説明

粉状物含有液体用容器

【課題】粉状物を含有する液体製剤を収容するための容器であって、簡便に内容物を均一に混合できる粉状物含有液体用容器の提供を目的とする。
【解決手段】内底面10aに、内側面10bから離間した柱状の突起部11が設けられていることを特徴とする、粉状物を含有する液体製剤を収容する粉状物含有液体用容器1。また、さらに、球体を収容した粉状物含有液体用容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉状物含有液体用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シリカ、シリコン等の滑沢剤が添加された液体等、粉状物を含有する液体製剤は、粉状物が容器内で沈降して底に堆積する。そのため、一定期間放置した後に使用する場合は、使用前に容器を強く振って内容物を混合する必要がある。
【0003】
容器の底に堆積した粉状物の撹拌を容易にする粉状物含有液体用容器としては、例えば、下記の容器(1)〜(3)が知られている。
(1)内部に金属製の球体を入れた容器。
(2)図11に例示した、容器本体110の内底面110aに板状の張り出し部111を設けた容器101(例えば、特許文献1)。
(3)図12に例示した、容器本体210の内底面210aに放射状に形成された凸条部211を有する容器201(例えば、特許文献2)。
しかし、前記容器(1)〜(3)では、特に、内底面に沈着し易い微粒子を含む液体製剤を収容する場合に、内容物を均一に混合し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−19430号公報
【特許文献2】特開2009−208832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、粉状物を含有する液体製剤を収容するための容器であって、簡便に内容物を均一に混合できる粉状物含有液体用容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
[1]粉状物を含有する液体製剤を収容する粉状物含有液体用容器において、
内底面に、内側面から離間した柱状の突起部が設けられていることを特徴とする粉状物含有液体用容器。
[2]球体を収容した[1]に記載の粉状物含有液体用容器。
【発明の効果】
【0007】
本発明の粉状物含有液体用容器は、粉状物を含有する液体製剤を収容するための容器であって、簡便に内容物を均一に混合できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の粉状物含有液体用容器の一例を示した斜視図である。
【図2】図1の粉状物含有液体用容器の底部を拡大して示した図である。
【図3】図1の粉状物含有液体用容器を直線I−I’で切断した断面図である。
【図4】図1の粉状物含有液体用容器の内容物を撹拌する様子を説明する図である。
【図5】本発明の粉状物含有液体用容器の他の例の底部を拡大した斜視図である。
【図6】本発明の粉状物含有液体用容器の他の例の底部を拡大した斜視図である。
【図7】本発明の粉状物含有液体用容器の他の例の底部を拡大した斜視図である。
【図8】本発明の粉状物含有液体用容器の他の例の底部を拡大した斜視図である。
【図9】本発明の粉状物含有液体用容器を振盪する様子を示した図である。
【図10】本発明の粉状物含有液体用容器を振盪する様子を示した図である。
【図11】従来の粉状物含有液体用容器の一例の底部を拡大した斜視図である。
【図12】従来の粉状物含有液体用容器の他の例の底部を拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の粉状物含有液体用容器は、粉状物を含有する液体製剤を収容する容器であって、内底面に、内側面から離間した柱状の突起部が設けられていることを特徴とする。以下、本発明の粉状物含有液体用容器の一例を示して詳細に説明する。
【0010】
粉状物含有液体用容器1(以下、「容器1」という。)は、図1〜3に示すように、粉状物を含有する液体製剤を収容する容器本体10と、容器本体10内から粉状物を含有する液体製剤を導出する導出部20とを有する。容器1の容器本体10の内底面10aには、内側面10bから離間した柱状の突起部11が設けられている。
