説明

粉末状大豆素材及びこれを利用した食用組成物

【課題】脂質親和性蛋白質が持つコレステロール低減効果や腎症予防効果などの特徴ある栄養機能特性を活かすことができ、かつ食品素材としての加工適性にも優れることにより、食用組成物の風味や食感を損ねることなく栄養機能を付加することのできる粉末状大豆素材を提供する。また脂質親和性蛋白質の栄養機能特性に拘ることなく、従来の大豆素材にはなかった優れた加工適性を有する粉末状大豆素材を提供し、そして特徴ある物性を活かした食用組成物を提供する。
【解決手段】大豆蛋白質及び大豆食物繊維を含有し、蛋白質含量が無脂固形分重量あたり35〜85重量%であって、蛋白質のLCI値が60以上であることを特徴とする粉末状大豆素材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末状大豆素材及びこれを利用した食用組成物に関する。詳しくは、大豆から取り出した特定の画分を用いた粉末状大豆素材および該大豆素材特有の機能を利用した食用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆蛋白質は、特有のゲル化力を発揮する性質から、食用組成物の物性改善に幅広く利用されており、また蛋白質の補給源として栄養価の高い健康食品素材としての利用も増大している。
大豆の貯蔵蛋白質は、pH4.5付近で沈澱し、比較的簡単に貯蔵蛋白質以外の酸可溶性成分が主体の大豆ホエー蛋白質画分と貯蔵蛋白質が主体の酸沈殿性蛋白質画分とに分けることができる。この酸沈殿性蛋白質画分を回収したものが分離大豆蛋白であり、ゲル形成能力に富み、栄養的にもアミノ酸スコアが高く、現在広く食品工業分野で利用されている。
【0003】
大豆蛋白質を構成する蛋白質は、超遠心分析による沈降係数から、2S,7S,11S,15Sの各蛋白質に分類される。このうち、7S蛋白質と11S蛋白質は大豆の酸沈殿性蛋白質の主要な構成成分である。なお、免疫学的命名法にいうβ−コングリシニンは7S蛋白質に、グリシニンは11S蛋白質に実質的に相当するものである。そしてこれらの主要な蛋白質は、粘性、凝固性、界面活性などの物性や栄養生理機能において異なる性質を有する。
【0004】
例えば7S蛋白質は栄養学的には血中の中性脂肪を低下させることが報告されている(非特許文献1)。そのゲルは弾力のあるゲル質を示し、液の粘性が高い。また、11S蛋白質は、ゲル化力が高く、豆腐ゲルの硬さ・食感を支配していると言われている。このように7S蛋白質と11S蛋白質はいずれも比較的強いゲル形成能を示すことが特徴であるが、その物性は加工条件によって異なる。例えば水分量が多い系での加熱では、7S蛋白質の特性から影響する食感の変化としてはネチャツキを感じたり、11S蛋白質の酸やCa,Mgイオンに対する加熱時の挙動の結果として強い凝集力が生まれることによる味の変化やザラツキが感じられるようになり、必ずしも食用組成物として好ましい状態にならない場合もある。
【0005】
一方、近年大豆中の酸沈殿性蛋白質には7S蛋白質や11S蛋白質以外にも、細胞膜をはじめプロテインボディーやオイルボディー等の膜を構成する極性脂質との親和力の高い雑多な蛋白質の集合体である、「脂質親和性蛋白質」の存在が明らかになっている(非特許文献2)。この脂質親和性蛋白質は、コレステロール低減効果(特許文献1)や、腎症予防効果を有することが認められており(特許文献2)、特異な栄養機能が明らかにされつつある。
一方で脂質親和性蛋白質の物性については詳しく知られておらず、食品素材としての加工適性に関して、特許文献3では、脂質親和性蛋白質の一つであるオレオシンとリン脂質との複合体を、乳化安定剤として利用する技術が開示されている。ただし、脂質親和性蛋白質はこのように複合体となって脂質を随伴するため酸化されやすく、オフフレーバーの原因とも言われている。そのため食品素材としては風味が悪く使いづらいと考えられており、栄養機能面の利点を実際の利用に活かすには未だほど遠い状態であるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2006/129647号公報
【特許文献2】WO2009/110504号公報
【特許文献3】WO2002/26788号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Okita T et al, J.Nutr.Sci.Vitaminol.,27(4), 379-388, 1981
【非特許文献2】Herman, Planta, 172, 336-345, 1987
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記実情に鑑み、本発明は、脂質親和性蛋白質が持つコレステロール低減効果や腎症予防効果などの特徴ある栄養機能特性を活かすことができ、かつ食品素材としての加工適性にも優れることにより、食用組成物の風味や食感を損ねることなく栄養機能を付加することのできる粉末状大豆素材を提供することを課題とする。また脂質親和性蛋白質の栄養機能特性に拘ることなく、従来の大豆素材にはなかった優れた加工適性を有する粉末状大豆素材を提供し、そして特徴ある物性を活かした食用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明者らは、脂質親和性蛋白質を分画し、その物性や風味について詳しく調べた結果、単体の脂質親和性蛋白質はゲル形性力や凝集力が7S蛋白質や11S蛋白質よりも弱いことを見出した。そしてさらに脂質親和性蛋白質と大豆の他の成分との組合せについて検討を進めた結果、濃縮された脂質親和性蛋白質と大豆食物繊維が主体となった画分に着目した。そして、この画分を取り出しその物性を探求したところ、食感の滑らかさやネチャツキの低減、さらに乳化安定性と保形性等の種々の能力を合わせ持つ素材となり得ることを認め、脂質親和性蛋白質の特性を活かした利用が図れる可能性を見出し、上記課題を解決するに至った。
【0010】
すなわち本発明者らは、ゲル形成力や凝集力の少ない脂質親和性蛋白質と大豆食物繊維を主体としたものを粉末状大豆素材とすることを着想するに到り、かかる素材について様々な食用組成物の物性改良に使用が可能であることを見出した。
なお、従来のオカラ等の大豆食物繊維が主体の素材では、保水性を有するものの、それ自体で結着してまとまる力が少ないために保形性が弱く、食感もざらつきを感じ、唾液を吸い取られるように感じる場合が多かった。これに対し、本発明は脂質親和性蛋白質と大豆食物繊維との組み合わせによって、適度な結着力による保形性および滑らかな食感と乳化性を合わせ持つ素材を見出したものである。
【0011】
すなわち本発明は、
(1)大豆蛋白質及び大豆食物繊維を含有し、蛋白質含量が無脂固形分重量あたり35〜85重量%であって、蛋白質のLCI値が60以上であることを特徴とする粉末状大豆素材、
(2)大豆食物繊維含量が蛋白質に対して15〜130重量%である、前記(1)記載の粉末状大豆素材、
