説明

粉末圧縮成型品取出し装置及びこの装置を備えた回転式粉末圧縮成型装置

【課題】回転盤から取出される良品に不良品が混入したか否かを検知できるとともに、混入に対する不良品対策を実行可能な粉末圧縮成型品取出し装置を提供する。
【解決手段】回転盤7に取付けた臼9から下杵で押出された錠剤(成型品)Tをスクレーパ28で回転盤外に導出するとともに、スクレーパの上流側でかつ臼孔9aの回転軌跡の内側に不良品排出用のノズル31を配置し、圧縮成型時に得られた成型情報を基に良否判定された不良品Taを、ノズルから噴射される空気で第1通路(不良品排出部)Saに排出する粉末圧縮成型品取出し装置3を前提とする。回転軌跡とノズルから噴射される空気の交差部Cとスクレーパとの間に、これらの間を移動する下杵に不良品が載っているか否かを検知する検知器35を配設する。この検知器が下杵に載っている不良品を検知することに基づいて制御装置15で所定の不良品対策を実行させるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良品に係る成型品をスクレーパによって回転盤外に排出するとともに、この排出位置の上流側で不良品に係る成型品を空気圧で回転盤外に排出する粉末圧縮成型品取出し装置、及びこの装置を備えて例えば錠剤を製造する回転式打錠機等の回転式粉末圧縮成型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転盤の製品取出し位置に良品取出し用のスクレーパを設けるとともに、この上流側に空気圧式の不良品排出装置を設けた製品取出し装置が、従来知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
これらの製品取出し装置は、成型品(製品)を成型する際の成型荷重を検出するロードセル等の検出信号から成型品が良品か不良品であるのかをコントローラで判別し、成型品が良品である場合、不良品排出装置を動作させずにスクレーパによって良品を回転盤外に取出し、成型品が不良品である場合、それがスクレーパに達する前に不良品排出装置を動作させて、この装置の空気ノズルから噴出される空気で、下杵先端から不良品を吹き飛ばすように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平3−24313号公報
【特許文献2】実開平6−77997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
空気圧式の不良品排出装置は、回転盤に対して出し入れされる方向に移動される可動スクレーパで不良品を排出する構成に比較して、動作上の信頼性が高いので、回転盤が高速で回転される場合にも適している。
【0006】
しかし、下杵によって臼上に押上げられた不良品を、空気ノズルから噴射された空気の力で、下杵の上から確実に吹き飛ばすことは現状では保証できない。
【0007】
つまり、空気ノズルに高圧空気を送るエア機器及びエア経路などの不具合により不良品に吹き付けられる空気の圧力が消失し或いは低下することが考えられる他、空気の噴射が正常に行われる状態であっても、下杵に対する成型品の付着強度が過大に高まった場合、相対的に不良品に吹き付けられる空気の圧力が不足することがある。
【0008】
前記付着強度は、下杵の先端が荒れた場合、成型品に対する刻印付与のための凹凸が下杵の先端面に設けられている場合、成型される粉末の付着性が高い場合等に高められる。特に、付着性が高い原料を用いて成型をする場合、その成型品が不良品となる状態では異常な成型圧力が作用するのが普通であるので、なお更、下杵に対する成型品の付着強度が向上されることがある。したがって、このような場合には、空気ノズルから噴射される空気の圧力を高めても、不良品を下杵の上から完全に剥離して回転盤外に吹き飛ばし難くなる。
【0009】
以上のように噴射空気による不良品の取出し(排出)は完全な信頼性がない。そのため特許文献1,2の製品取出し装置で、以上のような不良品の排出不良が起こった場合、その不良品が、良品と同じくスクレーパによって回転盤外に取出され、良品に混じることは避けられない。
【0010】
こうしたことに加えて、特許文献1,2の製品取出し装置では、不良品が良品に混じったか否か知ることができないので、不良品が良品に混じることに対して何らの対策を講じることができない、という課題がある。特に、錠剤を圧縮成型する回転式打錠装置では、以上のような良品への不良品の混入は問題視され易く、こうした混入が絶対にないようにすることが要請されている。しかし、この要請を満足することは特許文献1,2の技術では不可能である。
【0011】
したがって、本発明の目的は、回転盤から取出される良品に不良品が混入したか否かを検知できるとともに、不良品の混入に応じた不良品対策を実行可能な粉末圧縮成型品取出し装置及びこの装置を備えた回転式粉末圧縮成型装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、回転盤に取付けられた臼から下杵で押出された成型品をスクレーパで回転盤外に導出するとともに、スクレーパの上流側でかつ臼が有した臼孔の回転軌跡の内側に不良品排出用のノズルを配置し、成型品の圧縮成型時に得られた成型情報を基に良否判定された成型品中の不良品を、ノズルから吹き付けられ空気で不良品排出部に排出する粉末圧縮成型品取出し装置を前提とする。
【0013】
そして、前記課題を解決するために、本発明は、臼孔の回転軌跡とノズルから噴射された空気の交差部とスクレーパとの間に、これらの間を移動する下杵に不良品が載っているか否かを検知する検知器を配設し、この検知器が下杵に載っている不良品を検知することに基づいて制御装置で所定の不良品対策を実行させるように構成したことを特徴としている。
【0014】
本発明では、臼から下杵で押出された成型品中の不良品が、不良品排出用のノズルからの空気の噴出に拘らず、排出されずに下杵の上に残った場合に、この残留の有無を、臼孔の回転軌跡とノズルから噴射された空気の交差部とスクレーパとの間に配設された検知器により検知できるので、回転盤から取出される良品に、不良品排出部に排出されずに検知された不良品が混入したか否かを知ることができるとともに、前記検知に基づいて制御部により前記混入に対する不良品対策を実行させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の粉末圧縮成型品取出し装置及びこの装置を備えた回転式粉末圧縮成型装置によれば、回転盤から取出される良品に不良品が混入したか否かを検知できるとともに、前記混入に対する不良品対策を実行させることができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る粉末圧縮成型品取出し装置の構成を示す概略図である。
【図2】図1の取出し装置が備える排出不良検知用の検知器を回転盤の一部とともに示す断面図である。
【図3】図1中F3−F3線に沿って切換え弁まわりの構成を示す断面図である。
【図4】図1の粉末圧縮成型品取出し装置に設備することが可能な排出不良検知用の検知器の他の例を回転盤の一部とともに示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図4を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1中符号1は、粉末圧縮成型品を製造する回転式粉末圧縮成型装置、例えば錠剤を製造する回転式の打錠装置を示している。この打錠装置1は、回転式の粉末圧縮成型機具体例としては回転式の打錠機2と、この打錠機2から粉末圧縮成型品例えば錠剤Tを取出す粉末圧縮成型品取出し装置具体例としては錠剤取出し装置3を具備している。
【0019】
図1に示すように打錠機2は回転盤駆動装置5によって回転される回転盤7を備えている。回転盤7は、図示しない上杵ガイド部及び下杵ガイド部とともにこれらの間に設けられた臼取付け部8を有している。臼取付け部8の外周は円形である。臼取付け部8には回転盤7の回転方向に沿って等間隔ごとに臼9が複数取付けられている。図1中矢印Aは回転盤の回転方向を示し、符号Bは臼9が有した臼孔9aの回転軌跡の中心線を示している。臼9の上面と臼取付け部8の上面は、面一、つまり、同じ高さである。
【0020】
打錠機2は、臼取付け部8上に近接して配置される粉末供給器(図示しない)、及び臼9ごとに対応して上杵ガイド部で昇降を案内される上杵12(図2に一本のみ図示する。)、これら上杵を昇降させる上杵用軌道(図示しない)、臼9ごとに対応して下杵ガイド部で昇降を案内される下杵10(図2に一本のみ図示する。)、これら下杵10を昇降させる各種の下杵用軌道(図示しない)、上部加圧ロール(図示しない)、及び下部加圧ロール11等を備えている。下杵10の上端部は、臼9の上下方向に貫通する臼孔9a(特に、図2参照)に上向きに挿入されていて、錠剤Tの取出し時期以外の時期においては臼孔9aの底をなしている。
【0021】
この打錠機2は、回転盤7の回転に伴い、粉末供給器から臼孔9a内に取込まれて秤量された粉末を、圧縮成型位置で上部加圧ロールと下部加圧ロール11に接して互に接近する方向に移動される上杵と下杵10とにより、臼9内で圧縮成型し、圧縮成型位置に対して回転盤7の回転方向下流側に設定された成型品取出し位置で、臼9内の錠剤Tを下杵10により臼9から押出して粉末圧縮成型品取出し装置3により回転盤7の外に取出すように構成されている。
【0022】
上部加圧ロール又は下部加圧ロール11の一方例えば下部加圧ロール11に、錠剤Tが圧縮成型されるときの成型情報例えば成型荷重を検出するセンサ13が取付けられている。センサ13には例えばロードセルが用いられている。
【0023】
なお、ここに、加圧ロールとは、ローラ及びその支持部材などを含んでおり、この加圧ロールに掛かる荷重を、ロードセル等のセンサ13は電気信号に変換して出力する。又、圧縮成型が二段階でなされる場合、つまり、予備圧縮と、この予備圧縮が行われる予備圧縮位置に対して回転盤7の回転方向下流側に設定された本圧縮位置で本圧縮とが行われる構成の回転式粉末圧縮成型機では、本圧縮用の上部又は下部の加圧ローラにセンサ13を取付ければ良い。
【0024】
センサ13の出力(検出された成型荷重に相当する検出信号)は、打錠機2とは別に設置される制御装置15に供給される。更に、錠剤(成型品)の厚みを所定の目標値にして圧縮成型をする回転式打錠機(回転式粉末圧縮成型機)の場合は、ロードセルに代えて、上杵と下杵10の杵先間隔を検出し、かつ、検出された間隔に応じた電気信号として出力する変位センサを、成型情報を取得するセンサとして用いることができる。
【0025】
錠剤取出し装置3は、排出導体21と、不良品排出用のノズル31と、不良品排出駆動装置33と、検知器35と、前記制御装置15を具備している。
【0026】
排出導体21、ノズル31、及び検知器35は、錠剤Tが下杵10で臼9の上面から押出された位置から前記粉末供給器が配置された粉末供給位置に至るまでの間の位置、つまり、成型品取出し位置に配設されている。
【0027】
排出導体21は打錠機2の周りに設けられていて、排出ヘッド21aと、不良品排出用の第1の排出シュート21bと、良品排出用の第2の排出シュート21cと、切換え弁21dを備えている。
【0028】
排出ヘッド21aは、臼取付け部8の外周に隣接された第1部位と、この第1部位に連続して設けられて臼取付け部8上に配置された第2部位とを有している。
【0029】
第1部位に第1の排出口22と第2の排出口23が設けられている。これら第1の排出口22と第2の排出口23の上端は開口されている。
【0030】
不良品に係る錠剤T(以下不良品と称し、後述の良品に係る錠剤と区別する必要がある場合は不良品Taと表記する。)を排出するための第1の排出口22の下端に、第1の排出シュート21bの入口が連続して設けられている。第1の排出シュート21bは傾斜していて、その出口21beは前記入口より低い位置にある。
【0031】
良品に係る錠剤T(以下良品と称し、不良品Taと区別する必要がある場合は良品Tbと表記する。)を排出するための第2の排出口23の下端に、第2の排出シュート21cの入口が連続して設けられている。第2の排出シュート21cは、傾斜していて、図3に示すように第1の取出し口21ceと第2の取出し口21cgを有している。第1の取出し口21ce及び第2の取出し口21cgは前記入口より低い位置にある。
【0032】
第2部位は第1の入口24と第2の入口25を有している。不良品Taを排出導体21内に受入れるために、第1の入口24は第1の排出口22に対応して設けられている。この第1の入口24から第1の排出口22に至る通路は不良品を受入れる不良品排出部として例えば第1通路Saをなしている。したがって、第1通路Saの一端部に第1の入口24が設けられて、第1通路Saの他端部に第1の排出口22が設けられている。第1通路Saは臼孔9aの回転軌跡の中心線Bで囲まれる領域の外側に形成されていて、第1の入口24は中心線Bに接近した位置で開口されている。
【0033】
第2の入口25は、第1の入口24に対して回転盤7の回転方向下流側に位置しかつ第2の排出口23に対応して設けられている。この第2の入口25から第2の排出口23に至る通路は第2通路Sbをなしている。したがって、第2通路Sbの一端部に第2の入口25が設けられて、第2通路Sbの他端部に第2の排出口23が設けられている。第2の入口25は臼孔9aの回転軌跡と交差して開口されている。
【0034】
排出ヘッド21aは、第1通路Saと第2通路Sbを仕切る隔壁26を有しているとともに、これら通路から上方への錠剤Tの飛び出しを防止する天板27を有している。隔壁26は臼孔9aの回転軌跡の中心線Bで囲まれる領域の外側に配置されている。この隔壁26の先端部は、臼9の上に押出された錠剤Tと干渉しないように中心線Bに接近されている。
【0035】
隔壁26の上流側の側面は、第1通路Saの幅を第1の入口24側ほど狭めるように設けられていて、第1の入口24から第1の排出口22に向けて不良品Taを導くガイド壁面として利用される。第1の入口24から第1の排出口22に向けて錠剤Tを導く排出ヘッド21aの下流側の側壁は、隔壁26との間に第2通路Sbを形成するスクレーパ28として用いられている。このスクレーパ28は臼9及びその臼孔9aの回転軌跡と交差して設けられている。
【0036】
切換え弁21dは、第1の取出し口21ce又は第2の取出し口21cgを選択するために第2の排出シュート21cに取付けられている。すなわち、切換え弁21dは、図1に示すように例えばロータリーソレノイド等からなる弁駆動部材29の回転軸29aに取付けられている。この切換え弁21dは前記制御装置15による弁駆動部材29の制御に従って、図3中実線で示した第1の位置又は二点鎖線で示した第2の位置のいずれかに選択配置される。
【0037】
第1の位置に配置された切換え弁21dは、第2の排出シュート21cの内部を仕切ることなく第2の取出し口21cgを閉じる。この状態では第2の排出シュート21cを通る錠剤Tを第1の取出し口21ceに通して排出可能である。この逆に、第2の位置に配置された切換え弁21dは、第2の取出し口21cgを開くとともに第2の取出し口21cgに斜めに対向した状態で第2の排出シュート21cの内部を仕切る。この状態では第2の排出シュート21cを通る錠剤Tを第2の取出し口21cgに通して排出可能である。なお、図3中符号30は、第2の取出し口21cgを通った錠剤を導く補助シュートを示している。
【0038】
前記ノズル31は、図1に示すように前記成型品取出し位置において排出導体21に対して回転盤7の回転方向上流側でかつ臼孔9aの回転軌跡の内側、つまり、回転軌跡で囲まれた領域に配設されている。ノズル31は、これに接続された不良品排出駆動装置33の動作によって、圧縮された高圧の空気を不良品排出部の入口、つまり、第1の入口24に向けて噴射するためにこの第1の入口24と対向している。
【0039】
不良品排出駆動装置33は、高圧空気を供給する空気供給源と、この供給源からノズル31に至る空気配管と、この配管に設けられた電磁開閉弁とを有している。この不良品排出駆動装置33は、制御装置15によって制御され、この制御で電磁開閉弁が開かれた期間中のみ連続してノズル31から空気を噴射させるように構成されている。
【0040】
前記検知器35は、ノズル31による不良品Taの排出不良を検出する、つまり、下杵10の上に不良品Taが載っているか否かを検出するために用いられている。
【0041】
この検知器35は、臼孔9aの回転軌跡とノズル31から噴射された空気との交差部(図1に符号Cで代表的に示す。)とスクレーパ28との間、言い換えれば、前記交差部Cに対して回転盤7の回転方向下流側でかつスクレーパ28に対して回転盤7の回転方向上流側に配設されている。具体的には、前記隔壁26の第2通路Sbに臨んだ側面に検知器35が取付けられている。
【0042】
検知器35は、例えば透過型であって、図2に示すように投光器35aと、この投光器35aが発した光を受光して光電変換する受光器35bを有して形成されている。投光器35aと受光器35bのうちの一方は、臼孔9aの回転軌跡で囲まれる領域の内側に配置され、他方は同領域の外側に配置されていて、その投光器35aから受光器35bへと向かう光は、下杵10上に錠剤Tが載っている場合にこの錠剤Tによって遮光され、下杵10上に錠剤Tが載っていない場合に受光器35bで受光されるようになっている。なお、この投受光の光路と臼孔9aとの交差部(言い換えれば、不良品Taの排出不良を検知する位置であって、以下検知位置と称する。)を図1に符号Dで代表的に示す。
【0043】
図2中符号36は投光器35aと受光器35bを支持した検知器ホルダを示している。この検知器ホルダ36にはエアーパージ通路37が設けられていて、このエアーパージ通路37は、投光器35aから受光器35bに向かう光路上に位置する第1パージ孔37a及び第2パージ孔37bを有している。これら第1パージ孔37a及び第2パージ孔37bから噴出される空気によって、投光器35aから受光器35bに向かう光路上の粉塵を吹き飛ばして、検知器35の検知の信頼性を高めるように構成されている。又、図2中符号38はエアーパージ通路37に連通されたコネクタを示している。このコネクタ38には図示しない空気供給源に至る空気配管が接続される。この空気供給源には不良品排出駆動装置33の空気供給源を共用でき、コネクタ38に接続された空気配管に取付けた減圧弁等を介して所定圧力の空気が第1パージ孔37a及び第2パージ孔37bから噴出されるようになっている。
【0044】
なお、検知器35には、図2の透過型のものに代えて、図4に示した反射型のものを使用することが可能である。図4の検知器35で図2の透過型の検知器35と同様な構成については図2と同一符号を付してその説明を省略する。反射型の検知器35は、並べて設けられた投光器35aと受光器(図4では図示されない。)を有していて、投光器から投光されて下杵10上の不良品Taで反射された光を受光器で受光することにより、下杵10上に不良品Taが載っていることを検出でき、下杵10上に不良品Taがない場合には、下杵10で受光器の受光領域から外れて反射された光が受光器に受光されないことにより、下杵10上に不良品Taが無いことを検知できる。
【0045】
検知器35は、前記制御装置15により、打錠装置1の運転中は継続して検知動作をするように制御される。更に、この検知器35の検知情報は制御装置15に供給されるようになっている。又、図1に示すように制御装置15にはアラームなどの報知器41が接続されている。
【0046】
制御装置15により回転盤駆動装置5を介して回転盤7が回転駆動されることに伴い、既述のように錠剤Tが製造される。この錠剤Tの製造中、検知器35は、制御装置15により検知動作を継続する。又、後述するノズル31からの噴射空気による不良品Taの排出に不良が生じた場合以外の時期について、制御装置15は弁駆動部材29を動作させることがなく、そのため、切換え弁21dは図3中実線に示した第1の位置に保持されている。
【0047】
錠剤Tが臼9内で圧縮成型されるたびにセンサ13により検出される成型荷重(成型情報)は制御装置15に供給される。そのため、制御装置15は、その良否判定部により、供給された成型荷重を基に製造された錠剤Tが良品Tbであるのか不良品Taであるのかを判定する。この場合、規定の成型荷重域内にある錠剤Tは良品Tbと判定され、規定の成型荷重域から外れた錠剤Tは不良品Taと判定される。
【0048】
圧縮成型後に下杵10が錠剤取出し位置に移動されると、その直後に図2に示されるように下杵10は、錠剤Tを臼孔9aの上に押出す高さ位置に上昇されて、この高さ位置を維持したままスクレーパ28の下側を通過する。なお、こうした状態で、上杵12は臼孔9aから上方に抜けて排出ヘッド21a等に干渉しない高さ位置に上昇した状態に保持されている。
【0049】
製造された錠剤Tが良品Tbである場合、不良品排出駆動装置33は動作されないので、良品Tbは高圧空気を吹き付けられることなく、排出ヘッド21aの第1の入口24とノズル31との間を通過する。
【0050】
この直後に、臼9の上に下杵10で押出されている良品Tbが検知器35の光路を横切るため、この良品Tbが検知器35で検知される。つまり、受光器35bは投光器35aが発した光を受光しないのでロー信号を出力する(なお、図4の場合、図示されない受光器は、投光器35aが発して良品Tbで反射された光を受光してハイ信号を出力する。)。
【0051】
しかし、こうした良品Tbの検知に拘らず、制御装置15は、センサ13での成型荷重の検出に基づき、この制御装置15が備えたタイマーやシフトレジスタ等を用いることによって、回転盤7の回転に伴う良品Tbの現在位置が分かっている。つまり、以上のように検知器35での検知位置に到達した錠剤Tが良品Tbであることを把握しているので、制御装置15が有する不良品排出判断部は、検知器35から制御装置15へ供給される検知信号(前記ロー信号又はハイ信号)を、受入れないか若しくは受入れてもその信号を無効にする。それにより、切換え弁21dは依然として第1の位置を保持する。
【0052】
こうした検出後、下杵10及びこれに載っている良品Tbは、排出ヘッド21aの第2の入口25を通った後に、スクレーパ28に当たると同時に、下杵10はスクレーパ28の下側を通過する。それに伴い、良品Tbが、下杵10から外されて第2通路Sb内をスクレーパ28に導かれて第2の排出口23に落下するので、この良品Tbは、第2の排出シュート21cに導かれてその第1の取出し口21ceを通って、この第1の取出し口21ceの下方に配置された図示しない適当な良品受け容器に排出される。
【0053】
一方、前記良否判定部により錠剤Tが不良品Taであると判定された場合、その判定結果に従い、制御装置15は不良品排出駆動装置33を所定時間の間動作させる。それにより、不良品Taが排出ヘッド21aの第1の入口24に向かい合っているときにタイミングを合わせて、第1の入口24に向けてノズル31から高圧空気が噴射される。こうして高圧の空気が、臼9の上に下杵10で押出されている不良品Taに吹き付けられるので、この不良品Taは吹き飛ばされて第1通路Sa内を隔壁26等に導かれて第1の排出口22に落下する。それにより、不良品Taは、第1の排出シュート21bに導かれてその出口21beを通って、この出口21beの下方に配置された図示しない適当な不良品受け容器に排出される。
【0054】
こうした空気による不良品Taの排出直後に、それまで不良品Taが載っていた下杵10が検知器35を通過する。この場合、下杵10は検知器35の光路より下側に位置されていて、検知器35の光路を横切らないので、検知器35の受光器35bは投光器35aが発した光を受光してハイ信号を出力する(なお、図4の場合、図示されない受光器は、投光器35aが発して下杵10の上端面反射された光を受光しないのでロー信号を出力する。)。この検知信号により、制御装置15が有する不良品排出判断部は、検知器35による検知位置Dに対して回転盤7の回転方向上流側での空気による不良品Taの排出が適正に行われた、と判断する。
【0055】
又、何らかの原因で空気による不良品Taの吹き飛ばしが失敗した場合、つまり、不良品排出不良となった場合、臼孔9aから僅かに上方に突出されている下杵10に不良品Taが載ったままの状態が維持されて、この不良品Ta及び下杵10が検知位置Dを通過する。それにより、良品Tbの場合と同じく、下杵10上に不良品Taが載っていることが検知器35で検知される。
【0056】
この場合、既述のように制御装置15は、センサ13での成型荷重の検出に基づき回転盤7の回転に伴う不良品Taの現在位置が分かっているので、制御装置15はそれが有する不良品排出判断部に検知器35から供給される検知信号を、受入れるか、若しくは受入れた信号を有効とする。それにより、不良品排出判断部は、高圧空気による不良品Taの吹き飛ばしが失敗したと判断する。
【0057】
以上のように検知位置Dでの不良品Taの有無を検知することで、不良品Taの排出が適正になされたか否かを、確実に判断できる。又、検知位置Dを通過した不良品Taは、良品Tbの排出と同様にスクレーパ28によって回転盤7の外部に配置されている第2の排出シュート21cに取出される。
【0058】
前記不良品排出判断部での以上の判断に従い、その直後に、制御装置15は第1次不良品対策を実行する。この第1次不良品対策では、制御装置15が弁駆動部材29を動作させて、切換え弁21dを第2の位置に一定時間の間配置させる。そのため、良品Tbとともに不良品Taが、切換え弁21dによって第2の排出シュート21cの第2の排出口23に導かれて、補助シュート30の下側に配置された図示しない不良品受け容器に排出される。したがって、第1の取出し口21ceを通った良品Tbを受ける前記良品受け容器に不良品Taが混じることを防止できる。
【0059】
これとともに、制御装置15は第1次不良品対策として報知器41を動作させるので、不良品の排出が報知される。なお、前記一定時間の経過後には、制御装置15は切換え弁21dを第1の位置に戻すので、良品Tbの取出しが再開される。
【0060】
更に、下杵10の上に不良品Taが載っていることが規定時間内で連続して又は断続して検知器35により所定数検知された場合、言い換えれば、以上説明した第1次不良品対策が規定時間内に所定回数行われた場合、制御装置15は第2次不良品対策を実行する。第2次不良品対策では、制御装置15が回転盤駆動装置5の運転を停止させて、回転盤7の回転を停止させるとともに、報知器41を前記第1次不良品対策の場合とは異なる報知態様、例えば異なる音や異なる報知間隔などで動作させる。こうした第2次不良品対策により、不良品Taが継続して製造されることを防止できるとともに、不良品Taと共に無駄に排出される良品Tbの総量を減らすことができる。
【0061】
以上のように前記構成の打錠装置1は、臼9から下杵10で押出された錠剤T中の不良品Taが、不良品排出用のノズル31からの空気の噴出に拘らず、排出されずに下杵10の上に残ることがあっても、こうした残留の有無を、臼孔9aの回転軌跡とノズル31から噴射された空気の交差部Cとスクレーパ28との間に配設された検知器35により検知できる。そのため、検知された不良品Taが、回転盤7の臼取付け部8外に取出される良品Tbに混入したか否かを知ることができるとともに、この検知に基づいて前記混入に対する不良品対策を実行させて、良品Tbをそれに不良品Taが混じらないように取出すことができる。
【0062】
更に、以上のように制御装置15による制御で切換え弁21dを介して不良品Taを取出せるので、下杵10の上から不良品Taがより確実に外れるようにむやみに空気圧を高める必要がない。それに伴い、第1通路Sa内に空気圧で吹き飛ばされた不良品Taが跳ね返る可能性が減る。したがって、跳ね返えりを原因として不良品Taが第2通路Sbに侵入して良品Tbに混じらないようにできる。
【0063】
本発明は前記一実施形態には制約されない。例えば、空気による不良品Taの排出不良が検知される度に、制御装置15は、不良品対策として回転盤駆動装置5を制御して回転盤7の回転を停止させるとともに、回転盤7が停止されるまでの間、切換え弁21dを第1の位置から移動させて第2の位置に配置させるようにしてもよい。
【0064】
更に、第1の取出し口21ce及び第2の取出し口21cgと切換え弁21dとの関係は前記一実施形態とは逆でも良い。つまり、切換え弁21dが第2の位置に配置されている場合、第2の取出し口21cgを通して良品Tbが取出されるようにするとともに、切換え弁21dが第1の位置に配置されている場合、第1の取出し口21ceを通して良品Tbとともに不良品Taが取出されるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0065】
