説明

粉粒体に高粘度の液体を混合する方法および装置

【課題】粉粒体に対して、相対的に少量の、粘度の高い液体を均一に混合することができる方法と、その方法の実施に使用する装置を提供する。
【解決手段】小径の有底円筒11の中心に回転軸12を取り付けるとともに側壁に多数の細孔13を設けた液体微細化手段1、その外側にあって、軸が回転軸と同心の大径の円筒21と、この円筒の上部において、落下する粉粒体を大径の円筒の内壁に導く複数の対称的に配置された粉粒体ガイド22とからなる混合容器2、ならびに、この混合容器の上方にあって、中径の円筒31と、その内部で回転し、供給される粉粒体に遠心力を与えて中径の円筒の内壁に向けて放射し、粉粒体ガイド上に落下させるための円形の分散板32とからなる均等供給手段3をもって混合装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体に対して、相対的に少量であって粘度の高い液体を均一に混合する方法と、その方法の実施に使用する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二種以上の粉粒体を混合する手段のひとつは、対象物を容器に入れ、その容器に回転や振動を加えることであり、いまひとつは、容器を固定しておいて、その内部に設けた羽根やスクリューによって、装入した対象物を撹拌することである。このような原理にもとづく種々の混合装置が、市場に出回っている。一方、液体と固体とを混合しようとするとき、液体の粘度が低い場合には、粉粒体の混合装置と同じ原理の装置を用いても混合が可能であるが、液体の粘度が高い場合には、均一に混合することが困難になる。とりわけ、固体に対する液体の混合比率が小さい場合には、均一な混合はほとんど不可能である。
【0003】
出願人は、軟弱地盤の強化を目的として土壌に添加する土質安定化処理材、たとえば生石灰が、取扱いおよび施工時に、それに含まれている微細粉末に起因して発塵することを抑制する防塵対策として、これまで多用されているフィブリル化性フッ素樹脂に代えて糖類を使用することを着想したが、その実施に当って、相対的に大量の粉粒体に対して、相対的に少量である糖類の水溶液または水性ゲルないしは溶融物という、きわめて高粘度の液体を均一に混合する手段の実現を必要とした。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記した問題を解決し、相対的に大量の粉粒体に対して、相対的に少量である粘度の高い液体を、均一に混合することができる方法を提供することにある。その方法の実施に使用する装置を提供することも、本発明の目的に含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の粉粒体に高粘度の液体を混合する方法は、高粘度の液体に対して遠心力を作用させることにより、放射状に噴出する微細な連続流または分散流を形成させ、この連続流または分散流を、その外側に連続的に供給されている粉粒体に対して接触させ、混合することからなる。液体の粘度は、常温で600cp以上の高粘度が好ましい。
【0006】
上記の混合方法を実施するための、本発明の粉粒体に高粘度の液体を混合する装置は、図1に装置の主要部の分解図を示し、図2にそれらを組み立てて附属する構成部分を加えた全体を示すように、小径の有底円筒(11)の中心に回転軸(12)を取り付けるとともに側壁に多数の細孔(13)を設けた液体微細化手段(1)、その外側にあって、液体微細化手段を取り囲む筒状体(21)と、この筒状体の上部において、落下する粉粒体を大径の円筒の内壁に導く、対称的に配置された複数の粉粒体ガイド(22)とからなる混合容器(2)、ならびに、この混合容器の上方にあって、中径の円筒(31)と、その内部で回転し、供給される粉粒体を中径の円筒の内壁に向けて粉粒体ガイド上に落下させるための円形の分散板(32)とからなる均等供給手段(3)から構成され、回転駆動手段(4)、粉粒体定量供給機(5)および生成した混合物を引取る回収手段(図示してない)を備えてなる混合装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の混合方法によるときは、粉粒体に対してその重量の1〜2%というような少量の液体、たとえば糖類を、均一に混合することが可能になる。本発明の混合装置は、簡単な構造で、従来困難であった大量の粉粒体に少量の液体を均一に混合するという操作を容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の装置は、図1に示すように、液体微細化手段(1)、混合容器(2)および均等供給手段(3)を主要な構成部分とし、図2に示すように、それら主要構成部分に対して、回転駆動手段(4)、粉粒体定量供給機(5)および混合物を引取る回収手段(図示してない)を付加してなる。
【0009】
