説明

粉末クラッド板の製造方法及び製造設備

【課題】粉末クラッド板を歩留まり良く高い生産性を有して製造できるようにする。
【解決手段】加熱冷却装置14の入口から出口に亘りリーダストリップ18を予め挿通しておき、リーダストリップ18の後端に粉末圧延機4により形成した圧着材5aの先端を接合し、リーダストリップ18の先端を加熱冷却装置14の下流に備えたリーダストリップ巻取機26で巻き取り圧着材5aを加熱冷却装置14内に導いて加熱・冷却することにより粉末クラッド板5を形成し、リーダストリップ18の後端の接合部が加熱冷却装置14を出た位置で接合部を切断してリーダストリップ18を切り離し、粉末クラッド板5の先端を巻取機10に導いて巻き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板の表面に粉末を圧着して圧着材を形成し、続いて圧着材を加熱・冷却して板に粉末を融着させることにより製造される粉末クラッド板を歩留まり良く高い生産性が得られるようにした粉末クラッド板の製造方法及び製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、ステンレス、耐熱合金等の金属板の両面又は片面に、ニッケル等を主成分とする金属の粉末を一体化することにより、ロウ材層を有する粉末クラッド板を製造することが行われており、このような粉末クラッド板を製造する際には、図13に示すような設備を使用することが提案されている。
【0003】
図13に示される粉末クラッド板製造設備は、母材である板1が巻かれたコイル2を一定速度で巻き出すようにした巻戻機3と、該巻戻機3から巻き出された板1を引き込んで板1の表面に金属粉末(粉末)を圧着して圧着材5aを送り出す粉末圧延機4と、該粉末圧延機4からの圧着材5aを加熱炉6で加熱して粉末を融着させ、続いて粉末が融着した圧着材5aを冷却器7で冷却して粉末クラッド板5を形成する加熱冷却装置14と、該加熱冷却装置14で形成された粉末クラッド板5を必要に応じて圧延する圧延機或いはピンチロール8と、該圧延機或いはピンチロール8を経た粉末クラッド板5を粉末クラッドコイル9に巻き取る巻取機10とを備えてなる構成を有している。
【0004】
前記粉末圧延機4は、対向配置して回転駆動する一対のロール11と、該各ロール11上に粉末を供給する粉末供給装置12とを備え、回転駆動された一対のロール11間に上方から下方へ向け板1を導入しつつ、前記粉末供給装置12により各ロール11上に粉末を供給することにより、前記板1の両面に粉末を圧着して圧着材5aを形成するようになっている。13a,13bはブライドルロールを兼ねた方向変えロールであり、水平方向に送られる板1を粉末圧延機4に対して鉛直に導くようにしている。
【0005】
前記加熱炉6には通常、図示しないライン長手方向に断面が閉じた金属箱が設置され、外側に電気ヒータを備えたマッフル炉が用いられており、該電気ヒータは加熱炉6内部の不活性ガスの雰囲気温度を高めて輻射熱により圧着材5aの粉末が融解される温度まで加熱することにより粉末を板1に融着させて粉末クラッド板5を形成するようにしている。冷却器7は粉末クラッド板5を不活性の冷却ガスで冷却する方式、及び冷却ガスで冷却する方式に加えて水冷却により急速に冷却する方式がある。
【0006】
前記粉末クラッド板製造設備により粉末クラッド板5を製造するには、巻戻機3から巻き出した板1の先端を粉末圧延機4及び加熱冷却装置14を通して巻取機10に巻き取り、加熱冷却装置14の加熱炉6と冷却器7を作動させた後、巻取機10による巻き取りを開始すると同時に粉末圧延機4を作動させる。粉末圧延機4は、板1を一定速度で引き込むと共に、粉末供給装置12により各ロール11上に粉末を供給することにより板1の片面或いは両面に粉末を圧着して圧着材5aを送り出す。粉末圧延機4で製造される圧着材5aはロール11の圧下によって粉末が圧着されているのみであるため、圧着材5aをそのまま切断して曲げる等の加工を行った場合には板1から粉末が脱落してしまう場合があり、ロウ材として使用できなくなる可能性がある。
