説明

粉砕方法

【課題】従来に比して、さらに短時間で且つ安価に、粉体木質材、粉体稲わら、粉体籾殻、等のバイオマス燃料製造原料を得ることが出来る方法の要請に応えることができる粉砕方法を提供すること。
【解決手段】粉砕ドラムの内面を多角形にし、ドラム容量を1000l以上とし、粉砕ドラムの回転数を限界回転数の望ましくは、70〜80%にすることから粉砕媒体を活発にし、粉砕時間が短縮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な構成の木質材、稲わら、籾殻、の粉砕方法及び粉砕装置に関する。さらに詳しくは、木質材及び、稲わら等のバイオマスを粉砕して、バイオマス燃料を製造する原料とする場合に好適な粉砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に至るまでの背景技術として、従来技術の粉砕機を、図3、図4、図5、図6に示す。
【0003】
図3は、横型円筒形の容器に粉砕媒体と被粉砕物を入れこれを回転することにより 粉砕媒体の落下と粉砕圧力が被粉砕物を微粉化する。このように装置内部が円筒形を有しこれを回転することにより装置内部に装入された粉砕媒体の力により粉砕される粉砕装置を 一般的にボールミルと言われ従来から利用されている。図4は、ボールミル本体の側面断面図である。
【0004】
図5は、多角形の容器に研磨媒体と被研磨材を装入し、これを回転することにより被研磨材を研磨する装置である。これを一般的に回転バレル研磨機と言われる。バレル研磨機は、研磨する機械であり粉砕されては製品とならなくなり、粉砕装置より回転数が少なく、力も小さい。従ってバレル研磨機の全容量は、最大でも概略500lである。図6は、バレル研磨機の側面断面図である。
【0005】
バレル研摩機の全容量が大きくなると研磨媒体と被研磨材の投入重量も多くなり被研磨材が粉砕される。(投入量は全容量の半部以上ないと研磨の機能を示さない。これは、一般的事実である。)従って1000l以上もある容量のバレル研摩機は、無意味であり考えに及ばない。
【0006】
多角形をした粉砕機で茶葉を粉砕していることを、特許文献1に記載されているが、茶葉は、粉砕性が大変容易であることと、温度上昇を極度に嫌うことから冷却手段を設けても粉砕機を1000l以上大きくすることができない。
【0007】
粉砕による発熱を嫌う場合は、粉砕機のドラムの外側に冷却用ジャケットを設けることがあるが、それでも発熱による茶葉の色と香りの変化を抑えるためには発熱を30〜40度以下に抑えることが重要である。これは粉砕機の内容量が1000l以下でも難しく500lが最大の要領である。
【0008】
このようなことからバレル研摩機、茶葉の粉砕機から1000l以上の強固な構造を持つ粉砕機は必要としなかった。
【特許文献1】特開平08−108086号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
昨今、さらに、短時間で且つ安価に、バイオマス燃料製造の原料粉を得ることが出来る方法の要請が出てきている。
【00010】
本発明は、上記要請に応えることが出来るバイオマス燃料製造の原料粉の粉砕方法および粉砕装置を提供することを目的(課題)とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するために、本発明者は、鋭意開発に努力をした結果、下記構成の胴体の形状が多角形を有する容器の内部に粉砕用媒体と被粉砕物を装入し該容器を回転させることにより、後述の実施例(図7)で示す如く、粉砕効率が格段に向上することを知見して、本発明に想到した。
【0012】
従来のボールミルの粉砕媒体に伝達する粉砕の力は、ボールミルの回転により粉砕媒体が同伴され、やがて上部近くに達すると雪崩落ちるような状態で落下する。この状態で被粉砕物が粉砕される。
【0013】
この規則正しく雪崩落ちる運動から、少しでもランダムな状態の運動を起こさすために回転面を多面体(多角形)にすることにより、被粉砕物に与えられ粉砕の力が増すことがテストの結果から解った。従って粉砕効率が増し粉砕時間が短縮され、省エネにも大きく貢献する。これが本発明の多角形を有する粉砕装置である。
【0014】
一方、従来の回転バレル研磨機は、研磨を目的であり粉砕を避けることであるが、微粉砕については、この研磨方法を応用し、さらに、これに粉砕の力をプラスした構造を考えたことに本発明がある。しかし、研磨方法を応用するに当たり本体の磨耗対策も問題である。
【0015】
それには、まず磨耗対策としてのメンテナンスが容易であること。また、粉砕の力をプラスすることである。また、粉砕機としては、内部に粉砕熱が発生することからドラムに温調用ジャケットが必要とされることがある。
【0016】
これらを考えた結果、容器の内部を多角形(正多角形が望ましいが製作上正多角形を製作することが困難な場合は必ずしも正多角形とするものではなく多角形(多面体)でもよい。)の構造にすることにより対摩耗用のライナーも平板でありメンテナンスが容易となる。また、粉砕の力を与えるために、多角形(多面体)の数は容器の内径により最適の数を決定する。形状としては、5角形から18角形(望ましくは5角形から8角形がよい。)が考えられる。
