説明

粉状体すり切り装置

【課題】 容器内における粉状体の入りの状態にばらつきが生じるのを抑制する。粉状体の圧縮成形時に色斑等による不良が発生するのを抑制する。洗浄を容易とする。
【解決手段】 容器1上に供給された粉状体が圧縮成形される前に当該粉状体の表層部分をすり切ってその表面をならすとともに容器1内での充填量を均一化するための粉状体すり切り装置28を回転体26によって構成する。当該回転体26のうち粉状体をすり切る動作に関与している部位の動作方向は、容器1の移動方向に対して平行となっていることが好ましい。また、回転体26のうち粉状体をすり切る動作に関与していない部位を洗浄する洗浄装置27が併設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉状体すり切り装置に関する。さらに詳述すると、本発明は、例えば顆粒、粉末、粉体等の各種化粧料をはじめとする粉状体を圧縮成形工程前にすり切って表面をならし、充填量を均一化するための装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば化粧用ファンデーションに代表されるような、顆粒、粉末、粉体等の各種化粧料をはじめとする粉状の物体(本明細書ではこれらをまとめて「粉状体」と表す)を加圧(プレス)して所望の形状に形成するための圧縮成形装置が利用されている。
【0003】
この圧縮成形装置においては、容器等に供給した粉状体を圧縮成形する前の段階で当該粉状体の表層部分をすり切ってその表面をならし、容器内における粉状体の充填量を均一化するための粉状体すり切り用の装置が併設されているものが多い。このような粉状体すり切り装置としては、例えば、粉状体の供給口を開閉するためのシャッターの一部をすり切り用に併用したものや、シャッターと一体的になったすり切り棒などを利用したものなどが知られている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
ここで、一具体例として図13に示す粉状体すり切り装置は、一定ストロークで往復動するシャッター101を使って粉状体の供給口の開閉をし、さらに供給された粉状体のすり切り動作を行うものである。このシャッター101は、ターンテーブル(粉状体供給、圧縮成形、表面清掃などの各工程を実施するため回転して各容器103を移動させるためのテーブル)102の径方向に往復動するもので、まずはターンテーブル102の中心方向へスライドして粉状体ホッパー(図示省略)の粉状体供給口を開け、粉状体通過孔103を通じて容器103に一定量の粉状体を供給させた後、今度は逆方向(ターンテーブル102の外周方向)にスライドして粉状体供給口を閉じる。この際、粉状体通過孔103の縁を利用して粉状体の表層部分をすり切って余剰分を掻き取り、充填量を均一化するとともにその表面をならすという動作を行う。
【特許文献1】特開2005−118786号公報
【特許文献2】特開2003−39197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような構造のシャッター(すり切り装置としての機能も果たすように設けられたいわばすり切り機能付きのシャッター)101には以下のような問題がある。すなわち、第一に、粉状体が表面に付着してシャッター101が汚れると、成形品(圧縮成形された化粧料などの粉状体)に不均一状態である色斑(むら)が生じたり、当該成形品の表面に凹凸が形成されたりして不良品になってしまうというものである。
【0006】
第二に、汚れたシャッター101を洗浄するのに時間と手間を要しているということである。つまり、シャッター101を洗浄するにあたっては成形装置をいったん停止させ、シャッター101を取り外して洗浄し、再び取り付けてから当該装置の運転を再開させるというのが現状であるが、これについて具体例を挙げて説明すると、1回の洗浄に5〜10分もの時間を要し、さらにこのような洗浄を例えば1日に5回程度実施する場合もあり、1日に約30〜50分もの時間を費やしている。したがって、この分だけ余分な時間と労力を要し、生産効率の向上が妨げられている。
【0007】
第三に、シャッター101によって粉状体をすり切る動作をした際、粉状体の充填状態にばらつきが生じることがあるというものである。この一因としては、回転するターンテーブル102に対してシャッター101が径方向にストロークする、つまり容器103や粉状体の動きに対して垂直方向にスライドする構造を採っていることにあるといえる(図13参照)。すなわち、すり切り動作の際、一般的に粉状体は引きずられる方向に寄ってしまう傾向があるために容器103内で径方向(例えば外周側)に偏り、尚かつターンテーブル102が回転すると慣性の影響により容器103内でさらに周方向(回転方向)に粉状体が偏るというように、容器103内における供給バランスが乱れ、プレス後の粉状体の入りの状態にばらつきが生じることがある。
【0008】
そこで、本発明は、容器内における粉状体の入りの状態にばらつきが生じるのを抑制でき、さらには、粉状体の圧縮成形時に色斑等による不良が発生するのを抑制でき、尚かつ洗浄も容易に可能となる粉状体すり切り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明者は種々の検討を行い、その結果、上述のような問題を有効に回避することが可能な技術を知見するに至った。すなわち、上述したようなすり切り装置(例えば上述の例ではシャッターがすり切り装置としての機能も併せ有しているもの)に代表されるようなリニアに動くという構造自体に着目し、従来のそもそもの構造を見直すことによって課題解決に結び付く新しい知見を得た。
【0010】
本発明はかかる知見に基づくもので、請求項1に記載の発明は、容器上に供給された粉状体が圧縮成形される前に当該粉状体の表層部分をすり切ってその表面をならすとともに前記容器内での充填量を均一化するための粉状体すり切り装置において、回転体によって構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
ターンテーブルの径方向にスライドしてすり切り動作を行う従来の装置の場合、粉状体の移動方向とすり切り方向とが一致していないために粉状体の供給バランスが乱れて入りの状態にばらつきが生じうるが、単にスライドの方向を90度変えるだけではそれ以外の課題(すり切り装置表面の汚れ、洗浄に要する余分な時間と労力)の解決に結び付かない。この点、回転体によって構成した回転式の粉状体すり切り装置によれば、粉状体移動方向とすり切り方向とを少なくとも垂直ではない状態として粉状体の入りの状態を改善し、さらに、当該回転体の一部を洗浄する機構とすることにより、表面汚れを減少させ、尚かつ洗浄工程に要する時間と労力を極端に減らすことが可能となる。
【0012】
