説明

粉末版微小繊維状セルロースの適合性および効率を改善する方法

粉末微小繊維状セルロール(MFC)組成物の性能を改善する方法を提供する。その方法は、ポリマー分解剤を用いて粉末MFC組成物中の助剤を分解するステップを含む。ポリマー分解剤はMFCをほとんど分解しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年9月8日に出願された、米国仮出願第61/240,347号に基づいて優先権を主張する。この仮出願を、参考文献としてその全文を本明細書に含める。
【背景技術】
【0002】
粘度調整剤は、食品、医薬品、化粧品から油田掘削液まで、様々な製品に使用されている。このような粘度調整剤の1つが、微小繊維状セルロース(MFC)であり、アセトバクター・キシリナムの発酵により生産できる。このバクテリアは、植物由来のセルロースと化学的に同一のセルロースを生成する。化学構造は同一であるが、MFCファイバは、植物由来のセルロースファイバよりも径を小さくすることができ、これにより大きな表面積を与えることができる。この大きな表面積は、MFCが、低い使用濃度の溶液中に、所望の降伏値を生成する3次元網を形成することを可能にする。MFCは、本質的には不溶性であり非荷電であり、従って、イオン環境により悪影響されない。MFCは本質的に不溶性であるため、水を奪い合わず、従って広範囲の適合性を有し、水溶性ポリサッカリドよりもずっと分解されにくい。それは、油田用途に使用される重いブラインのような濃縮アニオン性水溶液、および液体の食器用洗剤および洗濯洗剤のような、高界面活性剤系の双方に適合する。MFCは、カチオン性柔軟剤を用いる繊維柔軟剤や塩化ベンジルアルコニウムを使用する抗菌洗浄剤のような、カチオン系にも適合する。
【0003】
その純粋形では、MFCは、一般に約10〜20重量%の固形物および水としての残部を有するウェットケーキ(湿潤した厚紙に似ている)として得ることができる。ウェットケーキMFCは、水溶液系および多くの水混和性有機溶媒系との例外的な適合性を有する。ウェットケーキMFCを用いる時、MFCは、MFCが全ての機能を実現するように、真水中または最終製剤中のいずれかに、高剪断条件下で「活性化」または高度に分散されていることが好ましい。純粋なMFCは、製剤の残部中に希釈されるように濃縮溶液として活性化されている場合、通常、その性能に悪影響を与えることなしに、任意の順序で別の成分とともに最終製剤に追加できる。しかし、ウェットケーキMFCは親水性であり、油および他の疎水性材料とは一般的に適合しない。
【0004】
これらの利点にもかかわらず、純粋形のMFCは、ウェットケーキMFCを含めて現在市販されていない。その代わりに、AxCel PX、AxCel CG−PX、AxCel PG Cellulon PXおよび「K」が付く名前の様々な製品(米国CP Kelco社)を含む、乾燥粉末形のMFCが入手可能である。これらの市販版の粉末MFCを用いて、濃縮界面活性剤系や高界面活性剤系などの多くの用途において懸濁を提供できる(例えば、米国特許出願第2008/0108541号(特許文献1)、2008/0108714号(特許文献2)および2008/0146485号(特許文献3)を参照されたい。MFCおよびMFC/界面活性剤系に関する教示のための参考文献として本明細書に含める)。これらの市販版粉末MFCは、MFCと様々な助剤(co−agent)とを混合して成り、この助剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、グアール、ペクチン、ジェラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、アラビアガム等であるが、これらに限定されない。MFC系に関する追加情報は、例えば、米国特許出願第2007/0027108号(特許文献4)および2007/0197779号(特許文献5)に見出すことができ、MFCおよび助剤を有するMFC系に関する教示のための参考文献として本明細書に含める。
【0005】
これらの助剤は、MFCを乾燥させ粉砕して粉末製品にすることを可能にする。これらの助剤がなければ、MFCは、乾燥および粉砕後、その機能を高い度合いで失いうる。しかし、このような混合物は、助剤の適合性の限界により、粉末MFCを製品中に使用する方法に限界を与えうる。例えば、MFCは非荷電であるのに対して、使用される助剤の大部分は、アニオン性またはカチオン性のいずれかである。従って、市販のMFC製品は、例えばカチオン性界面活性剤を有する製品中に使用される時、適合性の問題を有しうる。また、市販のMFCは、グリコールまたはグリセロールのような水混和性有機溶媒を高濃度に含む製品との適合性が限定されうる。このような有機溶媒とともに使用される場合、市販のMFCからの助剤は、貧弱な透明性および貧弱な降伏値を生じさせうる沈殿物を形成しうる。さらに、粉末MFCの活性溶液の使用は、沈殿物を形成する助剤のような問題を防止するために、別の試薬が製剤に添加される順序を制限しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第2008/0108541号
【特許文献2】米国特許出願第2008/0108714号
【特許文献3】米国特許出願第2008/0146485号
【特許文献4】米国特許出願第2007/0027108号
【特許文献5】米国特許出願第2007/0197779号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、様々な製剤中に使用するための、より純粋なMFCのように機能する粉末MFCの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、MFCと助剤とを含む粉末MFC組成物の性能を改善する方法が提供される。その方法は、助剤は分解するがMFCはほとんど分解しないために有効な時間だけ、ポリマー分解剤とMFCおよび助剤とを混合するステップを有する。
【0009】
別の態様では、製剤を作る方法、またはMFCを用いて組成物のレオロジを変更する方法が提供される。その方法は、処理されたMFCを所望の製剤に添加するステップを含み、処理されたMFCは、助剤は分解するがMFCはほとんど分解しないために有効な時間だけ、ポリマー分解剤とMFCおよび助剤とを混合するステップを含むことができる方法により用意される。
【0010】
本発明の実施形態は、以下の詳細な説明、例および請求項中に示す。以上の一般的説明および以下の詳細な説明は共に、代表的かつ説明のためのものに過ぎず、限定的なものではないことは明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の方法を開示して説明する前に、以下に記載する態様は、特定の実施例に限定されず、こうした特定の実施例は、当然変更できることは明らかである。本明細書で使用する用語は、特定の態様を説明する目的のものに過ぎず、限定することを意図していないことも明らかである。