(3)前記(1)記載の粉末状大豆素材を使用した食用組成物、
(4)粉末状組成物、乳化組成物、焼きもしくは揚げ菓子、練り製品、又は半固形状ないしゲル状組成物である、前記(3)記載の食用組成物、
(5)食用組成物が、蛋白質又は食物繊維を強化したものである、前記(4)記載の食用組成物、
(6)大豆蛋白質及び大豆食物繊維を含有し、蛋白質含量が無脂固形分重量あたり35〜85重量%であって、蛋白質のLCI値が60以上である粉末状大豆素材を食用組成物中に配合することを特徴とする食用組成物の物性改良方法、
(7)物性が分散性、保形性、保水性、乳化安定性、酸化安定性又は食感である前記(6)記載の食用組成物の物性改良方法、である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、従来の分離大豆蛋白や濃縮大豆蛋白等の大豆素材では得難かった食感の良さや食用組成物の原料生地への分散性、保形性の良さ等の様々な良好な物性を有する粉末状大豆素材を提供できる。これによって食用組成物の物性に関する従来の欠点を改良したり、食用組成物本来の物性を損ねることなく食用組成物中に蛋白質や食物繊維を栄養的に強化することが可能となる。さらには、コレステロール低減効果や腎症予防効果、腸内環境改善効果など、生理機能の発現を目的とする食用組成物に用いる蛋白質又は食物繊維の強化用原料として提供することができ、かかる食用組成物にあってはその物性を損ねることなく蛋白質あるいは食物繊維を強化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した試料の各蛋白質成分のバンドを染色した図である。分子量マーカーのバンドの位置との関係から特定された各蛋白質成分名を示している。左から1番目のウェルが分子量マーカー、左から2〜5番目のウェルがMSPの濃度計算のための検量線作成用標準試料、右から1,2番目のウェルが測定試料である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔用語説明〕
本発明について説明するに際し、必要な用語についてまず説明する。
【0015】
(7S蛋白質/11S蛋白質/酸沈殿性蛋白質)
大豆に含まれる蛋白質のうち、7S蛋白質と11S蛋白質は、いずれも大豆のプロテインボディーに貯蔵される主要な貯蔵蛋白質である。
「7S蛋白質」はβ−コングリシニンとも呼ばれ、一般には3種のサブユニット(α’、α、β)から構成される糖蛋白質であるが、何れかのサブユニットが欠損していても良い。これらのサブユニットはランダムに組み合わされ、3量体を形成している。等電点はpH4.8付近で分子量は17万程度である。
一方、「11S蛋白質」はグリシニンとも呼ばれ、酸性サブユニット(AS)と塩基性サブユニット(BS)がジスルフィド結合によって結合し、それらが6分子集まった12量体を形成しており、分子量は36万程度である。以下、それぞれ「7S」、「11S」と略記することがある。
【0016】
7Sと11Sはいずれも酸沈殿性大豆蛋白質である。ここでいう「酸沈殿性蛋白質」は、大豆に含まれる蛋白質の内、脱脂豆乳などの溶液のpHを等電点付近(pH4〜6)に調整することにより不溶化し、酸沈澱する性質を有する蛋白質をいう。したがって、例えば分離大豆蛋白に含まれる蛋白質がこれに相当し、分離大豆蛋白製造時に酸沈殿しないホエー中の蛋白質はこれに含まれない。
7Sと11Sは、品種によっても異なると考えられるが、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(以下、「SDS−PAGE」と称する。)(図1参照)において泳動後のゲルを染色剤であるクマシーブリリアントブルー(CBB)にて染色した後、デンシトメトリーによってピーク面積を測定した場合、従来の分離大豆蛋白(SPI)などでは大豆蛋白質全体の約70%を占める主要な蛋白質である。そこで以下、7Sと11Sを総称して「MSP」(Major Soy Protein)と称する。
【0017】
(脂質親和性蛋白質)
脂質親和性蛋白質(Lipophilic Proteins)は、大豆の酸沈殿性蛋白質の内、7Sと11S以外のマイナーな酸沈殿性蛋白質群をいい、レシチンや糖脂質などの極性脂質を多く随伴するものである。主に膜成分に含まれる大豆膜蛋白質および膜成分に親和性の高い蛋白質がコロイド状に分散しており、酸性で不溶化する。以下、脂質親和性蛋白質を単に「LP」と略記することがある。
このLP中にはSDS−PAGEによる推定分子量において主に34kDa、24kDa、18kDa、17kDaを示す蛋白質、リポキシゲナーゼ、γ−コングリシニンや、その他多くの雑多な蛋白質が含まれる。このLPはSDS−PAGEでは7Sや11Sに比べて染色されにくい性質を有している。
【0018】
〔実施形態〕
(粉末状大豆素材)
本発明の粉末状大豆素材は、大豆蛋白質及び大豆食物繊維を含有し、蛋白質含量が無脂固形分重量あたり35〜85重量%であって、蛋白質のLCI値が60以上であることを特徴とするものである。
換言すれば、該大豆素材は酸沈殿性蛋白質の内、7Sや11Sとも異なるLPが特に濃縮された大豆蛋白質と大豆食物繊維が主体となっているものである。これについてより詳細に説明する。
【0019】
<大豆蛋白質>
・蛋白質含量
本発明の粉末状大豆素材中の蛋白質含量は、無脂固形分あたり35〜85重量%であることが重要であり、42〜68重量%であるのがより好ましく、45〜65重量%がさらに好ましい。ここで「無脂固形分」とは、全固形分からエーテルで抽出される中性脂質を除いた固形分をいう。該大豆素材中の蛋白質含量が少なすぎると相対的に食物繊維含量が多くなり、食感がざらつきやすやぱさつきが多くなり、乳化安定性も低下する傾向となり、逆に多すぎるとLPに随伴する脂質の量が多くなり、風味が劣化しやすくなり好ましくない。なお、蛋白質含量はケルダール法によって定量した窒素量に、「窒素−蛋白質換算係数」(6.25)を乗じて算出される。
【0020】
・LP含量
本発明の粉末状大豆素材に含まれる大豆蛋白質の組成は、少なくともLPが通常の分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、脱脂大豆、オカラ等の大豆素材に含まれる大豆蛋白質の組成よりも濃縮されていることが重要である。
LPは酸沈殿性蛋白質の内、7S及び11S以外の雑多な蛋白質が混在したものであるが故に、各々の蛋白質を全て特定することは困難である。また分離大豆蛋白等の大豆素材は最終の製品化工程において一般的には加熱殺菌されるため、7S,11SはLPと共に加熱変性が起こっている。そのため、製品化された分離大豆蛋白等からLPを7Sや11Sから分離し、LP含量を測定することが困難である。また、一般的な蛋白質組成の測定方法であるSDS−PAGEではLPが7Sや11Sに比べてCBB染色がされにくいという性質を有し、染色度によって正確に測定することも困難である。