このような粉状体すり切り装置における回転体は、請求項2に記載のように、当該回転体のうち前記粉状体をすり切る動作に関与している部位の動作方向が、前記容器の移動方向に対して平行となるように設けられていることが好ましい。平行に近い状態となるほど、容器内における粉状体の偏り方向を一致させ、相殺することによって、供給バランスの乱れを減少させることが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の粉状体すり切り装置において、前記回転体のうち、前記粉状体をすり切る動作に関与していない部位を洗浄する洗浄装置が併設されていることを特徴とするものである。該洗浄装置を用い、すり切り動作に関与していない部位を洗浄することが可能となる。
【0014】
この場合の洗浄装置は、請求項4に記載のように所定位置に固定して配置されているものであり、前記回転体が回転するのを利用して当該回転体を自動的に洗浄するものであることが好ましい。この場合、回転体の回転動作を利用してすりきり動作に関与していない部位を洗浄することができる。しかも、洗浄装置が固定配置されているために設置に要するスペースが狭小で済む。
【0015】
さらに、請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかひとつに記載の粉状体すり切り装置における回転体が、前記粉状体を前記容器へと供給するための粉状体供給口を開閉する回転式のシャッターによって構成され、シャッターとしての機能とすり切り装置としての機能とを併せ有しているというものである。本発明における回転体は、回転することによって粉状体供給口を開閉するシャッターとしての機能に加え、当該回転動作を利用して粉状体をすり切る装置としての機能も発揮することになる。
【0016】
この場合の回転体は、請求項6に記載のように、前記粉状体が供給されるための粉状体通過部と、該粉状体通過部以外の領域であり前記粉状体供給口を塞ぐシャット領域とを備えた板状の部材によって形成されていることが好ましい。この板状の回転体は、粉状体通過部とシャット領域とを交互に切り替えて粉状体が所定量ずつ供給されるようにするとともに、当該供給された粉状体の表層部分を回転動作を利用してすり切り、その表面をならす。
【0017】
さらに、この場合における粉状体すり切り装置は、請求項7に記載のように、前記粉状体通過部が複数設けられるとともに、これら複数の粉状体通過部が当該回転体の回転軸を中心として均等に配置されていることが好ましい。こうした場合、粉状体の供給およびすり切り動作に要する当該回転体の回転量がその分だけ少なくなる。また、均等配置されていれば、等速ないしは等量の回転を行うことによって供給およびすり切り動作を等間隔(一定ピッチ)で行うことができる。
【0018】
また、粉状体すり切り装置は、請求項8に記載のように、前記回転体が正逆両回転可能に設けられているものであることが好ましい。例えば、ターンテーブルと当該回転体との相対速度を速くすれば粉状体をより迅速にすり切り、これによってその表面をよりシャープで尚かつ一定の高さとなるようならすことが可能となるし、これとは逆に相対速度を遅くすれば粉状体と回転体の表面との間における摩擦抵抗を減少させつつ各工程の処理を進めることも可能となる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の粉状体すり切り装置によれば、回転体によって構成されているために、粉状体の移動方向とすり切り方向とを一致するように調整することによって粉状体の入りの状態を改善することが可能であり、これにより、容器内における粉状体の入りの状態にばらつきが生じるのを抑制することができる。また、当該回転体の一部を洗浄することとして表面汚れを減少させれば、粉状体の圧縮成形時に色斑等による不良が発生するのを抑制することも可能となる。
【0020】
請求項2に記載の粉状体すり切り装置によれば、回転体のうち粉状体をすり切る動作に関与している部位の動作方向が容器の移動方向に対して平行となっていることから、例えばターンテーブルと回転体との相対的回転方向を調整し、容器内における粉状体の偏りを相殺する等すれば、供給バランスの乱れを減少させて粉状体の入りの状態をさらに改善することができる。
【0021】
請求項3に記載の粉状体すり切り装置によれば、併設した洗浄装置を用い、回転体のうち粉状体をすり切る動作に関与していない部位を洗浄することができる。したがって、粉状体をすり切る動作と同時に回転体の表面を洗浄して常時きれいな状態に保つことが可能となることから、表面の汚れを減少させ、圧縮成形時において当該粉状体に色斑が生じたり、当該成形品の表面に凹凸が形成されたりするのを抑制し、不良品の発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0022】
請求項4に記載の粉状体すり切り装置によれば、洗浄装置を設置するにあたり大きなスペースを必要としないから装置全体をコンパクトにまとめやすい。つまり、本発明においては粉状体すり切り装置の構成要素として回転体を採用しているために粉状体の入りの状態を改善できるというのは前述のとおりであるが、これに加え、すり切り動作に関与していない部分がターンテーブルとは重なり合っていないという配置をとりやすいために、当該関与していない部分を洗浄するという構成をとりやすい。しかも、本発明のごとく洗浄装置を固定すれば設置に大きなスペースを必要としないし、この状態で回転体を回転させれば当該回転体の一部が常時自動的に洗浄されるというシステムを構築することができて便宜である。加えて、回転体を常時効果的に洗浄することができることから、洗浄を行うために装置をいったん停止させて取り外し、洗浄してから再び取り付けるといった面倒な動作が不要である。このため、従来必要とされていた余分な時間と労力を省略し、ひいては生産効率の向上を図ることができる。
【0023】
請求項5に記載の粉状体すり切り装置によれば、シャッターとしての機能を兼ね備えた回転体により、粉状体供給口を開閉するという当該シャッターとしての機能と、回転動作に伴い粉状体の表層部分をすり切るというすり切り装置としての機能の両方を発揮することができる。この場合、一の部材(例えば板状の部材)によって2つの機能を併せ有する部材が構成されているため、装置を小型化かつ簡素化できるという利点もある。
【0024】
請求項6に記載の粉状体すり切り装置によれば、板状の回転体を回転させることにより、粉状体通過部とシャット領域とを交互に切り替えることができる。こうした場合、粉状体を所定量ずつ供給することができ、また、当該供給された粉状体の表層部分において回転動作を利用してすり切るとともにその表面をならすという動作も行うことができる。
【0025】
請求項7に記載の粉状体すり切り装置によれば、粉状体通過部を複数設けていることから、粉状体の供給およびすり切り動作に要する当該回転体の回転量がその分だけ少なくて済むという利点がある。また、これら複数の粉状体通過部を回転軸を中心として均等に配置しているため、等速ないしは等量の回転を行えば供給およびすり切り動作を等間隔で行うことができ、工程をより正確に進めるうえで好適である。
【0026】