【0012】
本明細書およびこれに続く特許請求の範囲では、以下の意味を有するように定義される多数の用語を参照する。
【0013】
なお、明細書および添付の特許請求の範囲中に用いる単数形は、特に断りのない限り、複数形を含む。従って、例えば、「酵素」とは、酵素の混合物を含み、「助剤」とは、2以上のこうした助剤の混合物を含む。
【0014】
本明細書では、範囲は、「約」特定値から、または「約」別の特定の値まで、あるいは「約」特定の値から「約」別の特定の値まで、のように表すことがある。範囲をこのように表すとき、別の態様は、特定の値から、または別の特定の値まで、あるいは特定の値から別の特定の値まで、を含む。同様に、「約」を用いて値を概数で表すとき、その特定値は別の態様を形成することは明らかである。さらに、各範囲の端点は、他方の端点に関連して意味を持つことも、他方の端点とは無関係に意味を持つこともある。
【0015】
成分の重量パーセントは、特に断りのない限り、その成分が含まれる製剤または組成物の総重量に基づくものである。
【0016】
助剤は、粉末状の機能的なMFC製品を作るのに必要であるが、これらの助剤をほぼ分解させて、粉末MFCをより純粋なMFCのように機能させることができることを発見した。MFCをほとんど分解させずに助剤が分解される限り、得られたMFC溶液は、非水であるが水混和性の有機溶媒中に懸濁を提供する改善された能力とともに、カチオン性、アニオン性、三価イオン、高塩濃度、高界面活性剤濃度またはそれらの組み合わせとの大きく改善された適合性を有する。
【0017】
おそらく、助剤を有効な程度まで分解させる最も簡単な方法は、まず、次の分解のために、粉末MFCを水溶液、好ましくは真水中に分散させることであり得る。水中での粉末の分散は、助剤(例えば、キサンタンガム、セルロースガムまたはグアールガム)が水和する、あるいは少なくとも膨潤状態に達することを可能にする。次に、有効量のポリマー(助剤)分解剤を添加することができる。その分解は、助剤が所望の程度まで分解するのに有効な期間および条件下で発生する。
【0018】
助剤が分解された後、自然に停止しない場合に分解を停止させることができる。
【0019】
MFC/助剤混合物中の助剤の分解処理の目的は、助剤を大幅に分解させて、助剤がMFCと全く関連しないように、あるいは最終製剤中のどの成分とも反応しないほど十分に低い分子量にすることにある。視覚試験は、助剤の分解が十分な程度に発生したか否かを判定するのに適切でありうる。視覚的な指標は、MFCファイバが用意された溶液中のMFCファイバの強い凝集とすることができる。CMC、カチオン性HEC、カチオン性グアール、および程度はより低いがキサンタンガムやグアールガム等の助剤の機能の1つは、MFCの良好に分散した溶液を維持することである。助剤が分解されると共に、MFCの凝集が発生しうる。この凝集が見られない場合、助剤がその構造を過度に保ったままであるためであり、追加の反応時間または分解剤あるいは増強した反応条件が必要となりうる。
【0020】
本発明は、現在入手可能な市販の粉末MFCの適合性、柔軟性および効率を改善できる方法に関するものである。
【0021】
A.粉末MFC組成物の性能を改善する方法
ここに、助剤を含む粉末MFC組成物の性能を改善する方法を説明する。一態様では、本方法は、化学的破壊剤あるいは酵素的破壊剤のような、ポリマー分解剤で助剤を分解するステップを含む。
【0022】
MFC/助剤
助剤を有する粉末MFCは市販されている。例えば、キサンタンガムおよびセルロースガムは、CP Kelco社のAxCel PX、AxCel CG−PX、およびCellulon PXの製品中に存在する助剤であり、グアールガムおよびセルロースガムは、AxCel PGの製品中に存在する助剤である。これらの特定の市販MFC製品は、助剤であるセルロースガム、キサンタンガム、および/またはグアールガムを含むが、他の多くの別の組み合わせも、カチオン性グアール、カチオン性ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カラギーナル、ジェラン、等との混合物を含む、粉末MFCの機能版を提供することができることが証明されている。
【0023】
これらの助剤は、一般にアニオンに荷電されているため(グアール、カチオン性グアールおよびカチオン性HECを除いて)、一般的に、製剤中のカチオン性調整剤あるいはカチオン性抗菌剤のようなカチオン成分と反応する。この効果は、現在の市販の形態での粉末MFCの利用を限定する。また、これらの助剤は、その助剤のいくらかの非適合性により沈殿し、MFCファイバを被覆してその網目構造を形成する効果を低減する場合、MFC混合物の機能を低下または消失させうる。この助剤の沈殿が発生しうる例は、非常な高塩濃度の製剤、高界面活性剤系、あるいは、非水系においては、PEG、グリセロール、またはエチレングリコールあるいはプロピレングリコール等を含む。
【0024】
分解
分解を促進するために、助剤を含む粉末MFCを、例えば、水または水とアルコールあるいはポリオールとの混合液等の溶媒に添加して、助剤を水和できる。有効な量および種類の溶媒は、助剤の良好な水和物を生成できる。撹拌混合を用いて、粉末MFC/助剤を含む溶液の形成を促進できる。
【0025】
ポリマー分解剤(助剤分解剤)をMFC溶液に添加して、実際に助剤の分解を行うことができる。ポリマー分解剤は、化学的「破壊剤」または酵素的「破壊剤」を含むことができる。「破壊剤」は油田産業において使用される用語であり、化学物質または酵素を使用して掘削液、仕上げ流体または刺激流体中の増粘剤の粘度を破壊または著しく低減する。撹拌混合を用いて、ポリマー分解剤の溶媒への添加を促進することができる。
【0026】
一態様では、粉末MFC組成物の性能を改善する方法が提供される。本発明の実施例によれば、粉末MFC組成物は、MFCファイバが用意された溶液中でMFCファイバが目に見える凝集を示すとき、「改善された性能」を示す。本明細書で用いる「粉末MFC組成物」は、MFCと助剤とを含む。粉末MFC組成物は、様々な量の助剤を含むことができる。一実施例では、粉末MFC組成物は、該粉末MFC組成物の約10重量%〜約90重量%、または約20重量%〜約50重量%の範囲の助剤を含むことができる。
【0027】
本明細書で用いる「助剤」という用語は、1以上の助剤を称する。一実施例では、助剤は、イオン性または非イオン性ポリマー材料とすることができる。幾つかの実施例では、助剤はポリサッカリドとすることができる。別の実施例では、助剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、キサンタンガム、グアール、ペクチン、ジェラン、カラギーナン、ローカストビーンガムまたはアラビアガムとすることができるが、それらに限定されない。
