説明

粉末組成物

(A)非晶質であり且つCOOH官能性であり、IPA及び/又はTPAと10モル%以下のネオペンチルグリコール(NPG)から得られる第1のポリエステルと、(B)脂肪族二酸及び脂肪族ジオールから得られる第2の任意選択のCOOH官能性ポリエステルと、(C)ポリエステル(1種又は複数)のCOOHに対して反応性がある官能基を含む硬化剤との混合物を含む、食品接触用途に適切な粉末コーティング組成物について記述されている。粉末は、特にアルコール飲料を保持する金属缶の内面をコーティングするのに適切である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品に接触する用途で特に有用なある種の熱硬化性粉末組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性粉末組成物は、家庭用電気器具や自動車工業用アクセサリなどの物品に用いられる塗料又はワニスコーティングを調製するのに広く使用されている。これらの粉末は、一般に、熱可塑性有機結合剤、充填剤、顔料、触媒、及びその性質がその意図される用途に適合するよう使用される様々な添加剤を含有する。
【0003】
そのような熱硬化性粉末塗料の調製に使用される典型的な結合剤は、カルボキシル基含有ポリマー(カルボキシル基含有ポリエステル又はポリアクリレートなど、及びエポキシ化合物、例えばイソシアヌル酸トリグリシジル、グリシジル基含有アクリルコポリマー、又はβ−ヒドロキシアルキルアミド)の混合物、又はヒドロキシル基含有ポリマー(ヒドロキシル含有ポリエステルなど、ブロックイソシアネート若しくは非ブロックイソシアネート、又はメラミン樹脂を含む。)の混合物を含有する。これらのポリエステルは、通常、芳香族ジカルボン酸、主にテレフタル酸及びイソフタル酸及び任意選択の少量の脂肪族ジカルボン酸又は脂環式ジカルボン酸及び様々なポリオール、主にネオペンチルグリコールと任意選択の少量のその他の脂肪族ポリオール若しくは脂環式ポリオール、例えばエチレングリコールや1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなどから調製される。
【0004】
これらのポリエステルは、一般に、得られるポリエステル及びそれを含有する粉末組成物の被膜形成能が改善されるように、多量の(典型的には、ポリオールに対して>85重量%)NPGを含有する。
【0005】
そのような熱硬化性結合剤は、適切な架橋剤と配合されると、良好な外観、耐衝撃性、及び柔軟性を有する塗料及びワニスコーティングを生成することができる。
【0006】
食品容器の内面は、食品とその容器との間の相互作用を遅らせる又は無くすために、しばしばコーティングされる。これは、食品容器が金属を含む場合、例えば飲料を含有する金属缶の場合に、特に重要である。そのような用途には、粉末コーティングを使用することが望ましい。
【0007】
しかし、塗料及びワニスコーティング用に配合された熱硬化性粉末は、食品に接触する用途に不適切な抽出性化合物を含有する。例えば芳香族ジカルボン酸、ビスフェノールA、及び芳香族グリシジルエーテルは、摂取された場合、有害になり得る。コーティングがアルコールと接触するようになる場合、コーティングは、ネオペンチルグリコール(NPG)を実質的に含まないものであるべきである。
【0008】
本明細書で使用される「食品」という用語は、食材や飲料、医薬品、及び薬剤など、ヒト又は動物(好ましくは、ヒト)の内部に摂取されることが意図される任意の成分(1種又は複数の)又は製品を意味する。飲料は、アルコール飲料でもノンアルコール飲料でもよい。食品に接触する用途とは、コーティングが食品と長期間接触することが意図され又はそのように接触する可能性があるコーティングの任意の使用である。
【0009】
食品に接触する用途で使用するのに適切な好ましいコーティングは、以下の性質の一部又は全てを有していよう。コーティングは、容器の内部に十分接着し、コーティング(又は任意の成分)が食品内容物と反応し又はその内容物中に浸出してその内容物に悪影響を及ぼすことがないように、十分な耐薬品性を有するべきである。コーティングは、容器形成前にシート又はロールに付着させることができるので、コーティングは、最終容器を製造するのに使用することができる打抜きやプレスなどの方法に耐えるだけの十分な柔軟性も持たなければならない。適切な粉末コーティングは、クロージャ、缶の端部と、缶の表面、ドラム又は容器の外部、及び食品及びアルコール及びノンアルコール飲料に直接接触するそれらの内部に使用することが可能であってもよい。コーティングは、容器の継ぎ目を保護するのに使用することが可能であってもよい(例えば、食品産業で使用されるスリーピース缶)。食品との長期接触に適切なコーティングは、好ましくは、そのような接触を管理する、関連ある法的な環境上の及びその他の規制を満足させるべきである。第2の課題は、改善された耐アルコール性も示す、食品との接触に適切な、したがってアルコールと接触するようになる(例えば、容器がアルコール飲料を保持する場合、又は使用前に容器を清浄化し又はリサイクルするのにアルコールを使用する場合)食品容器の内部をコーティングするのに特に適切なコーティングをもたらすことである。
【0010】
その他の用途(塗料及びワニス用の結合剤など)に向けて調製された従来技術の粉末配合物は、食品に接触する使用に不適切な成分を含有する。そのような成分は、粉末配合物をコーティングとして付着させたときに所望の機械的性質を有することになるように、必要と考えられている。
【0011】
WO2004/013240は、食品に接触する用途で使用することが意図される液体熱硬化性コーティング系用結合剤の一部としての、NPGフリーポリエステル樹脂について記述している。結合剤は、T<50℃のポリエステル樹脂及び架橋剤を含む。任意選択で、結合剤は、T<50℃のポリエステル60から90重量%とT>50℃のポリエステル10から40重量%のポリエステルブレンドであってもよい。ポリエステルは、5000から20000の数平均分子量;酸価<5mgKOH/g及びヒドロキシル価<20mgKOH/gを有するとされる。例示的なポリエステルは、テレフタル酸及びイソフタル酸を、2−メチル1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのポリオール混合物と反応させることによって、それぞれ調製される。
【0012】