【0021】
そこで、このLPの濃縮度合いは、LP含量の推定値として「LCI値」という指標を用いることとする。LCI値は、簡易的に7S,11S,LPの各蛋白質中の主要な蛋白質を選択し、それらの染色比率を求め、これらの比率からLP含量を推定する以下のLCI値の算出方法により算出されるものである。なお、本方法は一般的な分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白などの大豆素材のみならず、大豆7S蛋白質、大豆11S蛋白質、LPの多いSPIなどの各種分画物にも広く適用が可能である。
【0022】
−LCI値の算出方法−
(a)各蛋白質中の主要な蛋白質として、7Sはαサブユニット及びα'サブユニット(α+α')、11Sは酸性サブユニット(AS)、LPは34kDa蛋白質及びリポキシゲナーゼ(P34+Lx)を選択し、SDS−PAGEにより選択された各蛋白質の染色比率を求める(図1参照)。SDS−PAGEは表1の条件で行うものとする。
(b)数1の式によりLP推定含量(Lipophilic Proteins Content Index、以下「LCI」と略する。)を算出する。
【0023】
(表1)

【0024】
(数1)

【0025】
上記の方法により算出される、本発明の粉末状大豆素材に含まれる蛋白質のLCI値は、60以上であることが重要である。このLCI値はさらに62以上が好ましく、65以上がより好ましく、70以上がさらに好ましい。なお通常のLPが濃縮されていない大豆素材の場合、LCI値は60未満であるので、該大豆素材のLCI値が60未満となると、通常の大豆素材と品質的に変わらなくなる。ちなみに本発明者らの分析によれば、従来製法による分離大豆蛋白のLCI値は35〜50程度に過ぎない。また、通常の脱脂大豆から蛋白質を水抽出した不溶性残渣であるオカラの場合、LP含量は乾燥固形分中20〜30重量%程度であり、そのLCI値は50程度に過ぎない。このようにLCI値が60以上である該大豆素材は、LPが濃縮されているものであるため、他の酸沈殿性大豆蛋白質である7S蛋白質と11S蛋白質の組成は通常の大豆素材と比べて相対的に低いものである。そのため、7S蛋白質と11S蛋白質の組成を限定することは特に不要であるが、これらの組成についてはより具体的には以下の通りである。
【0026】
・7S蛋白質及び11S蛋白質(MSP)含量
本発明の粉末状大豆素材における蛋白質あたりのMSP含量は、LPの割合が減るほど、すなわちLCI値が低くなるほど多くなる。該大豆素材中にMSPが多く含まれていると、通常の濃縮大豆蛋白の組成に近づき、ネチャつきや硬い食感などの特徴が表れ、好ましくない。そのため、できるだけ含まれていないことが好ましい。MSP含量はLCI値と逆相関の関係にあるため特に限定は不要であるが、より詳細に示すならば、大豆蛋白質あたり40重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましく、20重量%以下がさらに好ましい。
なお、MSP含量について測定する場合は、以下の方法によってSDS−PAGEを用いて測定することとする。
【0027】
−MSP含量算出方法−
脱脂大豆から水抽出した抽出液に硫酸ナトリウムを1Mの濃度になるように溶解し、さらに10mMになるように還元剤である亜硫酸ナトリウムを加え、pHを塩酸か硫酸で4.5に調整し、不溶物を除いた後、透析してイオン強度を0.03以下にすることによって生じる沈殿物を集めることによって得られた画分を「標準精製MSP」とする。
この標準精製MSPの蛋白質含量をケルダール法によって求め、蛋白質量として5〜15μgをSDS−PAGE用ゲルの各ウェルにアプライし、電気泳動後、CBB染色し(図1参照)、デンシトメーターによって、その染色度をカウントする。そして蛋白質アプライ量と染色度の関係を基に検量線を作成する。同一のスラブゲル上に測定試料をアプライし展開する。測定試料には、MSP以外にLPなどが存在するため、デンシトメトリーにてMSPのバンド(αサブユニット、α’サブユニット、βサブユニット、酸性サブユニット、塩基性サブユニット)の染色度だけを合算し、その染色程度から測定試料に含まれるMSPの含量をMSP検量線から測定する。
【0028】
<大豆食物繊維>
本発明の粉末状大豆素材は大豆食物繊維を含むことが必須である。すなわち、LPと大豆食物繊維が共存していることが特徴であり、これらの組合せが大豆素材としての特有の効果を発揮させる。該大豆素材中の大豆食物繊維の含量は、蛋白質に対して下限は通常15重量%以上であり、20重量%以上が好ましく、25重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましい。また該大豆素材中の大豆食物繊維の含量の上限は蛋白質に対して通常130重量%以下であり、100重量%以下が好ましく、95重量%以下がより好ましく、90重量%以下がさらに好ましい。
なお、食物繊維の含量は、「五訂増補日本食品標準成分表」(文部科学省、2005)に準ずるものとし、食物繊維含量は酵素−重量法(プロスキー変法)により測定する。
大豆食物繊維が含まれないか少なすぎ、該大豆素材中の蛋白質含量が85重量%を超えてしまうと、LPが大部分を占める構成となり、LP特有の劣化臭のような風味が顕著となり、分散性や保形性等の物性も低下する傾向となる。逆に大豆食物繊維が多すぎ、蛋白質含量が35重量%未満となると、食感にざらつきやぱさつきが生じやすくなり、乳化安定性等の物性も低下する傾向となる。
【0029】
<脂質>
食用組成物中の脂質は、エーテル抽出法で抽出される中性脂質と、エーテル抽出法では抽出されず、クロロホルム:メタノール=2:1の混合溶媒で抽出される極性脂質とに分類される。
粉末状大豆素材は中性脂質をできるだけ含まないことが好ましく、中性脂質は通常3重量%以下であるのが好ましい。
一方、極性脂質はLPと随伴する性質を有するため、該大豆素材中に通常5〜15重量%含まれる場合が多い。なお、極性脂質含量はクロロホルム−メタノール抽出法で測定される脂質(中性脂質及び極性脂質)の含量からエーテル抽出法で抽出される脂質(中性脂質)の含量を差し引いた値として算出される。
【0030】
<ホエー成分>
粉末状大豆素材にはホエー成分である糖質や酸可溶性大豆蛋白質(pH4〜6で酸沈殿しない蛋白質)は実質的に含まないのが好ましい。すなわち、該大豆素材の製造時において、原料からホエー成分が抽出除去されていることが好ましい。該大豆素材にホエー成分が多く含まれると食物繊維の含量が相対的に低下して、乳化性や保水性が悪くなる。
【0031】
(粉末状大豆素材の調製)
本発明の粉末状大豆素材の調製例を示す。なお、以下の調製例はあくまで例示に過ぎず、本発明の粉末状大豆素材が特定するように、大豆蛋白質と大豆食物繊維を共に含有し、特定の蛋白質含量と特定のLCI値を満たすものであれば特に限定されるものではない。
【0032】