【0028】
粉末MFC組成物の性能を改善する方法は、有効量のポリマー分解剤と、MFCおよび助剤を含む粉末MFC組成物とを、助剤を分解させるのに有効な時間だけ混合する第1のステップを含むことができる。
【0029】
本明細書で用いる「ポリマー分解剤」という用語は、ポリマーの複数の化学結合を切断することにより、ポリマーの分子量を低減することができるあらゆる物質を称する。本明細書で用いる「複数の化学結合」は、2以上の共有結合を称し、結合の各々は、単結合、二重結合、または三重結合とすることができる。本明細書で用いる「分解」という用語は、ポリマーの複数の化学結合を切断することを指す。
【0030】
幾つかの実施例では、有効量のポリマー分解剤は、有効量の助剤を分解するための量のポリマー分解剤とすることができる。幾つかの実施例では、視覚試験は、助剤の分解が有効量だけ発生したか否かを判定するのに適したものとすることができる。視覚的な指標は、MFCが用意された溶液中でのMFCファイバの凝集の出現とすることができる。いずれか1つの理論に限定されることなく、助剤の1つの機能は、溶液中のMFCの分散を維持することである。助剤が分解されると共に、MFCの凝集が発生しうる。この凝集が観察されない場合、それは、助剤がその構造を過度に保ったままであるためであり、従って、有効量の助剤が分解されていない可能性がある。
【0031】
幾つかの実施例では、助剤を分解するための有効時間は、所望量の助剤を分解するための時間とすることができる。例えば、幾つかの実施例では、有効時間を約72時間まで、約48時間まで、約24時間まで、約1時間まで、約30分まで、約5分まで、または約1分までとすることができる。
【0032】
粉末MFC組成物の性能を改善する方法において、MFCはほとんど分解されないことが好ましい。本明細書で用いる「ほとんど分解されない」とは、ポリマー分解剤での粉末MFC組成物の処理後に、MFCがほとんどそのままの状態であることを意味する。
【0033】
化学物質
幾つかの実施例では、ポリマー分解剤は、化学的破壊剤、酵素的破壊剤またはそれらの組み合わせとすることができる。本明細書で用いる「化学的破壊剤」という用語は、酵素ではない、助剤の複数の化学結合を切断することができる1以上の化学薬剤を称する。本明細書で用いる「酵素的破壊剤」という用語は、助剤の複数の化学結合を切断することができる1以上の酵素を称する。
【0034】
一方法例は、化学的破壊剤の使用を含む。化学的破壊剤は、過酸化水素または次亜塩素酸塩ナトリウムのような酸化剤とすることができる。適正濃度で使用すると、過酸化剤または漂白剤は、存在する助剤を非常に低分子量の生成物まで速やかに破壊する。一方、MFCは、特に助剤を破壊するのに必要となりうる時間スケールに亘って、これらの試薬に対して極めて安定である。残りの酸化剤は、例えば、pHを調整するか、三価のカチオン(例えば、Fe3+)を添加して、残りの全ての酸化剤または漂白剤と速やかに反応させることによって、反応により系から消失させることができる。
【0035】
幾つかの実施例では、ポリマー分解剤は化学的破壊剤とすることができる。一実施例では、化学的破壊剤は、助剤を分解することができる化学物質を含むことができる。さらに別の実施例では、化学的破壊剤は酸化剤を含むことができる。さらにまた別の実施例では、化学的破壊剤は、過酸化水素、過酸化カルシウム、過硫酸アンモニウム、過炭酸ナトリウム、過酸化尿素、過ホウ酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸リチウム、塩酸、水酸化ナトリウム、および/またはそれらの組み合わせとすることができるが、それらに限定されない。当業者は、油田技術に目を向ける等により、別の化学的破壊剤を決定することができる。破壊剤および破壊剤の濃度の選択は、主に、どれだけ速く粘度破壊が起きて欲しいか、および破壊剤がどのような条件下(例えば、溶媒のpHおよび温度)で機能する必要があるかに依存する。当業者は、破壊剤を有効量、タイミングおよび反応条件に合わせることができる。
【0036】
反応条件の調整は、助剤の分解を促進することができる。なお重要なこととして、MFCは、化学的破壊剤による分解に完全に影響されないわけではないが、一般に水溶性助剤よりもずっと低速に影響される。幾つかの実施例では、化学的破壊剤を粉末MFC組成物に添加した後、混合物のpHを上下に調整して、助剤の分解を促進することができる。さらに別の実施例では、化学的破壊剤を粉末MFC組成物に添加した後、混合物の温度を上下に調整して、助剤の分解を促進することができる。当業者は、反応促進条件を決定することができる。
【0037】
酵素
別の方法例は、助剤を破壊するための酵素の使用を含む。例えば、MFC(例えばAxCel PG)とグアールガムおよびセルロースガムの混合物の場合、グマーゼ(β−グルカナーゼ)およびセルラーゼを使用でき、MFC(例えば、AxCel PX)とキサンタンガムおよびセルロースガムの混合物の場合、キサンタナーゼおよびセルラーゼを使用できる。MFCは、セルラーゼによっても分解されやすいが、大抵、可溶形セルロース(セルロースガムのような)に対してよりも数桁低速に分解するため、セルラーゼがMFCに対する目立った効果を示す前に、分解は大抵、無効化されうる(例えば、低温殺菌法、高いpH、酸化処理、あるいは溶液を酵素が活性化していない製剤に添加することにより)。
【0038】
有効量の有効な酵素的破壊剤を溶液に添加することができる。酵素的破壊剤について、使用する酵素の種類は、分解される助剤の種類に依存する。当業者は、適切な酵素または混合酵素を決定することができる。例えば、セルラーゼはセルロースガム助剤と用いて有効であるが、グアールガムとともにグマーゼを用いることが好ましい。キサンタンガムは、通常これらの酵素のいずれによっても分解されないため、キサンタンガム助剤を除去する時に、キサンタナーゼ酵素が必要である。なお重要なこととして、セルロースガム助剤を破壊するために使用される任意のセルラーゼ酵素は、最終的にMFCも分解する。しかし、その分解は、MFCに対しては可溶性セルロースガム助剤よりもずっと低速であり、その結果、MFCファイバに著しい分解が起こる前に、セルロースガム助剤が破壊された後、大抵は酵素を非活性化するのに十分な時間がある。酵素的破壊剤濃度の選択は、どれだけ速く粘度破壊が起きて欲しいか、および破壊剤がどのような条件下(例えば、時間、溶媒のpH、温度および塩分濃度)で機能することが必要とされるかに依存する。
【0039】
酵素を使用する時の反応条件の調整により、助剤分解を促進することができる。例えば、溶液を約45℃まで加熱することにより、酵素の助剤破壊の速度を加速できることが多い。また、pHを特定の酵素活性に最適なpHに調整することにより、酵素の助剤破壊の速度を加速できる。こうして、当業者は、助剤の十分な分解を達成しつつ、MFCの分解を最小化するよう、酵素分解剤および反応条件を選択することができる。