WO2000/55268は、食品に接触する用途の金属基材をコーティングする粉末を開示しており、この粉末は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタネート、コポリエステル、ポリトリメチレンテレフタレート、及び/又はポリトリメチレンナフタネートのポリエステルブレンド50から100重量%の熱可塑性材料をエポキシ、フェノキシ、アクリル、及び/又はポリオレフィン樹脂から選択された変性樹脂0から25重量%と共に含んでおり、これらポリエステルの1種は、1000から80000の重量平均分子量、及び45℃から100℃のTを有するものであり、これらポリエステルの第2のものは、1000から70000の重量平均分子量、及び−10℃から45℃のTを有している。
【0013】
これら従来技術の配合物では、食品に接触する用途で完全に満足のいくものはない(例えば、これらの配合物は、満足のいかない機械的性質を有する。)。DE2411465に例示された粉末コーティング組成物も、そのような用途で満足のいくものではないと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、本明細書に記述された課題のいくつか又は全てを解決することである。本発明のより好ましい目的は、食品を保持し、且つ所望の機械的及び本明細書に記述されるその他の性質を維持することが意図される容器の内面に使用することができる粉末コーティングを提供することである。本発明のさらにより好ましい目的は、金属缶などの金属食品容器の内側をコーティングするのに使用することができる粉末コーティングを提供することである。本発明の最も好ましい目的は、食品との接触に適切であり且つ改善された耐アルコール性も示し、したがって、アルコールに接触するようになる食品容器(アルコール飲料を保持することになる容器など)の内側をコーティングするのに特に適切な、粉末コーティングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
概して、本発明によれば:
(A)非晶質であり、少なくとも1個のカルボキシ基を含む第1のポリエステルであって、少なくとも50モル%(ポリ酸の全モル数に対して)のイソフタル酸及び/又はテレフタル酸を含む酸と、10モル%以下(ポリオールの全モル数に対して)のネオペンチルグリコール(NPG)を含むポリオールとから得られる第1のポリエステルと;
(B)少なくとも1個のカルボキシ基を含む第2の任意選択のポリエステルであって、脂肪族二酸及び脂肪族ジオールから得られる第2の任意選択のポリエステルと;
(C)ポリエステル(A)及び(存在する場合には)(B)上のカルボン酸基に対して反応性がある官能基を含む硬化剤と
の混合物を結合剤として含む、粉末コーティング組成物が提供される。
【0016】
(A)非晶質であり、少なくとも1個のカルボキシ基を含む第1のポリエステルであって、少なくとも50モル%(ポリ酸の全モル数に対して)のイソフタル酸及び/又はテレフタル酸を含む酸と、10モル%以下(ポリオールの全モル数に対して)のネオペンチルグリコール(NPG)を含むポリオールとから得られる第1のポリエステルと;
(B)少なくとも1個のカルボキシ基を含む第2のポリエステルであって、脂肪族二酸及び脂肪族ジオールから、より好ましくは直鎖脂肪族二酸及び非直鎖脂肪族ジオールから得られる第2のポリエステルと;
(C)ポリエステル(A)及び(B)上のカルボン酸基に対して反応性がある官能基を含む硬化剤と
の混合物を結合剤として含む、粉末コーティング組成物がさらに提供される。
【0017】
第1のポリエステルは、15から100mgKOH/g、好ましくは20から80mgKOH/g、より好ましくは25から80mgKOH/g、最も好ましくは30から70mgKOH/gの酸価を有することが有利である。
【0018】
開示された組成物のいずれかでは、第2のポリエステル(B)が非晶質であることが有利である。本明細書に開示される(任意の)結合剤は、本質的に、非晶質ポリエステル、特に少なくとも1個のカルボキシ基を含む非晶質ポリエステルからなることが有利である。本明細書において、本明細書に開示される(任意の)結合剤は、ポリエステル全体に対して計算した場合に3重量部未満、2重量部未満、好ましくは1重量部未満、より好ましくは0.5重量部未満の半結晶質ポリエステル、特に少なくとも1個のカルボキシ基を含む半結晶質ポリエステルを含むことが有利であることを意味する。本明細書に開示される(任意の)結合剤は、半結晶質ポリエステルを、特に少なくとも1個のカルボキシ基を含む半結晶質ポリエステルを含まないことが有利である。
【0019】
本明細書に開示される(任意の)結合剤は、(A)及び存在する場合には(B)以外には、ポリエステル、特に少なくとも1個のカルボキシ基を含むポリエステルを含まないことが有利である。本明細書に開示される(任意の)結合剤は、本質的に、成分(A)、(C)、及び存在する場合には(B)からなることが有利である。本明細書に開示される(任意の)結合剤は、(A)、(C)、及び存在する場合には(B)以外の成分を含まないことが有利である。
【0020】
本発明の粉末コーティング組成物は、熱硬化性粉末コーティング組成物であることが有利である。本発明の粉末コーティング組成物は、食品への用途で使用するのに、特に食品容器のコーティングに適切であることが有利である。
【0021】
本発明の粉末組成物を調製するのに使用される成分のいくつか(例えば、第2のポリエステル(B))は、後でより加工し易くなるように、室温で液体であることが好ましい。本明細書で使用される室温は、約20°から約25℃(大気圧で)の屋内温度を意味する。
【0022】
本発明の別の態様は、基材(食品又は飲料の包装材料用の金属シート及び/又は金属容器など)をコーティングするための方法であって:
前記基材の少なくとも1つの面を、本発明の粉末コーティング組成物でコーティングするステップと;
コーティングされた基材を加熱して、その表面にあるコーティングを熱硬化することにより、コーティング組成物の接着層を基材上に形成するステップと
を含む方法を提供する。
【0023】
コーティングされた基材(食品及び/又は飲料の包装材料用金属シート及び/又は金属容器など)は、アルコールに接触するようになることが有利である。アルコールに接触するようになる食品容器の少なくとも内面は、コーティングされていることが有利である。コーティングされた基材、特にコーティングされた食品容器は、アルコール飲料を保持する(ための)金属缶であることが、より有利である。
【0024】
基材は、食品又は飲料(アルコール飲料など)を保持する(ための)金属缶又は金属容器であることが有利である。基材は、アルコール飲料を保持する(ための)金属缶であることが、より有利である。
【0025】
本発明のさらにその他の態様は、本発明の方法によって得られた及び/又は得ることが可能な、コーティングされた物品(コーティングされた金属缶又は容器など)を提供する。
【0026】
本発明のさらに別の態様は、本発明の組成物で部分的に又は全体的にコーティングされた物品に関する。物品は、食品又は飲料(アルコール飲料など)を保持する(ための)金属缶又は金属容器であることが有利である。