【0011】
容器本体10の形状は、内底面10aに突起部11を設ける以外は、粉状物を含有する液体製剤を収容できるものであればよく、公知の容器形状を採用できる。
容器本体10の材質は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の硬質プラスチック等、公知の材質を採用できる。
【0012】
突起部11は、容器1中に収容された粉状物を含有する液体製剤を放置したときに、底に堆積した粉状物の撹拌効率を向上させ、内容物の混合を容易にする役割を果たす部分である。
この例では、円柱状の突起部11が3本設けられている。
【0013】
突起部11の形状は、この例では円柱状である。
ただし、突起部11の形状は、柱状であれば円柱状には限定されない。例えば、図6に示すように、上方が徐々に窄む円錐形状の胴部分を有する柱状の突起部11Aであってもよく、図7に示すように、上方が徐々に窄む四角錐状の胴部分を有する柱状の突起部11Bであってもよく、図8に示すように、断面形状が星形の柱状の突起部11Cであってもよい。
好ましい突起部の形状は、成形のし易さの点から、円錐形状および円柱形状である。
【0014】
突起部11の数は、この例では3本であるが、1本または2本であってもよく、4本以上であってもよい。突起部11の数は、撹拌効率の点から、複数本が好ましく、3〜4本が好ましい。
【0015】
突起部11の径および高さについては、容器1の大きさに応じて適宜設定することができる。
突起部11の高さは、容器1中に収容された粉状物を含有する液体製剤の粉状物が全て堆積したときに、その堆積した粉状物に埋没しない高さであることが好ましい。これにより、容器1内の粉状物の堆積量が最も多い場合、例えば未使用の場合等でも内容物の撹拌効率がより良好になる。
突起部11の径に対する高さの比(高さ/径)は、1〜5が好ましく、1〜2.5がより好ましい。
なお、突起部の径とは、円柱状の場合は直径を意味し、円柱状以外の柱状である場合は突起部の高さ方向の中間における断面形状の外接円の直径を意味する。
【0016】
例えば、容器1が、制汗剤、シェービングクリーム、化粧水、日焼け止め用クリーム等の容器として汎用される容量が数百mL程度の容器の場合、突起部11の高さと径の好ましい範囲は以下のとおりである。
突起部11の高さは、4.0〜10.0mmが好ましい。
突起部11の径は、4.0〜10.0mmが好ましい。突起部11の径が前記下限値以上であれば、内容物の撹拌効率がより良好になる。
突起部11としては、高さが4.0〜10.0mmで、径が4.0〜10.0mmの柱状が好ましい。
【0017】
突起部11は、容器1の内側面10bから離間して設けられている。
突起部11と容器1の内側面10bとの距離d(図3)は、3.0mm以上が好ましく、7.0mm以上がより好ましい。前記距離dが下限値以上であれば、突起部11と容器1の内側面10bとの間で内容物が流動しやすくなるので、内容物の撹拌効率が向上する。突起部11が複数ある場合は、それら突起部11全てについて、容器1の内側面10bとの距離dが前記下限値以上であることが好ましい。
なお、突起部と容器の内側面との距離とは、該突起部から最も近い内側面との距離を意味する。
【0018】
突起部11同士の距離d(図3)は、容器1の内底面10aの面積によっても異なるが、3.0mm以上が好ましく、7.0mm以上がより好ましい。前記距離dが下限値以上であれば、突起部11間で内容物が流動しやすくなるので、内容物の撹拌効率が向上する。突起部11が3本以上設けられている場合、それぞれの突起部11の間の距離dは、いずれも前記下限値以上であることが好ましい。
なお、突起部同士の距離とは、該当する2本の突起部の外側面同士の距離のうち最短となる距離を意味する。
【0019】
本発明の粉状物含有液体用容器における内底面の突起部の配置は、突起部が3本以上の場合、各々の突起部が多角形の各頂点に位置するように配置することが好ましい。これにより、粉状物含有液体用容器を振盪する方向によって撹拌効率が変動することを抑制しやすくなる。例えば、3本の突起部を直線状に配置した場合、突起部が並んだ方向に沿って容器を振るときと、該方向に垂直な方向に沿って容器を振るときでは撹拌効率が異なる。しかし、各突起部を前記のように配置すれば、いずれの方向に容器を振っても同程度の撹拌効率が得られやすくなる。