【0040】
幾つかの実施例では、ポリマー分解剤は、酵素的破壊剤とすることができる。一実施例では、酵素的破壊剤は、助剤を分解するのに有効な酵素を含むことができる。本明細書で用いる「助剤を分解するのに有効」とは、酵素が助剤ポリマーの複数の化学結合を切断できることを意味する。幾つかの実施例では、酵素的破壊剤は、セルラーゼ、キサンタナーゼ、グマーゼ、および/またはそれらの組み合わせとすることができるが、それらに限定されない。別の実施例では、酵素的破壊剤を粉末MFC組成物に添加した後に、混合物のpHを上下に調整して、助剤の分解を促進することができる。さらに別の実施例では、酵素的破壊剤を粉末MFC組成物に添加した後に、混合物の温度を上下に調整して、助剤の分解を促進することができる。
【0041】
失活
粉末MFC組成物の性能を改善する方法は、助剤が分解された後にポリマー分解剤を失活させるステップをさらに含むことができる。本明細書で用いる「失活させる」とは、例えば、ポリマー分解剤が助剤ともはや反応しないようにする、ポリマー分解剤の物理的および/または化学的非活性化を称する。失活させる方法は当業者に既知であり、温度を調整すること、pHを調整すること、またはそれらの両方を含む。また、幾つかの実施例では、ポリマー分解剤は、失活剤を添加する追加のステップにより失活させることができる。別の方法は、助剤を分解するには十分であるがMFCを著しく破壊するには十分でない、少量のポリマー分解剤のみを用いて助剤の分解を行うこととすることができる。
【0042】
化学的破壊剤が分解処理中に完全に反応しない場合、化学的破壊剤を溶液から反応により消失させる(または「失活させる」)ことが好ましい。これは、化学的破壊剤を不安定化させて化学的破壊剤を素早くかつ完全に消費できる向きにpHを調整することにより行えることが多い。別の方法は、助剤を分解するには十分であるがMFCファイバを著しく破壊するには十分ではない、少量のポリマー分解剤のみで開始する分解を行うこととすることができる。当業者は、化学分解の停止のための別の方法を決定することができる。
【0043】
酵素分解剤は、様々な方法により非活性化することができる。一実施例では、酵素分解剤を非活性化する方法は、酵素を含むMFC溶液を、酵素を非活性化するのに十分な温度で(低温)殺菌するステップを含む。別の実施例では、酵素分解剤を非活性化する方法は、十分なイオン強度を有する溶液を、酵素を含むMFC溶液に添加して酵素を非活性化するステップを含む。さらに別の実施例では、特定のpHの溶液を、酵素を含むMFC溶液に添加して、酵素を非活性化するステップを含む。酵素を非活性化する別の方法は、酵素を変性させることである。本明細書で用いる「非活性化する」という用語は、酵素の触媒反応を停止することを称する。当業者は酵素的破壊剤を非活性化する別の方法を決定することができる。
【0044】
粉末MFC組成物の性能を改善する方法は、MFCおよび助剤を含む粉末MFC組成物を、助剤を水和して分散を形成するのに有効な量の溶媒中に分散させるステップを含むこともできる。幾つかの実施例では、溶媒は1以上の液体である。一実施例では、溶媒は水である。幾つかの実施例では、水は真水、脱塩水、半塩水、水道水等とすることができる。
【0045】
別の実施例では、溶媒はアルコールを含むことができる。別の実施例では、溶媒はポリロールを含むことができる。本明細書で用いる「アルコール」という用語は、1以上のアルコールを称する。さらに別の実施例では、溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、フェニルアルコール、ベンジルアルコール、および/またはそれらの組み合わせを含むことができるが、それらに限定されない。幾つかの実施例では、溶媒は、水および1以上のアルコールおよび/または1以上のポリオールを含むことができる。さらに別の実施例では、溶媒は、水対アルコールの比率を1:1、水対アルコールの比率を2:1、水対アルコールの比率を3:1、水対アルコールの比率を4:1、水対アルコールの比率を10:1とすることができる。
【0046】
本方法は、粉末MFC組成物を、助剤を水和させるのに有効な量の溶媒に分散させるステップをさらに含むことができる。幾つかの実施例では、助剤を水和させるのに有効な量の溶媒は、助剤を完全に水和させるのに十分な溶媒とすることができる。別の実施例では、助剤を水和させるのに有効な量の溶媒は、助剤を膨潤状態に到達させるのに十分な溶媒とすることができる。さらに別の実施例では、助剤を水和させるのに有効な量の溶媒は、助剤が溶媒中に完全に分解するのに十分な溶媒とすることができる。別の実施例では、助剤を水和させるのに有効な量の溶媒は、助剤を部分的に水和させるのに十分な溶媒とすることができる。
【0047】
粉末MFC組成物の性能を改善する方法は、有効量のポリマー分解剤を、助剤を分解するのに有効な時間だけ、分散体に添加するステップを含むことができる。
【0048】
幾つかの実施例では、粉末MFC組成物の性能を改善する方法は、分散体を撹拌混合するステップをさらに含むことができる。
【0049】
さらに、幾つかの実施例では、粉末MFC組成物の性能を改善する方法は、有効量のポリマー分解剤を分散体に添加した後に、分散体を撹拌混合するステップをさらに含むことができる。幾つかの実施例では、撹拌混合は、ポリマー分解剤の分散体への添加の直前に停止し、ポリマー分解剤の添加が完了したら撹拌混合を再開することができる。別の実施例では、ポリマー分解剤の分散体への添加の全体を通して連続する撹拌混合を用いることができる。さらに別の実施例では、撹拌混合の速度は、ポリマー分解剤の分散体への添加中に増加または減少させることができる。さらにまた別の実施例では、撹拌混合の速度を、ポリマー分解剤の分散体への添加中に増加または減少させて、ポリマー分解剤の添加の完了後に、撹拌混合の速度を再び増加または減少させることができる。
【0050】
ポリマー分解剤は、個別にまたは組み合わせて使用できる。当業者は、使用するポリマー分解剤に基づいて別のステップを適宜調整することができる。
【0051】
B.MFCを用いた製剤の形成方法
別の態様では、MFCを用いて製剤を形成する方法が提供される。この方法は、処理したMFCを製剤に添加するステップを含み、処理したMFCは、ある方法に従って用意される。本明細書で用いる「製剤」は、食品、医薬品、化粧品、パーソナルケア製品および油田掘削液を含むことができるが、それらに限定されない。
【0052】
処理したMFCを用意する方法は、随意的に、MFCと助剤とを含む粉末MFC組成物を、助剤を水和させて分散体を形成するのに有効な量の溶媒中に分散させるステップを含む。代わりに、処理したMFCを用意する方法は、溶媒を用いず、分散を形成せず、粉末MFC組成物のみを用いることを含むことができる。その方法は、有効量のポリマー分解剤を分散体または粉末状MFC組成物に、助剤を分解するのに有効な時間だけ添加するステップをさらに含むことができる。