【0027】
本発明のさらに別の態様は、アルコールに接触するようになる食品容器(例えば、金属缶)(例えば、容器がアルコール飲料を保持する場合又は使用前に容器を清浄化し又はリサイクルするのにアルコールを使用する場合)の内面及び/又は外面をコーティングするための、本発明の(任意の)粉末コーティング組成物の使用に関する。本発明は特に、アルコール飲料を保持する(ための)金属缶の少なくとも内面及びおそらくは外面もコーティングするための、本発明の(任意の)粉末コーティング組成物の使用を提供する。
【0028】
本発明の組成物は、食品(飲料を含む)容器(缶など)の外面及び内面での使用に特に適合される。
【0029】
本発明の熱硬化性粉末コーティング組成物は、金属基材に付着させることができ、その表面で硬化させて、優れた柔軟性、耐薬品性を示し且つ基材に十分に接着するコーティングを形成することができる。容器の内面をコーティングする場合、本発明のコーティングは、その内容物に悪影響を及ぼさす、本明細書に記述される広く様々な食品に接触する用途で使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
第1のポリエステル(A)
好ましい第1のポリエステル(COH官能性及び非晶質)は:
(a)(酸全体のモル%で)
(i)イソフタル酸、テレフタル酸、及びこれらの混合物から選択された第1の酸を50から100モル%、及び
(ii)フマル酸、マレイン酸、無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、これらの無水物、及びこれらの任意の混合物から選択された任意選択の第2の酸を0から50モル%
含むジカルボン酸成分と;
(b)(i)単独で又は混合物で使用される、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、及びジエチレングリコールから選択された第1のアルコールを70から100モル%、
(ii)任意選択で、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、及びこれらの混合物から好ましく選択されたその他のジオール(1種又は複数)を0から30モル%、及び
(iii)任意選択で、ネオペンチルグリコールを0から10モル%
含むポリオール成分と
を含む。
【0031】
ジカルボン酸成分は、第1の酸(1種又は複数)を少なくとも60、65、70、75、80、82、85、90、95から100モル%まで含むことができる。ある実施形態では、第1の酸は、おそらくはイソフタル酸と組み合わせたテレフタル酸である。ある実施形態では、第1の酸が、80から100モル%のテレフタル酸及び0から20モル%のイソフタル酸を含む。別の実施形態では、第1の酸は、おそらくはテレフタル酸と組み合わせたイソフタル酸である。
【0032】
ジカルボン酸成分は、テレフタル酸80から100モル%と、イソフタル酸0から20モル%とからなることが有利である。ジカルボン酸成分は、テレフタル酸からなることが有利である。ジカルボン酸成分は、イソフタル酸からなることが有利である。
【0033】
好ましくは、第2の酸(a)(ii)(存在する場合には)は、フマル酸、マレイン酸、無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、これらの無水物、及びこれらの任意の混合物から選択される。
【0034】
第1のアルコール(b)(i)は、単独で又は混合物で使用される、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、及びジエチレングリコールから選択されることが有利である。
【0035】
好ましくは、第1のアルコール(b)(i)は、おそらくはエチレングリコール及び/又はジエチレングリコールと組み合わせたプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び/又は2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオールから選択される。好ましい第1のアルコール(b)(i)は、2−メチル−1,3−プロパンジオールである。別のそのような好ましいアルコールは、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオールである。より好ましいそのようなアルコールは、プロピレングリコールである。ポリオール成分は、プロピレングリコールからなることが有利である。
【0036】
好ましくは、その他のジオール(1種又は複数)(b)(ii)(存在する場合)は、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及びこれらの混合物から選択される。より好ましくは、他のジオール(1種又は複数)は、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びこれらの混合物から選択される。ポリオール成分はその他のジオール(1種又は複数)(b)(ii)を含まないことが有利である。ポリオール成分は、NPGを含まないことが有利である。
【0037】
第1のポリエステル(A)は、直鎖状又は分枝状であってもよく、追加の成分を含んでいてもよい。
【0038】
追加成分の例:トリメリット酸、ピロメリット酸、及びこれらの対応する無水物から好ましくは選択される、少なくとも3個のカルボキシ基を含むポリ酸。第1のポリエステルは、第1のポリエステル(A)が分枝状又は無水物であってエンドキャップされたものか否かに応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸、及びこれらの対応する無水物から好ましくは選択される、少なくとも3個のカルボキシ基を含むポリ酸を、0から25モル%まで、0から20モル%まで、0から15モル%まで、好ましくは1から18モル%まで、1から15モル%まで含むことが有利である。
【0039】
別の又は同じ実施形態では、第1のポリエステルは(さらに)、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及び/又はこれらの混合物から好ましくは選択された、1種又は複数の3官能性又は4官能性ポリオールを含む。第1のポリエステルは、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及び/又はこれらの混合物から好ましくは選択された1種又は複数の3官能性又は4官能性ポリオールを、0から20モル%まで、0から15モル%まで、1から18モル%まで、1から15モル%まで含むことが有利である。好ましくは、第1のポリエステルは、そのような3官能性及び/又は4官能性ポリオールを含まない。