【0017】
また粉砕の力を与える重要なことは、装置を大きくすることであり、これは粉砕媒体の重量によることが大きい。
【0018】
本発明は、1000l以上の容量の粉砕装置に効果的である。被粉砕物が粉砕媒体の間隙の中に入り、その中で重量の掛かった粉砕媒体間の衝突と摩擦の繰り返しにより微粉砕が行なわれる。従って、粉砕媒体の量を多くすることにより衝突と摩擦の回数を多くすることができ、微粉砕をより進めることになる。これはとりもなおさず装置が大きいことである。
【0019】
なかでも、粉砕を大きく左右するのは、粉砕ドラムの回転数である。回転数を上げれば上げるほど粉砕媒体の運動も活発になる。ところが、粉砕ドラムの回転を限界以上に上げると粉砕媒体が遠心力により粉砕ドラムの内壁に押し付けられた状態で回転をし、ランダムな運動ができないために、被粉砕物の粉砕が進まない。
【0020】
そこで、従来のボールミルの回転数は、限界回転数の概70%以下で運転される。また、回転バレル研磨機の回転数は、限界回転数の概60%以下で運転される。この限界回転数を決める計算式は、42.3/√Drpm(D=粉砕ドラムの内径)が一般的である。
【0021】
本発明の粉砕装置の回転数は、望ましくは、限界回転数の70〜80%で運転されることにより粉砕効率がアップされる。
【0022】
また粉砕ドラムの内部の多角形の平板の部分に30mm以上の高さのリフターを取り付けることにより粉砕媒体の運動を活発にさせることが出来る。
【0023】
本発明の粉砕装置は、容器の中に粉砕媒体と被粉砕物を装入して、これらをいかにして力強く撹拌するかによって、微粉砕の効率が決まる。その撹拌効果は、粉砕媒体を持ち上げる面が、アール面(丸みを帯びた面)より多角形による平板、この多角形の平板より、これにリフターを取り付けた平板の方が、より優れている。
【0024】
本発明の粉砕装置による、木質材、稲わら、籾殻、等のバイオマス原料,有機繊維質原料の微粉砕が、処理容量の多さ、また、粉砕効率の高さに大いに貢献する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明を、一実施形態に基づいて、詳細に説明をする。
【0026】
本実施形態の粉砕装置の全体構成の概略を、図1に示す。
【0027】
本粉砕装置11において、粉砕機本体1には、被粉砕物または、粉砕媒体を投入、排出するマンホール2を有し、該本体の内側の平板4は、平板により多角形の形状を有するか、円筒形の内部に平板を取り付けることにより多角形の形状を有する。
【0028】
また平板に粉砕媒体や被粉砕物を持ち上げる場合に、より粉砕効率を高めることを目的とするリフターを取り付けることがある。また、このリフターの高さは、粉砕機本体のドラム径によるが、30mm以上であることが望ましい。
【0029】
本粉砕装置11において、粉砕機本体1の材質は、鋼板であり特にライニングの材質は、鋼板、ハイマンガン鋼、ステンレス材、ゴムライニング、ウレタンライニング、プラスチック材、セラミック材、等がある。
【0030】
例えば、バイオマス原料の粉砕は、粉砕機本体(ライニング材)と粉砕媒体の材質は鉄製でも特に問題とならないが、セラミック原料を粉砕する場合は、ライニング材および粉砕媒体の材質もセラミック材質を使用することが多い。
【0031】
またセラミック原料を粉砕する場合には、粉砕機本体で被粉砕物が接する部分をゴム、またはウレタン等のライニングをし、粉砕媒体もゴム、またはウレタンのライニングをした材質を使用することがある。
また、粉砕機本体1の外側には、該本体内部の温調用としてジャケット3を有することもある。このジャケット3には、本体シャフト6を通じてロータリージョイント7を介して温調用熱媒体を送ることができる。
【0032】
粉砕機本体1は、本体シャフト6により軸受け5にて受けられ、モーター9の回転により動力伝達装置10を介して回転される。
【0033】
そして粉砕媒体を粉砕機本体1の全容量の40〜80%(投入される被粉砕物の大きさによる。)装入し、また、被粉砕物は装入された粉砕媒体の全容量の約40%装入し、回転速度を42.3/√Dの60〜80%(望ましくは、70〜80%)で回転することにより被粉砕物を目的な粒度に粉砕する装置。
Dは、粉砕機本体の内径(m)
【0034】
粉砕の方法として、被粉砕物が乾燥した状態と水分(溶剤)を含んだ状態での粉砕がある。また、乾燥した状態での粉砕には、粉砕の途中に目的の微粉を粉砕装置の中から吸い上げる方法もある。この場合は、粉砕装置の中に貫通したシャフトを通して空気(気体)を入れ、片方のシャフトから吸い上げる。
【0035】
また、本実施形態では、特にバイオアルコール製造原料となる木質材を粉砕し代替原料を製造するに最適な粉砕装置及び粉砕方法を提供するが、本発明の粉砕装置および粉砕方法としては、バイオマス燃料製造原料の粉砕以外においても最適な粉砕装置および粉砕方法である。
【0036】
特にバイオアルコール製造原料となる木質材を主に構成しているセルロース、ヘミセルロース、リグニンは、大変強固な反応構造を持っていることから この構造を分解することが大変困難である。
【0037】