【0053】
「粉末MFC組成物」、「助剤」、「ポリマー分解剤」、「有効量の助剤を分解するために有効な量のポリマー分解剤」、「有効量の助剤を分解するために有効な時間」、「溶媒」、「水和させるのに有効」および「ポリマー分解剤はMFCをほとんど分解しない」の定義は、以上で定義したのと同じである。
【0054】
一実施例では、処理したMFCを含む製剤は、未処理の粉末MFCを含む製剤よりも高い降伏値を有する。このように、少なくとも幾つかの実施例では、製剤は、処理したMFCを用いて用意すると、市販の粉末MFCを用いて用意した同一の製剤に比べて高い降伏値を有することができる。
【0055】
別の実施例では、処理したMFCを含む製剤はほぼ透明である。本明細書で用いる「ほぼ透明」という用語は、外観検査時に製剤に曇りが観察されないことを意味する。別の実施例では、ほぼ透明は、繊維材料が製剤中に観察されないことを意味し得る。さらに別の実施例では、ほぼ透明は、わずかな霞しか観察されないことを意味し得る。
【0056】
幾つかの実施例では、ポリマー分解剤は、化学的破壊剤、酵素的破壊剤、またはそれらの組み合わせとすることができる。本明細書で用いる「化学的破壊剤」という用語は、酵素ではない、助剤の複数の化学結合を切断することができる1以上の化学薬剤を称する。本明細書で用いる「酵素的破壊剤」という用語は、助剤の複数の化学結合を切断することができる1以上の酵素を称する。
【0057】
一方法例は、化学的破壊剤の利用を含む。化学的破壊剤は、過酸化水素または次亜塩素酸ナトリウムのような酸化剤とすることができる。適正濃度で使用すると、過酸化物または漂白剤は、存在する助剤を非常に低分子量の生成物まで速やかに破壊する。一方、MFCは、特に助剤を破壊するのに必要となりうる時間スケールに亘って、これらの試薬に対して極めて安定である。残りの酸化剤は、例えばpHを調整するか、三価のカチオン(例えば、Fe3+)を添加して、残りの全ての酸化剤または漂白剤と速やかに反応させることによって、反応により系から消失させることができる。
【0058】
幾つかの実施例では、ポリマー分解剤は化学的破壊剤とすることができる。一実施例では、化学的破壊剤は、助剤を分解することができる化学物質を含むことができる。さらに別の実施例では、化学的破壊剤は酸化剤を含むことができる。さらにまた別の実施例では、化学的破壊剤は、過酸化水素、過酸化カルシウム、過硫酸アンモニウム、過炭酸ナトリウム、過酸化尿素、過ホウ酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸リチウム、塩酸、水酸化ナトリウム、および/またはそれらの組み合わせとすることができるが、それらに限定されない。当業者は、油田技術に目を向ける等により、別の化学的破壊剤を決定することができる。破壊剤および破壊剤の濃度の選択は、主に、どれだけ速く粘度破壊が起きて欲しいか、および破壊剤がどのような条件下(例えば、溶媒のpHおよび温度)で機能する必要があるかに依存する。当業者は、破壊剤を有効量、タイミングおよび反応条件に合わせることができる。
【0059】
反応条件の調整は、助剤の分解を促進することができる。なお重要なこととして、MFCは、化学的破壊剤による分解に完全に影響されないわけではないが、一般に水溶性助剤よりも非常に低速に影響される。幾つかの実施例では、化学的破壊剤を粉末MFC組成物に添加した後、混合物のpHを上下に調整して、助剤の分解を促進することができる。さらに別の実施例では、化学的破壊剤を粉末MFC組成物に添加した後、混合物の温度を上下に調整して、助剤の分解を促進することができる。当業者は、反応促進条件を決定することができる。
【0060】
別の方法例は、助剤を破壊するための酵素の使用を含む。例えば、MFC(例えばAxCel PG)とグアールガムおよびセルロースガムの混合物の場合、グマーゼ(β−グルカナーゼ)およびセルラーゼを使用でき、MFC(例えば、AxCel PX)とキサンタンガムおよびセルロースガムの混合物の場合、キサンタナーゼおよびセルラーゼを使用できる。MFCは、セルラーゼによっても分解されやすいが、大抵、可溶形セルロース(セルロースガムのような)に対してよりも数桁低速に分解するため、セルラーゼがMFCに対する目立った効果を示す前に、分解は大抵、無効化されうる(例えば、低温殺菌法、高いpH、酸化処理、あるいは溶液を酵素が活性化していない薬剤に添加することにより)。
【0061】
有効量の有効な酵素的破壊剤を溶液に添加することができる。酵素的破壊剤について、使用する酵素の種類は、分解される助剤の種類に依存する。当業者は、適切な酵素または酵素混合物を決定することができる。例えば、セルラーゼはセルロースガム助剤と用いて有効であるが、グアールガムとともにグマーゼを用いることが好ましい。キサンタンガムは、通常これらの酵素のいずれかにより分解されないため、キサンタンガム助剤を除去する時に、キサンタナーゼ酵素が必要である。なお重要なこととして、セルロースガム助剤を破壊するために使用される任意のセルラーゼ酵素は、最終的にMFCも分解する。しかし、その分解は、MFCに対しては可溶性セルロースガム助剤よりもずっと低速であり、その結果、MFCファイバに著しい分解が起こる前に、セルロースガム助剤が破壊された後、大抵は酵素を非活性化するのに十分な時間がある。酵素的破壊剤濃度の選択は、どれだけ速く粘度破壊が起きて欲しいか、および破壊剤がどのような条件下(例えば、溶媒のpH、温度および塩分濃度)で機能ことが必要とされているかに依存する。
【0062】
酵素を使用する時の反応条件の調整により、助剤分解を促進することができる。例えば、溶液を約45℃まで加熱することにより、酵素の助剤破壊の速度を加速できることが多い。また、pHを特定の酵素活性に最適なpHに調整することにより、酵素の助剤破壊の速度を加速できる。こうして、当業者は、助剤の十分な分解を達成しつつ、MFCの分解を最小化するよう、酵素分解剤および反応条件を選択することができる。
【0063】
幾つかの実施例では、ポリマー分解剤は、酵素的破壊剤とすることができる。一実施例では、酵素的破壊剤は、助剤を分解するのに有効な酵素を含むことができる。本明細書で用いる「助剤を分解するのに有効」とは、酵素が助剤ポリマーの複数の化学結合を切断できることを意味する。幾つかの実施例では、酵素的破壊剤は、セルラーゼ、キサンタナーゼ、グマーゼ、および/またはそれらの組み合わせとすることができるが、それらに限定されない。別の実施例では、酵素的破壊剤を粉末MFC組成物に添加した後に、混合物のpHを上下に調整して、助剤の分解を促進することができる。さらに別の実施例では、酵素的破壊剤を粉末MFC組成物に添加した後に、混合物の温度を上下に調整して、助剤の分解を促進することができる。
【0064】
E.用途