また、請求項8に記載の粉状体すり切り装置によれば、ターンテーブルと当該回転体との相対速度を速くして粉状体をより迅速にすり切ることにより表面をよりシャープとしたり、相対速度を遅くして粉状体と回転体の表面との間における摩擦抵抗を減少させたりすることができて便宜である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0028】
図1〜図8に本発明にかかる粉状体すり切り装置の一実施形態を示す。この粉状体すり切り装置28は、容器1上に供給された粉状体2が圧縮成形される前に当該粉状体2の表層部分をすり切ってその表面をならすとともに容器1内での充填量を均一化するというものである。以下に示す実施形態においては、この粉状体すり切り装置28を粉状体2の圧縮成形装置の一部を構成する装置として用いる場合について説明する(図1等参照)。
【0029】
ここで、この粉状体の圧縮成形装置は、皿状の容器1上に供給された粉状体2をパッド3等によって加圧し、当該容器1上にて圧縮成形するための装置である。本実施形態においては、空気を吸引できる吸引装置5と、粉状体2を加圧する際に生じる空気を通気させるための通気孔4とを設け、粉状体2の圧縮成形時にこの通気孔4を通じて空気を吸引することとしている(図1等参照)。以下においては、このような圧縮成形装置を、化粧料としての粉状体(以下、単に「化粧料」ともいう)2に対して適用した場合の実施形態を説明する。ここでいう化粧料としての粉状体2は、例えばコンパクト内に成形されたファンデーションなどのようなものである。以下では、粉状体2として「顆粒または粉体等の各種化粧料」を対象とした場合の実施形態について説明する。
【0030】
まず、上述の化粧料2を圧縮成形する際の概略から説明する(図2参照)。本実施形態においては、図2に示すようなターンテーブル10を用い、当該ターンテーブル10を図中時計回りに回転させることによって各工程を順次行うようにしている。ここでは、全6つの工程(空き工程を含む)を60度おきに配置し、図中のNo.1で容器1の供給、No.2で粉状体2の供給、No.4で粉状体2の圧縮成形、No.5で製品(圧縮成形後の粉状体2および容器1)の上面清掃、という各工程を行うこととしている。また、No.5の位置とNo.6の位置の間には、製品をターンテーブル10から降ろして排出する排出ユニットが設けられている。なお、本実施形態におけるNo.3は空き工程となっているため工程の変更などに対応しやすい。ターンテーブル10上には、容器1を一時的に保持するための例えば丸い凹部からなる載置用スペース11が周状に6個設けられている(図2参照)。
【0031】
上述の工程の概略と当該工程を実施するための各装置について以下に簡単に説明を加えておく(図2参照)。容器1の供給(No.1)を行う容器供給ユニットは、容器供給路12上を搬送されてきた容器1を受け取った後、図示しない容器フィーダーを使って当該容器1を上述のターンテーブル10上の載置用スペース11に載置する。本実施形態における容器1は、例えば化粧品としてのいわゆるコンパクトに装着される皿状のもので、樹脂によって形成された樹脂皿や金属製の金皿などが該当する。
【0032】
粉状体2の供給(No.2)を行う粉状体供給ユニットは、載置用スペース11に載置された容器1上に所定量の粉状体2を供給する。本明細書では特に詳しくは説明しないが、この粉状体供給ユニットは、粉状体2を所定量ずつ供給する固定ホッパー、またはエキセンホッパーないしは偏心ホッパー(以下、まとめてホッパーといい、符号31で示す)、このホッパー31に粉状体2を適宜供給して補充する粉状体供給サブホッパーユニット、上記ホッパー31の粉状体供給口31aを塞いだり開けたりするようにターンテーブル10上をスライドするとともに容器1上の余分な粉状体2をすり切る機能を有する回転体26などによって構成されている。
【0033】
圧縮成形(No.4)を行うプレスユニット13は、容器1上に供給された粉状体2を加圧して成形するための装置である。このプレスユニット13は、例えば油圧を利用して粉状体2および容器1を上下から挟み込むようにして圧力を加えるもので、本実施形態においては粉状体2および容器1の上側からパッド3をあてがうようにして加圧するようにしている。
【0034】
製品(圧縮成形後の粉状体2および容器1)の表面の清掃(No.5)は、プレス表面エアークリーナーを使って行う。このプレス表面エアークリーナーは、圧縮成形後、容器1の周辺におけるプレス粉残部(バリ等)をエアーで吹き飛ばしたり、集塵装置で吸引したりして清掃を行うものである。
【0035】
排出ユニットは、上面清掃後の製品がNo.5の位置からNo.6の位置に移動する間に当該製品をターンテーブル10から降ろし、排出するための装置である。
【0036】
さらに、No.6の位置とNo.1の位置との間にはターンテーブルクリーナー14が設けられている(図2参照)。このターンテーブルクリーナー14は、図2中において時計回りに回転するターンテーブル10の表面を清掃し、付着している粉状体2などを落として清浄に保つ。
【0037】
続いて、上述した粉状体供給ユニット(No.2)の構成についてさらに詳細に説明する(図8、図9等参照)。本実施形態においては、上述した回転体26として例えば円板によって構成された回転式のシャッター(以下、回転式シャッターという)を採用している。この回転式シャッター26には、粉状体(化粧料)2を通過させるための粉状体通過孔26aが形成されている。この粉状体通過孔26aは、ホッパー31の粉状体供給口31aとターンテーブル10の載置用スペース11とを連通した状態とすることによって粉状体2を通過させ、容器1上に供給されるようにするためのものである。このような粉状体通過孔26aは回転式シャッター26に少なくとも1つ設けられていれば足りるが、複数設けることとすれば、ある粉状体通過孔26aからその隣の粉状体通過孔26aへと切り替えるまでの回転式シャッター26の回転量が少なくて済むという利点があり、その一方で、ホッパー31の粉状体供給口31aを完全に塞ぐに足りるだけの孔以外の領域を確保する必要もある。以上の観点からすれば回転式シャッター26に設けられる粉状体通過孔26aの個数は2〜4個であることが好ましく、本実施形態のごとく3個であることがもっとも好ましい。本実施形態では、3個の粉状体通過孔26aをいずれも同径かつ円形とし、周方向に等間隔(この場合、120度おき)に設けている(図8参照)。これら粉状体通過孔26aが粉状体供給口31aと載置用スペース11との間に位置していないときは、回転式シャッター26のうちの粉状体通過孔26a以外の部分(本明細書ではこの部分をシャット領域といい、符号26bで表示する)がこれらの間に位置し、粉状体供給口31aが塞がれて(閉じられて)粉状体2の供給が遮断された状態となる。
【0038】