【0040】
第1のポリエステル(A)は、直鎖状又は分枝状であってもよく、分枝状の場合は、第1のポリエステルが得られる酸及び/又はポリオールは追加の成分を含んでいてもよい。
【0041】
一実施形態では、分枝状の第1のポリエステル(A)は:
(a)(iii)トリメリット酸、ピロメリット酸、及びこれらの対応する無水物から好ましくは選択される、少なくとも3個のカルボキシ基を含む1種又は複数のポリ酸を15モル%(第1の酸(a)(i)及び(存在する場合には)第2の酸(a)(ii)の総量に対して)まで
さらに含む酸混合物から得ることができる。好ましくは、第1のポリエステルは、前記ポリ酸を12モル%まで、有利には10モル%まで含む。
【0042】
第1のポリエステル(A)が、ヒドロキシル官能性ポリエステルの無水物エンドキャップによって得られる場合、トリメリット酸、ピロメリット酸、及びこれらの対応する無水物から好ましくは選択される、少なくとも3個のカルボキシ基を含む1種又は複数のそのようなポリ酸を、0から25モル%まで含んでもよいことが有利である。
【0043】
第1のポリエステルを調製するには、第1の酸(a)(i)、第2の酸(a)(ii)、及び(存在する場合には)酸混合物(a)(iii)などの任意選択のその他の酸のモル%の合計が、100%を超過せず、好ましくは前記モル%が合計で100%であることが理解されよう。
【0044】
別の又は同じ実施形態では、分枝状の第1のポリエステル(A)は:
(b)(iv)トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及び/又はこれらの混合物から好ましくは選択された、1種又は複数の3官能性又は4官能性ポリオールを15モル%(第1のアルコール(b)(i)及び(存在する場合には)別のグリコール(b)(ii)及びNPG(b)(iii)の総量に対して)まで
さらに含むポリオール混合物から得ることができる。
【0045】
第1のポリエステルを調製するには、第1のアルコール(b)(i)、任意選択の別のグリコール(b)(ii)、任意選択のNPG(b)(iii)、及び(存在する場合には)ポリオール混合物などの任意選択のその他のポリオール(b)(iv)のモル%の合計が、100%を超過せず、好ましくは前記モル%が合計で100%であることが理解されよう。
【0046】
より好ましい第1のポリエステル(A)は、以下のその他の性質、即ち:
15から100mgKOH/g、好ましくは20から80mgKOH/g、より好ましくは25から80mgKOH/g、都合良い場合には30から70mgKOH/gの酸価;
1100から15000、都合良い場合には1600から8500ダルトンの数平均分子量(ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)によって測定);
−50°から100℃、好ましくは45°から80℃のガラス転移温度(T)(熱勾配が分当たり20℃である、ASTM D3418による示差走査熱量測定によって測定);及び/又は
5から15000mPa・sのブルックフィールド(コーン/プレート)粘度(ASTM D4287−88により200℃で測定)
の少なくとも1種、最も好ましくはその全てを示す。
【0047】
第1のポリエステルは、イソフタル酸を少なくとも50モル%(酸全体のモル%に対して)、より好ましくはイソフタル酸を少なくとも65、少なくとも70、75、80、82、85、90、95、96、97、98、99、又はさらに100モル%含み、結合剤は、さらに最も好ましくは第2のポリエステルBを含むことが有利である。
【0048】
第1のポリエステルは、テレフタル酸を少なくとも50モル%(酸全体のモル%に対して)、より好ましくはテレフタル酸を少なくとも65、少なくとも70、75、80、82、85、90、95、96、97、98、99、又はさらに100モル%含み、結合剤は、さらに任意選択で第2のポリエステルBを含むことが有利である。
【0049】
第2のポリエステル(B)
好ましい第2の(COH官能性)ポリエステル(B)は:
(a)(i)コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサン−ジカルボン酸、これらの無水物、及び/又はこれらの任意の混合物から選択された少なくとも1種の脂肪族二酸を含む第1の酸を75から100モル%、及び
(ii)フマル酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びこれらの任意の混合物から選択された第2の酸を任意選択で0から25モル%
含む(酸全体のモル%に対して)ジカルボン酸成分と;
(b)(i)プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバレート、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、及び/又はこれらの混合物から選択された第1のアルコールを75から100モル%、及び
(ii)任意選択で、ネオペンチルグリコ−ルを0から25モル%
含むポリオール成分と
を含む。
【0050】
第1の酸(a)(i)は、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジオン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、これらの無水物、及び/又はこれらの混合物から選択されることが有利である。
【0051】
第1のアルコール(b)(i)は、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバレート、及び/又はこれらの任意の混合物から選択されることが有利である。第1のアルコールは、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及び/又はこれらの混合物から選択されることが有利である。好ましくは、第1のアルコールは、おそらくはエチレングリコール及び/又はジエチレングリコールと組み合わせて、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び/又は2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールから選択される。好ましい第1のアルコールは、2−メチル−1,3−プロパンジオールである。別のそのような好ましいアルコールは、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオールである。より好ましくは、第1のアルコールはプロピレングリコールである。ポリオール成分は、NPGを含まないことが有利である。