分解された助剤を有する組成物は、様々な製剤および用途において使用できる。市販の粉末MFCの溶液は、例えば、過酸化物で処理し、次いでカチオン性繊維柔軟剤およびカチオン性洗浄剤中で有効に用いることができる。比較すると、未処理の市販の粉末MFC溶液は、これらのカチオン系と強く反応して強い沈殿をもたらす。また、これらの処理したMFC溶液は、水しか含まないPEG300およびプロピレングリコールの溶液中の懸濁を濃厚にするか生じさせるのに有効に働き、この水は、処理した市販の粉末MFCを含ませる際の、処理した市販の粉末MFCの1重量%の水溶液によって与えられる。また、処理した粉末MFC溶液は、高界面活性剤系への添加の順序に比較的鈍感であるのに対し、未処理の粉末MFC溶液は、添加の順序に著しい敏感さを示す。
【0065】
以上に開示した組成物および方法は、例えば、界面活性剤用増粘剤により得られるなめらかで豊富な濃厚化を含むが、処理した粉末MFCにより与えられる高い降伏値により物質を懸濁する能力を伴う、ボディソープ、ハンドソープ、シャンプーを作るのに使用できる。
また、本開示の組成物および方法は、懸濁活性物質(例えば、保湿ビーズ)を有する食器用洗剤、あるいは不溶性酵素、封入活性物質およびゼオライトのような、懸濁活性物質を有する装飾アイテムまたは洗濯洗剤を作るために用いることができる。本開示の組成物および方法は、カチオン性界面活性剤を含む、繊維柔軟剤、抗菌洗浄剤、スキンローション、およびヘアコンディショナのようなカチオン系とともに有用である。さらに、本開示の組成物および方法は、懸濁親水コロイドまたは別の微粒子材料を懸濁させるための分散媒として用いるPEG溶液のような非水系に懸濁を与えるのに有用であり得る。
【0066】
本開示は、以下の例によりさらに説明するが、本発明の範囲を多少なりとも限定するものと解釈されるべきではない。一方、本発明の精神および/または添付の特許請求の範囲から逸脱することなしに当業者がこれらの例の説明を読んだ後に想到し得る様々な別の実施形態、変更および等価物を用いることができることは明らかである。
【0067】
例1:粉末版MFC中のカルボキシメチルセルロース(CMC)ガムの酵素的分解
【0068】
ステップ1:重量でMFC6割とCMC4割とを含む粉末MFC(CP Kelco社、米国、アトランタ、ジョージア州)の1重量%水溶液を200g用意した。粉末MFCは、その溶液を250mLプラスチック混合容器中に入れて密閉し、民生用Oster(登録商標)ミキサ(モデル6820)上で、約18000rpmで5分間撹拌混合することにより活性化した。
【0069】
性能試験A:ステップ1で用意した1重量%溶液を25gと、All 3倍濃縮Small&Mighty洗濯洗剤(ユニリーバ社、トランバル、コネチカット州)175gとを800rpmで撹拌混合しながら200mL容器に徐々に添加した。添加が完了した後、得られた溶液を遠心分離により脱気し、EZ−YieldソフトウェアとBrookfield(登録商標)DV−III Ultra粘度計を用いて降伏値を試験した。降伏値は、LVバネ#71ベーン(羽根)ツールを用いて0.05rpmで測定した。
【0070】
結果:降伏値は約0.2Paだった。濃縮液体洗濯洗剤組成物は、組成物中に可視の繊維状物質を有する貧弱な透明度を有していた。可視の繊維状物質の存在は、助剤の沈殿を示していた。
【0071】
ステップ2:約800rpmでのプロペラ撹拌混合の下で、Multifect(登録商標)CL工業用セルロース酵素(ダニスコ社、Genencor(登録商標)事業部、ロチェスター、ニューヨーク州)4滴を、粉末MFCの1重量%水溶液200g(ステップ1のものと同様)に添加した。酵素を添加した後、撹拌混合渦のサイズの小さな増加が観察された。
【0072】
性能試験B:ステップ2で用意した1重量%溶液25gを200mL容器に添加し、All 3倍濃縮Small&Mighty洗濯洗剤(ユニリーバ社、トランバル、コネチカット州)175gを800rpmで撹拌混合しながら200mL容器に徐々に添加した。添加が完了した後、得られた溶液を遠心分離により脱気し、EZ−YieldソフトウェアとBrookfield(登録商標)DV−III Ultra粘度計を用いて降伏値を試験した。降伏値は、LVバネ#71ベーンツールを用いて0.05rpmで測定した。
【0073】
結果:降伏値は約0.9Paだった。濃縮液体洗濯洗剤組成物は透明であり、繊維状物質は見られなかった。
【0074】
ステップ3:約800rpmでのプロペラ撹拌混合の下で、Multifect(登録商標)CL工業用セルロース酵素(ダニスコ社、Genencor(登録商標)事業部、ロチェスター、ニューヨーク州)4滴を、粉末MFCの1重量%水溶液200g(ステップ1におけるものと同様)に添加した。溶液のpHを、(MFC溶液の重量に基づく)約2.5重量%の1.0Mクエン酸ナトリウム緩衝溶液を添加することにより、(pH7.7から)約pH6.0に調整した。これは、セルラーゼ酵素が働くように系のpHを最適化するためであった。次いで、Multifect(登録商標)CLセルロース酵素の追加の3滴を溶液に添加した。溶液は室温で一晩放置した。一晩のエージング後、微小繊維状セルロースの凝集が溶液中で観察され、CMCの分解を示していた。
【0075】
性能試験C:ステップ3で用意した1重量%溶液25gを200mL容器に添加し、All 3倍濃縮Small&Mighty洗濯洗剤(ユニリーバ社、トランバル、コネチカット州)175gを800rpmで撹拌混合しながら200mL容器に徐々に添加した。添加が完了した後、得られた溶液を遠心分離により脱気し、EZ−YieldソフトウェアとBrookfield(登録商標)DV−III Ultra粘度計を用いて降伏値を試験した。降伏値は、LVバネ#71ベーンツールを用いて0.05rpmで測定した。
【0076】
結果:降伏値は約3.5Paだった。濃縮液体洗濯洗剤組成物は少量の霞しか有さず優れた透明性を有し、繊維状物質は観察されなかった。
【0077】
例2:粉末版MFC中のキサンタンガムおよびセルロースガム助剤の化学的分解
【0078】
ステップ1:MFC6割とキサンタンガム3割とCMC1割とを含む粉末MFC(AxCel CG−PX、米国CP Kelco社製、アトランタ、ジョージア州)の1重量%水溶液を200g用意した。MFC溶液は、250mLプラスチック撹拌容器中に入れて密閉し、民生用Oster(登録商標)ミキサ(モデル6820)で、最高速度(約18000rpm)で5分間撹拌混合することにより活性化した。
【0079】
性能試験A:1重量%溶液25g(ステップ1から)を200mL容器に添加し、次いで、プロピレングリコール175gを800rpmで撹拌混合しながらそれに徐々に添加した。その溶液を250gOster(登録商標)混合カップに移し、最高速度で1分間撹拌した。溶液を、真空を用いて脱気し、EZ−YieldソフトウェアとBrookfield(登録商標)DV−III Ultra粘度計を用いて降伏値を試験した。降伏値は、LVバネ#71ベーンツールを用いて0.05rpmで測定した。