1…回転式の打錠装置(回転式粉末圧縮成型装置)、2…打錠機(粉末圧縮成型機)、3…錠剤取出し装置(粉末圧縮成型品取出し装置)、5…回転盤駆動装置、7…回転盤、8…臼取付け部、9…臼、9a…臼孔、10…下杵、13…センサ、15…制御装置、21…排出導体、21c…第2の排出シュート、21d…切換え弁、21ce…第1の取出し口、21cg…第2の取出し口、24…第1の入口、Sa…第1通路(不良品排出部)、28…スクレーパ、31…ノズル、33…不良品排出駆動装置、35…検知器、T…錠剤(成型品)、Ta…不良品、Tb…良品、B…臼孔の回転軌跡の中心線、C…交差部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転盤の臼取付け部に取付けられた臼が有する臼孔の回転軌跡と交差するスクレーパ、及び成型品のうちで前記回転盤外に排出される不良品を受入れる不良品排出部を有し、前記臼から下杵で押出された成型品を前記スクレーパにより回転盤外に排出する排出導体と、
この排出導体の上流側でかつ前記回転軌跡の内側に設けられて前記不良品排出部の入口に向けて空気を噴射する不良品排出用のノズルと、
このノズルから噴射された空気と前記回転軌跡の交差部と前記スクレーパとの間に配設され、これらの間を移動する前記下杵に前記不良品が載っているか否かを検知する検知器と、
前記成型品の圧縮成型時に得られた成型情報を基に前記成型品の良否判定をし、不良と判定された成型品が前記不良品排出部の入口に向かい合っているときに前記ノズルから空気を噴射させるとともに、不良と判定された成型品が前記下杵に載っていることを前記検知器が検知することに基づいて不良品対策を実行させる制御装置と、
を具備することを特徴とする粉末圧縮成型品取出し装置。
【請求項2】
前記排出導体が、第1の取出し口及び第2の取出し口を有したシュートと、このシュートに設けられて通常は前記第1の取出し口から前記成型品を排出させる第1の位置に配置された状態に保持される切換え弁を備えており、この切換え弁が、前記シュートを通過しようとする前記成型品を前記第2の取出し口から排出させる第2の位置に前記不良品対策によって配置されることを特徴とする請求項1に記載の粉末圧縮成型品取出し装置。
【請求項3】
前記回転盤の回転が前記不良品対策によって停止されることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉末圧縮成型品取出し装置。
【請求項4】
不良と判定された成型品が前記下杵に載っていることが一定時間内で連続して又は断続して所定数前記検知器で検知されることに基づいて、前記制御装置による前記不良品対策が実行されることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の粉末圧縮成型品取出し装置。
【請求項5】
回転盤の臼取付け部に取付けられた複数の臼とこれら臼に対して上下動可能に設けられた上杵と下杵により前記臼内の粉末を圧縮成型し、圧縮された成型品が前記下杵により前記臼から押出される回転式粉末圧縮成型機と、
前記臼から押出された成型品を前記回転盤外に取出す前記請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の粉末圧縮成型品取出し装置と、
を具備することを特徴とする回転式粉末圧縮成型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−235332(P2011−235332A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110455(P2010−110455)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000153801)株式会社畑鉄工所 (14)