【0052】
第2のポリエステルは、非晶質であることが有利である。
【0053】
第2のポリエステルを調製するには、第1の酸(a)(i)、第2の酸(a)(ii)、及び(存在する場合には)任意選択のその他の酸のモル%の合計が100%を超過せず、好ましくは前記モル%が合計で100%であることが理解されよう。
【0054】
第2のポリエステルを調製するには、第1のアルコール(b)(i)、及び(存在する場合には)NPG(b)(ii)のモル%の合計が100%を超過せず、好ましくは前記モル%が合計で100%であることが理解されよう。第2のポリエステルは、別のポリオール(b)(iii)を含むことができ、前記の場合、第1のアルコール(b)(i)、(存在する場合には)NPG(b)(ii)、及び別のポリオール(b)(iii)のモル%の合計が、100%を超過せず、好ましくは前記モル%が合計で100%である。
【0055】
第2のポリエステル(B)は、直鎖状又は分枝状であってもよく、追加の成分を含んでいてもよい。
【0056】
その他の酸の例は、トリメリット酸、ピロメリット酸、及びこれらの対応する無水物から好ましくは選択された、少なくとも3個のカルボキシ基を含むポリ酸である。第2のポリエステルは、トリメリット酸、ピロメリット酸、及びこれらの対応する無水物から好ましくは選択された、少なくとも3個のカルボキシ基を含むポリ酸を0から25モル%まで、0から20モル%まで、0から15モル%まで、好ましくは1から18モル%まで、1から15モル%まで含むことが有利である。
【0057】
第2のポリエステル(B)は、直鎖状でも分枝状であってもよく、分枝状である場合には、第2のポリエステルが得られる酸及び/又はポリオールは、分枝状の第1のポリエステル(A)を得るために本明細書に記述された独立した追加の酸及び/又はポリオール(同量まで、独立して存在する。)などの追加の成分を含んでいてもよい。
【0058】
より好ましくは、第2のポリエステル(B)は、以下のその他の性質、即ち:
10から100mgKOH/g、都合良い場合には15から80mgKOH/gの酸価;
1100から17000、都合良い場合には1400から11500ダルトンの数平均分子量(ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)によって測定);
−100°から50℃、好ましくは−50°から25℃、より好ましくは−50℃から0℃のガラス転移温度(T)(熱勾配が分当たり20℃である、ASTM D3418による示差走査熱量測定によって測定);及び/又は
100℃で測定したときの5mPa・sから200℃で測定したときの20000mPa・sのブルックフィールド(コーン/プレート)粘度(ASTM D4287−88により測定)
の少なくとも1種、最も好ましくはその全てを示す。
【0059】
第2のポリエステルは、加工性が補助されるように、室温で液体であることが好ましい。好ましくは第2のポリエステルは、直鎖脂肪族二酸から得られる。第2のポリエステルは、非直鎖脂肪族ジオールから得られることが有利である。より好ましくは、第2のポリエステルは、直鎖脂肪族二酸及び非直鎖脂肪族ジオールから得られる。
【0060】
ポリエステルブレンド
本発明の、好ましい熱硬化性粉末組成物では、ポリエステル成分は:
第1ポリエステル(A)を55から100重量部、より好ましくは70から95重量部、及びこれと共に、
第2のポリエステル(B)を0から45重量部、より好ましくは5から30重量部
含む。
【0061】
本発明の熱硬化性ポリエステルブレンドは、第1及び第2のポリエステル(A)及び(B)を、従来の円筒状2重壁反応器内で、融解状態でブレンドすることによって、得ることができる。
【0062】
ポリエステルの調製
第1及び第2のポリエステルは、当技術分野で周知の従来のエステル化技法を使用して、調製することができる。ポリエステルは、1つ又は複数の反応ステップからなる手順により調製してもよい。
【0063】
これらのポリエステルの調製では、撹拌子、不活性ガス(窒素)入口、熱電対、水冷式凝縮器に接続された蒸留カラム、水分離器、及び真空接続管を備えた従来の反応器が使用される。ポリエステル化は、一般に、n−ブチルスズトリオクトエートなどのエステル化触媒の存在下、130℃から約190℃、さらに250℃まで徐々に上昇する温度で、第1の標準圧下で、次いで必要な場合には各プロセスステップの終わりに減圧下で、所望のヒドロキシル及び/又は酸価のポリエステルが得られるまでこれらの操作条件を維持しつつ、実施される。エステル化度の後、反応過程で形成された水の量と、得られたポリエステルの性質、例えばヒドロキシル価、酸価、分子量、又は粘度を決定する。
【0064】
或いは、各プロセスステップの開始時に急速な温度上昇をもたらすために、及びポリ酸又はポリオール成分の損失を低減させるために、ポリエステル化は、標準圧よりも高い(例えば2〜3バール)圧力下で行い又は開始することができる。次いで必要な場合には、各プロセスステップの終わりに減圧を行うことができる。そのような反応条件は、テレフタル酸及びプロピレングリコールがそれぞれポリ酸及びポリオールの一部である場合、特に有用である。
【0065】
ポリエステル化が終了したら、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドなどの架橋触媒を、まだ融解状態にあるポリエステルに任意選択で添加することができる。これらの触媒は、熱硬化性粉末組成物の架橋を加速させるため、硬化中に添加される。
【0066】
硬化剤
本発明の熱硬化性粉末結合剤は、硬化剤も含む。
【0067】
好ましい硬化剤(カルボキシ官能性の第1及び第2のポリエステルに対して反応性がある官能基を有する。)は、ポリエポキシ化合物を含む。
【0068】
より好ましい硬化剤は、β−ヒドロキシアルキルアミド、又はβ−ヒドロキシアルキルアミドから得られた基を含む化合物を含む。
【0069】
硬化剤は、下記のいずれか及びそれらの混合物から選択できることが都合良い:
例えばAraldite PT810及びAraldite PT910という商品名でCibaから市販されているようなイソシアヌル酸トリグリシジル(エポキシ樹脂)など、室温で固体であり分子当たり少なくとも2個のエポキシ基を含むポリエポキシ化合物;
メタクリル酸グリシジル及び/又はアクリル酸グリシジルから、及び(メタ)アクリルモノマー及び任意選択で(メタ)アクリル酸グリシジルとは異なるエチレン系モノ不飽和モノマーから、又は(メタ)アクリルモノマーから得られるものなど、グリシジル基を含むアクリルコポリマー。このアクリルコポリマーの例は、GMA300という商品名でEston Chemical Incから市販されており、WO91/01748に記載されており;且つ/又は