【0080】
結果:降伏値は約1.10Paだった。溶液は良好な透明性を有していた。
【0081】
性能試験B:1重量%溶液の25g(ステップ1から)を200mL容器に添加し、ポリエチレングリコール300(PEG300またはPEG6、アトラスケミカル社、サンディエゴ、カリフォルニア州)175gを800rpmで撹拌混合しながら徐々に添加した。次いで、その溶液を250gOster(登録商標)密閉カップ容器に移した。続いて、溶液をOsterミキサ(モデル6820)上で最高速度で1分間撹拌混合した。その後、遠心分離機を用いて溶液を脱気し、EZ−YieldソフトウェアとBrookfield(登録商標)DV−III Ultra粘度計を用いて降伏値について試験した。降伏値は、LVバネ#71ベーンツールを用いて0.05rpmで測定した。
【0082】
結果:降伏値は約0.47Paだった。溶液は強く乱れた透明性を有していた。
【0083】
ステップ2:1重量%溶液の25g(ステップ1で用意した)に、過酸化水素をMFC溶液の総重量に基づく0.25重量%の濃度で添加した。その過酸化水素は、市販の30重量%過酸化水素水(Fisher Scientific社)として添加した。次いで、得られたMFC溶液を、実験用オーブン中に45℃で3日間置いた。オーブン中でのエージングの後、1重量%溶液中にMFCの明確な凝集が観察され、CMCの分解を確認した。しかしながら、キサンタンガムの分解を示す視覚的兆候は確認されなかった。
【0084】
性能試験C:過酸化水素(ステップ2から)が添加された1重量%溶液25g(ステップ1から)を200mL容器に添加し、次いで、約800rpmで撹拌混合しながら、プロピレングリコール175gをそれに徐々に添加した。その溶液を250gOster(登録商標)混合カップに移し、最高速度(約18000rpm)で1分間撹拌した。真空を用いて溶液を脱気し、EZ−YieldソフトウェアとBrookfield(登録商標)DV−III Ultra粘度計を用いて降伏値を試験した。降伏値は、LVバネ#71ベーンツールを用いて0.05rpmで測定した。
【0085】
結果:降伏値は2.1Paだった。得られた組成物は、繊維状物質の兆候のない優れた透明性を有していた。
【0086】
性能試験D:過酸化水素(ステップ2で用意した)が添加された1重量%溶液25gを200mL容器に添加し、ポリエチレングリコール300(PEG300またはPEG6、アトラスケミカル社、サンディエゴ、カリフォルニア州)175gを800rpmで撹拌混合しながら徐々に添加した。その溶液を250mL密閉カップOster(登録商標)容器に移した。溶液をOsterミキサ(モデル6820)上で最高速度(約18000rpm)で1分間撹拌した。溶液を遠心分離機を用いて脱気し、EZ−YieldソフトウェアとBrookfield(登録商標)DV−III Ultra粘度計を用いて降伏値について試験した。降伏値は、LVバネ#71ベーンツールを用いて0.05rpmで測定した。
【0087】
結果:降伏値は1.4Paだった。得られた組成物は、優れた透明性を有していた。
【0088】
例3:粉末版MFC中のキサンタンガムおよびセルロースガム助剤の化学分解
【0089】
ステップ1:重量でMFC6割と、キサンタンガム3割と、セルロースガム1割とを含む、粉末MFC(AxCel Cg−Px、米国CP Kelco社製、アトランタ、ジョージア州)の1重量%水溶液1.2リットルを用意した。MFC溶液をSilverson(登録商標)L4RT−A均質機(ホモジナイザ)を用いて10000rpmで10分間撹拌混合することにより活性化した。微細乳剤スクリーンを使用した。
【0090】
性能試験A:1重量%MFC溶液25g(ステップ1で用意した)を200mL容器に添加し、次いでTide(登録商標)2倍濃縮Free&Clear HE液体洗濯洗剤(Procter&Gamble社、シンシナティ、オハイオ州)を添加した。その溶液を、撹拌台上でプロペラ撹拌棒を用いて1000rpmにて5分間撹拌混合した。遠心分離器を用いて得られた溶液を脱気し、EZ−YieldソフトウェアとBrookfield(登録商標)DV−III Ultra粘度計を用いて降伏値を試験した。降伏値は、LVバネ#71ベーンツールを用いて0.05rpmで測定した。
【0091】
結果:降伏値は0.2Paだった。
【0092】
ステップ2:1重量%溶液25g(ステップ1で用意した)に、過酸化水素を、MFC溶液の総重量に基づく0.25重量%の濃度で添加した。その過酸化水素は、市販の30重量%過酸化水素水(Fisher Scientific社)として添加した。次いで、得られたMFC溶液を、実験用オーブン中に60℃で16時間置いた。オーブン中でのエージング後、1重量%溶液中にMFCの明確な凝集が観察され、CMCの分解を確認した。しかしながら、キサンタンガムの分解を示す視覚的兆候は確認されなかった。
【0093】
性能試験B:1重量%MFC溶液25g(ステップ2から)を200mL容器に添加し、次いでTide(登録商標)2倍濃縮Free&Clear HE液体洗濯洗剤(Procter&Gamble社、シンシナティ、オハイオ州)を添加した。その溶液を、撹拌台上でプロペラ撹拌棒を用いて1000rpmで5分間撹拌混合した。得られた溶液を遠心分離によって脱気し、EZ−YieldソフトウェアとBrookfield(登録商標)DV−III Ultra粘度計を用いて降伏値について試験した。降伏値は、LVバネ#71ベーンツールを用いて0.05rpmで測定した。
【0094】
結果:降伏値は2.72Paだった。
【0095】
例4:粉末版MFC中のグアールガムおよびセルロースガム助剤の化学分解
【0096】
ステップ1:MFC6割とグアールガム2割とセルロースガム2割とを含む粉末MFC(AxCel Cg−Px、米国CP Kelco社製、アトランタ、ジョージア州)の1重量%水溶液を1.2リットル用意した。そのMFC溶液を、Silverson(登録商標)L4RT−A均質機を用いて10000rpmで10分間撹拌混合することにより活性化した。微細乳剤スクリーンを使用した。
【0097】
性能試験A:1重量%MFC溶液25g(ステップ1で用意した)を200mL容器に添加し、次いでTide(登録商標)2倍濃縮Free&Clear HE液体洗濯用洗剤(Procter&Gamble社、シンシナティ、オハイオ州)を添加した。その溶液を、撹拌台上でプロペラ撹拌棒を用いて1000rpmで5分間撹拌混合した。得られた溶液を遠心分離により脱気し、EZ−YieldソフトウェアとBrookfield(登録商標)DV−III Ultra粘度計を用いて降伏値について試験した。降伏値は、LVバネ#71ベーンツールを用いて0.05rpmで測定した。
【0098】
結果:降伏値は0.03Paだった。
【0099】
