説明

粉末を付着させた油脂加工品およびその製造法

【目的】表面に粉末が付着した油脂加工品において、粉末と油脂加工品がどのような組み合わせでも見た目良く、一定の厚さでソフトな食感を持った粉末を付着した油脂加工品を得る。
【構成】付着させようとする粉末を揮発性溶媒に懸濁した溶液中に油脂加工品を浸漬させ、その後、揮発性溶媒を気散させることにより、油脂加工品の表面を粉末で覆いつくし、しかも均一に付着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂加工品に粉末を均一に付着させる製造法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
チョコレートのような油脂加工品にココアパウダーや粉糖などを表面に粉がけした製品は多く存在する。特に、生チョコレートや、ココアバターより低融点成分を多く含む油脂を用いた口溶けの良いチョコレート製品は、見栄えや嗜好性を改良するため粉末をかけた製品が多い。従来より、それら製法は、油脂加工品を製造し冷却固化した後に、粉末の上を転がして圧着させる方法や、回転パンの中で油脂加工品と粉末とを混在させ回転させて圧着させる方法が一般的である。しかし、圧着させるだけでは、物理的な衝撃や振動により油脂加工品から容易に粉末が剥がれてしまい、油脂加工品の表面が見え、見た目が悪く、嗜好性の低下が起こってしまう。圧着を強固にすれば粉末の剥がれを防止できるが、表面が凸凹でてかりが生じ、粉末が潰れて固結し、粉がけの価値を著しく損なう。
【0003】
そこで、それを解決するために油脂加工品の表面に噴霧もしくは結露により水分を付着させて粉末を固着させる方法がある。
しかし、油脂加工品の表面に水分を完全に均一に付着させることは困難であり、粉末を完全に均一に付着させることはできなかった。
【特許文献1】特開平10−117690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、チョコレート等の嗜好性食品は複数の風味を組み合わせたものが多くなり、油脂加工品の風味および色調と粉体の風味及び色調の異なる嗜好性食品が待ち望まれていた。
【0005】
例えば、抹茶風味の濃緑色のチョコレートにココアパウダーを付着させたものは、見た目のコントラストと風味の相性が非常によく、嗜好性が高い。しかし、粉末を完全に均一に付着させることができないため、油脂加工品の表面を粉末で均一に覆い尽くすことができず、いわゆる粉末がまだらであると見た目が汚く、嗜好性が低下する。よって、ミルクチョコレートにココアパウダーのような同系色の組み合わせしか見た目の良いものができなかった。
【0006】
油脂加工品の風味および色調と粉体の風味及び色調の異なる嗜好品をつくるには、表面に付着した粉体が物理的な衝撃・振動で剥がれ落ちたりせず、粉雪が降り積もったようなソフトな性状を持ったまま粉体を完全に均一に油脂加工品の表面に付着させることが必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は鋭意検討した結果、微粉末を懸濁した揮発性溶液を油脂加工品に付着させた後、揮発性溶媒を気散させることにより、粉末のみを油脂加工品に付着させる方法で上記課題を解決し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0008】
本発明で言う油脂加工品とは、ココアバター、ココアバター代用脂(テンパー型およびノーテンパー型)、ココアバター分別脂等の油脂に、カカオマス、糖類、糖アルコール、オリゴ糖類、多糖類、粉乳、粉末卵、穀粉、ココアパウダー、乾燥果実、ナッツ、パフ、乳化剤、香料等を分散させたものである。詳しくは、スィートチョコレート、ミルクチョコレート及びホワイトチョコレート、常温で固化しているココアクリーム、ホワイトクリーム、果肉ペーストなどが挙げられる。
【0009】
本発明に使用する揮発性溶液の溶媒の選択は非常に重要であった。すなわち、食品または食品添加物として使用でき、揮発性のある性質を持つ液体であり、油脂加工品に揮発性溶液を付着させた後、ほぼ完全に蒸散して油脂加工品に残存することが無いようにする必要があった。また、油脂加工品の油脂を溶解してしまうような親油性の大きな性質を持つものや、表面張力が大きく、油脂加工品の表面で弾いてしまう性質のものは適していなかった。
【0010】
それらのことから、エタノール等の低級アルコールやアセトン、蟻酸、酢酸等の低分子有機酸などが適当であった。
【0011】