なお、ここでは好適な一例として粉状体通過孔26aが3個設けられた円形の回転式シャッター26を図示したが(図8参照)、本実施形態の粉状体すり切り装置28においては他の回転式シャッター26を採用することが当然に可能である。他の例を示すと(図10参照)、上述した円形の回転式シャッター26(図10(A))の他、粉状体通過孔26aが4個設けられた矩形の回転式シャッター26(図10(B))、粉状体通過孔26aが同じく4個設けられた略八角形の回転式シャッター26(図10(C))などとすることができる。また、ここまでは粉状体2を通過させる部分の好例として粉状体通過孔26aを示してきたが、粉状体2を通過させ尚かつすり切る動作を行うことができれば必ずしも孔である必要はなく、例えば、図10(D)に示すように四隅を切り欠いた形状の矩形板における当該切り欠き部分を粉状体通過部(図10(D)において符号26aで示す)とすることもできる。さらに、粉状体通過孔(粉状体通過部)26aの形状は円形あるいは容器1に合わせた形状であることが好ましいが、上記と同様の観点からすればこれらに限られることはなく、矩形などといった他の形状とすることも可能である。
【0039】
さらに、回転式シャッター26の材質についても説明を加えておくと、ステンレス、チタンなどの金属材質の平滑で板状に形成されたものが好ましいが、このようなものに限定されるわけではない。この他、テフロン(登録商標)のコーティングや金属メッキ等といったコーティングが可能な材質で形成された部材、あるいはアクリルやPET等といった硬質樹脂製の部材等を利用することが可能である。
【0040】
また、回転式シャッター26は、ホッパー31の粉状体供給口31aと上記No.2に位置する載置用スペース11との間に上述の粉状体通過孔26aが介在しうるような位置に配置される。例えば本実施形態においては、この回転式シャッター26を、その回転中心たるシャッター回転軸30がターンテーブル10の外周付近に位置するように配置している(図8参照)。ただし、これは配置の一例に過ぎず、当該回転式シャッター26の大きさや形状に応じて種々の態様とすることができる。要は、粉状体供給口31aと載置用スペース11との間に粉状体通過孔26aが位置することができ、尚かつ、他の工程(例えば隣合うNo.1の工程)を妨げないように配置されていれば回転式シャッター26の位置は特に限定されることはない。
【0041】
なお、図9に示すように、上述の回転式シャッター26を所定量回転させるための駆動装置29が併設されている。この駆動装置29は、例えばステッピングモータやサーボモータあるいはクラッチ付モータなどによって構成された装置であり、例えばインデックス制御を行うことによって当該回転式シャッター26を円滑に回転させ、尚かつ所定量回転させたところで停止させることができるように構成されている。ちなみに、ここでいう所定量とは、ホッパー31の粉状体供給口31aを閉じた状態と開けた状態とを交互に切り替えるために必要十分な回転量のことであり、一例として、3個の粉状体通過孔26aを120度おきに配置している本実施形態の場合であれば60度ということになる。また、本実施形態におけるように、駆動装置は回転式シャッター26を正逆両方向に回転させることができるものであることが好ましい(図8参照)。
【0042】
さらに本実施形態においては、上述の回転式シャッター26を、供給後の粉状体2の表面をすり切るようにしてならすための粉状体すり切り装置28としても機能させるようにしている。すなわち、製品の品質を一定で尚かつ高いものとするためには、容器1上に粉状体2を供給した後に当該粉状体2の表面を一度すり切る動作を実施し、余分な粉状体2を削り取って一定量にするとともに表面をならして平滑にし、その後圧縮成形(No.4)に移行するという工程が従来実施されているが、本実施形態においては、上述の回転式シャッター26をこのようなすり切り動作を行う装置としても用いることとしている。具体的には、まず上述の回転式シャッター26を、ターンテーブル10の表面に接触しながら回転するようにこのターンテーブル10と平行に設けておき、回転時、粉状体通過孔26aの底側の縁によって粉状体2の表面をすり切るようにしてならすことが可能な構造としている。つまり本実施形態の圧縮成形装置は、粉状体供給口31aを開閉するために回転式シャッター26を回転させれば、この動作と同時に供給後の粉状体2をすり切る動作も実施することができる構造となっている。
【0043】
ここで、上述したように回転可能な回転式のシャッター26を粉状体すり切り装置28としていわば兼用する本実施形態の場合、粉状体2の入りが安定化するという作用効果を得ることができる。すなわち、例えば従来のようにシャッターが径方向にストロークする構造の場合、すり切り動作の方向と粉状体2の移動方向とが垂直であるために容器1内の粉状体2が外周側に寄るといった偏りが生じることがあったが、本実施形態においてはこのような偏りを解消することが可能となっている。つまり、回転式シャッター26を利用して粉状体2をすり切ることから、ターンテーブル10の回転に伴う容器1内での粉状体2の偏り方向(具体的には周方向)と、回転式シャッター26を利用した粉状体2のすり切り方向(同じく周方向)とを一致させることが可能となり、偏りを調整して充填バランスをとることができるようになる。具体的には、ターンテーブル10の回転時に粉状体2が偏る向きとすり切り時に粉状体2が偏る向きとを相反する向きとすれば、偏りをいわば相殺して周方向のバランスの乱れを減少させ、粉状体2の入りの状態がばらつくのを抑えて安定化を図ることが可能となる。いうまでもないが、この場合における回転式シャッター26は、当該回転式シャッター26のうち粉状体2をすり切る動作に関与している部位の動作方向が、容器1の移動方向に対して平行となるように設けられていることが望ましい。
【0044】
また、上述のようにシャッターを使って粉状体2をすり切ることとした圧縮成形装置の場合、シャッター部分に付着することの多い汚れを洗浄するための機能を併せ有していることが好ましい。本実施形態においては、回転式シャッター26に洗浄装置(以下、洗浄ユニットともいう)27および集塵用ホース27aを併設し、回転式シャッター26が回転すると同時に当該回転式シャッター26の表面を洗浄できる、いわば自動洗浄シャッター(オートクリーニングシャッター)を構成している。この場合、洗浄ユニット27の配置は特に限定されることはないが、圧縮成形装置を大型化させず、尚かつ汚れ付着部分を効果的に洗浄できるような配置とすることが好ましい。本実施形態においては、回転式シャッター26のうち、ターンテーブル10とは重なり合っていない部分(換言すれば、粉状体2をすり切る動作に関与していない部分)にこの洗浄ユニット27を配置することにより、大型化を抑えつつ効果的に洗浄することを可能としている(図8参照)。すなわち、例えばストロークする直動型のシャッターに対して洗浄ユニット27と同様の機構を併設しようとした場合、実際に汚れの付着している粉状体通過孔26aおよびその周辺部分を効果的に洗浄するためにはターンテーブル10から十分に離れるだけの大きなストローク幅が必要となり、このことが装置全体としての大型化と機構の複雑化を招きやすいのに対して、本実施形態のようにシャッターを回転式とした場合であれば、当該回転式シャッター26のうちターンテーブル10と重なり合っていない部分を効果的に洗浄することが可能である。このため、回転式シャッター26の構造はそのままに洗浄ユニット27を別途設置することができ、装置全体としての大型化を抑えてコンパクトにしつつも回転式シャッター26の表面を洗浄することができるようになる。
