り付けたプーリ24,24間にベルト25を掛け渡すことで、自転用モータ5からの出力を自転出力伝達軸21に伝達し、この自転出力伝達軸21とともに回転する駆動側マグネットホイール22の回転トルクを動作側グネットホイール23に非接触で伝達することにより、容器ホルダ13及び粉体容器4を自転軸19回りに自転させるようになっている。
【0018】
また、この粉体撹拌装置1は、粉体容器4を支持する容器ホルダ13の自転軸19の公転軸11に対する角度の調整を行う角度調整機構30を備えている。
この角度調整機構30は、箱型フレーム12内の両ホルダ支持体16,16間で且つ公転軸11とはずれた部位に位置する操作ねじ31と、この操作ねじ31のねじ部31aに螺合したスライダ32を有しており、この実施例では、公転軸11を間にして操作ねじ31の反対側にも、ねじ部33aにスライダ32を螺合したガイドねじ33が平行に配置されている。そして、両ねじ31,33の箱型フレーム12から下方に突出する各ねじ部31a,33aの先端に、スプロケット34,34をそれぞれ取り付けると共に、これらのスプロケット34,34間に、チェーン35を掛け渡すことで、操作ねじ31の回転操作により、スライダ32,32を箱型フレーム12内でシンクロさせて上下動させるようにしている。
【0019】
これらのスライダ32,32には、ピン36,36がそれぞれ設けてあり、両ホルダ支持体16,16の互いに向き合う側にそれぞれ形成された連結用フォーク部37,37をピン36,36にそれぞれ摺動自在に係合させることで、操作ねじ31の回転操作によるスライダ32,32の上下動によって、両ホルダ支持体16,16を水平軸17回りで且つ互いに反する方向に回動させることができるようになっている。すなわち、操作ねじ31の回転操作により、粉体容器4を固定した容器ホルダ13,13の公転軸11に対する各傾きθを適宜変更することができるようになっている。
【0020】
この粉体撹拌装置1において、2個の容器ホルダ13,13の公転軸11に対する各傾きθは、通常約30°に設定される。
このように設定された粉体撹拌装置1では、まず、撹拌する粉体Pを収容した粉体容器4,4を容器ホルダ13,13の各ホルダ本体18,18にそれぞれ収容して固定する。
続いて、公転用モータ3及び自転用モータ5をそれぞれ作動させて、公転機構10及び自転機構20により、容器ホルダ13,13とともに粉体容器4,4を公転軸11回りに公転させつつ自転軸19回りに自転させると、粉体容器4が公転することで生じる遠心力により粉体Pは粉体容器4の内壁に押し付けられ、さらに、粉体容器4が自転することで粉体Pがより撹拌されて良好に混合することとなる。
【0021】
ここで、粉体Pが均質に混合しない場合や、違う種類の粉体Pの撹拌を行う場合には、角度調整機構30の操作ねじ31の回転操作により、容器ホルダ13,13を支持するホルダ支持体16,16を水平軸17回りで且つ互いに反する方向に回動させて、容器ホルダ13の傾きθが撹拌する粉体Pに最適となるように、自転軸19の公転軸11に対する角度を調整すれば、粉体容器4の公転軸11に対する傾きθの変更作業が完了することとなる。
【0022】
つまり、粉体容器4を容器ホルダ13から取り外したり、ホルダ支持体16に対する容器ホルダ13の着脱を行ったりする必要がない分だけ、粉体容器4の傾きθの変更作業が簡単なものとなり、これに伴って変更作業に要する時間も少なくて済むこととなる。
図4及び図5は、本発明に係る粉体撹拌装置の他の実施形態を示している。
図4に部分的に示すように、この粉体撹拌装置51は、粉体搬送機構60を備えた構成としており、他の構成は先の実施例における粉体撹拌装置1と同じである。
【0023】
この粉体撹拌装置51の粉体搬送機構60は、自転機構20の自転出力伝達軸21の中心に形成した給排気孔61と、自転出力伝達軸21の上下端にそれぞれ配置されて給排気孔61と接続する複式の軸用ロータリージョイント62,63と、粉体容器4の蓋4aの中心に配置されて粉体容器4の内部と接続する複式の容器用ロータリージョイント64を具備している。
【0024】