少なくとも1個、好ましくは2個のビス(β−ヒドロキシアルキル)アミド基を含むβ−ヒドロキシアルキルアミドであって、例えばUS4727111、US4788255、US4076917、EP322834−A、及び/又はEP473380−Aに記載されているもの。
【0070】
硬化剤は、硬化剤中の第1のポリエステル(及び存在する場合には第2のポリエステル)中の全カルボキシ当量とエポキシ及び/又はβ−ヒドロキシアルキル基の全当量との比が0.25から1.40になる量で、本発明の組成物中に存在することが有用であり、0.60から1.05になる量で存在することが、より有用である。
【0071】
結合剤
本発明の好ましい熱硬化性粉末結合剤は:
(A)第1のポリエステルを19.0から99.0重量部(より好ましくは24.5から95.5重量部);
(B)第2のポリエステルを44.5から0重量部(より好ましくは30.0から1.5重量部);及び
(C)ポリエステルのカルボキシ基に対して反応性がある官能基を有する硬化剤を1から65重量部(より好ましくは3から50重量部)
含み、全ての部は、ポリエステル樹脂及び硬化剤の総量に対するものである。
【0072】
結合剤を調製するには、(A)、(B)、及び(C)の重量%の合計が100%を超過せず、前記合計は100%になることが有利であることが、理解されよう。
【0073】
粉末製剤
第1及び(任意選択の)第2のポリエステルは、その他の従来の成分、及び塗料又はクリアラッカーとして使用するのに適切な粉末コーティング組成物を調製するのに適切な硬化剤の組合せと配合してもよい。好ましくは、その他の成分も、食品に接触する用途に適切である。
【0074】
上述の本質的な成分に加え、本発明の粉末コーティング組成物は、当業者に周知のその他の成分を含むこともできる。好ましくは、そのようなその他の成分も、食品に接触する用途に適切である。
【0075】
例えば、本発明の粉末組成物は:Modaflow P6000という商標でCytecから市販されているような流動制御剤と;ベンゾイン(BASFから市販されている。)などの脱気剤とを追加として含んでもよい。
【0076】
本発明の粉末は、着色剤を含んでもよく、又はクリアラッカーであってもよい。様々な染料及び顔料を、本発明の組成物中に利用することができる。有用な顔料及び染料の例は:二酸化チタン、酸化鉄、及び酸化亜鉛などの金属酸化物、金属水酸化物、金属粉末、硫化物、硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸アンモニウムなどのケイ酸塩、カーボンブラック、タルク、陶土、バライト、紺青、鉛青、オーガニックレッド、及びオーガニックマロンである。
【0077】
ブレンディング
本発明の粉末組成物の成分は、任意の周知の適切な手段により混合してもよい。例えばこれらの成分は、ミキサ又はブレンダ(例えば、ドラムミキサ)でドライブレンドすることができる。次いでプレミックスを、BUSS−Ko−Kneterなどの単軸押出し機又はPRISMやAPVなどの2軸押出し機で、70から150℃に及ぶ温度で均質化することができる。押出し物は、冷却したら粉砕して、粒度が10から150μmに及ぶ粉末にすることができる。
【0078】
コーティング
粉末組成物は、静電式CORONA銃又はTRIBO銃などの粉末銃を使用することによって、基材上に堆積することができ、又は流動床技法などの粉末堆積のその他の周知の方法を、使用することができる。堆積後、粉末を140から250℃の間の温度に加熱し、粒子を流動させ融合させて、滑らかで均一な連続した窪みのないコーティングを、基材表面に形成する。
【0079】
本発明の多くのその他の様々な実施形態は、当業者に明らかにされ、そのような変形例は、本発明の広い範囲内にあることが企図される。本発明のその他の実施形態、態様、及びそれらの好ましい特徴は、本明細書の特許請求の範囲に示される。本発明のある特徴は、個々の実施形態の文脈において明瞭化するために記述されており、単一の実施形態で組み合わせて提供してもよいことが理解される。逆に言えば、本発明の様々な特徴は、簡略化のため単一に実施形態の文脈において記述されるが、別々に又は任意の適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。
【0080】
その他の従来の用語及び粉末組成物中に使用される成分は、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる「Powder Coatings−Chemistry and technology、T.A.Misev、1991 J.Wiley & Sons Ltd」により、特に第42から82節、131から162節、及び224から284節で、当業者に周知である。
【実施例】
【0081】
次に本発明について、単なる例示である以下の非限定的な例を参照しながら詳述する。
【0082】
(例1)
カルボン酸基を含有する非晶質ポリエステル(A)の合成
プロピレングリコール(347.14部)を、撹拌子、水冷式凝縮器に接続された蒸留カラム、窒素用入口、及び温度調節器に取着された温度計を備えた従来の4つ口丸底フラスコ内に入れる。フラスコの内容物を、窒素中で撹拌しながら約130℃の温度に加熱し、その時点で、イソフタル酸760.35部、無水トリメリット酸45.67部、及びn−ブチルスズトリオクトエート2.00部を添加する。加熱は、230℃の温度まで徐々に継続する。水を、180℃から、反応器から蒸留する。大気圧下での蒸留が停止したら、50mmHgの真空を徐々に加える。230℃及び50mmHgで3時間後、以下の特徴が得られる:
AN 46.4mgKOH/g
Brfld175℃(コーン/プレート) 7590mPa・s
Tg(DSC、20°/分) 70℃
【0083】
(例2)
カルボン酸基を含有する非晶質ポリエステル(A)の合成
2−エチル2−ブチル1,3−プロパンジオール(504.16部)、テレフタル酸(471.22部)、及びn−ブチルスズトリオクトエート(2.00部)を、例1で述べたものと同じ手法で反応容器に投入した。反応混合物の温度を、窒素雰囲気中で220℃まで徐々に上昇させた。混合物を撹拌し、5mgKOH/gよりも低い酸価が得られるまで220℃で保持した。次いで反応混合物を170〜190℃に冷却し、その後、無水トリメリット酸118.92部を添加した。温度は、以下の特徴を有するポリエステルが得られるまで約2時間維持した:
AN 73.5mgKOH/g
Brfld175℃(コーン/プレート) 5590mPa・s
Tg(DSC、20°/分) 57℃
【0084】
(例3)
カルボン酸基を含有する非晶質ポリエステル(B)の合成
例1に記述される手順により、プロピレングリコール397.34部、アジピン酸764.86部、無水トリメリット酸21.20部、及びn−ブチルスズトリオクトエート2.00部を、以下の特徴を有するポリエステルが得られるまで反応物に入れる:
AN 22.2mgKOH/g
Brfld100℃(コーン/プレート) 1100mPa・s
Tg(DSC、20°/分) −45℃
【0085】
(例4から7)
非晶質ポリエステル(A)の合成
例1の手順により、表1に示される組成を有する例4、5、及び7のポリエステルを調製した。一方、例6のポリエステルは、例2の手順に従って調製した。表1の全ての例では、n−ブチルスズトリオクトエート2.00部を重縮合触媒として導入した。
【表1】

【0086】
次いで例1及び2と4から7のポリエステルを、以下に述べる白色塗料配合物の配合に従って、粉末に配合する。
白色塗料配合物
結合剤 69.06
Kronos 2310 29.60
Modaflow P6000 0.99
ベンゾイン 0.35
【0087】
粉末は、まず、種々の成分をドライブレンドし、次いで押出し温度が85℃のPRISM 16mmL/D 15/1 2軸押出し機を使用して、融解状態で均質化することによって調製する。次いで均質化混合物を冷却し、Alpineで粉砕する。その後、粉末を篩にかけることによって、10から110μmの間の粒度を得る。このようにして得られた粉末を、GEMA−Volstatic PCG1スプレーガンを使用する静電堆積によって、厚さ0.5mmの冷延鋼板及び厚さ0.6mmのアルミニウム板上に堆積する。膜厚約30μmで、パネルを換気式炉に移し、そこで硬化を、温度200℃で18分間進行させる。本発明に例示されるように、任意選択で例3の非晶質ポリエステル(B)と組み合わせた種々の非晶質ポリエステル(A)から得られた仕上げコーティングの塗料の特徴は、表2及び表3で再現される。
【0088】
これらの表において:
欄1及び8は:配合物の識別番号を示し
欄2は:ポリエステル(A)+(B)の総量に対する非晶質ポリエステル(A)のタイプ(例)及び重量パーセンテージを示し
欄3は:ポリエステル(A)+(B)の総量に対するポリエステル(B)のタイプ(例)及び重量パーセンテージを示し
欄4は:結合剤中に存在する樹脂(A)&(B)の重量パーセンテージを示し
欄5は:ポリエステル(A)及び(B)のカルボン酸基に対して反応性がある官能基を有する硬化剤のタイプを示し、但し:
GT7004=ビスフェノールAタイプエポキシ樹脂、タイプn=3(Huntsman)
XL552=Primid XL552(EMS)=N,N,N’,N’−テトラキス−(2−ヒドロキシエチル)−アジパミド
欄6は:結合剤中に存在する硬化剤の重量パーセンテージを示し
欄7は:ASTM D523により測定された60°光沢を示し
欄9は:ASTM D2794による直接/逆衝撃強度を示す。コーティングに亀裂を生じさせない最高衝撃を、kg・cmを単位として記録する。
欄10は:ISO 1520によるエリクセン低速エンボスを示す。コーティングに亀裂を生じさせない最高貫入度を、mmを単位として記録する。
欄11は:結合剤(=(A)+(B)+硬化剤)に対する架橋触媒(臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム)の重量パーセンテージを示す。
欄12は:硬化した被膜の表面外観に悪影響を及ぼさない、MEKを含浸させた綿パッドによる往復摩擦運動(前後)の回数を示す。加えた圧力は、鉛筆用消しゴムで鉛筆の跡を消すときと同じである。
欄13は:それぞれ、ASTM D3359に従った、テープによる冷延鋼板及びアルミニウム板に対する碁盤切片の接着の分類値
5B:切片の縁部は完全に滑らかであり;格子の四角形で剥離するものはない。
4B:コーティングの小薄片が交点で剥離し;その面積の5%未満が影響を受ける。
3B:コーティングの小薄片が縁部に沿って且つ切片の交点で剥離し;影響を受ける面積は格子の5から15%である。
2B:コーティングは、四角形の縁部に沿って且つ一部で薄片化し;影響を受ける面積は格子の15から35%である。
1B:コーティングは、大きなリボンの切片の縁部に沿って薄片化し、四角形全体が剥離した;影響を受ける面積は格子の35から65%である。
0B:薄片化及び剥離は、グレード1よりも悪い。
【表2】


【表3】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)非晶質であり、少なくとも1個のカルボキシ基を含む第1のポリエステルであって、少なくとも50モル%のイソフタル酸及び/又はテレフタル酸を含む酸と、10モル%以下のネオペンチルグリコール(NPG)を含むポリオールとから得られ、15から100mgKOH/gの酸価を有する第1のポリエステルと;
(B)非晶質であり、少なくとも1個のカルボキシ基を含む第2の任意選択のポリエステルであって、脂肪族二酸及び脂肪族ジオールから得られる第2の任意選択のポリエステルと;
(C)ポリエステル(A)及び(存在する場合には)ポリエステル(B)上のカルボン酸基に対して反応性がある官能基を含む硬化剤と
の混合物を結合剤として含む、粉末コーティング組成物。
【請求項2】
前記結合剤が、本質的に非晶質ポリエステルからなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1のポリエステルが、20から80mgKOH/g、より好ましくは30から70KOH/gの酸価を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第2のポリエステル(B)を含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
第1のポリエステル(A)が:
(a)(酸全体のモル%で)
(i)イソフタル酸、テレフタル酸、及びこれらの混合物から選択された第1の酸を50から100モル%、及び
(ii)フマル酸、マレイン酸、無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、これらの無水物、及びこれらの任意の混合物から選択された第2の酸を50から0モル%
含むジカルボン酸成分と;
(b)(i)単独で又は混合物で使用される、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、及びジエチレングリコールから選択された第1のアルコールを70から100モル%、
(ii)任意選択で、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、及び/又はこれらの混合物から好ましく選択されたその他のジオールを0から30モル%、及び
(ii)任意選択で、ネオペンチルグリコールを0から10モル%
