説明

粉末消火薬剤廃棄物を原料とする肥料の製造法

【課題】肥料取締法上の大臣登録が可能となる粉末消火薬剤廃棄物を原料とした肥料の製造法を提供すること。
【解決手段】粉末消火薬剤廃棄物の撥水性を除去することで、それ自体の飛散性、水面浮遊性、疎水性等の粉末消火剤としての特性をなくし、肥料としての親水性を付与する肥料の製造法である。具体的には、有機質肥料に窒素及びリン酸を含有するA,B,C火災に適応する粉末消火薬剤廃棄物を配合すれば、有機質肥料の親油基によって、その粉末消火薬剤廃棄物の撥水性を剥脱して親水性を付与することができる。有機質肥料にその粉末消火薬剤廃棄物を41質量%から80質量%配合した場合には、その配合物を2MPa以上で加圧成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防に使用された粉末消火薬剤廃棄物中の有効成分を肥料としてリサイクルするための粉末消火薬剤廃棄物を原料とする肥料の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
消防法第七条には、粉末消火薬剤には以下の具備すべき条件が規定されている。
1.寸法180μm以下の消火上有効な微細な粉末であること。
2.30℃、相対湿度60%の恒温恒湿槽中に48時間以上恒量となるまで静置し、30℃相対湿度80%の恒温恒湿槽中に48時間静置後の重量増加量が2%以下であること。
3.水面に均一に散布した場合において、1時間以内に沈降しないこと。
この条件をクリヤするために、粉末消火薬剤は、リン酸塩類およびシリカゲルがシリコン樹脂で架橋されることで防湿、水面浮遊性、撥水性が付与されている。
【0003】
粉末消火薬剤は、適応火災によって主成分が異なるもので、そのうち、A,B,C火災に適応する粉末消火薬剤はリン酸塩類が主要な成分である。
【0004】
また、シリコン樹脂はシロキサン結合(−Si−O−)を骨格としたポリマーの総称であり、このシリコン樹脂の分子構造が、らせん構造をしており、その外側がメチル基で覆われている。このメチル基はシロキサン結合の珪素の側鎖に結合され、撥水性など消火薬剤に具備される諸物性の付与に直接機能している。
【0005】
一方において、粉末消火薬剤を散布する粉末消火器の耐用年数は概ね8年といわれるが、消火器容器の腐食から、破裂事故が連続しておきたことが契機となって、平成13年以降、春秋の全国火災予防運動と連携し、不要消火器の回収促進が展開された。この経緯は、非特許文献1に報告されている。また、火災発生時に正常に機能させるために、消火器設備会社によって定期的に点検され、粉末消火薬剤の機能の有無に関係せずに、機械的に新しい薬剤に詰め替えることが、現在では一般的である。機能の有無によらずに回収された粉末消火薬剤は、処理困難廃棄物として平成12年に消防庁を中心に産官学での消火器・防炎物品リサイクル推進委員会が設置され、消火器専門部会のなかで調査検討が実施された。そこで、係る粉末消火薬剤廃棄物のリユースの成果の一つは、ケミカル処理することによって、粉末消火薬剤としての原料化を達成することである。消防庁はスムーズなリユースの完結のために、広域認定を制度化し、そのリユース原料を40%以内までは使用することを許可し、エコマーク付消火器の製品化を推奨した。
【0006】
粉末消火薬剤廃棄物のリユースの他の成果としては、特許文献1に開示されているように、再生消火薬剤に適さないものであっても、粉末消火薬剤中に含まれるリン酸塩類を衝撃、剪断、摩擦の特殊な表面改質技術によって肥料原料に加工することである。
【0007】
また、特許文献2には、廃棄石膏ボードと廃棄消火薬剤を利用した農林用地肥料化改良材が開示されている。しかしながら、石膏資材は、中性石灰肥料の位置づけで農材として使用はするものの、土壌がアルカリ性に傾いてその圃場のpHを是正する資材として使用するものであり、通常の圃場では使用しない。したがって、係る資材を肥料に配合することの優位性は皆無である。
【0008】
さらに、また、特許文献3には、粉末消火薬剤廃棄物で家畜排泄物の堆積上部を覆うことによって、アンモニア、メタン等の環境負荷ガスの排出を抑制することが開示されている。しかしながら、堆肥に被覆された粉末消火薬剤廃棄物が、最終的に堆肥と混合処理されるために、肥料取締法上は普通肥料の登録は取れずに特殊肥料の扱いとなり、BB配合肥料の原料には使用できない。