自転出力伝達軸21の上端側の軸用ロータリージョイント62は、ホース65を介して容器用ロータリージョイント64と接続しており、一方、自転出力伝達軸21の下端側の軸用ロータリージョイント63は、図5に示すように、ポンプ66に接続していて、この粉体搬送機構60は、ポンプ66を作動させて粉体容器4に対する給排気を行うことにより、粉体容器4に対する粉体Pの搬入搬出を行うようになっている。
【0025】
なお、図5における符号67は給排気切換バルブ、符号68は一方向弁であり、粉体容器4からの排気時に閉動作し、粉体容器4への給気時に開動作する。また、符号69は混合気用バルブありで、粉体容器4内雰囲気を変える場合に、必要に応じて給気時に開動作する。
このような粉体撹拌装置51では、粉体搬送機構60のポンプ66を作動させて粉体容器4から直接排気することで、粉体容器4から粉体Pの搬出を行うようになせば、粉体Pの搬出時間の短縮化が図られるうえ、粉体容器4から粉体Pを余すところなく除去し得ることとなる。
【0026】
一方、粉体搬送機構60のポンプ66を作動させて粉体容器4に直接給気することで、粉体容器4に対する粉体Pの搬入を行うようになせば、やはり粉体Pの搬入時間の短縮化が図られ、加えて、混合気用バルブ69を利用することで、必要に応じて粉体容器4内雰囲気を変化させ得ることとなる。
上記した実施例では、公転用モータ3の出力により粉体容器4を公転軸11回りに公転させる公転機構10として、プーリ14及びベルト15によるベルトドライブ方式を用いたが、これに限定されるものではない。
【0027】
また、上記した実施例では、自転機構20として、駆動側マグネットホイール22及び動作側グネットホイール23を具備した非接触伝達式のマグネットドライブ方式を採用したが、これに限定されるものではなく、公転機構10と同じくベルトドライブ方式を用いることができる。
さらに、上記した実施例では、本発明に係る粉体撹拌装置を粉体Pの混ぜ合わせ処理に適用した場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、粉体P同士を互いに擦れ合わせて研磨する処理や、粉体Pに他の粉体をコーティングする処理にも適用することができるほか、脱泡処理にも適用することが可能である。
【0028】
本発明に係る粉体撹拌装置の構成は、上記した実施例による粉体撹拌装置1,51の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0029】
1,51 粉体撹拌装置
3 公転用モータ(公転用駆動源)
4 粉体容器
5 自転用モータ(自転用駆動源)
10 公転機構
11 公転軸(中心軸;公転機構)
12 箱型フレーム(公転機構)
13 容器ホルダ(公転機構)
19 自転軸(容器中心軸)
20 自転機構
21 自転出力伝達軸(自転機構)
22 駆動側マグネットホイール(自転機構)
23 動作側グネットホイール(自転機構)
30 角度調整機構
31 操作ねじ(角度調整機構)
32 スライダ(角度調整機構)
33 ガイドねじ(角度調整機構)
36 ピン(角度調整機構)
37 連結用フォーク部(角度調整機構)
60 粉体搬送機構
61 給排気孔
62,63軸用ロータリージョイント
64 容器用ロータリージョイント
66 ポンプ
P 粉体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を収容する粉体容器を中心軸回りに公転させつつ自転させて、該粉体容器内の粉体を撹拌する粉体撹拌装置であって、
公転用駆動源と、
この公転用駆動源の出力により前記粉体容器を中心軸回りに公転させる公転機構と、
自転用駆動源と、
前記中心軸回りに公転する前記粉体容器を前記自転用駆動源の出力により容器中心軸回りに自転させる自転機構と、
前記粉体容器の容器中心軸の前記中心軸に対する角度の調整を行う角度調整機構を備えた
ことを特徴とする粉体撹拌装置。
【請求項2】
前記粉体容器に対する給排気により粉体の搬入搬出を行う粉体搬送機構を備えた請求項1に記載の粉体撹拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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