説明

粉体流動装置

【課題】 従来型静止流動層で粉末油脂等の凝集性の強い粉体のチャンネリング形成を阻害し、良好な流動状態を可能にする安価な粉体流動装置を提供する。
【解決手段】 密封したハウジング2の中間部に多孔板3を張設し、該多孔板3の下方の前記ハウジング2内のエアー室4bに気体を吹き込むと共に前記多孔板3の上方の前記ハウジング2内の粉体流動室4a内を粉体が流動する方式の粉体流動装置1において、前記エアー室4bに圧縮空気の圧力をパルス状に附加するエアーパルス発生装置7を設けて、発生させたエアーパルスにより前記多孔板3が垂直方向に振動を生ずるように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、化学品、薬品の噴霧乾燥品や加湿造粒品で凝集性の強い粉体を流動乾燥/冷却するのに好適な粉体流動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
凝集性の強い粉体の乾燥/冷却に用いられる従来の流動乾燥/冷却装置として振動モーターや電磁バイブレータで流動層本体を振動させて多孔板上の粉体のチャネリング(粉体層に蜂の巣状の空気穴が生じて流動しない状態)を防ぐ方式が一般的である。
パルス発生装置としては密閉トラフの上流側に、その上壁部に近接して配設した少なくとも一つのホッパと、前記密閉トラフ内でその上流側に形成される常圧空間と、前記密閉トラフ内の下流側に形成される粉体の貯留空間と、前記常圧空間と前記貯留空間との間に設けた遮断バルブと、前記貯留空間の排出口に接続された粉体の輸送チューブと、該チューブの前記排出口近辺にエアパルスを送るためのエアパルス発生装置とを備えた装置の例がある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平7−2356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この従来の流動乾燥/冷却装置によれば、下部空気室と上部流動室が多孔板で仕切られた流動層本体を加振機により加振し、粉体のチャネリング形成を阻害して流動させる方式であるため、流動層を破損させない剛性を持たせるため鋼材板厚や補強材とバランサー荷重などで静止流動層の数倍の重量となり、強度計算やバランス設計が難しく、経験豊富な専門メーカーでないと製作できないため装置価格も高価である。
装置重量が重く、防振装置を付加しても振動が建物に伝わるため、上階層に設置する場合の建物補強にも留意が必要とされる。
【0004】
本発明はこれらの問題点を解消し、凝集性の粉体であっても従来型静止流動層に組み込むことによりチャネリング形成を阻害して良好な流動乾燥/冷却を可能にする簡便且つ安価な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の目的を達成すべく、密封したハウジングの中間部に多孔板を張設し、該ハウジング内を該多孔板により仕切って該多孔板の上方を粉体流動室に形成すると共に該多孔板の下方をエアー室に形成し、該エアー室に圧縮エアーの圧力をパルス状に附加するエアーパルス発生手段を設けて、発生させたエアーパルスにより前記多孔板が、略垂直方向に振動を生ずるように形成した。
【発明の効果】
【0006】
本発明の効果として、装置に大掛りな防振構造を必要とせずに簡単な構造で凝集性の粉体であっても確実に流動が可能となり、安価で、耐久性のある粉体流動装置を提供できる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を実施するための最良の形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0008】
本発明の粉体流動装置の実施例を図面によって説明する。図1は本発明を適用した粉体流動装置1の縦断面図である。
【0009】
2は該粉体流動装置1のハウジングを示し、該ハウジング2は水平方向に横長の密封容器で上半部2aの容器部分と下半部2bの容器部分の組み合せからなり、該上半部2aの下端開口の周縁部と該下半部2bの上端開口の周縁部とが略長方形状の多孔板3の周縁部を介して結着している。
【0010】
そして、前記上半部2a内部で該多孔板3の上面の上方に粉体流動室4aが形成されていると共に前記下半部2bの内部で該多孔板3の下面の下方にエアー室4bが形成されている。
【0011】
5aは前記上半部2aの一端部の上面に設けた粉体の流入口、6bは該上半部2aの他端部の上面に設けたエアー排出口、6aは前記下半部2bの一端部に設けた冷却エアー供給口、5bは該上半部2aの他端部の下面に設けた粉体の流出口、7aは前記下半部2bの側壁に形成したエアーパルス吐出口を示し、該エアーパルス吐出口7aには図2に示す如くエアーパルス発生手段であるエアーパルス発生装置7の吐出管7bが接続している。
【0012】
該吐出管7bは円筒状で、一端部を末広がりのラッパ管状にして前記エアーパルス吐出口7aに接続すると共に、他端部は開閉弁7cを介して圧縮エアー室7d内に開口している。