【0045】
しかも、回転式シャッター26のうちターンテーブル10と重なり合っていない部分においては、汚れの付着しやすい粉状体通過孔26aおよびその周辺部分がターンテーブル10の外周部から十分に離れた状態となる(図8参照)。したがって、本実施形態のような構造とした場合には付着した汚れを効果的に洗浄しやすいという利点もある。
【0046】
加えて、本実施形態の場合には、洗浄対象たるシャッター26が回転するのに伴いその表面を洗浄することができる。洗浄ユニット27は可動式にも固定式にもすることができるが、例えば固定式にしたとしてもシャッター26の回転動作を利用してその表面を自動的に洗浄することが可能である。また、洗浄ユニット27を固定式とした場合には、機構が複雑、大型化するおそれが少なくなるという利点がある。ただし、以上の説明は洗浄ユニット27が固定式のものに限られるという意味ではなく、例示すれば、回転式シャッター26の径方向に沿ってストロークする直動型の洗浄ユニット27を構成してもよいし(図11参照)、洗浄ユニット27自体が回転する構成としてもよい(図12参照)。回転式シャッター26の動作に連動して洗浄ユニット27も動作するようにすればシャッター表面の汚れをさらによく落とすことが可能となる。
【0047】
ここで、洗浄ユニット27の材質等について説明を加えておくと以下のとおりである。すなわち、洗浄ユニット27は、シャッター26の表面に傷をつけない材質で形成されていることが望ましく、この観点からは、特に、ブラシを使った構造、スクレーパー(掻き落とす)を使った構造、集塵する構造などが好ましい。本実施形態では、ブラシ27bを使って表面の汚れを落とし、尚かつ汚れを集塵装置(図示省略)を使って回収する構成としている(図9参照)。また、例えば樹脂製のブラシ、樹脂製のスクレーパー、布、不織布、ゴム、紙、洗浄液等の液体、洗浄液をしみ込ませた布・不織布等で洗浄を行う構成とすることもできる。
【0048】
以上、ここまで粉状体供給ユニット(No.2)の構成についてさらに詳細に説明したが、引き続き、プレスユニット13の構成についてさらに詳細に説明する(図1等参照)。本実施形態においては、上述したパッド3をパッドベース15で保持するようにし、さらにこのパッドベース15には中空の支持部材(以下、「支持パイプ」という)8を取り付けて上部から操作できるようにしている。
【0049】
まず、パッド3について説明する。上述したとおり、パッド3は粉状体2および容器1の上側から加圧するための型で、上述の支持パイプ8およびパッドベース15によって支持されている。本実施形態のパッド3は、パッドペース15に設けられている凹部15b内に固定された状態で支持されている。このパッド3の形状は加圧対象である粉状体2の成形時の形状等に合わせて種々の形をとることができ、例えば本実施形態では4つの角にそれぞれ丸みが付された矩形となっている(図7参照)。また、図面においては特に示していないが、本実施形態におけるパッド3の上面は切込みが設けられた形状となっている。この切込みは、粉状体2の空気を支持パイプ8へと流通させ、さらには当該パッド3自体の強度を確保するという機能を有するものである。さらに、このパッド3には、空気を通過させるための通気孔4が設けられている。この通気孔4は、粉状体2を加圧する際に生じる空気を透過させて逃がすために設けられているもので、できるだけ多くの孔がほぼ等間隔となるように均等に配置されていることが好ましい。また、孔径が大きすぎると加圧成形する際に粉状体2の表面形状に痕が残るなどの影響を及ぼすことがあるので、これを回避すべく、通気を妨げない範囲でできるだけ径を小さく形成していることが好ましい。具体的な一例を示せば、例えば本実施形態においては、孔径を0.2〜0.3mm、孔の設置数を約15個/cm2程度としたうえで、複数列に等間隔となるように配置している。なお、このパッド3は容器1の内側形状よりも僅かに小さく形成されて当該容器1との間にクリアランスを有していることが好ましい。このようなクリアランスを有している場合、圧縮成形時における空気がパッド3の脇から抜けやすくなるため好適である。ただし、パッド3自体に多数の通気孔4が設けられている本実施形態の場合には、通常よりも小さめのクリアランス(例えば0.2mm程度のクリアランス)で足りる。
【0050】
パッドベース15は、上述のパッド3を保持するための部材である。本実施形態のパッドベース15は、図4に示すように平面視円形であり、上面に段部15aが設けられ、さらに底面には上述のパッド3の形状に合わせた凹部15bが設けられている。この凹部15bの深さはパッド3の厚みよりも浅く(例えば半分程度)、パッド3の一部(例えば上側半分程度)のみが収まるようになっている(図5参照)。また、パッドベース15の中央には、吸引装置5からパッド3までを連通させるため、当該パッドベース15の上面からこの凹部15bまで連なる連通孔16が形成されている。これにより、圧縮成形時に粉状体2の隙間から生じる空気を、パッド3の通気孔4 → 連通孔16 → 支持パイプ8の通気路9 → 吸引装置5というように吸引することが可能となっている。なお、この連通孔16の一部には、支持パイプ8の下端に設けられているおねじ(雄ねじ)8aをねじ込むためのめねじ(雌ねじ)15cが形成されている(図5参照)。
【0051】
パッドベース15には上述したように中空形状の支持パイプ8が取り付けられている。この支持パイプ8は、上述のプレスユニット13によって支持されているもので、図示しないモータなどの駆動装置によって昇降可能に設けられている(図1参照)。この支持パイプ8の下端部には上述したおねじ8aが切られており、当該下端部を上述のパッドベース15の上面に着脱できるようになっている。一方、支持パイプ8の上端部にはめねじ8bが切られ、さらに、バキュームホース17を装着するための部材である継ぎ手(図示省略)が取り付けられる。特に図示していないが、バキュームホース17はその一端側がこの継ぎ手に装着され、他端側が吸引装置5に装着されて当該吸引装置5とこの支持パイプ8とを接続する。また、上述したようにこの支持パイプ8は中空形状であり、中空部分が、パッド3の各通気孔4と連通した通気路9として機能するようになっている。なお、支持パイプ8の材質は特にいずれかに限られるものではないが、軽量であって所望の強度が得られすいステンレス鋼などが好ましい。また、本実施形態の支持パイプ8はその上端部に横棒18が設けられたいわばT字形状に形成され、ハンドリング(手での操作)が行いやすくなっている(図1、図3参照)。
【0052】