そこで バレル研摩機、茶葉の粉砕機の考えとは異なり1000l以上の内容量を有するドラムにおいて、段落0033、の方法にて粉砕をすることにより目的を達成ができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の効果を確認するために行った、実施例・比較例について、従来の装置によるデータと比較して説明する。
【0039】
〈実施例1・2・3・4〉
ここで、実施例に使用した粉砕装置のテスト機の仕様及び運転条件は下記のとおりである。
【0040】
粉砕機本体容量:1180l(1200mmφX1200mmL)
回転数:30rpm
粉砕媒体(ボール):径約19mmφ、充填率60%(3100kg)
被粉砕物:2mm以下の木質材、220l(66kg)
溶剤: 水280l
運転時間:実施例1(30分)、実施例2(60分)、実施例3(90分)実施例4
(120分)
〈比較例1・2・3・4〉
ここで、比較例に使用した粉砕装置のテスト機の仕様及び運転条件は下記のとおりである。
【0041】
粉砕機本体容量:1300l(1200mmφX1200mmL)
回転数:27rpm
粉砕媒体(ボール):径約19mmφ、充填率50%(3000kg)
被粉砕物:2mm以下の木質材、200l(60kg)
溶剤: 水260l
運転時間:比較例1(30分)、比較例2(60分)、比較例3(90分)比較例4
(120分)
そして、各実施例・比較例の製品(粉体木質材)について、その結果を、表1に示
【0042】
【表1】

【0043】
上記の実施例と比較例からも解るように、目標としている粒度(−200μ累積80% )が、本発明の装置では約60分で到達する。従来の粉砕機より、約半分の時間で 済むことから、粉砕効率のアップによる省エネにも大きく貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に用いる粉砕機の一例を示す概略平面断面図である。
【図2】本発明に用いる粉砕機の多角形ドラムを示す概略側面断面図である。
【図3】従来の粉砕機(ボールミル)に適用した概略平面断面図である。
【図4】従来の粉砕機(ボールミル)に適用したドラムの概略側面断面図である。
【図5】従来の回転バレル研磨機に適用した概略平面断面図である。
【図6】従来の回転バレル研磨機に適用したドラムの概略側面断面図である。
【図7】実施例と比較例の結果のグラフである。
【符号の説明】
【0045】
1 粉砕機本体
2 マンホール
3 温調用ジャケット
4 本体内側の平板
5 本体軸受け
6 本体シャフト
7 ロータリージョイント
8 本体用架台
9 モーター
10 動力伝達装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体の形状が、多角形(5角形〜18角形)を有す内容量1000l以上の粉砕容器を備え、前記粉砕容器の内部に粉砕媒体と被粉砕物(原料)をいれ、該容器を回転させることにより被粉砕物を粉砕して製品として粉砕を得ることができることを特徴とする粉砕装置。
【請求項2】
前記粉砕容器の内部に高さ30mm以上のリフターが取り付けられていることを特徴とする粉砕装置。
【請求項3】
胴体の形状が、正多角形(5角形〜18角形)を有す内容量1000l以上の粉砕容器を備え、前記粉砕容器の内部に粉砕媒体と被粉砕物(原料)を入れ、該容器を回転させることにより被粉砕物を粉砕して製品として粉砕を得ることができることを特徴とする有機繊維質原料の粉砕装置。
【請求項4】
前記粉砕容器の内部に高さ30mm以上のリフターが取り付けられていることを特徴とする請求項3記載の有機繊維質原料の粉砕装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の粉砕装置を用いて、木質原料から製品として累積80%粒径200μm以下の粉体木質材を得ることを特徴とする有機繊維質原料の粉砕方法。
【請求項6】
請求項3又は4記載の粉砕装置を用いて、穀物わら、穀物殻等の脱穀原料から、製品として累積80%粒径200μm以下の粉体を得ることを特徴とする有機繊維質原料の粉砕方法。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか一記載の有機質原料の粉砕方法で得られた製品を用いてバイオマス燃料を製造することを特徴とするバイオマス燃料の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2記載の粉砕装置において該粉砕装置の回転軸部に取り付けられたロータリージョイントを介して吸引手段により、微粉化された被粉砕物を外部に取り出すと同時に外部の気体を該粉砕装置内部に取り入れることができることを特徴とした粉砕方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−115631(P2010−115631A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313732(P2008−313732)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(592028433)
【Fターム(参考)】