まず本大豆素材の原料は、全脂大豆又は脱脂大豆のいずれを用いることもでき、本大豆素材中の蛋白質含量を高めたい場合には脱脂大豆を用いる方が好ましい。
また大豆としては通常の大豆の他、育種あるいは遺伝子操作によって7S又は/及び11Sの一部もしくは全部を欠損させた大豆を原料に用いることできる。
【0033】
これらの原料を用いて本発明の大豆素材を調製する一つの方法としては、LPを選択的に水不溶化させて、7S及び11Sと分画してLPを濃縮する方法を用いることができる。例えば脱脂大豆又は全脂大豆を原料として特許文献1(WO2006/129647号公報)に記載される方法を利用できる。すなわち、大豆を加熱変性処理あるいはアルコール変性処理し、PDIが40以上80未満の加工大豆を得、これを必要により粉砕し、水で抽出し、その不溶性画分を回収し、これを乾燥粉末化したものを用いることができる。
【0034】
特許文献1の方法をより具体的に説明すると、大豆のPDIを40以上80未満という特定の範囲に調整することにより、7S及び11Sをできるだけ不溶化することなく、LPを選択的に水不溶化することができる。ここで「PDI」とは蛋白質分散性指数(Protein Dispersibility Index)の略称であり、AOCS公式法(Ba10-65)として記載されている大豆製品中の溶解分散する(Dispersible)蛋白質を一定条件下で測定することにより得られる指数である。
【0035】
PDIを調整するための加熱変性処理としては、焙煎装置、熱風加熱装置、マイクロ波加熱装置等を使用する乾式加熱方式や、加湿加熱装置、蒸煮装置、蒸気加熱装置等を使用する湿式加熱方式を特に限定されることなく採用することができる。ただし水が大豆に浸るような状態で加熱すると蛋白質が抽出されてしまうため、避けた方が良い。一例として、大豆を密閉タンクに封入し、相対湿度90%以上の雰囲気下で品温が70〜95℃程度になるように密閉タンクの外側を覆うジャケット内を加熱する方法などが採用できる。この場合の加熱の温度や時間の条件はLPの不溶化が選択的なものとなる限り特に限定されないが、通常は品温で60〜95℃となるよう温度設定し、時間は1分〜10時間の間で行うことが適当である。他の加熱方法として、過熱水蒸気による加熱装置、エクストルーダー、ジェットクッカー等の加熱装置を使用することもできる。
【0036】
PDIを調整するための変性方法において、加熱以外の態様として、アルコール変性処理を行う場合、蛋白質及びオカラ成分を含む原料大豆に対し、等重量以下、好ましくは2〜100重量部、より好ましくは8〜20重量部、さらに好ましくは10〜15重量部の極性アルコール溶液を添加し、含浸させる方法が好ましい。なお、この方法は従来のアルコール洗浄による濃縮大豆蛋白などの製法のように、大豆を何倍量ものアルコールを浸漬し、懸濁状態にして大豆の糖質などの非蛋白質成分を洗浄する方法とは全く考え方が異なり、大豆に対して等重量以下の極性溶媒溶液を添加し、含浸させるものである。この場合、混合された大豆の状態は典型的には湿潤した粉末状態となる。ただし、極性溶媒の添加量が大豆に対して2重量%よりも低くなると、LPの選択的な水不溶化が不十分となるので、水抽出時のLPの抽出抑制効果が不充分となる傾向となる。逆に等重量よりも多くなると、LPと共に7Sと11Sも水不溶化する非選択的な水不溶化が起こりやすくなり、7Sと11Sの抽出までが不十分となる。LPの選択的水不溶化を促進するために適する極性溶媒としては、極性アルコール溶液(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等)を用いることができる。特に、食品工業上多用されているエタノール水溶液を使用することが好ましい。水は純水のままでも良いし、酸水溶液(塩酸水溶液、炭酸水溶液、クエン酸水溶液等)、アルカリ水溶液(水酸化ナトリウム溶液、重炭酸ナトリウム等)等を使用することもできる。極性溶媒溶液の濃度は5〜100%が好ましく、50〜80%がより好ましい。極性溶媒溶液の濃度が低すぎても高すぎても、LPの変性による水不溶化が不十分となる。極性溶媒溶液の添加方法は、例えば噴霧により粉に吹付ける方法や、滴下する方法などで実施できるが、特に限定されない。極性溶媒溶液添加後の混合方法は、例えばニーダーのような攪拌機や、高速攪拌機などを用いることができる。さらに、上記のアルコール含浸処理に加え、加温処理を併用することがより好ましい。加温温度は、大豆の品温で30〜95℃が好ましく、40〜90℃がより好ましい。また加温時間は5〜100分が好ましく、10分〜60分がより好ましい。極性溶媒の含浸処理と加温処理を併用する場合、これらの工程の順序には特に限定されないが、極性溶媒を添加し、混合した後に加温処理を施すか、極性溶媒を添加・混合しながら加熱処理を行うのが好ましい。この極性溶媒の含浸処理と加温処理を併用することにより、比較的低い温度処理でも効率よく大豆中のLPのみを選択的に水不溶化することが可能となる。また加熱による色や臭いの発生も抑え、加工大豆やそれを原料に調製される調製品の風味を向上することが可能となる。さらに、極性溶媒の添加量を少なくすることができるので、処理後の極性溶媒の除去工程が従来のアルコール洗浄法などと比較すると極めて容易となり、効率的な製造プロセスを確立する上で有利である。加工大豆に残存する極性溶媒はほとんど加温処理によって揮発させることができ、これを直接抽出工程に供することができるが、所望によりさらに残存量を低下させたい場合には、さらに品温40〜60℃、減圧(−10mmHg程度)下で10分〜60分の処理を行えば完全に揮発させることが出来、ほぼ添加前の大豆の重量に戻すことができる。なお、揮発させた極性溶媒は蒸留により回収すれば、再利用が可能であるので、製造プロセス上有利である。
【0037】
以上のようにして得られた加工大豆は必要により粉砕し、2〜10倍量の水を加え、撹拌して懸濁させることにより水抽出すると、7S及び11Sが積極的に水溶性画分側に抽出される。この水溶性画分を遠心分離やろ過等の固液分離により除去し、残りの不溶性画分を回収する。この不溶性画分は不溶化したLPと大豆食物繊維が主体となっており、相対的にLPが濃縮されており、LCI値が60以上となる。なお、水抽出の際のpHは通常中性〜アルカリ性(pH7〜12)で行うが、粉末状大豆素材の蛋白質含量をできるだけ上げたい場合には、水抽出の際に懸濁液のpHを酸性側(pH7未満)に調整することにより、水溶性画分側に溶解していた蛋白質を不溶性画分側へ移行させることができる。ただし、大豆蛋白質の等電点にpHを近づけるほど7S及び11Sが不溶性画分側へ移行し、LCI値が低下するため、LCI値が60未満とならないよう留意が必要であり、条件にもよるがpHを酸性側へ調整する場合でも通常はpHを5以上、好ましくは5.5以上にすることが適当である。
【0038】