【0020】
また、前記のように複数の突起部を配置する場合、それぞれ隣り合う突起部の間の距離dは同じであることが好ましい。
具体的には、この例では、容器1の内底面10aにおける突起部11の配置は、3本の各々の突起部11が正三角形のそれぞれの頂点に位置するように配置することが好ましい。また、突起部が4本の場合は、4本の各々の突起部が正四角形のそれぞれの頂点に位置するように配置することが好ましい。また、突起部同士の距離dを前記下限値以上にできる範囲で、4本の突起部のうち3本の突起部が正三角形のそれぞれの頂点に位置し、残りの1本の突起部が該正三角形の中央に位置するように配置することも好ましい。
【0021】
本発明の粉状物含有液体用容器は、図5に示すように、容器本体10の内部に、球体12を備えることが好ましい。これにより、内容物の撹拌効率がさらに向上する。
球体12の材質は、内容物を変質させない材質であればよく、例えば、ステンレス(SUS)等が挙げられる。
【0022】
球体12の大きさは、特に限定されないが、突起部11が複数設けられている場合、撹拌効率の点から、それら突起部11の間を通過できることが好ましい。つまり、球体12の直径が、突起部11同士の距離dよりも小さいことが好ましい。
球体12の直径は、容器本体10の内底面10aの面積、および突起部11の配置によっても異なるが、3.0〜10.0mmが好ましい。
【0023】
導出部20は、容器本体10内の内容物を導出できるものであればよく、プッシュ式の導出部等、公知のいずれの構成でも採用できる。
【0024】
粉状物を含有する液体製剤としては、粉状物が均一に分散するように内容物を混合してから使用するものであれば特に限定されず、例えば、制汗剤、シェービングクリーム、化粧水、日焼け止め用クリーム等が挙げられる。
【0025】
容器1の内部に粉状物を含有する液体製剤を収容して放置すると、容器本体10の底に粉状物が沈降して堆積する。
容器1では、例えば、図9に示すように底部を水平方向に振盪したり、図10に示すように垂直に立てた状態と水平に寝かした状態を往復させるようにして振盪することで、容器本体10内の内容物が流動する際、図4に示すように、液体の流れが柱状の突起部11によって分断され、乱流を生じさせることができる。そのため、生じた乱流によって底に堆積した粉状物が巻き上げられるので、内容物を簡便に混合できる。容器1の内底面10aに設けた柱状の突起部11は、図11および図12に例示した、内底面に板状の張り出し部111や凸条部211を有する従来の容器に比べて、内容物の流れをより細かく分断でき、効率的に乱流を起こすことができることから、撹拌効率が高い。
【0026】
以上説明したように、本発明の粉状物含有液体用容器は、収容した粉状物を含有する液体製剤を簡便に均一に混合できる。
なお、本発明の粉状物含有液体用容器は、容器の内底面に柱状の突起部が設けられている以外は、前述した形態には限定されない。例えば、本発明の粉状物含有液体用容器は、前記容器1のように導出部20を有しているものには限定されず、容器の上部が開口しており、キャップや栓で該開口が閉じられている形態であってもよい。
【実施例】
【0027】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。例1〜7は実施例、例8〜11は比較例である。
[例1]
直径40mmの円筒状の容器本体10(容量150mL)の内底面10aに、高さ8.0mm×直径6.0mmの円柱状の突起部11を3本設けた容器1(図1)を用いて撹拌実験を実施し、撹拌効率を評価した。3本の突起部11は正三角形の各頂点の位置に配置し、隣り合う突起部11同士の間隔dを9.5mmとした。それぞれの突起部11と容器本体10の内側面10bとの距離dを5.5mmとした。
【0028】
[例2]
容器の内部に、直径4.75mmのステンレス製の球体を入れた以外は例1と同じ容器(図5)を使用して撹拌実験を実施し、撹拌効率を評価した。
【0029】
[例3]
円柱状の突起部を4本設けた以外は例1と同じ容器を用いて撹拌実験を実施し、撹拌効率を評価した。4本の突起部11は正四角形の各頂点の位置に配置し、隣り合う突起部11同士の間隔dを7.0mmとした。それぞれの突起部11と容器本体10の内側面10bとの距離dは8.5mmとした。