【0009】
このように、従来開示された粉末消火薬剤廃棄物の加工によって得られた肥料原料は、それぞれ欠点を持っている。とくに、特許文献1で製造された肥料は、副産複合の普通指定肥料であるために肥料原料しては優れるものの、粉末消火薬剤廃棄物の表面改質に特殊な粉砕機の設備費が3千万円掛かり、日処理量が1tと言われ、ランニングコストを考えると、肥料原料として充分に機能するものではなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「消火器・防炎物品リサイクルの推進」総務省消防庁の消火器・防炎物品リサイクル推進委員会 平成17年3月発行
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3772181号公報
【特許文献2】特開2006−151786号公報
【特許文献3】特開2007−021295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、肥料取締法上の大臣登録が可能となる粉末消火薬剤廃棄物を原料とした肥料の製造法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、粉末消火薬剤廃棄物の撥水性を除去することで、それ自体の飛散性、水面浮遊性、疎水性等の粉末消火剤としての特性をなくし、肥料としての親水性を付与する肥料の製造法である。
【0014】
すなわち、本発明は、一般的な肥料製造工程で、原料配合に対応した肥料製造工程の条件を与えることで、処理困難廃棄物とされた粉末消火薬剤廃棄物を原料とする肥料製造法である。
【0015】
具体的には、有機質肥料に窒素及びリン酸を含有するA,B,C火災に適応する粉末消火薬剤の廃棄物を80質量%以下配合し、有機質肥料の親油基によって、その粉末消火薬剤廃棄物の撥水性を剥脱して親水性を付与する肥料の製造法である。
【0016】
そして、有機質肥料にその粉末消火薬剤廃棄物を40質量%以下配合した場合には、他に格別の処理を施すことなく、有機質肥料の親油基によってその粉末消火薬剤廃棄物の撥水性を剥脱して親水性を付与することができる。
【0017】
また、有機質肥料にその粉末消火薬剤廃棄物を41質量%から80質量%配合した場合には、その配合物を2MPa以上で加圧成形することにより、有機質肥料の親油基によって、その粉末消火薬剤廃棄物の撥水性を剥脱して親水性を付与することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、窒素及びリン酸を含有するA,B,C火災に適応する粉末消火薬剤廃棄物の肥料化によるリサイクルである。肥料化に最も優れる実例は、その粉末消火薬剤廃棄物を有機配合肥料のリン安原料代替として使用することである。リン鉱石の国際市況は、2005年1月ベースで2008年4月末が814%に上昇した。リン安の国際市況は、2005年ベースで2008年が528%である。バイオエネルギーの世界的な生産動向から、リン酸肥料の市況の低下は当面望めない。粉末消火薬剤廃棄物は、得難い低コスト肥料原料である。
【0019】
本発明は、窒素及びリン酸を含有するA,B,C火災に適応する粉末消火薬剤廃棄物を特殊な表面改質処理をすることなく、そのままの形状で配合肥料の原料に使用可能なことである。したがって、低価格の粉末消火薬剤廃棄物が、低コストのリン安肥料の代替原料として使用可能となる。
【0020】
さらに、粉末消火薬剤廃棄物は広域認定制度に則り、90数%の高い回収率を上げてはいるが、再生粉末消火薬剤でのリユースは40%の添加しか認められていない。このために廃棄物として処理されていた粉末消火薬剤廃棄物は、有用な肥料原料としてリサイクルされることになる。
【0021】
本発明の窒素及びリン酸を含有するA,B,C火災に適応する粉末消火薬剤廃棄物をリサイクルした肥料は、化成肥料の分類であり、いずれも普通肥料の登録が取得可能である。
【0022】
したがって、有価物として買い上げた低価格の粉末消火薬剤廃棄物が、低コストのリン安肥料の代替原料として使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】加圧成形物の水中崩壊状態の模式図を示す。