以上で得られた不溶性画分を最終的に乾燥粉末化し、本発明の粉末状大豆素材が得られる。なお、乾燥粉末化はスプレードライヤーやフリーズドライ等の公知の乾燥方法を用いることができる。また乾燥粉末化の前に、要すればホモゲナイザー等により微細化処理を行ったり、加圧加熱処理によって食物繊維を水溶化したり、製造工程中において不溶性食物繊維を一部除去したり、加熱殺菌処理を行ったりすることができる。また乾燥粉末化の後にさらに微粉砕処理を行ったり、造粒処理を行ったりすることもできる。このように、食用組成物への添加適性を考慮し、本発明の粉末状大豆素材に対して所望の付随処理を行うことは自由である。
【0039】
分画法を用いずに本発明の大豆素材を調製する別の方法としては、育種あるいは遺伝子操作によって7S又は/及び11Sの一部もしくは全部を欠損させた大豆を原料に用いる方法が挙げられる。これらの大豆は相対的にLPの含量が一般の大豆に比べて高くなっているため、品種にもよるが分画法を用いなくとも該大豆を粉砕して大豆粉としたり、酸洗浄やアルコール洗浄によりホエーを除去して濃縮大豆蛋白としたり、あるいは豆乳を除去してオカラを調製するだけで、本発明の特定の要件を満たす粉末状大豆素材に調製しうる。この場合にも必須ではないがLPが不溶化されて食物繊維と共存していることが好ましく、例えば上記の欠損大豆を原料として大豆粉などに加工して本発明の粉末状大豆素材とする場合には、原料に乾熱処理又は湿熱処理を行い、大豆のPDIを好ましくは40以上80未満に低下させておくとよい。
【0040】
(粉末状大豆素材の食用組成物への使用)
以上のようにして得られる本発明の粉末状大豆素材は、LPと大豆食物繊維が主体となっていることが特徴である。
該大豆素材は種々の食用組成物に使用することができ、その食用組成物の種々の物性を改良することが可能である。ここで、物性とは食用組成物が有する分散性、保形性、保水性、乳化安定性、酸化安定性、粘性、可塑性、食感などを総称した性質いう。
具体的には、該大豆素材を食用組成物に用いた場合、従来の分離大豆蛋白や濃縮大豆蛋白等の既存の大豆素材に比べて、食感が滑らか、ネチャツキが少ない、口当たりが軽い、喉通りが良い等の利点を有しており、既存の大豆素材を用いた場合に比べ、食感の改良された食用組成物に仕上げることが可能であり、また原料の分散性、食用組成物の保形性や乳化安定性の改善や、風味のコクを向上させることができるなど、既存の大豆素材と比較して食用組成物への適用範囲が広い点に特徴を有する。またそれと共にLPが蛋白質組成の主体であるので、該蛋白質の持つ生理機能を高めた食用組成物、および大豆食物繊維との組合せにより、その特性をより生かした食用組成物が調製可能となる。
【0041】
これに対して7S蛋白質は加工によっては粘性が高く、ネチャツキの原因になる場合があり、このネチャツキが好ましくない食感となる場合がある。また、11S蛋白質は加工によって、特にカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの塩存在下で加熱すると著しく反応して凝集することから、ざらつきの原因になる場合がある。また酸による凝集性も高く、酸性の食用組成物に利用した場合には、ざらつきや渋味などの味に影響する場合がある。また、一般的に7Sや11S主体の大豆蛋白質のゲルは硬くて弾力があり、加工条件によってはいつまでも口内で溶解せず、喉通りの悪いゲル質になってしまう場合がある。このように加工食品には加工上の理由から好ましくない物性に仕上がる場合があり、これは蛋白質の組成が関係すると考えられる。
【0042】
従って、LP主体の蛋白質を用いると様々な条件においても急激な変化が起こりにくく、比較的温和な変化を示し、しかも適度な溶解性や乳化性を示すので加工しやすい。pHの変化や、カルシウムイオンやマグネシウムイオンの存在下においてもざらつきが生じにくく良好な食感を維持できる。さらに大豆食物繊維が共存することにより、安定した保形性や保水性を付与することができる。大豆食物繊維だけでは、そのものの持つ食感のモサモサ感があり、乳化力も低く好ましくない。LPと共存することによって、大豆食物繊維の食感が緩和されて滑らかな食感が実現され、乳化力も付与される。
【0043】
本発明の粉末状大豆素材を使用する対象の食用組成物として具体的な応用例を示すと、例えば粉末状組成物、乳化組成物、焼きもしくは揚げ菓子、練り製品、組織状組成物、半固形状ないしゲル状組成物や、フライ食品用衣材(バッター)などに使用することにより、優れた物性改良効果を発揮することができる。
また、本発明の粉末状大豆素材は、蛋白質と食物繊維に富むため、生理機能素材としても併用することができる。蛋白質又は食物繊維を強化することによって血中コレステロール低減、糖尿病性腎症予防、血糖上昇抑制、腸内環境改善等の栄養機能の発揮を目的にした、いわゆる機能性食品は、通常よりも蛋白質や繊維が多く含まれ、食用組成物の物性変化が起こりやすい。そのため上述の物性改良効果が発揮されるとより有効に作用するため、本発明の粉末状大豆素材を添加する対象として好ましい。
【0044】
(1−1)粉末状組成物
粉末状組成物としては、例えば、粉末飲料、粉末スープ、粉末ソース、粉末味剤、粉末ピックル剤、ケーキ類・パン類・菓子類・麺類・フライ食品用衣材・惣菜(お好み焼きなど)等の小麦粉ミックス粉等が挙げられる。
粉末状組成物へ本発明の粉末状大豆素材を使用した場合、これを水に分散させると分離大豆蛋白に比べてダマになりにくく、非常に分散性が良好となる。また、油分の高いスープや味剤などに使用した場合は乳化安定性にも優れるため、油染み等が生じにくくなる。さらに、即席ラーメン等の油分の高い味剤においては、味剤中の油分の酸化劣化も抑制することができ、酸化安定性にも寄与する。またフライ食品用衣材へ使用した場合、フライ食品にサクサク感を付与し、フライ後の油染みを抑制することができる。
【0045】
(1−2)乳化組成物
乳化組成物としては、例えば、マヨネーズ、ホイップクリーム、カスタードクリーム、フラワーペースト、チーズ類、ソース類等のO/W乳化組成物又はW/O乳化組成物が挙げられる。
油分が比較的多く含まれる乳化組成物へ本発明の粉末状大豆素材を使用した場合、通常の濃縮大豆蛋白やおからなどを添加するよりも乳化性、保形性、粘性等に優れ、ネチャつきがなく滑らかでざらつかない等の食感改良効果を発揮する。該乳化組成物は、調理パン等のフィリングやトッピングとして利用した場合に加熱調理した際にも軟化してダレてしまったり、油分の分離が生じたりことが起こりにくく、耐熱保形性にも優れるものである。また野菜サラダ等に該乳化組成物をドレッシングとしてかけた場合にも水分の上昇によって乳化物がだれることを防止することができる。また、本発明の粉末状大豆素材はそれ自体にネチャツキやざらつきが少ないことから、乳化組成物の粘度調整剤としても利用することができる。
【0046】
(1−3)焼きもしくは揚げ菓子
焼きもしくは揚げ菓子としては、例えば、ケーキ、クッキー、栄養バー、ビスケット、せんべい、かりんとう、あられ、スナック菓子、ドーナツ等が挙げられ、食感が良く食物繊維やLPの含有量が多く、低カロリーの物が得られる。非限定的には20重量%以上、好ましくは25重量%以上の食物繊維と、LCI値が60以上を示す大豆タンパク質を10重量%以上、好ましくは15重量%以上含有するもので、エネルギーが100g当たり500kcal以下、好ましくは400kcal以下のものが得られる。
【0047】
MSPが多く含まれる既存の分離大豆蛋白等の大豆素材を使用した焼き菓子の生地では、水分が少ないと生地がまとまりにくく、生地がぼそぼそとして割れてしまう場合が多く、製造に熟練を要するのに比べて、焼き菓子の生地に本発明の粉末状大豆素材を利用した場合、該生地は硬くしまらずに適度な可塑性を有するため、生地の調製が極めて容易であり、焼成後には適度な硬さと軽く口溶けの良い食感を付与することができる。また保形性が高いため焼成後のパウンドケーキなどのエッジ部分の崩壊などを防ぐことができ、さらには焼成後の焼き型からの剥がれも良くなる。また、揚げ菓子については、吸油量を抑制したり、サクサク感を付与したりすることが可能である。
【0048】
焼き菓子の一態様として、高食物繊維、高蛋白質、低カロリーのスナック菓子を調製する場合、例えば以下のように調製することができる。
本発明の粉末状大豆素材に、小麦ふすま、ポテト繊維、難消化デキストリン、ポリデキストロース、イヌリンなどの食物繊維素材を組み合わせて配合し、これらを他の原料と共に混合して水と練り上げ、成型し、焼成する。これにより、乾燥固形分中50〜95重量%を粉末状大豆素材と食物繊維素材が占める、口当たりの良い焼き菓子を調製することができる。また、摂取時の血糖上昇や脂肪蓄積を抑制させたい場合には、糖を無添加とする、あるいは糖アルコールなどに代え、また油脂も中鎖脂肪酸等に代えることができる。
LPは蛋白質が脂質と会合している部分があり、7Sや11Sなどの貯蔵蛋白質に比べてプロテアーゼによる低分子化を受けにくいので消化が遅く腹持ちが良くなると考えられ、空腹感を抑制することでカロリーを抑えたダイエット補助食としても利用することができる。
【0049】
(1−4)練り製品
練り製品としては、例えば、ソーセージ、ハンバーグ、つくね、がんもどき、油揚げ、かまぼこ、ちくわ等が挙げられる。
練り製品へ本発明の粉末状大豆素材を粉体として添加した場合には、生地への良好な分散性を示すので、ダマの形成が防止される。また、練り製品にゴム的でない、歯切れ及び喉通りが良い食感を付与することができる。またこれらの練り製品に対してレトルト加熱等の比較的厳しい熱ショックを与えても物性が変化しにくく、レトルト耐性が強い。
【0050】
(1−5)半固形状ないしゲル状組成物
半固形状ないしゲル状組成物としては、例えば、プリン、ゼリー、濃厚流動食、ヨーグルト状の大豆発酵食品等が挙げられる。
半固形状ないしゲル状組成物へ本発明の粉末状大豆素材を使用した場合、従来の7Sや11Sのようなたわみのある強固なゲルとは異なり、軟弱なゲル状あるいは粘性の高い半固形状の物性となり、クリーミーで滑らかな食感を付与することができる。特に大豆発酵食品へ使用した場合、大豆由来の青臭み等も殆ど感じず良好な風味を実現できる。ヨーグルト状の大豆発酵食品において使用する蛋白質源としては、本発明の粉末状大豆素材を単独で使用しても良いし、豆乳や大豆粉の懸濁液を併用し、適宜所望の物性に調整することも可能である。
【0051】
(2)機能性食品
本発明の粉末状大豆素材は、上述のように様々な食用組成物に物性改良効果を付与できることに加え、食用組成物が本来備える風味や物性を損ねにくい生理機能素材としても利用することができる。
該大豆素材は蛋白質と食物繊維に富み、さらには極性脂質としてリン脂質にも富むので、これらの成分を栄養的に強化するために用いることができる。特に該大豆素材中の主要な蛋白質であるLPは、大豆蛋白質の中で最もコレステロールの低減効果や糖尿病性腎症予防効果が認められる成分である。LPの摂取によってLPが胆汁酸と結合し、その排泄量が増えることから、アミノ酸源が腸まで届く可能性を考え合わせると、腸内の有用な有機酸を生産する腸内細菌にとって栄養源となる糖質や蛋白質を腸に届けることができると考えられる。さらに大豆食物繊維には、血糖上昇をゆるやかにする効果や腸内フローラを改善する効果、さらには抗酸化効果があると言われており、現代人の摂取量が少ないといわれる食物繊維を補うことおよびアンチエージングを目的にも使用ができる素材である。したがって血糖上昇抑制、腎臓保護、脂質代謝改善、整腸作用、ダイエットにも有効であると考えられ、生活習慣病予防のための食品素材として極めて利用価値が高いものである。
したがって、粉末状大豆素材は、食用組成物の物性改良に利用されるのみでなく、これを食用組成物本来の物性を阻害しにくい蛋白質の強化素材や食物繊維の強化素材として利用し、これらの成分が強化された栄養的価値の高い食用組成物を製造することができる。またさらにはこれらの成分の強化により、血糖上昇抑制作用、腎臓保護作用、脂質代謝改善作用、整腸作用等の生理機能を発揮する機能性食品を製造することができる。機能性食品の種類は特に問わず、上記の(1−1)〜(1−5)の各種食用組成物が例示される。ここで食用組成物において蛋白質や食物繊維を強化したというためには、少なくともこれらの成分が組成物中3重量%以上含まれることが好ましく、5重量%以上がより好ましい。
【0052】
従来の認識ではLPは大豆のオフフレーバーの原因と考えられており、これが高純度化されたものは必ずしも風味が良いものとは言えなかった。しかし、粉末状大豆素材においてはLPが大豆食物繊維と組み合せて含まれることで、意外にもLPによるオフフレーバーを感じにくく、風味が良好なものとなる。一方で大豆食物繊維も本来それ単独ではザラザラとした食感の悪いものであるが、LPと共存することで意外にも食感が滑らかでザラつきを感じ難いものとなる。したがって該大豆素材は上述の機能性食品に添加した際にLP又は大豆食物繊維の各欠点が影響を与えにくくなっており、物性や風味を損ねにくい機能性食品素材として極めて汎用性の高いものである。
【実施例】
【0053】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明は、この実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0054】
〔使用原料〕
実施例及び比較例で用いる大豆素材A〜Eは、以下の通り調製したもの又は市販品を用いた。
【0055】
・大豆素材A
特許文献1の実施例5と同様の製法で、加工脱脂大豆を調製した。すなわち、密閉容器に充填した低変性脱脂大豆(PDI83、水分7.0%)1kgを相対湿度90%以上の雰囲気下で脱脂大豆の品温が85℃になるように湿熱加熱処理を行い、60分間維持した。容器から処理後の脱脂大豆を取り出し、加工脱脂大豆とした。この加工脱脂大豆のPDIは66であった。
得られた加工脱脂大豆に水を15重量倍加え、pH7.0に調整し、25℃にて撹拌抽出を行った。得られた脱脂大豆スラリー(pH6.4)を遠心分離によって可溶性画分と不溶性画分とに分離した。この不溶性画分を回収し、不溶性画分の重量の3倍量の水を加えて加熱殺菌後、スプレードライヤーにて乾燥粉末化して大豆素材Aとした。
【0056】
・大豆素材B

市販の濃縮大豆蛋白「アーコンS」(ADM社製)を用いた。
【0057】
・大豆素材C
特許文献1の実施例5と同様の製法で、加工脱脂大豆を調製した。すなわち、密閉容器に充填した低変性脱脂大豆(PDI83、水分7.0%)1kgを相対湿度90%以上の雰囲気下で脱脂大豆の品温が85℃になるように湿熱加熱処理を行い、60分間維持した。容器から処理後の脱脂大豆を取り出し、加工脱脂大豆とした。この加工脱脂大豆のPDIは66であった。
得られた加工脱脂大豆に水を15重量倍加え、pH6.0に調整し、25℃にて撹拌抽出を行った。得られた脱脂大豆スラリー(pH6.0)を遠心分離によって可溶性画分と不溶性画分とに分離した。この不溶性画分を回収し、不溶性画分の重量の3倍量の水を加えて加熱殺菌後、スプレードライヤーにて乾燥粉末化して大豆素材Cとした。
【0058】
・大豆素材D
市販の乾燥オカラ粉末「PF−20」((株)転生製)を用いた。
【0059】
・大豆素材E
不二製油(株)製の乾燥オカラ粉末を用いた。
【0060】
得られた大豆素材A〜Eについて、蛋白質含量(無脂固形分あたり)、食物繊維含量(無脂固形分あたり)、LCI値、MSP含量(蛋白質あたり)を測定し、その分析結果を表2に示した。なお、各測定方法は前記記載の方法で行った。
【0061】
(表2)

【0062】
〔実施例1〕−粉末飲料―
本発明の粉末状組成物の例として、粉末飲料を調製した。
本発明の大豆素材A(蛋白質含量45%、LCI値70)を牛乳の中に混ぜてスプーンでかき混ぜた。分散が良く、ママ粉などの固い不溶な粉の塊はみられなかった。またオカラを含んでいるにもかかわらず、ざらつきが少なく滑らかな食感であった。
【0063】
〔比較例1〕
大豆素材Aの代わりに大豆素材B(蛋白質含量70%、LCI値48)を用い、実施例1と同様に牛乳に混ぜてスプーンでかき混ぜた。分散が悪く、固いママコが生じた。
【0064】
〔比較例2〕
大豆素材Aの代わりに大豆素材D(蛋白質含量25%、LCI値54)を用い、実施例1と同様に牛乳に混ぜてスプーンでかき混ぜた。分散は良かったが、ほとんどが沈み、溶解はせず、ひどくざらつきを感じた。
【0065】
〔実施例2〕−粉末状味剤−
本発明の粉末状組成物の別の例として、粉末状味剤を調製した。
本発明の大豆素材C(蛋白質含量60%、LCI値66)6部を、固形分20%で、その内に油を50%含むラーメンの味剤100部に加え、加熱混合して得た乳化物をスプレードライし、粉末状味剤を調製した。粉末として得られたものは油染みも少なく乳化安定性が高く、水に加えると程よく分散し、味も自然なものに感じられた。
【0066】
〔比較例3〕
大豆素材Cの代わりに大豆素材B(蛋白質含量70%、LCI値48)を用い、実施例2と同様の配合と処理方法にて調製した粉末状味剤は、油染みはないものの、水への分散が悪く、味もやや変化していた。
【0067】
〔比較例4〕
大豆素材Cの代わりに大豆素材D(蛋白質含量25%、LCI値54)を用い、実施例2と同様の配合と処理方法にて粉末状味剤の調製を試みたが、原料を加熱混合しても乳化せず、噴霧が不可能であった。
実施例2,比較例3,4の各味剤の評価を以下に示す。
【0068】
(表3)

【0069】
〔実施例3〕−フライ食品用衣材への利用−
本発明の粉末状組成物の別の例として、フライ食品用衣材を調製した。
本発明の大豆素材A(蛋白質含量45%、LCI値70)を10部、薄力粉を90部を混合してフライ食品用衣材を調製した。これを水に溶いて粘度が1600mPa・s程度にしたものを油であげ、揚げたまとして食感を確認した。ほどよいサクサク感が感じられた。
【0070】
〔比較例5〕
大豆素材Aの代わりに大豆素材B(蛋白質含量70%、LCI値48)を用い、実施例3と同じ配合でフライ食品用衣材を調製し、同様に評価したところ、実施例3に比べるとサクサク感が少なく、表面の硬さを感じた。
【0071】
〔比較例6〕
大豆素材Aの代わりに大豆素材D(蛋白質含量25%、LCI値54)を用い、実施例3と同じ配合でフライ食品用衣材を調製し、同様に評価したところ、サクサク感は感じられたが崩れやすく、好ましくなかった。
【0072】
〔実施例4〕−マヨネーズ−
本発明の乳化組成物の例として、マヨネーズを調製した。
本発明の大豆素材C(蛋白質含量60%、LCI値66)4部、水41部、大豆油50部、食酢5部をフードカッターに加えて5分撹拌してO/W乳化し、マヨネーズを調製した。該マヨネーズは滑らかで口の中で違和感なく溶けた。また、保形性を有し、加熱しても油が分離することなく、乳化安定性にも優れていた。
【0073】
〔比較例7〕
大豆素材Cの代わりに大豆素材B(蛋白質含量70%、LCI値48)を用い、実施例4と同様の配合と処理方法にて調製したマヨネーズの食感は、ややネチャつきがあり、重たい食感であった。保形性は無く、油分離が多かった。加熱するとやや凝集が起こり油の分離が進んだ。
【0074】
〔比較例8〕
大豆素材Cの代わりに大豆素材D(蛋白質含量25%、LCI値54)を用い、実施例4と同様の配合と処理方法にてマヨネーズの調製を試みたが、原料が乳化せず、油が分離していた。
実施例4、比較例7,8で調製した各マヨネーズの乳化の状態を表4に示す。
【0075】
(表4)

【0076】
〔実施例5〕−バウンドケーキ−
本発明の焼き菓子の第一例として、バウンドケーキを調製した。
本発明の大豆素材A(蛋白質含量45%、LCI値70)20部にマーガリン20部、砂糖20部、卵白24部を混合し、焼成してバウンドケーキを得た。
【0077】
〔比較例9〕
大豆素材Aを配合せず、小麦粉20部にマーガリン20部、砂糖20部、卵白24部を混合し、焼成してバウンドケーキを得た。
【0078】
〔比較例10〕
大豆素材Aの代わりに大豆素材B(蛋白質含量70%、LCI値48)20部にマーガリン20部、砂糖20部、卵白24部を混合し、焼成してバウンドケーキを得た。
【0079】
〔比較例11〕
大豆素材Aの代わりに大豆素材D(蛋白質含量25%、LCI値54)20部にマーガリン20部、砂糖20部、卵白24部を混合し、焼成してバウンドケーキを得た。
【0080】
(表5)焼成後の形態と食感

【0081】
〔実施例6〕−せんべい−
本発明の焼き菓子の第二例として、せんべいを調製した。
本発明の大豆素材A(蛋白質含量45%、LCI値70)20部、マーガリン20部、砂糖15部を混合し、水を15部加えて混練りして生地を調製した。これを熱い鉄板で挟み、加熱してせんべいを調製した。
【0082】
〔比較例12〕
大豆素材Aの代わりに大豆素材E(蛋白質含量40%、LCI値52)を用い、実施例6と同じ配合と調製方法でせんべいを調製した。
【0083】
〔比較例13〕
大豆素材Aの代わりに大豆素材D(蛋白質含量25%、LCI値54)を用い、実施例6と同じ配合と調製方法でせんべいを調製した。
【0084】
(表6)

【0085】
〔実施例7〕−レトルトソーセージ−
本発明の練り製品の例として、レトルトソーセージを調製した。
本発明の大豆素材A(蛋白質含量45%、LCI値70)100部に水400部、豚脂100部をニーダーに入れて混合し、充分に均一な生地にした後、でんぷん30部と香辛料などを含む味剤20部とを添加混合し、ケーシングに充填しレトルト加熱し、レトルトソーセージを得た。その食用組成物は、ほどよいソーセージ様の滑らかな喉通りの良い食感を呈した。
【0086】
〔比較例14〕
大豆素材Aの代わりに大豆素材B(蛋白質含量70%、LCI値48)を用い、実施例7と同様の配合と処理方法にて調製したレトルトソーセージは、ややぱさつきがあり、なめらかでなく、喉通りの良くない食感をしていた。
パネラー10名による官能評価で好ましい点数を10点満点で採点した。(×10点満点、普通が5点、悪いが0点で点数をつけ、)各調製品の官能評価項目で得られた点数の平均点を表7に示した。
【0087】
(表7)

【0088】
〔実施例8〕−ヨーグルト状大豆発酵食品への利用−
本発明の半固形状ないしゲル状組成物の例として、ヨーグルト状の大豆発酵食品を調製した。
表8の配合の通り、水を60℃に加熱し、撹拌しながら大豆素材A(蛋白質含量45%、LCI値70)と乳酸菌以外の原材料を添加し、溶解後に高圧ホモゲナイザーを用いて圧力15MPaにて均質化した。その後90℃まで加熱後、43℃まで冷却した。次に、乳酸菌を添加し、カップに充填して蓋で密封し、43℃の恒温槽にてpHが4.5に低下するまでおよそ5時間発酵させ、その後10℃以下に冷却し、ヨーグルト状の大豆発酵食品を得た。
【0089】
〔比較例15〕
表8の通り、大豆素材Aの代わりに無調整豆乳(固形分9重量%、蛋白質含量4.5重量%、LCI値38)を配合する以外は実施例8と同様にしてヨーグルト状の大豆発酵食品を得た。
【0090】
(表8)

【0091】
実施例8の大豆発酵食品は、比較例15と比較して大豆食物繊維が含まれているにもかかわらず、大豆由来の青臭味等も殆どなく、7S、11Sの蛋白質成分が殆ど抜けているためか、クリーミーで滑らかな食感を持つヨーグルト状の物性であった。
【0092】
〔実施例9〕 −スナック風菓子−
本発明の焼き菓子の第三例として、スナック風菓子を調製した。
グラニュー糖10部にパーム油5部を混合し、大豆素材Aを25部、小麦ふすまを15部加えて混ぜ、水70部を加えて混練し、焼き菓子の生地を得た。生地を薄く延ばして成型し、160〜170℃で30分焼成したところ、サクサクとしたスナック風の焼き菓子が得られた。本焼き菓子は大豆素材A由来の蛋白質が21%、総食物繊維が31%含まれ、エネルギーが100gあたり400kcalである、高蛋白質・高食物繊維・低カロリーの焼き菓子であった。
【0093】
〔実施例10〕 −栄養バー−
本発明の焼き菓子の第四例として、栄養バーを調製した。
マーガリン50部に、グラニュー糖30部、食塩0.2部、ガナッシュ27部を順次混合していき、次に大豆素材A63部、難消化性デキストリン33部、ココアパウダー1.5部、加工デンプン24部を予め混合したものを加え、レーズン45部、オレンジピール12部、乾燥パイン12部、スライスアーモンド12部をさらに加え、最後に全卵45部を加え、良く混合して生地を調製した。
得られた生地を10cm×20cm×70cmの形状に成形し、170℃で22分焼成して栄養バーを得た。本焼き菓子は1本当たり76kcalで、蛋白質を約3%、食物繊維を約4%含むものであった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のLP主体の大豆蛋白質及び大豆食物繊維を主成分とする粉末状大豆素材を大豆素材として食用組成物に使用することにより、これまで分離大豆蛋白や濃縮大豆蛋白のような大豆素材では困難であった溶液および水分の少ないような練生地への速やかな分散性を付与したり、他にも保水性、保形性、乳化安定性や、違和感のない滑らかな食感を付与することができる。
このような特徴を利用して、例えば流動性を有する食用組成物において粘度調整の効果はもちろん、液だれしやすい物を液だれしにくくする効果や、原料を混合した生地の成型性向上効果や、食用組成物の製品形態を崩れにくくする保形性向上効果や、油染みを抑える乳化安定化効果や、油脂の劣化を防止する酸化安定化効果を発揮することができる。
また、本発明の粉末状大豆素材は、酸性条件下や、マグネシウムやカルシウムなどの蛋白質と相互作用しやすい2価金属イオン存在下においても、上記の食用組成物の物性改良効果が悪影響を受けにくいことも特長であり、栄養的に蛋白質と共にミネラルを強化した食用組成物を容易に製造することができる。
したがって、さまざまな目的で食用組成物に利用することができ非常に汎用性に優れたものである。
さらに、本発明の粉末状大豆素材自身がLPと食物繊維に富むため、生理機能が優れており、コレステロール低減作用、胆汁酸排泄作用、腎症予防作用、ダイエット作用、食物繊維による整腸作用、腸内フローラの改善作用などの目的でさまざまな食用組成物に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆蛋白質及び大豆食物繊維を含有し、蛋白質含量が無脂固形分重量あたり35〜85重量%であって、蛋白質のLCI値が60以上であることを特徴とする粉末状大豆素材。
【請求項2】
大豆食物繊維含量が蛋白質に対して15〜130重量%である、請求項1記載の粉末状大豆素材。
【請求項3】
請求項1記載の粉末状大豆素材を使用した食用組成物。
【請求項4】
粉末状組成物、乳化組成物、焼きもしくは揚げ菓子、練り製品、又は半固形状ないしゲル状組成物である、請求項3記載の食用組成物。
【請求項5】
食用組成物が、蛋白質又は食物繊維を強化したものである、請求項4記載の食用組成物。
【請求項6】
大豆蛋白質及び大豆食物繊維を含有し、蛋白質含量が無脂固形分重量あたり35〜85重量%であって、蛋白質のLCI値が60以上である粉末状大豆素材を食用組成物中に配合することを特徴とする食用組成物の物性改良方法。
【請求項7】
物性が分散性、保形性、保水性、乳化安定性、酸化安定性又は食感である請求項6記載の食用組成物の物性改良方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−100647(P2012−100647A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85049(P2011−85049)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【分割の表示】特願2010−248732(P2010−248732)の分割
【原出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】