その中でもエタノールは、常温で激しく揮発する性質を持ち、油脂加工品に付着させたとき、油脂が溶解せず、表面張力が小さく油脂加工品の表面に均一に付着するため最も適している。また、食品添加物として認可されており、気散時間が不十分で残存したとしても安全である。アセトンも同様な性質を有しており適しているが、エタノールと比較して親油性が高い性質から、油脂の溶解を起こしたため濃度を下げる必要があった。
【0012】
また、Aw値が比較的高い原材料に油脂加工した食品に用いる場合は、エタノールを完全に気散させずに密封することにより、保存性向上に役立てることも可能である。
【0013】
本発明の揮発性溶液の溶媒としてのエタノールは、市販されている濃度99%や95%エタノールを使用しても良いが、水、酒、果汁、香料、低分子有機酸など他の液体と混合して用いても良い。ただし、上記に示した本発明において非常に適したエタノールの性質を著しく損ねないためにエタノール成分として60%以上の濃度にすることが好ましい。エタノール濃度の下限は、懸濁する粉末や混合する液体の性質により変化するため、60%より高い濃度が必要な場合もある。
【0014】
エタノールと混合する水とは、水道水、天然水、蒸留水、井戸水、ミネラルウォーターなどが含まれる。混合する酒は、ビール、発泡酒、日本酒、ワインなどの醸造酒や、焼酎、ウィスキー、ブランディなどの蒸留酒があり、アルコール度数は任意でよい。アルコール度数の高い酒は、エタノールを添加しないもしくはエタノールを少量添加すれば、エタノール濃度が60%を超えることがある。
【0015】
混合する香料は、食品添加物に適合した液体で呈味を損なうことがなく、揮発性溶媒の揮発性を阻害しないものであれば何でも良い。香料の中にはエタノールを成分として多く含むものがある。そのような香料は、エタノールを添加しないもしくはエタノールを少量添加すれば、エタノール濃度60%を超えることがある。
【0016】
本発明に使用する粉末は、粒度が1μm〜1.0mmの固形物であり、必ずしも粒形や粒度が揃っている必要は無い。また、その粉末は単品でも多種の粉末を混合した品でもよい。しかし、その粉末には、粒度100μm以下の粉末が50%以上存在することが望ましい。それより少ないと、揮発性溶液に懸濁したとき急速に沈殿してしまい、粉末を均一に分散した状態を保つことが困難になることがあり、その場合は、油脂加工品の表面に付着したときに不均一で、物理的な衝撃で剥がれや変形を生じた。
【0017】
油脂加工品から剥がれにくく、より均一に粉末を付着するためには、粒度をさらに20μ程度以下に揃えた粉末を用いたほうが良かった。
【0018】
食品を粉末化した粒度100μm以下の微粉末として、ココアパウダー、抹茶、コーヒー、粉チーズ、粉乳、粉糖、単糖類、オリゴ糖類、デキストリン、多糖類、果実および野菜凍結乾燥粉末、果実および野菜熱風乾燥粉末などを付着させてもよい。また、粒度100μm以下の微粉末化した食品添加物として二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、粉末香料、粉末色素、粉末乳化剤、高甘味度甘味料、茶抽出物などが付着させてもよい。これらの微粉末は単品もしくは混合して用いることができる。
【0019】
上記の微粉末の中で、ココアパウダー、抹茶、コーヒー、粉チーズ、粉乳、粉糖、果実及び野菜乾燥粉末は、それら粉末のみで風味があり、単品でも油脂加工品に付着して使用できるものである。
【0020】
ここでいう粉乳とは、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、クリームチーズパウダー、ホエイパウダー、濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調整粉乳、はっ酵乳パウダー、練乳パウダーの単品もしくは混合品である。
【0021】
その中でもココアパウダー、抹茶、粉糖は、油脂加工品との相性が良く、粉末を付着させることにより嗜好性が著しく良くなる微粉末であった。
【0022】
単糖類、オリゴ糖類、デキストリン、多糖類、穀粉、二酸化ケイ素、炭酸カルシウムの微粉末を用いれば、微粉末化が困難なもの、または微粉末にすることにより嗜好性が低下するため微粉末化したくないものと混合して揮発性溶液に懸濁することにより、微粉末でないものを油脂加工品の表面に付着させることができる。
【0023】
デキストリン、二酸化ケイ素、炭酸カルシウムは、粉末の色調調整、風味調整、分散性を改良する目的として使用できる。
【0024】
微粉末化が困難なものや微粉末化することにより嗜好性が低下するものとして金粉、銀粉、黒糖、果実および野菜乾燥顆粒などが挙げられる。