ステップ2:1重量%溶液25g(ステップ1で用意した)に、過酸化水素をMFC溶液の総重量に基づく0.25重量%の濃度で添加した。その過酸化水素は、市販の30重量%過酸化水素水(Fisher Scientific社)として添加した。次いで、得られたMFC溶液を、実験用オーブン中に60℃で16時間置いた。オーブン中でのエージング後、1重量%溶液中にMFCの明確な凝集が観察され、CMCの分解を確認した。しかしながら、グアールガムの分解を示す視覚的兆候を確認されなかった。
【0100】
性能試験B:1重量%MFC溶液25g(ステップ2で用意した)を200mL容器に添加し、次いでTide(登録商標)2倍濃縮Free&Clear HE液体洗濯用洗剤(Procter&Gamble社、シンシナティ、オハイオ州)を添加した。その溶液を、撹拌台上でプロペラ撹拌棒を用いて1000rpmで5分間撹拌混合した。得られた溶液を遠心分離によって脱気し、EZ−YieldソフトウェアとBrookfield(登録商標)DV−III Ultra粘度計を用いて降伏値について試験した。降伏値は、LVバネ#71ベーンツールを用いて0.05rpmで測定した。
【0101】
結果:降伏値は2.40Paだった。
【0102】
以上は、本発明の好適な実施例のみに関するものであり、以下の請求項およびそれらの等価物に規定するように、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの変更および改良を加えることができることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末微小繊維状セルロース(MFC)と助剤とを含むMFC組成物の性能を改善する方法であって、
ポリマー分解剤と前記MFCおよび前記助剤とを、前記助剤は分解するが前記MFCはほとんど分解しないために有効な時間だけ混合するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記混合するステップは、前記MFCと前記助剤と前記ポリマー分解剤とを、前記助剤を水和させて分散を形成するのに有効な量の溶媒中に分散させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒は水を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒は、水、アルコール、ポリロール、および/またはそれらの組み合わせである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記助剤が分解された後、前記ポリマー分解剤を失活させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー分解剤は化学的破壊剤、酵素的破壊剤、および/またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化学的破壊剤は酸化剤を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記化学的破壊剤は、過酸化水素、過酸化カルシウム、過硫酸アンモニウム、過炭酸ナトリウム、過酸化尿素、過ホウ酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸リチウム、塩酸、水酸化ナトリウム、および/またはそれらの組み合わせである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記酵素的破壊剤は、前記助剤を分解するのに有効な酵素を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記酵素的破壊剤は、セルラーゼ、キサンタナーゼ、グマーゼおよび/またはそれらの組み合わせである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
温度、pH、またはそれら両方を調整するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記助剤を分解するための時間を、前記MFCの凝集を視覚的に観察することにより決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
MFCを用いて製剤を形成する方法であって、
処理したMFCを製剤に添加するステップを含み、前記処理したMFCは、
ポリマー分解剤と前記MFCおよび前記助剤とを、前記助剤は分解するが前記MFCはほとんど分解しないために有効な時間だけ混合するステップを含む方法により用意することを特徴とする方法。
【請求項14】
前記処理したMFCを含む製剤は、未処理の粉末MFCを含む製剤よりも高い降伏値を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記処理したMFCを含む製剤はほぼ透明である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマー分解剤は化学的破壊剤、酵素的破壊剤および/またはそれらの組み合わせである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記化学的破壊剤は酸化剤を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記化学的破壊剤は、過酸化水素、過酸化カルシウム、過硫酸アンモニウム、過炭酸ナトリウム、過酸化尿素、過ホウ酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸リチウム、塩酸、水酸化ナトリウム、および/またはそれらの組み合わせである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記酵素的破壊剤は、前記助剤を分解するのに有効な酵素を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記酵素的破壊剤は、セルラーゼ、キサンタナーゼ、グマーゼおよび/またはそれらの組み合わせである、請求項16に記載の方法。

【公表番号】特表2013−503933(P2013−503933A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527444(P2012−527444)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054049
【国際公開番号】WO2011/030295
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(511246289)シーピー ケルコ ユーエス インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】CP KELCO U.S., INC.
【Fターム(参考)】