【0007】
このため、圧着材5aは加熱冷却装置14を構成する加熱炉6に導入して加熱し、粉末を溶融させて板1に融着させる。この時、粉末は加熱によって粒子表面又はその一部が融解して(液相を出させて)板1に融着する。続いて、圧着材5aは冷却器7に導入されて冷却されることにより溶融粒子が固化され、粉末クラッド板5が形成される。加熱冷却装置14から導出した粉末クラッド板5は、圧延機或いはピンチロール8を経て巻取機10に巻き込まれて一定の巻取り速度で巻き取られて粉末クラッドコイル9が形成される。
【0008】
尚、前述の如き粉末クラッド板製造設備と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【特許文献1】特開2005−186127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図13に示すように、圧着材5aを導入して粉末の融解温度まで加熱し、続いて冷却することによって粉末クラッド板5を連続的に製造するためには、加熱炉6と冷却器7からなる長大な加熱冷却装置14を装備する必要がある。例えば本発明者らが実施した試験機では、冷却ガスで冷却する方式に加えて水冷却により冷却する冷却器7を用いても加熱冷却装置14の長さは20メートルであった。
【0010】
このため、巻戻機3から巻き出した板1の先端を巻取機10に巻き付けて粉末クラッド板5の製造を開始する時、粉末圧延機4と巻取機10との間の板1には未だ粉末が圧着されていないため、粉末圧延機4と巻取機10との間の板1は粉末クラッド板5とすることができずに無駄になるため、歩留まりが悪いという問題を有していた。
【0011】
更に、従来では、巻戻機3によるコイル2の巻き出しが終了すると、板1の後端まで粉末クラッド板5が形成されて巻取機10に巻き取られる間に、次の作業のための新たなコイル2を巻戻機3にセットして再び前記と同様の作業を行うバッチ方式を採用しているため、新たなコイル2を巻き出して粉末クラッド板5を製造する度に、前記と同様に、粉末圧延機4と巻取機10との間の板1が無駄になって歩留まりが低下する問題があり、しかも、新たなコイル2から巻き出した板1の先端を粉末圧延機4及び加熱冷却装置14を通して巻取機10に巻き込む作業がその都度必要となるために作業が繁雑で時間がかかる問題があり、よって生産性が更に低下するという問題を有していた。
【0012】
本発明は、斯かる実情に鑑みてなしたもので、粉末クラッド板を歩留まり良く高い生産性を有して製造できるようにした粉末クラッド板の製造方法及び製造設備を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、コイルの板を巻き出す巻戻機と、前記板を引き込んで板の表面に粉末を圧着することにより圧着材を形成する粉末圧延機と、圧着材を加熱し粉末を板に融着させ続いて冷却して粉末クラッド板を形成する加熱冷却装置と、粉末クラッド板を巻き取る巻取機とを順次備えた粉末クラッド板の製造方法であって、前記加熱冷却装置の入口から出口に亘りリーダストリップを予め挿通しておき、該リーダストリップの後端に前記粉末圧延機により形成した圧着材の先端を接合し、リーダストリップの先端を加熱冷却装置出口に備えたリーダストリップ巻取機で巻き取り圧着材を加熱冷却装置内に導いて加熱・冷却することにより粉末クラッド板を形成し、リーダストリップの後端の接合部が加熱冷却装置を出た位置で前記接合部を切断してリーダストリップを切り離し、粉末クラッド板の先端を巻取機に導いて巻き取ることを特徴とする粉末クラッド板の製造方法である。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載の粉末クラッド板の製造方法において、前記巻戻機の近傍に追加巻戻機を設置しておき、前記巻戻機から巻き出された板の後端に、前記追加巻戻機から巻き出した新たな板の先端を接合することにより、板を粉末圧延機に連続供給して粉末クラッド板を製造することを特徴とする粉末クラッド板の製造方法である。
【0015】