【0030】
[例4]
容器の内部に、直径4.75mmのステンレス製の球体を入れた以外は例3と同じ容器を使用して撹拌実験を実施し、撹拌効率を評価した。
【0031】
[例5]
突起部11の形状を図6に例示した形状(高さ8.0mm×径6.0mm)とした以外は、例1と同じ容器を使用して撹拌実験を実施し、撹拌効率を評価した。
【0032】
[例6]
突起部11の形状を図7に例示した形状(高さ8.0mm×径6.0mm)とした以外は、例1と同じ容器を使用して撹拌実験を実施し、撹拌効率を評価した。
【0033】
[例7]
突起部11の形状を図8に例示した形状(高さ8.0mm×径6.0mm)とした以外は、例1と同じ容器を使用して撹拌実験を実施し、撹拌効率を評価した。
【0034】
[例8]
突起部11を有しない以外は例1と同じ容器を使用して撹拌実験を実施し、撹拌効率を評価した。
【0035】
[例9]
突起部11を有しない以外は例1と同じ容器の内部に、直径4.75mmのステンレス製の球体を入れた容器を使用して撹拌実験を実施し、撹拌効率を評価した。
【0036】
[例10]
突起部11を有さず、内底面に形成された4つの張り出し部111(図11)を有する以外は例1と同じ容器を使用して撹拌実験を実施し、撹拌効率を評価した。張り出し部111の最大高さを8.0mm、最大幅を6.0mmとした。
【0037】
[例11]
突起部11を有さず、内底面に放射状に形成された8つの凸条部211(図12)を有する以外は例1と同じ容器を使用して撹拌実験を実施し、撹拌効率を評価した。凸条部211の最大高さを4.0mm、最大幅を3.0mmとした。
【0038】
[撹拌実験]
内容物は、粉状物である無水ケイ酸を2.0質量%、パラフェノールスルホン酸亜鉛を3.0質量%、エタノールを36.0質量%、精製水を58.0質量%含有する液体製剤を使用した。
各例の容器に前記内容物を収容し、一定時間放置して粉状物を容器の底に堆積させた後、図9に例示した、容器の底を水平に振盪する横振りと、図10に例示した、容器を垂直に立てた状態と水平に寝かせた状態を往復させる垂直水平振りにて振盪し、容器の底に堆積した粉状物がなくなるまでに要する振盪回数を調べた。振盪速度は1秒間に2回とした。つまり、横振り試験では1秒間に容器を2往復させるように、垂直水平振り試験では1秒間に容器を水平に倒して垂直に戻すのを2度行うように振盪した。内容物の使用量は、横振り試験では65mL、垂直水平振り試験では130mLとした。
各例における撹拌試験の結果を表1および表2に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
表1および表2に示すように、柱状の突起部を有する本発明の粉状物含有液体用容器を使用した例1〜7は、突起部を有しない容器を使用した例8〜11に比べて、より少ない回数で容器内の内容物を均一に混合することができ、撹拌効率が優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の粉状物含有液体用容器は、収容した液体製剤に含有される粉状物が底に堆積しても、簡便に内容物を均一に混合できるので、ノンガスタイプの制汗剤、シェービングクリーム、化粧水、日焼け止め等の様々な用途の容器として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 粉状物含有液体用容器
10 容器本体
10a 内底面
10b 内側面
11、11A、11B、11C 突起部
12 球体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉状物を含有する液体製剤を収容する粉状物含有液体用容器において、
内底面に、内側面から離間した柱状の突起部が設けられていることを特徴とする粉状物含有液体用容器。
【請求項2】
球体を収容した請求項1に記載の粉状物含有液体用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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