さらに、本実施形態においては支持パイプ8の側部途中に、上述の通気路9に通じる側孔19を設けることとしている(図3等参照)。この側孔19には、通気路9へと空気を送り込むためのエアーホース20が接続され、さらにこのエアーホース20の端部にはエアーポンプ7が設けられている。このエアーポンプ7は送風が可能な装置で、例えば本実施形態の場合であれば、プレス成形後、エアーポンプ7とエアーホース20を利用して負圧状態を開放し、あるいは空気を送り込むことにより、プレス成形時に加圧されてパッド3に密着した粉状体2を当該パッド3から剥がすようにして分離させることができるようにしている。
【0053】
プレスユニット13におけるプレス方法は特に限定されるものではないが、例えば本実施形態においてはプレスユニット13の下部装置を構成するプレス台21を昇降させることによってプレス成形を行うこととしている。より具体的に説明すると、本実施形態におけるプレスユニット13の下部装置は、プレス台21、このプレス台21の支持台として機能する型押さえ22、この型押さえ22ごとプレス台21を昇降させるシリンダー装置23によって構成されている(図1参照)。またプレス成形時においては、上述した載置用スペース11に嵌まり込む形状のメス型32の中に、オス型としてのプレス台21が嵌まり込むようにして粉状体2をプレス成形する(図1、図9参照)。
【0054】
プレス台21は上述のようにオス型として機能する例えば金型によって構成される部材で、メス型32内に嵌まり込む形状、例えば本実施形態であれば平面がおよそ矩形の角柱形状に形成されている。プレス成形時、このプレス台21の上面には粉状体2が供給された容器1が載った状態となる(図1参照)。プレス台21は、その底部の中心を型押さえ22によって支持されている(図1参照)。これら型押さえ22およびプレス台21は昇降可能に設けられており、シリンダー装置23の働きによって昇降するようになっている。このシリンダー装置23は、図示していない油圧装置等により、例えば本実施形態の場合であれば上下方向に一定のストローク幅で往復運動しうるように設けられている(図1参照)。
【0055】
また、粉状体2をプレス成形した際、吸引されつつ加圧された粉状体2が直接またはこれらの間に介在するクロス6を挟んで間接的にパッド3に密着することがあるが、成形後の粉状体2とこのパッド3とを容易に引き離して分離できるようにするための機構ないしは装置が併設されていることが好ましい。例えば本実施形態においては、このような成形後の粉状体2とパッド3とをばね力を利用して容易に分離できるようにしている。より具体的には、枠状に形成された薄板状のプレート(以下、本実施形態においてストリッパープレートといい、符号24で表す)をパッドベース15の底面に設けるとともに、このストリッパープレート24を下方に押し下げるように付勢する付勢部材25とを設けるようにしている(図5等参照)。枠状のストリッパープレート24は、その外周部がパッドベース15の外形と等しく、尚かつその内周部が、パッド3が通過可能な程度の大きさ及び形状となるように形成されている(図5、図6参照)。また、この場合における付勢部材25は、例えばこのストリッパープレート24とパッドベース15との間に介在するばね部材でもよいし、あるいは当該ストリッパープレート24の一部に切り込みを設けて変形させ、弾性によって付勢力を付与するようにした部材でもよいが、いずれにせよ、周方向に均等に配置され、当該ストリッパープレート24に対しほぼ均一な付勢力を付与して傾けさせないものであることが望ましい。なお、図6における符号3aは、パッド3をパッドベース15に固定する際に必要に応じて設けられる固定ねじである。
【0056】
続いて、ここまで説明した圧縮成形装置を用いて化粧料としての粉状体2を成形する場合の動作について説明する(図1、図2、図8等参照)。
【0057】
まず、上述した容器供給ユニットにより容器1を供給し(No.1)、容器フィーダーを使って当該容器1をターンテーブル10上の載置用スペース11に載置する(図2参照)。次に、ターンテーブル10を時計回りに所定量(例えば本実施形態の場合には60度)回転させ、粉状体供給ユニットにより容器1上に所定量の粉状体2を供給する(No.2)。このとき、上述した回転式シャッター26を所定量回転させて当該容器1上の粉状体2をすり切り、余分量を取り除いて一定量となるように調整するとともに表面が平坦となるようにならす。
【0058】
この粉状体2を供給する工程(No.2)についてさらに説明を加えると以下のとおりである。すなわち、ターンテーブル10の回転時、ホッパー31の粉状体供給口31aは、回転式シャッター26の粉状体シャット領域26bによって閉じられた状態となっている。ターンテーブル10を所定量回転させ、空の容器1が粉状体供給口31aの真下に位置したところでターンテーブル10を停止させ、今度は回転式シャッター26を例えば反時計回りに回転させる(図8参照)。回転式シャッター26の回転動作中、粉状体供給口31aの真下に粉状体通過孔26aが位置すると、開口した粉状体供給口31aと上述の載置用スペース11とが連通した状態となり、当該粉状体供給口31aから所定量の粉状体2が粉状体通過孔26aを通じて容器1へと供給される。この後、回転式シャッター26をさらに回転させると、供給されたばかりの粉状体2を粉状体通過孔26aがすり切る動作をし、その表面をならして平滑にする。回転式シャッター26は、粉状体シャット領域26によってホッパー31の粉状体供給口31aを塞いだところで停止する。なお、以上のような回転式シャッター26の回転動作中、洗浄ユニット27を通過した部分は自動的に洗浄されている(図8参照)。
【0059】
その後、ターンテーブル10を60度回転させると、粉状体2が供給された容器1はNo.3の位置まで移動する。本実施形態の場合、このNo.3は空き工程となっており何ら作業は行われない(図2参照)。他の位置における所定の動作が終了するのに伴い、ターンテーブル10をさらに60度回転させると当該容器1は圧縮成形が行われるNo.4の位置まで移動する。
【0060】
No.4の位置における圧縮成形は以下のようにして行われる(図1参照)。まず、粉状体2が供給された容器1はこのNo.4の位置まで移動したとき、載置用スペース11の中においてプレス台21の上に位置した状態となる。ここで、本実施形態においてはパッド3と粉状体2の間にクロス(布地)6を介在させた状態でプレス成形を行うこととしている(図1参照)。この場合に用いるクロス6としては、例えばナイロン(ポリアミド繊維)のような、通気性があり尚かつ粉状体2の表面を一定の外観に保つものが好ましい。このクロス6を介在させた後、パッドベース15およびパッド3を所定量下降させ、載置用スペース11上にパッドベース15を被せた状態とする。その後、シリンダー装置23を動作させ、型押さえ22およびプレス台21を上昇させて圧力を加える。プレス台21は、メス型32内をストロークするオス型として機能し、パッドベース15およびパッド3との間で粉状体2を挟み込んで加圧成形する。さらに、このようにして加圧成形を行う間は吸引装置5を動作させて空気を吸引し続けるようにする。
【0061】