【図2】加圧成形しない場合の水面浮遊物質の状態模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、参考例及び実施例に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0025】
今回使用した粉末消火薬剤廃棄物は、窒素(N)を約16質量%、リン酸(P2O5)を約28%質量含有するA,B,C火災対応の回収された粉末消火薬剤廃棄物である。
【0026】
今回、一連の試験における製造された肥料の評価判定の基準としては、アンモニア態窒素と水溶性リン酸の溶解率又は溶解比の分析値と、農地以外の河川などへ水面浮遊物質が流亡することを防止するため、環境保全の立場から水面浮遊物質の状態を重視し、100mlのビーカーに試料(肥料)を入れ、純水を40ml加水し観察した。加圧成形した場合が図1、しない場合が図2の模式図として示した。
【0027】
加圧成形物の水中崩壊状態の模式図を示す図1において、A〜Dの意味は以下のとおりである。
A:水中に沈殿したままで、殆んど崩壊しない。
B:当初は沈殿しているが、その後錠剤が崩れないで水面に浮上する。
C:加水当初は沈殿しているが、やがて水中で崩壊し、多くが水中に沈殿するが、水面に浮遊する物質がある。
D:加水当初は沈殿しているが、やがて水中で崩壊して沈殿。水面浮遊物質はない。
【0028】
また、加圧成形しない場合の水面浮遊物質の状態模式を示す図2において、A〜Dの意味は以下のとおりである。
A:加水と同時に水面に盛り上がって見掛け上100%水面に浮遊し、沈殿物質は全くない。
B:沈殿物質もあるが多量の浮遊物質が認められる。
C:水面および壁面に浮遊物質が僅かに浮いているが、多くは沈殿している。
D:水面に浮遊物物質が殆んどなく、物質の多くが沈殿している。
【0029】
[参考例]
この参考例は、化学肥料を代表として圧ペン塩化カリを用い、300秒振動粉砕機にかけた粉末塩化カリと粉末消火薬剤廃棄物の比率が、100:0、75:25、50:50、25:75、0:100の試料を得た。粉末消火薬剤廃棄物で換算してそれぞれ0.5gを100mlのビーカーに秤量し、40mlの純水を加えた。その結果、粉末消火薬剤廃棄物が含まれる総てのビーカーで、水面浮遊物質は図2のAの状態であり、時間を経過しても変わらなかった。すなわち、塩化カリの配合による撥水性の剥脱は全く効果がなかった。
【0030】
これらの試料について理研KK製の加圧錠剤成形機で約0.5gの粉末試料を、加圧高度を60MPa、40MPa、20MPa、10MPa、加圧時間を30分、15分、3分20秒で加圧成形した。その結果、粉末消火薬剤廃棄物100%の試料の10MPaで加圧成形した場合のみが、加圧時間に関係なく水面浮遊物質の状態が図1のCの状態で、その他の加圧成形した錠剤は全てDの状態であった。すなわち、撥水性の剥脱は、加圧時間ではなく、加圧強度に支配され、20MPa以上であれば、粉末消火薬剤廃棄物が100%でも塩化カリとの配合でも撥水性が完全に剥脱された。
【0031】
肥料の溶解率を知るために、粉末消火薬剤廃棄物が100%の加圧強度と加圧時間が40MPa・30分、20MPa・3分20秒、10MPa・3分20秒の3種類の錠剤試料について、錠剤が水中で崩壊して3時間後、溶解したアンモニア態窒素と水溶性リン酸を定量した。その結果を表1に示す。
【0032】
試験した錠剤の水中崩壊は、堅牢と考える圧力の高い錠剤から、水中での崩壊が開始し、より弱いと考えられる圧力強度の弱い条件の錠剤の崩壊が遅かった。ただし、ここで試験された全ての錠剤のリン安の肥料成分は、完全に水相に溶解していた。すなわち、撥水性が不完全で図1のCの状態であった10MPa・3分20秒で成形された錠剤であっても、十分に肥料成分が溶解していた。つまり、肥料成分の溶解率は、撥水性の完全な剥脱がない図1のCの状態であっても十分であった。
【0033】
【表1】

【実施例1】
【0034】