【0025】
揮発性溶液は、粉末を揮発性のある溶媒に懸濁したものである。粉末が揮発性溶媒に溶解しないことが好ましい。溶解してしまうと、揮発性が妨げられ気散するのにかかる時間が非常に長くなるか、もしくはほぼ完全に気散させることができなくなった。また、本発明の目的である粉雪が降り積もったようなソフトな性状を持ったままの粉体を油脂加工品に付着させることが困難になった。
【0026】
この懸濁した溶液の濃度を変えることにより、油脂加工品に付着させる粉末の量を調節することも可能である。懸濁した溶液の濃度を高くすると粉体の付着量は多くなり、懸濁した溶液の濃度を低くすると粉体の付着量は少なくなった。
【0027】
揮発性溶液の濃度は、粉末:揮発性溶媒重量比が10:90より粉末比を大きくすることが好ましい。これより粉末含量が少ないと油脂加工品に付着する粉末が少なすぎるため、油脂加工品の表面がまだらに剥き出しになってしまう。よって、粉体を完全に均一に油脂加工品の表面に付着させるのが困難となった。
【0028】
また、揮発性溶液の濃度は、粉末:揮発性溶媒重量比が60:40より粉末比を少なくすることが好ましい。これより粉末含量が多いと、溶液の粘度が高くなり付着量が多くなりすぎるため、物理的な衝撃や振動により油脂加工品から容易に粉体が剥がれるようになった。また、粉末の種類によっては、懸濁する粉末量が多すぎるため流動性を失い、油脂加工品に付けることが困難となった。
【0029】
油脂加工品に揮発性溶液を付ける方法は、揮発性溶液を油脂加工品に噴霧したり、滴下して付けることも可能であるが、揮発性溶液の入った容器に油脂加工品を浸漬させて引き上げるのが好ましい。浸漬時間は問わないので浸漬した後、瞬時に引き上げても構わないが、通常は1秒から20秒程度浸漬しておけばよい。
【0030】
引き上げるときは、一定の速度で行なうのが望ましい。速度が変化すると揮発性溶液の付着量が変化し、均一に粉末を付着することが難しくなる。引き上げるときの速さは、速くても遅くても良いが付着量に影響を与える。逆にグラデーションをつけるなど付着量を変化させたい場合は、引き上げる速度を任意に変えることもできる。
【0031】
油脂加工品を浸漬して引き上げるときに揮発性溶液は、懸濁している粉体を溶液中で均一にしておく必要がある。懸濁している粉体が溶液中で不均一であると均一に粉末を付着できない。均一にするためには、揮発性溶液を撹拌しておくか、撹拌した後に速やかに油脂加工品を浸漬して引き上げることが好ましい。
【0032】
粉体を付着させる油脂加工品の形状は制限するものではない。しかし、窪んでいる部位があるものは、そこに粉末を懸濁した揮発性溶液が溜まり易く、その部位だけ揮発性溶媒の気散時間が長くなり、粉末の付着量が多くなることがある。
【0033】
粉体を付着させる油脂加工品は、完全に固まっているか、もしくは揮発性溶液に浸漬したときに形を保持できる程度に固まっていれば揮発性溶液に浸漬できる。揮発性溶媒が気散するときに気化熱を奪って行くため、揮発性溶媒が気散する間に油脂加工品の硬化は進んでいく。
【0034】
油脂加工品に付いた揮発性溶液の量を減らすもしくは一定にするために揮発性溶媒が気散をしている初期の段階で適当な振動量の振動篩の上に置いたり、振動機に触れたりしてふるい落とすこともできる。また、この工程を行なうことにより不均一に着いた揮発性溶液を均一にすることも可能である。
【0035】
油脂加工品に付いた揮発性溶液から揮発性溶媒を気散させるには、10℃から30℃の雰囲気温度に放置して置けばよい。気散にかかる時間は、2分から20分程度である。気散時間を短くするためには、放置する部屋の室温を高くする方法がある。また、温風を当てたり、油脂加工品を振るなどして動かすことにより大気により多く触れさせて気散時間を短くすることもできる。気散物質が飽和に達しないようにするため、換気をすることが好ましい。
【0036】
ココアパウダーや粉チーズ、粉乳のように脂肪分を多く含む微粉末は、エタノールを溶媒とする揮発性溶液に懸濁すると、油脂分の溶媒への染み出しが緩やかに起こり、揮発性溶液の粘度が上昇し、油脂加工品への付着量を経時的に増加することがある。また、揮発性溶媒の蒸散を妨げるため、蒸散にかかる時間が長くなることがある。このような場合は、揮発性溶液を冷却するか、油脂分の少ない粉末を用いるか、粉末の添加量を減らすか、懸濁後速やかに油脂加工品に付着させるなどの対策を行うことで解決できた。
【0037】