液体微細化手段(1)は、小径の有底円筒(11)の中心に回転軸(12)を取り付けるとともに側壁に多数の細孔(13)を設けたものである。この有底円筒は、内筒および外筒からなる二重の円筒であってもよく、その場合は、多数の細孔は外筒に設け、内筒と外筒の間に液体を供給することはもちろんである。細孔の径やその数は、液体の粘度や、粉粒体との混合比率、あるいは混合の速度などに応じて選択する。
【0010】
混合容器(2)は、液体微細化手段(1)の外側にあって、液体微細化手段を取り囲む筒状体(21)と、この筒状体の上部において、落下する粉粒体を筒状体の内壁に導く、対称的に配置された複数の粉粒体ガイド(22)とからなる。筒状体(21)は、その内壁に沿って粉粒体を落下させ、その間に微細な液体の流れを接触させて混合するものであるから、図示したような、中心が回転軸と同心である大径の円筒であることが好ましいが、角筒であってもよいし、柔軟な材料で製造した、したがってその形状が多少変化する筒状のものであってもよい。
【0011】
均等供給手段(3)は、この混合容器の上方にあって、中径の円筒(31)と、その内部で回転し、供給される粉粒体を中径の円筒の内壁に向けて粉粒体ガイド上に落下させるための円形の分散板(32)とからなる。分散板は、図示した構成においては液体微細化手段と回転軸を共通にしているが、別々に回転させてもよい。いずれにせよ、粉粒体定量供給機(5)によって1箇所に供給された粉粒体を、遠心力によって円周方向に均一に飛散させる。この機能は、円板状であればそなえているが、より均一に飛散させるために、放射方向に走る羽根状の突起を与えることもでき、それを有することが好ましい。図1の態様は、直径方向の2枚羽根付きのものである。
【0012】
回転駆動手段(4)を回転させると、小径の有底円筒(11)内の液体は、遠心力によって細孔から微細な流れになって、放射方向に噴出する。この流れが筒状体(21)の内壁に沿って流下する粉粒体に衝突し、混合が実現する。容易に理解されるように、このとき粉粒体の落下流の厚さが厚いと、その内側の部分を落下してくる粉粒体だけに液体が衝突し、外側の部分を落下してくる粉粒体との間では混合が行なわれず、均一な混合という目的が達成できなくなる。したがって、落下流の厚さを薄くするとともに、その厚さが、円周方向に関して均一になるように図ることが好ましい。つまり、粉粒体の落下流の厚さを制御する機能を、均等供給手段(3)にもたせることが望ましい。
【0013】
液体微細化手段(1)の小径の有底円筒(11)への液体の補給は、液体が高粘度になるほど困難である。しかし、それほど高粘度でなければ、ピストン状の装置を用いて液体を補給することができる。遠心力を加えられる液体の量が一定であれば、細孔から液体が噴出する状況が一定であり、均一な混合を続ける上で望ましいことはいうまでもない。補給が困難であれば、有底円筒を比較的大容量なものとなるように装置を構成し、大量の液体を装入しておいて、長時間の連続操業が可能なように図るべきである。時間の経過につれて液体が消費され、それにともなって遠心力を加えられる液体の液面が低下し、噴霧に利用できる細孔の数が減って粉粒体に混合される液体の量が減少することになるから、それと見合うように粉粒体の供給量も減少させるといった対策が望まれる。
【実施例】
【0014】
小径の有底円筒(11)として、外径が約70mmで高さが80mmのアルミ製円筒を用い、その側壁に、孔径1.0mmの細孔(13)を、円周方向に21箇所、軸方向に20箇所、全部で420箇所設けたものを回転軸(12)にとりつけ、2枚羽つきの分散板(32)をもち、混合容器には円周方向を六等分する粉粒体ガイド(22)を配置した装置を、図示したように組み立てた。
【0015】
粉粒体としては、生石灰を粉砕した粉末をフルイ分け、1mmアンダーの微粉末を得て使用した。これに混合すべき高粘度の液体としては、デキストリン(粘度5800cp)またはマルトース(粘度620cp)を選んだ。粉粒体と高粘度液体との混合比率のコントロールは、粉粒体の供給速度を調節することによって行なった。1回の試験に使用した生石灰の量は、1kgである。
【0016】
混合の均一性は、混合製品回収手段の円周方向に90度ずつ離れた4箇所から、同じ量の混合物をサンプリングし、JIS R 9011「石灰の試験方法」に定める方法に従って、サンプルを1250℃に加熱し、発生した全CO量を比較し、デキストリンまたはマルトースの燃焼により発生するCO量を算出することによって、測定した。このとき発生する全COには、サンプル生石灰中に残存していた未焼成CaCOから発生するCOも含まれるが、その量はどのサンプルにおいても一定であることを、事前の分析で確認ずみである。つまり、全CO量の差が、デキストリンまたはマルトースの、すなわち高粘度液体の混合量の差ということになる。
【0017】
表1にデキストリンの、表2にマルトースの実施結果を示す。数値は各々3回の平均値である。デキストリンまたはマルトースのどちらの場合も、高い均一性を以て生石灰粉末への混合が行なわれたことが確認できた。
【0018】
表1 デキストリン混合量比(0度位置のCO量を基準とする)

【0019】
表2 マルトースの混合量比(0度位置のCO量を基準とする)

【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の混合装置の主要部を分解してその構造を示した斜視図。
【図2】図1の混合装置を組み立て、附属する装置を加えて全体を示した斜視図。
【符号の説明】
【0021】
1 液体微細化手段
11 小径の有底円筒
12 回転軸
13 細孔
2 混合容器
21 筒状体(大径の円筒)
22 粉粒体ガイド
3 均等供給手段
31 中径の円筒
32 分散板
4 回転駆動手段
5 粉粒体定量供給機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に大量の粉粒体に相対的に少量の高粘度の液体を混合する方法であって、高粘度の液体に対して遠心力を作用させることにより、放射方向に噴出する微細な連続流または分散流を形成させ、この連続流または分散流を、それらの外側において連続的に供給されている粉粒体に対して接触させることからなる混合方法。
【請求項2】
高粘度の液体の微細な連続流または分散流の形成を、回転する容器の側壁に設けた細孔から高粘度の液体を噴出させることにより行なう請求項1の混合方法。
【請求項3】
粉粒体の連続的な供給を、高粘度の液体の微細な連続流または分散流が放射方向に噴出する外側において、粉粒体を円周状に落下させることにより行なう請求項1の混合方法。
【請求項4】
粉粒体の連続的な供給を、回転する円板である分散板上に粉粒体を供給し、分散板の回転が与える遠心力で粉粒体を全放射方向に分散させて均一に行なう請求項3の混合方法。
【請求項5】
粉粒体が、生石灰、消石灰、仮焼ドロマイトおよびポルトランドセメントの1種または2種以上を有効成分とする土壌安定化処理材である請求項1の混合方法。
【請求項6】
高粘度の液体として、常温における粘度が600cp以上のものを使用して実施する請求項1の混合方法。
【請求項7】
粉粒体に高粘度の液体を混合する装置であって、小径の有底円筒(11)の中心に回転軸(12)を取り付けるとともに側壁に多数の細孔(13)を設けた液体微細化手段(1)、その外側にあって、液体微細化手段を取り囲む筒状体(21)と、この筒状体の上部において、落下する粉粒体を大径の円筒の内壁に導く、対称的に配置された複数の粉粒体ガイド(22)とからなる混合容器(2)、ならびに、この混合容器の上方にあって、中径の円筒(31)と、その内部で回転し、供給される粉粒体に遠心力を与えて中径の円筒の内壁に向けて放射し、粉粒体ガイド上に落下させるための円形の分散板(32)とからなる均等供給手段(3)から構成され、液体微細化手段および均等供給手段を回転させる回転駆動手段(4)、分散板上に粉粒体を供給する定量供給機(5)および混合物を引き取る回収手段を備えてなる混合装置。
【請求項8】
小径の有底円筒(11)が同心の内外二重円筒であって、その内外の円筒の間に高粘度の液体を供給する構造である請求項7の混合装置。
【請求項9】
液体微細化手段を取り囲む筒状体(21)が、回転軸と同心の大径の円筒である請求項7の混合装置。
【請求項10】
小径の有底円筒(11)内へ高粘度の液体を連続的に供給する手段を備えた請求項7の混合装置。

【図1】
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【図2】
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