このように加圧成形を行った場合、容器1に収容されている粉状体2は、上面をパッド3(ただし、本実施形態の場合には上述したようにクロス6が介在している)で押さえ付けられた状態となり、圧縮されてその隙間から空気を生じさせる。この際、吸引装置5が作動していて通気孔4や連通孔16が負圧となっているために、このように粉状体2から押し出されるようにして生じた空気は、パッド3の通気孔4 → 連通孔16 → 支持パイプ8の通気路9 → バキュームホース17 → 吸引装置5というように吸引されることになる(図1参照)。この結果、この成形装置によれば加圧成形の際には真空状態(ただし、ここでは厳密な意味での真空ということではなく、およそ大気圧よりも圧力の低い空間が形成されているという意味での真空状態ということ)を形成することが可能となる。このため、気泡や空気溜まり等が形成されるのを回避しつつ粉状体(化粧料)2を加圧成形することができる。
【0062】
なお、上述のようにして加圧成形を行う場合、吸引装置5による吸引は粉状体2を加圧する前から成形後まで連続して行うことが好ましい。加圧成形時、ターンテーブル10とパッドベース15との隙間(あるいはターンテーブル10とストリッパープレート24との隙間)から自然と抜け出る空気が存在するが、本実施形態の場合にはこれら空気の多くを積極的に連続吸引しながら加圧することから、少なくともパッド3の面付近に存在する空気を通気孔4および連通孔16を通じて吸引することが可能である。
【0063】
圧縮成形を終えたら、プレス台21および型押さえ22を下降させて成形前の位置に戻し、さらに、支持パイプ8、パッドベース15等を上昇させて成形前の位置に戻す。この動作中、付勢部材25の付勢力を受けて元位置に戻ろうとするストリッパープレート24は、容器1を押し下げるように作用する。圧縮成形後において粉状体2とパッド3とが互いに密着している場合があるが、このようなストリッパープレート24の作用により粉状体2とパッド3とを自動的に引き離すことが可能となっている。
【0064】
また、圧縮成形後、空気吸引時とは逆に空気を送り込むことも好ましい。例えば本実施形態のごとく圧縮成形時に空気を吸引して真空状態を形成していると、圧縮成形後の粉状体2とパッド3とが直接あるいはクロス6を介して通常よりも強く密着している場合が起こり得るが、成形後、空気を逆に送り込むこととすれば、成形時とは逆の作用により粉状体2とパッド3とを引き離すような力を与えることが可能となる。本実施形態においては、上述したエアーポンプ7を送気装置として用い、圧縮成形後に空気を送り込むようにしている。このようにエアーポンプ7から送り出された空気は、当該エアーポンプ7 → エアーホース20 → 支持パイプ8の通気路9 → 連通孔16 → パッド3の通気孔4というように送り込まれ、さらにはパッド3と製品(圧縮成形後の粉状体2および容器1)との密着面に入り込むようにして粉状体2とパッド3とを引き離す(あるいは製品とクロス6とを引き離す)ように作用する。
【0065】
上述の圧縮成形の工程(No.4)を終えたら、ターンテーブル10をさらに60度回転させ、圧縮成形後の粉状体2の上面を清掃する(No.5)。清掃が終わった製品は、No.5の位置からNo.6の位置へと移動する間に排出ユニットによってターンテーブル10から降ろされ、排出される(図1参照)。
【0066】
以上、ここまで説明した粉状体2の圧縮成形装置においては、粉状体2の供給工程(No.2)において以下のような利点が得られる。すなわち、まずは、粉状体すり切り装置(より詳しくは、すり切り機能を備えたシャッター)28を回転体26によって構成される回転式としたことから、洗浄ユニット27を併設するためのスペースを確保することが可能または容易となっている。つまり、上述したように、回転式シャッター26をその一部がターンテーブル10とは重なり合わないように設け、当該重なり合っていない部分に洗浄ユニット27を配置できるような構造としているため、大型化するのを抑えつつシャッターの表面を洗浄することが可能となっている。しかも、回転式シャッター26が回転するのに伴いその表面を連続的に洗浄することができるため効果的である。この結果、回転式シャッター26の表面を常時きれいな状態に保つことができるようになるから、成形品(圧縮成形された化粧料などの粉状体)に色斑(むら)が生じたり、当該成形品の表面に凹凸が形成されたりするのを抑制し、不良品が生じる率を低減させることが可能となる。
【0067】
しかも、上述したように、回転式シャッター26を回転させればこの回転と同時に当該回転式シャッター26の一部が洗浄される構成としているから、洗浄の際にシャッターを取り外したり再び取り付けたりといった手間がなく、機械の運転を停止する必要性もない。このため、従来のように時間や労力が無駄になるのを避け、生産効率を向上させることが可能となる。さらに、本実施形態のように粉状体通過孔26aを3個設けた場合であれば、それぞれの粉状体通過孔26aの汚れの度合いが1/3になることから、その頻度だけ汚れの付着が少ないという利点もある。
【0068】
加えて、本実施形態のような回転式シャッター26を採用した場合には、容器1内における粉状体2のいわゆる入りの状態が安定化することにもなる。つまり、回転式のシャッター26を採用したことにより、ターンテーブル10の回転に伴う容器1内での粉状体2の偏り方向と、回転式シャッター26を利用した粉状体2のすり切り方向(同じく周方向)とを一致させることが可能となることから、偏りを相殺させ、粉状体2の入りの状態がばらつくのを抑えて安定化を図ることが可能となる。
【0069】
また、上述した圧縮成形装置によれば、圧縮成形時、粉状体2の周囲に真空状態(大気圧よりも圧力の低い状態)を積極的に形成し、粉状体2の隙間から生じる空気を積極的に吸引し抜去することができる。このため、成形対象である粉状体2の表面あるいは内部に気泡や空気溜まりが形成されるのを回避し、製品の表面が剥がれるといった不具合を減少させることが可能である。以上の結果、成形後における化粧料(粉状体)2の表面や密度などを整え、従来よりも製品ごとの質の偏りが少ない高品質な製品を生産し提供することができるという利点がある。また、この結果、製品成形時の歩留まりが改善されて生産性が向上し、併せて生産コストの低減を図りうるという利点もある。
【0070】
しかも、本実施形態においては送気装置としてのエアーポンプ7やエアーホース20を併設し、圧縮成形を終えたら成形時とは逆に空気を送り込むようにしているため、製品(圧縮成形後の粉状体2および容器1)とパッド3とを別々に分離させやすい。これによれば、従来よりも品質の高い製品の生産性をさらに高めることが可能である。加えて、このような送気装置を備えた場合には、仮にストリッパープレート24において不具合が発生し正常に機能しないような場合にも製品とパッド3とを引き離すような作用を与えて分離することができる。
【0071】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態では粉状体2の一例として「顆粒または粉体等の各種化粧料」を対象とした場合の実施形態について説明したが、これは本発明の好適な実施形態の一例に過ぎず、化粧料以外の各種粉状体に対しても適用することは当然に可能である。