請求項3の発明は、コイルの板を巻き出す巻戻機と、前記板を引き込んで板の表面に粉末を圧着することにより圧着材を形成する粉末圧延機と、圧着材を加熱し粉末を板に融着させ続いて冷却して粉末クラッド板を形成する加熱冷却装置と、粉末クラッド板を巻き取る巻取機とを順次備えた粉末クラッド板の製造設備であって、加熱冷却装置にリーダストリップを挿通し、且つ該リーダストリップの後端に粉末圧延機からの圧着材の先端を接合するリーダストリップ接合装置と、加熱冷却装置の下流において前記リーダストリップを巻き取り、且つリーダストリップの後端の接合部が加熱冷却装置を出た位置で該接合部を切断するリーダストリップ除去装置とを備えたことを特徴とする粉末クラッド板の製造設備である。
【0016】
請求項4の発明は、リーダストリップ接合装置は、粉末圧延機と加熱冷却装置との間の圧着材の搬送ラインにリーダストリップを供給するリーダストリップ巻戻機と、加熱冷却装置の入口において前記リーダストリップ巻戻機から巻き出したリーダストリップをクランプして加熱冷却装置に導くよう前後に間隔を隔てて配置した前側ピンチロール及び後側ピンチロールと、該前側ピンチロールと後側ピンチロールとの間に配置して加熱冷却装置に挿通したリーダストリップの後端に前記粉末圧延機からの圧着材の先端を接合する接合機とを有することを特徴とする請求項3に記載の粉末クラッド板の製造設備である。
【0017】
請求項5の発明は、リーダストリップ除去装置は、加熱冷却装置の下流に備えた変向ピンチロールを介してリーダストリップを粉末クラッド板の搬送ラインからオフラインに導いて巻き取るリーダストリップ巻取機と、加熱冷却装置の出口においてリーダストリップの後端の接合部を切断する切断機とを有することを特徴とする請求項3又は4に記載の粉末クラッド板の製造設備である。
【0018】
請求項6の発明は、請求項3〜5のいずれか1つに記載の粉末クラッド板の製造設備において、前記巻戻機のコイルから巻き出した板の後端に別のコイルから巻き出した新たな板の先端を接合するようにした連続板接合装置を備えたことを特徴とする粉末クラッド板の製造設備である。
【0019】
請求項7の発明は、連続板接合装置は、前記巻戻機の近傍に配置して別のコイルから新たな板を巻き出すようにした追加巻戻機と、前記巻戻機又は追加巻戻機から巻き出した板をクランプして粉末圧延機に導くよう前後に間隔を隔てて配置した前側ピンチロール及び後側ピンチロールと、前側ピンチロールと後側ピンチロールとの間に配置して粉末圧延機に供給している板の後端に新たな板の先端を接合する板接合機とを有することを特徴とする請求項6に記載の粉末クラッド板の製造設備である。
【0020】
請求項8の発明は、板接合機の下流に、板のアキュムレート装置を備えたことを特徴とする請求項6又は7に記載の粉末クラッド板の製造設備である。
【0021】
請求項9の発明は、巻取機の入口に、前記連続板接合装置により板を連続させた接合部を切断するための切断機を備えていることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1つに記載の粉末クラッド板の製造設備である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の粉末クラッド板の製造方法及び製造設備によれば、加熱冷却装置の入口から出口に亘りリーダストリップを予め挿通しておき、該リーダストリップの後端に粉末圧延機により形成した圧着材の先端を接合し、リーダストリップの先端を加熱冷却装置の下流に備えたリーダストリップ巻取機で巻き取り圧着材を加熱冷却装置内に導いて加熱・冷却することにより粉末クラッド板を形成し、リーダストリップの後端の接合部が加熱冷却装置を出た位置で前記接合部を切断してリーダストリップを切り離し、粉末クラッド板の先端を巻取機に導いて巻き取るようにしたので、巻戻機から巻き出される板の先端における粉末が圧着されずに粉末クラッド板が形成されない部分の長さを極めて短縮することができ、よって歩留まりを大幅に向上できる効果がある。
【0023】