実施例1は、佐賀県下で現在使用されている有機配合肥料である現行みかん美人2号(有機質肥料60数質量%とMAP、軽焼マグ、塩化カリなどの化学肥料配合)と粉末消火薬剤廃棄物の配合率が0質量%、5質量%、10質量%、20質量%で加圧時間を3分20秒として、加圧強度2MPa、5MPa、10MPa、20MPaで錠剤を作製した。また、粉末消化薬剤廃棄物100%の試料について、加圧時間を3分20秒として、加圧強度を加圧強度2MPa、5MPa、10MPa、20MPa、40MPaで錠剤を作製した。これらの錠剤を100mlのビーカーに入れ、純水を40ml加水し、3時間後にそのままNo6のろ紙でろ過したろ液のアンモニア態窒素と水溶性リン酸の成分濃度を、それぞれの20MPaの溶解成分を100とした溶解比(溶解指数)として求めた。その結果を表2に示す。なお、各錠剤は約0.5gであるが正確に秤量して補正した。
【0035】
粉末消火薬剤廃棄物100%の2MPa、5MPaの溶解指数は明らかに低い。有機配合肥料の現行のみかん美人100%の錠剤は最も早く水中崩壊を開始するが、加圧強度が高い20MPa、40MPaがほぼ同等で、加圧強度が低いものが早く水中崩壊し、肥料成分も溶解速度が速いために溶解が100を超える。肥料成分の溶解比から判断すると、粉末消火薬剤廃棄物100%以外では、加圧強度は2MPaで十分である。
【0036】
また、水中での錠剤の崩壊は、粉末消火薬剤廃棄物100%の錠剤では、加水3時間後、加圧強度が強いものから崩壊が始まり、20MPa以上では図1のDの状態であるが、2MPaでは図1のBの状態、5MPaでは図1のAの状態で崩壊せず、10MPaでは図1のC状態であった。その他の形成された錠剤では、加水3時間後では完全に崩壊しない錠剤もあったが、全て図1のDの状態で、水面浮遊物質はなかった。
【0037】
ちなみに、水中での崩壊は、粉末消火薬剤廃棄物100%は加圧強度の強いものから、有機質肥料が配合されると、加圧強度が弱い錠剤から崩壊は始まり、粉末消火薬剤廃棄物の配合比率が高い錠剤ほど、水中崩壊がやや遅れた。肥料成分の溶出比は100を超す錠剤があるが、加圧強度が低いほど水中での崩壊が早いことに起因している。
【0038】
また、実施例1で使用した有機質飼料には軽焼マグが配合されており、粉末消火薬剤廃棄物から溶解したアンモニアと水溶性リン酸でもって、MAPが形成される恐れがあった。さらに、加圧成形する前に試料をそれぞれ5g秤量して100mlビーカーにとり、純水を40ml加水すると粉末消火薬剤廃棄物の含まれたビーカーでは泡と一緒に水面浮遊物質が浮上するが、20数分後に小さなショックを与えただけで、図2のBの状態からCの状態になる共沈現象を認めた。
【0039】
【表2】

【実施例2】
【0040】
実施例2は、有機質肥料と粉末消火薬剤廃棄物の配合比率を変えて、実施例1で観察した共沈現象を明確にするために実施した。使用した有機質肥料の配分率は、ナタネ粕29質量%、ファザーミール質量19%、チキンミール32質量%、菌体肥料20質量%であった。この有機質肥料に、粉末消火薬剤廃棄物を0質量%、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、60質量%、80質量%、100質量%配合した試料を加圧しないで、0質量%、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、60質量%、80質量%配合した試料を2MPaで、20質量%、30質量%、40質量%、60質量%、80質量%配合した試料を10MPaで、加圧時間を全て3分20秒で成形した。
【0041】
粉末消化薬剤廃棄物と有機質肥料の配合試料の加水24時間後の肥料成分の溶解率は、表3に示した。
【0042】
No8の粉末消火薬剤廃棄物が100%の試料は、加圧成形されていないそのものであるが、加水24時間後のアンモニア態窒素と水溶性リン酸の溶解率が約80%で、約20%の肥料成分が水面に浮遊していた。その他の試料は溶解率から判断すると、アンモニア態窒素が93%から99%、水溶性リン酸が95%から96%であった。アンモニア態窒素は粉末消火剤の配合が少ない試料で溶解率がやや下がる傾向があり、有機質肥料への吸着が影響していると考えられる。加圧により、若干であるが肥料成分の溶解率が上がっている。溶解率から判断すると、粉末消火薬剤の肥料化は有機質肥料と配合することで達成できそうであるが、粉末消火薬剤廃棄物が60質量%、80質量%の試料では、3時間後はもとより、24時間後の水面浮遊物が若干存在する。そこで、加圧成形を必用としない配合肥料の範囲を粉末消火薬剤廃棄物の配合率が40質量%以下とし、水面浮遊物質による農地系外への環境保全を考慮して41%以上を加圧成形での肥料化処理方法の領域とした。
【0043】
すなわち、粉末消化薬剤廃棄物と有機質肥料の配合で、粉末消火薬剤廃棄物が40質量%以下では、加圧成形しなくても、加水直後は図2のAの状態であるが、2〜3時間の経過でBからCの状態となり、24時間後は図2で示すDの状態となり、農地系外への流亡の恐れは皆無で、配合肥料の登録が可能な肥料製造法となる。
【0044】
また、粉末消化薬剤廃棄物と有機質肥料の配合で、粉末消火薬剤が41質量%から80質量%の配合では、そのままの配合肥料では加水後に図2のAの状態であり、24時間後も図2のCの状態で、環境保全上問題が残り、2MPa以上で加圧成形すると、図1のDの状態が確保でき、農地系外への水面浮遊物質の流亡の恐れは全くなく、化成肥料の登録が可能な肥料製造法となる。
【0045】
粉末消火薬剤廃棄物は撥水性が剥脱されると、飛散性、水面浮遊性も剥脱される。その原理は、以下のように整理される。シリコン樹脂のシロキサン結合は非常に安定して堅強な結合であり、有機質肥料との配合や加圧でこの結合が破壊されることは考えられない。粉末消火薬剤としての飛散性は粉末粒子に関係するものの、諸物性を付加される原理はメチル基に由来する。シリコン樹脂がらせん構造であり、シロキサン結合による珪素の側鎖に、メチル基で外側が覆われるごとく結合し、撥水性、水面浮遊性等の物性を付加され、微粉末であるために飛散性が確保されている。有機質肥料との配合では、有機質肥料の持つ親油性の基質にメチル基が反応することで共沈現象が起こり、粉末消火薬剤廃棄物が40質量%以下の配合では24時間後に殆ど水面浮遊物質が認められない。
【0046】
僅かに水面浮遊が認められた60質量%、80質量%の試験区では、加圧により親油性の基質とメチル基の反応がより加速促進され、撥水性は剥脱され水面浮遊物質がなくなる。粉末消火薬剤廃棄物100%、化学肥料との配合の加圧処理で粉末消火薬剤の諸物性が剥脱されることは、メチル基が加圧により傷むことに起因する。このことは、原料配合を変えた加圧成形錠剤の水中崩壊性の試験において、また、加圧成形前の配合肥料の水面浮遊性の有無で実証された。
【0047】
【表3】

【0048】
なお、表4は、粉末消火薬剤廃棄物を原料とする肥料の製造法をまとめたもので、粉末消火薬剤廃棄物と配合する肥料、加圧条件の有無、加圧条件、水面浮遊物質の状態、肥料化の適否を一覧にしたものである。
【0049】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機質肥料に窒素及びリン酸を含有するA,B,C火災に適応する粉末消火薬剤の廃棄物を80質量%以下配合し、
有機質肥料の親油基によって前記粉末消火薬剤廃棄物の撥水性を剥脱して親水性を付与する肥料の製造法。
【請求項2】
有機質肥料に前記粉末消火薬剤の廃棄物を40質量%以下配合したことを特徴とする請求項1に記載の肥料の製造法。
【請求項3】
有機質肥料に前記粉末消火薬剤の廃棄物を41質量%から80質量%配合し、その配合物を2MPa以上で、3分20秒以上加圧成形することを特徴とする請求項1に記載の肥料の製造法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−63905(P2013−63905A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−253518(P2012−253518)
【出願日】平成24年11月19日(2012.11.19)
【分割の表示】特願2008−271323(P2008−271323)の分割
【原出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(507120865)佐賀県農業協同組合 (2)
【出願人】(303018296)兼定興産株式会社 (4)
【出願人】(397077461)理研農産化工株式会社 (4)
【出願人】(308031784)九菱肥料工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】