【0072】
また、本実施形態では、粉状体3の表面をすり切るための粉状体すり切り装置28とシャッターとを兼用した例について説明したが、これは好適な一例に過ぎずこのような形態に限定されるわけではない。例示すれば、すり切りのための装置とシャッター装置とを分離して別個に設けても構わず、たとえこのような場合であっても本発明にかかる粉状体すり切り装置28の構造を適用することはもちろん可能である。
【0073】
また、本実施形態においては回転式シャッター26の形状例として円形のものを示したが、これも好適な一例に過ぎない。回転式シャッター26としての機能を発揮しうる限りにおいては他の形状としても構わない。
【0074】
さらに、ターンテーブル10と回転式シャッター26の動きについても、上述の実施形態の例に限られることはない。すなわち、上述した実施形態ではターンテーブル10と回転式シャッター26のいずれか一方のみを順次動作させており、両者を同時に回転させることはなかったがこれらを同時に動作させることも可能である。一例を挙げれば、ターンテーブル10を回転させている最中に回転式シャッター26も回転させて相対速度を大きくすれば粉状体2をより迅速にすり切ることができ、これによってその表面をよりシャープとなるように平滑処理することもできる。あるいは、これとは逆に、ターンテーブル10と回転式シャッター26とを同時に逆方向に回転させることもできる。一例を挙げれば、ターンテーブル10を時計回り、回転式シャッター26を反時計回りに同時に回転させた場合、両者が接触し合う部分においては同方向(この場合であれば、図8中において左の方向)に動くことになる。こうした場合には、粉状体2と回転式シャッター26の表面との間における摩擦抵抗を減少させつつ、本実施形態にて説明したのと同様に各工程の処理を進めることができる。
【0075】
加えて、上述の実施形態においては、化粧料用の容器(例えば樹脂皿、金皿などの皿状の物)1に粉状体2を供給し、余剰分をすり切ってならすようにした形態について説明したが、ここで説明した容器(図1等参照)は本発明の適用対象となるものの具体的な一例に過ぎず、本発明における容器は例示したものに限られることはない。本発明の技術内容からすれば、容器としてはこのような皿状の物に限らず、要は、粉状体2が所定形状となるように供給される凹部であればよく、したがって例えばターンテーブル10に形成されている凹部に対して粉状体2が直接供給されるような場合も本実施形態における容器と同様にすり切り動作の対象となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明にかかる圧縮成形装置の一実施形態を示す図で、圧縮成形を行うプレスユニットの主要な部分の構造を表しているものである。
【図2】容器および粉状体を移動させるターンテーブルを、このターンテーブルの各位置で行われる各工程とともに示す概略図である。
【図3】圧縮成形装置を構成する支持パイプの構造例を示す側面図である。
【図4】パッドを保持するパッドベースの平面図である。
【図5】図4に示したパッドベースの側面図である。
【図6】図5に示したパッドベース等の底面図である。
【図7】パッドの平面図である。
【図8】本実施形態におけるすり切り装置としての回転式シャッターおよびその周辺を示す平面図である。
【図9】本実施形態におけるすり切り装置としての回転式シャッターおよびその周辺を示す側面図である。
【図10】(A)は本実施形態における回転式シャッターを示す図、(B)〜(D)は回転式シャッターの他の形状例を示す図である。
【図11】洗浄ユニットを、回転式シャッターの径方向に沿ってストロークする直動型とした場合の概略図である。
【図12】洗浄ユニットを回転型とした場合の概略図である。
【図13】従来の粉状体すり切り装置の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 容器
2 化粧料(粉状体)
26 回転式シャッター(回転体)
26a 粉状体通過孔(粉状体通過部)
26b シャット領域
27 洗浄ユニット(洗浄装置)
28 粉状体すり切り装置
31a (ホッパー31の)粉状体供給口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器上に供給された粉状体が圧縮成形される前に当該粉状体の表層部分をすり切ってその表面をならすとともに前記容器内での充填量を均一化するための粉状体すり切り装置において、回転体によって構成されていることを特徴とする粉状体すり切り装置。
【請求項2】
前記回転体は、当該回転体のうち前記粉状体をすり切る動作に関与している部位の動作方向が、前記容器の移動方向に対して平行となるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の粉状体すり切り装置。
【請求項3】
前記回転体のうち、前記粉状体をすり切る動作に関与していない部位を洗浄する洗浄装置が併設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の粉状体すり切り装置。
【請求項4】
前記洗浄装置は所定位置に固定して配置されているものであり、前記回転体が回転するのを利用して当該回転体を自動的に洗浄するものであることを特徴とする請求項3に記載の粉状体すり切り装置。
【請求項5】
前記回転体は、前記粉状体を前記容器へと供給するための粉状体供給口を開閉する回転式のシャッターによって構成され、シャッターとしての機能とすり切り装置としての機能とを併せ有しているものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかひとつに記載の粉状体すり切り装置。
【請求項6】
前記回転体は、前記粉状体が供給されるための粉状体通過部と、該粉状体通過部以外の領域であり前記粉状体供給口を塞ぐシャット領域とを備えた板状の部材によって形成されていることを特徴とする請求項5に記載の粉状体すり切り装置。
【請求項7】
前記粉状体通過部が複数設けられるとともに、これら複数の粉状体通過部が当該回転体の回転軸を中心として均等に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の粉状体すり切り装置。
【請求項8】
前記回転体が、正逆両回転可能に設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれかひとつに記載の粉状体すり切り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−75883(P2007−75883A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270395(P2005−270395)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(390041036)株式会社日本色材工業研究所 (37)