又、巻戻機の近傍に追加巻戻機を設置しておき、前記巻戻機から巻き出された板の後端に、前記追加巻戻機から巻き出した新たな板の先端を接合することにより、板を粉末圧延機に連続供給して粉末クラッド板を製造するようにしたので、新たなコイルを巻き出して粉末クラッド板を製造する度に発生していた板の先端部分の無駄を無くして歩留まりを向上できると共に、複数のコイルを用意して板を連続して巻き出すことができるため、作業が簡略化し、生産性を大幅に向上できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0025】
図1は本発明を実施する粉末クラッド板の製造設備の一例を示す全体側面図であり、前記図13と同様に、コイル2の板1を一定速度で横方向に巻き出すようにした巻戻機3と、板1を鉛直下方に導くための方向変えロール13aと、前記板1の表面に粉末を圧着して圧着材5aを形成する粉末圧延機4と、圧着材5aを再び横方向に向かわせる方向変えロール13bと、粉末圧延機4からの圧着材5aを加熱炉6で加熱して粉末を融着させ、続いて粉末が融着した圧着材5aを冷却器7で冷却して粉末クラッド板5を形成する加熱冷却装置14と、圧延機或いはピンチロール8と、粉末クラッド板5を巻き取る巻取機10とを備えた構成を有している。尚、8aは圧延機或いはピンチロール8の入口に設けた張力計であり、また圧延機或いはピンチロール8は駆動モータを備えて積極的に圧延を行うようにしたものや駆動モータを備えずに軽圧下するようにしたものとしてもよく、又、冷却器7は不活性ガスによって冷却するもの、或いは不活性ガスによる冷却と水冷却とを組み合わせたものとしてもよい。又、図1に示す粉末クラッド板の製造設備においては、巻戻機3の出口に、板1の表面を洗浄するための洗浄装置15を備えている。
【0026】
前記加熱冷却装置14の入口にはリーダストリップ接合装置16を設置している。リーダストリップ接合装置16は、粉末圧延機4と加熱冷却装置14との間の圧着材5aの搬送ラインに、リーダストリップコイル17のリーダストリップ18を案内ロール19を介して供給するようにしたリーダストリップ巻戻機20を備えている。上記リーダストリップ18は、加熱炉6において粉末を融着する温度に加熱しても問題を生じないものであれば金属、非金属を問わず種々の材料のものを用いることができる。
【0027】
更に、リーダストリップ接合装置16は、前記リーダストリップ巻戻機20から巻き出したリーダストリップ18を案内して加熱冷却装置14に導くよう前後に間隔を隔てて配置した前側ピンチロール21及び後側ピンチロール22を備えている。このピンチロール21,22は、粉末圧延機4からの圧着材5a又はリーダストリップ18をクランプして送り作動を行えるように駆動装置を備えていることが好ましい。又、前側ピンチロール21と後側ピンチロール22との間には、加熱冷却装置14に挿通したリーダストリップ18の後端に前記粉末圧延機4からの圧着材5aの先端を接合するようにした接合機23を備えている。接合機23による接続には、図2に示す如く、リーダストリップ18の後端18’に圧着材5aの先端5a’をホッチキスのような連結針Aにより接合する方法、或いは図3に示す如く、リーダストリップ18の後端18’に圧着材5aの先端5a’を部分溶接B等の溶接によって接合する方法等、種々の方法を採用することができる。50は接合機23によって接続された接合部である。
【0028】
一方、加熱冷却装置14の出口にはリーダストリップ除去装置24を設置している。リーダストリップ除去装置24は、前記加熱冷却装置14の出口においてリーダストリップ18を粉末クラッド板5の搬送ラインからオフラインに導き出すための変向ピンチロール25と、該変向ピンチロール25から導いたリーダストリップ18を巻き取るリーダストリップ巻取機26と、該リーダストリップ巻取機26の入口においてリーダストリップ18の後端に形成された接合部50を切断するための切断機27とを有している。
【0029】
次に上記図1の形態の作用を説明する。
【0030】
本発明の粉末クラッド板の製造設備により粉末クラッド板を製造するに当たっては、先ず、加熱冷却装置14の入口から出口に亘りリーダストリップ18を挿通する。即ち、図4に示す如く、リーダストリップ接合装置16のリーダストリップ巻戻機20にセットしたリーダストリップコイル17のリーダストリップ18の先端を、案内ロール19を介し前側ピンチロール21、接合機23及び後側ピンチロール22を経て加熱冷却装置14に通し、更に、加熱冷却装置14から出たリーダストリップ18の先端を、リーダストリップ除去装置24の変向ピンチロール25により、粉末クラッド板5の搬送ラインからオフラインに導き出し、リーダストリップ18の先端を切断機27を経てリーダストリップ巻取機26に巻き付ける。そして、リーダストリップ巻取機26にてリーダストリップ18を巻き取ることにより、図5に示す如く、リーダストリップ18の後端18’が接合機23の位置になるように位置決めする。
【0031】
この時、前もって巻戻機3から巻き出して粉末圧延機4により粉末を圧着した圧着材5aの先端5a’をリーダストリップ接合装置16の入口まで移動させておき、圧着材5aを前側ピンチロール21にクランプさせて圧着材5aの先端5a’が接合機23の位置になるように位置決めする。そして、図6の接合機23により、リーダストリップ18の後端18’と前記粉末圧延機4からの圧着材5aの先端5a’を図2或いは図3のように接合して接合部50を形成する。
【0032】
このとき、リーダストリップ18の後端18’と圧着材5aの先端5a’とを当接させた状態において前側ピンチロール21と後側ピンチロール22により当接部を微速移動させながら接合機23により接合するようにしてもよい。
【0033】
上記接続作業と並行して加熱冷却装置14の加熱炉6と冷却器7を作動させておき、リーダストリップ巻取機26の巻き取りを行うと、粉末圧延機4で粉末が圧着された圧着材5aが加熱冷却装置14に導入されて粉末クラッド板5が形成される。
【0034】
リーダストリップ18の後端18’と圧着材5aの先端5a’(粉末クラッド板5の先端)との接合部50が変向ピンチロール25を経て図7に示す如く切断機27の位置に来ると、切断機27は接合部50を切断する。切断機27による接合部50の切断は瞬時に行うことができ、図2及び図3に二点鎖線で示すように、接合部50を所要の長さで挟む位置で切断することにより接合部50を除去するようにしている。接合部50が切断されてリーダストリップ18が除去された粉末クラッド板5の先端は、図8に示すように粉末クラッド板5の搬送ラインにより巻取機10に導かれて巻き取られる。
【0035】
コイル2による粉末クラッド板5の製造が終了し、再び新たなコイル2を巻戻機3にセットして粉末クラッド板を製造する際は、前記リーダストリップ巻取機26によって巻き取られたリーダストリップコイル17を、前記リーダストリップ巻戻機20に戻してセットすることにより、リーダストリップ18は再度利用することができる。或いは複数のリーダストリップ18を保有し、順次使用してもよい。
【0036】
上記したように、加熱冷却装置14の入口から出口に亘りリーダストリップ18を予め挿通しておき、該リーダストリップ18の後端に粉末圧延機4により形成した圧着材5aの先端5a’を接合し、リーダストリップ18の先端を加熱冷却装置14出口に備えたリーダストリップ巻取機26で巻き取ることにより圧着材5aを加熱冷却装置14内に導いて加熱・冷却により粉末クラッド板5を形成し、リーダストリップ18後端の接合部50が加熱冷却装置14を出た位置で切断機27により前記接合部50を切断してリーダストリップ18を切り離し、粉末クラッド板5の先端を巻取機10に導いて巻き取るようにしたので、巻戻機3から巻き出される板1の先端における粉末が圧着されずに粉末クラッド板が形成されない部分の長さを極めて短縮することができて歩留まりを大幅に向上することができる。
【0037】
図9は本発明を実施する粉末クラッド板の製造設備の他の例を示す全体側面図であり、前記図1に示した粉末クラッド板の製造設備において、巻戻機3の近傍に追加巻戻機28を設置し、追加巻戻機28にセットしたコイル2aから新たな板1aを巻き出すようにしており、更に、前記巻戻機3から巻き出された板1の後端に前記追加巻戻機28から巻き出した新たな板1aの先端を接合するようにした連続板接合装置29を備えている。連続板接合装置29は、巻戻機3又は追加巻戻機28からの板1,1aを案内する案内ロール30と、案内ロール30からの板1,1aをクランプして下流に導くよう前後に間隔を隔てて配置した前側ピンチロール31及び後側ピンチロール32を備えている。このピンチロール31,32は、板1,1aをクランプして送り作動を行えるように駆動装置を備えていることが好ましい。前側ピンチロール31と後側ピンチロール32との間には、現在巻き出されている板1の後端に新たな板1aの先端を接合するための接合機33を有している。接合機33は図2又は図3に示したような接続方法によって接合することにより接合部60(図11参照)を形成するようにしている。
【0038】
前記連続板接合装置29の出口には、板1,1aを固定ロール34aと移動ロール34bとの間に掛け回すことにより長さを貯留して調整するようにした板1,1aのアキュムレート装置34を備えている。
【0039】
又、前記巻取機10の入口には、前記連続板接合装置29により板1,1aを連続させた接合部60を切断するための切断機35を備えている。更に、切断機35と巻取機10との間には、加熱冷却装置14からの粉末クラッド板5を固定ロール36aと移動ロール36bとの間に掛け回すことにより長さを貯留して調整するようにしたアキュムレート装置36を備えている。前記アキュムレート装置34,36は、設置する固定ロール34a,36aと移動ロール34b,36bの数を変更することで貯留する長さを任意に設定することができ、移動ロール34b,36bは図示するように下側に移動させることで貯留の長さを調節しても、或いは移動ロール34b,36bを上側に移動させることで貯留の長さを調節してもよい。
【0040】
又、図9の形態では、前記巻取機10の近傍に別の巻取機37を設置し、前記巻取機10と切り換えて粉末クラッド板5を巻き取ることができるようになっている。別の巻取機37には既に巻き取りが終了した粉末クラッドコイル9が装着されている。
【0041】
図9に示した粉末クラッド板の製造設備においては、先ず図4、図5に示したように加熱冷却装置14にリーダストリップ18を挿通し、続いて、図6に示したように、巻戻機3から巻き出した板1に粉末圧延機4で粉末を圧着した圧着材5aの先端を、前記リーダストリップ18の後端に接合して、リーダストリップ巻取機26でリーダストリップ18を巻き取ることにより粉末クラッド板の製造を開始し、図7に示すようにリーダストリップ18の接合部50が切断機27の位置に来たら切断機27で接合部50を切断してリーダストリップ18を除去し、続いて粉末クラッド板5の先端を巻取機10に導いて巻き取ることにより粉末クラッドコイル9を製造する。
【0042】
この粉末クラッドコイル9を製造している間に、巻戻機3の近傍に設けた追加巻戻機28に新たなコイル2aをセットしておく。
【0043】
粉末クラッド板5の製造が進行して、巻戻機3から巻き出された板1の後端1’が接合機33の位置に来たところで後側ピンチロール32により板1の移動を固定し、更にこの時、図10に示すように追加巻戻機28から巻き出した追加の板1aの先端1a’を案内ロール30及び前側ピンチロール31を介して接合機33に移動し、図11に示すように板1の後端1’に追加の板1aの先端1a’を当接させて、図2又は図3に示した接続を行うことにより接合部60を形成する。このとき、後側ピンチロール32によって板1の後端1’を固定しても、板1のアキュムレート装置34を備えているので、前記接続を行っている間も粉末圧延機4に板1を供給することができる。
【0044】
前記板1,1aの接合部60は、粉末圧延機4及び加熱冷却装置14を経て巻取機10の入口に設けた切断機35の位置に移動して来ると、図12の切断機35によって前記接合部60が瞬時に切断されて除去される。これにより巻取機10は接合部60が切断された粉末クラッド板5を後端まで早い速度で巻き取るようにし、一方、接合部60が切断された後続の粉末クラッド板5の先端はアキュムレート装置36の固定ロール36aと移動ロール36bに掛け回した後、別の巻取機37に巻き取られる。巻き取りが終了した巻取機10の粉末クラッドコイル9は巻取機10から除去され、次の巻き取り作業のための準備が行われる。
【0045】
前記した如く、巻戻機3に対して1つ以上の追加巻戻機28を設置しておくことにより、粉末クラッド板5を連続して高能率に製造することができる。
【0046】
上記したように、巻戻機3の近傍に追加巻戻機28を設置しておき、巻戻機3から巻き出された板1の後端1’に、前記追加巻戻機28から巻き出した新たな板1aの先端1a’を接合することにより、板1,1aを粉末圧延機4に連続供給して粉末クラッド板5を製造するようにしたので、新たなコイルを巻き出して粉末クラッド板を製造する度に発生していた板の先端部分及び後端部分の無駄を無くして歩留まりを向上できると共に、複数のコイルを用意して板を連続して巻き出すことができるため、作業が簡略化し、生産性を大幅に向上することができる。
【0047】
なお、本発明の粉末クラッド板の製造方法及び製造設備は上記形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明を実施する粉末クラッド板の製造設備の一例を示す全体側面図である。
【図2】リーダストリップの後端に圧着材の先端を連結針を用いて接合する例を示す平面図である。
【図3】リーダストリップの後端に圧着材の先端を部分溶接等で接合する例を示す平面図である。
【図4】加熱冷却装置にリーダストリップを挿通する状態を示す作動図である。
【図5】リーダストリップの後端を接合機に位置決めした状態を示す作動図である。
【図6】リーダストリップの後端に圧着材の先端を接合する状態を示す作動図である。
【図7】リーダストリップ巻取機にリーダストリップを巻き取って接合部を切断する状態を示す作動図である。
【図8】粉末クラッド板を巻取機に導いて巻き取る状態を示す作動図である。
【図9】本発明を実施する粉末クラッド板の製造設備の他の例を示す全体側面図である。
【図10】板の後端を接合機に位置決めした状態を示す作動図である。
【図11】板の後端に、追加巻戻機からの新たな板の先端を接合する状態を示す作動図である。
【図12】新たな板により粉末クラッド板を形成し板の接合部を巻取機の上流で切断する状態を示す作動図である。
【図13】従来の粉末クラッド板製造設備の一例を示す全体側面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 板
1a 新たな板
1’ 板の後端
1a’ 新たな板の先端
2 コイル
2a 別のコイル
3 巻戻機
4 粉末圧延機
5 粉末クラッド板
5a 圧着材
5a’ 圧着材の先端
10 巻取機
14 加熱冷却装置
16 リーダストリップ接合装置
18 リーダストリップ
18’ リーダストリップの後端
20 リーダストリップ巻戻機
21 前側ピンチロール
22 後側ピンチロール
23 接合機
24 リーダストリップ除去装置
25 変向ピンチロール
26 リーダストリップ巻取機
27 切断機
28 追加巻戻機
29 連続板接合装置
31 前側ピンチロール
32 後側ピンチロール
33 接合機
34 板のアキュムレート装置
35 切断機
50 リーダストリップと圧着材の接合部
60 板の接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルの板を巻き出す巻戻機と、前記板を引き込んで板の表面に粉末を圧着することにより圧着材を形成する粉末圧延機と、圧着材を加熱し粉末を板に融着させ続いて冷却して粉末クラッド板を形成する加熱冷却装置と、粉末クラッド板を巻き取る巻取機とを順次備えた粉末クラッド板の製造方法であって、前記加熱冷却装置の入口から出口に亘りリーダストリップを予め挿通しておき、該リーダストリップの後端に前記粉末圧延機により形成した圧着材の先端を接合し、リーダストリップの先端を加熱冷却装置の下流に備えたリーダストリップ巻取機で巻き取り圧着材を加熱冷却装置内に導いて加熱・冷却することにより粉末クラッド板を形成し、リーダストリップの後端の接合部が加熱冷却装置を出た位置で前記接合部を切断してリーダストリップを切り離し、粉末クラッド板の先端を巻取機に導いて巻き取ることを特徴とする粉末クラッド板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の粉末クラッド板の製造方法において、前記巻戻機の近傍に追加巻戻機を設置しておき、前記巻戻機から巻き出された板の後端に、前記追加巻戻機から巻き出した新たな板の先端を接合することにより、板を粉末圧延機に連続供給して粉末クラッド板を製造することを特徴とする粉末クラッド板の製造方法。
【請求項3】
コイルの板を巻き出す巻戻機と、前記板を引き込んで板の表面に粉末を圧着することにより圧着材を形成する粉末圧延機と、圧着材を加熱し粉末を板に融着させ続いて冷却して粉末クラッド板を形成する加熱冷却装置と、粉末クラッド板を巻き取る巻取機とを順次備えた粉末クラッド板の製造設備であって、加熱冷却装置にリーダストリップを挿通し、且つ該リーダストリップの後端に粉末圧延機からの圧着材の先端を接合するリーダストリップ接合装置と、加熱冷却装置の下流において前記リーダストリップを巻き取り、且つリーダストリップの後端の接合部が加熱冷却装置を出た位置で該接合部を切断するリーダストリップ除去装置とを備えたことを特徴とする粉末クラッド板の製造設備。
【請求項4】
リーダストリップ接合装置は、粉末圧延機と加熱冷却装置との間の圧着材の搬送ラインにリーダストリップを供給するリーダストリップ巻戻機と、加熱冷却装置の入口において前記リーダストリップ巻戻機から巻き出したリーダストリップをクランプして加熱冷却装置に導くよう前後に間隔を隔てて配置した前側ピンチロール及び後側ピンチロールと、該前側ピンチロールと後側ピンチロールとの間に配置して加熱冷却装置に挿通したリーダストリップの後端に前記粉末圧延機からの圧着材の先端を接合する接合機とを有することを特徴とする請求項3に記載の粉末クラッド板の製造設備。
【請求項5】
リーダストリップ除去装置は、加熱冷却装置の下流に備えた変向ピンチロールを介してリーダストリップを粉末クラッド板の搬送ラインからオフラインに導いて巻き取るリーダストリップ巻取機と、加熱冷却装置の出口においてリーダストリップの後端の接合部を切断する切断機とを有することを特徴とする請求項3又は4に記載の粉末クラッド板の製造設備。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1つに記載の粉末クラッド板の製造設備において、前記巻戻機のコイルから巻き出した板の後端に別のコイルから巻き出した新たな板の先端を接合するようにした連続板接合装置を備えたことを特徴とする粉末クラッド板の製造設備。
【請求項7】
連続板接合装置は、前記巻戻機の近傍に配置して別のコイルから新たな板を巻き出すようにした追加巻戻機と、前記巻戻機又は追加巻戻機から巻き出した板をクランプして粉末圧延機に導くよう前後に間隔を隔てて配置した前側ピンチロール及び後側ピンチロールと、前側ピンチロールと後側ピンチロールとの間に配置して粉末圧延機に供給している板の後端に新たな板の先端を接合する板接合機とを有することを特徴とする請求項6に記載の粉末クラッド板の製造設備。
【請求項8】
板接合機の下流に、板のアキュムレート装置を備えたことを特徴とする請求項6又は7に記載の粉末クラッド板の製造設備。
【請求項9】
巻取機の入口に、前記連続板接合装置で板を連続させた接合部を切断するための切断機を備えていることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1つに記載の粉末クラッド板の製造設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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