【0013】
前記エアーパルス発生装置7の図2におけるY−Y線截断面図を図3に示した。
【0014】
前記開閉弁7cは、扇状の開口部8a1を有する回転円板体8a(図4)と、同じく扇状の開口部8b1を有する静止円板体8b(図5)とを同芯状に重ね合わせて形成されており、該静止円板体8bが前記吐出管7bの他端部に嵌入して固定されている。
【0015】
又、前記回転円板体8aは、前記圧縮エアー室7dの外部に設置された可変速モータ7eによって回転駆動される構造となっている。
【0016】
9は前記圧縮エアー室7dへ圧縮エアーを供給するための圧縮エアー供給管路で、該圧縮エアー供給管路9は途中に絞り部9aとディフューザ部9bとからなる圧力緩衝手段を介在させている。
【0017】
10はスプレードライヤーで、高温雰囲気を擁するホッパー10a内に処理液を噴射するノズル10bを有している。11は該ホッパー10aの流入口から前記流入口5aに接続する接続管を示す。
【0018】
次に前記多孔板3について図6及び図7により説明する。
【0019】
図6は多孔板3を下面側より見た一部平面図、図7はそのZ−Z線截断面図である。
【0020】
多孔板3の孔は、流入口5aから流出口5bに向かう粉体の流れ方向に対して直角に多数のスリットを該多孔板3に設けると共に、各スリットの片側を該多孔板3の下面に向けて膨出させて形成したルーバー即ち庇(ひさし)を有する細孔3a、3bからなる。
【0021】
これら細孔3a、3bは、粉体の流れ方向に対して逆向きとなる流入口5a向きの細孔3aと、粉体の流れ方向と同じ向きとなる流出口5b向きの細孔3bとが向かい合って前記多孔板3に配置されており、又、前記入口5a向きの細孔3aの面積が、前記流出口5b向きの細孔3bの面積よりも少許小となるように形成されている。
【0022】
尚、前記ハウジング2における前記多孔板3の取付けレベルは、前記流入口5a側から前記流出口5bにかけて低くなるように傾斜して取り付けられている。
【0023】
次に本実施例の粉体流動冷却装置1の作用等について説明する。
【0024】
乳化油脂液aはスプレードライヤー2のノズル10bよりホッパー10a内に噴射され、ホッパー10a内に流入する高温エアーに触れて瞬間的に乾燥されて粉体となり、接続管11を経て流入口5aより粉体流動室4a内に流入する。
【0025】
又圧力pの冷却エアーCが冷却エアー供給口6aを通ってエアー室4bへ送られ、更に該冷却エアーCは多孔板3の多数の細孔3a、3bを通って上方の粉体流動室4a内へ流入し、前記高温の油脂粉末を冷却する。
【0026】
ここで、流出口向きの細孔3bの面積を、流入口向きの細孔3aの面積よりも大に形成したので、前記冷却エアーCによって粉体が流出口側へ送られる効果(風力効果)が働く。
【0027】
尚、前記細孔3a、3bは、粉体が前記ハウジング2を通過して冷却される時間が最適となるように該細孔3a、3bの隙間を調節して、両者に最適の面積差を与えるようにしている。
【0028】
又、多孔板3を流入口側から流出口側にかけて低くなるように傾斜してケーシング2に取付けたのも、粉体が流出口側に向かって流れ易くなるようにしたものである。
【0029】
かくて低温となった油脂粉末bは上半部2aの流出口5bから回収されることとなる。
【0030】
この間、油脂粉末bに前記粉体流動室4a内でチャンネリング即ち粉体層に蜂の巣状の風穴ができて流動しなくなった状態が生ずるのを防止するため、前記多孔板3に垂直方向に振動を生じさせている。
【0031】
即ち、エアーパルス発生装置7の開閉弁7cの回転円板体8aを回転させて吐出管7b内に周期的な圧縮エアーのパルスを生じさせ、このエアーパルスを前記エアー室4b内に導入する。
【0032】
即ち、前記エアー室4b内の圧力Pは、図8のグラフに示す如く、冷却エアーCの圧力pにエアーパルスの圧力が上乗せされたものとなる。
【0033】
尚、図8における横軸Tは時間を示す。
【0034】
このように周期的に変動する圧力を下方から受けて、前記多孔板3は少許盛り上ったように変形して垂直方向に振動する。
【0035】
このエアーパルスの周期を、多孔板3の振動の固有振動数に近付けることにより、多孔板3の振動を大きくすることができる。
【0036】
一般に、板厚2hメートル、隣辺の長さaメートル及びbメートルの周辺固定の長方形板の横振動の固有振動数fヘルツは数式(1)の如くなる。

…(1)
【0037】
但しλはa/bおよび振動モードによって定まる無次元の係数、Eは長方形板の材料の縦弾性率(N/m)、νは前記材料のポアソン比、又、ρは前記材料の密度である。
【0038】
しかし、数式(1)は孔を有しない均一の長方形板に対するものであり、多数の細孔を有する多孔板3に対して振動の固有振動数を算出することはむずかしい。
【0039】
このため、本発明では多孔板3を粉体流動装置1に装着した状態で、図2に示す可変速モータ7eの回転速度を逐次変えて吐出管7bが送出するエアーパルスの周期を変化させ、該エアーパルスの周期が前記多孔板3の振動の固有振動数に同調する点を探すようにしている。