粉末を付着させた油脂加工品を含む食品において、油脂加工品と粉末の色調や風味が全く異なる組み合わせでも見た目よく、油脂加工品の表面に極めて均一に豊かな風味の粉末を簡単に付着させることができた。
【0038】
今まで油脂加工品の表面に付着させることが難しかった粒度が100μmを超える粉末でも微粉末を介して付着させることができた。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
表1中の配合1から6のいずれかにより調整した油脂加工品を15mm×15mm×15mmのキューブ状に成型し冷却固化した。これを室温20℃の室内に放置し、品温を20℃とした。これに2本の針を刺し固定して、表2中の配合1から4のいずれかにより調整した品温20℃の揮発性溶液に10秒間浸漬し、ほぼ均一な速度で引き上げた。揮発性溶液は、スターラーを用いて常時撹拌しておいた。その後、室温20℃の部屋で送風機により風をあてながら10分間放置し揮発性溶媒を気散させた。すると、油脂加工品の表面は、全く露見されず、均一にかかった粉末が残った。揮発性溶媒はすべて気散し風味に影響は無く、粉末の食感、風味がとても良好であった。
【0040】
(比較例1)
実施例1と同様に成型冷却固化した油脂加工品を品温20℃とした。これをレボリングパンに入れてココアパウダーを振り掛けて回転させ、表面に付着させた。しかし、油脂加工品の表面の一部が露見した。特に、油脂加工品がココアパウダーと色の異なる油脂加工品は見た目が悪かった。さらに、油脂加工品の表面が露見しないようにレボリングパンの回転速度を速くし撹拌時間を長くするなどして、より多くココアパウダーを付着させたところ、ココアパウダーが潰れて、てかりが生じ、粉末の食感が損なわれた。
【0041】
(比較例2)
実施例1と同様に成型冷却固化した油脂加工品を品温20℃とした。これを噴霧器の水蒸気出口に5秒間暴露し表面に水を付着させた後、ココアパウダーを振り掛けた。油脂加工品の表面に積もったココアパウダーを振り落として余分な粉末を取り除いた。ココアパウダーが付着した油脂加工品の表面は、一部が露見していた。特に、油脂加工品がココアパウダーと色の異なる油脂加工品は見た目が悪かった。さらに、水蒸気の暴露時間を1分間とし水を大量に付着させようとしたが、水蒸気が高温のため油脂加工品の表面が溶け出し、振り掛けたココアパウダーが変色し、冷却後の外観が黒色化した。
【0042】
(実施例2)
揮発性溶媒として99.8%アセトン:水を重量比80:20に調製した。この溶媒と抹茶を重量比60:40で懸濁した揮発性溶液を用いて実施例1と同様に油脂加工品に抹茶を付着させた。すると、油脂加工品の表面は、全く露見されず、均一にかかった抹茶が残った。揮発性溶媒はほぼ完全に気散し風味に影響は無く、粉末の食感、風味は良好であった。95%アルコールと比較して何ら遜色なく使用することが可能であった。
【0043】
(比較例3)
揮発性溶媒として99.8%アセトンを使用し、この溶媒とココアパウダーを重量比65:35で懸濁した揮発性溶液を用いて実施例1と同様に油脂加工品にココアパウダーを付着させた。すると、油脂加工品の表面は全く露見されず、均一にかかったココアパウダーが残った。しかし、油脂の溶解が起こり付着したココアパウダーが白っぽくなり、見た目が悪く、粉末の食感が著しく損なわれた。
【0044】
(実施例3)
揮発性溶媒として99%エタノール:水を重量比65:35に調製した。この溶媒と抹茶を重量比60:40で懸濁した揮発性溶液を用いて実施例1と同様に油脂加工品に抹茶を付着させた。すると、油脂加工品の表面には、表面が全く露見されず、均一にかかった抹茶が残った。揮発性溶媒はほぼ完全に気散し風味に影響は無く、粉末の食感、風味は良好であった。また、抹茶が発色して鮮やかな緑色を呈した。しかし、揮発性溶液は、エタノール95%の溶媒と比較して抹茶を懸濁させたときにやや粘ちょうな物性の液体となり、懸濁させる粉末を減らす必要があった。また、揮発性溶媒を気散させるために30分程度かかった。
【0045】
(比較例4)
揮発性溶媒として95%エタノール:水を重量比50:50に調製した。この溶媒と抹茶を重量比50:50で懸濁した溶液を用いて実施例1と同様に油脂加工品に抹茶を付着させようとした。しかし、この揮発性溶媒では油脂加工品から速やかに気散しなかった。よって、油脂加工品の表面を溶液が流れて不均一に付着し、見た目の汚いものとなった。
【0046】
(実施例4)
揮発性溶媒として95%エタノールにブランディ(アルコール分40%)を混合して重量比75:25に調製した。この溶媒とインスタントコ−ヒーパウダーを重量比55:45で懸濁した揮発性溶液を用いて実施例1と同様に油脂加工品にインスタントコーヒーパウダーを付着させた。すると、油脂加工品の表面は、全く露見されず、均一にかかったコーヒーパウダーが残った。また、揮発性溶媒はほぼ完全に気散したが、コーヒーパウダーには、ほのかにブランディの風味が残り、風味豊かであった。
【0047】
(実施例5)
揮発性溶媒として95%エタノールにバニリン香料(エタノール分75%)を混合して重量比75:25に調製した。この溶媒とココアパウダーを重量比65:35で懸濁した揮発性溶液を用いて実施例1と同様に油脂加工品にココアパウダーを付着させた。すると、油脂加工品の表面は、全く露見されず、均一にかかったココアパウダーが残った。また、揮発性溶媒はほぼ完全に気散したが、ココアパウダー粉末には、バニラフレーバーが付与され、風味が増強された。
【0048】
(実施例6)
実施例1〜5、比較例1〜4に用いた粉末は、いずれも粒度が100μm以下の微粉末であった。そこで、粒度50μm以下の抹茶と粒度100μm以上に調整した粉茶を重量比80:20で混合した。この粉末を95%エタノールに重量比55:45で懸濁し揮発性溶液とした。この揮発性溶液を用いて実施例1と同様に油脂加工品に粉末を付着させた。すると、油脂加工品の表面は、全く露見されず、均一にかかった粉末が残った。
【0049】
(比較例5)
次に、粒度50μm以下の抹茶と粒度100μm以上に調整した粉茶を重量比45:55で混合した。この粉末を95%エタノールに重量比55:45で懸濁し揮発性溶液とした。この揮発性溶液を用いて実施例1と同様に油脂加工品に粉末を付着させた。すると、油脂加工品の表面には不均一な粉末が残り、油脂加工品に軽い振動を与えると剥がれる部分が生じた。また、粒度の大きな粉末の沈降が急速に起こり、揮発性溶液を激しく撹拌しなければ均一に懸濁液を保つことができなかった。
【0050】
(実施例7)
粉末として、0.8mm四方の金箔をデキストリンに重量比5:95に混合したものを調製した。この粉末を95%エタノールに重量比60:40で懸濁し揮発性溶液とした。この揮発性溶液を用いて実施例1と同様に油脂加工品に粉末を付着させた。すると、油脂加工品の表面は白く均一に覆われていたが、その中に金箔が点在し鮮やかな黄金色を発色していた。
【0051】
(実施例8)
粒度50μm以下にした凍結乾燥イチゴパウダーを95%エタノールに重量比55:45で懸濁し揮発性溶液とした。この揮発性溶液を用いて実施例1と同様に油脂加工品にイチゴパウダーを付着させた。すると、油脂加工品の表面は、全く露見されず、均一にかかったイチゴパウダーが残った。揮発性溶媒はすべて気散し風味に影響は無く、粉末の食感、風味がとても良好であった。また、イチゴパウダーの付着した油脂加工品に振動を与えても剥がれ落ちることは無かった。
【0052】
(比較例6)
粒度50μm以下にした凍結乾燥イチゴパウダーを95%エタノールに重量比5:95で懸濁し揮発性溶液とした。この揮発性溶液を用いて実施例1と同様に油脂加工品にイチゴパウダーを付着させた。すると、付着した粉末の量が少なすぎるため、油脂加工品の表面がいたるところで露見され、イチゴパウダーの赤い粉末がまだらにかかって見た目が悪かった。
【0053】
(比較例7)
粒度50μm以下にした凍結乾燥イチゴパウダーを95%エタノールに重量比70:30で懸濁し揮発性溶液を調製しようとした。しかし、懸濁する粉末量が多すぎるため溶液にならず、油脂加工品に付けることができなかった。
【0054】
(表1)


【0055】
(表2)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末を懸濁した揮発性溶液にチョコレート等の油脂を主体とする加工品(以下、油脂加工品とする)を浸漬し、その後、揮発性溶媒を気散させることにより製造される、粉末を付着させた油脂加工品及びその製造法。
【請求項2】
揮発性溶液の溶媒が、60重量%以上のエタノールを含む請求項1に記載の粉末を付着させた油脂加工品及びその製造法。
【請求項3】
粉末の50%以上が粒度100μm以下の微粉末であることを特徴とする請求項1から2に記載の粉末を付着させた油脂加工品及びその製造法。



















【公開番号】特開2007−20453(P2007−20453A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206036(P2005−206036)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【Fターム(参考)】