含むポリオール成分と
から得られる及び/又は得ることができる、請求項1から4までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1の酸が、任意選択でイソフタル酸と組み合わせたテレフタル酸である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1の酸がイソフタル酸である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1のアルコールがプロピレングリコールである、請求項1から7までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
第2のポリエステル(B)が:
(a)(酸全体のモル%に対して)
(i)コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサン−ジカルボン酸、これらの無水物、及び/又はこれらの任意の混合物から選択された少なくとも1種の直鎖の非分枝状脂肪族二酸を含む第1の酸を75から100モル%、及び
(ii)フマル酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及び/又はこれらの任意の混合物から選択された第2の酸を任意選択で0から25モル%
含むジカルボン酸成分と;
(b)(i)プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバレート、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、及び/又はこれらの混合物から選択された第1のアルコールを75から100モル%、及び
(ii)任意選択で、ネオペンチルグリコ−ルを0から25モル%
含むポリオール成分と
から得られる及び/又は得ることができる、請求項1から8までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記硬化剤が、エポキシ樹脂及び/又はβ−ヒドロキシアルキルアミド硬化剤から選択される、請求項1から9までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1及び/又は第2のポリエステルが、分枝状であり、
(a)(iii)トリメリット酸、ピロメリット酸、及びこれらの対応する無水物から好ましくは選択される、少なくとも3個のカルボキシ基を含む1種又は複数のポリ酸を15モル%(第1の酸(a)(i)及び(存在する場合には)第2の酸(a)(ii)の総量に対して)までさらに含む酸混合物から得られる、請求項1から10までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記熱硬化性粉末コーティング組成物が、ポリエステル(A)を19から99重量部と、50℃以下のTgを有し、酸の総量に対して75から100モル%の脂肪族二酸及びアルコールの総量に対して75から100モル%のネオペンチルグリコールとは異なる脂肪族ジオールを含むポリエステル(B)を0から44.5重量部と、ポリエステルの官能基に対して反応性がある官能基を有する架橋剤を1から65重量部含む結合剤系とを含む、請求項1から11までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1及び/又は第2のポリエステルが、分枝状であり、かつ、
(b)(iii)トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びこれらの混合物から好ましくは選択された1種又は複数の3官能性又は4官能性ポリオールを15モル%(第1のアルコール(b)(i)及び(存在する場合には)NPG(b)(ii))までさらに含むポリオール混合物から得られる、請求項1から12までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
(A)第1のポリエステルを19.0から99.0重量部;
(B)第2のポリエステルを44.5から0重量部;及び
(C)硬化剤を1から65重量部
を含み、全ての部はポリエステル樹脂と硬化剤との総量に対するものである、請求項1から13までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
(A)第1のポリエステルを24.5から95.5重量部;
(B)第2のポリエステルを30.0から1.5重量部;及び
(C)硬化剤を3から50重量部
を含み、全ての部はポリエステル樹脂と硬化剤との総量に対するものである、請求項1から14までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記基材の少なくとも1つの面を、請求項1から15までのいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物でコーティングするステップと、
コーティングされた基材を加熱して、その表面のコーティングを熱硬化することにより、基材上にコーティング組成物の接着層を形成するステップと
を含む、基材をコーティングするための方法。
【請求項17】
前記基材が、食品及び/又は飲料製品用の金属シートから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記基材が、食品及び/又は飲料製品用の金属容器から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
請求項16から18までのいずれか一項に記載の方法によって得られる及び/又は得ることができる、コーティング済物品。
【請求項20】
アルコール飲料を保持する金属缶である、請求項19に記載の物品。
【請求項21】
アルコールに接触するようになる食品容器の内面及び/又は外面をコーティングするための、請求項1から15までのいずれか一項に記載の粉末コーティング組成物の使用。
【請求項22】
アルコール飲料を保持するための金属缶の少なくとも内面がコーティングされる、請求項21に記載の使用。

【公表番号】特表2011−511118(P2011−511118A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544712(P2010−544712)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/051064
【国際公開番号】WO2009/095471
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(505365965)サイテック サーフェース スペシャリティーズ、エス.エイ. (38)
【Fターム(参考)】