【0040】
尚、エアーパルスの圧力波の高さを決定する圧縮エアー室7dへは、図示していない多段ブロワーやコンプレッサー等の高圧空気源より圧縮エアー供給管路9を経由して圧縮エアーが供給されており、該圧縮エアー供給管路9の途中に絞り部9aとディフューザ部9bとからなる圧力緩衝手段を介在させて、相互の圧力変動がお互いに悪影響を及ぼさないように形成している。
【0041】
又、前記吐出管7bの吐出側を末広がりのラッパ管状にしたことにより、エアーパルスの圧力波の増幅効果や、波形が安定化する効果が得られている。
【0042】
しかも本発明の粉体流動装置1は、流動層躯体であるハウジング2には上下の振動を生じないため静止流動層の設計が可能であるとともに、設置建屋も耐震設計を必要としないので装置と建屋コストの低減効果を有している。
【0043】
尚、本実施例では、本発明をスプレードライヤーに組み込まれる冷却機として使用した例を示したが、本発明は種々の粉体の流動乾燥/冷却手段に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は油脂粉末製造装置など、凝集性の強い粉体の流動2次乾燥/冷却装置等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例1の粉体流動装置の縦断面図である。
【図2】図1におけるX−X線截断面図である。
【図3】図2におけるY−Y線截断面図である。
【図4】エアーパルス発生装置の開閉弁の回転円板体の平面図である。
【図5】該開閉弁の静止円板体の平面図である。
【図6】多孔板の一部平面図である。
【図7】図6におけるZ−Z線截断面図である。
【図8】多孔板の下方のエアー室内の圧力変化を説明するグラフである。
【符号の説明】
【0046】
1 粉体流動装置
2 ハウジング
3 多孔板
3a、3b ルーバー(細孔)
4a 粉体流動室
4b エアー室
7 エアーパルス発生手段
7a エアーパルス吐出口
7b 吐出管
7c 開閉弁
7d 圧縮エアー室
8a 回転円板
8a1 開口部
8b 静止円板
8b1 開口部
9 エアー供給管路
9a 絞り部
9b ディフューザ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封したハウジングの中間部に多孔板を張設し、該ハウジング内を該多孔板により仕切って該多孔板の上方を粉体流動室に形成すると共に該多孔板の下方をエアー室に形成し、該エアー室に圧縮エアーの圧力をパルス状に附加するエアーパルス発生手段を設けて、発生させたエアーパルスにより前記多孔板が、略垂直方向に振動を生ずるように形成したことを特徴とする粉体流動装置。
【請求項2】
前記エアーパルス発生手段のパルス周期を調節可能とすることにより前記多孔板の振動の固有振動数に前記パルス周期を同調させることを可能に形成したことを特徴とする請求項1に記載の粉体流動装置。
【請求項3】
前記エアーパルス発生手段は、管路の一端部にエアーパルスの吐出口を有し、該管路の他端部には開閉弁を具備すると共に該他端部を圧縮エアー室内に開口して、該開閉弁の周期的な開閉によりエアーパルスを発生するようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粉体流動装置。
【請求項4】
前記開閉弁は、扇状の開口部を有して回転する回転円板体と、扇状の開口部を有して静止する静止円板体とを同芯状に重ね合わせると共に、該回転円板体の回転速度を可変に形成してなる回転式開閉弁であることを特徴とする請求項3に記載の粉体流動装置。
【請求項5】
圧縮エアー源から前記圧縮エアー室へ圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給管路を設けると共に、該圧縮エアー供給管路の途中に絞り部とディフューザ部とからなる圧力緩衝手段を介在させたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の粉体流動装置。
【請求項6】
前記多孔板の孔は、粉体の流れ方向に対して直角に多孔板に設けたスリットの片側を該多孔板の下面に向かって膨出させて形成したルーバーからなり、これらルーバーは粉体の流れ方向に対して逆向きとなる粉体の流入口向きと、粉体の流れ方向と同じ向きとなる粉体の流出口向きとを交互に前記多孔板に配置すると共に、前記流出口向きのルーバーの開口面積を前記流入口向きのルーバーの開口面積よりも少許大となるように形成したことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の粉体流動装置。
【請求項7】
前記ハウジングにおける前記多孔板の取付けレベルは、粉体の流入口側から粉体の流出口側にかけて低くなるように傾斜して取付けられていることを特徴とする請求項1又は請求項6に記載の粉体流動装置。















【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate