説明

粉末コーティングを施した製品搬送用コンポーネント及びそれに関連する方法

使用中摩耗を受けるコンポーネント。このコンポーネントは、耐摩性を改善し、清浄性を向上させ、表面摩擦を少なくするためにポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びそれらの混合物から成る群から選択されたポリマーで形成された粉末コーティングを含む。好ましくは、このコンポーネントは、コンベヤシステムなどのように製品を搬送するのに使用するためのものであり、(1)金属製コアと、ナイロン粉末コーティング、又は、(2)ステンレス鋼製コアと、粉末コーティングから成る。最も好ましくは、このコーティングは、その下層のコンポーネント(典型的な例では、金属製)がコーティングされたものではない、あるいは、全体がポリマー材で形成されたものではないという外観を与えるように、ほぼ透明又は半透明である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、摩擦工学分野に関し、特に、製品の搬送に使用するための低摩擦表面を有する、耐摩性で、かつ、清浄性の良い(清浄が容易な)粉末コーティングされたコンポーネント(構成要素、構成部分又は構成部品)に関する。
【背景技術】
【0002】
摩耗部品を形成するのに鋼等の金属を用いることは、広く知られている。優れた表面特性と耐摩性を有するスチル製コンポーネントを得るための周知の技法の1つは、高耐食性を有する外表面を得るために製造中に鋼合金の組成を改変することである。このいわゆる「ステンレス」鋼は、厄介な腐食や汚染に対して耐性を有する上に、メンテナンスが容易で製造コストが安いので、多くの商業用用途にとって理想的な基材となっている。特に、ステンレス鋼は、調理器具、食卓用ナイフ・フォーク・スプーン類、金具類、外科用器具、主要な家電器具、(製品搬送用等の)工業用設備に使用するためのシート、プレート、バー、ワイヤ、チューブ類等のコンポーネント、更には、超高層ビルや大型ビルヂングの建築資材にさえも加工することができる。
【0003】
ステンレス鋼のユーザーはそれに付随する上述した利点を享受することができるが、この材料にも、特に、有機材料の加工を伴う工業用用途に用いられる場合、制約がないわけではない。その1つは、ステンレス鋼は、プラスチック(例えば、アセタール)及び他の金属等の多くの他の材料に対する摩擦係数が比較的高いことである。従って、ステンレス鋼は、一般に、他のコンポーネントと常時又は頻繁に滑り接触するような環境においては、高い摩擦によって望ましくない摩耗が生じ、耐蝕性表面を早期に劣化させるので、使用されない。
【0004】
時間とともに徐々に進行するステンレス鋼の摩耗は、又、業界語でいわゆる「黒色酸化物」を生じる傾向がある。この黒色酸化物は、摩耗の結果として、ステンレス鋼の表面から生じると考えられる。この黒色酸化物は、一般に無害であると信じられているが、目障りであり、標準的な清浄技法を用いて除去するのが難しいので、コンポーネントのユーザーとしては、この問題を改善するには変質したコンポーネントを交換するしかないと考えてしまう。通常の有効寿命が終わる前にコンポーネントを交換することは、さしあたりの改善にはなるが、コスト高を招く処置であり、単に問題の再発を遅らせるにすぎない。
【0005】
理由は明確には解明されていないが、一般的なタイプのステンレス鋼の典型的な表面特性は、又、ある種の物質、特に、比較的高い油脂分を有する物質を付着させる傾向を有し、清浄作業中に耐食膜が剥離されてしまう。例えば、ステンレス鋼は、シュート、ディスペンサー、チェーン、ベルト及びそれに類する搬送用(コンベヤ)コンポーネントとして、しばしば用いられる。通常、これらのコンベヤコンポーネントは、特に、人間の飲食・消費用製品が取り扱われる場合、清浄な環境を維持し、汚染を厳密に抑えるために(主として厳格なFDA(米国食品医薬品局)規制に基づき)頻繁に、かつ、徹底して洗浄しなければならない。
【0006】
ステンレス鋼は、優れた耐蝕性を提供するものの、ある種の物質を付着させ易いという特性を有するために、徹底して洗浄することが困難であり、そのためにはコストがかかる。実際、清浄作業は、ステンレス鋼製コンポーネントの有効寿命の最高3分の1をも奪ってしまうことがあり、明らかに運転コストを著しく増大させる。頻繁な洗浄は、コスト高を招くことに加えて、更なる処理又は処分を必要とする相当な量の産業廃棄物を発生することになり、環境への配慮問題を生じる。又、洗浄は、通常、塩素を用いて行われるが、塩素は、周知のように、時間が経つにつれてステンレス鋼を劣化させやすく、有害な錆を発生させることすらある。
【特許文献1】米国特許第4,953,693号
【特許文献2】米国特許第5,031,757号
【特許文献3】米国勅許第5,584,373号
【特許文献4】米国特許第5,749,454号
【特許文献5】米国特許第6,180,039号
【特許文献6】米国特許第6,039,964号
【特許文献7】米国特許第5,941,369号
【特許文献8】米国特許第5,586,643号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、金属、特にステンレス鋼を、滑り摩擦とそれに随伴する摩耗を受ける状況、又は、食品加工や薬品処理などにおけるように清浄性(清浄が容易なこと)が最重要視される場合状況下で使用することができるコンポーネントにするための改良された態様を求める要望がある。製造コストの増大をほとんど伴うことなく、しかも、有効寿命と清浄性の点でも相当なメリットが実現されなければならない。更に、この技術は、新規なコンポーネントを製造するのに用いることができるばかりでなく、既存のコンポーネントの有効寿命を延長し、清浄性を改善するために既存のコンポーネントに適用することができるものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1側面によれば、製品を支持又は搬送するコンベヤシステムに使用するのための、優れた耐摩性及び清浄性を有し、かつ、表面摩擦の少ないコンベヤコンポーネントが提供される。このコンポーネントは、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びそれらの混合物から成る群から選択されたポリマーで形成されたほぼ透明又は半透明の粉末コーティングから成るシェル(外殻又は外皮)で被覆された表面を有する導電性基材から成る。このシェルは、裸眼には実質的に不可視である。
【0009】
好ましくは、この基材は、金属から成り、より好ましくは、ステンレス鋼から成る。このコーティングは、好ましくはポリアミド、より好ましくはナイロンから成る。基材の形態は、プレート、リンク、バー、ロッド又はワイヤメッシュ等とすることができる。
【0010】
本発明の第2側面によれば、被搬送製品を支持するための改良されたコンベヤベルトのリンクが提供される。このリンクは、導電性のコアと、該コアの表面上にシェルを創生するポリマー製の粉末コーティングを有する。ポリマーは、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びそれらの混合物から成る群から選択されたものである。
【0011】
好ましくは、シェルは、ポリアミド、より好ましくはナイロンから成る。シェルは、不透明又はほぼ透明(半透明又は透明)とすることができ、更には、抗菌性剤、抗細菌性剤、抗真菌性剤又は殺菌剤を含有したものとすることができる。シェルは、厚さ約0.003〜0.005in(0.0762〜0.127mm)の比較的薄いものとすることができる。好ましくは、コアは、鋼、より好ましくはステンレス鋼とする。
【0012】
本発明の更に別の側面によれば、製品を搬送するためのチェーンを形成する相互に連結された複数のリンクと、該チェーンを支持するための支持体とから成るコンベヤシステムが提供される。これらのリンクの1つ又は支持体、又はそれらのリンクと支持体のうちのどちらか一方は、外側シェルを形成するようにポリマーで粉末被覆された表面を有する導電性コアから成る。好ましくは、これらのリンクは、コネクタによって相互に連結され、それらのコネクタの少なくとも1つは、外側シェルを形成するようにポリマーで粉末被覆された表面を有する導電性コアから成る。これらのリンクは、又、相互に噛合させることもできる。
【0013】
本発明の更に別の側面によれば、複数のリンクと、それらのリンクを相互に連結するための少なくとも1つのコネクタから成るコンベヤシステムが提供される。それらのリンクの少なくとも1つは、外側シェルを形成するようにポリマーで粉末被覆された表面を有する導電性コアから成る。
【0014】
本発明の更に他の側面によれば、製品を搬送するためのコンベヤシステムが提供される。このコンベヤシステムは、チェーンを形成する相互に連結された複数のリンクと、該チェーンに係合するためのスプロケットから成る。これらのリンクの1つ又はスプロケット、又はそれらのリンクとスプロケットのうちのどちらか一方は、外側シェルを形成するようにポリマーで粉末被覆された表面を有する導電性コアから成る。
【0015】
本発明の更に他の側面によれば、コンベヤシステムにおいて耐摩性を改善し、清浄性を向上し、表面摩擦を減少させる方法が提供される。この方法は、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びそれらの混合物から成る群から選択されたポリマーを用いてコンベヤシステムの鋼製コンポーネントに粉末被覆する工程を含む。この方法は、更に、製品を保持又は搬送するために粉末被覆された鋼製コンポーネントを用いる工程を含む。
【0016】
好ましくは、前記粉末被覆工程は、導電性コアにポリマー粉末を少なくとも部分的に被覆することから成る。次いで、粉末被覆工程によって得られたコーティングを加熱して鋼製コンポーネントの表面に防護シェルを形成する。好ましくは、鋼製コンポーネントの表面にナイロン粉末を静電被覆し、次いで該コンポーネントを加熱して粉末を硬化させシェルを形成することから成る。
【0017】
本発明の更に他の側面によれば、製品を、静止摩耗表面を介して、該静止摩耗表面の高められた清浄性、減少された表面摩擦、改善された耐摩性などの結果として、より能率的な態様で搬送する方法が提供される。この方法は、静止摩耗表面をポリマーで粉末被覆し、その静止摩耗表面を用いて製品を保持又は搬送することから成る。ポリマーは、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0018】
好ましくは、前記摩耗表面は、コンベヤチェーンの導電性リンクの表面であり、前記粉末被覆工程は、摩耗表面にポリマー粉末を静電被覆し、次いで該コンポーネント(ポリマー粉末を静電被覆された表面を有する導電性リンク)を加熱して硬化させて防護シェルを形成することから成る。このような摩耗表面は、いろいろな構造体上に形成することができる。例えば、摩耗表面をシュート上に形成する場合は、粉末被覆工程は、該シュートの表面にポリマー粉末を静電被覆し、次いで該コンポーネント(ポリマー粉末を静電被覆された表面を有するシュート)を加熱し硬化させて防護シェル形成することから成る。摩耗表面をディスペンサー上に形成する場合は、粉末被覆工程は、該ディスペンサーの表面にポリマー粉末を静電被覆し、次いで該コンポーネント(ポリマー粉末を静電被覆された表面を有するディスペンサー)を加熱し硬化させて防護シェル形成することから成る。いずれの場合にも、この方法は、更に、摩耗表面を洗浄する工程を含むものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び2を参照すると、ここに開示した本発明のいろいろな側面を適用することができる環境の1つが例示されている。図1及び2は、モジュラーリンク式コンベヤチェーン又はベルト(以下、単に「モジュラーコンベヤ」、「コンベヤ」又は「チェーン」又は「「ベルト」とも称する)10を含むコンベヤシステムSの慣用の構成全体を示す。チェーン10は、被搬送物品に係合しそれを支持するための搬送面11を有する。搬送面11は、本発明による摩耗表面である。この特定の実施例では、チェーン10は、互いに離隔した列(図6及び列R1,...Rn参照)として配置され、それによって搬送面11を部分的に創生する側部ガイドリンク12及び中間リンク13を含む複数のモジュラーリンクから成る。R1,R2のように隣接するリンク列は、横断方向に延長するコネクタ14(「横断ロッド」、「ヒンジピン」などと称される)によって相互に連結される。
【0020】
図3及び4a−4cに詳細に示されている側部ガイドリンク(以下、単に「側部リンク」とも称する)12について説明すると、各側部リンク12は、外側垂下腕12aと、内方に突出した横断耳片12bを含む(かくして、配置によって異なる右側側部リンクと左側側部リンクを形成する)ものとすることができる。外側垂下腕12aと横断耳片12bは、それらが設けられる場合は、例えばコンベヤ支持フレームE(図1、2及び5参照)の一部を構成する長手方向に延長するガイドレールG1又はG2などから成る慣用の支持構成体を受容するように設計される。各ガイドレールG1,G2は、順方向走路Fに沿っても、戻り走路Rに沿っても(順方向走路Fから戻り走路Rへの遷移部に沿ってリンクに噛合し、対応するモーターMによって連動駆動される1対の隔置されたスプロケットKを介して)無端経路で双方向に駆動されるチェーン10を支持する。
【0021】
各ガイドレールG1,G2は、リンク12との摩擦を少なくするために摩擦工学的に優れた材料(減摩材)から成る摩耗ストリップWを含むことが好ましい。ガイドレールG1,G2は、図2及び5に示されるように、C字形又はシグマ形としてもよく、あるいは、摩耗ストリップWが舌片又はほぞのように外方に突出してチェーン10(特に側部ガイドリンク12)に対する軸受表面を画定するような態様に、関連する摩耗ストリップWを担持する任意の望ましい形状の1つ又は複数の支持セクションを備えたものとすることもできる。上述したタイプの関連するリンク(ガイドレールと組み合わされるリンク)は、通常、アセタール、又はその他の安価で軽量の耐久性材料などの相補材料又は相互適合材料(ガイドレールの素材と相補関係をなす材料又はガイドレールの素材と適合する材料)で周知の成形法(異なる材料の同時成形法を含む)を用いて形成される。その結果としてコンベヤチェーン10の性能を向上させることができるが、リンクとガイドレール(摩耗ストリップ)を形成する素材の相互適合性は、必須要件とはみなされない。
【0022】
好ましくは、対をなす(左右両側の)側部リンク12は、中間リンク13と共に、チェーン10が駆動される方向(長手方向又は搬送方向と称する)(図6の動作矢印C参照)に互いに離隔された列を形成する。この方向が、平常作動においてチェーン10が物品を搬送する主方向であり、搬送方向Cに対して横断方向の横断方向又は側方方向は、動作矢印Pで示されている。第1列R1(図示の例では先行列)を構成するリンク12の対を相互に連結する横断方向のコネクタ14は、ステンレス鋼のロッドで形成されており、側部リンク12を含め、各中間リンク13(各リンクが複数の側方に反復するセクションを有する構成の場合は2つより多い数となる)の足部分13cに形成された整列穴(図6参照)に挿通される。チェーン10を製造する際は、隣接する第2(後行)列R2のリンク12,13を第1列R1のリンク12,13に噛合させ、横断方向のコネクタ14を第2列の各リンク12,13の先端部12eに形成された搬送方向Cの方向に細長いスロット12dに挿通する(それによってチェーン10の1つのセクションを形成する)。
【0023】
当業者には明らかなように、リンクのこの特定の構造上の構成は、(本発明の広範囲の目的にとっては完全に随意選択ではあるが、)チェーン10の長手方向の伸縮を可能にするとともに、チェーンが走路のカーブ又は屈曲部を円滑に通過するように(図6参照)リンクの側方撓曲動作をも可能にし、それによって、カテナリーを設ける必要性を排除する。このような機能性の向上が特定の用例において特に必要とされない場合は、コネクタ14を通すためのスロット12d(図4a参照)を長手方向(搬送方向)に細長い穴ではなく、単なる穴に代えることができる。その場合は、長手方向の伸縮も、側方撓曲もできないチェーンとなる。
【0024】
コネクタ14は、保持部材16によって所定位置に保持することができる。図示の実施例では、保持部材16は、各側部リンク12に形成された受容部12f又はスロットに着脱自在に挿入された耳片17の形態とされる。図4cに示されるように、耳片17は、コネクタ14のくびれ又はへこみ部分14a(図4b参照)に係合するための凹部17aを有するものとすることができる。搬送方向に所要の長さのチェーン10を形成するために互いに噛合するリンク12,13に対してこの組み立てパターンを反復することができる。業界語でコンベヤ「ベルト」とも称されるこのタイプのチェーンの詳細な説明は、本出願人の米国特許第4,953,693号及び5,031,757号(その記載内容が本明細書に編入されているものとする)に開示されている。
【0025】
図7を参照して説明すると、本発明の一側面は、以下に詳述するように、チェーン10を支持するためのフレームコンポーネント20(図1参照)のような、コンベヤシステムSの代表的な導電性摩耗コンポーネントに耐摩性ポリマー材から成る外側コーティングを施すことである。(ここでいう「導電性」とは、少なくとも、粉末被覆による工程を受けるのに足るだけの導電性を有するという意味である。)より具体的にいえば、このフレームコンポーネント20は、好ましくは、例えば軟鋼又はステンレス鋼(例えば、ステンレス鋼303又は304)で形成されたコアのような剛性の金属コア20aから成り、外側フィルム又はシェル20bを形成するように被覆された表面を有する。このシェル20bは、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びそれらの混合物から成る群から選択された耐久性の、耐摩耗及び耐削摩性の熱硬化性又は熱可塑性ポリマー材で形成することができる。(ただし、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はテフロンは、コーティングとして塗布された場合、先に述べた問題を解決するのに許容しうる度合の耐摩性を得ることができないので、一般には、本発明にとっては適正な材料ではない。)特定的な一実施例では、シェル20bは、ナイロン11又はナイロン12(それらの幾つかの種類のものがペンシルバニア州エリエのサーモクラッド・カンパニー社からデュラロンという商標名で粉末の形で市販されている)で形成される。
【0026】
外側シェル20bを形成するコーティングは、粉末被覆工程によってコア20aに被覆するが最も好ましい。そのような粉末被覆工程は、静電送給デバイス(例えば、ガン)又は流動床又はその他の送給手段を用いて選択された粉末をコア20aの外表面全体に送給する工程から成り、次いで、その粉末を比較的高い温度(例えば、400°F(204.4°C)より高い、ただし500°F(260°C)より低い温度)で所定時間(例えば、15分より長い時間)焼成する(焼き付ける)。この焼成が、粉末を硬化し、外側コーティング(例えば、シェル20b)を形成する。通常、このコーティングは、用いられる特定の状況又は適用技法の要件によって異なるが、約0.003〜0.005in(0.0762〜0.127mm)の比較的薄いものとすることができる。
【0027】
図8に示されるように、本発明の他の側面は、転送台30(米国特許第5,584,373号及び5,749,454号参照)のような、コンベヤシステムの代表的なステンレス鋼製コンポーネントに透明な又は無色の粉末コーティングを施すことである。より具体的にいえば、この台(ベッド)30は、好ましくは、ステンレス鋼(例えば、ステンレス鋼303又は304)で形成された剛性コア30aから成り、該コアに耐久性の、耐摩耗及び耐削摩性のポリマー材から成る外側フィルム又はシェル30bを被覆する。コアが金属製である場合、シェル30bが透明又は無色であるため、コーティングされそれによって防護度合いが高められているにもかかわらず、その物品(コンポーネント)が耐久性の材料で形成されているという外観を与える。
【0028】
好ましくは、シェル30bは、ナイロンで、最も好ましくはナイロン11又はナイロン12で形成されるが、コア30aのためのコーティングは、他の耐久性、耐摩剥性材料、好ましくは、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、及びその他の粉末コーティング塗料などの炭化水素系ポリマーで形成することができる。又、これらのポリマー粉末コーティング材の混合物も、有利に使用することができる。
【0029】
本発明の更に他の側面は、物品又は製品を搬送又は支持するためのコンベヤベルト又はチェーンに使用するためのコンポーネンに、その耐摩性を改善し、摩擦を少なくし、清浄性を高めるために粉末コーティングを施すことである。図9に示されるように、このコンポーネントは、物品を搬送するための一表面と、ガイドレール、フレーム又は台などの支持構造体に係合するための別の表面を有するリンク40である。図9aの拡大断面図を参照して説明すると、リンク40は、粉末被覆することが可能な、軟鋼又はステンレス鋼(例えば、ステンレス鋼303又は304)のような任意の導電性材料で形成することができるコア40aから成り、コア40aは、耐久性、耐摩耗及び耐削摩性のポリマー材から成る外側フィルム又はシェル40bを形成するように被覆されている。
【0030】
特定的な一実施例では、シェル40bは、コア40aの全表面に薄いフィルムを形成するように粉末被覆工程によって塗布されるナイロン、好ましくはナイロン11又はナイロン12から成る。ただし、コア40aのためのコーティングは、他の耐久性、耐摩剥性ポリマー材、好ましくは、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエチレン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びその他の粉末コーティング塗料(例えば、プロテク・ケミカル社の「マーキュリー・ブルー」ハイブリッド、シャーウィン・ウィリアムズ社の「ホワイト・ウオーター」ポリエステル、シャーウィン・ウィリアムズ社の「アンチック・ホワイト」ハイブリッド、シャーウィン・ウィリアムズサーモクラッド社の「ファーニチュア・ホワイト」ポリウレタン)などの炭化水素系ポリマーで形成することもできる。又、これらのポリマー粉末コーティング材の混合物も、使用することができる。
【0031】
図10に示されるように、本発明の更に他の側面によれば、コンベヤーコンポーネントは、物品を搬送するための一表面と、ガイドレール、フレーム又は台などの支持構造体に係合するための別の表面を有するワイヤメッシュ50である。(ガイドレール、フレーム又は台などの支持構造体にも、上述したような粉末コーティングを施すことができる。)図10aに明示されているように、このメッシュ50は、粉末被覆することが可能な、ワイヤ形態の軟鋼などの任意の導電性材料で形成することができるコア50aから成り、コア50a(織ったものであっても、あるいは、織ったものでなくてもよい)は、耐久性、耐摩耗及び耐削摩性のポリマー材から成る外側フィルム又はシェル50bを形成するように被覆されている。
【0032】
特定的な一実施例では、シェル50bは、コア50aの全表面に薄いフィルムを形成するように粉末被覆工程によって塗布されるナイロン、好ましくはナイロン11又はナイロン12から成る。ただし、コア50aのためのコーティングは、他の耐久性、耐摩剥性ポリマー材、好ましくは、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びその他の粉末コーティング塗料(例えば、プロテク・ケミカル社の「マーキュリー・ブルー」ハイブリッド、シャーウィン・ウィリアムズ社の「ホワイト・ウオーター」ポリエステル、シャーウィン・ウィリアムズ社の「アンチック・ホワイト」ハイブリッド、シャーウィン・ウィリアムズ社の「ファーニチュア・ホワイト」ポリウレタン)及びそれらの混合物などの炭化水素系ポリマーで形成することもできる。
【0033】
図11に示されるように、本発明の更に他の側面によれば、コンベヤーコンポーネントは、製品を搬送するための少なくとも一表面を有する、軟鋼又はステンレス鋼製の、例えば容積測定式ホッパーのようなディスペンサー60である。図11aを参照して説明すると、このディスペンサー60は、各々粉末被覆することが可能な、軟鋼又はステンレス鋼(例えば、ステンレス鋼303又は304)のような任意の導電性材料で形成することができるコア60aを有する複数のプレート状側壁を有する。このコア60aは、耐久性、耐摩耗及び耐削摩性のポリマー材から成る外側フィルム又はシェル60bを形成するように被覆されている。
【0034】
特定的な一実施例では、シェル60bは、コア60aの全表面に薄いフィルムを形成するように粉末被覆工程によって塗布されるナイロン、好ましくはナイロン11又はナイロン12から成る。ただし、コア60aのためのコーティングは、他の耐久性、耐摩剥性ポリマー材、好ましくは、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びその他の粉末コーティング塗料(例えば、プロテク・ケミカル社の「マーキュリー・ブルー」ハイブリッド、シャーウィン・ウィリアムズ社の「ホワイト・ウオーター」ポリエステル、シャーウィン・ウィリアムズ社の「アンチック・ホワイト」ハイブリッド、シャーウィン・ウィリアムズ社の「ファーニチュア・ホワイト」ポリウレタン)などの炭化水素系ポリマーで形成することもできる。
【0035】
図11にも示され、図12に詳細断面図で示されるように、本発明の更に他の側面によれば、コンベヤーコンポーネントは、製品を搬送するための一表面を有する、軟鋼又はステンレス鋼製のシュート70である。このシュート70は、粉末被覆することが可能な、軟鋼又はステンレス鋼(例えば、ステンレス鋼303又は304)のような任意の導電性材料で形成することができるコア70aを有し、このコア70aは、耐久性、耐摩耗及び耐削摩性のポリマー材から成る外側フィルム又はシェル70bを形成するように被覆されている。
【0036】
特定的な一実施例では、シェル70bは、コア70aの全表面に薄いフィルムを形成するように粉末被覆工程によって塗布されるナイロン、好ましくはナイロン11又はナイロン12から成る。ただし、コア70aのためのコーティングは、他の耐久性、耐摩剥性ポリマー材、好ましくは、他のポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びその他の粉末コーティング塗料(例えば、プロテク・ケミカル社の「マーキュリー・ブルー」ハイブリッド、シャーウィン・ウィリアムズ社の「ホワイト・ウオーター」ポリエステル、シャーウィン・ウィリアムズ社の「アンチック・ホワイト」ハイブリッド、シャーウィン・ウィリアムズ社の「ファーニチュア・ホワイト」ポリウレタン)又はそれらの混合物などの炭化水素系ポリマーで形成することもできる。
【0037】
図13及び13aに示されるように、本発明の更に他の側面によれば、コンベヤーコンポーネントは、製品を搬送するための一表面を有する、薄肉軟鋼又はステンレス鋼製のチューブ又はパイプ80である。このチューブ又はパイプ80は、粉末被覆することが可能な、軟鋼又はステンレス鋼(例えば、ステンレス鋼303又は304)のような任意の導電性材料で形成することができるコア80aを有し、このコア80aは、その内外両面に耐久性、耐摩耗及び耐削摩性のポリマー材から成る外側フィルム又はシェル80bを形成するように被覆されている。
【0038】
特定的な一実施例では、シェル80bは、コア80aの全表面に薄いフィルムを形成するように粉末被覆工程によって塗布されるナイロン、好ましくはナイロン11又はナイロン12から成る。ただし、コア80aのためのコーティングは、他の耐久性、耐摩剥性ポリマー材、好ましくは、他のポリアミド、ポリオレフィン、ウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びその他の粉末コーティング塗料(例えば、プロテク・ケミカル社の「マーキュリー・ブルー」ハイブリッド(混合物)、シャーウィン・ウィリアムズ社の「ホワイト・ウオーター」ポリエステル、シャーウィン・ウィリアムズ社の「アンチック・ホワイト」ハイブリッド、シャーウィン・ウィリアムズ社の「ファーニチュア・ホワイト」ポリウレタン)などの炭化水素系ポリマーで形成することもできる。
【0039】
図14及び14aを参照して説明すると、本発明の更に他の側面によれば、コンベヤーコンポーネントは、製品を搬送するための一表面を有する、薄肉軟鋼又はステンレス鋼製の大桶又はタンク90である。この大桶又はタンク90は、粉末被覆することが可能な、軟鋼又はステンレス鋼(例えば、ステンレス鋼303又は304)のような任意の導電性材料で形成することができるコア90aを有し、このコア90aは、その内外両面に耐久性、耐摩耗及び耐削摩性のポリマー材から成る外側フィルム又はシェル90bを形成するように被覆されている。
【0040】
特定的な一実施例では、シェル90bは、コア90aの全表面に薄いフィルムを形成するように粉末被覆工程によって塗布されるナイロン、好ましくはナイロン11又はナイロン12から成る。ただし、コア90aのためのコーティングは、他の耐久性、耐摩剥性ポリマー材、好ましくは、他のポリアミド、ポリオレフィン、ウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びその他の粉末コーティング塗料(例えば、プロテク・ケミカル社の「マーキュリー・ブルー」ハイブリッド、シャーウィン・ウィリアムズ社の「ホワイト・ウオーター」ポリエステル、シャーウィン・ウィリアムズ社の「アンチック・ホワイト」ハイブリッド、シャーウィン・ウィリアムズ社の「ファーニチュア・ホワイト」ポリウレタン)などの炭化水素系ポリマーで形成することもできる。
【0041】
図15に示されるように、本発明の更に他の側面によれば、コンベヤーコンポーネントは、製品を搬送するための一表面を有する、薄肉軟鋼又はステンレス鋼製のスクリュー又はオーガー100である。このスクリュー又はオーガー100は、粉末被覆することが可能な、軟鋼又はステンレス鋼(例えば、ステンレス鋼303又は304)のような任意の導電性材料で形成することができるコア100aを有し、このコア100aは、その内外両面に耐久性、耐摩耗及び耐削摩性のポリマー材から成る外側フィルム又はシェル100bを形成するように被覆されている。
【0042】
特定的な一実施例では、シェル100bは、コア100aの全表面に薄いフィルムを形成するように粉末被覆工程によって塗布されるナイロン、好ましくはナイロン11又はナイロン12から成る。ただし、コア100aのためのコーティングは、他の耐久性、耐摩剥性ポリマー材、好ましくは、ポリアミド、ポリオレフィン、ウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びその他の粉末コーティング塗料(例えば、プロテク・ケミカル社の「マーキュリー・ブルー」ハイブリッド、シャーウィン・ウィリアムズ社の「ホワイト・ウオーター」ポリエステル、シャーウィン・ウィリアムズ社の「アンチック・ホワイト」ハイブリッド、シャーウィン・ウィリアムズ社の「ファーニチュア・ホワイト」ポリウレタン)などの炭化水素系ポリマーで形成することもできる。
【0043】
この技法は、実施するのに比較的容易で安価であることに加えて、それぞれのコンポーネントのための耐久性のある、継ぎ目なしコーティングを形成し、接着剤等を必要とせず(そして食品の粒子、屑、異物等が挟まるおそれのある間隙を形成することなく)コアの表面にしっかりと接合されたコーティングを形成する。更に、コンベヤシステムに使用するためのものとして本発明に従って得られた被覆複合コンポーネント(コアとそれに被覆されたコーティングから成る複合コンポーネント)は、コアがステンレス鋼で形成されている場合は特に、コンベヤシステムに使用するためのものとして現在利用可能なコンポーネントに比べて多くの利点を提供する。第1に、コアがステンレス鋼で形成されている場合、たとえシェルが使用中損傷したとしても、その下にある(下層の)、コアを形成するステンレス鋼が、腐食に抗する追加の防護層となる。このことは、コンポーネントの非摩耗区域に穿孔や掻き傷(擦傷)が生じた場合に特に当てはまる。それは、(穿孔や掻き傷が生じた部分以外の)残留したシェルの厚み、従って高さが、ステンレス鋼製コアの下層表面(シェルの下にある表面)との直接接触を防止するからである。
【0044】
第2に、シェルは、ナイロンで形成されている場合、少くともステンレス鋼のような金属と比べて多少の柔軟性をも有する。従って、耐摩性を改善するには硬度を強くすることが最も望ましいと考えられていた従来慣用のステンレス鋼製コンポーネントとは異なり、本発明に従って被覆された比較的柔軟なシェル(コーティング)は、食い込むおそれのある削摩粒子が生じたとしても、そのような削摩粒子を受容し保持する働きをする。この捕捉作用は、従来の(即ち、コーティングを被覆されていない)コンポーネントを用いた場合におけるように、発生した削摩粒子がコンベヤシステムの近接する表面に食い込み、コンポーネントに更なる有害な摩耗を惹起するのを防止する役割を果たす。
【0045】
第3に、ポリマーシェルは、ナイロンで形成された場合、比較的耐久性があり、硬い(ナイロン12の場合、ショアーD硬度75±5)ことに加え、他のポリマー材等の最も一般的な摩耗材と滑り接触したときの摩擦係数が低い。従って、シェルは、コンベヤシステムSの作動又は性能をいかなる点でも損なうことがない。実際、コンポーネントが、被駆動コンベヤに使用するための粉末被覆されたリンクである場合、摩擦が少ないことが、ベルト又はチェーンを駆動するための電力所要量を少なくし、ひいては、(エネルギー消費量を含め)可動及びメンテナンスコストを低減する。
【0046】
第4に、ナイロン12を含め、シェルを形成するのに用いることができる多くのコーチング材は、一般に、食品用銘柄であり、食品に使用するのに適合するものとしてFDA(米国食品医薬品局)によって認可されている。従って、コア上にシェルを形成するためのそのようなFDA適合又は食品銘柄の材料のコーティングを施すことは、食品用コンベヤとして使用しうる能力をいささかなりとも阻害することはない。更に、このシェルは、洗浄液を自由に流し、かつ、柔らかい粒子(例えば、食品から剥脱した屑など)を付着させにくい均一な低摩擦表面を呈することにより清浄性を改善する。
【0047】
シェルを形成するためにコアに組み合わせる材料(コーティング)は、硬化したときほぼ透明又は半透明(例えば、曇ってはいるが、透光性)であることが好ましい。その結果、コーティングは、裸眼にではほぼ不可視であり、得られたコンポーネントは、全体が鋼で製造されているようにみえる。従って、消費者の目からはシェル即ちコーティングの存在は実質的に隠されてみえなくされ、コーティングの下の鋼だけがみえる状態となるので、頑丈で耐久性のある部品としての外観を与える。この「不可視」コーティングは、又、被覆されたコンポーネントであるのか、無被覆コンポーネントであるかが眼で見て区別できなくするので、無被覆のコンポーネントを有する既存のコンベヤシステムに本発明の被覆コンポーネントを後付けするのを容易にする。ただし、コンベヤベルトを構成するリンクの色とマッチさせるためにコーティングの色を不透明又はその他の色に着色する(例えば、白色のリンクに対しては白色のコーティングとするなど)ことも可能である。
【0048】
食品系の用途に対しては、シェルを形成するコーティングに殺菌剤、抗菌性剤、抗細菌性剤、抗真菌性剤を導入することが望ましい場合もある。その結果得られるコンポーネントは、望ましくない微生物、真菌、細菌又はバクテリアの増殖を抑えることができるばかりでなく、これらの望ましくない生物が(特に、「隠れた」又は閉ざされた区域に)繁殖するのを防止する働きもする。そのような薬剤の好適な種類は、例えば米国特許第6,180,039号、第6,039,964号、第5,941,369号及び第5,586,643号(それらの記載内容が本明細書に編入されているものとする)に開示されている。あるいは別法として、粒径の小さい二酸化チタンをコーティング材に導入してもよい。そのような二酸化チタンは、UV線で衝撃(ボンバード)されると、無機及び有機化合物を攻撃し、それらを水によって安全に(無害な状態で)洗い流すことができる分子に変換する働きをする。
【0049】
以下の試験は、本発明の効力を実証するものである。
【0050】
製造試験:
約4mmの直径を有する細長い、総体的に円筒形のステンレス鋼(303)製ロッド(コネクタとして用いられるコンポーネント)に、静電ガンを用いてサーモクラッド社の白色ポリマー系(デュラロン12ブランドのタイプ12ナイロン)粉末コーティングを塗布した。次いで、この粉末コーティングを塗布されたステンレス鋼ロッドをオーブン内で約400〜425°F((204.4〜218.3°C))の硬化温度で約15〜20分間焼成した。得られた構造体(ロッドとコーティングの複合コンポーネント)には、約0.003〜0.005in(0.0762〜0.127mm)の厚さを有する耐久性のある継ぎ目なしシェルが被覆されていた。
【0051】
塗布試験:
ステンレス鋼に耐摩ポリマー材剤を粉末被覆することができるかどうかの可能性を評価するために、下記のようないろいろな異なるタイプの粉末コーティング塗料を試した。
1.プロテク・ケミカル社の「マーキュリー・ブルー」ハイブリッド
2.シャーウィン・ウィリアムズ社の「ホワイト・ウオーター」ポリエステル
3.シャーウィン・ウィリアムズ社の「アンチック・ホワイト」ハイブリッド
4.サーモクラッド社の「ホワイト・デュラロン」12(ナイロン12)
5.サーモクラッド社の「クリア・デュラロン」12(ナイロン12)
6.シャーウィン・ウィリアムズ社の「ファーニチュア・ホワイト」ポリウレタン
これらのタイプの粉末コーティング塗料は、すべて、ステンレス鋼ロッドに首尾よく被覆され、他の部品又は製品に対して摩耗接触する状況におかれたとき黒色酸化物の発生を防止するという点で十分な性能を発揮することが認められた。
【0052】
コンベヤ試験:
2つの同一のコンベヤをコンベヤ試験台を用いて組み立て、それらのコンベヤを同一の条件下で作動させた。一方のコンベヤは、標準ステンレス鋼コネクタロッドを用いて組み立てた。他方のコンベヤは、本発明に従ってシャーウィン・ウィリアムズ社の「アンチック・ホワイト」ハイブリッド粉末コーティング塗料で被覆した標準ステンレス鋼コネクタロッドを用いて組み立てた。この試験は、アセタール製リンクとステンレス鋼製ロッドとの間にある種の材料を導入することによって黒色酸化物の発生を防止することができるかどうかを判定するためのものである。
【0053】
この試験台の連続作動を開始させた後、数日以内に裸の(被覆されていない)ステンレス鋼ロッドには黒色酸化物の形成が観察された。そして、この黒色酸化物の形成は、裸ステンレス鋼ロッド使用のコンベヤチェーン全体に亘って進行し続けた。これに対して、ハイブリッド粉末コーティング塗料を被覆されステンレス鋼ロッド使用のコンベヤチェーンには、進行状況を観察するために僅かな時間だけ(1時間未満)作動を中断したが、7週間半の間、黒色酸化物の形成は観察されなかった。
【0054】
摩擦係数の測定:
アセタールと裸のステンレス鋼との間の摩擦係数は、約0.2である。これに対して、ステンレス鋼にナイロンを被覆すると、摩擦係数は、約0.12になる。これは、摩擦係数の40%の減少に相当する。平均的なワイヤメッシュ又はコンベヤベルト(チェーン)には部品と部品との間に何百、何千という摩擦表面が存在することを考え合わせると、この摩擦の減少は相当な度合であり、その結果として、コンベヤを無端経路に沿って駆動するのに必要とされる所要動力量を減少させる。
【0055】
促進削摩試験:
粉末コーティングの耐削摩性を積極的に試験するために、ロッドをホルダーに取り付け、砂/水スラリー浴内に浸漬し、その組立体(ロッドを取り付けたホルダー)を連続的に回転させた。その結果として、ロッドの促進摩耗を惹起させる。下記のように、合計3つの異なる試験を実施した。
【0056】
第1の試験では、ステンレス鋼ロッドに塗布した4種類の異なる粉末被覆材を裸のステンレス鋼製の対照標準ロッドと対比させてテストした。使用した4種類の材料は、以下の通りである。
1.シャーウィン・ウィリアムズ社の「ホワイト・ウオーター」ポリエステル塗料
2.シャーウィン・ウィリアムズ社の「アンチック・ホワイト」ハイブリッド塗料
3.サーモクラッド社の「ホワイト・デュラロン」12(ナイロン12)
4.シャーウィン・ウィリアムズ社の「ファーニチュア・ホワイト」ポリウレタン塗料
試験開始後2時間未満で上記のポリエステル、ハイブリッド及びポリウレタン塗料のいずれも下層のステンレス鋼にまで貫通して摩耗した。一方、上記ナイロン12と裸のステンレス鋼ロッドの摩耗度合は相当に低かった。図16の表に、テストされた6本のロッドの各々の総摩耗度の概要が示されている。
【0057】
第2の試験は、ナイロン12コーティングと裸ステンレス鋼との直接比較である。合計ほぼ8時間の試験時間の結果では、裸ステンレス鋼とナイロン12被覆ロッドとは、実質的に同じ摩耗速度を示した。図17の表は、テストされた6本のロッドの各々の総摩耗度の概要を示す。
【0058】
第3の試験は、コネチカット州ブランフォードのエレクトロスタチック・テクノロジー・インコーポレイテッド社の方式で塗布された白色デュラロン12(ナイロン12)と、静電ガンを用いて塗布された透明デュラロン12(ナイロン12)と、裸ステンレス鋼を評価するために実施された。この試験は、合計約7時間に亘って行われた。
【0059】
やはり、裸ステンレス鋼と、ナイロン12被覆ロッドのうちの2種類(デュラロン12(2)と透明デュラロン(1))とは、実質的に同じ摩耗速度を示した。残りの2種類のナイロン12被覆ロッド(デュラロン12(1)と透明デュラロン(2))は、金属面にまで貫通して摩耗し、コーティングが剥ぎめくられた。その結果として、これらの2つの試験片の摩耗測定値から、それらは、相当な期間に亘っての平常使用中に生じる摩耗より大きく摩耗することが判明した。この剥脱又は剥離は、単に、損傷過程の延長であると考えられる。図18の表は、テストされた6本のロッドの各々の総摩耗度の概要を示す。
【0060】
振動摩耗試験:
各種粉末被覆材の削摩に抵抗する能力をテストするために、振動摩耗試験機械を設定した。この機械は、コネクタロッドがアセタール製リンクに対して相対的に動くいろいろな異なる態様をテストするために設計されたものである。
【0061】
3種類の異なる粉末被覆材又は塗料を、標準ステンレス鋼ロッドと対比させてテストするために上記の機械に装入した。3種類の材料は、下記の通りである。
1.シャーウィン・ウィリアムズ社の「ホワイト・ウオーター」ポリエステル
2.シャーウィン・ウィリアムズ社の「アンチック・ホワイト」ハイブリッド
3.サーモクラッド社の「ホワイト・デュラロン」12(ナイロン12)
【0062】
試験が始まってから約1ヶ月後の振動摩耗試験機械内のロッド及びリンクの状態を検査したところ、どの被覆ロッドにも目視できる摩耗はみられなかった。その1週間後の点検で、裸ステンレス鋼ロッドが黒色酸化物の存在を示し始めたのに対し、どの被覆ロッドにも黒色酸化物はみられなかった。従って、テストされた3種類の塗料は、すべて、黒色酸化物の発生を防止するとみられる。更に、これらの3種類の塗料は、少くとも初期においては十分な耐摩耗性を有する。
【0063】
本発明のいろいろな実施形態の以上の記述は、例示と説明の目的でなされたものであり、本発明をここに開示された形態に限定するためのものではなく、上記の教示に照らしていろいろな変更及び改変が可能である。例えば、コンポーネントを形成するのにコアの全面を被覆することが好ましいが、被搬送物品との接触領域(従って摩耗部分)だけを被覆するように戦略的にコーティングを施すことも可能である。又、使用において露出されないコンポーネントの切欠き、凹部又はへこみには、必ずしもコーティングを施す必要がない。本明細書ではコーティングを施すべき対象コンポーネントとしていろいろな特定的なタイプのコンポーネントが例示されているが、本発明によるコーティングは、支持体(パイロン(支柱)178等、図1参照)、ガイドレール、側部レール、ブラケット(例えば、図1に示される細長ブラケット180)、台足(例えば、図1に示される基底支持台182)、シュー、スラット、アンダーガード(例えば、図1に示される受け皿184)、スプロケット(図1に示される遊び又は駆動スプロケット186)、ローラ、ハウジング(例えば、図1に示されるモーターカバー188)、クランプ(例えば、図1に示されるコネクタ190)を含め、形態(プレート、ロッド、バーなど)に拘わらず、任意のタイプのコンベヤコンポーネントに施すことができる。金属の他、例えばポリカーボネートのような他の材料も、粉末被覆することができるに足るだけの導電性とすることができる。そのような基材は、粉末被覆する前に、まずアルカリ溶液を用いて、次いで燐酸溶液を用いて洗浄することができる。この洗浄は、材料の表面に存在するあらゆる汚れ、埃、グリース、異物等を除去するために行われる。上述した各実施形態は、本発明の原理の最適な適用例を示すためのものであり、当業者はここに開示された発明をいろいろな実施形態で利用することが可能であり、特定の用途に適合するようにいろろな改変が可能である。そのような改変及び変更は、本出願の請求項によって決定される発明の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、本発明を適用することができるコンベヤシステム全体の一部破除した側立面図である。
【図2】図2は、図1の線2−2に沿ってみた断面図である。
【図3】図3は、図2に示されたコンベヤチェーン又はベルトのための摩耗構成体の拡大断面図である。
【図4】図4a、4b及び4cは、図2に示されたコンベヤチェーン又はベルトのための側部リンク構成体の透視図及び断面図である。
【図5】図5は、図2と同様な一部断面による側面図である。
【図6】図6は、図1に示されたコンベヤシステムと同様のものであるが、連続的に湾曲するように構成されたコンベヤシステムの上からみた平面図である。
【図7】図7は、粉末被覆されたコネクタロッド拡大概略図である。
【図8】図8は、転送用コンベヤのための粉末被覆された支持台の透視図である。
【図9】図9は、粉末被覆することができる別のタイプのコンベヤの上からみた平面図である。 図9aは、図9の線9a−9aに沿ってみた断面図である。
【図10】図10は、粉末被覆されたワイヤメッシュタイプのコンベヤの上からみた平面図である。 図10aは、図10のコンベヤを構成するワイヤの断面図である。
【図11】図11は、粉末被覆することができるホッパーとシュートの概略側面図である。 図11aは、図11のホッパーの断面図である。
【図12】図12は、図11のシュートーの断面図である。
【図13】図13は、粉末被覆されたコンベヤコンポーネントの別の例の透視図である。 図13aは、図13のコンポーネントの断面図である。
【図14】図14は、粉末被覆されたコンベヤコンポーネントの更に別の例の透視図である。 図14aは、図14のコンポーネントの断面図である。
【図15】図15は、粉末被覆されたコンベヤコンポーネントの更に別の例の透視図である。
【図16】ここに開示された本発明の発明的側面の潜在効力を実証するために実施された摩剥試験1の結果を数値で示す表である。
【図17】図17は、本発明の発明的側面の潜在効力を立証するために実施された摩剥試験2の結果を数値で示す表である。
【図18】図18は、本発明の発明的側面の潜在効力を立証するために実施された摩剥試験3の結果を数値で示す表である。
【符号の説明】
【0065】
10 コンベヤチェーン、ベルト
11 搬送面
12 側部ガイドリンク、側部リンク、ガイドリンク、リンク
12a 外側垂下腕
12b 横断耳片
12d スロット
12e 先端部
12f 受容部
13 中間リンク
13c 足部分
14 コネクタ
16 保持部材
17 耳片
17a 凹部
20 フレームコンポーネント
20a 金属コア、コア
20b 外側シェル、シェル
30 転送台
30a 剛性コア、コア
30b シェル
40 リンク
40a コア
40b シェル
50 ワイヤメッシュ、メッシュ
50a コア
50b シェル
60 ディスペンサー
60a コア
60b シェル
70 シュート
70a コア
70b シェル
80 パイプ
80a コア
80b シェル
90 タンク
90a コア
90b シェル
100 オーガー
100a コア
100b シェル
180 細長ブラケット
182 基底支持台
184 受け皿
186 スプロケット
188 モーターカバー
190 コネクタ
C 動作矢印
C 搬送方向
E コンベヤ支持フレーム
F 順方向走路
G1,G2 ガイドレール
K スプロケット
M モーター
P 動作矢印
R 戻り走路
R1,R2 リンク列
S コンベヤシステム
W 摩耗ストリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
優れた耐摩性及び清浄性並びに低減された表面摩擦でもって製品を支持又は搬送するコンベヤシステムにおいて、導電性基材から成り、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びそれらの混合物から成る群から選択されたポリマーで形成され、該導電性基材の表面に被覆されたほぼ透明又は半透明の粉末コーティングから成る、裸眼には実質的に不可視のシェルを有することを特徴とする、コンベヤコンポーネント。
【請求項2】
前記基材は、金属から成ることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤコンポーネント。
【請求項3】
前記粉末コーティングは、ポリアミドから成ることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤコンポーネント。
【請求項4】
前記基材は、ステンレス鋼から成り、前記粉末コーティングは、ナイロンから成ることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤコンポーネント。
【請求項5】
前記基材は、プレートから成ることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤコンポーネント。
【請求項6】
前記基材は、リンクから成ることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤコンポーネント。
【請求項7】
前記基材は、バーから成ることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤコンポーネント。
【請求項8】
前記基材は、ワイヤメッシュから成ることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤコンポーネント。
【請求項9】
前記基材は、ロッドから成ることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤコンポーネント。
【請求項10】
製品を一時的に支持又は搬送するコンベヤシステムにおいて、被搬送製品を支持するための鋼製コンポーネントであって、該コンポーネントの表面上にシェルを創生する、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びそれらの混合物から成る群から選択されたポリマー製の粉末コーティングを有することを特徴とするコンポーネント。
【請求項11】
前記シェルは、ポリアミドから成ることを特徴とする請求項10に記載のコンポーネント。
【請求項12】
前記シェルは、ナイロンから成ることを特徴とする請求項11に記載のコンポーネント。
【請求項13】
前記シェルは、ほぼ透明であることを特徴とする請求項10に記載のコンポーネント。
【請求項14】
前記シェルは、不透明であることを特徴とする請求項10に記載のコンポーネント。
【請求項15】
前記シェルは、抗菌性剤、抗細菌性剤、抗真菌性剤又は殺菌剤を含むものであることを特徴とする請求項10に記載のコンポーネント。
【請求項16】
前記シェルは、約0.003〜0.005in(0.0762〜0.127mm)の厚さを有することを特徴とする請求項10に記載のコンポーネント。
【請求項17】
該コンポーネントは、ステンレス鋼から成ることを特徴とする請求項10に記載のコンポーネント。
【請求項18】
製品を搬送するためのチェーンを形成する相互に連結された複数のリンクと、
該チェーンを支持するための支持体とから成るコンベヤシステムであって、
前記リンクの1つ又は前記支持体は、外側シェルを形成するようにポリマーで粉末被覆された表面を有する導電性コアから成ることを特徴とするコンベヤシステム。
【請求項19】
前記リンクは、コネクタによって相互に連結されていることを特徴とする請求項18に記載のコンベヤシステム。
【請求項20】
前記コネクタの少なくとも1つは、外側シェルを形成するようにポリマーで粉末被覆された表面を有する導電性コアから成ることを特徴とする請求項19に記載のコンベヤシステム。
【請求項21】
前記リンクは、相互に噛合していることを特徴とする請求項18に記載のコンベヤシステム。
【請求項22】
複数のリンクと、
該リンクを相互に連結するための少なくとも1つのコネクタとから成るコンベヤシステムであって、
前記リンクの少なくとも1つは、外側シェルを形成するようにポリマーで粉末被覆された表面を有する導電性コアから成ることを特徴とするコンベヤシステム。
【請求項23】
製品を搬送するためのコンベヤシステムであって、
チェーンを形成する相互に連結された複数のリンクと、
該チェーンに係合するためのスプロケットから成り、
前記リンクの1つ又はスプロケットは、外側シェルを形成するようにポリマーで粉末被
覆された表面を有する導電性コアから成ることを特徴とするコンベヤシステム。
【請求項24】
コンベヤシステムにおいて耐摩性を改善し、清浄性を向上し、表面摩擦を減少させる方法であって、
ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びそれらの混合物から成る群から選択されたポリマーで該コンベヤシステムの鋼製コンポーネントに粉末被覆する工程と、
製品を搬送するために前記粉末被覆された鋼製コンポーネントを用いる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
前記粉末被覆工程は、前記鋼製コンポーネントに前記ポリマー粉末を少なくとも部分的に被覆し、
該粉末被覆工程によって得られたコーティングを加熱して該鋼製コンポーネントの表面に防護シェルを形成することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記粉末被覆工程は、前記鋼製コンポーネントの表面にナイロン粉末を静電被覆し、次いで該コンポーネントを加熱して粉末を硬化させ前記シェルを形成することを特徴とする請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2009−532308(P2009−532308A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504410(P2009−504410)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/065819
【国際公開番号】WO2007/118058
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(500240553)スパン テック エルエルシー (6)
【住所又は居所原語表記】1115 CLEVELAND AVENUE P.O.BOX 369 GLASGOW,KENTUCKY 42142 USA
【Fターム(参考)】